(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
特定された前記負荷が前記第1の負荷よりも大きい第2の負荷の場合であって、前記実回転数が前記目標回転数よりも高いときには、前記エンジン出力制御部は、前記実回転数と前記トルクとが、前記第1のエンジン出力トルクカーブ上で変化するように、前記エンジンの出力を制御する、請求項5に記載の作業車両。
エンジンと、作業機と、前記作業機を駆動する油圧アクチュエータと、前記油圧アクチュエータに対して前記エンジンの駆動により作動油を供給する油圧ポンプとを備えた作業車両におけるエンジン出力制御方法であって、
前記エンジンの実回転数を検出するステップと、
第1のエンジン出力トルクカーブを用いて前記エンジンの目標回転数を設定し、前記エンジンの出力を制御するステップとを備え、
前記エンジンの出力を制御するステップでは、
前記第1のエンジン出力トルクカーブを用いて得られる前記実回転数におけるトルクよりも高いトルクとなるように前記エンジンの出力を制御し、
検出された前記実回転数が前記目標回転数よりも低くなった場合、前記実回転数におけるトルクが前記第1のエンジン出力トルクカーブよりも大きいトルクを有する第2のエンジン出力トルクカーブを設定し、前記エンジンの出力の制御を、前記第1のエンジン出力トルクカーブを用いた制御から前記第2のエンジン出力トルクカーブを用いた制御に切り替え、
前記第1のエンジン出力トルクカーブと前記油圧ポンプのポンプ吸収トルク特性線との交点における前記エンジンの回転数を前記目標回転数とし、
前記交点を通る等馬力曲線に基づき、前記実回転数における前記等馬力曲線上の点を通るエンジン出力トルクカーブを前記第2のエンジン出力トルクカーブに設定する、エンジン出力制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、作業車両で用いられる複数のエンジン出力トルクカーブのうちの1つのエンジン出力トルクカーブに着目した場合、最大馬力を大きくするために最大馬力点(定格点)におけるトルクを高く設定すると、最大トルク点と最大馬力点とを結ぶラインの傾きが小さくなる。
【0007】
したがって、作業による負荷によってエンジン回転数が目標マッチング点の回転数(以下、「目標回転数」とも称する)よりも小さくなった場合、エンジン回転数を目標回転数に戻そうとする力は、上記ラインの傾きが大きい場合に比べて弱くなる。
【0008】
それゆえ、上記ラインの傾きが小さい場合には、上記ラインの傾きが大きい場合に比べて、エンジンの回転数の低下に歯止めがかかりにくい。その結果、上記ラインの傾きが小さい場合には、上記ラインの傾きが大きい場合に比べて、エンジンの回転数が低下してしまう可能性が高くなる。
【0009】
本発明は上記の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、最大馬力を高める設定にした場合であっても、エンジンの回転数が低下する可能性を低減することが可能な作業車両およびエンジン出力制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のある局面に従うと、作業車両は、エンジンと、第1のエンジン出力トルクカーブを用いてエンジンの目標回転数を設定し、エンジンの出力を制御するエンジン出力制御部と、エンジンの実回転数を検出する回転数検出部とを備える。エンジン出力制御部は、第1のエンジン出力トルクカーブを用いて得られる実回転数におけるトルクよりも高いトルクとなるようにエンジンの出力を制御する。
【0011】
上記の構成によれば、第1のエンジン出力トルクカーブによって規定されているトルクよりも、大きなトルクを一時的に出力することができる。したがって、第1のエンジン出力トルクカーブを用いている場合よりも、エンジンの回転数を目標回転数に戻そうとする力が大きくなる。それゆえ、作業車両によれば、最大馬力を高める設定にした場合であっても、エンジンの回転数が低下する可能性を低減することができる。
【0012】
好ましくは、エンジン出力制御部は、回転数検出部によって検出されたエンジンの実回転数が目標回転数よりも低くなった場合、実回転数におけるトルクが第1のエンジン出力トルクカーブよりも大きいトルクを有する第2のエンジン出力トルクカーブを設定し、エンジンの出力の制御を、第1のエンジン出力トルクカーブを用いた制御から第2のエンジン出力トルクカーブを用いた制御に切り替える。
【0013】
上記の構成によれば、エンジンの回転数が目標回転数よりも低下した場合、第2のエンジン出力トルクカーブを用いるため、第1のエンジン出力トルクカーブによって規定されているトルクよりも、大きなトルクを一時的に出力することができる。
【0014】
好ましくは、エンジン出力制御部は、実回転数が目標回転数よりも低くなったことを条件に、第2のエンジン出力トルクカーブを設定する。
【0015】
上記の構成によれば、エンジンの実回転数が目標回転数よりも低くなっても、エンジンの回転数が大幅に低下してしまうことを防止できる。
【0016】
好ましくは、エンジン出力制御部は、実回転数に基づき、エンジンの回転数が目標回転数よりも低くなるか否かを予測する。エンジン出力制御部は、エンジンの回転数が目標回転数よりも低くなると予測されたことを条件に、第2のエンジン出力トルクカーブを設定する。
【0017】
上記の構成によれば、エンジンの回転数が目標回転数よりも低くなる前に、第1のエンジン出力トルクカーブによって規定されているトルクよりも、大きなトルクを一時的に出力することができる。したがって、エンジンの回転数が目標回転数よりも低くなってしまうことを防止できる。
【0018】
好ましくは、作業車両は、作業機と、作業機を駆動する油圧アクチュエータと、油圧アクチュエータに対して、エンジンの駆動により作動油を供給する油圧ポンプとをさらに備える。エンジン出力制御部は、第1のエンジン出力トルクカーブと油圧ポンプのポンプ吸収トルク特性線との交点におけるエンジンの回転数を目標回転数とし、交点を通る等馬力曲線に基づき、実回転数における等馬力曲線上の点を通るエンジン出力トルクカーブを第2のエンジン出力トルクカーブに設定する。
【0019】
上記の構成によれば、第1のエンジン出力トルクカーブと油圧ポンプのポンプ吸収トルク特性線との交点における馬力と同じ馬力を得ることができる。
【0020】
好ましくは、エンジン出力制御部は、等馬力曲線を用いて、実回転数を目標回転数に近づける。
【0021】
上記の構成によれば、エンジンの回転数およびトルクが上記交点に近づくときに、回転数とトルクとは、等馬力の関係を維持する。したがって、等馬力の状態を維持せずにエンジンの回転数およびトルクが上記交点に近づく場合に比べて、作業性に優れる。
【0022】
好ましくは、作業車両は、作業車両によって行われる作業の負荷を特定する負荷特定手段をさらに備える。特定された負荷が第1の負荷の場合であって、実回転数が目標回転数よりも高いときには、エンジン出力制御部は、実回転数と当該実回転数におけるトルクとが、上記交点を通る等馬力曲線上で変化するように、エンジンの出力を制御する。
