特許第6683630号(P6683630)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6683630
(24)【登録日】2020年3月30日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】しゅう動部品
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/34 20060101AFI20200413BHJP
   F16C 17/04 20060101ALI20200413BHJP
   F16C 33/10 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
   F16J15/34 G
   F16C17/04 Z
   F16C33/10 Z
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-574792(P2016-574792)
(86)(22)【出願日】2016年2月8日
(86)【国際出願番号】JP2016053657
(87)【国際公開番号】WO2016129553
(87)【国際公開日】20160818
【審査請求日】2018年8月21日
(31)【優先権主張番号】特願2015-27032(P2015-27032)
(32)【優先日】2015年2月14日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100201259
【弁理士】
【氏名又は名称】天坂 康種
(72)【発明者】
【氏名】細江 猛
(72)【発明者】
【氏名】井上 秀行
(72)【発明者】
【氏名】根岸 雄大
【審査官】 保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】 実開平01−158853(JP,U)
【文献】 特開2013−242047(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第101016949(CN,A)
【文献】 特表2004−507669(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C17/00−17/26
33/00−33/28
F16J15/34−15/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のしゅう動部品の互いに相対しゅう動する少なくとも一方側のしゅう動面にディンプルが複数配置されたしゅう動部品において、
前記複数のディンプルは相互に他のディンプルと独立して設けられるとともに,開口径の異なる前記複数のディンプルがランダムに分布するように配置され,
前記複数のディンプルの面積比率は、前記しゅう動面の高圧流体側に比べて低圧流体側において小さく設定され,前記複数のディンプルの配置密度は、前記しゅう動面の高圧流体側に比べて低圧流体側において小さくなるように設定されることを特徴とするしゅう動部品。
【請求項2】
前記複数のディンプルは、開口径が10〜500μmの範囲に設定されることを特徴とする請求項に記載のしゅう動部品。
【請求項3】
一対のしゅう動部品の互いに相対しゅう動する少なくとも一方側のしゅう動面にディンプルが複数配置されたしゅう動部品において、
前記複数のディンプルは相互に他のディンプルと独立して設けられるとともに,前記複数のディンプルは、開口径が略同一に設定され
前記複数のディンプルの面積比率は、前記しゅう動面の高圧流体側に比べて低圧流体側において小さく設定され,前記複数のディンプルの配置密度は、前記しゅう動面の高圧流体側に比べて低圧流体側において小さくなるように設定されることを特徴とするしゅう動部品。
【請求項4】
前記複数のディンプルの面積比率は、30〜50%であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のしゅう動部品。
【請求項5】
前記複数のディンプルは、深さが50〜10000nmの範囲に設定されることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のしゅう動部品。
【請求項6】
前記複数のディンプルは、深さが50〜1000nmの範囲に設定されることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のしゅう動部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、メカニカルシール、軸受、その他、しゅう動部に適したしゅう動部品に関する。特に、しゅう動面に流体を介在させて摩擦を低減させるとともに、しゅう動面から流体が漏洩するのを防止する必要のある密封環または軸受などのしゅう動部品に関する。
【背景技術】
【0002】
