(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第二の分散剤が、成分A’およびB’と、C)ジカルボキシル含有縮合芳香族化合物またはその無水物、およびD)500未満の数平均分子量を有する非芳香族ジカルボン酸または無水物との反応生成物である、請求項5に記載の方法。
前記第三の分散剤が、C)芳香族カルボン酸、芳香族ポリカルボン酸、もしくは芳香族酸無水物であって、すべてのカルボン酸または無水物基が芳香族環に直接結合されている、芳香族カルボン酸、芳香族ポリカルボン酸、もしくは芳香族酸無水物、および/またはD)500未満の数平均分子量を有する非芳香族ジカルボン酸または無水物を用いて後処理されている、A’)ヒドロカルビル−ジカルボン酸または無水物とB’)少なくとも1種のポリアミンとの反応生成物である、請求項7に記載の方法。
前記第三の分散剤が、500未満の数平均分子量を有する非芳香族ジカルボン酸または無水物を用いて後処理されている、A’)ヒドロカルビル−ジカルボン酸または無水物とB’)少なくとも1種のポリアミンとの反応生成物である、請求項7に記載の方法。
洗浄剤、分散剤、摩擦調節剤、抗酸化剤、さび止め剤、粘度指数改良剤、乳化剤、解乳化剤、腐食防止剤、摩耗防止剤、金属ジヒドロカルビルジチオホスフェート、アッシュフリーのアミンリン酸塩、消泡剤、および流動点降下剤、ならびにそれらの任意の組合せの1種または複数をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
第一の態様では、本開示は、潤滑剤組成物の全重量を基準にして50%〜99重量%のベースオイルおよび添加剤組成物を含む潤滑剤組成物に関し、潤滑剤組成物は、潤滑剤組成物の全重量を基準にして少なくとも0.05重量パーセントの、A)ヒドロカルビル−ジカルボン酸または無水物とB)少なくとも1種のポリアミンとの反応生成物である第一の分散剤;および潤滑剤組成物の全重量を基準にして少なくとも0.05重量パーセントの、A’)ヒドロカルビル−ジカルボン酸または無水物とB’)少なくとも1種のポリアミンとの反応生成物である第二の分散剤を含み、ここで、その反応生成物は、C)芳香族カルボン酸、芳香族ポリカルボン酸、もしくは芳香族酸無水物であって、すべてのカルボン酸または無水物基が芳香族環に結合されている、芳香族カルボン酸、芳香族ポリカルボン酸、もしくは芳香族酸無水物、および/またはD)約500未満の数平均分子量を有する非芳香族ジカルボン酸または無水物を用いて後処理されている。
【0006】
好ましい実施形態では、そのヒドロカルビルジカルボン酸または無水物A’がポリイソブテニルコハク酸または無水物を含む。
【0007】
上述の実施形態のそれぞれでは、その第二の分散剤は、CおよびD両方を用いて後処理されている、A’とB’との反応生成物であってよい。別の場合には、その第二の分散剤の反応生成物は、好ましくはDのみを用いて後処理されてもよく、さらに好ましい代替の方法では、第二の分散剤は、Cのみを用いて後処理されてもよい。そのような実施形態では、Cが好ましくは1,8−無水ナフタル酸を含み、およびDが好ましくは無水マレイン酸を含む。
【0008】
その潤滑剤組成物の実施形態のそれぞれにおいて、そのヒドロカルビルジカルボン酸または無水物AおよびA’は、それぞれポリイソブテニルコハク酸または無水物を含んでいてもよい。
【0009】
前述の実施形態のすべてにおいて、その添加剤組成物は、第一および第二の分散剤と異なる第三の分散剤をさらに含んでいてもよい。好ましくは、第三の分散剤が、ポリイソブテニルコハク酸または無水物であってよいか、または第三の分散剤が、A’)ヒドロカルビル−ジカルボン酸または無水物と、B’)少なくとも1種のポリアミンとの反応生成物であり、その反応生成物が、C)芳香族カルボン酸、芳香族ポリカルボン酸、もしくは芳香族酸無水物であって、すべてのカルボン酸または無水物基が芳香族環に直接結合されている、芳香族カルボン酸、芳香族ポリカルボン酸、もしくは芳香族酸無水物、および/またはD)約500未満の数平均分子量を有する非芳香族ジカルボン酸または無水物を用いて後処理されていてもよい。第三の分散剤が、A’)ヒドロカルビル−ジカルボン酸または無水物とB’)少なくとも1種のポリアミンとの反応生成物であり、その反応生成物が、約500未満の数平均分子量を有する非芳香族ジカルボン酸または無水物を用いて後処理されていればより好ましい。
【0010】
前述の実施形態のすべてにおいて、その潤滑剤または添加剤組成物は、以下のものの1種または複数をさらに含んでいてもよい:洗浄剤、分散剤、摩擦調節剤、抗酸化剤、さび止め剤、粘度指数改良剤、乳化剤、解乳化剤、腐食防止剤、摩耗防止剤、金属ジヒドロカルビルジチオホスフェート、アッシュフリーのアミンリン酸塩、消泡剤、および流動点降下剤、ならびにそれらの任意の組合せ。
【0011】
前述の実施形態のすべてにおいて、その潤滑剤組成物は、少なくとも1.5重量%の煤から、最大で約8重量%までの煤を含んでいてよい。潤滑剤組成物が約2重量%〜約3重量%の煤を含み得るのがより好ましい。
【0012】
前述の実施形態のすべてにおいて、その潤滑剤組成物が15質量%よりも低いNoack揮発性を有していてよく、その潤滑剤組成物が13質量%よりも低いNoack揮発性を有し得るのがより好ましい。
【0013】
さらなる実施形態では、本発明は、エンジンを潤滑化させるための方法であって、前述の実施形態のいずれかに記載の潤滑剤組成物を用いてエンジンを潤滑化させることによる、方法に関する。
【0014】
さらに別の実施形態では、本発明は、エンジン潤滑剤組成物の煤またはスラッジ処理能力を維持するための方法に関し、それは、エンジン潤滑剤組成物に、前述の実施形態のいずれかに記載されたような添加剤組成物を添加する工程を含む。
【0015】
よりさらなる実施形態では、本発明は、エンジンを潤滑化するための前述の実施形態のいずれかによる潤滑性組成物の使用に関する。
【0016】
さらなる実施形態では、本発明は、潤滑剤組成物の煤またはスラッジ処理能力を維持するための、前述の実施形態のいずれかに記載の添加剤組成物の使用に関する。
【0017】
本明細書で使用するある種の用語の意味合いを明確にする目的で、用語の定義を以下に記す。
【0018】
「オイル組成物」、「潤滑性組成物」、「潤滑オイル組成物」、「潤滑オイル」、「潤滑剤組成物」、「潤滑性組成物」、「完全配合潤滑剤組成物」、「潤滑剤」、「クランクケースオイル」、「クランクケース潤滑剤」、「エンジンオイル」、「エンジン潤滑剤」、「モーターオイル」、および「モーター潤滑剤」という用語は、同義語とみなされ、多量のベースオイルにプラスして少量の添加剤組成物を含む、完成した潤滑剤製品に関して完全に相互に置き代え可能な用語である。
【0019】
本明細書で使用するとき、「添加剤パッケージ」、「添加剤濃縮物」、「添加剤組成物」、「エンジンオイル添加剤パッケージ」、「エンジンオイル添加剤濃縮物」、「クランクケース添加剤パッケージ」、「クランクケース添加剤濃縮物」、「モーターオイル添加剤パッケージ」、「モーターオイル濃縮物」という用語は、同義語とみなされ、ベースオイルのストック混合物の大部分を除外した、潤滑オイル組成物の部分を指す場合に完全に相互に置き代え可能な用語である。添加剤パッケージには、粘度指数改良剤または流動点降下剤は含まれていても、含まれていなくてもよい。
【0020】
「過塩基性の」という用語は、存在している金属の量が化学量論量よりも多い金属塩、たとえばスルホネート、カルボキシレート、サリチレート、および/またはフェネートの金属塩に関連している。そのような塩は、100%を超える添加率を有することができる(すなわち、酸をその「正規で」、「中性の」塩に転化させるのに必要な金属の理論量である100%を超えてそれらが含まれている)。「金属比」(しばしば、略してMR)という表現は、その過塩基の塩中の金属の合計した化学当量の、公知の化学反応性および化学量論に従った中性塩における金属の化学当量に対する比率を表すのに使用される。正規または中性の塩では、その金属比が1であり、過塩基の塩では、MRが1より大きい。それらは、一般的には、過塩基性、ハイパー塩基性、またはスーパー塩基性の塩と呼ばれ、有機硫黄酸、カルボン酸、サリチレート、および/またはフェノールの塩であってよい。
【0021】
本明細書で使用するとき、「ヒドロカルビル置換基」または「ヒドロカルビル基」という用語は、当業者に周知のその一般的な感覚で使用される。具体的には、それは、その分子の残りの部分に直接結合された炭素原子を有し、主として炭化水素的性質を有する基を指している。ヒドロカルビル基の例としては、以下のものが挙げられる:
(a)炭化水素置換基、すなわち、脂肪族(たとえば、アルキルもしくはアルケニル)、脂環族(たとえば、シクロアルキル、シクロアルケニル)置換基、ならびに芳香族、脂肪族、および脂環族で置換された芳香族置換基、さらには環状置換基(その環は、その分子の他の部分で完結している(たとえば、2個の置換基が合わさって、脂環残基を形成している));
(b)置換された炭化水素置換基、すなわち、置換基が、(本開示に関連して、主要部分の炭化水素置換基を変化させない)非炭化水素基を含む(たとえば、ハロ(特には、クロロおよびフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソ、アミノ、アルキルアミノ、およびスルホキシ);ならびに
(c)ヘテロ置換基、すなわち、本開示に関連して、主として炭化水素的性質を有しながら、そうでなければ炭素原子で構成されていた環または鎖中に炭素以外のものを含む置換基。ヘテロ原子には、硫黄、酸素、および窒素が含まれ得、ピリジル、フリル、チエニル、およびイミダゾリルのような置換基が包含される。一般的には、ヒドロカルビル基中で炭素原子10個あたり2個以下、たとえば1個以下の非炭化水素置換基が存在するであろうが、典型的には、ヒドロカルビル基中には非炭化水素置換基は存在しないであろう。
【0022】
本明細書で使用するとき、「重量パーセント」という用語は、特に断らない限り、全組成物の重量に対する引用された成分のパーセントを表していることを意味している。
【0023】
本明細書で使用される、「可溶性」、「油溶性」、または「分散性」という用語は、その化合物または添加剤が可溶性であるか、溶解可能であるか、混和性であるか、またはオイル中にあらゆる割合で懸濁させることが可能であることを示していてよいが、そうでなければならないというわけではない。しかしながら、上述の用語は、それらが、そのオイルが採用された環境で、それらが意図されている効果を発揮するのに十分な程度に、たとえば、オイル中に可溶性、懸濁可能、溶解可能、または安定に分散可能であることを意味している。さらには、必要に応じて、追加して他の添加剤を組み入れることで特定の添加剤をより高いレベルで組み入れることが可能となり得る。