【0023】
上記の構成によれば、第1の負荷の作業が実行される場合には、上記交点を通過する等馬力曲線を利用することができる。ここで、等馬力曲線と第1のエンジン出力トルクカーブのドループ線(エンジンの最大回転数の点と最大馬力点とを結ぶ線)との交点における馬力は、第1のエンジン出力トルクカーブの最大馬力点よりも小さい。したがって、最大馬力点を使用する場合に比べて、燃費を低減することが可能となる。
【0024】
好ましくは、特定された負荷が第1の負荷よりも大きい第2の負荷の場合であって、実回転数が目標回転数よりも高いときには、エンジン出力制御部は、実回転数とトルクとが、第1のエンジン出力トルクカーブ上で変化するように、エンジンの出力を制御する。
【0025】
上記の構成によれば、第1の負荷の作業よりも負荷が大きい第2の負荷の作業が実行される場合には、第1のエンジン出力トルクカーブの最大馬力点を利用することができる。したがって、作業性を向上させることができる。
【0026】
好ましくは、作業車両は、操作レバーをさらに備える。負荷特定手段は、操作レバーが第1の操作を受け付けた場合には、作業の負荷を第1の負荷と特定し、操作レバーが第2の操作を受け付けた場合には、作業の負荷を第2の負荷と特定する。
【0027】
上記の構成によれば、作業車両は、操作レバーが第1の操作および第2の操作のいずれかを受け付けたかに応じて、作業の負荷が第1の負荷および第2の負荷のいずれであるかを特定することができる。
【0028】
好ましくは、負荷特定手段は、作動油の油圧が第1の値の場合には、作業の負荷を第1の負荷と特定し、作動油の油圧が第1の値よりも大きい第2の値の場合には、作業の負荷を前記第2の負荷と特定する。
【0029】
上記の構成によれば、作業車両は、作動油の油圧の値に基づき、作業の負荷が第1の負荷および第2の負荷のいずれであるかを特定することができる。
【0030】
本発明の他の局面に従うと、エンジン出力制御方法は、エンジンを備えた作業車両において実行される。エンジン出力制御方法は、エンジンの実回転数を検出するステップと、予め定められたエンジン出力トルクカーブを用いてエンジンの目標回転数を設定し、エンジンの出力を制御するステップとを備える。出力制御を行うステップでは、予め定められたエンジン出力トルクカーブを用いて得られる実回転数におけるトルクよりも高いトルクとなるようにエンジンの出力を制御する。
【0031】
上記の方法によれば、予め定められたエンジン出力トルクカーブによって規定されているトルクよりも、大きなトルクを一時的に出力することができる。したがって、第1のエンジン出力トルクカーブを用いている場合よりも、エンジンの回転数を目標回転数に戻そうとする力が大きくなる。それゆえ、エンジン出力制御方法によれば、最大馬力を高める設定にした場合であっても、エンジンの回転数が低下する可能性を低減することができる。
【発明の効果】
【0032】
上記の発明によれば、最大馬力を高める設定にした場合であっても、エンジンの回転数が低下する可能性を低減することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、実施の形態に係る作業車両について説明する。以下の説明では、同一部品には、同一の符号を付している。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0035】
<A.全体構成>
図1は、実施形態に基づく作業車両101の外観を説明する図である。
図1に示されるように、作業車両101として、本例においては、主に油圧ショベルを例に挙げて説明する。
【0036】
作業車両101は、走行体1と、旋回体3と、作業機4とを主に有している。作業車両本体は、走行体1と旋回体3とにより構成される。走行体1は、左右1対の履帯を有している。旋回体3は、走行体1の上部の旋回機構を介して旋回可能に装着される。
【0037】
作業機4は、旋回体3において、上下方向に作動可能に軸支されており、土砂の掘削などの作業を行う。作業機4は、ブーム5と、アーム6と、バケット7とを含む。ブーム5の基部は、旋回体3に可動可能に連結されている。アーム6は、ブーム5の先端に可動可能に連結されている。バケット7は、アーム6の先端に可動可能に連結されている。また、旋回体3は、運転室8等を含む。
【0038】
<B.運転室の構成>
図2は、運転室8の内部構成を示す斜視図である。
図2に示されるように、運転室8は、運転席9と、走行操作部10と、アタッチメント用ペダル15と、左右の側方窓16と、計器盤17と、作業機レバー18,19と、ロックレバー20と、モニタ装置21と、前方窓22と、縦枠23と、スロットルダイヤル39とを有する。
【0039】
運転席9は、運転室8の中央部に設けられる。走行操作部10は、運転席9の前方に設けられる。
【0040】
走行操作部10は、走行レバー11,12と、走行ペダル13,14とを含む。走行ペダル13,14は、各走行レバー11,12と一体に可動する。走行体1は、操作者が走行レバー11,12を前方に押すことにより前進する。また、走行体1は、操作者が走行レバー11,12を後方に引くことにより後進する。
【0041】
アタッチメント用ペダル15は、走行操作部10の近傍に設けられる。また、計器盤17は、
図2の右方の側方窓16の近傍に設けられる。
【0042】
作業機レバー18,19は、運転席9の左右側部に設けられた操作レバーである。作業機レバー18、19は、ブーム5の上下動、アーム6およびバケット7の回動、ならびに旋回体3の旋回操作等を行うものである。
【0043】
ロックレバー20は、作業機レバー18の近傍に設けられる。ロックレバー20は、作業機4の操作、旋回体3の旋回、および走行体1の走行等の機能を停止させるためのものである。ロックレバー20を垂直状態に位置させる操作(ここでは、ロックレバーの引き下げ操作)を行うことによって、作業機4等の動きをロック(規制)することができる。ロックレバー20によって作業機4等の動きがロックされた状態では、操作者が作業機レバー18,19を操作しても、作業機4等が動作しない。また、同様に走行レバー11,12と、走行ペダル13,14を操作しても走行体1は動作しない。一方、ロックレバー20を水平状態に位置させる操作(ここでは、ロックレバーの引き上げ操作)を行うことによって、作業機4等の動きのロック(規制)を解除することができる。これにより、作業機4等が動作可能となる。
【0044】
モニタ装置21は、運転室8の前方窓22と一方の側方窓16とを仕切る縦枠23の下部に設けられ、作業車両101のエンジン状態、ガイダンス情報、警告情報等を表示する。また、モニタ装置21は、作業車両101の種々の動作に関する設定指示を受け付け可能に設けられている。
【0045】
ここで、エンジン状態とは、例えば、エンジン冷却水の温度、作動油温度、燃料残量等である。ガイダンス情報とは、一例として作業車両のエンジン等の点検・整備を促す表示等である。警告情報とは、操作者に注意を喚起する必要のある情報である。
