特許第6683622号(P6683622)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6683622
(24)【登録日】2020年3月30日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】眼科用水性組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/5383 20060101AFI20200413BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20200413BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20200413BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20200413BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20200413BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
   A61K31/5383
   A61K31/573
   A61K9/08
   A61K47/10
   A61K47/04
   A61P27/02
【請求項の数】17
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-557790(P2016-557790)
(86)(22)【出願日】2015年11月5日
(86)【国際出願番号】JP2015081121
(87)【国際公開番号】WO2016072440
(87)【国際公開日】20160512
【審査請求日】2018年9月27日
(31)【優先権主張番号】特願2014-227039(P2014-227039)
(32)【優先日】2014年11月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000177634
【氏名又は名称】参天製薬株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】307010166
【氏名又は名称】第一三共株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【弁理士】
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 洋子
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 恭平
(72)【発明者】
【氏名】梅崎 慎也
【審査官】 山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2001/0049366(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/5383
A61K 31/573
A61K 9/08
A61K 47/04
A61K 47/10
A61P 27/02
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レボフロキサシンもしくはその塩またはそれらの溶媒和物と、
デキサメタゾンリン酸エステルまたはの塩と、
1または2種以上の等張化剤を含有する眼科用水性組成物であって、塩化ナトリウムを実質的に含有しない眼科用水性組成物。
【請求項2】
さらに、1または2種以上の保存剤を含有する請求項1に記載の眼科用水性組成物。
【請求項3】
保存剤が、塩化ベンザルコニウムである、請求項2に記載の眼科用水性組成物。
【請求項4】
眼科用水性組成物のpHが6.5〜8.8である、請求項1〜3のいずれかに記載の眼科用水性組成物。
【請求項5】
レボフロキサシンもしくはその塩またはそれらの溶媒和物と、
デキサメタゾンリン酸エステルまたはその塩と、
1または2種以上の等張化剤と、
1または2種以上の保存剤を含有する眼科用水性組成物であって、眼科用水性組成物のpHが6.5〜8.8であって、塩化ナトリウムを実質的に含有しない請求項1〜4のいずれかに記載の眼科用水性組成物。
【請求項6】
さらに、pH調整剤を含有する請求項4または5に記載の眼科用水性組成物。
【請求項7】
さらに、緩衝剤を含有する請求項1〜6のいずれかに記載の眼科用水性組成物。
【請求項8】
眼科用水性組成物の浸透圧比が1.2以下である、請求項1〜7のいずれかに記載の眼科用水性組成物。
【請求項9】
眼科用水性組成物の浸透圧を60〜340mOsmの範囲に調整する濃度の等張化剤を含有する、請求項1〜7のいずれかに記載の眼科用水性組成物。
【請求項10】
等張化剤が非イオン性等張化剤またはイオン性等張化剤である、請求項1〜9のいずれかに記載の眼科用水性組成物。
【請求項11】
非イオン性等張化剤が多価アルコールである、請求項10に記載の眼科用水性組成物。
【請求項12】