しゅう動部品の一例である、メカニカルシールにおいて、密封性を長期的に維持させるためには、「密封」と「潤滑」という相反する条件を両立させなければならない。特に、近年においては、環境対策などのために、被密封流体の漏れ防止を図りつつ、機械的損失を低減させるべく、より一層、低摩擦化の要求が高まっている。低摩擦化の手法としては、しゅう動面に多様なテクスチャリングを施すことで、これらの実現を図ろうとしており、例えば、テクスチャリングのひとつとしてしゅう動面にディンプルを配列したものが知られている。
【0003】
例えば、特開平11−287329号公報(以下、「特許文献1」という。)に記載の発明は、しゅう動面に、深さの異なる多数のディンプルを形成することにより、しゅう動時に相手しゅう動面との間に介在する流体に発生する流体軸受圧力による負荷容量が、流体温度の変化に伴って一部のディンプルでは減少しても他のディンプルでは増大するので負荷容量が安定し、温度変化に拘らず常に良好なしゅう動性を維持するといった効果が得られるようにしたものである。
また、特開2000−169266号公報(以下、「特許文献2」という。)に記載の発明は、焼結したセラミックス材料からなる下地材の表面に硬質皮膜を蒸着したしゅう動面を形成し、このしゅう動面に、多数のディンプルを有する構成とすることにより、耐摩耗性の向上を図ると共に、ディンプルによる液体潤滑性の向上を図るようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−287329号公報
【特許文献2】特開2000−169266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の発明は、温度変化に拘らず常に良好なしゅう動性を維持するためにしゅう動面に設けられるディンプルの深さに着目したものであって、密封と潤滑という相反する条件を両立させるための考察はされていない。
また、特許文献2に記載の発明は、しゅう動面にディンプルを設けることで液体潤滑性の向上を図るようにしたものであるが、特許文献1と同様、密封と潤滑という相反する条件を両立させるための考察はされていない。
【0006】
一般的に、ポーラス(ポーラス材料)およびディンプル(任意加工の凹み)は動圧効果による流体潤滑性を向上させる目的で用いられるが、一方で漏れ量が増える恐れがある。
また、漏れを減らすため液膜を薄くするようにポーラスおよびディンプルの量を少なくすると、しゅう動面が接触し摩耗を起こしやすくなる。
しゅう動面において、摩耗する個所は、特に漏れ側(低圧流体側)である。密封するためにはしゅう動面の液膜を薄くする必要があるが、同時に低圧流体側での潤滑が乏しくなり、直接接触を起こしやすくなる。
【0007】
本発明は、しゅう動面において、高圧流体側では動圧効果により液膜を厚くして流体潤滑性を向上するとともに、低圧流体側では液膜を薄くして漏れを抑制することにより、密封と潤滑という相反する条件を両立させることができるしゅう動部品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明のしゅう動部品は、第1に、一対のしゅう動部品の互いに相対しゅう動する少なくとも一方側のしゅう動面にディンプルが複数配置されたしゅう動部品において、前記複数のディンプルは相互に他のディンプルと独立して設けられるとともに,開口径の異なる前記複数のディンプルがランダムに分布するように配置され,前記複数のディンプルの面積比率は、前記しゅう動面の高圧流体側に比べて低圧流体側において小さく設定され,前記複数のディンプルの配置密度は、前記しゅう動面の高圧流体側に比べて低圧流体側において小さくなるように設定されることを特徴としている。
この特徴によれば、しゅう動面の高圧流体側においては動圧効果により流体潤滑となり、低圧流体側においては漏れを抑制しつつ、ディンプルに流体を保持して液膜切れを抑制し、直接接触による摩耗を防止できるため、しゅう動面における密封と潤滑の両立を図ることができる。
【0009】
また、本発明のしゅう動部品は、第に、第の特徴において、前記複数のディンプルは、開口径が10〜500μmの範囲に設定されることを特徴としている。
この特徴によれば、しゅう動面における軸受特性数の広い範囲において、より一層、しゅう動特性を向上することができる。
【0010】
また、本発明のしゅう動部品は、第に、一対のしゅう動部品の互いに相対しゅう動する少なくとも一方側のしゅう動面にディンプルが複数配置されたしゅう動部品において、前記複数のディンプルは相互に他のディンプルと独立して設けられるとともに,前記複数のディンプルは、開口径が略同一に設定され,前記複数のディンプルの面積比率は、前記しゅう動面の高圧流体側に比べて低圧流体側において小さく設定され,前記複数のディンプルの配置密度は、前記しゅう動面の高圧流体側に比べて低圧流体側において小さくなるように設定されることを特徴としている。
この特徴によれば、しゅう動面の高圧流体側においては動圧効果により流体潤滑となり、低圧流体側においては漏れを抑制しつつ、ディンプルに流体を保持して液膜切れを抑制し、直接接触による摩耗を防止できるため、しゅう動面における密封と潤滑の両立を図ることができる。
【0011】
また、本発明のしゅう動部品は、第に、第1乃至第のいずれかの特徴において、前記複数のディンプルの面積比率は、30〜50%であることを特徴としている。