【0046】
スロットルダイヤル39は、燃料調整ダイヤルである。スロットルダイヤル39は、最大燃料噴射量を設定するために用いられる。スロットルダイヤル39の設定値により、エンジンの最大回転数が決定する。なお、スロットルダイヤル39は、無段階方式であってもよいし、複数段のノッチが設けられている構成であってもよく、特に限定されるものではない。
【0047】
<C.制御システムの構成>
図3は、作業車両101の制御システムの構成を示す簡略図である。
図3に示されるように、作業車両101の制御システムは、一例として、作業機レバー18,19、走行レバー11,12と、ロックレバー20と、モニタ装置21と、第1油圧ポンプ31Aと、第2油圧ポンプ31Bと、斜板駆動装置32と、コントロールバルブ34と、油圧アクチュエータ35と、エンジン36と、エンジンコントローラ38と、スロットルダイヤル39と、回転センサ40と、作業機レバー装置41と、圧力スイッチ42と、バルブ43と、ポテンショメータ45と、スタータスイッチ46と、圧力センサ47と、メインコントローラ50とを含む。
【0048】
第1油圧ポンプ31Aは、作業機4等の駆動に用いる作動油を吐出する。第2油圧ポンプ31Bは、作業機レバー18,19、走行レバー11,12の操作に応じた油圧(パイロット圧)を発生させるために利用される油を吐出する。第1油圧ポンプ31Aには、斜板駆動装置32が接続されている。
【0049】
斜板駆動装置32は、メインコントローラ50からの指示に基づいて駆動し、第1油圧ポンプ31Aの斜板の傾斜角度を変更する。第1油圧ポンプ31Aには、コントロールバルブ34を介して油圧アクチュエータ35が接続される。油圧アクチュエータ35は、ブーム用シリンダ、アーム用シリンダ、バケット用シリンダ、旋回用油圧モータ、および走行用油圧モータ等である。
【0050】
コントロールバルブ34は、作業機レバー装置41と接続される。作業機レバー装置41は、作業機レバー18,19,走行レバー11,12の操作方向および/または操作量に応じたパイロット圧をコントロールバルブ34に出力する。コントロールバルブ34は、当該パイロット圧に従って油圧アクチュエータ35を制御する。
【0051】
第2油圧ポンプ31Bには、作業機レバー18,19、走行レバー11,12とロックレバー20とが接続される。
【0052】
作業機レバー装置41には、圧力センサ47が接続される。圧力センサ47は、作業機レバー18,19,走行レバー11,12の操作状態に応じたレバー操作信号をメインコントローラ50に出力する。
【0053】
メインコントローラ50は、作業機レバー18,19に対するオペレータ操作に従って設定されるポンプ吸収トルク、スロットルダイヤル39等で設定されるエンジン回転数、および実際のエンジン回転数等に応じて、第1油圧ポンプ31Aがエンジン36の各出力点でのベストマッチングのトルクを吸収するような制御を行う。
【0054】
エンジン36は、第1油圧ポンプ31Aおよび第2油圧ポンプ31Bと接続する駆動軸を有する。
【0055】
エンジンコントローラ38は、メインコントローラ50からの指示に従い、エンジン36の動作を制御する。エンジン36は、一例としてディーゼルエンジンである。エンジン36のエンジン回転数は、スロットルダイヤル39等によって設定され、実際のエンジン回転数(「実回転数」とも称する)は回転センサ40によって検出される。回転センサ40は、メインコントローラ50と接続される。
【0056】
スロットルダイヤル39にはポテンショメータ45が設けられている。ポテンショメータ45は、スロットルダイヤル39の設定値(操作量)を検出する。スロットルダイヤル39の設定値は、エンジンコントローラ38およびメインコントローラ50に送信される。
【0057】
エンジンコントローラ38は、メインコントローラ50からの指示に従い燃料噴射装置が噴射する燃料噴射量等の制御を行うことにより、エンジン36の回転数を調節する。また、エンジンコントローラ38は、メインコントローラ50からの第1油圧ポンプ31Aに対する制御指示に従ってエンジン36のエンジン回転数を調節する。
【0058】
スタータスイッチ46は、エンジンコントローラ38と接続される。操作者がスタータスイッチ46を操作(スタートに設定)することにより、始動信号がエンジンコントローラ38に出力され、エンジン36が始動する。
【0059】
メインコントローラ50は、作業車両101全体を制御するコントローラであり、CPU(Central Processing Unit)、不揮発性メモリ、タイマ等により構成される。メインコントローラ50は、エンジンコントローラ38およびモニタ装置21等を制御する。なお、本例においては、メインコントローラ50と、エンジンコントローラ38とがそれぞれ別々の構成について説明しているが共通の1つのコントローラとすることも可能である。
【0060】
ロックレバー20には、圧力スイッチ42が接続されている。圧力スイッチ42は、ロックレバー20がロック側へ操作されたときにその操作を検知し、バルブ(ソレノイドバルブ)43へ信号を送る。これによって、バルブ43は、油の供給を遮断するので、作業機4の操作、旋回体3の旋回、および走行体1の走行等の機能を停止させることが可能となる。また、圧力スイッチ42は、メインコントローラ50にも同様の信号を送る。
【0061】
なお、作業機4、エンジン36、第1油圧ポンプ31A、油圧アクチュエータ35、回転センサ40は、それぞれ本発明の「作業機」、「エンジン」、「油圧ポンプ」、「油圧アクチュエータ」、「回転検出部」の一例である。
【0062】
<D.エンジン出力の制御>
(d1.制御の概要)
図4は、エンジン出力の制御の概要を説明するための図である。具体的には、
図4は、メインコントローラ50で実行される処理を説明するための図である。
【0063】
図4の状態(A)に示されるように、メインコントローラ50(詳しくは、後述するエンジン出力制御部54(
図7参照))は、エンジン出力トルクカーブLaを用いてエンジン36の目標回転数を設定し、エンジン36の出力を制御する。詳しくは、メインコントローラ50は、エンジン出力トルクカーブLaとポンプ吸収トルク特性線Pとを用いたエンジン回転数センシング制御を行う。具体的には、メインコントローラ50は、エンジン出力トルクカーブLaとポンプ吸収トルク特性線Pとの交点(以下、「目標マッチング点M」とも称する)におけるエンジンの回転数f0を目標回転数とし、目標マッチング点Mにおけるエンジンのトルクt0を目標トルクとした出力制御を行う。
【0064】