多価アルコールがグリセリン、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコールからなる群より選択される1または2種以上である、請求項11に記載の眼科用水性組成物。
【請求項13】
イオン性等張化剤が無機塩類又は有機塩類である、請求項10に記載の眼科用水性組成物。
【請求項14】
イオン性等張化剤が無機塩類を含む、請求項10に記載の眼科用水性組成物。
【請求項15】
イオン性等張化剤が無機塩類である、請求項14に記載の眼科用水性組成物。
【請求項16】
無機塩類がホウ酸またはホウ砂である、請求項13〜15のいずれかに記載の眼科用水性組成物。
【請求項17】
点眼剤である、請求項1〜16のいずれか1つに記載の眼科用水性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レボフロキサシンもしくはその塩またはそれらの溶媒和物と、デキサメタゾンもしくはそのエステルまたはそれらの塩と、1または2種以上の等張化剤を含有する眼科用水性組成物であって、塩化ナトリウムを実質的に含有しない眼科用水性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
レボフロキサシンは、細菌のDNAジャイレースおよびトポイソメラーゼIVを阻害することによりDNA合成を阻害し、抗菌活性を発現することが知られており、広い抗菌スペクトルと強力な抗菌力を示し、すでに0.5%(w/v)レボフロキサシン点眼液(クラビット(登録商標)点眼液0.5%)として広く使用されている。この点眼液は、有効成分としてレボフロキサシンを、添加物として塩化ナトリウムおよびpH調整剤を含有し、pHが6.2〜6.8、浸透圧比が1.0〜1.1に調整された点眼液であり、その性状は、澄明な溶液である。
一方、デキサメタゾンは、強力な抗炎症作用を持つ合成副腎皮質ホルモンであり、その水溶性エステル誘導体、特にデキサメタゾンリン酸エステルナトリウムは、0.1%(w/v)デキサメタゾンリン酸エステルナトリウム点眼液(オルガドロン(登録商標)点眼液0.1%)として広く使用されている。この点眼液は、有効成分としてデキサメタゾンリン酸エステルナトリウムを、添加物として塩化ベンザルコニウム、エデト酸ナトリウム水和物、ホウ酸、ホウ砂および等張化剤を含有し、pHが7.4〜8.4、浸透圧が等張になるように調整された点眼液であり、その性状は、澄明な溶液である。
一般に薬物を点眼液などの眼科用水性組成物とするためには、薬物の安定性、薬物移行性など、数多くの解決すべき課題が存在する。
特許文献1には、1.0〜3.0%(w/v)の濃度のレボフロキサシンに、実質的に等浸透圧にする濃度(2〜2.5%(v/v))のグリセリンを配合することにより、抗菌防腐の効力を向上させることが記載されている。
しかしながら、薬物の安定性、薬物移行性などの課題を解決するレボフロキサシンもしくはその塩またはそれらの溶媒和物と、デキサメタゾンもしくはそのエステルまたはそれらの塩を含有する眼科用水性組成物は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許4758893号公報
【発明の概要】
【0004】
本発明の課題は、レボフロキサシンもしくはその塩またはそれらの溶媒和物と、デキサメタゾンもしくはそのエステルまたはそれらの塩を含有する眼科用水性組成物であって、薬物の安定性および/または薬物移行性に優れ、その性状が澄明である眼科用水性組成物を提供することである。
【0005】
本発明者は、レボフロキサシンもしくはその塩またはそれらの溶媒和物と、デキサメタゾンもしくはそのエステルまたはそれらの塩を含有する眼科用水性組成物の処方検討を鋭意行った結果、1または2種以上の等張化剤を含有し、塩化ナトリウムを実質的に含有しないことで、保存中の不溶性析出物の発生を抑制し、安定性に優れた、澄明な眼科用水性組成物を見出した。
さらに、該組成物の浸透圧比を低浸透圧、すなわち浸透圧比を0.8以下に調整することにより、デキサメタゾンの薬物移行性がより向上することを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、
(1)レボフロキサシンもしくはその塩またはそれらの溶媒和物と、
デキサメタゾンもしくはそのエステルまたはそれらの塩と、
1または2種以上の等張化剤を含有する眼科用水性組成物であって、塩化ナトリウムを実質的に含有しない眼科用水性組成物、
(2)眼科用水性組成物のpHが6.5〜8.8である、(1)に記載の眼科用水性組成物、
(3)眼科用水性組成物の浸透圧比が1.2以下である、(1)または(2)に記載の眼科用水性組成物、
(4)眼科用水性組成物の浸透圧を60〜340mOsmの範囲に調整する濃度の等張化剤を含有する、(1)または(2)に記載の眼科用水性組成物、
(5)眼科用水性組成物の浸透圧を60〜230mOsmの範囲に調整する濃度の等張化剤を含有する、(1)〜(3)のいずれか1つに記載の眼科用水性組成物、
(6)等張化剤が非イオン性等張化剤またはイオン性等張化剤である、(1)に記載の眼科用水性組成物、
