【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、呼吸マスクアセンブリ用のシールクッションであって、患者の顔に係合するための弾性変形可能なメンブレンを有する患者インタフェース部と、患者の顔の鼻及び/又は口の領域を受けるためにそこに形成された開口と、を備えるシールクッションが提供される。ここでメンブレンの内面には複数の突起が含まれ、これらの突起は、使用時にメンブレンが患者の顔に係合されている間、メンブレンの変形により各突起が隣接する突起と係合可能となるように配置されている。その結果、変形された構成において、メンブレンの変形抵抗が増大する。
【0008】
本発明によるシールクッションは次の2段階動作を有する配置が可能であるので、原理的に有利である。すなわち、シールクッションの変形抵抗が小さく、したがって(例えば突起が隣接する突起と係合しない場合には)弾性が小さくて、シールクッションを患者の顔の適切な位置に押し付けることができる第1の段階と、シールクッションの変形抵抗が大きく、したがって(例えば突起が隣接する突起と係合した場合には)弾性が大きくて、過度の変形に抗しつつ、シールクッションを患者の顔に密封的に係合することができる第2の段階とである。本発明によるシールクッションは、患者に被せたときに患者方向への変形には十分高い抵抗を持ちつつ、例えば呼吸マスクに加圧ガスを印加すると、患者の顔から離れる方向への変形に対しては抵抗が小さくなるような配置とすることも可能である。
【0009】
突起はメンブレンの内面から直立していてもよい。突起の高さは、メンブレンの厚さの少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも3倍であってよい。突起の高さは、メンブレンの厚さの少なくとも5倍、又は少なくとも10倍であってよい。突起の幅及び/又は長さは、メンブレンの厚さの少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも3倍であってよい。突起の幅は、メンブレンの厚さの少なくとも5倍、又は少なくとも10倍であってよい。
【0010】
突起群は、メンブレンの複数の局部領域に配置されていてもよい。突起群はメンブレンの外周区域付近に配置されていてもよい。隣接する突起群同士は実質的に一定の距離だけ離間していてもよい。突起群内の突起どうしは規則的に配列されていてもよいし、あるいは不規則な配置であってもよい。
【0011】
2以上の突起群は、係合前及び/又は係合後に、異なるレベルの弾性及び/又は変形抵抗を与えるように適合されていてもよい。2以上の突起群は異なる数の突起で構成されていてもよい。2以上の突起群及び/又は2以上の個別の突起は、異なるレベルの弾性及び/又は変形抵抗を与えるような形状、寸法、及び/又は構成であってもよい。突起群はメンブレンの局部領域が異なれば、全体寸法が異なっていてもよい。例えば、メンブレンの鼻梁領域にある突起群は、メンブレンの下隅にある突起群より大きくてもよい。突起群内の突起は、実質的にメンブレンを横切って延在していてもよい。例えば、実質的に横軸に沿って整列していてもよい。突起は、実質的にメンブレン全体を横切って延在してもよい。突起は、メンブレンを部分的にのみ横切って延在してもよい。
【0012】
突起群は、鼻梁領域の両側及び/又は鼻マスクの鼻孔に隣接するメンブレンの下隅又はフルフェイス型マスクの口に隣接する両側に位置していてもよい。
【0013】
少なくとも2つの突起群は、実質的に同一の全体形状であってもよい。突起群の1以上のペアは、実質的に同一の全体形状であってもよい。シールクッションの実質的に垂直な中央軸を越えて相対向する、突起群の1以上のペアは、実質的に同一の全体形状であってよい。こうしてシールクッションの両側に同一の力がかかってもよい。
【0014】
1以上の突起群の全体形状にはテーパが付いていてもよい。1以上の突起群及び/又は個別突起はその長さ方向にテーパが付いていてもよい。1以上の突起群及び/又は個別突起は、開口に隣接するメンブレン領域において幅及び/又は高さが小さくなっていてもよい。
【0015】