詳しくは、メインコントローラ50は、目標マッチング点Mにおいてエンジン36の出力トルクと油圧ポンプの吸収トルクとが一致(マッチング)され、目標マッチング点Mにおけるエンジン36の最大馬力を油圧ポンプ(例えば第1油圧ポンプ31A)が吸収することで、重掘削作業を高効率で行えるようにされている。さらに詳しくは、メインコントローラ50は、上記のように目標マッチング点Mにおけるエンジン36の出力トルク(t0)と回転数(f0)とを目標値とし、エンジンの目標回転数f0と実回転数との偏差を演算しながら油圧ポンプの吸収トルクを増減させて、目標マッチング点Mにおいてエンジンの出力トルクと油圧ポンプの吸収トルクとをマッチングさせる。このような制御は、既に公知の技術であるのでその詳細な説明については省略する。
【0065】
また、エンジン出力トルクカーブLaは、最大馬力を大きくするために最大馬力点Ka(定格点)と、最大トルク点Jaとを有する。エンジン出力トルクカーブLaにおいて、最大馬力点Kaにおけるトルクを高く設定すると、最大トルク点Jaと最大馬力点Kaとを結ぶ直線の傾きが小さくなる。それゆえ、作業による負荷によってエンジン回転数が目標回転数f0よりも小さくなった場合、エンジン回転数を目標回転数f0に戻そうとする力(エンジン36に対して自然に作用する力)は、上記直線の傾きが大きい場合に比べて弱くなる。
【0066】
なお、エンジン出力トルクカーブLaと回転数を表す横軸の交点における回転数fmは、負荷が抜けた場合に最大限上げられるエンジンの回転数(以下、「無負荷最大回転数fm」とも称する)を表している。また、
図4ではポンプ吸収トルク特性線Pは、少なくとも目標マッチング点を含む所定の回転数領域においては、単調増加関数になるように設定されている。
【0067】
作業車両101に大きな作業負荷が生じた場合、たとえば、
図4の状態(B)に示されるように、エンジン回転数(実回転数)が回転数f1まで低下すると(矢印91を参照)、メインコントローラ50は、
図4の状態(C)に示すとおり、最大トルク点Jbと最大馬力点Kbとを有し、かつ最大トルク点Jbと最大馬力点Kbとの間においてエンジン出力トルクカーブLaよりも大きいトルクを有するエンジン出力トルクカーブLbを設定する。詳しくは、メインコントローラ50は、回転センサ40によって検出されたエンジン36の回転数が目標回転数f0よりも低くなったことを条件に、エンジン出力トルクカーブLbを設定する。さらに詳しくは、メインコントローラ50は、周期的にエンジン36の回転数の情報を取得し、エンジン36の回転数が目標回転数f0よりも低くなったことが検出された場合に、エンジン出力トルクカーブLbを設定する。なお、回転センサ40によって検出されたエンジン36の回転数が目標回転数f0よりも閾値以上低くなったことを条件に、エンジン出力トルクカーブLbを設定するように、メインコントローラ50を構成してもよい。
【0068】
メインコントローラ50は、エンジン出力トルクカーブLbが設定されたことに基づき、エンジン36の出力の制御を、エンジン出力トルクカーブLaを用いた制御から、エンジン出力トルクカーブLbを用いた制御に一時的に切り替える。
【0069】
この場合、当該制御によって、現在の回転数f1において、出力点Eaにおけるトルクt1よりも高いトルクの出力が可能となる(矢印92を参照)。具体的には、メインコントローラ50は、出力点Eaと回転数が同じ値となる出力点Ebにおけるトルクt2をエンジン36から一時的に出力させることが可能となる。
【0070】
このように、回転数f1において出力されるトルクがトルクt1からトルクt2に上昇すると、エンジン36の回転数を目標マッチング点Mにおける目標回転数f0に戻そうとする力は、出力されるトルクをトルクt1から変化させなかった場合(すなわち、エンジン出力トルクカーブLbを設定しなかった場合)に比べて大きくなる。
【0071】
これにより、エンジン36の回転数が一時的に低下した場合であっても、エンジン36の回転数を回転数f1から目標回転数f0に復帰させることが可能になる。
【0072】
なお、エンジン36の回転数が目標回転数f0に復帰した場合、メインコントローラ50は、エンジン36の出力の制御を、エンジン出力トルクカーブLbを用いた制御から、エンジン出力トルクカーブLaを用いた制御に戻す。
【0073】
なお、エンジン出力トルクカーブLbでは、典型的には、最大トルク点Jbと最大馬力点Kbとを結ぶ線分の傾きが、エンジン出力トルクカーブLaにおける最大トルク点Jaと最大馬力点Kaとを結ぶ線分の傾きと同じ値となるように設定されている。
【0074】
また、エンジン出力トルクカーブLbの設定位置は特に限定されるものではない。詳しくは、最大トルク点Jbと最大馬力点Kbとを結ぶラインと、最大トルク点Jaと最大馬力点Kaとを結ぶラインとのトルク差は、特に限定されるものではない。より詳しくは、エンジン出力トルクカーブLaが設定されたときのスロットルダイヤルの設定値において最高トルクおよび最大馬力が出力可能なエンジン出力トルクカーブ(たとえば、
図6のエンジン出力トルクカーブLz)における最大トルク点と最大馬力点とを結ぶラインよりも、最大トルク点Jbと最大馬力点Kbとを結ぶラインのトルクが低ければ、エンジン出力トルクカーブLbの設定位置は特に限定されるものではない。
【0075】
なお、エンジン出力トルクカーブLaは、それぞれ本発明の「第1のエンジン出力トルクカーブ」の一例である。また、エンジン出力トルクカーブLbと後述するエンジン出力トルクカーブLcとは、本発明の「第2のエンジン出力トルクカーブ」の一例である。
【0076】
(d2.制御の詳細)
図4においては、エンジン出力制御の概要を説明した。以下では、
図5および
図6を参照して、作業車両101において行われるエンジン出力制御の詳細について説明する。詳しくは、等馬力曲線を用いた制御を説明する。より詳しくは、新たなエンジン出力トルクカーブの設定方法の一例を説明する。
【0077】
メインコントローラ50は、オペレータによって設定されたスロットルダイヤルの値(以下、「設定値」とも称する)を取得する。メインコントローラ50は、オペレータによって作業レバーが操作された場合、スロットルダイヤルの設定値と操作内容とに基づき、複数のエンジン出力トルクカーブの中から、使用するエンジン出力トルクカーブを取得する。具体的には、メインコントローラ50において、エンジン出力制御部がメモリ(詳しくは、後述するメモリ55(
図7参照))から、使用するエンジン出力トルクカーブを読み出す。
【0078】
以下では、説明の便宜上、メインコントローラ50が、スロットルダイヤルの値および操作内容に基づき、複数のエンジン出力トルクカーブから、
図4で示したエンジン出力トルクカーブLaを取得したものとして説明する。
【0079】
図5は、メインコントローラ50が記憶している複数のポンプ吸収トルク特性線を説明するための図である。
図5に示されるように、メインコントローラ50は、作業機レバー18,19に対する操作内容毎に、ポンプ吸収トルク特性線を記憶している。たとえば、操作A,B,C,…に対して、各々1つのポンプ吸収トルク特性線2001,2002,2003,…が規定されている。なお、作業機レバー18,19に対する操作に応じた作業が実行されるため、メインコントローラ50は、作業毎にポンプ吸収トルク特性線を有しているとも言える。
