(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
工程(1−1)を行った後、工程(1−2)を行う前に、金属調意匠層(B)と隣接するクリヤー塗膜層(C)上に保護層(F)を形成する工程(1−4)を有する請求項5記載の3次元成型品加飾用積層フィルムの製造方法。
工程(1−1)を行った後、工程(1−2)を行う前に、印刷によって意匠層(G)を形成する工程(1−4)を有する請求項5記載の3次元成型品加飾用積層フィルムの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
(3次元成型品加飾用積層フィルム)
本発明の3次元成型品加飾用積層フィルムは、3次元成型品の加飾成形において使用するフィルムである。すなわち、意匠性を有するフィルムを各種成型体に接着させて、成型体に意匠性を付与したり、表面保護機能を付与したりするものである。その際に、3次元形状の表面に沿った形に変形させて密着させるものである。
このように密着させる方法としては、公知の任意の方法を使用することができるが、例えば、真空成形、圧空成形等の方法によって変形させて密着させる方法を挙げることができる。また、金型内に加飾成形用積層フィルムを金型外壁面の形状に変形させ、その後、射出成型を行う方法等を挙げることができる。
【0018】
本発明の3次元成型品加飾用積層フィルムは、
(A)接着層、
(B)蒸着アルミを含有する塗膜層(B−1)又はインジウム若しくはスズからなる蒸着金属層(B−2)である金属調意匠層(B)
(C)エネルギー線硬化性塗膜からなるクリヤー塗膜層、及び、
(D)基材フィルム層
を有するものである。
すなわち、金属調の外観を有する(B)層を有しつつ、エネルギー線硬化性塗膜からなる塗膜層を形成することによって、これらの組み合わせで良好な金属外観を有し、三次元形状物に適用した場合にもワレや白化といった問題を生じることがなく、ハードコート性、フレキシブル性、耐薬品性、耐候性等の各種性能においても優れた加飾を行うことができるものである。
【0019】
上記各層のうち、接着層(A)は最外層であることが必要であり、上記金属調意匠層(B)は、エネルギー線硬化性塗膜からなるクリヤー塗膜層(C)と接着層(A)との間に存在するものである。これによって、加飾成形を行った後、金属調を有する金属調意匠層(B)の外側にクリヤー塗膜層(C)が形成されることとなるため、ハードコート性、耐薬品性、耐候性等の点においてすぐれた効果を得ることができる。
【0020】
更に、上記各層に加えて、必要に応じて離形層(E)、保護層(F)、印刷によって形成された意匠層(G)を形成したものであってもよい。保護層(F)は、これを設けることによって、金属調意匠層(B)の外観乱れが生じにくくなる点で好ましい。また、印刷によって形成された意匠層(G)を設けた場合は、印刷による意匠性と金属調意匠層による意匠性が組み合わされた特異的な意匠外観を得ることができる点で好ましい。
【0021】
また、印刷によって形成された意匠層(G)が、エネルギー線硬化型インクを使用した印刷である場合は、紫外線吸収層(H)を設けることが好ましい。すなわち、エネルギー線硬化型インクをフィルム作成時に硬化させる必要が生じるが、このインクの硬化の際に、クリヤー塗膜層(C)が同時に硬化することを防ぐことが好ましいためである。紫外線吸収層(H)は、上述した目的で設けられるものであることから、印刷によって形成された意匠層(G)とクリヤー塗膜層(C)との間に設けられることが好ましい。
【0022】
上述したような効果を得られる3次元成型品加飾用積層フィルムの層構成としては、例えば、
図1〜10に示したようなものを挙げることができる。
図1に示した3次元成型品加飾用積層フィルムは、接着層(A)、金属調意匠層(B)、エネルギー線硬化性塗膜からなるクリヤー塗膜層(C)、離形層(E)及び基材フィルム層(D)をこの順で積層したフィルムである。
【0023】
このような構成のフィルムは、接着層(A)により3次元成型品に接着し、加飾成形後に基材フィルム層(D)を剥離することによって、加飾を行う。これによって、接着層(A)、金属調意匠層(B)、エネルギー線硬化性塗膜からなるクリヤー塗膜層(C)の3層からなる加飾層が3次元成型品上に形成されるものである。
【0024】
図2に示した3次元成型品加飾用積層フィルムは、接着層(A)、金属調意匠層(B)、保護層(F)、エネルギー線硬化性塗膜からなるクリヤー塗膜層(C)、離形層(E)及び基材フィルム層(D)をこの順で積層したフィルムである。
【0025】
このような構成のフィルムは、接着層(A)により3次元成型品に接着し、加飾成形後に基材フィルム層(D)を剥離することによって、加飾を行う。これによって、接着層(A)、金属調意匠層(B)、保護層(F)、エネルギー線硬化性塗膜からなるクリヤー塗膜層(C)の4層からなる加飾層が3次元成型品上に形成されるものである。
【0026】
図3に示した3次元成型品加飾用積層フィルムは、接着層(A)、金属調意匠層(B)、基材フィルム層(D)及びクリヤー塗膜層(C)をこの順に積層したフィルムである。このようなフィルムにおいては、基材フィルム層(D)は、剥離されず、当該層も含めた加飾層が3次元成型品上に形成されるものである。
【0027】
図4に示した3次元成型品加飾用積層フィルムは、接着層(A)、金属調意匠層(B)、保護層(F)、基材フィルム層(D)及びクリヤー塗膜層(C)をこの順に積層したフィルムである。このようなフィルムにおいても基材フィルム層(D)は、剥離されず、当該層も含めた加飾層が3次元成型品上に形成されるものである。
【0028】
図5〜8に示した3次元成型品加飾用積層フィルムは、印刷によって形成された意匠層(G)を有する3次元成型品加飾用積層フィルムである。これらはそれぞれ、上述した
図1〜4に示した態様に対して、印刷によって形成された意匠層(G)を追加した構成である。
【0029】
図9,10に示した3次元成型品加飾用積層フィルムは、印刷によって形成された意匠層(G)に加えて、更に、紫外線吸収層(H)を設けた構成である。意匠層(G)を硬化させるためのエネルギー線照射を図の下側から行い、クリヤー塗膜層(C)を硬化させるためのエネルギー線照射を図の上側から行うことで、フィルム製造時はクリヤー塗膜層(C)を硬化させることなく、成形後にクリヤー塗膜層(C)を硬化することができる。
【0030】
これらの3次元成型品加飾用積層フィルムを構成する各層について、以下順次説明を行う。
【0031】
(接着層(A))
接着層(A)は、基材を積層フィルムにて加飾する際に、積層フィルムを基材表面に密着させて接着させるために用いられる。
【0032】
接着層(A)に含まれる接着剤としては、従来公知の接着剤であれば特に限定されないが、例えば、バイロンUR−3200(東洋紡社製)、UR−1361ET(東亜合成製)等を挙げることができる。
上記接着剤は、上記接着剤を塗布・乾燥することにより形成したものであっても、接着剤シートをラミネートして形成したものであってもよい。
【0033】
上記接着層(A)は、厚みを特に限定されるものではないが、例えば、3〜30μmであることが好ましく、5〜25μmであることがさらに好ましい。3μm未満だと接着が十分に確保できない可能性があり、30μmより大きいと塗工および乾燥が困難となり、またコストの面で不利となる。
【0034】
(金属調意匠層(B))
本発明は、金属からなるものであるかのような、すぐれた金属調の外観を得るために、蒸着アルミを含有する塗膜層(B−1)又はインジウム若しくはスズからなる蒸着金属層(B−2)を形成するものである。上記(B−1)又は(B−2)であるような金属調意匠層を形成することで、良好な金属外観が得られるだけでなく、3次元の成型品に対して加飾を行う際の延伸によって、ワレや白化を生じることがなく、良好な金属調を有するような加飾を行うことができる。
【0035】
このような金属調意匠層は、蒸着アルミを含有する塗膜層(B−1)又はインジウム若しくはスズからなる蒸着金属層(B−2)であることから、これらについて、以下、詳述する。
【0036】
(蒸着アルミを含有する塗膜層(B−1))