【0024】
本明細書で採用される「TBN」という用語は、ASTM D2896、またはASTM D4739、またはDIN 51639−1の方法で測定される全塩基数(単位:mgKOH/g)を表すのに使用される。
【0025】
本明細書で採用される「アルキル」という用語は、約1〜約100個の炭素原子の直鎖状、分岐状、環状、および/または置換された飽和鎖残基を指している。
【0026】
本明細書で採用される「アルケニル」という用語は、約3〜約10個の炭素原子の直鎖状、分岐状、環状、および/または置換された不飽和鎖残基を指している。
【0027】
本明細書で採用される「アリール」という用語は、単環および多環の芳香族化合物を指しており、それには、アルキル、アルケニル、アルキルアリール、アミノ、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロ置換基、および/または窒素、酸素、および硫黄(これらに限定されるわけではないが)を含むヘテロ原子が含まれていてもよい。
【0028】
本明細書の記述の潤滑剤、複数の成分の組合せ、または個々の成分は、各種のタイプの内燃機関において好適に使用することができる。好適なエンジンのタイプとしては、以下のものが挙げられ得るが、それらに限定されるわけではない:高負荷のディーゼル、乗用車、低負荷のディーゼル、中速ディーゼル、または船舶用エンジン。内燃機関は以下のものであってよい:ディーゼル燃料のエンジン、ガソリン燃料のエンジン、天然ガス燃料のエンジン、バイオ燃料のエンジン、ディーゼル/バイオ燃料混合のエンジン、ガソリン/バイオ混合燃料のエンジン、アルコール燃料のエンジン、ガソリン/アルコール混合燃料のエンジン、加圧天然ガス(CNG)燃料のエンジン、またはそれらの組合せ。ディーゼルエンジンは、圧縮点火エンジンであってよい。ガソリンエンジンは、スパーク点火エンジンであってよい。内燃機関は、電気またはバッテリーの電源と組み合わせて使用することもできる。そのような構成のエンジンは、一般的には、ハイブリッドエンジンとして公知である。内燃機関は、2サイクル、4サイクル、またはロータリーエンジンであってよい。好適な内燃機関としては、以下のものが挙げられる:船舶用ディーゼルエンジン(たとえば、内航用船舶)、航空機用ピストンエンジン、低負荷ディーゼルエンジン、およびオートバイ、乗用車、機関車、およびトラックのエンジン。本発明の潤滑剤組成物が使用可能な特に好ましいタイプのエンジンは、高負荷のディーゼル(HDD)エンジンである。
【0029】
HDDエンジンは、一般的には、潤滑剤中で約2%〜約3%の範囲の煤レベルを発生することが知られている。さらに、旧型のHDDエンジンでは、煤レベルが最大で約8%までのレベルに達する可能性もある。さらに、ガソリン直接噴射(GDi)エンジンでも、その潤滑流体中では煤を受ける。Ford Chain Wear Testを使用したGDiエンジンの試験では、312時間の走行で、その潤滑剤中に2.387%のレベルで煤が生成した。メーカーおよび運転条件に依存して、直接燃料噴射ガソリンエンジン内での煤のレベルは、約1.5%〜約3%の範囲となり得る。比較のために、非直接噴射ガソリンエンジンについても、潤滑剤中に生成する煤の量を測定するための試験をした。その試験の結果から、潤滑剤中の煤がわずか約1.152%であることが分かった。
【0030】
HDDおよびGDiエンジンで生成する煤のレベルが高いことから、本発明の相乗効果性分散剤は、それらのタイプのエンジンで使用するのが好ましい。HDDエンジンおよび直接燃料噴射ガソリンエンジンで使用するには、そのオイル中に存在する煤が、そのエンジンの使用年数、メーカー、運転条件に依存して約0.05%〜約8%の範囲とすることができる。いくつかの実施形態では、潤滑性組成物中の煤のレベルが約1.5%より大きいか、または好ましくは煤のレベルが約1.5%〜約8%であり、最も好ましくは、潤滑流体中の煤のレベルが約2%〜約3%である。
【0031】
内燃機関には、アルミニウム−合金、鉛、スズ、銅、鋳鉄、マグネシウム、セラミックス、ステンレス鋼、複合材料、および/またはそれらの混合物の1種または複数からなる構成部品が含まれ得る。それらの構成部品は、たとえば、ダイヤモンド様の炭素コーティング、潤滑コーティング、リン含有コーティング、モリブデン含有コーティング、グラファイトコーティング、ナノ粒子含有コーティング、および/またはそれらの組合せを用いてコーティングすることができる。アルミニウム−合金としては、ケイ酸アルミニウム、酸化アルミニウム、またはその他のセラミック物質が挙げられ得る。1つの実施形態では、そのアルミニウム−合金がアルミニウム−シリケート表面である。本明細書で使用するとき、「アルミニウム合金」という用語は、「アルミニウム複合材料」と同義であり、その詳しい構造は無視して、アルミニウム、および、微視的もしくはほぼ微視的レベルで相互混合または反応させたその他の構成部品を含む構成部品または表面部品を表すことが意図されている。これは、任意の慣用される、アルミニウムと異なる他の金属との合金、さらには非金属元素または化合物、たとえばセラミック様の材料を用いた複合材料または合金様の構造物を含むであろう。
【0032】
内燃機関のための潤滑オイル組成物は、硫黄、リン、または硫酸塩灰分(ASTM D−874)の含量とは無関係に、各種のエンジン潤滑剤に好適となり得る。エンジンオイル潤滑剤の硫黄含量は、約1重量%以下、または約0.8重量%以下、または約0.5重量%以下、または約0.3重量%以下、または約0.2重量%以下であってよい。1つの実施形態では、その硫黄含量が約0.001重量%〜約0.5重量%、または約0.01重量%〜約0.3重量%の範囲であってよい。リン含量は、約0.2重量%以下、または約0.1重量%以下、または約0.085重量%以下、または約0.08重量%以下、またはさらに約0.06重量%以下、約0.055重量%以下、または約0.05重量%以下であってよい。1つの実施形態では、そのリン含量が約50ppm〜約1000ppm、または約325ppm〜約850ppmであってよい。合計した硫酸塩灰分含量は、約2重量%以下、または約1.5重量%以下、または約1.1重量%以下、または約1重量%以下、または約0.8重量%以下、または約0.5重量%以下であってよい。1つの実施形態では、その硫酸塩灰分含量が約0.05重量%〜約0.9重量%、または約0.1重量%、または約0.2重量%〜約0.45重量%であってよい。また別の実施形態では、その硫黄含量が約0.4重量%以下であってよく、そのリン含量が約0.08重量%以下であってよく、その硫酸塩灰分が約1重量%以下である。さらに別の実施形態では、その硫黄含量が約0.3重量%以下であってよく、そのリン含量が約0.05重量%以下であってよく、その硫酸塩灰分が約0.8重量%以下であってよい。
【0033】
1つの実施形態では、その潤滑オイル組成物がエンジンオイルであり、その潤滑オイル組成物が(i)約0.5重量%以下の硫黄含量、(ii)約0.1重量%以下のリン含量、および(iii)約1.5重量%以下の硫酸塩灰分含量を有しているのがよい。
【0034】
1つの実施形態では、その潤滑オイル組成物が2サイクルまたは4サイクルの船舶用ディーゼル内燃機関に好適である。1つの実施形態では、その船舶用ディーゼル燃焼機関が2サイクルエンジンである。いくつかの実施形態では、その潤滑オイル組成物が、1つまたは複数の理由から、2サイクルまたは4サイクルの船舶用ディーゼル内燃機関には適していないが、その理由を非限定的に挙げれば、たとえば、船舶用エンジンを駆動するために使用される燃料の硫黄含量が高いこと、および船舶用に適したエンジンオイルでは高いTBN(たとえば、船舶用に適したエンジンオイルでは約40よりも高いTBN)が必要とされるからである。
【0035】
いくつかの実施形態では、その潤滑オイル組成物が低硫黄燃料、たとえば約1〜約5%の硫黄を含む燃料で駆動されるエンジンに使用するのが適している。高速車両用の燃料には、約15ppmの硫黄(すなわち、約0.0015%の硫黄)が含まれている。
【0036】
低速ディーゼルとは、典型的には船舶用エンジンを指しており、中速ディーゼルとは、典型的には機関車を指しており、高速ディーゼルとは、典型的には高速車両を指している。潤滑オイル組成物は、これらのタイプの1つのみに適していてもよく、または全部に適していてもよい。
【0037】
さらに、本明細書の記述の潤滑剤は、以下の基準に適合させるのに好適であり得る:1種または複数の工業的仕様書要求事項、たとえばILSAC GF−3、GF−4、GF−5、GF−6、CK−4、FA−4、CJ−4、CI−4Plus、CI−4、ACEA A1/B1、A2/B2、A3/B3、A3/B4、A5/B5、C1、C2、C3、C4、C5、E4/E6/E7/E9、Euro 5/6、JASO DL−1、Low SAPS、Mid SAPS、または相手先商標製品製造会社の仕様書、たとえば、Dexos(商標)1、Dexos(商標)2、MB−Approval 229.51/229.31、VW 502.00、503.00/503.01、504.00、505.00、506.00/506.01、507.00、508.00、509.00、BMW Longlife−04、Porsche C30、Peugeot Citroen Automobiles B71 2290、B71 2296、B71 2297、B71 2300、B71 2302、B71 2312、B71 2007、B71 2008、Ford WSS−M2C153−H、WSS−M2C930−A、WSS−M2C945−A、WSS−M2C913A、WSS−M2C913−B、WSS−M2C913−C、GM 6094−M、Chrysler MS−6395、またはここで述べなかった過去および将来の各種のPCMOまたはHDD仕様書。乗用車モーターオイル(PCMO)適用のためのいくつかの実施形態では、その仕上がり流体中のリンの量は、1000ppm以下または900ppm以下または800ppm以下である。
【0038】
他のハードウェアでは、本明細書に開示された潤滑剤を使用するのに適さない場合もあり得る。「機能性流体」は、広く各種の流体を含む用語であるが、非限定的に例を挙げれば、たとえば、以下のものである:トラクター油圧流体、動力伝達流体、たとえば、自動変速流体、連続可変な伝達流体および手動伝達流体、油圧流体、たとえばトラクター油圧流体、いくつかのギアオイル、パワーステアリング流体、風力タービン、コンプレッサーに使用される流体、いくつかの工業用流体、およびパワートレイン構成部品関連の流体。これら流体のそれぞれの中でも、たとえば自動変速流体では、異なる設計を有する広く各種の伝達装置が存在しているため、したがって、顕著に異なる機能特性の流体が必要となることに注目されたい。これは、動力の発生または移送には使用されない「潤滑流体」という用語と対照的である。