(7)非イオン性等張化剤が多価アルコールである、(6)に記載の眼科用水性組成物、
(8)多価アルコールがグリセリン、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコールからなる群より選択される1または2種以上である、(7)に記載の眼科用水性組成物、
【0007】
(9)イオン性等張化剤が無機塩類である、(6)に記載の眼科用水性組成物、
(10)無機塩類がホウ酸またはホウ砂である、(9)に記載の眼科用水性組成物、
(11)1または2種以上の粘稠化剤をさらに含有する、(1)〜(10)のいずれか1つに記載の眼科用水性組成物、
(12)0.5%(w/v)の濃度のレボフロキサシンもしくはその塩またはそれらの溶媒和物と、
0.1%(w/v)の濃度のデキサメタゾンもしくはそのエステルまたはそれらの塩と、
0.3〜3.0%(w/v)の濃度のグリセリンを含有し、塩化ナトリウムを実質的に含有しない眼科用水性組成物であって、該眼科用水性組成物のpHが6.5〜8.8であり、該眼科用水性組成物の浸透圧比が0.3〜1.2である眼科用水性組成物、
(13)0.001〜0.02%(w/v)の濃度の塩化ベンザルコニウムをさらに含有する、(12)に記載の眼科用水性組成物、
(14)眼科用水性組成物の浸透圧比が0.3〜0.8である、(12)または(13)に記載の眼科用水性組成物、
(15)点眼剤である、(1)〜(14)のいずれか1つに記載の眼科用水性組成物、
【0008】
(16)外眼部もしくは前眼部の炎症性疾患、または外眼部もしくは前眼部の細菌感染症の予防または治療のための(1)〜(15)のいずれか1つに記載の眼科用水性組成物、
(17)外眼部もしくは前眼部の炎症性疾患、または外眼部もしくは前眼部の細菌感染症が、眼瞼炎、涙嚢炎、麦粒腫、結膜炎、アレルギー性結膜炎、フリクテン性結膜炎、春季カタル、瞼板腺炎、角膜炎、眼瞼角結膜炎、上輪部角結膜炎、糸状角結膜炎、流行性角結膜炎、角膜潰瘍、強膜炎、上強膜炎、虹彩炎、虹彩毛様体炎、前眼部ブドウ膜炎および術後炎症からなる群より選択される少なくとも1つである、(16)に記載の眼科用水性組成物、
(18)レボフロキサシンもしくはその塩またはそれらの溶媒和物と、デキサメタゾンもしくはそのエステルまたはそれらの塩と、1または2種以上の等張化剤を含有する眼科用水性組成物であって、塩化ナトリウムを実質的に含有しないことによる、該眼科用水性組成物から不溶性析出物の発生を抑制する方法、
(19)眼科用水性組成物のpHが6.5〜8.8である、前記(18)に記載の方法、に関する。
なお、前記(1)〜(19)の各構成は、任意に1以上を選択して組み合わせることができる。
【0009】
本発明によれば、レボフロキサシンもしくはその塩またはそれらの溶媒和物と、デキサメタゾンもしくはそのエステルまたはそれらの塩と、1または2種以上の等張化剤を含有する眼科用水性組成物であって、塩化ナトリウムを実質的に含有しないことで、保存中の不溶性析出物の発生を抑制し、安定性に優れた、澄明な眼科用水性組成物を提供することができる。
また、該組成物の浸透圧比を0.8以下とすることにより、デキサメタゾンの薬物移行性がより向上した澄明な眼科用水性組成物を提供することができる。
さらに、該組成物は、眼瞼炎、涙嚢炎、麦粒腫、結膜炎、アレルギー性結膜炎、フリクテン性結膜炎、春季カタル、瞼板腺炎、角膜炎、眼瞼角結膜炎、上輪部角結膜炎、糸状角結膜炎、流行性角結膜炎、角膜潰瘍、強膜炎、上強膜炎、虹彩炎、虹彩毛様体炎、前眼部ブドウ膜炎、術後炎症などの、外眼部もしくは前眼部の炎症性疾患、または外眼部もしくは前眼部の細菌感染症に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を説明するが、これが本発明を限定するものではない。
レボフロキサシンは、下記の化学構造式(I)で示される化合物である。
【化1】
レボフロキサシンの塩としては、医薬として許容される塩であれば特に制限はないが、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸などの無機酸との塩、酢酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、アジピン酸、グルコン酸、グルコヘプト酸、グルクロン酸、テレフタル酸、メタンスルホン酸、乳酸、馬尿酸、1,2−エタンジスルホン酸、イセチオン酸、ラクトビオン酸、オレイン酸、パモ酸、ポリガラクツロン酸、ステアリン酸、タンニン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、硫酸ラウリルエステル、硫酸メチル、ナフタレンスルホン酸、スルホサリチル酸などの有機酸との塩、臭化メチル、ヨウ化メチルなどとの四級アンモニウム塩、臭素イオン、塩素イオン、ヨウ素イオンなどのハロゲンイオンとの塩、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属との塩、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属との塩、鉄、亜鉛などとの金属塩、アンモニアとの塩、トリエチレンジアミン、2−アミノエタノール、2,2−イミノビス(エタノール)、1−デオキシ−1−(メチルアミノ)−2−D−ソルビトール、2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、プロカイン、N,N−ビス(フェニルメチル)−1,2−エタンジアミンなどの有機アミンとの塩などが挙げられる。