本発明における金属調意匠層を形成するための塗膜層として第一にあげられるのは、蒸着アルミ顔料を含有する塗料によって形成されたものである。
【0037】
このような蒸着アルミ顔料を含有する塗膜層(B−1)は、例えば、塗料固形分量に対して30〜85重量%の蒸着アルミ顔料を含有するメタリックベース塗料によって形成されたものを挙げることができる。
【0038】
上記蒸着アルミ顔料は、蒸着アルミニウム膜を細断してフレーク状にしたものである。このようなノンリーフィング蒸着アルミ顔料は、例えば、配向ポリプロピレン、結晶性ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチックフィルムをベースフィルムとして用い、その上に剥離剤を塗布し、剥離剤の上にアルミニウム蒸着を行うことによって製造することができる。
【0039】
上記蒸着アルミ顔料は、アルミフレーク等の通常のアルミ顔料とは異なり、粒子感の少ないものであり、これによって、金属表面のような鏡面状の外観を有する意匠層を提供することができる。
【0040】
上記蒸着アルミ顔料は、ノンリーフィング蒸着アルミ顔料であることがより好ましい。ノンリーフィング蒸着アルミ顔料は、粒子径が3〜20μm、厚みが0.01〜0.1μmであることが好ましい。上記粒子径を有するものであることによって、粒子感の少ない金属調の新たな意匠を得ることができる。上記粒子径は5〜15μmであることがより好ましい。なお、本明細書における粒子径とは、レーザー回折粒度分布計 LA−910(株式会社 堀場製作所製)にて測定した値である。本発明に使用することができる市販のノンリーフィング蒸着アルミとしては、メタシーン11−0010、41−0010、71−0010,91−0010、MS− 750, MS−650(チバスペシャリティー社製)及びシルバーラインP1000、P4100, Metalure L, Metalure A21010BG(エカルト社製)等を挙げることができる。
【0041】
なお、リーフィング処理とは、アルミニウムの表面に疎水性及び/又は疎油性剤によって行う処理である。本発明で使用するノンリーフィング蒸着アルミ顔料は、このようなリーフィング処理を施していないノンリーフィング蒸着アルミ顔料であることが好ましい。リーフィング蒸着アルミニウムを使用した場合、隣接する塗膜層との密着力が低下し密着性に不具合が生じる。よって、本発明においては、ノンリーフィング蒸着アルミニウムを使用することが好ましい。
【0042】
上記蒸着アルミ顔料は、上記蒸着アルミを含有する塗膜層(B−1)の固形分全量に対して30〜85重量%である。30重量%未満では、緻密金属光沢感を満たす光輝性塗膜が得られず、85重量%を超えると塗膜の物性が低下する。上記ノンリーフィング蒸着アルミ顔料の含有量は、より好ましくは、40〜80重量%である。
【0043】
上記蒸着アルミを含有する塗膜層(B−1)は、上記ノンリーフィング蒸着アルミ顔料に加えて、更にバインダー樹脂を含有する。バインダー樹脂としては特に限定されるものではなく塩化ビニル樹脂やアクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等を挙げることができ、これらのうち、2種類以上を混合して使用するものであってもよい。これらのなかでも特に塩化ビニル樹脂が好ましい。
【0044】
塩化ビニル樹脂は、市場から入手可能なものを用いることができる。上記塩化ビニル樹脂は、塩化ビニルの単独重合体であってもよいし、塩化ビニルと共重合しうる他のビニル単量体との共重合体であってもよい。上記共重合体としてより具体的には、塩化ビニルと酢酸ビニル、無水マレイン酸あるいはそのエステル類、ビニルエーテル、アクリル酸、アクリル系水酸基含有モノマー等との共重合体等を挙げることができる。
【0045】
これらの塩化ビニル樹脂の重合度は、通常200〜2000、好ましくは300〜1000である。入手が容易な塩化ビニル樹脂の市販品としては、日信化学工業製ソルバインC、CN、A、TA2、TAO、TAOL、M5;Wacker製Vinnol H11/59、E15/48A、LL4320、E15/45M;Dow UCAR社製VYHD、VAGD、VMCH、VMCC等を挙げることができる。これらのうち、2種以上を混合して使用することもできる。
【0046】
上記蒸着アルミを含有する塗膜層(B−1)は、アルミニウム凝集防止剤を添加したものであってもよい。この場合、アルミニウム凝集防止剤の作用によって、アルミニウムと樹脂との間での凝集破壊を抑制することができる点で好ましい。アルミニウム凝集防止剤としては、具体的にはダイアナ―ルRE360(三菱レーヨン社製)等を使用することができる。
【0047】
上記蒸着アルミを含有する塗膜層(B−1)は、上記特定ノンリーフィング蒸着アルミ顔料以外に、その他の光輝性顔料及び/又は着色顔料を含有することができる。
【0048】
その他の光輝性顔料としては、例えば、金属酸化物被覆アルミナフレーク顔料、金属酸化物被覆シリカフレーク顔料、グラファイト顔料、金属酸化物被覆マイカ顔料、金属チタンフレーク顔料、ステンレスフレーク顔料、板状酸化鉄顔料、金属めっきガラスフレーク顔料、金属酸化物被覆ガラスフレーク顔料、ホログラム顔料及びコレステリック液晶ポリマーからなるフレーク状顔料からなる群より選ばれた少なくとも1種の顔料が挙げられ、より好ましくは金属酸化物被覆アルミナフレーク顔料、金属酸化物被覆シリカフレーク顔料、グラファイト顔料、金属酸化物被覆マイカ顔料又は金属酸化物被覆ガラスフレーク顔料からなる群より選ばれた少なくとも1種の顔料が挙げられる。
【0049】
上記着色顔料として、例えば、アゾレーキ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ系顔料、ペリレン系顔料、キノフタロン系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属錯体顔料等が挙げられ、また、無機顔料としては、例えば、黄色酸化鉄、ベンガラ、二酸化チタン、カーボンブラックが挙げられる。
【0050】
上記蒸着アルミを含有する塗膜層(B−1)を形成するためのメタリックベース塗料は、上記成分の他に、ポリエチレンワックス、沈降防止剤、硬化触媒、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、シリコーンや有機高分子等の表面調整剤、タレ止め剤、増粘剤、消泡剤、架橋性重合体粒子(ミクロゲル)等を適宜添加して含有することができる。上記メタリックベース塗料は、溶剤系塗料、水系塗料等の形態とすることができる。
【0051】
上記蒸着アルミを含有する塗膜層(B−1)は、厚みが0.05〜5μmであることが好ましい。上記範囲外であると、白化やワレ等の問題を生じやすい点で好ましいものではない。
【0052】
(インジウム若しくはスズからなる蒸着金属層(B−2))
まず、蒸着金属層について説明する。
蒸着とは、真空にした容器の中で、蒸着材料を加熱・気化して、離れた位置に置かれた基材の表面に付着させ、薄膜を形成する工法である。本発明において、蒸着に使用される金属は、スズ、インジウムである。蒸着には10
−3〜10
−4Pa程度の真空度が必要なため、一旦、容器を真空状態にする必要がある。それゆえ、蒸着は完全なバッチ処理となり、連続的な処理が不可能である。
【0053】
また、フィルムへの蒸着工法は一般的に、(1)チャンバー内にフィルムロールおよびターゲット金属をセットし、(2)チャンバー内を真空排気(10
−3〜 10
−4Pa)し、フィルムの走行をスタート、(3)ターゲット加熱、蒸気発生でフィルム表面に蒸着され、(4)蒸着完了で、チャンバーを大気開放する工程からなる。部品への直接蒸着に比べ、バッチ処理でありながら、フィルム1ロール分が連続して加工されるため、経済効率が高い。また、蒸着膜の厚みや質が制御しやすいという利点がある。ただし、フィルムのままでは3次元形状物へ適用できないものである。
【0054】
本発明における上記インジウム若しくはスズからなる蒸着金属層(B−2)は、これらの金属を使用した通常の蒸着法によって形成することができる。インジウム若しくはスズを使用することによって、伸びが良好な金属層とすることができるため、3次元形状への成形を行う場合にワレや白化を生じることがなく、外観に悪影響を生じることもない。