1以上の突起は横方向にテーパが付いていてもよい。例えば、突起は開口を画定するメンブレンの内端に向かって、幅及び/又は高さが小さくなっていてもよい。こうすることにより、開口に隣接するメンブレン領域において、可撓性のより大きな領域、及び/又は弾性のより小さい領域を提供することが可能である。
【0016】
1以上の突起は周方向にテーパが付いていてもよい。例えば、突起は突起群の外端において高さが小さくなっていてもよい。こうして、弾性及び/又は変形抵抗の大きな領域と小さな領域との間が段階的に遷移していてもよい。
【0017】
複数の突起はメンブレンと一体形成されていてもよい。複数の突起は、メンブレンの成形プロセスの一部として成形されてもよい。複数の突起はメンブレンと同一材料で成形されていてもよい。
【0018】
突起は、メンブレンを実質的に横切って整列していてもよい。突起は、実質的にメンブレン全体に亘り横断的に延在していてもよい。突起は、メンブレンの一部のみを横切って延在していてもよい。
【0019】
1つの突起群には突起が2つだけであってもよい。あるいは、1つの突起群には、例えば実質的に横軸に沿って整列した、一連の3つ以上の突起があって、これらが、隣接する突起に実質的に同時に係合するか、あるいはメンブレンの変形の増大と共に段階的に係合するようになっていてもよい。一例として、メンブレンの第1領域、例えば患者の顔の鼻及び/又は口の領域を受けるための開口に隣接する領域、における少なくとも2つの突起は、使用時に患者の顔にメンブレンを係合する際に、メンブレンの第2領域、例えば第1領域よりも開口からより大きく離間した領域、における少なくとも2つの突起が係合する前に相互に係合するように適合されていてもよい。
【0020】
突起のそれぞれは、使用時にメンブレンが変形した構成において、隣接する対応の当接面に当接する当接面を備えていてもよい。1以上の当接面は、隣接当接面と係合しているときに横方向移動/滑りに抵抗するようになっていてもよい。
【0021】
当接面は、隣接する当接面と係合しているときに横方向移動/滑りに抵抗するような形状となっていてもよい。隣接する当接面は、同一又は対応する形状の面を持っていてもよい。例えば、各当接面は実質的に平坦であるか、あるいは、各当接面は、隣接当接面の対応する形成体に実質的に嵌合するような形成体を持っていてもよい。こうして滑りのリスクが小さくなり、したがって、メンブレン変形に対する抵抗がより予測しやすくなり得る。当接面は粗面であってもよい。それにより当接面は隣接当接面との摩擦接触を増大させてもよい。
【0022】
突起の隣接当接面どうしはチャネル又は溝を画定してもよい。チャネル又は溝は実質的に一定幅であってもよい。こうしてチャネル又は溝は、隣接する突起の異なる部分間が実質的に同時係合することを可能とし、それによってメンブレンが異なる変形抵抗及び/又は弾性へより迅速に遷移することを可能としてもよい。
【0023】
少なくとも1つの突起、又はそれぞれの突起は、シールクッションが静止した構成においては隣接突起から少なくとも部分的に離間していてもよい。少なくとも1つの突起又はそれぞれの突起は、隣接突起から、即ちメンブレンの内表面から完全に離間していてもよい。これにより、隣接突起に係合する前にメンブレンにより大きな可撓性が与えられてもよい。あるいは、1以上の突起又はそれぞれの突起が、隣接突起から実質的に“V字型”のチャネル又は溝によって離間されていてもよい。このようにしてこれらの実施形態では、隣接突起と係合する前に、変形抵抗がより大きいか、及び/又は弾性がより大きいことがあり得る。またこれとは別に、静止構成において例えば低接触圧で当接している突起を利用して、変形に対する異なる抵抗を実現することも可能であり得る。例えば、製造時に1つの突起を切断して2つの当接する突起を形成することで、そのような突起を形成してもよい。
【0024】
メンブレンは患者の顔に接触する外部接触面を備えていてもよい。外部接触面は静止構成においては患者の顔の輪郭に実質的に一致するような形状であってもよい。メンブレンは患者の顔に対して凹型接触面となっていてもよい。メンブレンは接触面領域において湾曲断面となっていてもよい。メンブレンの曲率は、患者の顔に係合することによる変形によって増大してもよい。こうして、メンブレンを十分に変形させることによって突起を隣接突起に係合させることが可能となり得る。メンブレンはマスクシェルの接続部へ隣接する側壁と接触面領域との間において断面が湾曲していてもよい。