【0011】
レボフロキサシンもしくはその塩またはそれらの溶媒和物にプロトン互変異性が存在する場合には、それらの互変異性体も本発明の範囲に含まれる。
レボフロキサシンまたはその塩の溶媒和物としては、医薬として許容される溶媒和物であれば特に制限ないが、例えば、水和物(1/2水和物、1水和物、2水和物など)、有機溶媒和物などが挙げられ、好ましくは、水和物(1/2水和物、1水和物または2水和物)であり、より好ましくは1/2水和物である。
レボフロキサシンもしくはその塩またはそれらの溶媒和物に、結晶多形および結晶多形群(結晶多形システム)が存在する場合には、それらの結晶多形体および結晶多形群(結晶多形システム)も本発明の範囲に含まれる。ここで、結晶多形群(結晶多形システム)とは、それらの結晶の製造、晶出、保存などの条件および状態(なお、本状態には製剤化した状態も含む)により、結晶形が変化する場合の各段階における個々の結晶形およびその過程全体を意味する。
レボフロキサシンもしくはその塩またはそれらの溶媒和物は、特公平3−27534号公報および特公平7−47592号公報に記載された方法に従って製造することができる。また、本発明においては、市販されているレボフロキサシン塩酸塩(和光純薬社製、販売元コード:121−05943など)などを用いることもできる。
【0012】
レボフロキサシンもしくはその塩またはそれらの溶媒和物の含有量は、所望の薬効を奏するのに十分な量であれば特に制限はなく、治療対象となる疾患やその症状、患者の年齢や体重、本発明に係る眼科用水性組成物の有効成分の1つであるデキサメタゾンもしくはそのエステルまたはそれらの塩の含有量、他の添加物の含有量、眼科用水性組成物の浸透圧(浸透圧比)などに応じて適宜その含有量を調整することができる。レボフロキサシンもしくはその塩またはそれらの溶媒和物の含有量は、例えば、0.3〜5%(w/v)、好ましくは0.3〜3%(w/v)、より好ましくは、0.3〜1.5%(w/v)、特に好ましくは0.5〜1.5%(w/v)である。
デキサメタゾンは、下記の化学構造式(IIa)で示される化合物である。
【化2】
デキサメタゾンのエステルとしては、医薬として許容されるエステルであれば特に制限はないが、例えば、デキサメタゾン酢酸エステル、デキサメタゾンプロピオン酸エステル、デキサメタゾン吉草酸エステル、デキサメタゾンパルミチン酸エステル、デキサメタゾンメタスルホ安息香酸エステル、デキサメタゾンシペシル酸エステル、デキサメタゾンリン酸エステルなどが挙げられ、好ましくはデキサメタゾンリン酸エステルである。
【0013】
デキサメタゾンまたはそのエステルの塩としては、医薬として許容される塩であれば特に制限はないが、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸などの無機酸との塩、酢酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、アジピン酸、グルコン酸、グルコヘプト酸、グルクロン酸、テレフタル酸、メタンスルホン酸、乳酸、馬尿酸、1,2−エタンジスルホン酸、イセチオン酸、ラクトビオン酸、オレイン酸、パモ酸、ポリガラクツロン酸、ステアリン酸、タンニン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、硫酸ラウリルエステル、硫酸メチル、ナフタレンスルホン酸、スルホサリチル酸などの有機酸との塩、臭化メチル、ヨウ化メチルなどとの四級アンモニウム塩、臭素イオン、塩素イオン、ヨウ素イオンなどのハロゲンイオンとの塩、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属との塩、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属との塩、鉄、亜鉛などとの金属塩、アンモニアとの塩、トリエチレンジアミン、2−アミノエタノール、2,2−イミノビス(エタノール)、1−デオキシ−1−(メチルアミノ)−2−D−ソルビトール、2−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、プロカイン、N,N−ビス(フェニルメチル)−1,2−エタンジアミンなどの有機アミンとの塩などが挙げられ、好ましくはアルカリ金属との塩であり、より好ましくはナトリウムとの塩である。
本発明におけるデキサメタゾンもしくはそのエステルまたはそれらの塩、特に、デキサメタゾンリン酸エステルナトリウムは、下記の化学構造式(IIb)で示される化合物である。