【0055】
本発明においては、蒸着金属層として、インジウム若しくはスズを使用することで、不連続蒸着という作用によって、ワレや白化が生じにくいという利点を有するものである。
【0056】
このような蒸着金属層を形成する場合、その厚みは、0.05〜5μmであることが好ましい。このような厚みとすることで、上述した目的を良好に達成することができる。
【0057】
(クリヤー塗膜層(C))
本発明で使用するクリヤー塗膜層(C)は、エネルギー線硬化性塗膜であり、その具体的な組成は、積層フィルムとしての物性を害するものでない限り特に限定されるものではなく、公知のエネルギー線硬化性塗膜とすることができる。
なかでも、ポリウレタンアクリレート(C1)、不飽和2重結合を有するモノマー・オリゴマー(C2)及び重合開始剤(C3)を含有する活性エネルギー線硬化型コーティング組成物によって形成されたものであることが好ましい。このような組成のものとすることによって、使用時の延伸が容易になされ、深絞りにも容易に対応できるため、3次元形状への追随が良好となる。また、ブロッキングを生じにくいものとすることができるという利点も有する。
【0058】
更に、上記活性エネルギー線硬化型コーティング組成物は、(C1)の固形分重量、(C2)の固形分重量の合計量((C1)+(C2))100重量部中に、(C1)を50〜99重量部、(C2)を1〜50重量部の範囲内となるように含有し、(C1)の固形分重量及び(C2)の固形分重量の合計量((C1)+(C2))100重量部に対して(C3)を0.5〜20重量部の範囲内となるように含有するものであることが好ましい。これによって、硬化前の耐ブロッキング性、深絞り性 (延伸性)を有することができる。さらに硬化後の高い耐擦傷性、表面硬度、耐薬品性、耐衝撃性を有することができる。
以下、(C1)〜(C3)について詳細に説明する。
【0059】
(ポリウレタンアクリレート(C1))
ポリウレタンアクリレート(C1)は、ウレタン結合を分子内に有し、かつ(メタ)アクリレート基を分子中に有する化合物である。これを使用することによって、加飾成形を行う際の延伸性が向上し、深絞りにも容易に対応できるため、3次元形状への追随が良好となる。
【0060】
上記ポリウレタンアクリレート(C1)としては、特に限定されず、公知の任意のものを使用することができる。例えば、
i)分子内に2個以上のイソシアナート基を持つ化合物に、分子内に1個以上の水酸基と1個以上の2重結合基を持つ化合物とを当量反応させて得られる化合物、
ii)ポリオールと1塩基酸および/または多塩基酸および/またはその酸無水物との縮合物に、分子内に2個以上のイソシアナート基を持つ化合物を反応させたのち、さらに分子内に1個以上の水酸基と1個以上の2重結合基を持つ化合物を反応させて得られる化合物、
iii)ポリオールに、分子内に2個以上のイソシアナート基を持つ化合物を反応させたのち、さらに分子内に1個以上の水酸基と1個以上の2重結合基を持つ化合物を反応させて得られる化合物、
等が挙げられる。
【0061】
上記i)〜iii)において、分子内に1個以上の水酸基と1個以上の2重結合基を持つ化合物としては、例えば、2−ヒドロキシ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等や、市販品では、プラクセルF(M)Aシリーズ(ダイセル化学社の商品名)等が挙げられる。また、前記ii)〜iii)において、多価アルコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリカーボネートジオール、ポリテトラメチレングリコール、トリメチロールプロパン等や、市販品では、プラクセルジオールシリーズ(ダイセル化学社の商品名)、プラクセルトリオールシリーズ(ダイセル化学社の商品名)等が挙げられる。
【0062】
上記ポリオールとしては特に限定されず、公知のアクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等を使用することができる。また、エチレングリコール、ブタンジオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ネオペンチルグリコール等の各種低分子量ジオール等も必要に応じて使用することができる。
【0063】
上記ポリオールとしては、ポリカーボネート濃度:0.5〜75wt%(ポリウレタンアクリレート(C1)全量に対する割合)となる割合でポリカーボネートジオール骨格を有することが好ましい。ポリカーボネートジオール骨格を有するものを使用することで、強靭性が発現し、加飾成形時の膨れ防止、意匠外観保持(ワレ防止)が可能となる利点を有する。
上記ポリカーボネートジオールは、2〜70重量%であることがより好ましい。
【0064】
上記ポリイソシアネートとしては、イソシアネート基を2個以上有する化合物であれば特に限定されず、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート等の芳香族のもの;ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族のもの;イソホロンジイソシアネート等の脂環族のもの;その単量体及びそのビュレットタイプ、ヌレートタイプ、アダクトタイプ等の多量体等を挙げることができる。
【0065】
上記ポリイソシアネートの市販品としては、デュラネート24A−90PX(NCO:23.6%、商品名、旭化成社製)、スミジュールN−3200−90M(商品名、住友バイエルウレタン社製)、タケネートD165N−90X(商品名、三井化学社製)、スミジュールN−3300、スミジュールN−3500(いずれも商品名、住友バイエルウレタン社製)、デュラネートTHA−100(商品名、旭化成社製)等を挙げることができる。また、必要に応じてこれらをブロックしたブロックイソシアネートを使用することもできる。
【0066】
上記ポリウレタンアクリレート(C1)は、一部にウレア結合を有するものであってもよい。
ウレア結合を有するものとするためには、ポリウレタンアクリレートの合成において、一部にポリアミン化合物を使用すればよい。使用できるポリアミン化合物としては特に限定されず、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、トリアミノプロパン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)プロピレンジアミン、(2−ヒドロキシエチルプロピレン)ジアミン、(ジ−2−ヒドロキシエチルエチレン)ジアミン、(ジ−2−ヒドロキシエチルプロピレン)ジアミン、(2−ヒドロキシプロピルエチレン)ジアミン、(ジ−2−ヒドロキシプロピルエチレン)ジアミン、ピペラジン等の脂肪族ポリアミン;1,2−および1,3−シクロブタンジアミン、1,2−、1,3−および1,4−シクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン(IPDA)、メチレンビスシクロヘキサン2,4’−および/または4,4’−ジアミン、ノルボルナンジアミン等の脂環式ポリアミン;フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、2,4−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン,3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ビス−(sec−ブチル)ジフェニルメタン等の芳香族ジアミン;及びダイマー酸のカルボキシル基をアミノ基に転化したダイマージアミン、末端に一級又は二級アミノ基を有するデンドリマー等を挙げることができる。
【0067】
上記ポリウレタンアクリレート(C1)は、2重結合当量が130〜600g/eqであることが好ましく、150〜300g/eqであることがさらに好ましい。2重結合等量が130g/eq未満であると、硬化膜の耐クラック性、耐衝撃性に劣るという問題を生じるおそれがある。2重結合等量が600g/eqを超えると、擦傷性、表面硬度、耐薬品性に劣るという問題を生じるおそれがある。