【0080】
操作Aとしては、たとえば、ブーム上げあるいはアーム掘削を行うための操作が挙げられる。操作Bとしては、たとえば、アームダンプを行うための操作が挙げられる。操作Cとしては、たとえば、旋回を行うための操作が挙げられる。
【0081】
オペレータによって作業機レバー18,19が操作された場合、メインコントローラ50は、操作内容に基づき、複数のエンジン出力トルクカーブ2001〜2003等の中から、使用するポンプ吸収トルク特性線を取得する。具体的には、メインコントローラ50において、エンジン出力制御部がメモリから、使用するポンプ吸収トルク特性線を読み出す。
【0082】
以下では、説明の便宜上、メインコントローラ50が、操作内容に基づき、複数のポンプ吸収トルク特性線から、
図4で示したポンプ吸収トルク特性線Pを取得したものとして説明する。
【0083】
図6は、エンジン出力の制御の詳細を説明するための図である。具体的には、
図6は、メインコントローラ50で実行される処理の詳細を説明するための図である。
【0084】
図6の状態(A)に示されるように、メインコントローラ50(詳しくは、後述するエンジン出力制御部54(
図7参照))は、エンジン出力トルクカーブLaとポンプ吸収トルク特性線Pとを用いたエンジン回転数センシング制御を行う。
【0085】
図6に示すエンジン出力トルクカーブLzは、スロットルダイヤルの設定値において最も高いトルクおよび最も高い馬力が出力可能なエンジン出力トルクカーブである。エンジン出力トルクカーブLaは、一例として、最大トルク点Jaと最大馬力点Kaとを結ぶ線分の傾きが、エンジン出力トルクカーブLzにおける最大トルク点Jzと最大馬力点Kzとを結ぶ線分の傾きと同じ値となるように設定されている。
【0086】
メインコントローラ50は、目標マッチング点Mを通る等馬力曲線Qを設定する。等馬力曲線Qは、エンジン出力トルクカーブLaと点Gで交わる。点Gにおけるエンジンの回転数f3は、目標回転数f0よりも高く、かつ無負荷最大回転数fmよりも低い。また、点Gにおける出力馬力および出力トルクは、それぞれ、最大馬力点Kaにおける出力馬力および出力トルクよりも小さい。
【0087】
等馬力曲線Qが設定された状態で作業車両101に大きな作業負荷が生じた場合、
図6の状態(B)に示されるように、エンジン回転数が回転数f1まで低下すると(矢印91を参照)、メインコントローラ50は、
図6の状態(C)に示すとおり、最大トルク点Jcと最大馬力点Kcとを有し、かつ最大トルク点Jcと最大馬力点Kcとの間においてエンジン出力トルクカーブLaよりも大きいトルクを有するエンジン出力トルクカーブLcを設定する。詳しくは、メインコントローラ50は、回転センサ40によって検出されたエンジン36の回転数が目標回転数f0よりも低くなったことを条件に、エンジン出力トルクカーブLcを設定する。具体的には、メインコントローラ50は、等馬力曲線Qと回転数f1において交わるエンジン出力トルクカーブを、エンジン出力トルクカーブLcとして設定する。なお、回転センサ40によって検出されたエンジン36の回転数が目標回転数f0よりも閾値以上低くなったことを条件に、エンジン出力トルクカーブLcを設定するように、メインコントローラ50を構成してもよい。
【0088】
なお、エンジン出力トルクカーブLcでは、エンジン出力トルクカーブLb(
図4参照)と同様、典型的には、最大トルク点Jcと最大馬力点Kcとを結ぶ線分の傾きが、エンジン出力トルクカーブLaにおける最大トルク点Jaと最大馬力点Kaとを結ぶ線分の傾きと同じ値となるように設定されている。
【0089】
この場合、メインコントローラ50による制御によって、状態(A)〜(C)に示すとおり、出力されるトルクをt0からt3に上昇させることが可能となる(矢印94を参照)。それゆえ、エンジン36の回転数を目標マッチング点Mにおける目標回転数f0に戻そうとする力は、出力されるトルクをt1からt3に変化させなかった場合に比べて大きくなる。
【0090】
メインコントローラ50は、トルクt3を出力させた後、エンジン36の回転数を目標回転数f0に自動的に戻すために、等馬力曲線Qを利用する。具体的には、メインコントローラ50は、等馬力曲線Qを用いて、エンジン36の回転数を目標回転数f0に近づける。詳しくは、メインコントローラ50は、エンジン36の回転数および出力トルクを等馬力曲線Q上で推移させ、エンジン36の回転数および出力トルクを目標マッチング点Mにおける目標回転数f0およびトルクt0に復帰させる。
【0091】
このため、
図6の状態(D)に示すように、メインコントローラ50は、エンジン36の回転数を回転数f1から目標回転数f0に上昇させることが可能となる(矢印95を参照)。
【0092】
特に、メインコントローラ50は、等馬力曲線Qを用いて、エンジン36の回転数を目標回転数f0に復帰させるため、当該復帰中においてエンジン36から等馬力の出力を行わせることができる。したがって、上記の構成によれば、エンジン36の回転数が低下してしまうことを防止することが可能となることに加えて、復帰中に出力馬力が変動する構成に比べてオペレータの操作性を向上させることが可能となる。
【0093】
以上のように、作業車両101においては、スロットルダイヤル39の設定値が設定され、かつ作業機レバー18,19に対する操作が特定された後であっても、利用するエンジン出力トルクカーブを逐次切り替える制御(ダイナミックトルク制御)が行われる。エンジン出力トルクカーブLa、エンジン出力トルクカーブLc、
図4に基づいて説明したエンジン出力トルクカーブLb、およびエンジン出力トルクカーブLzは、「ダイナミックトルクライン」とも称される。
【0094】
<E.機能的構成>
図7は、作業車両101の制御システムのメインコントローラ50を説明する機能ブロック図である。なお、以下の
図7に関する説明においては、説明の便宜上、新たに設定されるエンジン出力トルクカーブとして、
図6に示したエンジン出力トルクカーブLcを例に挙げて説明する。
【0095】
図7に示されるように、メインコントローラ50と、他の周辺機器との関係が示されている。ここでは、周辺機器として、作業機レバー18,19と、モニタ装置21と、エンジン36と、エンジンコントローラ38と、スロットルダイヤル39と、ポテンショメータ45と、スタータスイッチ46と、回転センサ40とが示されている。
【0096】
メインコントローラ50は、操作内容判定部51と、通知部53と、メモリ55と、エンジン出力制御部54と、ポンプ出力制御部56とを含む。エンジン出力制御部54は、負荷特定部541を有する。負荷特定部541については、後述する変形例(「<G.変形例>」)において説明する。
【0097】
通知部53は、モニタ装置21に対して、エンジン出力制御部54からの指示に従ってガイダンス情報を通知するように指示する。モニタ装置21は、入力部211と、表示部212と、表示制御部213とを含む。モニタ装置21の表示制御部213は、通知部53からの指示に従って表示部212に所定のガイダンス情報を表示する。