【0014】
【化3】
デキサメタゾンもしくはそのエステルまたはそれらの塩にプロトン互変異性が存在する場合には、それらの互変異性体も本発明の範囲に含まれる。
デキサメタゾンもしくはそのエステルまたはそれらの塩に溶媒和物が存在する場合には、それらの溶媒和物も本発明の範囲に含まれる。デキサメタゾンもしくはそのエステルまたはそれらの塩の溶媒和物としては、医薬として許容される溶媒和物であれば特に制限ないが、例えば、水和物(1/2水和物、1水和物、2水和物など)、有機溶媒和物などが挙げられる。
【0015】
デキサメタゾンもしくはそのエステルまたはそれらの塩に、結晶多形および結晶多形群(結晶多形システム)が存在する場合には、それらの結晶多形体および結晶多形群(結晶多形システム)も本発明の範囲に含まれる。ここで、結晶多形群(結晶多形システム)とは、それらの結晶の製造、晶出、保存などの条件および状態(なお、本状態には製剤化した状態も含む)により、結晶形が変化する場合の各段階における個々の結晶形およびその過程全体を意味する。
デキサメタゾンもしくはそのエステルまたはそれらの塩は、有機合成化学の分野における通常の方法に従って製造できる。また、本発明においては、市販品を用いることもできる。例えば、和光純薬社製のデキサメタゾンリン酸エステルナトリウム(販売元コード:554−74381)などを用いることもできる。
また、本発明におけるデキサメタゾンもしくはそのエステルまたはそれらの塩の含有量は、所望の薬効を奏するのに十分な量であれば特に制限はなく、治療対象となる疾患やその症状、患者の年齢や体重、本発明における眼科用水性組成物の有効成分の1つであるレボフロキサシンもしくはその塩またはそれらの溶媒和物の含有量、他の添加物の含有量、眼科用水性組成物の浸透圧(浸透圧比)などに応じて適宜その含有量を調整することができる。デキサメタゾンもしくはそのエステルまたはそれらの塩の含有量は、例えば、0.01〜0.3%(w/v)、好ましくは0.025〜0.2%、より好ましくは0.05〜0.12%(w/v)、特に好ましくは0.10〜0.12%(w/v)である。
【0016】
さらに、本発明におけるデキサメタゾンもしくはそのエステルまたはそれらの塩が、デキサメタゾンリン酸エステルまたはその塩である場合も、その含有量は、所望の薬効を奏するのに十分な量であれば特に制限はなく、治療対象となる疾患やその症状、患者の年齢や体重、本発明における眼科用水性組成物の有効成分の1つであるレボフロキサシンもしくはその塩またはそれらの溶媒和物の含有量、他の添加物の含有量、眼科用水性組成物の浸透圧(浸透圧比)などに応じて適宜その含有量を調整することができる。デキサメタゾンリン酸エステルまたはその塩の含有量は、例えば、0.01〜0.3%(w/v)、好ましくは0.025〜0.2%、より好ましくは0.05〜0.12%(w/v)、特に好ましくは0.10〜0.12%(w/v)である。
【0017】
本発明における等張化剤は、医薬として許容される等張化剤であれば特に制限はないが、例えば、イオン性等張化剤や非イオン性等張化剤などが挙げられる。
イオン性等張化剤としては、例えば、無機塩類または有機塩類が挙げられる。
無機塩類としては、例えば、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、ホウ酸、ホウ砂などが挙げられる。
有機塩類としては、例えば、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムなどが挙げられる。
非イオン性等張化剤としては、例えば、2個以上のアルコール性水酸基を分子内に有する、多価アルコールなどが挙げられる。
多価アルコールの具体例としては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グルコース、トレハロース、スクロース、キシリトール、ソルビトールなどが挙げられる。
これらの等張化剤の中でも、非イオン性等張化剤であれば、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどの多価アルコールが好ましく、イオン性等張化剤であれば、ホウ酸、ホウ砂などの無機塩が好ましく、より好ましくはグリセリン、ホウ砂、特に好ましくはグリセリンである。
【0018】
また、本発明における等張化剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
また、本発明における等張化剤は、薬物および/または他の添加物への影響や眼科用水性組成物の浸透圧(浸透圧比)を特定の範囲に調整することを考慮して適宜その濃度を調整することができる。本発明における等張化剤の濃度は、例えば、非イオン性等張化剤の場合、10〜1000mmol/L、好ましくは20〜500mmol/L、より好ましくは20〜300mmol/L、特に好ましくは20〜200mmol/Lである。イオン性等張化剤の場合、薬物以外の陽イオンおよび陰イオンを含めた総イオン濃度は、10〜1000(mmol/L)、好ましくは20〜500(mmol/L)、より好ましくは20〜300(mmol/L)、特に好ましくは20〜200(mmol/L)である。