【0068】
上記ポリウレタンアクリレート(C1)は、重量平均分子量が3000〜200000であることが好ましい。重量平均分子量が3000未満であると、耐ブロッキング性に劣るという問題を生じるおそれがある。重量平均分子量が200000を超えると、得られるポリウレタンアクリレート(C1)とクリヤー塗料組成物に含まれる不飽和2重結合を有するモノマー・オリゴマー(C2)等との相溶性が低下する。加えて重量平均分子量が200000を超えるとクリヤー塗料組成物の粘度が高くなる傾向にある。また、このような粘度の上昇を改善するために、有機溶剤を用いてクリヤー塗料組成物を希釈すると、クリヤー塗料組成物中の固形分量が著しく低下し、加工性が悪化するという問題を生じるおそれがある。なお、本明細書において、重量平均分子量は後述の方法により測定した。
【0069】
上記ポリウレタンアクリレート(C1)は、ウレタン濃度が300〜2000g/eqであることが好ましい。ウレタン濃度が300g/eq未満であると、得られるポリウレタンアクリレート(C1)とクリヤー塗料組成物に含まれる不飽和2重結合を有するモノマー・オリゴマー(C2)等との相溶性が低下する。加えてウレタン濃度が300g/eq未満であると、クリヤー塗料組成物の粘度が高くなる傾向にある。また、このような粘度の上昇を改善するために、有機溶剤を用いてクリヤー塗料組成物を希釈すると、クリヤー塗料組成物中の固形分量が著しく低下し、加工性が悪化するという問題を生じるおそれがある。ウレタン濃度が2000g/eqを超えると、耐ブロッキング性、耐衝撃性に劣るという問題を生じるおそれがある。
【0070】
上記ポリウレタンアクリレート(C1)は、ウレア濃度が500〜1000g/eqであることが好ましい。ウレア濃度が500g/eq未満であると、得られるポリウレタンアクリレート(C1)とクリヤー塗料組成物に含まれる不飽和2重結合を有するモノマー・オリゴマー(C2)等との相溶性が低下する。加えてウレア濃度が500g/eq未満であると、クリヤー塗料組成物の粘度が高くなる傾向にある。また、このような粘度の上昇を改善するために、有機溶剤を用いてクリヤー塗料組成物を希釈すると、クリヤー塗料組成物中の固形分量が著しく低下し、加工性が悪化するという問題を生じるおそれがある。ウレア濃度が1000g/eqを超えると、耐ブロッキング性に劣るという問題を生じるおそれがある。
【0071】
ポリウレタンアクリレート(C1)は、フッ素及び/又はシリコーンで変性されたものであってもよい。すなわち、フッ素やシリコーン単位を含有する単量体を使用して上述した方法によってポリウレタンアクリレート(C1)を合成するものであってもよいし、上述した方法によって得られたポリウレタンアクリレート(C1)が有する官能基をフッ素及び/又はシリコーンを有する化合物と反応させたものであってもよい。
【0072】
(不飽和2重結合を有するモノマー・オリゴマー(C2))
上記不飽和2重結合を有するモノマー・オリゴマー(C2)としては、公知の任意のものを使用することができ、例えば、以下の化合物を使用することができる。
【0073】
官能基数2の(メタ)アクリレートの例は、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ジメチロールートリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等を含む。なかでも、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等を好ましく用いることができる。
【0074】
官能基数3の(メタ)アクリレートの例は、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート等を含む。なかでも、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート等を好ましく用いることができる。
【0075】
官能基数4の(メタ)アクリレートの例は、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエチレンオキサイド変性テトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールプロピレンオキサイド変性テトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等を含む。なかでも、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等を好ましく用いることができる。
【0076】
官能基数4以上の(メタ)アクリレートの例は、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエチレンオキサイド変性テトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのカプロラクトン変性物のヘキサ(メタ)アクリレートなど多官能性(メタ)アクリレートが挙げられる。これらのモノマーは1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0077】
(メタ)アクリル系オリゴマーとしては、例えば、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。ここで、ポリエステルアクリレート系プレポリマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシアクリレート系プレポリマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。ウレタンアクリレートとしては、一般にポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールにイソシアネートモノマー、もしくはプレポリマーを反応させて得られた生成物に水酸基を有するアクリレートモノマーを反応させて得ることができる。
これらの(メタ)アクリル系オリゴマーは1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、また、上記多官能性(メタ)アクリレート系モノマーと併用してもよい。
【0078】
上記不飽和2重結合を有するモノマー・オリゴマー(C2)としては、日本合成化学工業社製UV 1700B等の市販のものも使用することができる。
【0079】
(重合開始剤(C3))
上記重合開始剤(C3)としては、紫外線(UV)や電子線等の電磁線によって重合が開始されるエネルギー線重合開始剤を使用することができる。これらのエネルギー線重合開始剤は特に限定されるものではなく、公知の任意のものを使用することができる。
【0080】
具体的には、上記エネルギー線重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル等のベンゾイン系化合物;2−エチルアントラキノン等のアントラキノン系化合物;ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;ジフェニルスルフィド等のスルフィド系化合物;2,4−ジメチルチオキサントン等のチオキサントン系化合物;2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン等のアセトフェノン系化合物;2,4,6−トリメチルベンゾインジフェニルホスフィノキサイド等のホスフィノキサイド系化合物;イルガキュア(登録商標)−184,イルガキュア−819(いずれもBASF社製)等の紫外線(UV)硬化用重合開始剤等を挙げることができる。これらの化合物は、重合開始剤として、1種又は2種以上を用いることができる。
【0081】
((C1)〜(C3)の配合量)
(C1)の固形分重量、(C2)の固形分重量の合計量((C1)+(C2))100重量部中に、(C1)を50〜99重量部、(C2)を1〜50重量部の範囲内となるように含有し、(C1)の固形分重量及び(C2)の固形分重量の合計量((C1)+(C2))100重量部に対して(C3)を0.5〜20重量部の範囲内となるように含有するものであることが好ましい。
