特許第6683632号(P6683632)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6683632改善された光アウトカップリングを具備する放出膜
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6683632
(24)【登録日】2020年3月30日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】改善された光アウトカップリングを具備する放出膜
(51)【国際特許分類】
   F21S 2/00 20160101AFI20200413BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20200413BHJP
   C09K 11/56 20060101ALI20200413BHJP
   C09K 11/89 20060101ALI20200413BHJP
   C09K 11/54 20060101ALI20200413BHJP
   C09K 11/88 20060101ALI20200413BHJP
   C09K 11/74 20060101ALI20200413BHJP
   C09K 11/70 20060101ALI20200413BHJP
   C09K 11/66 20060101ALI20200413BHJP
   C09K 11/58 20060101ALI20200413BHJP
   C09K 11/62 20060101ALI20200413BHJP
   B82Y 20/00 20110101ALI20200413BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20200413BHJP
   F21Y 103/10 20160101ALN20200413BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20200413BHJP
【FI】
   F21S2/00 431
   C09K11/08 G
   C09K11/56CPC
   C09K11/89CQG
   C09K11/54CQF
   C09K11/88CPA
   C09K11/74CPB
   C09K11/70
   C09K11/66
   C09K11/58
   C09K11/62
   B82Y20/00
   B82Y40/00
   F21Y103:10
   F21Y115:10
【請求項の数】21
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-575422(P2016-575422)
(86)(22)【出願日】2015年6月25日
(65)【公表番号】特表2017-530506(P2017-530506A)
(43)【公表日】2017年10月12日
(86)【国際出願番号】IL2015050655
(87)【国際公開番号】WO2015198327
(87)【国際公開日】20151230
【審査請求日】2018年6月25日
(31)【優先権主張番号】62/017,389
(32)【優先日】2014年6月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515166314
【氏名又は名称】イッサム リサーチ ディベロップメント カンパニー オブ ザ ヘブライ ユニバーシティー オブ エルサレム リミテッド
【氏名又は名称原語表記】YISSUM RESEARCH DEVELOPMENT COMPANY OF THE HEBREW UNIVERSTY OF JERUSALEM LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】バニン,ユーリ
(72)【発明者】
【氏名】シャビーヴ,エフード
(72)【発明者】
【氏名】グローツマン,デニス
(72)【発明者】
【氏名】アーベル,ハガイ
【審査官】 下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/046130(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/093623(WO,A1)
【文献】 特表2013−544018(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/057702(WO,A1)
【文献】 特表2014−502403(JP,A)
【文献】 特開2004−133460(JP,A)
【文献】 特開平11−212091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
B82Y 20/00
B82Y 40/00
C09K 11/08
C09K 11/54
C09K 11/56
C09K 11/58
C09K 11/62
C09K 11/66
C09K 11/70
C09K 11/74
C09K 11/88
C09K 11/89
F21Y 103/10
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンピングエネルギーに応じて1以上の所定の波長範囲の光を放出するように構成された複数の光学活性粒子と、複数の光散乱要素とを含む光学活性構造であって、光学活性粒子が、その垂直軸に対してより長い1つの軸に沿った寸法を有する、異方性半導体ナノ粒子を含み、該複数の散乱要素は、光学的に透明な空隙領域を含み、光学活性粒子および空隙領域が、共通のマトリックス内に埋め込まれている、前記光学活性構造。
【請求項2】
空隙領域がフィラー粒子を囲む領域である、請求項に記載の光学活性構造。
【請求項3】
フィラー粒子が、少なくとも放出された光の波長範囲に対して光学的に透明であるように構成された、光学的に透明なフィラー粒子を含む、請求項に記載の光学活性構造。
【請求項4】
前記ポンピングエネルギーが、少なくとも1つの励起波長範囲を具備する光学的ポンピングを含み、前記光学的に透明なフィラー粒子が少なくとも1つの励起波長範囲に対して透明である、請求項に記載の光学活性構造。
【請求項5】
前記光学的に透明なフィラー粒子が、対応する波長範囲の20%未満の吸収をするように構成されている、請求項またはに記載の光学活性構造。
【請求項6】
前記フィラー粒子が、それに埋め込まれた光学活性粒子を有するフィラー粒子を含む、請求項のいずれか一項に記載の光学活性構造。
【請求項7】
フィラー粒子内に埋め込まれた前記光学活性ナノ粒子は、所定の軸に沿って整列されたロッド状の光学活性ナノ粒子を含む、請求項に記載の光学活性構造。
【請求項8】
前記光学活性粒子が、光学的に放出する半導体ナノ粒子を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の光学活性構造。
【請求項9】
前記光学的に放出する半導体ナノ粒子が、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、CdZnS、ZnSe、ZnSeS、ZnTe、ZnO、GaAs、GaP、GaAs、GaSb、HgS、HgSe、HgTe、InAs、InP、InSb、AlAs、AlP、InGaP、AlSb、CuS、CuSe、CuInS、CuInSe、Cu(ZnSn)S、Cu(InGa)Sからなる群から選択される、少なくとも1つの半導体材料を含む、請求項に記載の光学活性構造。
【請求項10】
前記異方性半導体ナノ粒子が、dot−in−rodまたはrod−in−rodナノ構造として構成されている、請求項1〜9のいずれか一項に記載の光学活性構造。
【請求項11】
前記異方性半導体ナノ粒子は、ナノロッドとして構成され、前記ナノロッドは、所定の軸に沿って整列され、それにより好ましい偏光配向を有する光を放出する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の光学活性構造。