【0039】
トラクターの油圧流体に関して、たとえば、これらの流体は、エンジンの潤滑を除けば、トラクターにおけるすべての潤滑剤用途で使用される多目的製品である。それらの潤滑用途としては、たとえば、ギヤボックス、動力取出し装置およびクラッチ、後軸、減速ギア、湿式ブレーキ、ならびに油圧アクセサリーなどの潤滑が挙げられる。
【0040】
その機能性流体が自動変速流体である場合、その自動変速流体は、動力を伝達するために、クラッチ板に対して十分な摩擦を有していなければならない。しかしながら、操作中に流体の温度が上昇すると、温度効果のために、流体の摩擦係数が低下する傾向がある。トラクターの油圧流体または自動変速流体は、高温になっても高い摩擦係数を維持していることが重要であり、そうでなければ、ブレーキ系統または自動変速が効かなくなる恐れがある。これは、エンジンオイルの機能にはない。
【0041】
トラクター流体、およびたとえばSuper Tractor Universal Oil(STUO)またはUniversal Tractor Transmission Oil(UTTO)は、エンジンオイルと、伝達装置、差動装置、最終駆動プラネタリーギア、湿式ブレーキ、および油圧性能との性能を組み合わせたものであってよい。UTTOまたはSTUO流体を配合するのに使用される添加剤の多くが類似の機能性を有してはいるが、それらを適切に組み入れないと有害な影響が出る可能性がある。たとえば、エンジンオイルにおいて使用されるいくつかの抗摩耗性の極圧添加剤は、油圧ポンプ内の銅製の構成部品に対して極端に強く腐食する可能性がある。ガソリンまたはディーゼルエンジンの性能のために使用される洗浄剤および分散剤は、湿式ブレーキの性能に有害となる可能性がある。湿式ブレーキの騒音を抑制することを特徴とする摩擦調節剤は、エンジンオイルの性能に要求される熱安定性に欠ける可能性がある。これら流体のそれぞれは、機能性、トラクター用、または潤滑などいずれの用途であっても、特定かつ厳格な製造業者の要求に適合するように設計されている。
【0042】
本開示のエンジンオイルは、以下において詳しく説明する1種または複数の添加剤を添加して配合することにより、適切なベースオイル配合物とすることができる。添加剤は、ベースオイルと組み合わせて、添加剤パッケージ(または濃縮物)の形態にしてもよく、または別の場合には個々にベースオイルと組み合わせてもよい(または両者の組合せ)。完全に配合されたエンジンオイルは、加えられた添加剤およびそれらそれぞれの性質に基づいて改良された性能を示すことができる。
【0043】
本開示のさらなる詳細および利点は、以下に続く記述で部分的に示すものとし、および/または本開示の実施によって学ぶことができる。本開示の詳細および利点は、添付された請求項において特に指摘する要素および組合せの手段によっても実現および達成することができる。ここまでの概要およびこれ以降の詳細な記述は、例を挙げて説明するものにすぎず、請求項のように本開示を限定するものではないことを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0045】
エンジン潤滑剤組成物に対して、受容可能な煤およびスラッジ処理性能を与えることが望ましい。ある種のタイプのエンジン内で使用される潤滑剤組成物では、潤滑剤組成物中に分散剤を導入することにより、所望の煤およびスラッジ処理性能を問題なく与えることができていた。しかしながら、高負荷のディーゼル(HDD)およ
びガソリン直接噴射エンジン(GDiエンジン)では、多くの他のタイプの内燃機関に比較して、極めて大量の煤およびスラッジが生成する。この問題に対処するための1つの選択肢は、HDDおよびGDiエンジンのための潤滑剤組成物において使用される分散剤の処理率を上げることである。
【0046】
典型的には、潤滑剤組成物中の分散剤の処理率を上げることにより、その潤滑剤組成物の煤およびスラッジ処理性能が改良される。HDDおよびGDiエンジンによって生成する煤およびスラッジの量が比較的に大量であるため、十分な煤およびスラッジ処理性能を得ようとすると、潤滑剤組成物中で分散剤の高い処理率が必要となる。しかしながら、潤滑性組成物中で分散剤の処理率をあるレベルより高くすることは、エンジンの構成部品に悪影響が出たり、性能に結果が出たりするため、望ましいことではない。特に、分散剤の高い処理率は、エンジンシールに損傷を与え、腐食を促進することは公知である。
【0047】
HDDエンジンも含めて、エンジンにおいて使用するための潤滑剤組成物に1種または複数の分散剤を添加することは、当技術分野では周知であり、たとえば、(特許文献1)には、コハク酸イミドとジカルボン酸またはその無水物との反応生成物である潤滑オイル添加剤が開示されている。この参考文献は、この添加剤をベースオイルとブレンドして使用すると、高い静止摩擦係数が得られることを教示している。さらに、(特許文献2)には、ベースオイルおよび分散剤を含む潤滑性組成物が開示されているが、その分散剤は、A)ヒドロカルビル−ジカルボン酸または無水物、B)ポリアミン、C)ジカルボキシル含有縮合芳香族化合物、およびD)非芳香族ジカルボン酸または無水物の反応生成物である。
【0048】
煤およびスラッジ処理性能を得るために潤滑剤組成物中で分散剤を使用することは公知であるが、添加剤パッケージの処理率、ならびに重要なベンチテスト、たとえば、ASTM D−6594)にあるような高温腐食ベンチテスト(HTCBT)、およびASTM D−7216にあるようなシール混和性テスト、さらには、たとえば、Mercedes、Benz、MTU、およびMAN Truck&Bus Companyからの相手先商標製品製造会社(OEM)シールテストにおけるそのような潤滑剤組成物の性能を改良するには、特にHDDおよびGDiエンジン内で分散剤を使用することを前提とした潤滑剤組成物中で、そのような分散剤の処理率を低下させることが必要である。
【0049】
本発明は、満足のいく煤およびスラッジ処理性能を得るために必要な分散剤の濃度を、予想される有効濃度よりも低くすることが可能な方法および組成物を提供する。本願出願人が見出したところでは、分散剤のある種の組合せが、予想される有効濃度よりも低い濃度で、現在提案されかつ将来的な潤滑剤性能標準に適合するか、またはそれを超えるのに好適な煤およびスラッジ処理性能を与える。
【0050】
より具体的には、いくつかの実施形態において、ある種の特性を有する2種以上の分散剤を組み合わせることで相乗効果性分散剤効果が得られ、予想外にも、エンジン潤滑剤組成物に対して有利な煤およびスラッジ処理性能を得るに必要な分散剤の総量を減らすことができた。相乗効果性分散剤効果とは、分散剤を組み合わせて使用することにより、それぞれの分散剤の比率で得られる効果を合計して期待されるよりも高い効果が得られることである。
【0051】
各種の分散剤の組合せが、潤滑剤組成物に対して組み合わせて添加されると相乗的効果を有することが見出された。2種以上の分散剤の間の相乗的効果により、潤滑剤組成物中でその分散剤の組合せを、その2種以上の分散剤のそれぞれを単独で使用した場合に測定される効果を基準にした計算上の有効濃度から期待するよりも低い有効濃度で使用することが可能となる。特定の分散剤の組合せの効果は、分散剤の組合せを形成している個々の成分で期待される効果を合計したものが期待されるはずである。本発明者らは、いくつかの分散剤の組合せで予想外の相乗的効果が得られることを見出した。
【0052】
本開示の態様では、その潤滑オイル組成物には、2種以上の分散剤の相乗効果を有する組合せを含む添加剤組成物を含むことができる。相乗効果のある組合せは、その添加剤組成物中の分散剤のそれぞれの測定上の有効濃度の比率を合計した計算上の有効濃度よりも低い、測定上の有効濃度を有する分散剤の組合せである。したがって、分散剤の相乗効果的組合せが、潤滑剤組成物中の分散剤に対して、その組合せで採用された個々の分散剤の有効濃度から期待されるよりも全体として低い有効濃度を与える。
【0053】
有効濃度は、その潤滑剤組成物でNewtonian流体挙動を得るに十分である、潤滑オイル中の分散剤の濃度として決定される。Newtonian流体挙動は、レオメーターを使用して測定される。煤を含むオイルを、1種または複数の分散剤を用いて処理し、レオメーターを使用して、Newtonian流体が得られる時点を測定する。粘度対剪断速度の曲線の勾配がゼロに等しくなったときにNewtonian流体が得られる。勾配がゼロになったところでの分散剤の濃度が、その分散剤での有効濃度である。有効濃度を測定するための方法について、以下の実施例でさらに詳しく説明する。
【0054】
各種の異なる分散剤の組合せが相乗的効果を有している可能性がある。理論に捉われることなく言えば、1つの態様では、相乗効果性分散剤の組合せ中で窒素によって作り出された極性が、潤滑剤組成物中に含まれている煤と相互作用をする。さらには、オレフィンコポリマーの尾、たとえば、ポリイソブチレン(PIB)の尾、およびたとえば無水ナフタル酸の芳香族性が、潤滑剤組成物中で、煤が凝集してより大きい煤粒子となることを妨げることを助長していると考えられる。これらの態様を組み合わせたものが、分散剤の組合せの、より低い有効濃度で潤滑剤組成物中の煤およびスラッジの改良された取り扱いを与えるものと考えられる。
【0055】
第一の実施形態では、その添加剤組成物には、第一の分散剤と第二の分散剤との相乗効果的組合せが含まれる。第一の分散剤は、以下の成分の反応生成物である:A)ヒドロカルビル−ジカルボン酸または無水物(数平均分子量500〜5000);B)ポリアミン;C)ジカルボキシル含有縮合芳香族化合物;および/またはD)非芳香族ジカルボン酸または無水物(数平均分子量500未満)。この分散剤を作成するのに使用した成分A〜Dについて、以下でより詳しく説明する。1つのそのような分散剤が、たとえば、(特許文献1)に記載されている。成分A〜Dの反応生成物を含む分散剤は、(特許文献2)に記載されている。
【0056】
第二の分散剤は、第一の分散剤と相乗効果的関係を有しており、少なくとも:A’)ヒドロカルビル−ジカルボン酸または無水物(数平均分子量500〜5000)とB’)ポリアミンとの反応生成物であってよい。
【0057】
成分AおよびA’