【0025】
メンブレンは、マスクアセンブリのシールクッションに使用するのに好適な任意の弾性変形可能材料で形成されていてもよい。メンブレンは、熱可塑性材料(TPE)又はシリコーンのような熱硬化性エラストマ(TSE)で形成されていてもよい。
【0026】
メンブレンは、突起のない領域では実質的に均一な厚さであってもよい。あるいはまた、メンブレンには、メンブレンの他の部分とは厚さの異なる領域があって、それにより可撓性及び/又は弾性の低い及び/又は高い領域を提供してもよい。メンブレンは単一のメンブレンであってもよい。例えば、メンブレンの下には支持部材及び/又はクッションがなく、メンブレンと付属する突起によってのみ、変形抵抗が与えられるようになっていてもよい。
【0027】
接触面領域においてメンブレンの断面が湾曲し、患者の顔への係合による変形で曲率が増大するところでは、メンブレンの曲率の増大によって隣接する突起どうしの間での係合が生じてもよい。
【0028】
マスクを患者に当てたときに各突起が必ずしも隣接突起と係合しなくてもよい。また使用時の患者とマスクの動きに応じて係合する突起が変化してもよい。具体的には、マスクの患者への具体的な装着情況、及び/又は処置のために供給される呼吸ガスの圧力に依存して、突起のすべてが当接しなくてもよい。使用時に例えば呼吸マスクへ加圧ガスを印加することで、突起は係合が外れて、例えば分離してもよい。
【0029】
隣接する突起どうしが係合すると、変形に対するメンブレンの弾性が向上してもよい。一連の3以上の隣接する突起が実質的に同時に係合されてもよいし、メンブレンの変形の進行に応じた段階的な係合であってもよい。メンブレンの第1領域(例えば患者の顔の鼻及び/又は口の領域を受けるための開口に隣接する領域)における少なくとも2つの突起は、使用時に患者の顔にメンブレンを係合する際に、メンブレンの第2領域(例えば第1領域よりも開口からより大きく離間した領域)における少なくとも2つの突起が係合する以前に相互に係合するように適合されていてもよい。
【0030】
開口はメンブレン内の実質的に中央に配置されていてもよい。開口は患者の鼻及び/又は口の領域の形状と実質的に同じであってもよい。開口は実質的に三角形であってもよい。開口は、隣接する鼻の下部に比べて鼻梁領域で幅が狭くなっていてもよい。開口の隅は丸まっているか曲線となっていてもよい。
【0031】
開口領域のメンブレンは患者の快適さを向上させるようになっていてもよい。開口領域のメンブレンは患者の快適さを向上させるような形状になっていてもよい。開口領域のメンブレンはマスククッションの内部空洞方向に少し内側に湾曲していてもよい。
【0032】
シールクッションは、マスク本体への接続のためのマスクインタフェース部を備えていてもよい。マスクインタフェース部は、シールクッションの患者インタフェース部に対向する端部に配置されてもよいし、それが最も好ましい。マスク本体は、典型的には患者の顔の鼻及び/又は口の領域を受ける空洞を画定し、また通常は呼吸ガス用のガス入口/出口を含んでいる。
【0033】
シールクッションは、シールクッションよりも固くかつマスクシェルの形状を有するマスク本体に、周縁領域で結合するようになっていてもよい。具体的にはマスクインタフェース部は、例えば締りばめ及び/又はスナップフィットによって、マスクシェルの対応する突起を受けるためのリセスを備えていてもよい。
【0034】
シールクッションはマスクシェルのファスナ部と係合するようになっていてもよい。例えば、シールクッションは少なくとも1つのクリップ又は類似のものを受けるようになっていてもよい。具体的には、マスクインタフェース部は、マスクシェルの対応する突起の拡大部分を受けるようになったリセスを備えていてもよい。
【0035】
こうして、シールクッションはガス入口/出口を備えたマスクシェルに接続されてもよい。シールクッションは鼻のみを収納する鼻マスクアセンブリの一部を構成してもよい。シールクッションは鼻と口を収納する“フルフェイス”マスクアセンブリの一部を構成してもよい。
【0036】
シールクッションは単一部品であってもよい。シールクッションは、例えば射出成形法又はそれに類似の、単一モールドプロセスによって形成されてもよい。
【0037】