【0082】
上記ポリウレタンアクリレート(C1)の含有量が50重量部未満であると、耐ブロッキング性が低下するという点で好ましいものではない。上記ポリウレタンアクリレート(C1)の含有量が99重量部を超えると、耐擦傷性、表面硬度が不充分となる点で好ましいものではない。上記下限は、55重量部以上であることがより好ましく、65重量部以上であることが更に好ましい。上記上限は、98重量部以下であることがより好ましく、95重量部以下であることが更に好ましい。
【0083】
上記不飽和2重結合を有するモノマー・オリゴマー(C2)の含有量が1重量部未満であると、耐擦傷性、表面硬度が不充分となる点で好ましいものではない。上記不飽和2重結合を有するモノマー・オリゴマー(C2)の含有量が50重量部を超えると、耐ブロッキング性が低下するという点で好ましいものではない。上記下限は、2重量部以上であることがより好ましく、5重量部以上であることが更に好ましい。上記上限は、45重量部以下であることがより好ましく、35重量部以下であることが更に好ましい。
【0084】
上記重合開始剤(C3)の含有量が0.5重量部未満であると、クリヤー層を十分に硬化させることができず、得られるクリヤーの耐擦傷性、表面硬度、耐薬品性、耐衝撃性の塗膜物性を得られない可能性がある。上記重合開始剤(C3)の含有量が20重量部を超えると、クリヤー塗膜内に未反応の重合開始剤(C3)が残存し、屋外での太陽光等によって、クリヤー塗膜が劣化し、耐候性が悪化する可能性がある。
【0085】
上記クリヤー塗料組成物は、チオール基及び/又はアミン基を有するモノマーを0.5〜20重量部含有することが好ましい。
上記チオール基及び/又はアミン基を有するモノマーとしては、特に限定されず、通常使用されるチオール化合物、及び、アミン化合物を挙げることができる。
【0086】
上記アミン化合物としては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、等の脂肪族ポリアミン:1,2−および1,3−シクロブタンジアミン、1,2−、1,3−および1,4−シクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン(IPDA)、メチレンビスシクロヘキサン2,4’−および/または4,4’−ジアミン、ノルボルナンジアミン等の脂環式ポリアミン:フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、2,4−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4−ビス−(sec−ブチル)ジフェニルメタンなどの芳香族アミン:及びダイマー酸のカルボキシ基をアミノ基に転化したダイマー酸ジアミン、末端にアミノ基を有するデンドリマー、アミンを繰返し構造として有するポリアミンを用いることもできるがこれらに限定されない。
【0087】
上記チオール化合物としては、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、エチレングリコールジメルカプトプロピオネート、ジエチレングリコールジメルカプトプロピオネート、4−t−ブチル−1,2−ベンゼンジチオール、ビス−(2−メルカプトエチル)スルフィド、4,4’−チオジベンゼンチオール、ベンゼンジチオール、グリコールジメルカプトアセテート、グリコールジメルカプトプロピオネート、エチレンビス(3−メルカプトプロピオネート)、ポリエチレングリコールジメルカプトアセテート、ポリエチレングリコールジ−(3−メルカプトピロピオネート)、2,2−ビス(メルカプトメチル)−1,3−プロパンジチオール、2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン、ビスフェノフルオレンビス(エトキシ−3−メルカプトプロピオネート)、4,8−ビス(メルカプトメチル)−3,6,9−トリチア−1,11−ウンデカンジチオール、2−メルカプトメチル−2−メチル−1,3−プロパンジチオール、1,8−ジメルカプト−3,6−ジオキサオクタン、チオグリセロールビスメルカプト−アセテート等の2官能チオール:トリメチロールプロパン(トリスメルカプトプロピオネート)(TMPTMP)、トリメチロールプロパン トリス(3−メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタン トリス(3−メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトアセテート)、トリス(3−メルカプトプロピル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチリルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,2,3−トリメルカプトプロパン、及びトリス(3−メルカプトプロピオネート)トリエチル−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン、等の3官能チオール:ポリ(メルカプトプロピルメチル)シロキサン(PMPMS)、4−メルカプトメチル−3,6−ジチア−1,8−オクタンジチオールペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトアセテート)、及びペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトール ヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトール テトラキス(3−メルカプトブチレート)等の多官能チオールを含むが、これらに限定されない。
【0088】
本発明の3次元成型品加飾用積層フィルムにおいて使用されるクリヤー塗膜層(C)は、上述したようなものであるが、更に好ましくは、ポリウレタンアクリレート(C1)が
2重結合当量:130〜600g/eq
分子量Mw:3000〜200000
ウレタン濃度:300〜2000g/eq、
である塗料組成物によって形成されたものであることが好ましい。これらの性質を満たすものを使用することが好ましい。このようなクリヤー塗料組成物によってクリヤー塗膜層(C)を形成することによって、耐ブロッキング性、高い耐擦傷性,表面硬度,耐薬品性を備え,良好な耐衝撃性を付与することができる点で好ましいものである。さらに、上記ポリウレタンアクリレート(C1)は、ウレア濃度:500〜1000g/eqであることが好ましい。
【0089】
なお、本明細書における重量平均分子量は、東ソー(株)製HLC−82220GPCを用いて測定した。測定条件は下記の通りである。
カラム:TSKgel Super Multipore HZ−M 3本
展開溶媒:テトラヒドロフラン
カラム注入口オーブン 40℃
流量:0.35 ml/min.
検出器:RI
標準ポリスチレン:東ソー (株)PSオリゴマーキット
【0090】
(その他の成分)
クリヤー塗料組成物は、通常、塗料材料として添加される化合物が、その他の成分として含まれていてもよい。その他の成分としては、紫外線吸収剤(UVA)、光安定剤(HALS)、バインダー用樹脂や架橋剤、顔料、表面調整剤、消泡剤、導電性充填剤、溶剤等を挙げることができる。
【0091】
さらに、クリヤー塗料組成物に含まれる各成分の混合や粘度調整のために溶剤を用いてもよい。該溶剤としては、例えば、エステル系、エーテル系、アルコール系、アミド系、ケトン系、脂肪族炭化水素系、脂環族炭化水素系、芳香族炭化水素系等、塗料に用いられる従来公知の有機溶媒を、1種又は2種以上を組み合わせて用いればよい。なお、上記溶剤を用いる場合、積層フィルムに揮発性物質が残存すると、基材への加飾に際して、揮発性物質が揮散して、ピンホールや膨れが生じることがある。そのため、積層フィルムに含まれる揮発性物質を十分に低減することが好ましい。
【0092】