【請求項12】
前記空隙領域は、少なくとも1つの他の軸に対して長い1つの軸に沿った寸法を有する異方性領域である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の光学活性構造。
【請求項13】
前記異方性空隙は、その長軸が光学活性構造によって画定される平面内にあるように整列される、請求項12に記載の光学活性構造。
【請求項14】
前記光学活性粒子が半導体ナノロッドを含み、前記半導体ナノロッドおよび前記異方性空隙が共通軸に沿って整列している、請求項11または12に記載の光学活性構造。
【請求項15】
前記複数の散乱要素の濃度が、光学活性構造の厚さに応じて選択され、光学活性構造に対して60%〜95%のヘイズレベルを提供する、請求項1〜14のいずれか一項に記載の光学活性構造。
【請求項16】
前記複数の散乱要素の濃度が、80%と95%の間のヘイズレベルを提供するように選択される、請求項15に記載の光学活性構造。
【請求項17】
前記複数の散乱要素の濃度が、87%と95%の間のヘイズレベルを提供するように選択される、請求項16に記載の光学活性構造。
【請求項18】
前記光学活性構造との酸素および水分の少なくとも一方の相互作用を低減するように構成された少なくとも1つのバリア層をさらに含む、請求項1〜17のいずれか一項に記載の光学活性構造。
【請求項19】
ディスプレイ装置用のバックライトユニットであって、ポンピングエネルギーに応答して1以上の所定の波長範囲の光を放出するように構成された、その垂直軸に対してより長い1つの軸に沿った寸法を有する、異方性半導体ナノ粒子を含む光学活性粒子と、空隙領域で囲まれた光学的に透明な材料から形成されたフィラー粒子を含む複数の光散乱要素とを含む光学活性膜を含み、光学活性粒子および空隙領域が、共通のマトリックス内に埋め込まれている、前記バックライトユニット。
【請求項20】
前記光学活性膜が、所定の軸に沿って配列された複数の光学活性ロッド状半導体ナノ粒子を含む、請求項19に記載のバックライトユニット。
【請求項21】
前記散乱要素が、異方性空隙領域によって取り囲まれたフィラー粒子として構成され、該異方性空隙領域は所定の軸に沿って整列している、請求項19または20に記載のバックライトユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、光源システムの分野に属し、光を放出するように構成された光源装置に関する。本発明の技術は、ディスプレイ装置のバックライトユニットに特に有用である。
【背景技術】
【0002】
現在開示されている主題の背景に関連すると考えられる参考文献を以下に列挙する:
1. WO 2012/059931 , Qlight Nanotech
2. US 7,327,415, Rohm and Hass
3. US 6,958,860, Eastman Kodak
4. US 8,197,931 , Toray industries
5. US 2012/0113672, Nanosys
6. US 2014/0021440, QD Vision
7. WO 2010/095140, Qlight Nanotech
本明細書中の上記の参考文献の認定は、これらがいずれかの点で、本明細書に開示された主題の特許性にいかなる意味でも関係していることを意味するものとして推論されるものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
背景
フラットパネルディスプレイは、コンピュータ、携帯電話、テレビセットなどの様々な電子機器に広く使用されている。液晶ディスプレイ(LCD)は、フラットパネルディスプレイにおける画像生成において主要な役割を果たしている。LCD装置は、典型的には、ディスプレイの各ピクセル内の光を選択的に透過する液晶空間変調層を含む多層構造である液晶パネルの照明のためのバックライトユニットを含む。異なる画素を通る選択的な光透過は、液晶分子の配向および配置を変化させることによって制御され、それにより、対応する偏光の光がそこを透過することを可能にする。
【0004】
LCD装置およびその動作は、LCパネルを通過する光の偏光に影響を与えることに関する。したがって、ディスプレイの効率的な動作を提供するために、LCパネルに到達する入力照明は、好ましくは偏光されるべきである。そのような偏光された入力照明は、バックライトユニットからの光を偏光子(または複数の偏光子)を透過させることによって提供することができる。しかしながら、ディスプレイ装置の動作は、それ自体で偏光された光を提供するように構成されたバックライトユニットの使用の恩恵を受けることができる。
【0005】
典型的な市販の白色カラーLCDバックライトユニットは、非偏光光源(すなわち、特定の偏光を有さない光)と、バックライトユニットと液晶パネルとの間の光路に位置づけられた偏光子を使用する。このような構成では、バック照明のための特定の偏光の選択は、エネルギー損失を犠牲にして行われる。一般的に、無偏光光源によって放出される光の約50%は、直線偏光子を通過する光のために失われる可能性がある。この問題は、省エネルギーが重要な要素である様々なディスプレイシステムにとって重要である可能性がある。ラップトップ、携帯電話、タブレットなどのポータブル機器では、バッテリ寿命とバックライトの明るさが重要な要素である。
【0006】
ナノ粒子の放出特性に基づくバックライトユニットが開発されており、例えば、本出願の譲受人に譲渡されたWO2012/059931に記載されている。この技術によれば、光学活性構造が提供され、それはディスプレイシステム用の色偏光光源として使用され得る。この構造は、ポンピング場に応答して放出される光の波長および偏光の少なくとも一方が互いに異なる少なくとも2つの異なる光学活性ナノロッド群を含む。同じ群のナノロッドは、一定の整列軸と均一に整列している。
【0007】
概要
高効率の光放出膜を構成するための新規なアプローチが当技術分野で必要とされている。かかる膜は、ポンピングエネルギーに応答して、入射光および/または放出光の波長変換を利用してもよい。具体的には、光放出膜は、実質的に偏光された光を生成することができる。以下に説明する光学活性膜は、光学活性膜内に埋め込まれた光散乱要素を利用し、放出光の偏光状態(すなわち、特定の偏光状態/配向)を維持または少なくとも部分的に維持しながら、所望の方向の光放射を最大化するように構成される。典型的には、本発明によれば、複数の散乱要素は、膜/構造内のフィラー粒子の周囲に光学的に透明な空隙領域を含む。
【0008】
本発明の光学活性構造の構成は、増加された照明効率を提供することができる。典型的には、そのような効率の増加は、消費電力の低減を利用しながら、ディスプレイシステムに同様の輝度を提供することを可能にするか、または所与の電力消費について輝度を増加させる。これは、バッテリ寿命やバックライトの明るさの増加が重要な要素である、ラップトップ、携帯電話、タブレットなどのポータブル機器に役立つ。さらに、超高精細度(4Kまたは8Kディスプレイシステムなど)のような高解像度ディスプレイシステムは、高密度LCパネルを通した透過特性の低下のため、より大きな輝度を利用することができることに留意すべきである。
【0009】
本発明は、多色光放射を提供する光源システムで使用するのに適した光源システムおよび光学活性構造(膜)を提供する。本発明の光学活性構造は、マトリックスに埋め込まれ、ポンピング場(例えば、光ポンピングまたは電気励起)に応答して1以上の所定の波長範囲の光を放出するように構成された光学活性粒子を利用する。光学活性粒子は、一般的に、ポンピングエネルギーに応答して光を放出するように構成されたナノ粒子(例えば、半導体ナノ粒子)であり得る。
【0010】