さらに、本発明における等張化剤が非イオン性等張化剤または多価アルコールである場合、特にグリセリンである場合も、薬物、他の添加物および/または眼科用水性組成物の浸透圧(浸透圧比)への影響を考慮して適宜その含有量を調整することができる。本発明における非イオン性等張化剤または多価アルコール、特にグリセリン(分子量92.09)の含有量は、例えば、0.01〜10%(w/v)、好ましくは0.05〜5%(w/v)、より好ましくは0.1〜3.0%(w/v)、さらに好ましくは0.3〜3.0%(w/v)、特に好ましくは0.3〜1.9%(w/v)である。
【0019】
本発明における眼科用水性組成物は、塩化ナトリウムを実質的に含有しない。ここで、「実質的に含有しない」とは、眼科用水性組成物の安定性、例えば物理的安定性に悪影響を及ぼす量を含有しないことを意味する。具体的には、塩化ナトリウムの含有量は、例えば、0.6%(w/v)未満、0.5%(w/v)以下、0.4%(w/v)以下、または0.3%(w/v)以下が好ましく、より好ましくは0.27%(w/v)以下、さらに好ましくは0.2%(w/v)以下、殊更好ましくは0.18%(w/v)以下、特に好ましくは0.14%(w/v)以下である。
本発明における眼科用水性組成物のpHは、医薬として許容される範囲内であれば特に制限されるものでないが、例えば、4.0〜9.0、好ましくは4.0〜8.8、より好ましくは6.5〜8.8の範囲である。
本発明における眼科用水性組成物には、必要に応じて塩基を配合することができる。医薬として許容される塩基であれば特に制限されるものでないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタモール、メグルミンなどを挙げることができる。
また、本発明における眼科用水性組成物には、必要に応じて有機酸または無機酸などの酸を配合することもできる。
また、これらのpH調整剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0020】
本発明における眼科用水性組成物の浸透圧比とは、該組成物の生理食塩水に対する浸透圧比を意味する。なお、その値は通常の方法により測定することができる。例えば、第十五改正日本薬局方の浸透圧測定法(オスモル濃度測定法)の項に記載の方法に従い測定することができる。
また、本発明における眼科用水性組成物の浸透圧比は、生体に許容される範囲内であれば、特に制限されるものでないが、例えば、0.01〜3.5、好ましくは0.01〜2.0、より好ましくは0.1〜1.5、さらに好ましくは0.3〜1.2、特に好ましくは0.3〜0.8である。
一般に、水性組成物の浸透圧比は、水性組成物中に含まれる薬物および添加物の含有量の影響を少なからず受ける。本発明では、浸透圧に影響を与えるそれらの各物質の含有量を適宜調整することで、浸透圧比を前記の範囲に調整することができる。
また、本発明における眼科用水性組成物の浸透圧は、生体に許容される範囲内であれば、特に制限されるものでないが、例えば、10〜1000mOsm、好ましくは30〜500mOsm、より好ましくは60〜340mOsm、さらに好ましくは60〜260mOsm、特に好ましくは60〜230mOsmである。
【0021】
本発明における眼科用水性組成物には、1または2種以上の粘稠化剤をさらに配合することができ、医薬として許容されるものであれば特に制限されるものでない。
本発明における粘稠化剤としては、例えば、セルロース系高分子(メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)、ビニル系高分子(ポリビニルピロリドンなど)、糖類(ヒアルロン酸、その塩類などのムコ多糖類、ジェランガム、アルギン酸ナトリウム、デキストラン、シクロデキストリンなどの多糖類)、オキシアルキレン系高分子(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー)などが挙げられる。
本発明における粘稠化剤の分子量は、例えば、数平均分子量0.5×104〜100×104程度の範囲から選択できる。
また、本発明における粘稠化剤の含有量は、薬物、他の添加物および/または浸透圧(浸透圧比)への影響を考慮して適宜その含有量を調整することができる。本発明における粘稠化剤の含有量は、例えば、0.001〜10%(w/v)、好ましくは0.01〜5%(w/v)、より好ましくは0.03〜3%(w/v)、さらに好ましくは0.05〜2.5%(w/v)、特に好ましくは0.1〜2.0%(w/v)である。
【0022】