【0098】
操作内容判定部51は、オペレータによる作業機レバー18、19に対する操作内容を判定する。たとえば、操作内容判定部51は、オペレータによる操作に基づく作業が、上述した複数の操作A,B,C,…のうちの何れの操作であるかを判定する。操作内容判定部51は、判定結果をエンジン出力制御部54に出力する。
【0099】
メモリ55は、エンジン出力トルク制御およびポンプ吸収トルク制御に関する各種情報を格納する。具体的には、メモリ55は、エンジン出力トルクカーブおよびポンプ吸収トルク特性線に関する情報を格納する。詳しくは、メモリ55は、スロットルダイヤルの値と操作内容とに対応付けた形で、複数のエンジン出力トルクカーブを記憶している。また、メモリ55は、
図5に示したように、操作内容に対応付けた形で、複数のポンプ吸収トルク特性線を記憶している。
【0100】
エンジン出力制御部54は、操作内容判定部51からの操作内容の判定結果の入力を受ける。さらに、エンジン出力制御部54は、ポテンショメータ45からスロットルダイヤル39の設定値の情報を受け付ける。エンジン出力制御部54は、メモリ55に格納されている複数のエンジン出力トルクカーブの中から、上記判定結果と上記設定値の情報とに基づき、使用するエンジン出力トルクカーブを取得する。
【0101】
エンジン出力制御部54は、上述したように、エンジン出力トルクカーブLaを用いてエンジン36の目標回転数を設定し、エンジン36の出力を制御する。具体的には、エンジン出力制御部54は、取得したエンジン出力トルクカーブに従ってエンジン36を制御するようにエンジンコントローラ38に指示する。
【0102】
エンジンコントローラ38は、エンジン出力制御部54によって設定されたエンジン出力トルクカーブに従ってエンジン36を制御する。これにより、設定されたエンジン出力トルクカーブの特性に従ってエンジン36の回転数に基づくトルクがエンジン36から出力される。
【0103】
ポンプ出力制御部56は、操作内容判定部51からの操作内容の判定結果を受け付けて、メモリ55に格納されている複数のポンプ吸収トルク特性線の中から、上記判定結果に対応するポンプ吸収トルク特性線を取得する。
【0104】
ポンプ出力制御部56は、取得したポンプ吸収トルク特性線に従って油圧ポンプ(例えば第1油圧ポンプ31A)を制御する。具体的には、ポンプ出力制御部56は、操作内容に対応して設定されたポンプ吸収トルク特性線に従ってエンジンコントローラ38から入力されるエンジン回転数に従って油圧ポンプ(例えば第1油圧ポンプ31A)の斜板を制御する。
【0105】
また、ポンプ出力制御部56は、取得したポンプ吸収トルク特性線と、エンジン出力制御部54から出力されたエンジン出力トルクカーブとの交点である目標マッチング点Mを最大吸収トルク値を算出する。これにより、ポンプ出力制御部56は、油圧ポンプ(例えば第1油圧ポンプ31A)におけるトルク値が最大吸収トルク値を超えないように油圧ポンプの斜板を制御する。
【0106】
また、エンジン出力制御部54は、回転センサ40から、エンジン36の回転数(実回転数)の情報を取得する。エンジン出力制御部54は、メモリ55から取得したエンジン出力トルクカーブ(以下、説明の便宜上、「エンジン出力トルクカーブLa」とする)と油圧ポンプのポンプ吸収トルク特性線(以下、説明の便宜上、「ポンプ吸収トルク特性線P」とする)との交点(
図6における目標マッチング点M)におけるエンジン36の回転数を目標回転数とし、当該交点におけるエンジンのトルクを目標トルクとした出力制御を行う。
【0107】
回転センサ40によって検出されたエンジン回転数(実回転数)が目標回転数f0よりも低くなった場合、エンジン出力制御部54は、当該実回転数におけるトルクがエンジン出力トルクカーブLaよりも大きいトルクを有するエンジン出力トルクカーブLcを設定する。詳しくは、エンジン出力制御部54は、最大トルク点と最大馬力点との間において、エンジン出力トルクカーブLaよりもトルクが大きいエンジン出力トルクカーブLc(
図6の状態(C)を参照)を設定する。
【0108】
エンジン出力制御部54は、エンジン出力トルクカーブLcを設定すると、エンジン36の出力の制御を、エンジン出力トルクカーブLaを用いた制御からエンジン出力トルクカーブLcを用いた制御に一時的に切り替える。詳しくは、エンジン出力制御部54は、上記検出された回転数(たとえば、
図6における回転数f1)に対応するエンジン出力トルクカーブLc上におけるトルク(回転数f1の場合、トルクt3)をエンジン36から一時的に出力させる制御を行う。
【0109】
エンジン出力制御部54による上記の制御により、エンジン36の回転数を目標回転数f0に自然復帰させることが可能となる。これにより、エンジン36の回転数が大幅に低下してしまうことを防止することができる。
【0110】
<F.制御構造>
図8は、メインコントローラ50における処理の流れを説明するフローチャートである。具体的には、以下では、スロットルダイヤル39の設定値に応じて一意に決定する無負荷最大回転数の情報を基に、複数のエンジン出力トルクカーブの中から、使用するエンジン出力トルクカーブ(たとえば、エンジン出力トルクカーブLa)を決定する構成について説明する。
【0111】
ステップS1において、エンジン出力制御部54は、オペレータによって設定されたスロットルダイヤル39の設定値を判断する。ステップS2において、エンジン出力制御部54は、スロットルダイヤルの設定値に基づいて、無負荷最大回転数を特定する。ステップS3において、操作内容判定部51は、作業機レバー18,19に対する操作内容を判定する。具体的には、操作内容判定部51は、受け付けた操作が、複数の操作A,B,C,…のいずれに該当するかを判定する。
【0112】
ステップS4において、エンジン出力制御部54は、無負荷最大回転数と、操作内容判定部51による判定結果とに基づき、メモリ55の中から、1つのエンジン出力トルクカーブを読み出す。ステップS5において、ポンプ出力制御部56は、操作内容判定部51による判定結果に基づき、メモリ55の中から、1つのポンプ吸収トルク特性線を読み出す。
【0113】
ステップS6において、エンジン出力制御部54は、読み出したエンジン出力トルクカーブとポンプ吸収トルク特性線とによるマッチングパターンを生成する。詳しくは、エンジン出力制御部54は、メモリ55から読み出されたエンジン出力トルクカーブとポンプ吸収トルク特性線とを、同じ座標上のデータとして扱う。たとえば、エンジン出力制御部54は、
図6の状態(A)に示すような、エンジン出力トルクカーブLaとポンプ吸収トルク特性線Pとを組み合わせたデータを生成する。
【0114】
ステップS7において、エンジン出力制御部54は、生成されたマッチングパターンから目標マッチング点を決定する。ステップS8において、エンジン出力制御部54は、目標マッチング点におけるエンジン36の回転数とトルクとにより、作業馬力Hを算出する。具体的には、エンジン出力制御部54は、当該回転数にトルクを掛けることにより、作業馬力Hを算出する。