本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の態様によるシールクッションを備えた呼吸マスクアセンブリが提供される。
【0038】
呼吸マスクアセンブリは、シーリングクッションよりも固いマスクシェルを備えてもよい。マスクシェルは内部空洞を画定するようになっていてもよい。マスクシェルは一般的に内部空洞を画定するドーム形であってよい。マスクシェルは実質的に凹型の内部表面を持っていてもよい。マスクシェルは実質的に凸型の外部表面を持っていてもよい。内部空洞は、シールクッションの内部空洞と直接流体連通していてもよいし、それが最も望ましい。
【0039】
マスクシェルはシールクッションに永久的に係合するようになっていてもよい。代わりに、そして最も好ましくは、マスクシェルはシールクッションに取り外し可能に係合するようになっていてもよい。
【0040】
マスクシェルの背面には少なくとも1つの突起があり、これがマスクシェルの周縁領域の周りに延在してもよい。この少なくとも1つの突起は、シールクッションのマスクシェルインタフェース部の対応するリセスによって受け止められるような形状及び/又は寸法となっていてもよい。
【0041】
マスクシェルには少なくとも1つのファスナ部があってもよい。この少なくとも1つのファスナ部は、マスクシェルの背面の1以上の局部領域に配置されていてもよい。ファスナ部はマスクシェルの各端部に沿って配置されていてもよい。ただし、外しやすくするためにマスクシェルの1以上の隅にはなくてもよい。この少なくとも1つのファスナ部はシールクッションのマスクシェルインタフェース部の対応するリセスによって受けられる突起の一部を形成していてもよい。ただしその他の突起よりも大きな寸法であってもよい。
【0042】
少なくとも1つのファスナ部は、マスクインタフェース部の対応するクリップ受部に係合し、最も好ましくは取り外し自在に係合するようになっていてもよい。少なくとも1つのファスナ部は、マスクインタフェース部の対応するクリップ受部に係合するような形状、最も好ましくは取り外し自在に係合するような形状、となっていてもよい。少なくとも1つのファスナ部はクリップ又は類似のものであってよい。
【0043】
マスクシェルは、流体コネクタを係合できるようになった開口を備えていてもよいし、あるいは一体的に形成された流体コネクタを持っていてもよい。流体コネクタはエルボコネクタ(elbow connector)であってもよい。マスクシェルには接続形成体が備えられ、マスクシェルを流体コネクタに接続して流体コネクタが開口と流体連通するようになっていてもよい。
【0044】
接続形成体は流体コネクタをマスクシェルに回転可能に取り付けてもよい。マスクシェルの接続形成体と流体コネクタは、マスクシェルに対する流体コネクタの1以上の所定回転位置において相互に係合する対応構造を備え、ユーザが例えば手動で動かすまでは、流体コネクタは使用時に所定の回転位置に保持されるようになっていてもよい。流体コネクタの1以上の所定回転位置には、流体コネクタの遠位端が患者の顔の長手軸方向、例えば患者の顔に関して上方向、に向く位置が含まれ、患者にとってそれが寝るのにより快適な位置である場合には、接続された呼吸チューブが患者の頭越しに保持されるようになっていてもよい。
【0045】
接続形成体はマスクシェルの外部表面上に配置されていてもよい。接続形成体はマスクシェルの外部表面から立ち上がっていてもよい。接続形成体はマスクシェルと一体的に形成されていてもよい。接続形成体は隆起、又は突起、又はそれに類似の形態であってよい。接続形成体は開口に隣接する領域にあってもよい。接続形成体は実質的に開口の全体を囲んでいてもよい。接続形成体は実質的に一定の断面を有していてもよい。
【0046】
接続形成体はさらに少なくとも1つの固定突起を備えていてもよい。この少なくとも1つの固定突起は流体コネクタの対応する受部を永久的に係合するようになっていてもよい。この少なくとも1つの固定突起は流体コネクタの対応する受部の中に配置できるようになっていてもよい。
【0047】
呼吸マスクアセンブリはマスクアセンブリを呼吸回路の残りの部分に接続するための流体コネクタを備えていてもよい。コネクタには流体連通する第1と第2の突出部があってもよい。第1と第2の突出部は互いに実質的に垂直配置されて、コネクタが“L字型”となるようになっていてもよい。コネクタはいわゆるエルボコネクタであってよい。
