(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記封止部は、少なくとも一部がトランスファーモールド成型による樹脂層によって封止されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のパワーモジュール。
前記スナバ回路は、樹脂で封止され、前記樹脂から露出した端子が前記正側電力端子および前記負側電力端子と直接接続されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のパワーモジュール。
前記正側電力端子および前記負側電力端子を導通する電流の電流振動の時定数は、それぞれ5μs以下であるであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のパワーモジュール。
前記スナバ抵抗の抵抗値は、前記正側電力端子および前記負側電力端子を導通する電流のピーク値を実質的に最小化可能な抵抗値であることを特徴とする請求項7に記載のパワーモジュール。
前記正側電力端子および前記負側電力端子を導通する電流の電流振動の時定数は、それぞれ5.0μs以下であることを特徴とする請求項13または14に記載のパワーモジュール。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、図面を参照して、実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0016】
また、以下に示す実施の形態は、技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この実施の形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0017】
[基本技術]
基本技術に係るパワーモジュール1Aを備えるパワー回路2Aであって、ハーフブリッジ回路の模式的回路構成は、
図1に示すように表される。
【0018】
基本技術に係るパワーモジュール1Aを備えるパワー回路2Aは、
図1に示すように、複数のSiC−絶縁ゲート電界効果トランジスタ(SiC−MOSFET:SiC−Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)Q1・Q2によって構成されたブリッジ回路とブリッジ回路の両端に跨るように接続された内蔵コンデンサC1とを有するブリッジ部3と、ブリッジ部3の両端にそれぞれ一端が接続され、他端が外部に露出した電力端子P・Nと、電力端子P・Nの露出された側に跨るように並列に接続された平滑コンデンサC2とを備える。
【0019】
基本技術に係るパワーモジュール1Aを備えるパワー回路2Aにおいては、
図1に示すように、SiC−MOSFET Q1のソースS1およびSiC−MOSFET Q2のドレインD2が電気的に接続されてハーフブリッジ回路が構成されている。SiC−MOSFET Q1・Q2のゲートG1・G2、ソースセンスSS1・SS2は、外部取り出しのゲート端子GT1・GT2、ソースセンス端子SST1・SST2に接続されている。SiC−MOSFET Q1のドレインD1は、電力端子Pに接続され、SiC−MOSFET Q2のソースS1は、電力端子Nに接続されている。また、SiC−MOSFET Q1のソースS1およびSiC−MOSFET Q2のドレインD2は、出力端子OUTに接続されている。また、SiC−MOSFET Q1のドレインD1・SiC−MOSFET Q2のソースS1間には、内蔵コンデンサC1が接続され、出力端子OUTと電力端子P間には負荷リアクトルLが外部接続され、電力端子P・N間には、電源Eが外部接続されている。
【0020】
ここで、
図1において、電源Eに400Vを印加してローサイド側のSiC−MOSFET Q2を動作させ、負荷電流470Aでのターンオフ/ターンオンを行ったシミュレーション結果は
図2および
図3に示すように表される。すなわち、ハイサイド側の第1SiC−MOSFET Q1のゲート端子GT1・ソースセンス端子SST1間を短絡し、ローサイド側の第2SiC−MOSFET Q2のゲート端子GT2・ソースセンス端子SST2間にゲート抵抗R
Gを介してパルス電圧を印加した場合のデバイス部を導通する電流IdL1・IdH1の動作波形のシミュレーション結果は、
図2に示すように表され、電力端子P・Nを導通する電流IdH2・IdL2の動作波形のシミュレーション結果は、
図3に示すように表される。
【0021】
図1に示される負荷リアクトルLのスイッチングシミュレーションにおいて、内蔵コンデンサC1の効果を確認したところ、SiC−MOSFET Q1・Q2自身に掛かる電圧、電流サージが大きく改善されることが確認された。
【0022】
一方で、
図3に示すように、電力端子P・Nに流入、または流出する電流(IdH2・IdL2)がローサイド側のSiC−MOSFET Q2がスイッチング動作をする瞬間に大きく振動する現象が見い出された。この電流振動は実測においても確認されている。このような振動現象は、パワー回路2Aのデバイス部ではなく電力端子P・Nにおいて観測される現象である。
【0023】