この特徴によれば、しゅう動面における密封と潤滑の両立を図ることができる。
【0012】
また、本発明のしゅう動部品は、第に、第1乃至のいずれかの特徴において、前記複数のディンプルは、深さが50〜10000nmの範囲に設定されることを特徴としている。
この特徴によれば、しゅう動面における摩擦係数を低減することができる。
【0013】
また、本発明のしゅう動部品は、第に、第1乃至第のいずれかの特徴において、前記複数のディンプルは、深さが50〜1000nmの範囲に設定されることを特徴としている。
この特徴によれば、しゅう動面における極低速でのしゅう動特性を良好にすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、以下のような優れた効果を奏する。
(1)しゅう動面の高圧流体側においては動圧効果により流体潤滑となり、低圧流体側においては漏れを抑制しつつ、ディンプルに流体を保持して液膜切れを抑制し、直接接触による摩耗を防止できるため、しゅう動面における密封と潤滑の両立を図ることができる。
【0015】
(2)開口径の異なる複数のディンプルがランダムに分布するように配置され、その配置密度がしゅう動面の高圧流体側に比べて低圧流体側において小さくなるように設定されることにより、しゅう動面における軸受特性数の広い範囲においてしゅう動特性の向上、すなわち、摩擦係数の低減を図ることができる。
【0016】
(3)複数のディンプルは、開口径が10〜500μmの範囲に設定されることにより、しゅう動面における軸受特性数の広い範囲において、より一層、しゅう動特性を向上することができる。
【0017】
(4)複数のディンプルは、開口径が略同一に設定され、その配置密度は、しゅう動面の高圧流体側に比べて低圧流体側において小さくなるように設定されることにより、しゅう動面における密封と潤滑の両立を図ることができるしゅう動部品を容易に製作できる。
【0018】
(5)複数のディンプルの面積比率は、30〜50%であることにより、しゅう動面における密封と潤滑の両立を図ることができる。
【0019】
(6)複数のディンプルは、深さが50〜10000nmの範囲に設定されることにより、しゅう動面における摩擦係数を低減することができる。
【0020】
(7)複数のディンプルは、深さが50〜1000nmの範囲に設定されることにより、しゅう動面における極低速でのしゅう動特性を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施例1に係るメカニカルシールの一例を示す縦断面図である。
図2】本発明の実施例1に係るしゅう動部品のしゅう動面の一例を説明するためのものであって、(a)はしゅう動面の平面図、(b)はA−A断面図、(c)はB−B断面図である。
図3】ディンプルの有する機能を説明する説明図である。
図4】本発明の実施例1に係るしゅう動部品のしゅう動面の一部を拡大した平面図である。
図5】本発明の実施例2に係るしゅう動部品のしゅう動面の一部を拡大した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置などは、特に明示的な記載がない限り、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【実施例1】
【0023】
図1ないし図4を参照して、本発明の実施例1に係るしゅう動部品について説明する。
なお、以下の実施例においては、しゅう動部品の一例であるメカニカルシールを例にして説明するが、これに限定されることなく、例えば、円筒状しゅう動面の軸方向一方側に潤滑油を密封しながら回転軸としゅう動する軸受のしゅう動部品として利用することも可能である。
なお、メカニカルシールを構成するしゅう動部品の外周側を高圧流体側(被密封流体側)、内周側を低圧流体側(大気側)として説明するが、本発明はこれに限定されることなく、高圧流体側と低圧流体側とが逆の場合も適用可能である。
【0024】
図1は、メカニカルシールの一例を示す縦断面図であって、しゅう動面の外周から内周方向に向かって漏れようとする高圧流体側の被密封流体を密封する形式のインサイド形式のものであり、高圧流体側のポンプインペラ(図示省略)を駆動させる回転軸1側にスリーブ2を介してこの回転軸1と一体的に回転可能な状態に設けられた一方のしゅう動部品である円環状の回転側密封環3と、ポンプのハウジング4に非回転状態かつ軸方向移動可能な状態で設けられた他方のしゅう動部品である円環状の固定側密封環5とが設けられ、固定側密封環5を軸方向に付勢するコイルドウェーブスプリング6及びベローズ7によって、ラッピング等によって鏡面仕上げされたしゅう動面S同士で密接しゅう動するようになっている。すなわち、このメカニカルシールは、回転側密封環3と固定側密封環5との互いのしゅう動面Sにおいて、被密封流体が回転軸1の外周から大気側へ流出するのを防止するものである。
なお、図1では、回転側密封環3のしゅう動面の幅が固定側密封環5のしゅう動面の幅より広い場合を示しているが、これに限定されることなく、逆の場合においても本発明を適用出来ることはもちろんである。