更に、上記クリヤー塗料組成物は、更に、平均1次粒子径が100nm以下の無機・有機フィラーを0.5〜60重量部含有することが好ましい。これによって、耐ブロッキング性、高い耐擦傷性,表面硬度を改善することができる。上記配合量の下限は、1重量%であることがより好ましく、上限は50重量%であることがより好ましい。
【0093】
上記無機フィラーとしては、シリカ、微粉末ガラス、アルミナ、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、セピオライト(マグネシウム珪酸塩)、タルク(珪酸マグネシウム)、マイカ(珪酸アルミ)、ゾノトライト(珪酸カルシウム)、硼酸アルミニウム、ハイドロタルサイト、ウォラストナイト(珪酸カルシウム)、チタン酸カリウム、酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、イットリア、セリア、炭化ケイ素、炭化ホウ素、ジルコニア、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、あるいはこれらの共融混合物、または成型、焼成などを経て得られる非金属無機材料いわゆるセラミックスフィラーが挙げられる。その中で価格と効果の面からシリカ、アルミナ、ジルコニア、あるいはこれらの共融混合物が好ましい。
【0094】
上記有機フィラーとしては、アクリル、スチレン、シリコーン、ポリウレタン、アクリルウレタン、ベンゾグアナミン、ポリエチレンの各樹脂のビーズが挙げられる。
また、市販のものとして、オルガノシリカゾルMIBK−ST, MEK−ST−UP、MEK−ST−L,MEK−AC−2140Z (日産化学工業製)、SIRMIBK15ET%−H24、 SIRMIBK15ET%−H83、ALMIBK30WT%−H06(CIKナノテック)等を使用することができる。
【0095】
クリヤー塗料組成物は、イソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物を0.5〜20重量%(塗料中の固形分比)含有するものであってもよい。ポリイソシアネート化合物を配合することによって、成形性(延伸性)と耐擦傷性を付与できる点で好ましい。上記配合量の下限は、2重量%であることがより好ましく、上限は18重量%であることがより好ましい。
【0096】
上記クリヤー塗料組成物は、着色顔料を含有した有色透明なものであってもよい。すなわち金属調意匠層とこのような着色透明であるクリヤー層との組み合わせによって、着色した金属調意匠を有する加飾を行うことができる。上記クリヤー塗料組成物において使用できる着色顔料は特に限定されず、公知の任意のものを使用することができる。
【0097】
(基材フィルム層(D))
基材フィルム層(D)は、本発明の積層フィルムを製造する際のキャリアフィルムとしての働きをもなすものである。すなわち、本発明の3次元成型品加飾用積層フィルムの製造時に、各層を形成するための基材として使用されるものである。また、上述した
図3,4に示したような態様においては、加飾処理を行った後にも成型体上に存在するものもある。この場合には、単なる基材としての役割だけではなく、表面保護機能等の機能も発揮する。
【0098】
基材フィルム層(D)を形成するフィルムとしては、特に限定されず、例えば、軟質塩化ビニルフィルム、無延伸ポリプロピレンフィルム、無延伸ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、アクリル樹脂フィルム、フッ素フィルム等の従来公知のフィルムが挙げられる。これらの中でも、ポリエステルおよび/またはポリオレフィンにより形成されるフィルムが好ましく、特に省エネ低温加工性の点からは無延伸ポリエステルフィルムがより好ましい。上記基材フィルム層(D)の厚みは、0.01〜0.5mmであることが好ましく、0.02〜0.3mmであることがより好ましい。この範囲を外れると、キャリアフィルムとしての働きや、電磁線硬化の際の経済性の点で好ましくない。
【0099】
(離型層(E))
本発明における離型層(E)は、公知の任意のものを使用することができ、例えば、シリコーン系離型剤等によって形成することができる。
離型層(E)とクリヤー塗膜層(C)の剥離強度は、0.05〜8.0N/25mmであることが好ましく、0.1〜5.0N/25mmであることがさらに好ましい。0.05N/25mm未満であると、フィルム製造時、加飾成形時に基材フィルム層(D)が剥離するなど、作業性が悪く、また、8.0N/25mmを超えると、成形後フィルムを剥離する場合に、剥離が困難となる恐れがある。
【0100】
(保護層(F))
本発明の3次元成型品加飾用積層フィルムは、更に金属調意匠層(B)に隣接する形で保護層(F)を形成したものであってもよい。すなわち、金属調意匠層(B)は、クリヤー塗膜層(C)と接する位置に設けた場合、未硬化状態での延伸によって未硬化状態のクリヤー塗膜層(C)が動く際に、金属調意匠層(B)が動いてしまい、これによって外観の悪化を生じる場合がある。
【0101】
更に、金属調意匠層(B)がインジウム若しくはスズからなる蒸着金属層(B−2)である場合、その製造において、未硬化状態のクリヤー塗膜層(C)上に蒸着金属層を形成することが困難となる場合がある。よって、このような問題を軽減させるという観点からも、蒸着性が良好であるような保護層(F)を設け、このような問題を改善することが望ましい。
【0102】
また、金属調意匠層(B)は、他の層との接着性が悪い場合もある。このため、他素材との接着性に優れた素材による保護層(F)を形成し、当該保護層(F)上に金属調意匠層(B)を形成し、これによって、他層との接着性を向上させることも好ましい。これによって、例えば、
図2の態様であればクリヤー塗膜層(C)、
図4の態様であれば、基材フィルム層(D)との接着性を改善させることができる。
【0103】
上記保護層(F)としては特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂等の樹脂を使用することができ、ウレタン樹脂が好ましく、ウレア結合含有ウレタン樹脂がさらに好ましい。1種単独でまたは2種以上を併用して配合することができる。
【0104】
(印刷によって形成された意匠層(G))
本発明3次元成型品加飾用積層フィルムは、印刷によって形成された意匠層(G)を有するものであってもよい。このような層を設けることによって、印刷層と金属調意匠層との組み合わせによる特異的な外観が得られる点で好ましい。印刷の方法は特に限定されず、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷又はフレキソ印刷等の公知の方法によって形成することができる。特に、インクジェット印刷を使用することで、安価に種々の印刷層を形成することができる点で好ましい。また、印刷に際しては、エネルギー線硬化型のインクを使用した印刷を行うものであってもよい。
【0105】
(紫外線吸収層(H))
上記紫外線吸収層(H)は、バインダー樹脂(H−1)及び紫外線吸収剤(H−2)を含有する塗料組成物によって形成されたものであることが好ましい。
【0106】
上記バインダー樹脂(H−1)としては、特に限定されず、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂等の樹脂を使用することができ、ウレタン樹脂が好ましく、ウレア結合含有ウレタン樹脂がさらに好ましい。1種単独でまたは2種以上を併用して配合することができる。
紫外線吸収層(H)全量に対して85〜99重量%の範囲内であることが好ましい。
【0107】
上記紫外線吸収剤(H−2)としては、特に限定されず、例えば、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ヒドロキシベンゾエート系紫外線吸収剤等を使用することができる。
【0108】
(破断伸度)
本発明の3次元成型品加飾用積層フィルムは、硬化前に、40〜130℃で30〜400%の破断伸びを有するものであることが好ましい。すなわち上記の温度範囲で、このような破断伸度を有するものとすることで、深絞り成形に容易に対応できるものとなり、本発明の効果を好適に得ることができる。このような数値範囲内のものとすることは、フィルムを形成する各層の成分を調製することで可能となる。本発明において、「40〜130℃で30〜400%の破断伸びを有する」とは、破断伸びが30〜400%を示す温度領域が40〜130℃内にあり、その温度で成形することで、十分な延伸性が得られる。という意味である。