成分AおよびA’のヒドロカルビル−ジカルボン酸または無水物のヒドロカルビル残基は、ブテンポリマー、たとえばイソブチレンのポリマーから誘導することができる。本明細書で用いる場合、好適なポリイソブテンとしては、ポリイソブチレン、または少なくとも約60%、たとえば約70%〜約90%などの高い末端ビニリデン含量を有する、高度に反応性が高いポリイソブチレンからのものが挙げられる。好適なポリイソブテンとしては、BF
3触媒を使用して調製したものが挙げられる。ポリアルケニル置換基の平均の数分子量は、先に挙げたように、GPCで、較正標準としてポリスチレンを使用して測定して、広い範囲、たとえば約100〜約5000、たとえば約500〜約5000で変化させることができる。
【0058】
成分AおよびA’のジカルボン酸または無水物は、無水マレイン酸から、または、無水マレイン酸以外のカルボン酸系反応剤、たとえばマレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸、エチルマレイン酸無水物、ジメチルマレイン酸無水物、エチルマレイン酸、ジメチルマレイン酸、ヘキシルマレイン酸などから選択することができるが、それらに相当する酸ハロゲン化物および低級脂肪族エステルも含まれる。好適なジカルボン酸無水物は、無水マレイン酸である。成分Aを作成するために使用される反応混合物中における、無水マレイン酸対ヒドロカルビル残基のモル比は、広い範囲で変化させることができる。したがって、そのモル比は、約5:1〜約1:5、たとえば約3:1〜約1:3で変化せることが可能であり、さらなる例としては、反応を強制的に完結させるために、無水マレイン酸を化学量論的に過剰に使用してもよい。未反応の無水マレイン酸は、真空蒸留によって除去することができる。
【0059】
成分BおよびB’
官能化分散剤を調製するための成分BまたはB’として、任意の多くのポリアミンを使用することができる。ポリアミン成分のBまたはB’は、ポリアルキレンポリアミンであってよい。ポリアミンの例としては以下のものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない:エチレンジアミン、プロパンジアミン、ブタンジアミン、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラアミン(TETA)、ペンタエチレンヘキサミン(PEHA)アミノエチルピペラジン、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、N−メチル−1,3−プロパンジアミン、N,N’−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、アミノグアニジンビカーボネート(AGBC)、および重質ポリアミン、たとえば、E100重質アミンボトム。重質ポリアミンには、少量の低級ポリアミンオリゴマー、たとえばTEPAおよびPEHA、主として7個以上の窒素原子を有するオリゴマー、1分子あたり2個以上の一級アミン、通常のポリアミン混合物よりも多くの分岐を有するポリアルキレンポリアミンの混合物が含まれていてよい。ヒドロカルビルで置換されたスクシンイミド分散剤を調製するために使用することが可能である、さらなるポリアミン(これらに限定されるわけではない)が(特許文献3)に開示されている(その開示は、参照により全体が本明細書に組み入れられる)。好ましくは、第一および第二の分散剤を形成させるための反応において成分BまたはB’として使用されるポリアミンが、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、E100重質アミンボトム、およびそれらの組合せの群から選択されるのが好ましい。1つの好ましい実施形態では、そのポリアミンがテトラエチレンペンタミン(TEPA)であってよい。
【0060】
1つの実施形態では、その官能化された第一の分散剤を、式(I)の化合物から誘導することができる:
【化1】
(式中、nは、0または1〜5の整数を表し、R
2は、先に定義されたヒドロカルビル置換基である)。1つの実施形態では、nが3であり、R
2が、ポリイソブテニル置換基、たとえば少なくとも約60%、たとえば約70%〜約90%以上の末端ビニリデン含量を有するポリイソブチレンから誘導されたものである。第二の分散剤が、式(I)の化合物であってもよい。式(I)の化合物が、ヒドロカルビルで置換されたコハク酸無水物、たとえばポリイソブテニルコハク酸無水物(PIBSA)と、ポリアミン、たとえばテトラエチレンペンタミン(TEPA)との反応生成物であってもよい。
【0061】
上述の式(I)の化合物は、(A)ポリイソブテニル置換されたコハク酸無水物対(B)ポリアミンのモル比が、1:1〜10:1、好ましくは、1:1〜5:1、または4:3〜3:1、または4:3〜2:1の範囲である。特に有用な分散剤は、GPCにより較正標準としてポリスチレンを使用して測定して、約500〜5000の範囲の数平均分子量(Mn)を有する、ポリイソブテニル置換されたコハク酸無水物のポリイソブテニル基と、(B)一般式H
2N(CH
2)
m−[NH(CH
2)
m]
n−NH
2(式中、mは、2〜4の範囲であり、nは、1〜2の範囲である)を有するポリアミンとを含む。好ましくは、AまたはA’がポリイソブチレンコハク酸無水物(PIBSA)である。PIBSAまたはAおよびA’は、ポリマー1本あたり平均して約1.0〜約2.0のコハク酸残基を有しているのがよい。
【0062】
式(1)のN置換された長鎖アルケニルスクシンイミドの例としては、約350〜約50,000、または約5,000、または約3,000の範囲のポリイソブチレン置換基の数平均分子量を有するポリイソブチレンスクシンイミドが挙げられる。スクシンイミド分散剤およびそれらの調製法は、たとえば(特許文献4)または(特許文献5)に開示されている。ポリオレフィンは、約2〜約16個、または約2〜約8個、または約2〜約6個の炭素原子を含む重合性モノマーから調製することができる。
【0063】
1つの実施形態では、第一および/または第二の分散剤(1種または複数)が、約350〜約50,000、または約5000、または約3000の範囲の数平均分子量を有するポリイソブチレンから誘導される。いくつかの実施形態では、ポリイソブチレンが含まれている場合、それが50mol%より大きい、60mol%より大きい、70mol%より大きい、80mol%より大きい、または90mol%より大きい末端二重結合含量を有していてよい。そのようなPIBは、高反応性PIB(「HR−PIB」)とも呼ばれている。約800〜約5000の範囲の数平均分子量を有するHR−PIBは、本開示の実施形態において使用するのに適している。慣用されるPIBは、典型的には50mol%未満、40mol%未満、30mol%未満、20mol%未満、または10mol%未満の末端二重結合含量のみを有する。アルケニルまたはアルキルコハク酸無水物の活性成分%は、クロマトグラフ法を使用して測定することができる。この方法は、(特許文献6)のカラム5および6に記載されている。
【0064】
約900〜約3000の範囲の数平均分子量を有するHR−PIBが好適である。そのようなHR−PIBは、市場で入手でき、または(特許文献7)(Boerzelら)および(特許文献8)(Gateauら)に記載されているようにして、非塩素化触媒、たとえば三フッ化ホウ素の存在下にイソブテンを重合させることにより合成することができる。前述の熱エン反応で使用した場合、HR−PIBは、その反応においてより高い変換速度を与えることが可能であり、さらには反応性が高いために、沈殿物の生成量が低くなる。適切な方法は、(特許文献4)に記載されている。
【0065】
成分C
成分Cは、芳香族カルボン酸、芳香族ポリカルボン酸、または芳香族酸無水物であるが、ここでカルボン酸または無水物基(1個または複数)はすべて、芳香族環に直接結合されている。そのようなカルボキシル含有芳香族化合物は、以下のものから選択することができる:1,8−ナフタル酸または無水物、および1,2−ナフタレンジカルボン酸または無水物、2,3−ナフタレンジカルボン酸または無水物、ナフタレン−1,4−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、フタル酸無水物、ピロメリット酸無水物、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸無水物、ジフェン酸または無水物、2,3−ピリジンジカルボン酸または無水物、3,4−ピリジンジカルボン酸または無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸または無水物、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸無水物、ピレンジカルボン酸または無水物など。1molのポリアミンあたりに反応させるこの後処理成分のmol数は、約0.1:1〜約2:1の範囲とするのがよい。反応混合物中における、この後処理成分対ポリアミンの典型的なモル比は、約0.2:1〜約2.0:1の範囲とするのがよい。使用することが可能である、この後処理成分対ポリアミンのまた別のモル比は、0.25:1〜約1.5:1の範囲とするのがよい。この後処理成分は、他の成分と約140℃〜約180℃の範囲の温度で反応させるのがよい。
【0066】
成分D
成分Dは、非芳香族ジカルボン酸または無水物である。その非芳香族ジカルボン酸または無水物は、500未満の数平均分子量を有しているのがよい。好適なカルボン酸または無水物としては、以下のものが挙げられるが、それらに限定されるわけではない:酢酸または無水物、シュウ酸および無水物、マロン酸および無水物、コハク酸および無水物、アルケニルコハク酸および無水物、グルタル酸および無水物、アジピン酸および無水物、ピメリン酸および無水物、スベリン酸および無水物、アゼライン酸および無水物、セバシン酸および無水物、マレイン酸および無水物、フマル酸および無水物、酒石酸および無水物、グリコール酸および無水物、1,2,3,6−テトラヒドロナフタル酸および無水物など。
【0067】
成分Dは、成分Bと、反応される成分Bの1molあたり約0.1〜約2.5molの範囲の成分Dというモル比で反応される。典型的には、使用される成分Dの量は、成分B中の二級アミノ基の数に関連することになるであろう。したがって、成分B中の二級アミノ基1個あたり約0.2〜約2.0molの成分Dを他の成分と反応させて、本開示の実施形態による分散剤を得ることができる。成分D対成分Bの使用可能な他のモル比は、成分Bの1molあたり、0.25:1〜約1.5:1molの成分Dの範囲とすることができる。成分Dは、他の成分と約140℃〜約180℃の範囲の温度で反応させるのがよい。
【0068】
