(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6683586
(24)【登録日】2020年3月30日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】リード線成形装置
(51)【国際特許分類】
H02K 15/04 20060101AFI20200413BHJP
【FI】
H02K15/04 F
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-205766(P2016-205766)
(22)【出願日】2016年10月20日
(65)【公開番号】特開2018-68046(P2018-68046A)
(43)【公開日】2018年4月26日
【審査請求日】2018年12月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000100768
【氏名又は名称】アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】西野 純貴
(72)【発明者】
【氏名】中川 修
【審査官】
三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2015/147253(WO,A1)
【文献】
特開2015−119613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルの一端から延出されたリード線を所定形状に成形するリード線成形装置であって、
前記リード線を固定する第1成形型と、
前記第1成形型に隣接し、該第1成形型に対してエッジワイズ方向へ相対移動して、該第1成形型との間で前記リード線を挟み込むことで該リード線の中間部を成形する第2成形型と、
前記第1成形型に隣接し、該第1成形型に対してエッジワイズ方向に相対移動することで、前記リード線の先端部を押圧し、該先端部をエッジワイズ方向へ変形させる第3成形型と、を備え、
前記第1成形型と前記第2成形型との間で前記リード線を挟み込んだ状態で、前記第2成形型と前記リード線の中間部との間に所定の隙間が形成されるように、前記第1及び第2成形型が構成され、
前記第1成形型は、前記リード線の中間部をエッジワイズ方向に成形するためのエッジワイズ成形面と、前記リード線の中間部をフラットワイズ方向に成形するためのフラットワイズ成形面とを有し、
前記フラットワイズ成形面には、前記第2成形型による前記リード線の中間部の引き摺られを防止するための突起部が形成されている、
リード線成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルの一端から延出されたリード線を所定形状に成形するリード線成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リード線を固定する第1成形型と、第1成形型に隣接し、該第1成形型に対して第1方向へ相対移動して、第1成形型との間でリード線を挟み込むことでリード線の中間部を成形する第2成形型と、第1成形型に隣接し、第1成形型に対して第1方向に相対移動することで、リード線の先端部を押圧し、先端部を第1方向へ変形させる第3成形型と、備えるリード線成形装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2014/017125号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記リード線成形装置において、第1成形型に対して第2及び第3成形型を相対移動させ、リード線を成形した後、第3及び第2成形型をそれぞれ離脱させる。第3成形型を離脱させる際は、リード線は第1及び第2成形型により固定されている。しかし、第2成形型を離脱させる際は、リード線は十分に固定されないため、第2成形型に引き摺られ、第2成形型の離間方向へ変形する虞がある。
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、リード線が第2成形型に引き摺られ、変形することを抑制できるリード線成形装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、
コイルの一端から延出されたリード線を所定形状に成形するリード線成形装置であって、
前記リード線を固定する第1成形型と、
前記第1成形型に隣接し、該第1成形型に対して第1方向へ相対移動して、該第1成形型との間で前記リード線を挟み込むことで該リード線の中間部を成形する第2成形型と、
前記第1成形型に隣接し、該第1成形型に対して前記第1方向に相対移動することで、前記リード線の先端部を押圧し、該先端部を前記第1方向へ変形させる第3成形型と、を備え、
前記第1成形型と前記第2成形型との間で前記リード線を挟み込んだ状態で、前記第2成形型と前記リード線との間に所定の隙間が形成されるように、前記第1及び第2成形型が構成されている、
リード線成形装置