【0048】
第1と第2の突出部の間のインタフェースにはテーパが付いていて、それによって、マスクシェルからのコネクタの突出を小さくしていてもよい。具体的には、第1の遠位突出部により画定される導管は、例えば患者の顔に垂直な軸に沿って次第に寸法が減少していて、実質的に一定断面寸法を有する通常のエルボ導管に比較すると第1の突出部が患者の顔方向に押しつぶされたようになっていてもよい。
【0049】
コネクタはマスクシェルを近位端において固定的に係合するようになっていてもよい。コネクタは近位端に周縁リムがあって、対応するマスクシェルの締結及び/又は固定形成体を取り外し自在に受け止めるようになっていてもよい。
【0050】
呼吸マスクアセンブリは少なくとも1つ、そして最も好ましくは複数の、ベント形成体を備えていてもよい。この少なくとも1つのベント形成体は、コネクタ内、例えばコネクタの壁に形成されていてもよい。この少なくとも1つのベント形成体は、呼気ガスを呼吸マスクアセンブリの外、例えば患者の顔から実質的に離れる方向へ向かわせるようになっていてもよい。
【0051】
少なくとも1つのベント形成体には開口があってもよい。そしてガスをマスク内部から開口に向かわせて通過させるための溝又はチャネルがあってもよい。開口は、例えばコネクタの第1と第2の突出部の間の界面において、コネクタの外部表面に開いていてもよい。溝又はチャネルは、例えばコネクタの第1と第2の突出部の間の界面において、コネクタの内部表面に配置されていてもよい。溝又はチャネルは、その長さ方向にテーパが付いていてもよい。各開口は対応する溝又はチャネルと流体連通していてもよい。こうして、各溝又はチャネルは、開口を介してコネクタ構造の外部へ空気を向かわせ得る。
【0052】
コネクタにはその遠位端に、呼吸回路の別の部品の流体コネクタへ取り外し自在に接続するための少なくとも1つの形成体があってもよい。コネクタは第1と第2の構成の間を作動可能であってよい。第1の構成は、呼吸チューブ又は他の任意の適当な呼吸回路部品の流体コネクタを保持してもよい。第2の構成は、呼吸チューブ又は他の任意の適当な呼吸回路部品の流体コネクタを解放してもよい。少なくとも1つの接続形成体には複数のスロットが含まれてもよい。複数のスロットのそれぞれは、呼吸チューブ又は他の任意の適当な呼吸回路部品の対応部分を受けられる形状及び/又は寸法となっていてもよい。
【0053】
この少なくとも1つの接続形成体は、圧力印加によって第1の構成から第2の構成へ作動させられてもよい。そのような構成とすることで、少なくとも1つの接続形成体を押しつぶすことによって、呼吸チューブの迅速かつ容易なマスクアセンブリへの脱着が可能となる。したがって、従来技術で知られている構成に比べてこの構成はより単純であり、所要時間も短い。
【0054】
マスクシェルには、呼吸マスクアセンブリをヘッドギアに接続するための少なくとも1つのファスナがあってもよい。この少なくとも1つのファスナは、ヘッドギアのストラップ等を永久的に保持するようになっていてもよい。この少なくとも1つのファスナは、最も好ましくはヘッドストラップ等を取り外し自在に保持するようになっていてもよい。この少なくとも1つのファスナは、ヘッドギアのストラップ等を取り外し自在に保持すできる形状となっていてもよい。マスクシェルは最も好ましくは、複数のファスナ、例えばマスクシェルの各側に1つのファスナを備えている。
【0055】
ファスナはマスクシェルから横の外方向に向かって延在していてもよい。ファスナはマスクシェルの下隅から横方向外側に向かって延在していてもよい。最も好ましくは、ファスナがマスクシェルの各下隅から横方向外側に延在している。ファスナはマスクシェルと一体的に形成されていてもよい。ファスナはヘッドギアストラップ等の対応部分を受けるようになっていてもよい。ファスナはヘッドギアストラップ等の対応部分を受けるような形状となっていてもよい。ファスナは1以上の開口を画定し、したがってバックルの形状であるか、又は鉤(hook)の形状であってもよい。ファスナが鉤である場合、ファスナは実質的に“C字型”の形状であってよい。
【0056】