基本技術に係るパワーモジュール1Aを備えるパワー回路2Aにおいて、ローサイド側SiC−MOSFET Q2のターンオン時のスイッチング動作の説明図は、
図4に示すように表され、ローサイド側SiC−MOSFET Q2のターンオフ時のスイッチング動作の説明は、
図5に示すように表される。
【0024】
ローサイド側SiC−MOSFET Q2がターンオンした直後の振動現象は、
図4に示すように、内蔵コンデンサC1が負荷電流を供給する担い手となって電荷を放出し、電圧降下した分が外部回路から補充される際に、内蔵コンデンサC1と外部回路の間でリンギングが発生するためである。
【0025】
一方、ローサイド側SiC−MOSFET Q2がターンオフした直後の振動現象は、
図5に示すように、ハイサイド側SiC−MOSFET Q1に流入した負荷電流が内蔵コンデンサC1と外部回路を通る経路で流れたために内蔵コンデンサC1に余剰電荷が溜まり、それを放出する過程で内蔵コンデンサC1と外部回路の間でリンギングが発生するためである。
【0026】
このような振動現象は、SiC−MOSFET Q1・Q2のデバイス部の電圧、電流波形には現れず、スイッチング損失やアバランシェ降伏、ゲート・ドレイン間帰還容量への電流流入に起因するゲート誤動作は抑制できる。一方、電力端子P・Nの周辺に発生する大きな電流電圧振動は、ノイズとなって制御回路の誤動作を誘発する。また、平滑コンデンサC2の電圧が安定しない状態でスイッチを行うと予期せぬ大きな電圧をスイッチする危険があり、スイッチング損失が増加して高周波動作の障害にもなる。後者については特に高周波動作によってパッシブ素子を小型化することでシステム全体の小型軽量低コスト化を阻害する要因になる。この問題は小型で高速スイッチング・高周波・大電流動作させることができるSiC系半導体素子を使ったパワー回路においてより深刻になるため、ブリッジ部3内に内蔵コンデンサC1を搭載するだけでは不十分である。
【0027】
[実施の形態]
実施の形態に係るパワーモジュール1を備えるパワー回路2であって、ハーフブリッジ回路の模式的回路構成は、
図6に示すように表される。なお、実施の形態に係るパワーモジュール1を備えるパワー回路2は、ハーフブリッジ回路に限定されず、フルブリッジ回路、或いは3相ブリッジ回路などにおいても適用可能である。
【0028】
実施の形態に係るパワーモジュール1を備えるパワー回路2は、
図6に示すように、複数のSiCMOSFET Q1・Q2によって構成されたブリッジ回路とブリッジ回路の両端に跨るように接続された内蔵コンデンサC1とを有するブリッジ部3と、ブリッジ部3の両端にそれぞれ一端が接続され、他端が外部に露出した電力端子P・Nと、電力端子P・Nの露出された側に跨るように直列接続されたスナバ回路4とを備える。
【0029】
また、実施の形態に係るパワー回路2は、
図6に示すように、スナバ回路4に並列に接続された平滑コンデンサC2を備えていても良い。
【0030】
また、スナバ回路4は、直列接続されたスナバコンデンサCBとスナバ抵抗RBとを備えていても良い。
【0031】
また、ブリッジ部3は、ハーフブリッジ回路、フルブリッジ回路、もしくは3相ブリッジ回路のいずれかを備えていても良く、内蔵コンデンサC1は複数のブリッジ毎に別々のコンデンサを接続していても良い。
【0032】
実施の形態に係るパワーモジュール1を備えるパワー回路2において、主に負荷電流用の電荷放出または負荷電流の流入によって電荷過不足が発生した内蔵コンデンサC1は、平滑コンデンサC2などと共振を起こす。さらに、ブリッジ部3の両端間に接続されたスナバ回路4により形成される閉ループの中で共振が発生し、スナバ回路4のスナバ抵抗RBでエネルギーが消費され振動が収束する。通常、RCスナバ回路は1スイッチ素子に並列に接続する形で使われるが、実施の形態に係るパワー回路2においては、スナバ回路4はブリッジ部3に並列に挿入されることで、ブリッジ部3の両端間に発生する電流振動を急速に抑制可能である。
【0033】
これにより、大電流を供給する平滑コンデンサC2や電源電圧を供給する電源Eの内部インピーダンスを増加させずにリンギングが素早く収束させることができ、ノイズを低減可能である。また、平滑コンデンサC2の両端の電圧が急速に安定化するため、実施の形態に係るパワー回路2においては、高周波動作が可能になる。
【0034】
実施の形態に係るパワーモジュール1を備えるパワー回路2においては、
図6に示すように、SiC−MOSFET Q1のソースS1およびSiC−MOSFET Q2のドレインD2が電気的に接続されてハーフブリッジ回路が構成されている。SiC−MOSFET Q1・Q2のゲートG1・G2、ソースセンスSS1・SS2は、外部取り出しのゲート端子GT1・GT2、ソースセンス端子SST1・SST2に接続されている。SiC−MOSFET Q1のドレインD1は、電力端子Pに接続され、SiC−MOSFET Q2のソースS2は、電力端子Nに接続されている。また、SiC−MOSFET Q1のソースS1およびSiC−MOSFET Q2のドレインD2は、出力端子OUTに接続されている。また、SiC−MOSFET Q1のドレインD1・SiC−MOSFET Q2のソースS2間には、内蔵コンデンサC1が接続され、電力端子P・N間には、スナバコンデンサCB・スナバ抵抗RBの直列回路からなるスナバ回路4および平滑コンデンサC2が外部接続されている。また、出力端子OUTと電力端子P間には負荷リアクトルLが接続され、電力端子P・N間には、電源Eが供給される。