【0025】
回転側密封環3及び固定側密封環5の材質は、耐摩耗性に優れた炭化ケイ素(SiC)及び自己潤滑性に優れたカーボンなどから選定されるが、例えば、両者がSiC、あるいは、回転側密封環3がSiCであって固定側密封環5がカーボンの組合せが可能である。
相対しゅう動する回転側密封環3あるいは固定側密封環5の少なくともいずれか一方のしゅう動面には、図2に示すように、ディンプル10が配設されている。
本例では、固定側密封環5のしゅう動面Sに複数のディンプル10が配設されている。この場合、回転側密封環3にはディンプルは設けられなくても、設けられてもよい。
【0026】
図2において、しゅう動部品の断面形状は、図1(c)に示すように凸形状をしており、その頂面が平坦なしゅう動面Sを構成している。このしゅう動面Sには、図1(b)に示すような多数のディンプル10が独立して設けられている。これらのディンプル10は、しゅう動面Sの径方向の幅全体ではなく、低圧流体側においては平坦なランド部Rが一定幅で全周に残るように形成された低圧流体側密封面ISを除いた部分に設けられる。しゅう動面Sの高圧流体側においては、ディンプル10は縁部まで設けられてもよい。
【0027】
本発明において、「ディンプル」とは、平坦なしゅう動面Sに形成されるくぼみのことであり、その形状は特に限定されるものではない。例えば、くぼみの平面形状は円形、楕円形、長円形、もしくは多角形など種々の形が包含され、くぼみの断面形状もお椀状、または、方形など種々の形が包含される。
そして、しゅう動面Sに形成された多数のディンプル10は、このしゅう動面Sと相対しゅう動する相手側しゅう動面との間に流体力学的な潤滑液膜として介入する液体の一部を保持して、潤滑液膜を安定化させる機能を有するものである。
【0028】
個々のディンプル10は、図3に示すようなレイリーステップを構成するものとみなすことができる。
図3において、固定側密封環5のしゅう動面S(R)には図の断面と直交する方向に延びるレイリーステップ10aが形成されており、回転側密封環3のしゅう動面Sは平坦に形成されている。回転側密封環3が矢印で示す方向に相対移動すると、両しゅう動面間に介在する流体が、その粘性によって矢印方向に追随移動しようとし、その際、レイリーステップ10aの存在によって動圧(正圧)を発生する。動圧の発生によりしゅう動面間の潤滑液膜が増大され、潤滑性能が向上されるものである。動圧効果により潤滑性能が向上させられる一方、漏れ量が増える恐れがあり、漏れ量を減らすため潤滑液膜を薄くするようにディンプルの量を少なくすると、しゅう動面Sが接触し摩耗を起こしやすくなる。
【0029】
図4は、しゅう動面Sの一部を拡大した平面図であって、低圧流体側密封面ISを除いた部分のしゅう動面に、複数のディンプル10がランダムに配置され、複数のディンプル10の面積比率がしゅう動面Sの高圧流体側に比べて低圧流体側において小さく設定された状態が示されている。
ここで、「複数のディンプルの面積比率」とは、ディンプルの設けられる部分のしゅう動面Sの面積に占めるディンプルの開口面積の総計である。
また、「面積比率がしゅう動面Sの高圧流体側に比べて低圧流体側において小さく設定される」とは、しゅう動面Sの周方向の全ての部分において単位周長さLにおける面積比率が高圧流体側に比べて低圧流体側において小さく設定されることである。
なお、しゅう動面Sの径方向においては連続的に面積比率が変化する場合に限らず、不連続に変化する場合も含まれる。
また、「高圧流体側」及び「低圧流体側」とは、しゅう動面Sの径方向における側(サイド)を表すものであるが、高圧流体側のしゅう動面と低圧流体側のしゅう動面との区分けは、低圧流体側密封面ISの径方向の幅を除いた部分の幅をBとした場合、Bの中間点であるB/2の点を目安とする。
【0030】
ディンプル10の個々の大きさ(例えば直径)は全てが同じであっても、全てが異なっていても、あるいは、一部が同じであって一部が異なっていてもよく、要は、複数のディンプル10の面積比率がしゅう動面Sの高圧流体側に比べて低圧流体側において小さく設定されていればよい。
図4においては、低圧流体側において平坦なランド部Rが一定幅で全周に残るように形成された低圧流体側密封面ISが設けられ、該低圧流体側密封面ISを除いたしゅう動面の部分に、開口径の異なる複数のディンプル10が相互に他のディンプルと独立してランダムに分布するよう配置され、複数のディンプル10の面積比率が、しゅう動面Sの高圧流体側に比べて低圧流体側において小さくなるように設けられている。
複数のディンプル10の面積比率は、密封と潤滑の両立を図るため、30〜50%に設定されることが好ましい。
【0031】
しゅう動面にディンプルを加工する方法の一例を説明すると、次のとおりである。
(1)乱数を用いて金属マスクにあける孔の径と位置とを決定する。
(2)決定された径と位置とで金属マスクにレーザ加工などで孔をあける。
(3)ランダムに孔のあけられた金属マスクを対象となるしゅう動部品のしゅう動面上に設置する。