【0115】
ステップS9において、回転センサ40により検出されたエンジンの回転数f(たとえば、
図6の場合にはf1)と、作業馬力Hとから、要求トルクRを算出する。具体的には、以下の式(1)の演算を行う。ステップS9の処理によって、新たなエンジン出力トルクカーブ(たとえば、エンジン出力トルクカーブLc)が設定されることになる。
【0116】
R=H×4500/2/π/f … (1)
ステップS10において、エンジン出力制御部54は、検出されたエンジンの回転数と要求トルクRとに基づき、エンジン出力トルクカーブを新たに設定する。具体的には、エンジン出力制御部54は、ダイナミックトルクの設定値(%)を演算する。ステップS11において、エンジン出力制御部54は、演算により得られたダイナミックトルクの設定値を、エンジンコントローラ38に通知する。
【0117】
ステップS12において、メインコントローラ50は、エンジンを停止するためのオペレータ操作を受け付けたか否かを判断する。受け付けたと判断された場合(ステップS12においてYES)、メインコントローラ50は、一連の処理を終了する。受け付けていないと判断された場合(ステップS12においてNO)、エンジン出力制御部54は、ステップS13において、スロットルダイヤル39の設定値の判断処理(ステップS1の処理)から所定の時間が経過したか否かを判断する。典型的には、エンジン出力制御部54は、所定の時間として10msecが経過したか否かを判断する。
【0118】
経過していないと判断された場合(ステップS13においてNO)、エンジン出力制御部54は、処理をステップS13に戻す。経過したと判断された場合(ステップS13においてYES)、エンジン出力制御部54は、処理をステップS1に戻す。このように、メインコントローラ50は、所定の制御周期(たとえば、10msec)で一連の処理(ステップS1〜S13)を繰り返す。
【0119】
なお、ステップS4の代わりに、エンジン出力制御部54が、スロットルダイヤル39の設定値と操作内容とからエンジン出力トルクカーブを取得してもよい。この場合には、ステップS2の処理は不要となる。
【0120】
<G.変形例>
(g1.第1の変形例)
負荷の軽い作業では、最大馬力点における馬力(最大馬力)が必要でない場合もある。また、最大馬力を出さなければ、燃費が向上する。そこで、以下では、操作内容に応じて異なる制御を行う構成について説明する。詳しくは、負荷特定部541(
図7)を利用する構成について説明する。なお、以下では、説明の便宜上、エンジン出力制御部54によって、エンジン出力トルクカーブLaが選択されているものとして説明する。
【0121】
作業機レバー18,19は、少なくとも、第1の操作(たとえば、操作C)と第2の操作(たとえば、操作A)とを受け付ける。作業車両101は、作業機レバー18,19が第1の操作を受け付けた場合には、第1の作業(たとえば、旋回)を実行する。作業車両は、作業機レバー18,19が第2の操作を受け付けた場合には、第1の作業よりも負荷の多い第2の作業(たとえば、ブーム上げ)を実行する。このような構成を有する作業車両101における負荷特定部541の処理の内容について説明する。
【0122】
負荷特定部541は、操作内容判定部51から判定結果を受け取る。負荷特定部541は、当該判定結果に基づき、作業車両101によって行われる作業の負荷を特定する。たとえば、操作内容判定部51によって作業機レバー18,19が第1の操作を受け付けたと判定された場合には、負荷特定部541は、作業の負荷を第1の負荷と特定する。操作内容判定部51によって作業機レバー18,19が第2の操作を受け付けたと判定された場合には、負荷特定部541は、作業の負荷を第2の負荷と特定する。
【0123】
エンジン出力制御部54は、特定された負荷が第1の負荷の場合と第2の負荷の場合とで、以下に示すように、異なる制御を実行する。
【0124】
図9は、目標回転数f0から無負荷最大回転数fmまでの間において、エンジン出力制御部54が利用するライン(詳しくは、エンジン回転数とトルクとを規定するライン)を説明するための図である。
図9(A)は、作業車両101が負荷の大きい作業(たとえば、操作Aに基づく作業)を行う場合に、エンジン出力制御部54によって利用されるラインを説明するための図である。
図9(B)は、作業車両101が負荷の少ない作業(たとえば、操作Bまたは操作Cに基づく作業)を行う場合に、エンジン出力制御部54によって利用されるラインを説明するための図である。
【0125】
図9(A)に示すとおり、負荷の大きい作業が行われる場合(第2の負荷の場合)、エンジン出力制御部54は、目標回転数f0から無負荷最大回転数fmまでの間において、エンジン出力トルクカーブLaに沿った出力制御を行う。詳しくは、エンジン出力制御部54は、エンジン出力トルクカーブLaにおける最大馬力点Kaを利用した出力制御を行う。このような制御により、エンジン36は最大馬力を発揮できるため、作業性を向上させることができる。
【0126】
図9(B)に示すとおり、負荷の小さい作業が行われる場合(第1の負荷の場合)、エンジン出力制御部54は、目標回転数f0から点Gにおける回転数f3の間においては、等馬力曲線Qにそった出力制御を行う。なお、エンジン出力制御部54は、回転数f3から無負荷最大回転数fmまでの間においては、エンジン出力トルクカーブLaに沿った出力制御を行う。このような制御により、エンジン36はエンジン出力トルクカーブLaにおける最大馬力を発揮せずにすむため、燃費を高めることができる。
【0127】
図10は、
図9(A)および(B)に示した出力制御の流れを説明するためのフローチャートである。
図10に示すとおり、ステップS51において、操作内容判定部51は、作業機レバー18,19に対する操作内容を判定する。ステップS52において、エンジン出力制御部54は、判定された操作内容の作業が重負荷の作業であるか否かを判定する。具体的には、エンジン出力制御部54は、判定された操作内容が重負荷作業に分類された操作内容(たとえば、操作A)に該当するか否かを判定する。なお、上記の分類は、メインコントローラ50において予めなされている。
【0128】
重負荷作業であると判定された場合(ステップS52においてYES)、ステップS53において、エンジン出力制御部54は、目標マッチング点Mよりもエンジンの回転数が高い領域では、無負荷最大回転数と操作内容とに応じたエンジン出力トルクカーブLaを用いてエンジン36の回転数およびトルクを制御する。
【0129】
重負荷作業でないと判定された場合(ステップS52においてNO)、ステップS54において、エンジン出力制御部54は、目標マッチング点Mよりもエンジン36の回転数が高い領域においては、目標マッチング点Mを通る等馬力曲線Qを用いて、エンジン36の回転数およびトルクを制御する。詳しくは、エンジン出力制御部54は、目標回転数f0から点Gにおける回転数f3の間において、等馬力曲線Qにそった出力制御を行う。