【0035】
ここで、数値例として、内蔵コンデンサC1の値は、例えば、1μFであり、平滑コンデンサC2の値は、例えば、125μFであり、電源Eの値は、例えば、約400Vである。また、スナバコンデンサCBの値は、内蔵コンデンサC1の10倍以上が望ましく、例えば、10μFである。また、スナバ抵抗RBの値には、電力端子P・Nを導通する電流IdH2・IdL2のピーク値IdH2P・IdL2Pを実質的に最小化可能な抵抗値が存在し、例えば、上記条件においては約40mΩである。
【0036】
図6において、電源Eに400Vを印加してローサイド側のSiC−MOSFET Q2を動作させ、負荷電流470Aでのターンオフ/ターンオンを行ったシミュレーション結果は
図7および
図8に示すように表される。すなわち、ハイサイド側の第1SiC−MOSFET Q1のゲート端子GT1・ソースセンス端子SST1間を短絡し、ローサイド側の第2SiC−MOSFET Q2のゲート端子GT2・ソースセンス端子SST2間にゲート抵抗R
Gを介してパルス電圧を印加した場合の電力端子P・Nを導通する電流IdL2・IdH2の動作波形のシミュレーション結果は、
図7および
図8に示すように表される。ここで、
図7は、RCスナバ回路(RB・CB)が接続されていない場合の電力端子P・Nを導通する電流IdH2・IdL2の動作波形例に対応し、
図8は、RCスナバ回路(RB・CB)を接続した場合の電力端子P・Nを導通する電流IdH2・IdL2の動作波形例に対応する。
【0037】
また、電力端子P・Nを導通する電流IdH2・IdL2の電流振動の時定数τH・τLは、
図7および
図8中の破線で示される包絡線の減衰時定数によって求めることができる。
【0038】
また、電源Eに400Vを印加してローサイド側のSiC−MOSFET Q2を動作させ、負荷電流470Aでのターンオフ/ターンオンを行った場合をシミュレーションした際のドレイン・ソース間サージ電圧V
DSRGのピーク値の比較例は、
図9に示すように表される。すなわち、
図9において、Aは、内蔵コンデンサC1がない場合のドレイン・ソース間サージ電圧V
DSRGを表し、例えば、700V以上の値が得られている。これに対して、Bは、内蔵コンデンサC1が有り、かつスナバ回路(RB・CB)がない場合のドレイン・ソース間サージ電圧V
DSRGを表し、例えば、約500Vの値が得られている。また、Cは、内蔵コンデンサC1が有り、かつスナバ回路(RB・CB)が有る場合のドレイン・ソース間サージ電圧V
DSRGを表し、例えば、約500Vの値が得られている。
【0039】
また、電力端子P・Nを導通する電流IdH2・IdL2のドレイン・ソース間サージ電流I
DSRGのピーク値IdH2P・IdL2Pおよび電流IdH2・IdL2の電流振動の時定数τH・τLの比較例は、
図10に示すように表される。ずなわち、
図10において、Dは、内蔵コンデンサC1が有り、かつスナバ回路(RB・CB)がない場合に対応し、Eは、内蔵コンデンサC1が有り、かつスナバ回路(RB・CB)が有る場合に対応している。
【0040】
内蔵コンデンサC1が有り、かつスナバ回路(RB・CB)がない場合には、電力端子P・Nを導通する電流IdH2・IdL2のドレイン・ソース間サージ電流I
DSRGのピーク値IdH2P・IdL2Pは、例えば、約800A・約790Aであり、電流IdH2・IdL2の電流振動の時定数τH・τLは、例えば、約6.1μs・約6.2μsである。
【0041】
一方、内蔵コンデンサC1が有り、かつスナバ回路(RB・CB)が有る場合には、電力端子P・Nを導通する電流IdH2・IdL2のドレイン・ソース間サージ電流I
DSRGのピーク値IdH2P・IdL2Pは、例えば、約740A・約730Aであり、電流IdH2・IdL2の電流振動の時定数τH・τLは、例えば、約1.5μs・約1.5μsである。
【0042】
また、
図6において、電力端子P・Nを導通する電流IdH2・IdL2のピーク値IdH2P・IdL2Pのスナバ抵抗RB依存性は、
図11に示すように表される。
図11においては、誘導負荷で400V/470Aをスイッチングしており、スナバ回路4−平滑コンデンサC2間の寄生インダクタンスL
ppの値は、例えば、約15nH、寄生容量C
ppの値は、例えば、約9.3μFである。
【0043】
図11に示すように、スナバ抵抗RBの値が、例えば、数mΩ程度と小さい場合には、電力端子P・Nを導通する電流IdH2・IdL2の振動を効果的に減衰することができず、ピーク値IdH2P・IdL2Pは、相対的に大きな値を示している。一方、スナバ抵抗RBの値が、例えば、1000mΩ程度と大きい場合には、開放状態に近くなるため、スナバ回路4が機能せず、ピーク値IdH2P・IdL2Pは、相対的に大きな値を示している。したがって、
図11に示すように、スナバ抵抗RBの値には、ピーク値IdH2P・IdL2Pを実質的に最小化する抵抗値が存在しており、上記の数値例を有する
図6の回路例では、スナバ抵抗RBは40mΩが最適値に近い値であることがわかる。
【0044】
図9・