マスクには第1と第2のファスナがあって、それぞれがヘッドギアストラップ等を取り外し自在に保持するようになっていてもよい。代替の実施形態において、第1ファスナはヘッドギアストラップ等を永久的に保持するようになっていて、第2ファスナがヘッドギアストラップ等を取り外し自在に保持するようになっていてもよい。
【0057】
呼吸マスクアセンブリは、呼吸マスクと、使用時に呼吸マスクを患者の顔に保持するためのヘッドギアとを含んでいてもよい。ここでヘッドギアには、1以上の可撓性ストラップと、呼吸マスクの対応するファスナに着脱自在に取り付けられるようになった少なくとも1つのファスナと、が含まれている。この好適な実施形態においては対応するファスナは、首部分と拡大ヘッド部分とを有する第1ファスナと、第1ファスナの首部分を収納するための開口を画定する1以上の支持部材を有する第2ファスナとを備え、第1ファスナの拡大ヘッド部分が第2ファスナの1以上の支持部材に支持されるようになっている。この配置によって、確実でありながら容易に解放可能な取付け部が提供される。
【0058】
呼吸マスクアセンブリは患者の鼻のみを覆い、いわゆる鼻マスクアセンブリであってもよい。呼吸マスクアセンブリは患者の鼻と口の両方を覆い、いわゆるフルフェイス型マスクアセンブリであってもよい。
【0059】
呼吸マスクアセンブリは、患者の顔を実効的にシールしたままで、ガス供給源からの正圧を受けるようになっていてもよい。具体的には、シールクッションが患者の顔のシールを実効的に維持するように変形しながら、マスクシェルが患者の顔に対して相対的に、例えば患者の顔に近づく方向または離れる方向などに、移動可能であってよい。この動きは、少なくとも3mm、又は少なくとも6mm、又は少なくとも10mm、又は少なくとも15mmの範囲であってよい。したがってメンブレンは少なくとも3mm、又は少なくとも6mm、又は少なくとも10mm、又は少なくとも15mmだけマスクシェルから突出し得る。
【0060】
本発明の第3の態様によれば、呼吸マスクと、使用時に患者の顔に呼吸マスクを保持するためのヘッドギアとを備える、呼吸マスクアセンブリが提供される。ヘッドギアは1以上の可撓性ストラップと、呼吸マスクの対応するファスナに着脱自在に取り付けられるようになった少なくとも1つのファスナとを含み、対応するファスナは、首部分と拡大ヘッド部分とを有する第1ファスナと、第1ファスナの首部分を収納するための開口を画定する1以上の支持部材を有する第2ファスナとを備え、第1ファスナの拡大ヘッド部分は第2ファスナの1以上の支持部材に支持されるようになっている。
【0061】
第1ファスナは、第2ファスナの1以上の支持部材に当接するように適合された、拡大されたヘッドの当接面を含む。当接面は、第2ファスナの1以上の支持部材の当接面の形状に実質的に対応する形状、例えば実質的な嵌合形状、を有する。第1と第2ファスナの当接面は、例えば湾曲していてもよい。第1ファスナは一般的にT字型であってもよい。第1ファスナはヘッドギアの一部であり、ヘッドギアの可撓性ストラップに取り付けられていてもよい。
【0062】
第2ファスナは鉤形状を有し、これは第1ファスナを支える支持部材を形成する第1突出部と、第1ファスナの横移動を制限又は防止する第2及び第3突出部との少なくとも3つの突出部を有していてもよい。第2突出部又は第3突出部は、呼吸マスク又はヘッドギアへの取付け部を形成してもよい。第2ファスナは一般的にC字型であってもよい。第2ファスナは、例えばマスクシェルから延在する、呼吸マスクの一部であり、また、マスクシェルと一体的に形成されていてもよい。
【0063】
第1と第2ファスナは、ファスナを外すためにはこれらのファスナの相対回転移動を必要とするようになっていてもよい。これは、係合構成において第1ファスナの拡大ヘッド部分の横幅よりも小さい距離だけ離間した横支持部材を有する第2ファスナによって達成されてもよい。これによって、ファスナが偶然外れてしまうリスクが軽減される。
【0064】
第1と第2ファスナは、これらのファスナの相対回転移動だけでファスナが外れるようになっていて、使用時にファスナを迅速に取り外せるようになっていてもよい。これは、第1ファスナの前記拡大ヘッド部分を支える第2ファスナの1以上の支持部材の少なくとも1つの表面が、取り外し方向に対して斜めの角度となっており、ファスナを相対回転移動させると取り外し方向にファスナが分離することで達成されてもよい。例えば、ファスナが係合するときに第1ファスナの拡大ヘッド部分を支える第2ファスナの1以上の支持部材が、概ねV字型又は凹型の表面をなしてもよい。