(4)金属マスクの上からフェムト秒レーザあるいはピコ秒レーザを照射したり、イオンエッチングなどで金属マスクの孔を利用してしゅう動面にディンプルを形成する。しゅう動面には、開口径の異なるディンプルが所定の分布でもって一様に配置される。
【0032】
開口径の異なる複数のディンプル10のランダム分布は、しゅう動面の軸受特性数G(流体の粘度×速度/荷重)などに応じて設定されるものであるが、本例では、開口径が、好ましくは10〜500μm、より好ましくは30〜100μmの範囲に分布するよう設定されている。そのため、流体潤滑遷移点が低G側へシフトするとともに流体潤滑遷移点における摩擦係数が低下し、また、広い範囲の回転数域で摩擦係数が低減している。
また、複数のディンプル10の深さは、例えば、摩擦係数低減の面から50〜10000nmの範囲内に設定されることが好ましいが、極低速でのしゅう動特性を重視する場合には、好ましくは50〜1000nm、より好ましくは50〜500nmの範囲内に設定される。
【0033】
実施例1のしゅう動部品は以下のような効果を奏する。
(1)複数のディンプル10の面積比率がしゅう動面Sの高圧流体側に比べて低圧流体側において小さく設定されることにより、しゅう動面Sの高圧流体側においては動圧効果により流体潤滑となり、低圧流体側においては漏れを抑制しつつ、ディンプル10に流体を保持して液膜切れを抑制し、直接接触による摩耗を防止できるため、しゅう動面における密封と潤滑の両立を図ることができる。
(2)開口径の異なる複数のディンプル10がランダムに分布するように配置され、その配置密度がしゅう動面Sの高圧流体側に比べて低圧流体側において小さくなるように設定されることにより、しゅう動面における軸受特性数Gの広い範囲においてしゅう動特性の向上、すなわち、摩擦係数の低減を図ることができる。
(3)複数のディンプル10の面積比率が30〜50%であることにより、しゅう動面Sにおける密封と潤滑の両立を図ることができる。
(4)複数のディンプルの開口径が好ましくは10〜500μm、より好ましくは30〜100μmの範囲に設定されることにより、流体潤滑遷移点が低G側へシフトするとともに流体潤滑遷移点における摩擦係数が低下し、また、広い範囲の回転数域で摩擦係数を低減することができる。
(5)複数のディンプル10の深さが50〜10000nmの範囲に設定されることにより、しゅう動面Sにおける摩擦係数を低減することができる。
(6)複数のディンプル10の深さが好ましくは50〜1000nm、より好ましくは50〜500nmの範囲に設定されることにより、しゅう動面における極低速でのしゅう動特性を良好にすることができる。
【実施例2】
【0034】
図5を参照して、本発明の実施例2に係るしゅう動部品について説明する。
実施例2においては、複数のディンプルの開口径が略同一に設定される点で実施例1と相違するがその他の構成は実施例1と同じであり、重複する説明は省略する。
【0035】
図5に示す実施例2では、複数のディンプル11の開口径が略同一に設定され、その配置密度は、しゅう動面Sの高圧流体側に比べて低圧流体側において小さく設定されている。
複数のディンプル11の配置形態は、ランダムに分布されてもよく、あるいは、規則的に分布されてもよい。
図5では、低圧流体側において平坦なランド部Rが一定幅で全周に残るように形成された低圧流体側密封面ISの外周側の近傍に設けられたディンプル11は周方向に規則的な間隔で配置され、それ以外の部分のディンプル11は、ランダムに分布されている。また、低圧流体側のしゅう動面において、径方向の中間部にはディンプル11の設けられていない部分がある。
【0036】
実施例2に係るしゅう動部品においては、実施例1と同様の効果を奏する他、複数のディンプル11の開口径が略同一に設定されているため、製作が容易である。
【0037】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0038】
例えば、前記実施例では、しゅう動部品をメカニカルシール装置における一対の回転用密封環及び固定用密封環のいずれかに用いる例について説明したが、円筒状しゅう動面の軸方向一方側に潤滑油を密封しながら回転軸としゅう動する軸受のしゅう動部品として利用することも可能である。
【0039】
また、例えば、前記実施例では、外周側に高圧の被密封流体が存在する場合について説明したが、内周側が高圧流体の場合にも適用できる。
【0040】
また、例えば、前記実施例1では、開口径の異なる複数のディンプルがランダムに分布されている場合、前記実施例2では、略同一の開口径の複数のディンプルがランダム及び規則的に配置されている場合について説明したが、これらは好ましい例を示したものであり、これらに限定されず、例えば、高圧流体側から低圧流体側に向けて開口径が順次小さくなる複数のディンプルを規則的に配置するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 回転軸
2 スリーブ
3 回転環
4 ハウジング
5 固定環
6 コイルドウェーブスプリング
7 ベローズ
10 ディンプル
11 ディンプル
S しゅう動面
R ランド部
IS 低圧流体側密封面
図1
図2
図3
図4
図5