図10に示すように、スナバ回路4をブリッジ部3の電力端子P・N間に外部接続することで、デバイス部に掛かるドレイン-ソース間電圧のサージ量をほとんど変えずにブリッジ部3に内蔵コンデンサC1を内蔵させた場合でも電力端子P・Nに流れる電流の振動を素早く収束させることができ、ノイズの低減および高周波動作を可能にしている。
【0045】
実施の形態に係るパワーモジュール1を備えるパワー回路2において、スナバ回路4のスナバコンデンサCBの容量が小さすぎると急峻な立ち上がりをする電流に対してのインピーダンスが高くなり、電流経路にならなくなってしまうため、スナバコンデンサCBの容量は、内蔵コンデンサC1の容量以上であることが望ましい。
【0046】
また、実施の形態に係るパワーモジュール1を備えるパワー回路2において、スナバ回路4のスナバ抵抗RBの抵抗値は小さすぎるとリンギングの時定数が長くなって振動を減衰させる効果が得られず、大きすぎると電流が別の経路を流れるためやはり振動を減衰させる効果が得られない。
【0047】
スナバ抵抗RBの抵抗値は、リンギングが発生する閉ループの中でもスナバ回路4と平滑コンデンサC2の閉ループにおける寄生容量C
ppと寄生インダクタンスL
ppから表される特性インピーダンスZ
o=(L
pp/C
pp)
1/2に近い値を取ることが望ましい。例えば、寄生インダクタンスL
ppが15nH、寄生容量C
ppが9.3μFの閉ループであれば、抵抗値は約40mΩの特性インピーダンスZ
oとなる。これにより平滑コンデンサC2とスナバ回路4間で発生する電流振動がブリッジ部3側に与える影響を低減し、電流サージを抑制可能である。
【0048】
実施の形態によれば、低寄生インダクタンスと低ノイズを両立させたパワーモジュールおよびパワー回路を提供することができる。
【0049】
(変形例)
実施の形態の変形例に係るパワーモジュール1を備えるパワー回路2であって、ハーフブリッジ回路の模式的回路構成は、
図12に示すように表される。なお、実施の形態の変形例に係るパワーモジュール1を備えるパワー回路2においても、ハーフブリッジ回路に限定されず、フルブリッジ回路、或いは3相ブリッジ回路などにおいても適用可能である。
【0050】
実施の形態の変形例に係るパワーモジュール1を備えるパワー回路2は、
図12に示すように、複数のSiCMOSFET Q1・Q2によって構成されたブリッジ回路とブリッジ回路の両端に跨るように接続された内蔵コンデンサC1とを有するブリッジ部3と、ブリッジ部3の両端にそれぞれ一端が接続され、他端が外部に露出した電力端子P・Nと、電力端子P・Nの露出された側に跨るように直列接続されたスナバ回路4とを備える。
【0051】
また、実施の形態の変形例に係るパワーモジュール1を備えるパワー回路2は、
図12に示すように、スナバ回路4に並列に接続された平滑コンデンサC2を備えていても良い。
【0052】
実施の形態の変形例に係るパワーモジュール1を備えるパワー回路2において、スナバ回路4は、
図12に示すように、直列接続されたスナバコンデンサCBとスナバ抵抗RBとを備え、さらに、スナバ抵抗RBに並列接続された並列コンデンサCPを備えていても良い。
【0053】
また、ブリッジ部3は、ハーフブリッジ回路、フルブリッジ回路、もしくは3相ブリッジ回路のいずれかを備えていても良く、内蔵コンデンサC1は複数のブリッジ毎に別々のコンデンサを接続していても良い。
【0054】
実施の形態の変形例に係るパワーモジュール1を備えるパワー回路2は、スナバ回路4を構成するスナバ抵抗RBに並列に接続された並列コンデンサCPを備える。その他の構成は、実施の形態と同様である。
【0055】
実施の形態の変形例に係るパワーモジュール1を備えるパワー回路2においては、スナバ回路4のスナバ抵抗RBに並列に並列コンデンサCPを挿入することで、スイッチング直後の電流変化が大きい瞬間にはスナバ抵抗RBではなく並列コンデンサCPを通して電流が流れることで、特にスイッチング直後のスナバ回路4のインピーダンスを見かけ上低くすることができる。
【0056】
これにより、スナバ回路4が負荷電流の供給源を一部負担することができ、内蔵コンデンサC1からの電流流出量を低減させて、内蔵コンデンサC1への再充電時に発生する電流サージを低減化することができる。
【0057】
実施の形態の変形例に係るパワーモジュール1を備えるパワー回路2において、スナバ回路4および並列コンデンサCPを接続した場合の電力端子P・Nを導通する電流IdH2・IdL2の動作シミュレーション波形例は、
図13に示すように表される。
【0058】
また、電力端子P・Nを導通する電流IdH2・IdL2のピーク値IdL2P・IdH2Pの比較例は、
図14に示すように表される。すなわち、
図14において、Fは、並列コンデンサCPがない場合のピーク値IdH2P・IdL2Pを表し、例えば、約735A・約725Aの値が得られている。一方、Gは、並列コンデンサCPが有る場合のピーク値IdH2P・IdL2Pを表し、例えば、約710A・約695Aの値が得られている。
【0059】
図12に示すように、スナバ回路4のスナバ抵抗RBに並列に並列コンデンサCPを入れると、スイッチングの瞬間に電流が急峻に変化する際、スナバ回路4に流れ込む電流はスナバ抵抗RBではなく並列コンデンサCPを流れるため、見かけ上インピーダンスが低くすることができる。これにより並列コンデンサCPが負荷電流の供給源の役割を大きく担うようになることで、内蔵コンデンサC1からの電荷流出が抑制され、