【0065】
1以上の第1及び/又は第2ファスナはファスナ間の係合を改良するために、例えば熱弾性エラストマ(TPE)のような摩擦係数の大きい、別の材料で被覆されていてもよい。
【0066】
マスクシェルは額支持形成体を備えていてもよい。額支持形成体はマスクシェルと一体的に形成されていてもよい。額支持形成体はマスクシェルから外向きに延在していてもよい。額支持形成体はマスクシェルから実質的に長手方向外向きに延在していてもよい。額支持形成体は、使用時に鼻梁の位置となるようになったマスクシェルの隅から延在してもよいし、それが最も好ましい。
【0067】
額支持形成体は、患者の額領域に実質的に形状が一致するようになっていてもよい。額支持形成体は、マスクシェルの長手軸に対して斜めの角度となっていてもよい。額支持形成体は、実質的に細長い形状であって、例えば実質的に楕円形であってもよい。
【0068】
額支持形成体には額当てがあってもよい。額当ては、使用時に患者の額に載るようになっていてもよいし、及び/又はそのような形状となっていてもよい。これは直接載ってもよいし、額支持形成体に取り付けられたヘッドギアストラップ等の介在部品を介してでもよい。額当ては患者インタフェース部を含んでもよい。患者インタフェース部は弾性及び/又は可撓性の形成体を含んでいてもよい。弾性及び/又は可撓性の形成体は、患者の快適さを向上させ得る。
【0069】
額支持形成体は少なくとも1つの開口又は鉤を含んでもよい。この少なくとも1つ開口又は鉤はヘッドギアストラップ等を取り外し自在に受けるようになっていてもよい。
【0070】
額当ては額支持形成体に取り外し自在に取り付けられてもよい。こうして、額当ては、例えば異なるサイズの額当てと交換可能であって、頭の大きさ及び/又は形の違う患者に呼吸マスクアセンブリを適応できるようになっていてもよい。
【0071】
これとは別の実施形態において、額当ては額支持形成体に回転可能に取り付けられる。例えば額支持形成体は、額当ての接続形成体を回転可能に受けるための回転形成体を含んでもよい。額当ては長手軸又は横軸を中心に回転可能であってもよい。
【0072】
額当ては額支持形成体に対して第1と第2の構成の間を移動可能であってもよい。第1と第2の構成は、患者の額に当てられる額当ての厚さが違っていてもよい。こうして、額当ては様々な頭の大きさの患者に適応され得る。
【0073】
本発明の第4の態様によれば、マスクシェルとシールクッションを備え、マスクシェルの外面には眼鏡を支持できるようになった保持形成体を有する呼吸マスクアセンブリが提供される。
【0074】
マスクシェルの外面は、マスクシェルの凸面であってよい。眼鏡保持形成体はマスクシェルの外部表面から立ち上がっていてもよい。眼鏡保持形成体はマスクシェルの鼻梁領域に配置されていてもよい。眼鏡保持形成体は眼鏡を着脱自在に保持するためのリセスを備えていてもよい。眼鏡保持形成体はファスナを含み、これが眼鏡の少なくとも一部の周りに延在して、重力作用に抗して眼鏡を保持するようになっていてもよい。
【0075】
本発明の第5の態様によれば、上記の呼吸マスクアセンブリを備える呼吸システムが提供される。
【0076】
この呼吸器システムは、呼吸マスクアセンブリにガスを供給するためのガス供給源を備えていてもよい。ガス供給源は酸素及び/又は他の呼吸ガスを供給し得る。ガス供給源は、麻酔ガスのような麻酔薬を供給し得る。
【0077】
呼吸器システムは、呼吸ガスを呼吸マスクアセンブリに供給するための換気機を備えて、呼吸ガスが患者によって吸気されるようになっていてもよい。換気機は機械的換気機であってもよい。換気機は、呼吸サイクルの少なくとも一部において患者に正圧の換気を供給するように構成されていてもよい。換気機は、CPAPとしても知られている、連続的な正気道圧力を患者に供給するようになっていてもよい。このように、この呼吸器システムは、睡眠時無呼吸等を患っている患者を処置するように構成されていてもよい。
【0078】
本発明の実際的な実施形態を、添付図面を参照して以下でより詳細に説明する。