【0130】
以上のように、作業車両101は、作業車両101によって行われる作業の負荷を特定する負荷特定部541を備える。負荷特定部541によって特定された負荷が第1の負荷よりも大きい第2の負荷の場合であって、実回転数が目標回転数f0よりも高いときには、エンジン出力制御部54は、実回転数とトルクとが、エンジン出力トルクカーブLa上で変化するように、エンジン36の出力を制御する。この構成によれば、第1の負荷の作業よりも負荷が大きい第2の負荷の作業が実行される場合には、作業車両101は、エンジン出力トルクカーブLaの最大馬力点Kaを利用することができる。したがって、作業性を向上させることができる。
【0131】
また、特定された負荷が第1の負荷の場合であって、実回転数が目標回転数f0よりも高いときには、エンジン出力制御部54は、実回転数とトルクとが、目標マッチング点Mを通る等馬力曲線Q上で変化するように、エンジン36の出力を制御する。この構成によれば、第2の負荷の作業より負荷の小さい第1の負荷の作業が実行される場合には、目標マッチング点Mを通過する等馬力曲線Qを利用することができる。ここで、等馬力曲線Qとエンジン出力トルクカーブLaのドループ線(エンジンの最大回転数の点と最大馬力点Kaとを結ぶ線)との交点Gにおける馬力は、エンジン出力トルクカーブLaの最大馬力点Kaよりも小さい。したがって、作業車両101は、最大馬力点Kaを使用する場合に比べて、燃費を低減することが可能となる。
【0132】
さらに、負荷特定部541は、作業機レバー18,19が第1の操作を受け付けた場合には、作業の負荷を第1の負荷と特定し、作業機レバー18,19が第2の操作を受け付けた場合には、作業の負荷を第2の負荷と特定する。この構成によれば、作業車両101は、作業機レバー18,19が第1の操作および第2の操作のいずれかを受け付けたかに応じて、作業の負荷が第1の負荷および第2の負荷のいずれであるかを特定することができる。
【0133】
(g2.第2の変形例)
上記第1の変形例においては、負荷特定部541は、作業機レバー18,19の操作内容に応じて負荷を特定した。しかしながら、負荷の特定方法は、これに限定されるものではない。負荷特定部541は、作動油の油圧に応じて、負荷を特定してもよい。
【0134】
たとえば、第1油圧ポンプ31Aによって出力された作動油の圧力が予め定められた閾値未満の場合、作業の負荷を第1の負荷と特定し、第1油圧ポンプ31Aによって出力された作動油の圧力が当該閾値以上の場合、作業の負荷を第2の負荷と特定するように、負荷特定部541を構成することができる。
【0135】
あるいは、油圧アクチュエータ35内の作動油の圧力を検出し、当該圧力と予め定められた閾値とを比較して負荷を特定するようにしてもよい。
【0136】
(g3.第3の変形例)
実施の形態においては、回転センサ40によって検出された回転数が目標回転数よりも低くなったことを条件に、エンジン出力制御部54が、現在利用しているエンジン出力トルクカーブ(たとえば、エンジン出力トルクカーブLa)よりもトルクの高いエンジン出力トルクカーブ(たとえば、エンジン出力トルクカーブLb,Lc)を新たに設定する構成を例に挙げて説明した。しかしながら、これに限定されず、回転センサ40によって検出された回転数が目標回転数f0よりも低くなる前に、現在利用しているエンジン出力トルクカーブよりもトルクの高いエンジン出力トルクカーブを新たに設定するように、エンジン出力制御部54を構成してもよい。
【0137】
具体的には、エンジン出力制御部54は、検出された回転数(実回転数)に基づき、エンジン36の回転数が目標回転数f0よりも低くなるか否かを予測する。典型的には、エンジン出力制御部54は、エンジン回転数の単位時間当たりの低下量を判断し、次の制御周期においてエンジン36の回転数が目標回転数f0よりも低くなるか否かを予測する。エンジン出力制御部54は、エンジン36の回転数が目標回転数よりも低くなると予測されたことを条件に、現在利用しているエンジン出力トルクカーブトルクよりもトルクの高いエンジン出力トルクカーブを新たに設定する。
【0138】
上記の構成によれば、エンジン36の回転数が目標回転数f0よりも低くなる前に、新たなエンジン出力トルクカーブを設定しておくことが可能となる。したがって、エンジン36の回転数が目標回転数f0よりも低くなった後に新たなエンジン出力トルクカーブを設定する構成に比べて、エンジン36の回転数を目標回転数に迅速に近づけることが可能となる。
【0139】
(g4.第4の変形例)
実施の形態においては、式(1)に示したように、作業馬力Hから要求トルクRを求めたが、これに限定されるものではない。ファン馬力H1および補機(たとえば、オイルネータ、エアーコンディショナ)の動作に要する馬力H2を考慮して、要求トルクRを算出するように、エンジン出力制御部54を構成してもよい。具体的には、以下の式(2)の演算によって、要求トルクRを算出すればよい。
【0140】
R=(H+H1+H2)×4500/2/π/f … (2)
なお、実施の形態の作業車両101の構成に対して、上述した複数の変形例(第1の変形例、第2の変形例、第3の変形例、第4の変形例)の少なくとも2つを適宜組み合わせてもよい。
【0141】
(g5.第5の変形例)
上記の実施の形態においては、たとえば
図6に示されるように、エンジン出力制御部54は、回転センサ40によって検出された実回転数が目標回転数よりも低くなった場合、実回転数におけるトルクがエンジン出力トルクカーブLa(第1のエンジン出力トルクカーブ)よりも大きいトルクを有するエンジン出力トルクカーブLc(第2のエンジン出力トルクカーブ)を設定し、エンジンの出力の制御を、エンジン出力トルクカーブLaを用いた制御からエンジン出力トルクカーブLcを用いた制御に切り替えた。
【0142】
しかしながら、エンジン出力制御部54は、必ずしも、エンジン出力トルクカーブLcを設定する必要はない。エンジン出力制御部54は、目標マッチング点Mを通る等馬力曲線Q(
図6参照)を利用して、エンジンのトルクを高めてもよい。具体的には、エンジン出力トルクカーブLaを用いて得られる実回転数におけるトルクよりも高いトルクとなるようにエンジンの出力を制御するように、エンジン出力制御部54を構成してもよい。
【0143】
このような構成の場合であっても、エンジン出力トルクカーブLaによって規定されているトルクよりも、大きなトルクを一時的に出力することができる。したがって、エンジン出力トルクカーブLaを用いている場合よりも、エンジンの回転数を目標回転数に戻そうとする力が大きくなる。それゆえ、作業車両101によれば、最大馬力を高める設定にした場合であっても、エンジンの回転数が大幅に低下してしまうことを防止できる。
【0144】
今回開示された実施の形態は例示であって、上記内容のみに制限されるものではない。本発明の範囲は請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。