図13に示すように、電流サージのピーク値が低下し、リンギングの収束もさらに早めることができる。
【0060】
このときのスナバ抵抗RBの抵抗値は、並列接続された並列コンデンサCPによって合成インピーダンスが低下する。このため、実施の形態に係るパワー回路2におけるスナバ抵抗RBの値に比べ、実施の形態の変形例に係るパワー回路2におけるスナバ抵抗RBの値は、適宜増加された抵抗値を有していても良い。
【0061】
実施の形態の変形例によれば、低寄生インダクタンスと低ノイズを両立させたパワーモジュールおよびパワー回路を提供することができる。
【0062】
(パワーモジュールの内部構造例1)
実施の形態に係るパワーモジュール1の内部構造例1であって、内蔵コンデンサC1および外付けスナバ回路(RB・CB)4を有する例において、樹脂層20を形成前の模式的上面図は、
図15に示すように表される。
【0063】
また、実施の形態に係るパワーモジュール1の内部構造例1の変形例であって、内蔵コンデンサC11・C12および外付けスナバ回路(RB・CB)4を有する例の樹脂層20を形成前の模式的上面図は、
図16に示すように表される。
【0064】
実施の形態に係るパワーモジュール1であって、樹脂層を形成後の模式的鳥瞰構成は、
図17に示すように表される。実施の形態に係るパワーモジュール1は、
図17に示すように、トランスファーモールド成型によって形成可能である。
【0065】
実施の形態に係るパワーモジュール1は、
図15〜
図16に示すように、主基板10と、主基板10上に配置され、正側電力端子Pに接続された第1電極パターンEPと、主基板10上に配置され、負側電力端子Nに接続された第2電極パターンENと、主基板10上に配置され、出力端子OUTに接続された第3電極パターンEOと、第1電極パターンEP上に第1ドレインD1が配置された第1SiC−MOSFET Q1と、第3電極パターンEO上に第2ドレインD2が配置された第2SiC−MOSFET Q2と、第1電極パターンEPと第2電極パターンENとの間に配置された内蔵コンデンサC1と、正側電力端子Pと負側電力端子Nの樹脂層20の外部に露出された側に跨るように接続されたスナバ回路30(
図17)とを備えている。
【0066】
また、図示は省略されているが、スナバ回路30に並列に接続された平滑コンデンサC2を備えていても良い。
【0067】
また、内蔵コンデンサC1は、
図16に示すように、複数の内蔵コンデンサC11・C12の直列接続によって構成されていても良い。
【0068】
スナバ回路30は、
図15・
図16に示すように、直列接続されたスナバ抵抗RBおよびスナバコンデンサCBとを備えていても良い。なお、スナバ回路30は、
図15・
図16に示すように、スナバ回路基板25上に実装された複数の電極パターン26・27・28を介してスナバ抵抗RBおよびスナバコンデンサCBが直列接続されていても良い。
【0069】
また、実施の形態に係るパワーモジュール1は、
図15〜
図17に示すように、正側電力端子Pに接続された第1金属板23Pと、負側電力端子Nに接続された第2金属板23Nとを備え、スナバ回路30は第1金属板23Pと第2金属板23Nとの間に配置されていても良い。正側電力端子Pと第1金属板23Pは、ねじ止め接続され、負側電力端子Nと第2金属板23Nもねじ止め接続されていても良い。
【0070】
また、
図15・
図16に示すように、主基板10上に配置され、第1SiC−MOSFET Q1の第1ゲートG1に接続された第1ゲート用信号配線パターンGL1、および第1SiC−MOSFET Q1の第1ソースS1に接続された第1ソースセンス用信号配線パターンSL1を搭載する第1信号基板14
1を備えていても良い。
【0071】
同様に、主基板10上に配置され、第2SiC−MOSFET Q2の第2ゲートG2に接続された第2ゲート用信号配線パターンGL2、および第2SiC−MOSFET Q2の第2ソースS2に接続された第2ソースセンス用信号配線パターンSL2を搭載する第2信号基板14
2を備えていても良い。
【0072】
また、実施の形態に係るパワーモジュール1の封止部は、少なくとも一部が熱硬化樹脂によって封止されていても良い。
【0073】
また、実施の形態に係るパワーモジュール1は、トランスファーモールド成型によって形成されていても良い。
【0074】
樹脂層20(
図17)としては、SiC系半導体デバイスに適用可能なトランスファーモールド樹脂、熱硬化樹脂などを使用可能である。また、 シリコンゲルなどのシリコーン系樹脂を部分的に使用しても良く、シリコンゲルなどのシリコーン系樹脂を使用したケース型パワーモジュールを採用しても良い。
【0075】
実施の形態に係るパワーモジュール1を備えるパワー回路2においては、電力端子P・Nの両端にスナバ回路4を外部接続することで電圧サージに影響する閉ループから電力端子P・Nを除外しつつ、電力端子P・Nを導通する電流IdH2・IdL2の振動を抑制することができる。このため、
図15〜