である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、リード線が第2成形型に引き摺られ、変形することを抑制できるリード線成形装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態に係るリード線成形装置の概略的な構成を示す斜視図である。
【
図2】第1乃至第3成形型でリード線を挟み込んだ状態を示す断面図である。
【
図4】リード線Lの中間部が第1及び第2成形型により挟み込まれた状態における中間部の断面図である。
【
図5】(a)リード線成形方法を説明するための図である。(b)リード線成形方法を説明するための図である。(c)リード線成形方法を説明するための図である。(d)リード線成形方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るリード線成形装置の概略的な構成を示す斜視図である。本実施形態に係るリード線成形装置1は、コイルCの一端から延出されたリード線Lを成形するものである。
【0009】
コイルCは、例えば、電動機用ステータに用いられるものであり、ロータと共に、電気自動車やハイブリッド自動車の走行駆動源あるいは発電機として用いられる3相交流電動機を構成するものである。コイルCは、例えば、矩形断面を有する平角材を複数回にわたって巻回することにより形成され、その一端からは長尺のリード線Lが延出される。本実施形態に係るリード線成形装置1は、コイルCから延出されたこのリード線Lを所定形状に成形するものである。
【0010】
リード線成形装置1は、例えば、
図1に示す如く、リード線Lをエッジワイズ方向(断面の短辺と略直交する方向、EW方向)及びフラットワイズ方向(断面の長辺と略直交する方向、FW方向)に複数回曲げることで、リード線Lを成形する。これは、リード線L同士の干渉を抑えつつコイルCをコンパクト化するため行われる。コイルCは、例えば、熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂などのモールド樹脂により被覆されている。
【0011】
本実施形態に係るリード線成形装置1は、リード線Lの始端部を固定する第1成形型11と、第1成形型11に隣接し、該第1成形型11に対して第1方向へ相対移動する第2成形型12と、第1成形型11に隣接し、第1成形型11に対して第1方向に相対移動する第3成形型13と、を備えている。
【0012】
第1成形型11は、リード線成形装置1の設置箇所に対して固定される固定型である。第1成形型11は、コイルCのリード線Lの中間部L1をエッジワイズ方向及びフラットワイズ方向に複数回曲げて、所定形状を成形するための成形面を有している。
【0013】
図1に示す如く、第1成形型11は、コイルCのリード線Lの中間部L1をエッジワイズ方向に成形するためのエッジワイズ成形面(不図示)と、リード線Lの中間部L1をフラットワイズ方向に成形するためのフラットワイズ成形面14とを有している。エッジワイズ成形面は、フラットワイズ成形面14に沿って延在し、リード線Lの中間部L1をエッジワイズ方向に所定形状に曲げるように曲面が形成されている。
【0014】
フラットワイズ成形面14は、リード線Lの中間部L1をフラットワイズ方向に所定形状に曲げるように曲面が形成されている。フラットワイズ成形面14には、例えば、後述する、第2成形型12によるリード線Lの中間部L1の引き摺られを防止するための突起部15が形成されていてもよい。第2成形型12が第1成形型11から離脱する際に、リード線Lの中間部L1が第2成形型12に引き摺られ、変位しようとする。しかし、リード線Lの中間部L1がこの突起部15に引っ掛るため、中間部L1が第2成形型12に引き摺られ、第2成形型12の離間方向へ変位するのを抑制できる。
【0015】
第2成形型12は、電動モータあるいは流体圧シリンダ等を含む駆動ユニット16により駆動される移動型である。第2成形型12は、第1成形型11に対して第1方向へ相対移動して、第1成形型11との間でリード線Lを挟み込むことでリード線Lの中間部L1を成形する。
【0016】
第2成形型12は、
図1に示す如く、第1方向に相対移動して固定型である第1成形型11に接近すると共に、第1方向に移動して第1成形型11から離間することができる。
【0017】
第2成形型12は、第1成形型11のエッジワイズ成形面に対応した、コイルCのリード線Lの中間部L1をエッジワイズ方向に成形するためのエッジワイズ成形面(不図示)と、第1成形型11のフラットワイズ成形面14に対応した、リード線Lの中間部L1をフラットワイズ方向に成形するためのフラットワイズ成形面(不図示)と、を有している。第2成形型12のエッジワイズ成形面は、第1成形型11のエッジワイズ成形面と平行に延在するように形成されている。
【0018】
第2成形型12が第1成形型11に接近することで、第2成形型12のエッジワイズ成形面は、第1成形型11のエッジワイズ成形面とでリード線Lの中間部L1を挟み込み加圧することで、その中間部L1を第1成形型11のエッジワイズ成形面の曲面に沿った所定形状に成形する。同時に、第2成形型12のフラットワイズ成形面は、第1成形型11のフラットワイズ成形面14とでリード線Lの中間部L1を挟み込み加圧することで、その中間部L1を第1成形型11のフラットワイズ成形面の曲面に沿った所定形状に成形する。