この構造はまた、空隙領域によって囲まれた粒子(フィラー粒子)で構成される複数の散乱要素を含む。散乱体は、好ましくは、光学活性構造の層を画定する同じマトリックスに埋め込まれるか、または1以上の追加の層に埋め込まれ、それによって2以上の層を含む光学活性構造を規定する。一般的に、フィラー粒子は、1以上の波長範囲(ポンピング場および放出された光に対応する)に関して光学的に透明、すなわち吸収しない。
【0011】
本出願に関して、空隙という用語は、真空によって充填された「空の」領域を指すだけでなく、一般的に、周囲とは異なる材料を含む膜内の領域を指し、典型的には屈折率は周囲よりも低い。より具体的には、空隙は、真空を伴う領域またはガスで満たされた領域であるが、周囲と類似しているが密度が低く屈折率が低い材料で充填された領域であってもよい。従って、散乱体は、一般的に、放出された光の光学放射に対して透明であり、層マトリックスの材料内の空隙の領域によって取り囲まれている粒子/フィラーとして構成される。
【0012】
光学活性ナノ粒子は、所定の偏光配向を伴う実質的に偏光された光を放出するように、層/膜内に整列され得る異方性ナノ粒子(ナノロッド)を含み得る。これに関して、実質的に偏光された光という用語は、1.1より高く、好ましくは2.5より高く、より好ましくは3.5より高い偏光比(所望の偏光を有する光成分の強度と望ましくない偏光を有する光成分との間の比)を有する光を指す。
【0013】
いくつかの構成では、整列された異方性ナノ粒子(ナノロッド)の使用は、4以上の偏光比を伴う照明を提供する。さらに、散乱体は、膜から放出された光がその偏光状態(すなわち偏光方位)を維持するように、偏光保存または少なくとも部分的に偏光保存散乱体として構成されている。散乱体は、その偏光状態(例えば、偏光方位)を維持しながら、層/膜からの光出力を最大にするように構成される。
【0014】
より具体的には、本発明のいくつかの実施形態では、光学活性構造/膜は、選択されたサイズの整列されたナノロッド、材料組成および構造を含むマトリックスを含む。ナノロッドは、励起場(例えば、光学ポンピング)に応答して光を放出するように構成され、一方で、ナノロッドの整列は、所定の偏光配向を伴う放出された光を提供するように構成される。光学活性構造/膜はまた、その上に衝突する光成分の伝播方向を変化させるように構成された複数の散乱体を含む散乱構成を含む。
【0015】
散乱構造は、光学活性構造/膜と一体であってもよく、またはそれに取り付けられていてもよく、膜の外側に追加の光学要素を含んでもよい。散乱構成は、好ましくは偏光保存(すなわち、それと相互作用する偏光状態および/または光の配向を維持する)であるように構成される。例えば、光学活性構造は、本出願の譲受人に譲渡されたPCT出願番号IL2015/050341に記載されているような1以上の光指向/再指向要素を含むか、またはそれに取り付けられてもよい。
【0016】
一般的に、光散乱構成は、例えば、反射器、ライトガイド、拡散体、輝度向上膜などのLCDバックライト内で一般的に使用される様々な光学要素を通過/相互作用する光に関して、およびバックライトユニットと空間変調(液晶)層との間の光の伝播に関して、偏光保存であっても、そうでなくてもよいことに留意されたい。本発明のいくつかの実施形態では、偏光された光源を他の相補的な光学要素と一体化することによって偏光または部分偏光された放出ベースのバックライトを得るために、様々なバックライト膜スタック構成を提供する。したがって、本発明の反射体、光ガイド、拡散体、輝度向上膜などの光学要素を含むバックライト光学スタックの構造および構成は、いくつかの実施形態では、液晶層(例えば、画素マトリックス)に向けられた出力光の所望の偏光を維持または少なくとも部分的に維持するように設計される。
【0017】
光放出膜は、一般的に、液晶ディスプレイ装置(LCD)内のバックライトユニットにおいて使用するように構成することができる。そのような用途では、偏光された光の放出が有益であり、LCD装置に高エネルギー効率を提供する。
【0018】
放出媒体としての光学活性ナノロッドの使用は、等方性放出粒子の使用よりも追加の利点を提供することができる。一般的に、双極子様放出要素として典型的に作用するナノロッドの放出は、実質的な指向性、ナノロッドの長軸に対して実質的に垂直な、実質的な指向性を有する。これにより、より多くの光が所望の方向に放出され、散乱要素によって散乱される必要がある光が少なくなるため、膜中のナノロッドの整列した集合が「通常の」量子ドットと比較してより良好な放出を提供することが可能になる。
【0019】
これは、望ましくない方向に散乱された光成分に伴うエネルギー損失を低減するだけでなく、散乱材料の吸収特性および脱分極特性に起因する損失を低減する。したがって、整列したナノロッドの使用は、実質的に偏光された照明を提供するだけでなく、光変換の効率を高め、放出された光の方向に一定の優先度を提供する点で、球状粒子または非整列ナノロッドよりも有益であり得る。
【0020】
本発明による偏光光源は、偏光放出を提供するバックライトユニットを利用して動作するように構成されている。上述のように、これは、望ましくない偏光の光成分のフィルタリングによって引き起こされる損失を低減し、したがって、より低い電力消費および/またはより明るいスクリーンを提供する。また、上述したように、バックライトユニットの偏光放出は、コロイド半導体ナノロッドであってもよい、整列した異方性ナノ構造に基づく偏光光源の使用の結果として生じる。
【0021】
バックライトユニットの目的のために、偏光された光源は、放出波長において互いに異なる少なくとも2つの光学活性ナノロッド群の均一な混合物を含むことができる。好ましくは、かかる混合物は、緑色(520−560nmの中心波長)および赤色(600−650nmの中心波長)を放出するナノロッドを含み、追加の波長範囲(例えば、青色)で光を放出するように構成されたナノロッドも含み得る。偏光光源は、例えばLEDなどのポンピング光源からのポンピング光によって励起されてもよく、例えば、440〜460nmの範囲の中心波長を有する、青色光を具備する照明を含むことができる。活性層における放出ナノロッドの濃度は、入射ポンピング光の一部が層を介して伝達されるように、またはポンピング光の最大吸光度を提供するように構成されてもよい。
【0022】
例えば、ポンピング光が青色光に対応する波長範囲である構成では、光学活性構造は、ナノロッドが白色光を生み出すのに必要な相補的な緑色および赤色光を放出するように構成される。あるいは、光学活性構造は、UVまたは紫色のポンピング光に応答して、赤色、緑色および青色を放出するナノロッドを含み得る。この構成では、光学活性構造は、好ましくは、ポンピング光の最大吸収のために構成され、ポンピング光の残りの強度からフィルタリングすることによる損失を低減する。
【0023】
したがって、本発明の広範な態様によれば、ポンピングエネルギーに応じて1以上の所定の波長範囲の光を放出するように構成された光学活性粒子と、空隙領域で囲まれた光学的に透明な材料から形成されたフィラー粒子を含む複数の光散乱要素とを含む、光学活性膜/層が提供される。空隙領域にはガスが充填されていてもよい。一般的に、光学活性構造は、2以上の所定の波長範囲の光を放出するように構成された2つ以上のタイプの光学活性半導体ナノ粒子を含むことができる。光学活性ナノ粒子および空隙領域は、一般的に、共通のマトリックスに埋め込まれていてもよい。本発明のいくつかの実施形態では、空隙領域は、フィラー粒子を囲む領域であってもよい。
【0024】
フィラー粒子は、少なくとも放出された光の波長範囲に対して光学的に透明であるように構成された光学的に透明なフィラー粒子を含むことができる。一般的に、フィラー粒子は、放出された波長範囲の光放射の20%以下を吸収するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、ポンピングエネルギーは、1以上の励起波長範囲における光学ポンピングであってもよく、フィラー粒子は、放出光および励起光に対して光学的に透明であるように構成されてもよい。いくつかの実施形態において、フィラー粒子は、それに埋め込まれた光学活性粒子を有するフィラー粒子(例えばロッド状光学活性ナノ粒子)を含むことができる。