図17に示されるように、実施の形態に係るパワーモジュール1によれば、電力端子P・Nの周辺部の寄生インダクタンス低減が困難なトランスファーモールドタイプのパワーモジュールにおいても低ノイズを実現しつつ、電圧サージ量を大きく改善することができる。
【0076】
実施の形態に係るパワーモジュール1は、
図15に示すように、セラミック基板10を備え、内蔵コンデンサC1は、セラミック基板10上に形成された異なる電極パターンEP・EN間に跨るように配置されていても良い。
【0077】
また、内蔵コンデンサC1は、
図16に示すように、複数の内蔵コンデンサC11・C12の直列接続によって構成されていても良い。複数の内蔵コンデンサC11・C12をパワーモジュール1に内蔵しようとする場合、セラミック基板10上の電極パターンに接合するのであれば、容易にアセンブリが可能になる。複数の内蔵コンデンサC11・C12の直列接続によって内蔵コンデンサC1を形成することで、耐圧を確保しつつ寄生抵抗と寄生インダクタンスを適宜増加させて負荷電流の供給・流入が発生した場合の電流の急峻な変化を防ぎ、結果として、電流サージを低減化することができる。
【0078】
図15・
図16においては、SiC−MOSFET Q1・Q2は、それぞれ2チップ並列に配置されている例が示されている。
【0079】
実施の形態に係るパワーモジュール1は、
図15〜
図17に示すように、樹脂層20に被覆されたセラミック基板10の第1の辺に配置された正側電力端子Pおよび負側電力端子Nと、第1の辺に隣接する第2の辺に配置されたゲート端子GT1・ソースセンス端子SST1と、第1の辺に対向する第3の辺に配置された出力端子OUT・OUTと、第2の辺に対向する第4の辺に配置されたゲート端子GT4・ソースセンス端子SST4とを備える。ここで、ゲート端子GT1・ソースセンス端子SST1は、SiC−MOSFET Q1のゲート用信号配線パターンGL1・ソース用信号配線パターンSL1に接続され、ゲート端子GT2・ソースセンス端子SST2は、SiC−MOSFET Q2のゲート用信号配線パターンGL2・ソース用信号配線パターンSL2に接続される。
【0080】
図15・
図16に示すように、SiC−MOSFET Q1・Q2から信号基板14
1・14
2上に配置されたゲート用信号配線パターンGL1・GL2およびソースセンス用信号配線パターンSL1・SL2に向けてゲート用ワイヤGW1・GW2およびソースセンス用ワイヤSSW1・SSW2が接続される。また、ゲート用信号配線パターンGL1・GL2およびソースセンス用信号配線パターンSL1・SL2には、外部取り出し用のゲート端子GT1・GT2およびSST1・SST2が半田付けなどによって接続される。
【0081】
図15・
図16に示された例では、2チップ並列に配置されたSiC−MOSFET Q1・Q2のチップ表面のソースパッド電極SP1・SP2は、ソース用ボンディングワイヤBWS1・BWS2を介して、電極パターンEO・ENに接続されている。ソース用ボンディングワイヤBWS1・BWS2の代わりに、金属スペーサと上面板状電極を採用することによって2チップ並列に配置されたSiC−MOSFET Q1・Q2のチップ表面のソースパッド電極SP1・SP2をそれぞれ共通に接続しても良い。ここで、ソースパッド電極SP1・SP2は、例えば、
図21・
図22に示されたソースパッド電極SPと同様である。
【0082】
正側電力端子P・負側電力端子N、外部取り出し用のゲート端子GT1・GT2およびSST1・SST2は、例えば、Cuで形成可能である。
【0083】
主基板10は、セラミック基板で形成可能である。セラミック基板は、例えば、Al
2O
3、AlN、SiN、AlSiC、若しくは少なくとも表面が絶縁性のSiCなどで形成されていても良い。
【0084】
電極パターンEP・EO・ENは、例えば、Cu、Alなどで形成可能である。
【0085】
ゲート用ワイヤGW1・GW2、ソースセンス用ワイヤSSW1・SSW2およびソース用ボンディングワイヤBWS1・BWS2は、例えば、Al、AlCuなどで形成可能である。
【0086】
SiC−MOSFET Q1・Q2としては、後述するSiC−DIMOSFET、SiC−TMOSFETなどを適用可能である。或いは、SiC系パワーデバイスに代わり、GaN系高電子移動度トランジスタ(HEMT: High Electron Mobility Transistor)などのGaN系パワーデバイスを適用可能である。
【0087】
また、スナバコンデンサCBとしては、セラミックキャパシタなどを適用可能である。
【0088】
(パワーモジュールの内部構造例2)
実施の形態に係るパワーモジュール1の内部構造例2であって、内蔵コンデンサC1および外付けスナバ回路(RB・CB)を有する例において、樹脂層を形成前の模式的上面図は、
図18に示すように表される。また、
図18のI−I線に沿う模式的断面構造は、
図19に示すように表される。樹脂層を形成後の模式的鳥瞰構成は、
図17と同様に表され、トランスファーモールド成型によって形成可能である。
【0089】
図18においては、SiC−MOSFET Q1・Q2は、それぞれ3チップ並列に配置されている例が示されている。
【0090】
別の実施の形態に係るパワーモジュール1は、
図18・
図19に示すように、主基板10は、セラミック基板10