その後処理工程は、オレフィンコポリマーと、無水コハク酸、および少なくとも1種のポリアミンとの反応が完了してから実施するのがよい。
【0069】
さらなる好ましい実施形態では、相乗的効果を作り出すために、添加剤組成物中で3種以上の分散剤添加剤を使用してもよい。3種の分散剤添加剤の好ましい組合せでは、それらの分散剤の2種以上が先に列記し説明した成分A〜Dの反応生成物を含む。
【0070】
好適な分散剤は、慣用される方法により、広く各種の反応剤と反応させることによって後処理することも可能である。そのようなものとしては、以下のものが挙げられる:ホウ素、尿素、チオ尿素、ジメルカプトチアジアゾール、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、炭化水素で置換されたコハク酸無水物、無水マレイン酸、ニトリル、エポキシド、カーボネート、環状カーボネート、ヒンダードフェノール系エステル、およびリン化合物。(特許文献9);(特許文献10);および(特許文献11)を参照によりその全体を本明細書に組み入れたものとする。
【0071】
カーボネートおよびホウ酸の後処理に加えて、改良したり、別の性質を付与するように設計された各種の後処理を用いて、分散剤を後処理したり、さらなる後処理をしたりしてもよい。そのような後処理としては、(特許文献12)のカラム27〜29にまとめられているものが挙げられる(参照により本明細書に取り入れたものとする)。
【0072】
好適な分散剤のTBNは、オイルフリー基準で約10〜約65であってよいが、これは、約50%の希釈剤のオイルを含む分散剤のサンプルで測定したとすると、約5〜約30のTBNに相当する。
【0073】
本明細書に記載の潤滑剤組成物には、潤滑剤組成物の全重量を基準にして約0.1重量パーセント〜約5重量パーセントの上述の相乗効果性分散剤の組合せを含むことができる。その相乗効果性分散剤の組合せの量の好ましい範囲は、潤滑剤組成物の全重量パーセントを基準にして約0.25重量パーセント〜約3重量パーセントとするのがよい。前述の相乗効果性分散剤の組合せに加えて、その潤滑剤組成物には、ベースオイルが含まれ、慣用されるその他の成分、非限定的に挙げれば、たとえば、摩擦調節剤、追加の分散剤、金属洗浄剤、摩耗防止剤、消泡剤、抗酸化剤、粘度調節剤、流動点降下剤、腐食防止剤などを含んでいてよい。
【0074】
ベースオイル
本明細書における潤滑オイル組成物において使用されるベースオイルは、American Petroleum Institute(API)Base Oil Interchangeablity Guidelinesに規定されているグループI〜Vに属する各種のベースオイルの任意のものから選択することができる。その5つのベースオイルのグループは以下の通りである。
【0076】
グループI、II、およびIIIは、鉱油プロセスストックである。グループIVのベースオイルには、真の合成分子種が含まれ、それらは、オレフィン性不飽和炭化水素を重合させることにより製造される。グループVのベースオイルの多くもまた、真の合成製品であり、ジエステル、ポリオールエステル、ポリアルキレングリコール、アルキル化芳香族化合物、ポリリン酸エステル、ポリビニルエーテル、および/またはポリフェニルエーテルなどが含まれるが、天然由来のオイル、たとえば植物油も含まれていてよい。グループIIIのベースオイルは、鉱油から得られるものではあるが、それらの流体に過酷な加工を加えることにより、それらの物理的性質を、ある種の真の合成品、たとえばPAOに極めて類似したものにすることができることに注意されたい。したがって、グループIIIのベースオイルから誘導されるオイルは、当技術分野では合成流体とも呼ばれている。
【0077】
本明細書に開示された潤滑オイル組成物中で使用されるベースオイルは、鉱油、動物油、植物油、合成油、またはそれらの混合物であってよい。好適なオイルは、水素化分解、水素化、ハイドロフィニッシング、未精製、精製、および再精製オイル、およびそれらの混合物から得られる。
【0078】
未精製オイルとは、天然オイル、鉱油、または合成オイル源から得られ、さらなる精製処理をまったく行わないか、またはわずかにのみ行うものである。精製オイルは、未精製オイルと類似しているが、ただしそれらは、一段または複数の精製工程で処理されており、その結果、1つまたは複数の性能が改良されている。好適な精製技術の例としては、溶媒抽出、二次蒸留、酸抽出もしくはアルカリ抽出、濾過、浸透などが挙げられる。食用の品質までのオイルの精製は、有用であるか、または有用でないことがあり得る。食用のオイルは、ホワイト油と呼ばれることもある。いくつかの実施形態では、潤滑オイル組成物には、食用オイルまたはホワイト油は含まれない。
【0079】
再精製オイルは、再生オイルまたは再処理オイルとしても知られている。これらのオイルは、精製オイルと同様にして、同一または類似のプロセスを使用して、得られる。これらのオイルは、多くの場合、使用済みの添加剤およびオイルの分解生成物を除去する目的の技術を用いて、さらなる加工が実施される。
【0080】
鉱油には、採油によって得られるオイル、または植物および動物からのオイル、またはそれらの各種混合物が含まれる。たとえばそのようなオイルとしては、以下のものが挙げられるが、それらに限定されるわけではない:ヒマシ油、ラード油、オリーブ油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、ダイズ油、およびアマニ油、さらには鉱油系の潤滑オイル、たとえば液状の石油、ならびに溶液処理もしくは酸処理した、パラフィン系、ナフテン系、またはパラフィン−ナフテン混合系のタイプの鉱油系の潤滑オイル。そのようなオイルは、必要に応じて、部分水素化または完全水素化されていてもよい。石炭またはシェールから誘導されるオイルもまた、有用となり得る。
【0081】
有用な合成潤滑オイルとしては、以下のものが挙げられる:炭化水素油、たとえば、ポリマー化、オリゴマー化、もしくはインターポリマー化オレフィン(たとえば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンイソブチレンコポリマー);ポリ(1−ヘキセン)、ポリ(1−オクテン)、1−デセンのトリマーまたはオリゴマー、たとえば、ポリ(1−デセン)(それらの物質は多くの場合にα−オレフィンとも呼ばれる)、およびそれらの混合物;アルキル−ベンゼン(たとえば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ−(2−エチルヘキシル)−ベンゼン);ポリフェニル(たとえば、ビフェニル、テルフェニル、アルキル化ポリフェニル);ジフェニルアルカン、アルキル化ジフェニルアルカン、アルキル化ジフェニルエーテルおよびアルキル化ジフェニルスルフィド、ならびにそれらの誘導体、類似体および同族体、またはそれらの混合物。ポリアルファオレフィンは、典型的には、水素化された物質である。
【0082】
その他の合成潤滑オイルとしては、以下のものが挙げられる:ポリオールエステル、ジエステル、リン含有酸の液状エステル(たとえば、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、およびデカンホスホン酸のジエチルエステル)、または高分子量テトラヒドロフラン。合成油は、フィッシャー・トロプシュ反応によって製造することが可能であり、典型的には水素異性化フィッシャー・トロプシュ炭化水素またはワックスであってよい。1つの実施形態では、オイルが、その他の気液オイルと同様に、フィッシャー・トロプシュ気液合成手順で調製してもよい。
【0083】
潤滑性組成物中に含まれるベースオイルのほとんどは、グループI、グループII、グループIII、グループIV、グループV、および前述のものの2種以上の組合せからなる群から選択することができるが、そのベースオイルの大部分は、組成物中で添加剤成分または粘度指数改良剤を備えることから発生するベースオイルとは別物である。また別の実施形態では、潤滑性組成物中に含まれるベースオイルのほとんどは、グループII、グループIII、グループIV、グループV、および前述のものの2種以上の組合せからなる群から選択することができるが、そのベースオイルの大部分は、組成物中で添加剤成分または粘度指数改良剤を備えることから発生するベースオイルとは別物である。
【0084】
存在している潤滑粘度のオイルの量は、100重量%から、粘度指数改良剤および/または流動点降下剤および/またはその他のトップトリート添加剤も含めた性能添加剤の量を差し引いた後に残る、バランス量である。たとえば、仕上がり流体中に存在する可能性がある潤滑粘度のオイルが、多量、たとえば約50重量%より大きい、約60重量%より大きい、約70重量%より大きい、約80重量%より大きい、約85重量%より大きい、または約90重量%より大きいことができる。
【0085】
抗酸化剤
本明細書における潤滑オイル組成物には、任意選択的に、1種または複数の抗酸化剤がさらに含まれていてもよい。抗酸化剤化合物は公知であり、たとえば以下のものが挙げられる:フェネート、フェネートスルフィド、硫化オレフィン、リン硫化テルペン、硫化エステル、芳香族アミン、アルキル化ジフェニルアミン(たとえば、ノニルジフェニルアミン、ジ−ノニルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、ジ−オクチルジフェニルアミン)、フェニル−アルファ−ナフチルアミン、アルキル化フェニル−アルファ−ナフチルアミン、ヒンダード非芳香族アミン、フェノール、ヒンダードフェノール、油溶性モリブデン化合物、高分子量抗酸化剤、またはそれらの混合物。抗酸化剤化合物は単独で使用してもよく、または組み合わせて使用してもよい。
【0086】
ヒンダードフェノール抗酸化剤には、立体妨害基として二級ブチルおよび/または三級ブチル基が含まれていてよい。そのフェノール基は、ヒドロカルビル基および/または第二の芳香族基に結合された架橋基でさらに置換されていてもよい。好適なヒンダードフェノール抗酸化剤の例としては、以下のものが挙げられる:2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−メチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−エチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−プロピル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、または4−ブチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、または4−ドデシル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール。1つの実施形態では、そのヒンダードフェノール抗酸化剤が、エステルであってよく、たとえば、Irganox(商標)L−135(BASFから入手可能)、または2,6−ジ−tert−ブチルフェノールとアクリル酸アルキル(ここでそのアルキル基は、約1〜約18個、または約2〜約12個、または約2〜約8個、または約2〜約6個、または約4個の炭素原子を含んでいてよい)とから誘導される付加反応生成物が挙げられる。また別の市販されているヒンダードフェノール抗酸化剤は、エステルであり、Albemarle Corporationから入手可能なEthanox(商標)4716が挙げられる。