【0025】
光学活性粒子は、入力ポンピングエネルギー(例えばポンピング光)に応答して光を放出するように構成された半導体ナノ粒子であってもよい。半導体ナノ粒子は、ロッド状(ナノロッド)タイプの半導体ナノ粒子などの量子ドットタイプのナノ粒子または異方性ナノ粒子(すなわち、その垂直軸に対して長い1つの軸に沿った寸法を有する)であってもよい。ナノロッドナノ粒子または一般的な異方性ナノ粒子の場合、ナノ粒子は、所定の軸に沿って整列され得、それによって、光学活性膜の実質的に偏光された放出を提供し得る。光学活性異方性半導体ナノ粒子(ナノロッド)は、ドット−イン−ロッドまたはロッド−イン−ロッドナノ構造として構成することができる。
【0026】
幾つかの実施形態において、半導体ナノ粒子は、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnSeS、CdZnS、ZnTe、ZnO、GaAs、GaP、GaAs、GaSb、HgS、HgSe、HgTe、InAs、InP、InSb、InGaP,AlAs、AlP、AlSb、CuS、CuSe、CuInS、CuInSe、Cu(ZnSn)S、Cu(InGa)Sからなる群から選択される材料組成を含む。
【0027】
いくつかの実施形態によれば、フィラー粒子は、光学活性半導体ナノ粒子の少なくともいくつかを含む粒子を含み得、それによって所定の波長範囲の光を吸収し、別の所定の波長範囲の光を放出する。この構成では、フィラー粒子内またはそれらの間に位置するナノロッドから放出される光は、一般的に、フィラー粒子を囲む空隙領域に関連する界面によって散乱され得る。
【0028】
フィラー粒子が光学的に透明な材料で作られていること、従って、これらの粒子は光学的に透明なフィラー粒子として以下に本明細書で一般的に記載されることを理解されたい。しかしながら、フィラー粒子が光学活性粒子を含むいくつかの構成では、それに埋め込まれた放出ナノ粒子を伴うフィラー粒子の結果として得られる構造は、あるレベルまで吸収性である。
【0029】
いくつかの実施形態によれば、空隙領域は、少なくとも1つの他の軸に対して長い1つの軸に沿った寸法を有する異方性領域であってもよい。異方性空隙領域は、その長軸が光学活性構造によって規定される平面内にあるように整列されてもよい。整列したナノロッドが光学活性粒子として使用される場合、異方性空隙領域およびナノロッドは、共通の軸に沿って整列され得る。
【0030】
一般的に、光学活性構造は、光学活性構造の厚さに従って選択された複数の散乱要素の濃度で構成され得、光学活性構造に対して60%〜95%の間のヘイズレベルを提供する。いくつかの実施形態では、散乱要素の濃度は、80%と95%の間のヘイズレベル、または87%と95%の間のヘイズレベルを提供するように選択することができる。
【0031】
光学活性構造は、酸素および水分の少なくとも1つの前記光学活性構造との相互作用を低減するように構成された少なくとも1つのバリア層をさらに含むことができる。
【0032】
いくつかの実施形態によれば、光学活性構造は、ディスプレイ装置用のバックライトユニット、典型的には液晶ディスプレイ装置(LCD)などのフラットパネルディスプレイに使用するように構成される。
【0033】
本発明のもう一つの広範な態様として、ディスプレイ装置に使用するように構成されたバックライトユニットが提供される。バックライトユニットは、ポンピングエネルギーに応答して1以上の所定の波長範囲の光を放出するように構成された光学活性粒子を含む光学活性膜と、空隙領域で囲まれた光学的に透明な材料から形成されたフィラー粒子を含む複数の光散乱要素とを含む。
【0034】
バックライトユニットの光学活性構造は、所定の軸に沿って整列された複数の光学的に活性なロッド状半導体ナノ粒子を含むことができる。追加的または代替的に、散乱要素は、異方性空隙領域によって囲まれたフィラー粒子として構成されてもよく、前記異方性空隙領域は、所定の軸に沿って整列される。
【0035】
さらに別の広範な態様によれば、本発明は、光学活性構造を製造する際に使用される方法を提供する。この方法は、ポリマー材料と、1以上の所定のサイズおよび材料組成の複数の光学活性ナノ粒子と、複数の光学的に透明なフィラー粒子との混合物を含む液体溶液を提供することと、前記溶液を少なくとも1つの軸に沿って所定の長さ変化率まで乾燥させて延伸し、前記光学的に透明なフィラー粒子の周囲に細長い空隙領域を形成することとを含む。
【0036】
光学活性ナノ粒子は、ロッド状の半導体ナノ粒子であってもよく、延伸の所定の長さ比は、材料の延伸が、ロッド状の半導体ナノ粒子を所定の軸に沿った整列を引き起こすように設定されてもよい。
【0037】
いくつかの実施形態では、この方法は:第1および第2のガラス−液体転移温度(Tg)をそれぞれ有するように、前記ポリマー材料および前記光学的に透明なフィラー粒子を選択することをさらに含み、前記第1のガラス−液体転移温度は第2のガラス−液体転移温度より低い。構造の延伸は、第1および第2のガラス−液体転移温度の間の温度で行うことができる。
【0038】
光学活性ナノロッドを利用する実施形態において、延伸は、散乱空隙、ナノロッドの整列および空隙−フィラー構造の整列の同時生成を提供する。
【0039】
本明細書で開示された主題をよりよく理解し、実際にどのように実施することができるかを例示するために、以下の実施形態を添付の図面を参照して非制限的な例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1A図1Aは、膜内の細長い空隙内に配置された小さなフィラー粒子で構成された光放出体および散乱要素を含む光学活性膜を概略的に示す。
図1B図1Bは、膜中の細長い空隙内に配置された小さな粒子から構成される異方性光放出体および異方性散乱要素を含む光学活性膜の追加の構成を概略的に示す。
図2A-B】図2Aおよび2Bは、本発明のいくつかの実施形態による粒子を囲む空隙の使用を概略的に示す;図2Aは、マトリックス材料によって取り囲まれ、非整列半導体量子材料を含む内側フィラー粒子を取り囲む細長い散乱要素を示す;また、図2Bは、マトリックス材料によって取り囲まれ、整列された異方性半導体量子材料を含む内側フィラー粒子を取り囲む細長い散乱要素を示す。
【0041】
図3図3は、本発明の実施形態に係る光学活性ナノロッド及び散乱体を含む光学活性膜の光学顕微鏡像を示す。
図4図4は、異なる波長の放出された偏光光の強度の実験的測定値を示すグラフであり、グラフは、ナノロッドの整列方向に平行および垂直の偏光を伴って放出される光の強度を示し;そして
図5図5は、本発明による散乱体を含む光学活性層と、そのような散乱体のない光学活性層とを比較した、異なる波長の放出偏光光の強度の実験的測定を示し;これは、光学活性層の上に、後方反射膜とプリズム膜とを具備する光ガイド上に置かれた膜についての測定である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明は、例えば、ディスプレイ装置のバックライトユニット(典型的には、液晶ディスプレイ(LCD)装置)に使用される、光学活性構造のための新規な構成を提供する。本発明による光学活性構造は、光放出体を含む膜/層から放出される光のアウトカップリングを増加させるように構成されている。より具体的には、光学活性構造(本明細書では膜または層とも呼ばれる)は、半導体ナノ粒子(例えば、ナノ結晶)のような放出性材料を含むポリマーなどのマトリックスの形態で構成されてもよい。
【0043】