1・10
2の多層構造を備える。セラミック基板10
1の裏面には、金属箔6が配置され、セラミック基板10
1の表面には、金属箔8が配置されている。さらに、金属箔8上には、セラミック基板10
2が配置されている。
【0091】
別の実施の形態に係るパワーモジュール1は、
図18・
図19に示すように、セラミック基板10
2と、セラミック基板10
2上に配置され、正側電力端子Pに接続された第1電極パターンEPと、セラミック基板10
2上に配置され、負側電力端子Nに接続された第2電極パターンENと、セラミック基板10
2上に配置され、出力端子OUTに接続された第3電極パターンEOと、第1電極パターンEP上に第1ドレインD1が配置された第1SiC−MOSFET Q1と、第3電極パターンEO上に第2ドレインD2が配置された第2SiC−MOSFET Q2と、第1電極パターンEPと第2電極パターンENとの間に配置された内蔵コンデンサC1と、正側電力端子Pと負側電力端子Nの樹脂層20の外部に露出された側に跨るように接続されたスナバ回路30とを備えている。
【0092】
また、
図18・
図19に示すように、セラミック基板10
2上に配置され、第1SiC−MOSFET Q1の第1ゲートG1に接続されたゲート用信号配線パターンGPL1、および第1SiC−MOSFET Q1の第1ソースS1に接続されたソースセンス用信号配線パターンSPL1を搭載する第1信号基板15
1と、ゲート用信号配線パターンGPL1に接続されたゲート用信号配線パターンGL1、およびソースセンス用信号配線パターンSPL1に接続されたソースセンス用信号配線パターンSL1を搭載する信号基板14
1とを備えていても良い。
【0093】
同様に、セラミック基板10
2上に配置され、第2SiC−MOSFET Q2の第2ゲートG2に接続されたゲート用信号配線パターンGPL2、および第2SiC−MOSFET Q2の第2ソースS2に接続されたソースセンス用信号配線パターンSPL2を搭載する信号基板15
2と、ゲート用信号配線パターンGPL2に接続されたゲート用信号配線パターンGL2、およびソースセンス用信号配線パターンSPL2に接続されたソースセンス用信号配線パターンSL2を搭載する信号基板14
2とを備えていても良い。
【0094】
また、
図18・
図19に示すように、第1SiC−MOSFET Q1の第1ソースS1上には、チップ上スペーサ19
1を介して、チップ上面バスバー17
1が配置され、3個の第1SiC−MOSFET Q1の第1ソースS1のソースパッド電極SP1が共通に接続されている。同様に、第2SiC−MOSFET Q2の第2ソースS2上には、チップ上スペーサ19
2を介して、チップ上面バスバー17
2が配置され、3個の第2SiC−MOSFET Q2の第2ソースS2のソースパッド電極SP2が共通に接続されている。
【0095】
また、
図18・
図19に示すように、チップ上面バスバー17
1は、スペーサ29
1を介して第3電極パターンEOに接続され、チップ上面バスバー17
2は、スペーサ29
2を介して第4電極パターンEN2に接続されている。
【0096】
また、
図18・
図19に示すように、第2電極パターンENは、ビアホール21
1を介してセラミック基板10
1表面の金属箔8に接続され、第4電極パターンEN2もビアホール21
2を介してセラミック基板10
1表面の金属箔8に接続されている。その他の構成および各部の材料などは、実施の形態に係るパワーモジュール1の内部構造例1と同様である。
【0097】
図18・
図19に示す実施の形態に係るパワーモジュール1の内部構造例2において、ラミネート配線構造LM1・LM2による電流キャンセルの様子を説明する模式図は、
図20に示すように表される。
【0098】
実施の形態に係るパワーモジュール1の内部構造例2においては、積層化されたセラミック基板10
1・10
2を備えることによって、パワーモジュール1の内部構造上ラミネート配線構造LM1・LM2が形成される。このため、
図20に示すような導通電流iによって、パワーモジュール1の内部配線に伴う寄生インダクタンス成分によって発生する磁束を相殺可能である。結果として、パワーモジュール1の内部配線に伴う寄生インダクタンスを低減することができる。また、チップ上面バスバー17
1・17
2と金属箔8とを通る電流経路で形成されるラミネート配線構造に対しても、寄生インダクタンスの低減効果は得られる。
【0099】
実施の形態に係るパワーモジュール1の内部構造例2においては、基板内の寄生インダクタンスを低減可能であるため、パワーモジュールのリンギングループの寄生インダクタンスを極小化可能である。
【0100】
(半導体デバイスの構成例)
―SiC−DIMOSFET―
実施の形態に係るパワーモジュール1を備えるパワー回路2に適用可能な半導体デバイス200の例であって、SiC−DI(Double Implanted)MOSFETの模式的断面構造は、
図21に示すように表される。
【0101】
実施の形態に係るパワーモジュール1を備えるパワー回路2に適用可能なSiC−DIMOSFETは、
図21に示すように、n
+SiC基板124と、n
+SiC基板124上にエピタキシャル成長されたn
-ドリフト層126と、n