本発明における眼科用水性組成物には、必要に応じて非イオン性界面活性剤を配合することができる。非イオン性界面活性剤としては、医薬として許容される範囲内であれば特に制限されるものでないが、例えば、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ショ糖脂肪酸エステルなどが挙げられる。ポリオキシエチレン脂肪酸エステルとしては、ステアリン酸ポリオキシル40などが挙げられ、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、ポリソルベート80、ポリソルベート60、ポリソルベート40、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレート、ポリソルベート65などが挙げられ、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリオキシル5ヒマシ油、ポリオキシル9ヒマシ油、ポリオキシル15ヒマシ油、ポリオキシル35ヒマシ油、ポリオキシル40ヒマシ油などが挙げられ、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとしては、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、ポリオキシエチレン(42)ポリオキシプロピレン(67)グリコール、ポリオキシエチレン(54)ポリオキシプロピレン(39)グリコール、ポリオキシエチレン(196)ポリオキシプロピレン(67)グリコール、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(20)グリコールなどが挙げられる。
また、これらの非イオン性界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0023】
本発明における眼科用水性組成物には、必要に応じて緩衝剤を配合することができる。緩衝剤としては、医薬として許容される範囲内であれば特に制限されるものでないが、例えば、リン酸またはその塩、ホウ酸またはその塩、クエン酸またはその塩、酢酸またはその塩、炭酸またはその塩、酒石酸またはその塩、ε‐アミノカプロン酸、トロメタモールなどが挙げられる。リン酸塩としては、リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウムなどが挙げられ、ホウ酸塩としては、ホウ砂、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウムなどが挙げられ、クエン酸塩としては、クエン酸ナトリウム、クエン酸二ナトリウムなどが挙げられ、酢酸塩としては、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなどが挙げられ、炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどが挙げられ、酒石酸塩としては、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウムなどが挙げられる。
また、これらの緩衝剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0024】
本発明における眼科用水性組成物には、必要に応じて安定化剤を配合することができる。安定化剤としては、医薬として許容される範囲内であれば特に制限されるものでないが、例えば、エデト酸、エデト酸ナトリウムなどが挙げられる。
また、これらの安定化剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
本発明における眼科用水性組成物は、必要に応じて医薬品の添加物として使用可能な保存剤を配合することができる。保存剤としては、医薬として許容される範囲内であれば特に制限されるものでないが、例えば、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、クロロブタノール、ホウ酸、ホウ砂などが挙げられる。
また、これらの保存剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0025】
また、本発明における保存剤の含有量は、薬物、他の添加物および/または浸透圧(浸透圧比)への影響を考慮して適宜その含有量を調整することができる。本発明における保存剤の含有量は、例えば、0.001〜0.02%(w/v)、好ましくは0.001〜0.01%(w/v)、より好ましくは0.001〜0.005%(w/v)である。
本発明において、「水性組成物」とは、水を基剤とする組成物を意味する。
本発明において、「眼科用水性組成物」とは、眼局所投与に用いられる水性組成物を意味する。本発明における「眼科用水性組成物」は、該組成物の80%(w/v)超が水であり、好ましくは該組成物の90%(w/v)超が水である。
本発明における眼科用水性組成物の剤形は、例えば、眼科用注射剤、点眼剤を挙げることができ、好ましくは点眼剤である。
本発明における眼科用水性組成物は、医薬品として使用するのに十分な安定性を有する。
【0026】
本発明における眼科用水性組成物が適用可能な疾患に特に制限はないが、例えば、眼瞼炎、涙嚢炎、麦粒腫、結膜炎、アレルギー性結膜炎、フリクテン性結膜炎、春季カタル、瞼板腺炎、角膜炎、眼瞼角結膜炎、上輪部角結膜炎、糸状角結膜炎、流行性角結膜炎、角膜潰瘍、強膜炎、上強膜炎、虹彩炎、虹彩毛様体炎、前眼部ブドウ膜炎、術後炎症などの、外眼部もしくは前眼部の炎症性疾患、または外眼部もしくは前眼部の細菌感染症を挙げることができる。