【0087】
有用な抗酸化剤としては、ジアリールアミンおよび高分子量フェノールが挙げられる。1つの実施形態では、その潤滑オイル組成物に、ジアリールアミンと高分子量フェノールとの混合物が含まれ、それぞれの抗酸化剤を、潤滑オイル組成物の最終重量を基準にして最大約5重量%とするに十分な量で存在させるのがよい。1つの実施形態では、その抗酸化剤が、潤滑オイル組成物の最終重量を基準にして約0.3〜約1.5重量%のジアリールアミンと約0.4〜約2.5%の高分子量フェノールとの混合物であってもよい。
【0088】
硫化されることにより硫化オレフィンを形成することが可能な好適なオレフィンの例としては、以下のものが挙げられる:プロピレン、ブチレン、イソブチレン、ポリイソブチレン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン、トリデセン、テトラデセン、ペンタデセン、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、ノナデセン、エイコセン、またはそれらの混合物。1つの実施形態では、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、ノナデセン、エイコセン、またはそれらの混合物およびそれらのダイマー、トリマー、およびテトラマーが、特に有用なオレフィンである。別の場合には、そのオレフィンがジエン、たとえば1,3−ブタジエンと不飽和エステル、たとえば、アクリル酸ブチルとのDiels−Alderアダクトであってもよい。
【0089】
他の種類の硫化オレフィンとしては、硫化脂肪酸およびそれらのエステルが挙げられる。それらの脂肪酸は、多くの場合、植物油または動物油から得られ、典型的には約4〜約22個の炭素原子を含んでいる。好適な脂肪酸およびそれらのエステルの例としては、トリグリセリド、オレイン酸、リノール酸、パルミトレイン酸、またはそれらの混合物が挙げられる。多くの場合、それらの脂肪酸は、ラード油、トール油、ラッカセイ油、ダイズ油、綿実油、ヒマワリ種子油、またはそれらの混合物から得られる。脂肪酸および/またはエステルは、オレフィン、たとえばα−オレフィンと混合されていてもよい。
【0090】
1種または複数の抗酸化剤を、潤滑オイル組成物の約0重量%〜約20重量%、または約0.1重量%〜約10重量%、または約1重量%〜約5重量%の範囲で存在させるのがよい。
【0091】
摩耗防止剤
本明細書における潤滑オイル組成物には、任意選択的に、1種または複数の摩耗防止剤がさらに含まれていてもよい。好適な摩耗防止剤の例としては、以下のものが挙げられるが、それらに限定されるわけではない:金属のチオリン酸塩;金属のジアルキルジチオリン酸塩;それらのリン酸エステルまたは塩;リン酸エステル;ホスファイト;リン含有カルボン酸エステル、エーテル、またはアミド;硫化オレフィン;チオカルバメート含有化合物、たとえば、チオカルバメートエステル、アルキレン−カップルドチオカルバメート、およびビス(S−アルキルジチオカルバミル)ジスルフィド;およびそれらの混合物。好適な摩耗防止剤は、ジチオカルバミン酸モリブデンであってよい。リン含有摩耗防止剤について、(特許文献13)にさらに詳しい説明がある。ジアルキルジチオリン酸塩中の金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム、鉛、スズ、モリブデン、マンガン、ニッケル、銅、チタン、または亜鉛であってよい。有用な摩耗防止剤は、ジアルキルチオリン酸亜鉛である。
【0092】
さらなる好適な摩耗防止剤の例としては、以下のものが挙げられる:チタン化合物、タータレート、テトライミド、リン化合物の油溶性アミン塩、硫化オレフィン、ホスファイト(たとえば亜リン酸ジブチル)、ホスホネート、チオカルバメート含有化合物、たとえばチオカルバメートエステル、チオカルバメートアミド、チオカルバミックエーテル、アルキレン−カップルドチオカルバメート、およびビス(S−アルキルジチオカルバミル)ジスルフィド。タータレートまたはテトライミドにはアルキル−エステル基が含まれていてよく、ここで、そのアルキル基上の炭素原子の数を合計したものが少なくとも8であるのがよい。1つの実施形態では、その摩耗防止剤が、サイトレートを含んでいるのがよい。
【0093】
摩耗防止剤は、その潤滑オイル組成物の約0重量%〜約15重量%、または約0.01重量%〜約10重量%、または約0.05重量%〜約5重量%、または約0.1重量%〜約3重量%の範囲で存在させるのがよい。
【0094】
ホウ素含有化合物
本明細書における潤滑オイル組成物には、任意選択的に、1種または複数のホウ素含有化合物が含まれていてもよい。
【0095】
ホウ素含有化合物の例としては、以下のものが挙げられる:ホウ酸エステル、ホウ酸塩化脂肪族アミン、ホウ酸塩化エポキシド、ホウ酸塩化洗浄剤、およびホウ酸塩化分散剤、(特許文献14)に開示されているような、たとえばホウ酸塩化スクシンイミド分散剤。
【0096】
ホウ素含有化合物は、存在する場合、その潤滑オイル組成物の約8重量%まで、約0.01重量%〜約7重量%、約0.05重量%〜約5重量%、または約0.1重量%〜約3重量%を与えるに十分な量で使用することができる。
【0097】
洗浄剤
潤滑オイル組成物には、任意選択的に、1種または複数の中性、低塩基性、または過塩基性の洗浄剤、およびそれらの混合物をさらに含んでいてよい。好適な洗浄剤基材としては、以下のものが挙げられる:フェネート、硫黄含有フェネート、スルホネート、カリキサレート、サリキサレート、サリチレート、カルボン酸、リン酸、モノ−および/もしくはジ−チオリン酸、アルキルフェノール、硫黄カップリングされたアルキルフェノール化合物、またはメチレン架橋されたフェノール。好適な洗浄剤およびそれらの調製方法は、多くの特許公刊物、たとえば(特許文献15)およびそれに引用されている文献により詳しく説明されている。洗浄剤基材は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を用いて塩とすることができるが、そのような金属としては、たとえば、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、リチウム、バリウム、またはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。いくつかの実施形態では、その洗浄剤にはバリウムが含まれない。好適な洗浄剤としては、石油スルホン酸、および長鎖のモノ−もしくはジ−アルキルアリールスルホン酸(ここでそのアリール基は、ベンジル、トリル、およびキシリルである)のアルカリもしくはアルカリ土類金属の塩が挙げられる。好適な洗浄剤の例としては、以下のものが挙げられるが、それらに限定されるわけではない:カルシウムフェネート、カルシウム硫黄含有フェネート、カルシウムスルホネート、カルシウムカリキサレート、カルシウムサリキサレート、カルシウムサリチレート、カルシウムカルボン酸、カルシウムリン酸、カルシウムモノ−および/またはジ−チオリン酸、カルシウムアルキルフェノール、カルシウム硫黄カップルドアルキルフェノール化合物、カルシウムメチレン架橋フェノール、マグネシウムフェネート、マグネシウム硫黄含有フェネート、マグネシウムスルホネート、マグネシウムカリキサレート、マグネシウムサリキサレート、マグネシウムサリチレート、マグネシウムカルボン酸、マグネシウムリン酸、マグネシウムモノ−および/またはジ−チオリン酸、マグネシウムアルキルフェノール、マグネシウム硫黄カップルドアルキルフェノール化合物、マグネシウムメチレン架橋フェノール、ナトリウムフェネート、ナトリウム硫黄含有フェネート、ナトリウムスルホネート、ナトリウムカリキサレート、ナトリウムサリキサレート、ナトリウムサリチレート、ナトリウムカルボン酸、ナトリウムリン酸、ナトリウムモノ−および/またはジ−チオリン酸、ナトリウムアルキルフェノール、ナトリウム硫黄カップルドアルキルフェノール化合物、またはナトリウムメチレン架橋フェノール。
【0098】
過塩基性の洗浄剤添加物は、当技術分野では周知であり、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の過塩基の洗浄剤添加物であってよい。そのような洗浄剤添加物は、金属酸化物または金属水酸化物を基材および二酸化炭素ガスと反応させることにより、調製することができる。その基材は、典型的には酸であり、たとえば脂肪族置換スルホン酸、脂肪族置換カルボン酸、または脂肪族置換フェノールである。
【0099】
「過塩基の」という用語は、存在している金属の量が化学量論量よりも多い金属塩、たとえばスルホネート、カルボキシレート、およびフェネートの金属塩に関連している。そのような塩は、100%を超える添加率を有することができる(すなわち、酸をその「正規で」、「中性の」塩に転化させるのに必要な金属の理論量である100%を超えてそれらが含まれている)。「金属比」(しばしば、略してMR)という表現は、その過塩基の塩中の金属の合計した化学当量の、公知の化学反応性および化学量論に従った中性塩における金属の化学当量に対する比率を表すのに使用される。正規または中性の塩では、その金属比が1であり、過塩基の塩では、MRが1より大きい。それらは、一般的には、過塩基性、ハイパー塩基性、またはスーパー塩基性の塩と呼ばれ、有機硫黄酸、カルボン酸、またはフェノールの塩であってよい。
【0100】
潤滑オイル組成物の過塩基の洗浄剤は、約200mgKOH/グラム以上、またはさらなる例としては、約250mgKOH/グラム以上、または約350mgKOH/グラム以上、または約375mgKOH/グラム以上、または約400mgKOH/グラム以上の全塩基数(TBN)を有することができる。
【0101】