【0019】
第3成形型13は、第2成形型12と同様に、駆動ユニット16により駆動される移動型である。第3成形型13は、固定型である第1成形型11に対して上記第2成形型12の移動方向と平行に第1方向に移動可能な移動型である。第3成形型13は、第1成形型11に対して第1方向に相対移動することで、リード線Lの先端部L2を押圧し、先端部L2を第1方向(エッジワイズ方向)へ変形させる。
【0020】
第3成形型13は、
図1に示す如く、第1方向に相対移動して固定型である第1成形型11に接近すると共に、第1方向に移動して第1成形型11から離間することができる。第3成形型13は、第2成形型12と協働してリード線Lの先端部L2をエッジワイズ方向に成形可能なものである。第3成形型13は、リード線Lの先端部L2にエッジワイズ方向に成形するための曲面を含むエッジワイズ成形面を有する。
図2は、第1乃至第3成形型でリード線を挟み込んだ状態を示す断面図である。
図3は、
図2に示すA部分を拡大した拡大図である。
【0021】
ところで、第2及び第3成形型12、13が第1成形型11に接近し、リード線Lの中間部L1及び先端部L2が所定形状に成形されると、続いて、第3成形型13が第1成形型11から離間し、離脱する。このとき、第1成形型11及び第3成形型13でリード線Lの先端部L2をエッジワイズ方向に成形した際に先端部L2の断面の厚さがフラットワイズ方向に増加している。このため、第3成形型13とリード線Lの先端部L2との摩擦力が増加し、この摩擦力により、先端部L2は第3成形型13に引き摺られ変位しようとする。しかし、第1及び第2成形型11、12によりリード線Lの中間部L1が固定されているため、先端部L2は第3成形型13に引き摺られず、変位しない。
【0022】
一方、第2成形型が第1成形型から離間し、離脱する際、第3成形型と同様に、リード線Lの中間部は、十分に固定さていないため、第2成形型に引き摺られ変位しようとする。上述のフラットワイズ成形面に突起部が形成されている場合でも、リード線Lの中間部がこの突起部に引っ掛るが、リード線の先端部と離れた位置に突起部が設けられているため、第2成形型の引き摺りを抑えきれず、中間部の先端部側が引き摺られ第2成形型の離間方向へ変形する。
【0023】
これに対し、本実施形態においては、第1成形型11と第2成形型12との間でリード線Lを挟み込んだ状態で、第2成形型12とリード線Lとの間に所定の隙間Dが形成されるように、第1及び第2成形型12が構成されている。この第2成形型12とリード線Lとの間に所定の隙間Dによって、リード線Lは第2成形型12により引き摺られず、第2成形型12の離間方向へ変形することがない。
【0024】
図4は、リード線Lの中間部L1が第1及び第2成形型12により挟み込まれた状態における中間部L1の断面図である。
図4に示す如く、第2成形型12とリード線Lとの間に所定の隙間Dが形成されている。この所定の隙間Dは、上述の如く、第1成形型11及び第3成形型13でリード線Lの先端部L2をエッジワイズ方向に成形した際にリード線Lの中間部L1の断面の厚さがフラットワイズ方向に増加するのを考慮して、例えば、0.2mm以上(リード線Lの被膜厚さ程度)に形成されている。上記の所定の隙間Dが形成されるように、例えば、第1及び第2成形型12の間隔、形状などが設定される。
【0025】
次に、
図5(a)乃至(d)を用いて、リード線成形方法について説明する。
図5(a)に示す如く、まず、駆動ユニット16は、第2成形型12を第1方向に相対移動させて第1成形型11に接近させる。これにより、第2成形型12は、第1成形型11とでリード線Lの中間部L1を挟み込み加圧する。この状態では、上記第2成形型12とリード線Lとの間に所定の隙間Dが形成されていることから、リード線Lの中間部L1は、フラットワイズ方向にはゆるく曲げられた状態となっている。
【0026】
続いて、
図5(b)に示す如く、駆動ユニット16は、第3成形型13を第1方向に相対移動させて第1成形型11に接近させる。これにより、第3成形型13は、第1成形型11と協働して、リード線Lの先端部L2を押圧し、先端部L2を第1方向へ変形させる。この状態では、リード線Lの先端部L2はフラットワイズ方向に矯正されながら、エッジワイズ方向(第1方向)に曲げられた状態である。
【0027】
さらに、
図5(c)に示す如く、駆動ユニット16は、第3成形型13を第1成形型11から離間し、離脱させる。このとき、リード線Lの先端部L2は第3成形型13に引き摺られ変位しようとする。しかし、第1及び第2成形型12によりリード線Lの中間部L1が固定されているため、先端部L2は第3成形型13に引き摺られず、変位しない。
【0028】
最後に、
図5(d)に示す如く、駆動ユニット16は、、第2成形型12を第1成形型11から離間し、離脱させる。このとき、この第2成形型12とリード線Lとの間に所定の隙間Dが形成されてるため、リード線Lは第2成形型12により引き摺られず、第2成形型12の離間方向へ変形することがない。
【0029】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 リード線成形装置、11 第1成形型、12 第2成形型、13 第3成形型