上述したように、かかる膜/層は、様々な照明用途、特にLCD装置などのフラットパネルディスプレイのバックライト用の光源として使用するように構成することができる。場合によっては、光学活性構造は、フラットパネルディスプレイ(例えば、LCD)からのバックライト効率および出力強度を増加させる偏光光を放出するように構成される。典型的には、バックライトのかかる増加した効率は、LCパネルを通して一般的により低い透過特性を有する高解像度ディスプレイ(例えば、4Kまたは8Kディスプレイシステム)にとって有益であり得る。
【0044】
一般的に、光学活性構造は、実質的に偏光された光を放出するように構成され、それにより、望ましくない偏光配向を有する光成分のフィルタリングによる損失を低減する。さらに、光学活性構造は、好ましくは、放出された光を実質的に所望の方向に向けて出力し、望ましくない方向、例えば、側面に向けられた光の強度を減少させるように構成される。同様に示されるように、光学活性構造は、特定のヘイズレベルを生成する散乱体を含む。
【0045】
これは、膜からの光放出に影響を及ぼす拡散効果を提供し、バックライトユニット内に追加の拡散体膜を使用する必要性を省くのに十分な均一な照明を提供し得る。例えば、エッジライトバックライトでは、本発明による光学活性構造を光ガイド上に配置し、ポンピング光源からの光を光学活性構造に向けて方向づけることができる。この構成では、光学活性構造は、ポンピング光(例えば、青色ポンピング光)の方向性を変化させ、より多くのポンピング光を大きな角度で伝播するのではなく、膜に対して法線方向に向けることができる。
【0046】
より具体的には、光学活性構造は、典型的には、構造のナノ粒子によって放出される(放出光の70%を透過する)光の波長範囲に対して実質的に透明な固体スラブ様構造として構成される。光学活性構造のマトリックス(例えば、ポリマー)はまた、一般的に、ポンピング光の波長範囲に対して透明である(すなわち、光の85%を透過する)。具体的には、光学活性構造は、光放出体および少なくとも部分的に偏光を保持する散乱体を含む少なくとも1つの層/膜を含む。
【0047】
散乱要素は、一般的に、光放出粒子と共に共通のマトリックスに埋め込まれる。散乱体は、少なくとも放出された光の波長に対して実質的に透明に構成され、典型的には細長い空隙を含む。空隙は、典型的には、ポンピング光および放出される波長範囲に対して実質的に透明である(または放出およびポンピング光の20%未満を吸収する)フィラー粒子の周りに(フィラー粒子を取り囲むように)構成される。
【0048】
上述のように、光学活性構造(OAS)は、一般的に、例えば所望の色温度および付加的な所望の特性を有する白色光などの、所定の波長組成の光学照明を提供するために色変換機能を提供するように構成される。典型的には、OASは、例えば、青色、紫色または紫外(UV)などの比較的短波長の光のポンピング光を吸収するように構成され、1以上のより長い波長(例えば、緑色および赤色)の光に応答して放出する。さらに、OASは、放出された光の少なくとも実質的な成分が、OASから離れた所望の1以上の方向に沿って伝播し、1以上の層における光のトラップ(導波)を防止するように、放出される光を方向付けるよう構成される。
【0049】
このために、OASは、OASの少なくとも1つの層のマトリックス内に複数の光放出体および散乱体を含む。上述したように、光放出体は、一般的に、適切なポンピングに応答して所望の放出波長を提供するように選択された材料組成およびサイズを有する半導体ナノ粒子である。OAS内の散乱体は、ナノ粒子によって放出された光成分の伝播を偏向させ、それにより光をOASの外側に伝播させ、全反射(TIR)によって光学活性膜内に可能な限り光を閉じ込めるのを防止するように構成される。さらに、散乱体は、ポンピング光を偏向させるように構成することができ、したがって、OAS内のポンピング光の拡散の増加および光路の延長を提供することができる。
【0050】
かかる拡散の増加は、ポンピング光がナノ粒子を励起するためにOASのすべての領域に到達することを保証することにより、出力光のより良好な均一性を提供するのに寄与し得る。さらに、ポンピング光の延長された光路は、ポンピング光と光学活性ナノ粒子との相互作用を増加させ、したがって、OASにおける必要なナノ粒子量を最小化することを可能にする。さらに、放出された光の散乱に加えてポンピング光の散乱および拡散は、放出の角度方向性の増大をもたらし、ポンピング光およびナノ粒子の放出光の両方に同様の特性を提供し得る。これは、視野角方向に対する任意の色の依存性を減少させる。
【0051】
上述の光変換及び散乱機能を提供するために、光学活性構造100は、図1Aに例示されるように、半導体ナノ粒子(例えば、量子ドット材料)110および光散乱構造120の両方を含むように設計される。ナノ粒子110は、球形または異方性のナノ粒子であってもよい。ナノ粒子の選択は、材料特性、放出される光の所望の波長範囲、および偏光特性などの放出される光の追加の特性に基づくことができることに留意されたい。
【0052】
さらに、少なくとも部分的に偏光された光を放出するために使用される異方性ナノ粒子の場合、ナノ粒子(例えば、ナノロッド)は、放出光の実質的に均一な偏光特性を提供するように実質的に整列されることが好ましい。これは図1Bに例示されている。一般的に、ナノロッドは、30°までの偏差を許容しながら、所定の軸に沿って整列され、少なくとも1.1の偏光比を伴う光放出を提供する。図1Aおよび図1Bに示されるように、光放出粒子110および散乱体120は、マトリックス内に分散されながら共通のマトリックス150に埋め込まれる。
【0053】
所望の照明を提供するOASの好ましい表面を通って放出された光を効率的に透過させるために、OASは、光出力の伝播方向に関して反対側の表面に位置する反射表面を含むか、またはそれに取り付けられ得る。反射面は、部分的または完全に反射してもよく、バックポンピング構成のためのポンピング光の波長の光を透過するように構成されてもよい
【0054】
図2Aおよび図2Bを参照して、本発明のいくつかの実施形態によるOASにおける放出粒子および散乱体の追加の構成を示す。図2Aおよび図2Bは、OASに使用される複数の内の1つである例示的な散乱要素120を示し、そこでは、1以上の光放出粒子が実質的に透明な要素内(すなわち、入力光および放出光の20%未満を吸収する)、空隙領域によって囲まれているフィラー130に埋め込まれている
【0055】
フィラー130は、一般的に、直径が0.5〜50マイクロメートル、好ましくは直径が1.5〜10マイクロメートルのスケール寸法であり、屈折率は、放出された光の波長範囲に関してOASのマトリックス150の屈折率と極端には異ならない。例えば、フィラー粒子130は、透明な材料の粒子であるように選択されてもよい。フィラー130は、「空隙」140を規定するガス(例えば、空気、窒素、または他のガス)などのより低い屈折率の材料(例えば、1に近い)を含む溝によって取り囲まれている。したがって、光散乱体120(光散乱構造)は、「マトリックス」と呼ばれる透明マトリックス150に埋め込まれ、OASの光放出層を提供する。
【0056】
上述したように、マトリックス150は、典型的には、ポリマー膜またはポリマー層から形成され得る。この実施形態による構造では、光は、空隙140のガス−ポリマー界面160において効率的に散乱され、アウトカップリングされ、その結果、全反射によるマトリックス層150の光閉じ込めが最小限に抑えられる。また、図2Aおよび2Bに示されるように、それはフィラー粒子130の材料に埋め込まれたナノ粒子180である。これらのナノ粒子は、以下にさらに説明するように、本発明の特定の実施形態に従って使用しても使用しなくてもよい。
【0057】