好適な過塩基の洗浄剤の例としては、以下のものが挙げられるが、それらに限定されるわけではない;過塩基のカルシウムフェネート、過塩基のカルシウム硫黄含有フェネート、過塩基のカルシウムスルホネート、過塩基のカルシウムカリキサレート、過塩基のカルシウムサリキサレート、過塩基のカルシウムサリチレート、過塩基のカルシウムカルボン酸、過塩基のカルシウムリン酸、過塩基のカルシウムモノ−および/またはジ−チオリン酸、過塩基のカルシウムアルキルフェノール、過塩基のカルシウム硫黄カップルドアルキルフェノール化合物、過塩基のカルシウムメチレン架橋フェノール、過塩基のマグネシウムフェネート、過塩基のマグネシウム硫黄含有フェネート、過塩基のスルホン酸マグネシウム、過塩基のマグネシウムカリキサレート、過塩基のマグネシウムサリキサレート、過塩基のサリチル酸マグネシウム、過塩基のマグネシウムカルボン酸、過塩基のマグネシウムリン酸、過塩基のマグネシウムモノ−および/またはジ−チオリン酸、過塩基のマグネシウムアルキルフェノール、過塩基のマグネシウム 硫黄カップルドアルキルフェノール化合物、または過塩基のマグネシウムメチレン架橋フェノール。
【0102】
過塩基の洗浄剤では、1.1:1、または2:1、または4:1、または5:1、または7:1、または10:1の金属対基材の比率を有することができる。
【0103】
いくつかの実施形態では、洗浄剤が、エンジン中の錆の抑制または防止に有効である。
【0104】
洗浄剤は、約0重量%〜約10重量%、または約0.1重量%〜約8重量%、または約1重量%〜約4重量%、または約4重量%超〜約8重量%で存在させるのがよい。
【0105】
追加の分散剤
潤滑オイル組成物には、任意選択的に、1種または複数の追加の分散剤またはそれらの混合物をさらに含んでいてよい。
【0106】
潤滑剤組成物に含まれる追加の分散剤としては、油溶性で高分子量の、その主鎖が分散される粒子と会合することが可能な官能基を有する炭化水素が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。典型的には、その分散剤には、多くは架橋基を介してそのポリマー骨格に結合される、アミン、アルコール、アミド、またはエステルの極性残基が含まれている。分散剤は以下のものから選択することができる:Mannich分散剤((特許文献16)および(特許文献17)に記載);アッシュレスのスクシンイミド分散剤((特許文献5)および(特許文献18)に記載);アミン分散剤((特許文献19)、(特許文献20)、および(特許文献21)に記載);Koch分散剤((特許文献22)、(特許文献23)、および(特許文献24)に記載);ならびにポリアルキレンスクシンイミド分散剤((特許文献25)、(特許文献26)、および(特許文献27)に記載)。
【0107】
各種の実施形態において、その追加の分散剤が、ポリアルファオレフィン(PAO)コハク酸無水物、およびオレフィン無水マレイン酸コポリマーから誘導することができる。一例として、その追加の分散剤は、ポリ−PIBSAとして記述することもできる。また別の実施形態では、その追加の分散剤が、エチレン−プロピレンコポリマーにグラフトされた無水物から誘導することもできる。また別の追加の分散剤は、高分子量のエステルもしくはハーフエステルアミドであってもよい。
【0108】
また別のタイプの追加の分散剤が、Mannich塩基であってもよい。Mannich塩基は、より高い分子量のアルキル置換フェノール、ポリアルキレンポリアミン、およびアルデヒド、たとえばホルムアルデヒドを縮合させることにより形成される物質である。Mannich塩基は、(特許文献28)により詳しく説明されている。
【0109】
追加の分散剤は、存在する場合、潤滑オイル組成物の全重量を基準にして最大で約10重量%にするのに十分な量で使用することができる。また別の使用可能な分散剤の量は、潤滑オイル組成物の全重量を基準にして約0.1重量%〜約10重量%、または約0.1重量%〜約10重量%、または約3重量%〜約8重量%、または約1重量%〜約6重量%としてもよい。
【0110】
摩擦調節剤
本明細書における潤滑オイル組成物には、任意選択的に、1種または複数の摩擦調節剤がさらに含まれていてもよい。好適な摩擦調節剤としては、金属含有および金属非含有の摩擦調節剤が含まれ、たとえば以下のものが挙げられるが、それらに限定されるわけではない:イミダゾリン、アミド、アミン、スクシンイミド、アルコキシル化アミン、アルコキシル化エーテルアミン、アミンオキシド、アミドアミン、ニトリル、ベタイン、四級アミン、イミン、アミンの塩、アミノグアニジン、アルカノールアミド、ホスホネート、金属含有化合物、グリセロールエステル、硫化脂肪族化合物およびオレフィン、ヒマワリ油、その他の天然由来の植物油または動物油、ジカルボン酸エステル、ポリオールと1種または複数の脂肪族もしくは芳香族カルボン酸などとのエステルもしくは部分エステルなど。
【0111】
好適な摩擦調節剤には、ヒドロカルビル基が含まれていてもよいが、それは、直鎖、分岐鎖、または芳香族のヒドロカルビル基またはそれらの混合物から選択され、飽和であっても、または不飽和であってもよい。ヒドロカルビル基は、炭素および水素またはヘテロ原子、たとえば硫黄または酸素から構成されていてよい。ヒドロカルビル基は、約12〜約25個の炭素原子の範囲であってよい。いくつかの実施形態では、その摩擦調節剤が、長鎖脂肪酸のエステルである。また別の実施形態では、その長鎖脂肪酸のエステルが、モノ−エステル、またはジ−エステル、または(トリ)グリセリドであってもよい。摩擦調節剤は、長鎖脂肪酸アミド、長鎖脂肪族エステル、長鎖脂肪族エポキシド誘導体、または長鎖イミダゾリンであってよい。
【0112】
その他の好適な摩擦調節剤としては、有機でアッシュレス(金属フリー)、窒素フリーの有機摩擦調節剤が挙げられる。そのような摩擦調節剤としては、カルボン酸および酸無水物をアルカノールと反応させることによって形成されるエステルで、一般的に親油性の炭化水素鎖に共有結合的に結合された極性の末端基(たとえば、カルボキシルまたはヒドロキシル)を有するものが挙げられる。有機でアッシュレスで窒素フリーの摩擦調節剤の例は、グリセロールモノオレエート(GMO)として知られているが、これには、オレイン酸のモノ−、ジ−、およびトリ−エステルが含まれている可能性がある。その他の好適な摩擦調節剤が、(特許文献29)に記載されている(参照によりその全体を本明細書に取り入れたものとする)。
【0113】
アミン系摩擦調節剤としては、アミンまたはポリアミンを挙げることができる。そのような化合物は、直鎖状で、飽和または不飽和のいずれか、またはそれら両方であるヒドロカルビル基を有することが可能であり、約12〜約25個の炭素原子を含んでいてよい。好適な摩擦調節剤のさらなる例としては、アルコキシル化アミンおよびアルコキシル化エーテルアミンが挙げられる。そのような化合物は、直鎖状で、飽和または不飽和のいずれか、またはそれら両方であるヒドロカルビル基を含んでいてよい。それらには、約12〜約25個の炭素原子が含まれていてよい。例としては、エトキシル化アミンおよびエトキシル化エーテルアミンが挙げられる。
【0114】
アミンおよびアミドは、そのままで使用することもでき、またはホウ素化合物、たとえば酸化二ホウ素、ホウ素ハロゲン化物、メタボレート、ホウ酸、またはホウ酸モノ−、ジ−もしくはトリ−アルキルとのアダクトまたは反応生成物の形態で使用してもよい。その他の好適な摩擦調節剤が、(特許文献30)に記載されている(参照によりその全体を本明細書に取り入れたものとする)。
【0115】
摩擦調節剤は、任意選択的に、たとえば約0重量%〜約10重量%、または約0.01重量%〜約8重量%、または約0.1重量%〜約4重量%の範囲で存在させるのがよい。
【0116】
モリブデン含有成分
本明細書における潤滑オイル組成物には、任意選択的に、1種または複数のモリブデン含有成分がさらに含まれていてもよい。油溶性のモリブデン化合物は、摩耗防止剤、抗酸化剤、摩擦調節剤、またはそれらを組み合わせた基本的性能を有している可能性がある。油溶性のモリブデン化合物としては、以下のものが挙げられる:ジチオカルバミン酸モリブデン、ジアルキルジチオリン酸モリブデン、ジチオホスフィン酸モリブデン、モリブデン化合物のアミン塩、キサントゲン酸モリブデン、チオキサントゲン酸モリブデン、硫化モリブデン、カルボン酸モリブデン、モリブデンアルコキシド、三核オルガノモリブデン化合物、および/またはそれらの混合物。硫化モリブデンには、二硫化モリブデンも含まれる。二硫化モリブデンは、安定な分散体の形態であってもよい。1つの実施形態では、その油溶性モリブデン化合物を、ジチオカルバミン酸モリブデン、ジアルキルジチオリン酸モリブデン、モリブデン化合物のアミン塩、およびそれらの混合物からなる群から選択することができる。1つの実施形態では、その油溶性モリブデン化合物が、ジチオカルバミン酸モリブデンであってもよい。
【0117】
使用可能なモリブデン化合物の好適な例としては、たとえば以下の商品名で市販されているものが挙げられる:Molyvan 822(商標)、Molyvan(商標)A、Molyvan 2000(商標)、およびMolyvan 855(商標)(R.T.Vanderbilt Co.,Ltd.製)、ならびにSakura−Lube(商標)S−165、S−200、S−300、S−310G、S−525、S−600、S−700、およびS−710(Adeka Corporationから入手可能)、ならびにそれらの混合物。好適なモリブデン成分は、以下の特許に記載されている:(特許文献31);(特許文献32);(特許文献33);および(特許文献34)(参照によりその全体を本明細書に組み入れたものとする)。
【0118】
さらに、そのモリブデン化合物が、酸性モリブデン化合物であってもよい。それに含まれるのは、以下のものである:モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、およびその他のアルカリ金属のモリブデン酸塩および他のモリブデン塩、たとえば、モリブデン酸水素ナトリウム、MoOCl4、MoO2Br2、Mo2O3Cl6、三酸化モリブデンまたは同様の酸性モリブデン化合物。別の場合には、塩基性窒素化合物のモリブデン/硫黄錯体により、その組成物にモリブデンを加えることも可能であり、そのことは、たとえば以下の特許に記載されている:(特許文献35);(特許文献36);(特許文献37);(特許文献38);(特許文献39);(特許文献40);(特許文献41);および(特許文献42);ならびに(特許文献43)(参照によりその全体を本明細書に組み入れたものとする)。
【0119】