本発明における眼科用水性組成物の投与回数は、所望の薬効を奏するのに十分な回数であれば特に制限はなく、治療対象となる疾患やその症状、患者の年齢や体重に応じて適宜選択できる。例えば、1回量1〜数滴(例えば、1〜3滴、好ましくは1滴)を1日1〜数回(例えば、1〜6回)点眼投与することができる。
本発明における眼科用水性組成物の調製方法は、汎用されている方法で調製することができる。
本発明において、「澄明」とは、対象となる組成物をガラス製容器(ガラスバイアル、ガラスアンプルなど)に充填し、目視で確認した際に、該組成物が透明であることを意味する。
【実施例】
【0027】
以下に、試験例の結果を示すが、これらの例は本発明をよりよく理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
[試験例1]物理的安定性試験
本発明における眼科用水性組成物の保存中の性状変化の有無を目視で確認し、その物理的安定性を評価した。
(試料調製)
実施例1:
表1に示す処方に従って、実施例1の点眼液を調製した。具体的には、レボフロキサシン1/2水和物0.5g、デキサメタゾンリン酸エステルナトリウム0.1g、グリセリン2.5gを精製水に溶解して、水酸化ナトリウム溶液を添加して、pH7.0に調整し、全量を100mLとした。
実施例2〜9、比較例1〜3および参考例1:
表1に示す処方に従って、実施例1と同様に実施例2〜9、比較例1〜3および参考例1の各点眼液を調製した。
【0028】
(試験方法)
実施例1〜9、比較例1〜3および参考例1の各点眼液を無色透明のプラスチック製容器(5mL)に充填し、調製直後または室温もしくは60℃で7日間保存後の性状変化の有無を目視で確認し、その物理的安定性を評価した。不溶性析出物が認められず、澄明な溶液であった場合を○とした。不溶性析出物が認められ、澄明な溶液でなかった場合を×とした。
(試験結果)
試験結果を表1に示す。
表1
(単位:g/100mL)
*1:グリセリンの分子量は92.09である。
*2:プロピレングリコールの分子量は76.09である。
【0029】
試験例1の結果から、レボフロキサシンもしくはその塩またはそれらの溶媒和物と、デキサメタゾンもしくはそのエステルまたはそれらの塩と、等張化剤を含有する眼科用水性組成物であって、塩化ナトリウムを実質的に含有しない眼科用水性組成物は、不溶性析出物の発生が抑制され、澄明な溶液であることが示された。
[試験例2]熱安定性試験
本発明における眼科用水性組成物中のレボフロキサシン1/2水和物およびデキサメタゾンリン酸エステルナトリウムの熱安定性を検討した。
(試料調製)
実施例4:
表1に示す処方に従って、試験例1と同様にして実施例4の点眼液を調製した。
(試験方法)
実施例4の点眼液を40℃で2週間、1ヵ月間または25℃で1ヵ月間保存した後、該点眼液中のレボフロキサシンおよびデキサメタゾンリン酸エステルナトリウムの含有量を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて定量し、残存率を算出した。
【0030】
(試験結果)
試験結果を表2に示す。
表2
【0031】
表2から明らかなように、実施例4の点眼液は、40℃で2週後、1ヵ月後、または25℃で1ヵ月後において安定な結果を示した。なお、試験の前後において、該点眼液は、不溶性析出物が認められず、澄明な溶液であった。
[試験例3]薬物移行性試験
本発明における眼科用水性組成物を用いて、デキサメタゾンの房水移行性について検討した。
(試料調製)
実施例4、9〜16:
表3に示す処方に従って、試験例1と同様にして実施例4、9〜16の各点眼液を調製した。
(試験方法)
実施例4、9〜16の各点眼液をJW系雄性白色ウサギに単回点眼したときの房水中デキサメタゾン濃度をLC−MS/MS法で測定した。
(投与方法および測定方法)
1)各点眼液を角膜上にマイクロマンで50μL点眼した。
2)所定時間に無麻酔下で、ウサギを固定器に入れた状態で耳静脈よりペントバルビタール製剤(商品名:ソムノペンチル注射液)を注入して安楽死させた。
3)眼球を生理食塩液で洗浄した後、房水を採取した。
4)採取した房水は、1眼あたり50μLを使用して前処理を行なった後、LC−MS/MS法で房水中デキサメタゾン濃度を測定した。
【0032】
(試験結果)
房水中デキサメタゾン濃度(Cmax、4または6眼の平均値)を表3に示す。
表3
(単位:g/100mL)
表3に示したとおり、実施例4、9〜16の点眼液は、デキサメタゾンの高い房水移行性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明における眼科用水性組成物は、薬物の安定性および薬物移行性に優れた、澄明な溶液である。また、該組成物は、外眼部もしくは前眼部の炎症性疾患、または外眼部もしくは前眼部の細菌感染症に有用である。