上述したように、散乱要素120は、ガスの領域によって囲まれた透明なフィラー粒子を含む空隙140として構成されてもよい。一般的に、空隙散乱体は、異方性であり、2つのより短い寸法に対して1つのより長い寸法を有するように構成される。したがって、空隙は、長軸d2、および異なるスケールの短軸dlを有する、細長いものであってもよい。さらに、フィラー粒子130を取り囲む空隙領域140は、フィラー粒子130に対して少なくとも1つの寸法に沿ってかなり大きくてもよい。例えば、空隙の長軸d2の典型的な寸法は、その中に配置されたフィラー130の典型的な寸法に関して1.5〜10倍であり得る。いくつかの構成では、空隙の短軸は、フィラー粒子の寸法と同程度であってもよい。
【0058】
したがって、異方性形状の空隙160は、(図2Aおよび図2Bに示すように)楕円形または楕円形様の形状を有することができ、そこでは短軸サイズd1はフィラーのサイズによって決定され、長軸d2はフィラーのサイズに関してより大きい。一般的に、空隙160の長軸d2は、フィラーのサイズよっても、製造方法によっても制御することができる。典型的には、長軸の寸法d2は、フィラー130の横方向寸法の1〜10倍である。空隙160の形状は、光散乱構造120の長軸を決定する。したがって、光散乱構造120は、より長い寸法を伴う1つの軸を有することができ、(ポリマー)マトリックス内の光散乱構造の集団は、好ましい整列方向(図1Bの155)を有することができる。
【0059】
本発明のいくつかの実施形態によれば、フィラーとマトリックスの屈折率は実質的に類似している(すなわち、フィラー粒子とマトリックスとの間の屈折率の差は0.1未満である)。これにより、実質的に散乱しないフィラーとマトリックスとの間の直接的な界面を引き起こし、一方で、マトリックスと空隙領域、またはフィラーと空隙領域との間の界面が、屈折率の変化を示し、したがって散乱を引き起こす。これらの構成は、強い幾何学的選択的散乱を提供する。例えば、図1Bに戻って、光放出構造180としてロッド状のナノ粒子(ナノロッド)を使用する場合、OASは、その空隙160の長軸が膜の面内、すなわち比較的薄い膜のために配向され、ナノロッドの整列軸に平行でさえある(整列した場合)。
【0060】
この散乱体120の配向は、膜の平面内を伝播する光成分がマトリックス−空隙界面と相互作用し、膜から飛散することを提供する一方で、膜の平面に垂直な方向に伝播する光成分は膜を通って伝播し、そこから出力され、限られた散乱効果のみを起こす。かかる散乱体の配向は、OASを通過する光成分(ポンピング光など)に関して、OASによって画定される平面内を伝播する光成分の選択的な散乱を提供する。
【0061】
より具体的には、散乱体の配向は、放出粒子を含有するOASの膜内を伝播する光成分のためのより大きな散乱断面積と、OASの膜によって規定される平面に垂直な方向に伝播する光成分のためのより小さな散乱断面積を提供する。一般的に、粒子によって放出された光成分(光線)は、全反射に起因して埋め込み膜/マトリックス内で、膜表面に対する平面に平行な伝播方向に伝播してもよく、その結果、膜に閉じ込められ、そして全反射が存在する臨界角度θよりも大きい角度θでその界面上に衝突する。かかる光成分を散乱することによって、本発明によるOASは、OASからの光アウトカップリングを増加させる。
【0062】
上述のように、OAS中のナノ粒子は、少なくとも部分的に偏光された放出光を提供し、したがって、光成分の損失を低減する(フィルタリングする必要がある望ましくない偏光の光成分の強度を低減することによって)。本発明のいくつかの実施形態によれば、光放出ナノ粒子は、異方性量子材料を規定する異方性ナノ粒子、より具体的にはナノロッドである。ナノロッドの典型的なサイズおよび寸法は、一般的に、材料組成および所望の放出波長に従って決定される。
【0063】
一般的に、ナノロッドは、典型的なサイズの長軸が7〜100nmの間で構成される一方で、その短軸は3〜10nmの間の典型的なサイズであり得る。いくつかの実施形態では、ナノロッドは14〜50nmの長軸および3〜7nmの短軸を有することができる。光学活性ナノロッドからの光放出は、ナノロッドの長軸の配向に沿って実質的に偏光され、ナノロッドの長軸に垂直方向への放出であり、一般的に1.1以上の偏光比を提供し、好ましくは2以上の偏光比を提供する。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態によれば、OASは、上述したような光放出ナノロッドおよび細長い空隙タイプの散乱体を含む。これらの構成において、細長い散乱体およびロッド状光放出体(ナノロッド)の両方は、図1Bに例示されるように、共通軸に沿って整列される。図1Bに示すように、ナノロッド放出体および細長い散乱体(空隙の長軸)の両方は共通軸155に沿って整列される。この構成では、細長い散乱体は、ナノロッドによって放出される光成分の偏光配向を実質的に維持し、散乱を起こす。
【0065】
一般的に、OASは、OASが60%〜95%、好ましくは80%〜95%、より好ましくは87%〜95%のヘイズレベルを有するような散乱体濃度で構成することができる。これは、散乱要素(およびフィラー)の濃度を調整することによって行われる。より高いヘイズレベル(例えば、95%より高い)は、典型的には、光成分の過剰散乱のためにバックライトの輝度を低下させる可能性があることに留意すべきである。同様に、低いヘイズレベル、例えば、60%以下のヘイズは、光学活性ナノ粒子の励起を減少させるだけでなく、OASから放出される光のアウトカップリングを減少させ得る。
【0066】
「ヘイズ」という用語は、拡散透過光と全透過光との比を意味する。拡散透過率は、入射光角度から2.5度の角度範囲を除いて、サンプルを通過する光のパーセントとして定義される。事柄を単純化するために、ここではヘイズ値を破壊ではなくパーセンテージで使用している。
【0067】
例えば、光学活性構造(OAS)は、使用される空気または任意のガスが比較的軽いため、空隙を含む散乱体の重量濃度に実質的に類似する、0.5重量%〜40重量%のフィラー濃度を含むことができる。加えて、または代替的に、OASは、OASの全体積の5%〜50%(より好ましくは5%〜30%)を占める散乱要素(空隙)を含むことができ、膜内に均一または不均一に広がり得る。
【0068】
より具体的には、フィラー濃度の最適レベルは、OASの膜の厚さに依存することに留意すべきである。例えば、約50μmの膜厚を有するOASにおいては、好ましくは3〜8重量%のフィラーが埋め込まれる。約30μmの厚さの実質的に同様のOASは、OAS内のより短い光路を補償するために、フィラー濃度が2倍、すなわち6〜16重量%を含むことが好ましいであろう。約10〜15μmの厚さのOASであれば、20〜40重量%のフィラーと共に使用することができる。
【0069】
いくつかの他の実施形態によれば、図2A図2Bを参照して上に例示したように、光放出ナノ粒子180はフィラー粒子内に被包され、次に空隙140によって取り囲まれる。
また、光放出ナノ粒子180は、等方性の量子ドット(QDs)と、好ましくは図2Aおよび図2Bに例示されるような細長い形状のナノロッド180のような非球形、異方性、ナノ粒子との両方とを含むことができる。ナノロッドが光学活性ナノ粒子として使用される場合、ナノロッド180の配向は、好ましくは、散乱要素の幾何学的形状に従って整列され、一般的に空隙140の長軸に平行である。この構成は、放出光の散乱における増加した不均一性を提供し、散乱による光の偏光における変化を低減する。ナノ粒子180と散乱粒子/空隙140の適切な整列の上記効果は、膜と散乱空隙140との間の界面における光の相互作用特性の結果である。
【0070】
本発明の異なる実施形態によるOASにおける空隙タイプの散乱要素の使用は、粒子タイプの散乱体単独に関する放出光の偏光特性のより良好な維持を提供することに留意されたい。具体的には、空隙とマトリックスまたは空隙とフィラー(またはマトリックスを伴う空隙)との界面との光相互作用は、偏光を維持するナノロッドからの偏光放出のための優先光再指向要素として振舞うことができる。
【0071】