-ドリフト層126の表面側に形成されたpボディ領域128と、pボディ領域128の表面に形成されたn
+ソース領域130と、pボディ領域128間のn
-ドリフト層126の表面上に配置されたゲート絶縁層132と、ゲート絶縁層132上に配置されたゲート電極138と、n
+ソース領域130およびpボディ領域128に電気的に接続されたソース電極134と、n
+SiC基板124の、n
-ドリフト層126と反対側の表面に電気的に接続されたドレイン電極136とを備える。また、pボディ領域128とn
-ドリフト層126間には、ボディダイオードBDが形成されている。
【0102】
図21では、半導体デバイス200は、pボディ領域128と、pボディ領域128の表面に形成されたn
+ソース領域130が、ダブルイオン注入(DI)で形成され、ソースパッド電極SPは、n
+ソース領域130およびpボディ領域128に接続されたソース電極134に接続される。ゲートパッド電極GP(図示省略)は、ゲート絶縁層132上に配置されたゲート電極138に接続される。また、ソースパッド電極SP・ソース電極134およびゲートパッド電極GP(図示省略)は、
図21に示すように、半導体デバイス200の表面を覆うパッシベーション用の層間絶縁膜144上に配置される。
【0103】
―SiC−TMOSFET―
実施の形態に係るパワーモジュール1を備えるパワー回路2に適用可能な半導体デバイス200の例であって、SiC−トレンチ(T:Trench)MOSFETの模式的断面構造は、
図22に示すように表される。
【0104】
実施の形態に係るパワーモジュール1を備えるパワー回路2に適用可能なSiC−TMOSFETは、
図22に示すように、n
+SiC基板124と、n
+SiC基板124上にエピタキシャル成長されたn
-ドリフト層126Nと、n
-ドリフト層126Nの表面側に形成されたpボディ領域128と、pボディ領域128の表面に形成されたn
+ソース領域130と、pボディ領域128を貫通し、n
-ドリフト層126Nまで形成されたトレンチ内にゲート絶縁層132および層間絶縁膜144U・144Bを介して形成されたトレンチゲート電極138TGと、ソース領域130およびpボディ領域128に接続されたソース電極134と、n
+SiC基板124の、n
-ドリフト層126Nと反対側の表面に電気的に接続されたドレイン電極136とを備える。また、pボディ領域128とn
-ドリフト層126N間には、ボディダイオードBDが形成されている。
【0105】
図22では、半導体デバイス200は、pボディ領域128を貫通し、n
-ドリフト層126Nまで形成されたトレンチ内にゲート絶縁層132および層間絶縁膜144U・144Bを介して形成されたトレンチゲート電極138TGが形成され、ソースパッド電極SPは、ソース領域130およびpボディ領域128に接続されたソース電極134に接続される。ゲートパッド電極GP(図示省略)は、ゲート絶縁層132上に配置されたゲート電極138に接続される。また、ソースパッド電極SP・ソース電極134およびゲートパッド電極GP(図示省略)は、
図22に示すように、半導体デバイス200の表面を覆うパッシベーション用の層間絶縁膜144U上に配置される。
【0106】
SiC−TMOSFETはドレイン電流経路にpボディ領域128から伸張するジャンクション抵抗が存在しないため、SIC−DMOSFETと比較してさらに低オン抵抗のFETを提供することが可能であり、1素子当たりに100A以上のドレインパルス電流を許容することも可能になる。
【0107】
また、実施の形態に係るパワーモジュールおよびパワー回路に適用可能な半導体デバイス200には、SiC系MOSFETの代わりに、GaN系FETなどを適用することもできる。
【0108】
SiCデバイスは、高絶縁破壊電界(例えば、約3MV/cmであり、Siの約3倍)であることから、Siに比べてドリフト層の膜厚を薄くし、かつキャリア濃度を高く設定しても耐圧が確保できる。絶縁破壊電界の違いから、SiC−MOSFETのピーク電界強度は、Si−MOSFETのピーク電界強度よりも高く設定可能である。
【0109】
SiC−MOSFETにおいては、必要なn
-ドリフト層126・126Nの膜厚が薄く、キャリア濃度が高いため、n
-ドリフト層126・126Nの抵抗値を低減し、オン抵抗を低くすることができ、チップ面積を縮小化(小チップ化)可能である。さらにユニポーラデバイスであるMOSFET構造のままで、Si−IGBTに比肩し得る耐圧を実現可能であることから、高耐圧でかつ高速スイッチングできるとされ、スイッチング損失の低減が期待できる。
【0110】
以上説明したように、本実施の形態によれば、低寄生インダクタンスと低ノイズを両立させたパワーモジュールおよびパワー回路を提供することができる。
【0111】
[その他の実施の形態]
上記のように、実施の形態およびその変形例によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面は例示的なものであり、この発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
【0112】
このように、本実施の形態ここでは記載していない様々な実施の形態などを含む。