【0109】
なお、破断伸度は、基材フィルム層(D)を含む状態で島津製作所製オートグラフAG−ISを用い、40〜130℃の温度範囲内で、50mm/minの引張速度にて測定し、いずれかの層が破断した時点の伸びを測定して得られた値である。フィルムの性質に応じて、40〜130℃の範囲内のいずれかの任意の温度において、破断伸びが上述した範囲のものとなればよい。
【0110】
(積層フィルムの製造方法)
本発明の3次元成型品加飾用積層フィルムを構成する金属調意匠層(B)、基材フィルム層(D)以外の各層は、各層を構成する成分を溶剤に溶解した塗料組成物を調製し、これを基材フィルム層(D)上に塗布・乾燥することで、形成することができる。
以下に、より具体的な方法の例を幾つか提示するが、これらは製造方法の例を示すものであり、本発明の3次元成型品加飾用積層フィルムは、以下に示す製造方法の具体例によって限定されるものではない。
【0111】
より具体的には、例えば、基材フィルム層(D)上に、エネルギー線硬化性塗膜からなるクリヤー塗膜層(C)を形成する工程(1−1)、
工程(1−1)を行ったフィルム上に蒸着アルミを含有する塗膜層(B−1)又はインジウム若しくはスズからなる蒸着金属層(B−2)である金属調意匠層(B)を形成する工程(1−2)及び
工程(1−2)によって得られたフィルム上に接着層(A)を形成する工程(1−3)を有することを特徴とする製造方法によって得ることができる。
また、工程(1−1)を行った後、工程(1−2)を行う前に、印刷によって意匠層(G)を形成する工程(1−4)を有するものであってもよい。
【0112】
上記各層を形成するための塗布方法としては、特に限定されないが、例えば、スプレーによる吹付け塗布、アプリケーターや、ダイコーター、バーコーター、ロールコーター、コンマコーター、ローラブラシ、はけ、へら等を用いて塗布すればよい。上記塗布方法にて、塗料溶液を塗布した後、該塗料溶液中の溶剤を除去するために、加温乾燥を行って、形成することができる。
【0113】
また、上述したように、接着層(A)に関しては、塗布・乾燥という方法ではなく、ラミネート法によって接着するものであってもよい。すなわち、接着層(A)によって形成されたフィルムを調製し、これをフィルムにラミネートによって接着させる方法で形成してもよい。更には、接着層(A)及び金属調意匠層(B)からなる積層フィルムを作成し、これを別途作成した基材フィルム層(D)及びクリヤー塗膜層(C)を有する複層フィルム上にラミネートする方法によって形成してもよい。更には、このような方法に従って製造する場合、別途作成した基材フィルム層(D)及びクリヤー塗膜層(C)及び保護層(F)からなる積層フィルムとして同様の製造方法によってフィルムを作成してもよい。
【0114】
これをより具体的な工程として示すと、
基材フィルム層(D)上に、エネルギー線硬化性塗膜からなるクリヤー塗膜層(C)を形成する工程(2−1)、
別途、基材フィルム層(X)上に、接着層(A)及び蒸着アルミを含有する塗膜層(B−1)又はインジウム若しくはスズからなる蒸着金属層(B−2)である金属調意匠層(B)を形成する工程(2−2)、並びに、
上記工程(2−1)で得られたフィルムと上記工程(2−2)で得られたフィルムとを接着させる工程(2−3)
を有するものであってもよい。
【0115】
なお、このような方法によって3次元成型品加飾用積層フィルムを作成する場合、基材フィルム層(X)は、上述した基材フィルム層(D)と異なるものであってもよいし、同様のものとすることもできる。更に、3次元成型品加飾用積層フィルム作成後又は作成中の途中の工程において剥離を行ってもよいし、最終製品中に基材フィルム(D)と基材フィルム(X)とがそれぞれ両面に存在するものであってもよい。
【0116】
上記金属調意匠層(B)が、インジウム若しくはスズからなる蒸着金属層(B−2)である場合、蒸着金属層の形成を行う必要がある。このような蒸着金属層の形成方法は特に限定されるものではなく、通常の公知の方法によって行うことができる。
【0117】
(使用方法)
本発明の3次元成型品加飾用積層フィルムを用いて基材を加飾する場合には、従来公知の手法と同様に行えばよく、特に限定されるものではない。すなわち、必要に応じて積層フィルムから基材フィルム層(D)を剥離し、接着層が基材表面に面するようにして、基材表面に積層フィルムを密着するように、該積層フィルムを圧着させて加飾する。その後、電磁波照射又は加熱を行い、各層を硬化させて、塗膜を得る。また、
図1及び
図2に示した層構成の複層フィルムの場合には、圧着、硬化後に基材フィルム層(D)を剥離してもよい。なお、積層フィルムを基材表面に密着させる場合には、真空成形、射出成型による加熱、成型等を行うことができる。また、
図3,4の態様の場合は、基材フィルム層(D)の剥離は必要とされない。
【0118】
本発明の積層フィルムを真空成形において適用する場合は、成形時、基材とフィルムとの間が70kPa以下であるような真空条件下で接着が行われるものであることが好ましい。このような真空度での成形を行うことで、接着層(A)と成型体との間に空気が入り込むことがなくなり、高密着性の加飾を行うことができる点で好ましい。
【0119】
また、加飾のための成形は、積層フィルムとして伸びが30〜400%となるような温度を40〜130℃の温度範囲内から選定して行うことが好ましい。これによって、積層フィルムが好適に高伸度に対応できることから、良好な真空成形を行うことができる。
【0120】
なお、本発明の積層フィルムによって好適に加飾を施すことができる基材は、特に限定されないが、例えば、バンパー、フロントアンダースポイラー、リヤーアンダースポイラー、サイドアンダースカート、サイドガーニッシュ、ドアミラー等の自動車外装部品、インパネ、センターコンソール、ドアスイッチパネル等の自動車内装部品、携帯電話やオーディオ製品、冷蔵庫、ファンヒータ、照明器具等の家電製品の筐体、洗面化粧台等を挙げることができる。
【実施例】
【0121】
以下、本発明を実施例によって説明する。実施例中、配合割合において%とあるのは特に言及がない限り重量%を意味する。本発明は以下に記載した実施例に限定されるものではない。
(合成例 ポリウレタンの合成)
攪拌機、還流冷却管、温度計、空気吹き込み管、及び材料投入口を備えた反応容器を用意した。
反応容器の内部を空気で置換しながら、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール(商品名「デュラノールT6001」、旭化成ケミカルズ(株)製、末端官能基定量による数平均分子量=1,000)200.0g、1,4−ブタンジオール80.0g、及びジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合体(水酸基価102.9mgKOH/g)120.0gを仕込んだ。
次いで、溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)238.1gを仕込んだ。系内が均一となった後、50℃で4,4’−メチレンビス−シクロヘキシルジイソシアネート314.2gを仕込み、触媒としてジブチルチンラウリレートを使用して80℃で反応させた。溶剤希釈により反応液の粘度を調整し、赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基による2,270cm−1の吸収が消失するまで反応を進行させた。MEKとシクロヘキサノンの質量比が1:1となるまでシクロヘキサノンを添加して、ポリウレタンを含有する樹脂溶液を得た。
得られた樹脂溶液の粘度は200dPa・s/20℃、固形分は45%、2重結合当量は600g/eqであった。また、GPCにより測定したポリウレタンの重量平均分子量は44,000であった。
【0122】
〔積層フィルムの製造例〕
<クリヤー塗料溶液の調整>