光散乱構造はまた、励起/ポンピング光を拡散させ、OAS内でその光路を増大させることもできる。これは、励起光のより効率的な吸収と、組み合わせられた出力光のための改善された指向特性を提供する。一般的に、可視光がポンピング光、例えば、青色ポンピング照明として使用される場合、ポンピング光の一部がOASの出力光に加わることがある。そのような構成では、ポンピング光は、ナノ粒子からの放出光と実質的に同様の方向性を有する(すなわち、ポンピング光および放出光の両方が同様の角度分布の傾向を有する)。
【0072】
光学活性膜からの光アウトカップリングの程度は、以下の要因に依存し得る:(a)散乱体の寸法、特に空隙の寸法;(b)フィラーのサイズ、典型的には0.5〜50μm、好ましくは1〜25μm;および(c)上記の光学活性層中のフィラー濃度。しかしながら、付加的な要因が膜からの光アウトカップリングに影響することがあることに留意すべきである。一般的に、マトリックス内を進行する光は、散乱体の散乱断面積および伝播角度、ならびに散乱空隙の幾何学的形状およびマトリックスおよび空隙のそれぞれの屈折率に応じて、空隙によって効果的に再指向される。これに関連して、フィラーまたはフィラー粒子は、エポキシ、ガラス、シリカ、サファイアまたは異なるタイプのポリマー(架橋ポリマーを含む)を含む様々な材料で作製され得る。
【0073】
ポリマーの具体例には、フッ素化ポリマー、ポリアクリルアミドポリマー、ポリアクリル酸ポリマー、ポリアクリロニトリルポリマー、ポリアニリンポリマー、ポリベンゾフェノンポリマー、ポリ(メチルメタクリレート)ポリマー、シリコーンポリマー、アルミニウムポリマー、ポリビスフェノールポリマー、ポリブタジエンポリマー、ポリジメチルシロキサンポリマー、ポリエチレンポリマー、ポリイソブチレンポリマー、ポリプロピレンポリマー、ポリスチレンポリマー、ポリビニルポリマー(例えば、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール)およびアクリルポリマー(ポリメチルメタクリレート)から選択されるポリマーを含む。フィラーは、球形であってもよいが、楕円形または中空球のような他の形状であってもよい。
【0074】
上述のように、OASは一般的に、ナノロッドと同じ膜内に位置する光散乱要素を含む。さらに、本発明のいくつかの実施形態によれば、OASは、光散乱構造/要素がOASの特定の領域に配置された構成とされてもよく、例えば、OAS/膜の一方の表面近くに配置される。いくつかの実施形態では、OASは:光散乱構造膜を内部に具備する2つのナノロッド膜;2つの光散乱構造膜を具備する1つのナノロッド膜などの様々な構成の光散乱構造およびナノロッドを含む2以上の膜を含むことができる。好ましくは、全反射(TIR)状態を破壊するために必要な散乱機能を提供するために、膜はこれらの間に光学的に取り付けられる。
【0075】
また、本発明のOASは、1以上のバリア層を含むか、または取り付けられてもよいことに留意すべきである。かかるバリア層は、OAS膜に機械的および/または化学的保護を提供するように構成することができる。たとえば、バリア層は、ひっかき、折り畳み、収縮、吸湿による損傷、ナノ粒子の酸化による損傷または他の任意の外部損傷からの保護を提供することができる。1以上のバリア層は、好ましくは、放出される光に対するいかなる屈折効果をも低減するために、薄くかつ実質的に平行に構成される。
【0076】
いくつかの実施形態では、光学活性膜は、青色LEDにエッジ結合された光ガイドとして使用することができる。このような構造では、光学活性膜は、光学活性膜内に均等に分布したナノロッドおよび光散乱構造要素を含むことができる。
【0077】
上述したように、本発明のOASは、好ましくは、バックライトユニット、例えばディスプレイ装置のバックライトユニットに使用するように構成することができる。この目的のために、OASは、追加の拡散体、追加の光再指向膜(例えば、プリズム膜)および偏光リサイクル膜(例えば、輝度向上膜、二重輝度向上膜(DBEF)など)を具備する光学スタックに配置され得る。光学活性膜は、バックライトスタック内の異なる光学要素またはLCセルの下部偏光子に光学的に接続することが好ましい。光学活性膜は、青色ポンピングを有し、赤色および緑色のナノロッド放出または他の可能性(例えば、RGBナノロッド放出によるUVポンピング)を提供することができる。
【0078】
本発明によるOASは、サイド照明ポンピングユニットからポンピング光を指向するための光ガイド/導波路として動作するように構成されてもよいことにも留意すべきである。さらに、OASは、広い視野立体角を提供する、全方位ディスプレイユニット(例えば、LCD)に使用するように構成されてもよい。OASに取り付けられた単一の光再指向膜はまた、単一軸またはそれ以上に関連する比較的広い立体角内で均一な照明を提供するために使用することもできる。一般的に、上述したように、本発明のOASを利用する適切な膜スタックは、フラットパネルディスプレイ装置を構成するためにバックライトユニットおよびLCパネルに使用されてもよい。
【0079】
本発明の光学活性膜の能力に加えて、1以上の所定の波長範囲の実質的に偏光された光の放出、および放出された光を好ましい方向に向けることができる。本発明のOASは、その製造技術を含む付加的な利点を提供する。これに関連して、OASは、室温よりも高い周囲温度で、マトリックスの一軸または二軸延伸によって生み出すことができる。この方法では、ホストマトリックス(例えば、ポリマーマトリックス)に混和しない熱可塑性ポリマーまたは樹脂フィラー粒子を添加し、混合物を撹拌した後、それを乾燥させ、次いで1以上の軸に沿って膜を延伸させる。代替的にまたは追加的に、フィラー粒子は、有機または無機フィラー粒子であってもよいし、またはそれを含んでもよい。
【0080】
膜の延伸は、比較的低い処理温度を必要とし、したがって膜に埋め込まれた放出性材料の性能に影響を及ぼさないか、または非常に限定されるので、一般的に好ましい。
【0081】
さらに、膜の延伸を用いて、埋め込まれたナノロッドの整列、ならびにフィラー粒子の周りの空隙散乱体の整列を提供することもできる。膜の延伸方向は、典型的には、ナノロッドおよび光散乱構造の両方のための整列の方向でもある。一般的に、フィラーのガラス−液体転移温度[T]がマトリックス材料のTと比較して高い場合、膜の延伸はフィラー粒子の周囲に空隙を生成する際に高い性能を提供する。これにより、マトリックスはフィラー粒子の周りに伸び、フィラー周囲に空隙領域を生成する。これは、光放出ナノ粒子がマトリックス中に埋め込まれる一方で、フィラー粒子内には存在しない、いくつかの実施形態にとって好ましい。
【0082】
フィラーが埋め込まれたナノロッドの整列を提供するために、延伸は、マトリックスとフィラー粒子の両方のガラス−液体転移温度より高い温度で行われる。より具体的には、温度条件は、Tamb>T[膜マトリックス]、Tamb>Tg[フィラー]およびT[フィラー]>T[膜マトリックス]であることが好ましい。これにより、フィラーは伸張することができるが、同じ周囲温度で2つの材料の異なる応答のために依然として空隙が生じる。膜全体が引き伸ばされ、内側の粒子は、そのナノロッドが延伸によって整列された状態で延伸されてもよい。延伸は、膜の元の寸法に対してx1.5〜x10、好ましくはx3〜x6のオーダーであってもよい。
【0083】
上記の延伸方法とは別に、追加の機械的方法がしばしば用いられる。典型的な方法には、以下のように放出性材料およびフィラーを含有するポリマー膜の押出しが含まれる:
発泡法:発泡剤をポリマーに添加して、ポリマー膜を、押出または膜処理のステップにおける熱で発泡させるか、または化学的分解によって発泡させて作成する。
【0084】
バブリング法:押出中又は押出後にポリマーに窒素等の蒸気または他の気化性物質を加えてポリマー膜を発泡させる。
純粋な溶融押出法:ホストポリマーまたは有機/無機フィラー粒子と混和しない、熱可塑性ポリマーまたは樹脂を含む膜の溶融押出。
【0085】
OASが2以上の層/膜から構成されている場合、各層は、その機能および材料組成に対して最適化された異なる技術を用いて生み出すことができる。例えば、膜を含有する放出ナノ粒子のためのより低い溶融温度。膜は、次の製造工程で積層または光学的に付着させることができる。
【0086】
光散乱構造の寸法および幾何学形状は、選択された粒子の化学組成に関して製造プロセスの要求に従って選択される。光アウトカップリングの効率および偏光保存特性は、製造プロセスを変更することによって制御することができる。
【0087】
OASの光アウトカップリング効率は、膜内の空隙の寸法および濃度の適切な選択によって制御することができる。例えば、濃度は、膜内部の不混和性フィラーの量を増加させることによって増加させることができる。光アウトカップリングにおける充分な改善が得られるフィラーの典型的な濃度は、好ましくは0.1〜50重量%、より好ましくは3〜40重量%の範囲であり得る。
【0088】
上述したように、フィラーの実際の濃度は、一般的に、光学活性膜の厚さに依存することに留意すべきである。一般的に、より薄い層は、より短い光路長を補償するためにより高い濃度を必要とする。典型的には、上に示したように、フィラーの量は、65〜95%、好ましくは80〜95%、より好ましくは87〜95%の範囲の高レベルのヘイズを達成するように調整される。
【0089】
空隙の形状およびサイズは、いくつかの方法で制御される。空隙の長さは、OASの延伸倍率(x2〜x10)によって決定される。
より大きな伸長要因は、より長い空隙を生み出す。さらに、延伸のための周囲温度の選択を使用して、空隙の寸法を決定することができる。
【0090】
フィラー粒子は、Ti、BaSO、シリカのような無機材料、もしくは、ポリメチルメタクリレート(PMMA)またはポリスチレン(PS)または上記の他の材料のような材料で作られたポリマーミクロンサイズのビーズでできていてもよい。材料の屈折率およびTの選択は、光散乱構造の光散乱特性のための同調性を提供する。
【0091】
上記のように、ガスバリア膜および機械的支持膜のような追加の保護膜を使用して、光学活性膜に接続または積層することができることに留意されたい。これらの追加の膜はまた、光学アウトカップリング特性を調整するために、光の再指向および放出された光の拡散などの追加の光学的活性を提供し得る。
【0092】
上記のプロセスは、大気雰囲気または不活性ガス雰囲気の常圧下またはそれ以上で行うことができる。ある場合には、プロセスの一部のみを不活性雰囲気下で行うことができ、一方、攪拌または延伸のようなプロセスの他の部分は周囲条件で行うことができる。
【0093】
上述のように、本発明によるナノロッドを利用するOASは、散乱体を使用しない膜と比較して、著しく高い光出力を提供する。OASは、ナノロッドの固有偏光(ナノロッドの幾何学的パラメータおよび材料組成によって決定される)、膜中のナノロッド整列の程度および散乱体の濃度に応じて、1.1〜10、または2〜7、または3〜5の範囲の偏光比(PR)値を伴う偏光の放出を提供する。上述の光学活性膜に加えて、任意の適切な偏光維持光学スタックを使用することにより、QD膜を使用する膜と比較して、エネルギー効率が最大60%増加する一方で、30%の改善も重要な省エネルギーであり得る。
【0094】
OASからの光放出に関連するエネルギー効率に加えて、偏光出力照明を提供する整列されたナノロッドの使用は、例えば、好ましくない偏光の光を「リサイクル」する必要性を排除することによって、より薄いかまたはより少ない成分を有する光学スタックに寄与する。放出された光のうちの大きい比率が好ましい偏光配向のものであるほど、対応するディスプレイ装置の効率が向上する。さらに、光スタックのいくつかの要素(例えば、反射偏光子)は、明るさの低下がほとんどまたは全くなく、除外されてもよい。
【0095】

効率的な光アウトカップリングで偏光光を放出するように構成された光学的に活性な構造の層は、散乱空隙を含有することができるポリマーマトリックス内のナノロッドの整列によって調製された。ポリマー膜の機械的延伸によってナノロッドを整列させた。第1の工程として、必要量のナノロッドおよび架橋PMMAマイクロビーズ(直径6μm、屈折率1.48、Tg=125℃)をポリビニルアルコール(PVA)の水溶液に、典型的には5〜7重量%で混合された。
【0096】
ビーズの濃度は、PVAの6重量%であった。この混合溶液を金型に流し込み、40℃のオーブンで18時間乾燥させ、厚さ50μmの膜を形成した。ナノロッドを整列させるために、膜を100℃で3倍に一軸延伸した。延伸温度はPVAのTを上回りPMMAビーズのTを下回ったので、延伸中にポリマービーズの周囲に空隙が形成された。PMMAビーズおよびPVAマトリックスは、同様の屈折率(nフィラー−nマトリックス=Δn=−0.03)を有し、したがってPMMA−PVA界面での散乱はごくわずかである。
【0097】
しかしながら、ある屈折は界面で生じるが、より高いミスマッチまたは異なる記号
【数1】
を伴う透明材料も使用することができる。この屈折は、典型的に屈折率のミスマッチが典型的に
【数2】
である空隙ポリマー界面に導入されたものと比較して依然として弱いであろう。さらに、ナノロッドによって放出された光は、空隙の空気−PVA界面でアウトカップリングされる。
【0098】
図3に示すように、膜の構造は光学顕微鏡で画像化され、空気が充填された空隙220を伴う透明なPMMAビーズ210を示す。空隙とマトリックスとの界面は、界面での強い散乱のために明るい馬蹄形領域230として見られる。光散乱構造集団の長軸の方向でもある延伸方向400もまた、図3の矢印に示されている。
【0099】
散乱空隙の形成は、整列したナノロッドからの偏光放出の偏光を維持する。これは、空隙/マトリックス界面からの光の散乱とともに起こる。整列軸に平行および垂直に測定された偏光比は、青色放出LED(ピーク波長450nm)で励起された膜について測定して2:1であった。2つの偏光状態:ナノロッドへの偏光平行310(垂直320)および光散乱構造整列方向のための光出力スペクトルの測定は図4に示される。
【0100】
バックライトユニットを構成するために、青色放出LEDバー(中心波長450nm、FWHM=20nm、エッジ−ライト)に結合された導光板(スラブ)の表面に、散乱体を有するナノロッド膜を配置した。後方に放出された光をリサイクルするために、光ガイドの裏面に、銀層コーティング(「BL膜」、大池から市販されている)に基づく高度に反射性のシートを配置した。軸上輝度を高めるために、ピッチ160μmのプリズム膜と90°のプリズムを使用した。
【0101】
非複屈折ポリメチルメタクリレート(PMMA)基材を伴う特定の膜を選択した(25μm未満の抑制(retardation)を伴う250μmの基材)。この膜を、ナノロッドの整列軸に平行に、または垂直に整列させて配置した。図5では、ナノロッド整列軸に平行に配置された偏光子を具備する構成に配置された、散乱空隙410を具備し散乱空隙420を具備しない膜の放出を示す。両方の膜は同じ濃度のナノロッドを含有し:しかしながら、空隙を具備する膜は、改善された光アウトカップリングのために、より高い赤色および緑色の放出を示す。
【0102】
したがって、本発明は、照明効率およびアウトカップリングを増加させるように構成された光学活性構造およびその製造方法を提供する。本発明のOASは、一般的に、光放出粒子と組み合わせて散乱体を利用して、光アウトカップリングを改善し、エネルギー効率を改善する。当業者であれば、添付の特許請求の範囲に定義された本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の実施形態に様々な修正および変更を適用できることを容易に理解するであろう。
図1A
図1B
図2A-B】
図3
図4
図5