攪拌機を備えた容器に、ポリウレタンアクリレート(C1)、モノマー(C2)を入れ、攪拌しながら最終の塗料がNV=40%となる量のMEKを入れ、さらに重合開始剤(C3)を入れ、30分間攪拌し、クリヤー塗料溶液を得た。
【0123】
<蒸着アルミ含有塗料溶液の調整>
攪拌機を備えた容器に、バインダー樹脂(B1)及び蒸着アルミ(B2)を入れ、攪拌しながら最終の塗料がNV=2%となる量のMIBKを入れ、30分間攪拌し、蒸着アルミ含有塗料溶液を得た。
【0124】
<積層フィルムの作製1>
離形層(E)を形成した基材フィルム(D)上に、乾燥した時の膜厚(以下、乾燥膜厚)が20μmのクリヤー塗膜層(C)が得られるように、上記クリヤー塗料溶液を、アプリケーターを用いて塗布し、80℃にて15分間乾燥させてクリヤー塗膜層(C)を形成した。
なお、以下では、基材フィルム層(D)上にクリヤー塗膜層(C)が形成されてなるものを、(D+C)層フィルムと記載する。
【0125】
次いで、上記(D+C)層フィルムのクリヤー塗膜層(C)上に、所定の乾燥膜厚の金属意匠層(B)が得られるように、上記蒸着アルミ含有塗料溶液を、バーコーターを用いて塗布し、その後、80℃にて15分間乾燥させ、金属蒸着層(B)を形成した。
続いて金属意匠層(B)上に、乾燥膜厚が20μmの接着剤層が得られるように、接着剤(バイロンUR−3200、東洋紡社製またはUR−1361ET、東亜合成社製)を、アプリケーターを用いて塗布し、80℃にて15分間乾燥させ、接着剤層を形成した。
【0126】
<積層フィルムの作製2;
図2に示す積層構造のフィルムの作成2(実施例8)>
接着層(A)の形成において、接着層からなるフィルムを調整し、これを、MCK(株) MRK−650Yを使用したラミネート法によって、上述した方法によって得られた(B)〜(E)層からなる積層フィルムに接着することによって、積層フィルムを得た。ラミネートは、以下の条件によって行った。
直径80mmの耐熱シリコンゴムロール
温度:85℃、速度:42cm/min
【0127】
<積層フィルムの作製3>
基材フィルム(D)上に、乾燥した時の膜厚(以下、乾燥膜厚)が20μmのクリヤー塗膜層(C)が得られるように、上記クリヤー塗料溶液を、アプリケーターを用いて塗布し、80℃にて15分間乾燥させてクリヤー塗膜層(C)を形成した。
なお、以下では、基材フィルム層(D)上にクリヤー塗膜層(C)が形成されてなるものを、(D+C)層フィルムと記載する。
【0128】
次いで、上記(D+C)層フィルムのクリヤー塗膜層(C)とは反対側に、所定の乾燥膜厚の金属意匠層(B)が得られるように、上記蒸着アルミ含有塗料溶液を、バーコーターを用いて塗布し、その後、80℃にて15分間乾燥させ、金属意匠層(B)を形成した。
【0129】
続いて、金属意匠層(B)上に、乾燥膜厚が20μmの接着剤層が得られるように、接着剤(バイロンUR−3200、東洋紡社製またはUR−1361ET、東亜合成社製)を、アプリケーターを用いて塗布し、80℃にて15分間乾燥させ、接着剤層を形成した。
【0130】
<積層フィルムの作製4>
攪拌機を備えた容器に、バインダー樹脂(H1)、紫外線吸収剤(H2)を入れ、攪拌しながら最終の塗料がNV=40%となる量のMEKを入れ、30分間攪拌し、紫外線吸収塗料溶液を得た。
紫外線吸収層を設ける場合は、乾燥した時の膜厚(以下、乾燥膜厚)が20μmの紫外線吸収層(H)が得られるように、紫外線吸収塗料溶液を、アプリケーターを用いて塗布し、その後、80℃にて15分間乾燥させて紫外線吸収層(H)を形成した。
【0131】
<保護層の積層>
保護層を設ける場合は、乾燥した時の膜厚(以下、乾燥膜厚)が20μmの保護層(F)が得られるように、所定のバインダー溶液もしくは、ウレタン樹脂とアクリル樹脂の混合溶液を、アプリケーターを用いて塗布し、その後、80℃にて15分間乾燥させて保護層(F)を形成した。
【0132】
〔積層フィルムによって加飾された成形体の製造例〕
上下ボックスからなる両面真空成形装置(商品名NGF−0709、布施真空(株)社製)内に装備された上下昇降テーブル上に、ABS製基材(成型品)を載置した。その後、上記両面真空成形装置の成型基材(成型品)の上部にあるシートクランプ枠に、上記にて得た積層フィルムをセットした。続いて、上下ボックス内の真空度が1.0kPaになるように減圧し、近赤外線ヒータを用いて積層フィルムの温度が90℃になるまで加熱し、成型基材を上昇させて、成型基材と積層フィルムとを圧着、その後、上ボックスにのみ200kPaの圧縮空気を導入し、35秒間保持した。
【0133】
上下ボックスを大気圧に開放し、積層フィルムで加飾された加飾成形体を得た。
さらに、上記加飾成形体のクリヤー塗膜層(B)側から、120W/cmの高圧水銀灯を用いて、2000mJ/cm
2の光量の紫外線を照射し、クリヤー塗膜層(B)のクリヤー塗料を硬化させ、UV(紫外線)硬化成形体を得た。
【0134】
なお、以下に示す各表中で、以下の成分を使用した。
UV 1700B (日本合成化学工業);ウレタンアクリレートオリゴマー
ルシリンTPO(BASF);2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド
ノバクリアSG007(三菱樹脂) A−PETシート
ソフトシャイン(東洋紡) 二軸延伸ポリエステルフィルム
1321(東亜合成):塩ビ、酢ビ共重合樹脂
TE−5430(三井化学):ウレタン樹脂
RT−87140(Morton):アクリル樹脂
D−178N(三井化学):アロファネート変性したポリヘキサメチレンジイソシアネート
ソルバインM5(日信化学工業):塩化ビニル樹脂
メタシーン71−0010(チバスペシャリティー):蒸着アルミ
UR−3200(東洋紡):ポリエステルウレタン樹脂
【0135】
得られた積層フィルムについて、以下の基準に基づいて評価を行った。
伸度:基材込みにて島津製作所製オートグラフAG−ISを用い80℃の温度条件下、50mm/minの引張速度にて測定した。
いずれかの層が破断した時点で、伸びを判定した。
【0136】
成形性:布施真空(株)製両面真空成形機NGF−0709を用いてTOM成形にて確認
◎:基材に高延伸部まで追随し成形可能
○:基材に中延伸部まで追随し成形可能
△:基材に低延伸部まで追随し成形可能
×:成形不可
【0137】
金属外観:成形後の延伸された部分を目視にて評価
◎:基材に高延伸部まで追随し金属外観良好
○:基材に中延伸部まで追随し金属外観良好
△:基材に低延伸部まで追随し金属外観良好
×:ワレ、白化発生
【0138】
成形後耐SW性:耐スチールウール性試験機を用いて、100g/cm
2荷重にて#0000のスチールウールを10往復
◎:傷なし
○:2〜3本の傷
△:数えられる程度の傷
×:傷が無数
【0139】
成形後耐衝撃性:デュポン耐衝撃試験機を用い、高さ20cmから重さ500gの重りを落下させ、塗膜のワレを確認
○:ワレなし
△:塗膜にわずかなひび
×:塗膜に顕著なひび
【0140】
成形後耐薬品性:内径38mm 高さ15mmの円筒のポリリングを塗膜に固定し、下記の溶液を滴下。各条件下にてフタをして静置。試験後、水洗いして塗膜の状態初期と比較する。
耐酸 0.1N H2SO4溶液 5ml 20℃×24h
耐アルカリ 0.1N NaOH溶液 5ml 55℃×4h
耐水 蒸留水 5ml 55℃×4h
◎:塗膜に変化なし
○:塗膜外観がわずかに変化(しわ、クラック)
△:塗膜外観が明らかに変化(しわ、クラック)
×:塗膜外観が著しく変化(しわ、クラック)
【0141】
結果を以下の表1、2、4〜7、9〜12に示す。
【0142】
【表1】
【0143】
【表2】
【0144】
なお、上記表2中の配合A〜Dは、以下の表3に示した処方のものを使用した。
【0145】
【表3】
【0146】
【表4】
【0147】
【表5】
【0148】
【表6】
【0149】
【表7】
【0150】
【表8】
【0151】
【表9】
【0152】
【表10】
【0153】
【表11】
【0154】
【表12】
【0155】
以上の実施例の結果から、本発明の3次元成型品加飾用積層フィルムは、成形性も良好であり、得られた成形品は良好な金属調の意匠性を有するものであることが明らかである。