また別の種類の好適なオルガノモリブデン化合物は、三核モリブデン化合物、たとえば式Mo3SkLnQzのものおよびそれらの混合物であるが、ここで、Sは硫黄を表し、Lは、化合物にオイル中への可溶性または分散性を与えるための十分な数の炭素原子を有する有機基を有するそれぞれ独立して選択された配位子を表し、nは、1〜4であり、kは、4〜7で変動し、Qは、中性の電子供与性化合物、たとえば水、アミン、アルコール、ホスフィン、およびエーテルの群から選択され、およびzは、0〜5の範囲であり、非化学量論的な数値も含む。その配位子の有機基全体には、全部で少なくとも21個の炭素原子、たとえば少なくとも25個、少なくとも30個、または少なくとも35個の炭素原子が存在しているのがよい。さらなる好適なモリブデン化合物が、(特許文献28)に記載されている(参照によりその全体を本明細書に取り入れたものとする)。
【0120】
油溶性モリブデン化合物は、約0.5ppm〜約2000ppm、約1ppm〜約700ppm、約1ppm〜約550ppm、約5ppm〜約300ppm、または約20ppm〜約250ppmのモリブデンを与えるのに十分な量で存在させるのがよい。
【0121】
遷移金属含有化合物
また別の実施形態では、その油溶性化合物が、遷移金属含有化合物またはメタロイドであってもよい。遷移金属としては、以下のものが挙げられるが、それらに限定されるわけではない:チタン、バナジウム、銅、亜鉛、ジルコニウム、モリブデン、タンタル、タングステンなど。好適なメタロイドとしては、以下のものが挙げられるが、それらに限定されるわけではない、ホウ素、ケイ素、アンチモン、テルルなど。
【0122】
1つの実施形態では、油溶性遷移金属含有化合物が、摩耗防止剤、摩擦調節剤、抗酸化剤、析出調節添加剤、またはこれらの機能の2つ以上、として機能することができる。1つの実施形態では、その油溶性遷移金属含有化合物が、油溶性チタン化合物、たとえばチタン(IV)アルコキシドであってもよい。使用することが可能であるか、または油溶性物質を調製するために使用することが可能であるチタン含有化合物のなかで本明細書に開示された技術は、以下のものである:各種のTi(IV)化合物、たとえば酸化チタン(IV);硫化チタン(IV);硝酸チタン(IV);チタン(IV)アルコキシド、たとえばチタンメトキシド、チタンエトキシド、チタンプロポキシド、チタンイソプロポキシド、チタンブトキシド、チタン2−エチルヘキソキシド;およびその他のチタン化合物または錯体、非限定的に挙げれば、たとえばチタンフェネート;チタンカルボキシレート、たとえば2−エチル−1−3−ヘキサン二酸チタン(IV)、またはクエン酸チタンまたはオレイン酸チタン;ならびにチタン(IV)(トリエタノールアミナト)イソプロポキシド。本明細書に開示された技術に包含されるその他の形態のチタンとしては、以下のものが挙げられる:リン酸チタン、たとえばジチオリン酸チタン(たとえば、ジアルキルジチオリン酸塩)およびスルホン酸チタン(たとえば、アルキルベンゼンスルホネート)、または、一般的には、塩、たとえば油溶性の塩を形成させるためのチタン化合物と各種の酸性物質との反応生成物。したがって、チタン化合物は、とりわけ、有機酸、アルコール、およびグリコールから誘導することができる。Ti化合物は、さらに、Ti−O−Ti構造を含む、ダイマーまたはオリゴマーの形態で存在させてもよい。そのようなチタン物質は、市販されており、または当業者に明らかな適切な合成方法によって容易に調製することもできる。それらは、室温で固体としてかまたは液体として存在させることができるが、それは個々の化合物に依存する。それらはまた、適切な不活性溶媒中の溶液の形態として得ることもまた可能である。
【0123】
1つの実施形態では、チタンを、Ti変性分散剤、たとえばスクシンイミド分散剤として供給することができる。そのような物質は、チタンアルコキシドとヒドロカルビルで置換されたコハク酸無水物、たとえばアルケニル−(またはアルキル)コハク酸無水物との間で、チタン混合無水物を形成させることによって調製することができる。そのようにして得られるチタネート−スクシネート中間体を直接使用することも可能であり、またはそれを多数の物質のいずれか、たとえば以下のものと反応させてもよい:(a)遊離で、縮合可能な−NH官能基を有するポリアミンベースのスクシンイミド/アミド分散剤;(b)ポリアミンベースのスクシンイミド/アミド分散剤の成分、すなわち、アルケニル−(またはアルキル−)コハク酸無水物およびポリアミン;(c)置換されたコハク酸無水物と、ポリオール、アミノアルコール、ポリアミン、またはそれらの混合物との反応により調製したヒドロキシ含有ポリエステル分散剤。別の場合には、チタネート−スクシネート中間体を他の反応剤、たとえば、アルコール、アミノアルコール、エーテルアルコール、ポリエーテルアルコール、またはポリオール、または脂肪酸と反応させ、その反応生成物を、直接使用して潤滑剤にTiを付与するか、またはそうでなければ、先に述べたようにして、コハク酸系分散剤とさらに反応させてもよい。一例として、1部(mol基準)のチタン酸テトライソプロピルを、約2部(mol基準)のポリイソブテンで置換されたコハク酸無水物と、140〜150℃で5〜6時間かけて反応させて、チタン変性された分散剤または中間体を得てもよい。そのようにして得られた物質(30g)を、ポリイソブテンで置換されたコハク酸無水物とポリエチレンポリアミン混合物からのスクシンイミド分散剤(127グラム+希釈剤のオイル)と、150℃で1.5時間かけて反応させて、チタン変性スクシンイミド分散剤を製造してもよい。
【0124】
また別のチタン含有化合物が、チタンアルコキシドとC
6〜C
25カルボン酸との反応生成物であってもよい。その反応生成物は、次式:
【化2】
(式中、nは、2、3および4から選択される整数であり、Rは、約5〜約24個の炭素原子を含むヒドロカルビル基である)
または次式で表すことができる:
【化3】
(式中、R
1、R
2、R
3、およびR
4のそれぞれは、同一であっても異なっていてもよく、約5〜約25個の炭素原子を含むヒドロカルビル基から選択される)。好適なカルボン酸としては、以下のものが挙げられるが、それらに限定されるわけではない:カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸、リノレン酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、安息香酸、ネオデカン酸など。
【0125】
1つの実施形態では、その油溶性チタン化合物を、潤滑オイル組成物中に重量で0〜3000ppmのチタン、または重量で25〜約1500ppmのチタン、または重量で約35ppm〜500ppmのチタン、または約50ppm〜約300ppmを与えるような量で存在させるのがよい。
【0126】
粘度指数改良剤
本明細書における潤滑オイル組成物には、任意選択的に、1種または複数の粘度指数改良剤がさらに含まれていてもよい。好適な粘度指数改良剤としては、以下のものが挙げられる:ポリオレフィン、オレフィンコポリマー、エチレン/プロピレンコポリマー、ポリイソブテン、水素化スチレン−イソプレンポリマー、スチレン/マレイン酸エステルコポリマー、水素化スチレン/ブタジエンコポリマー、水素化イソプレンポリマー、アルファ−オレフィン−無水マレイン酸コポリマー、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアルキルスチレン、水素化アルケニルアリール共役ジエンコポリマー、またはそれらの混合物。粘度指数改良剤にはスターポリマーが含まれていてもよく、好適な例が、(特許文献44)に記載されている。
【0127】
本明細書における潤滑オイル組成物にはさらに、任意選択的に、粘度指数改良剤に加えてか、または粘度指数改良剤に代えて、1種または複数の分散体粘度指数改良剤が含まれていてもよい。好適な粘度指数改良剤としては、以下のものが挙げられる:官能化ポリオレフィン、たとえば、アシル化剤(たとえば無水マレイン酸)とアミンとの反応生成物を用いて官能化させたエチレン−プロピレンコポリマー;アミンを用いて官能化させたポリメタクリレート、またはアミンと反応させた、エステル化無水マレイン酸−スチレンコポリマー。
【0128】
粘度指数改良剤および/または分散体粘度指数改良剤の全量は、潤滑オイル組成物の約0重量%〜約20重量%、約0.1重量%〜約15重量%、約0.1重量%〜約12重量%、または約0.5重量%〜約10重量%とするのがよい。
【0129】
その他の任意選択的な添加剤
潤滑流体に要求される1つまたは複数の機能を達成するために、その他の添加剤を選択してもよい。さらには、上述の添加剤の1種または複数が、多官能性であって、本明細書に記載した機能を加えるか、または本明細書に記載したものとは別の機能を与えてもよい。
【0130】
本開示による潤滑オイル組成物が、任意選択的に、他の性能の添加剤を含んでいてもよい。その他の性能の添加剤は、本開示の特定された添加剤に加えてもよく、および/または以下のものの1種または複数を含んでいてもよい:金属不活性化剤、粘度指数改良剤、洗浄剤、アッシュレスのTBNブースター、摩擦調節剤、摩耗防止剤、腐食防止剤、さび止め剤、分散剤、分散体粘度指数改良剤、極圧添加剤、抗酸化剤、発泡抑制剤、解乳化剤、乳化剤、流動点降下剤、シール膨潤剤、およびそれらの混合物。典型的には、完全配合した潤滑オイルには、これらの性能添加剤が1種または複数含まれるであろう。
【0131】
好適な金属不活性化剤としては、以下のものが挙げられる:ベンゾトリアゾールの誘導体(典型的にはトリルトリアゾール)、ジメルカプトチアジアゾールの誘導体、1,2,4−トリアゾール、ベンゾイミダゾール、2−アルキルジチオベンズイミダゾール、または2−アルキルジチオベンゾチアゾール;発泡抑制剤としては、アクリル酸エチルとアクリル酸2−エチルヘキシルと任意選択的に酢酸ビニルとのコポリマー;解乳化剤としては、リン酸トリアルキル、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、および(エチレンオキシド−プロピレンオキシド)ポリマー;流動点降下剤としては、無水マレイン酸−スチレンのエステル、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、またはポリアクリルアミド。
【0132】
好適な発泡抑制剤としては、ケイ素ベースの化合物、たとえばシロキサンが挙げられる。
【0133】
好適な流動点降下剤としては、ポリメチルメタクリレート、またはそれらの混合物が挙げられる。流動点降下剤は、潤滑オイル組成物の全重量を基準にして約0重量%〜約1重量%、約0.01重量%〜約0.5重量%、または約0.02重量%〜約0.04重量%とするに十分な量で存在させるのがよい。
【0134】
好適なさび止め剤は、鉄系の金属表面の腐食を防止する性質を有する、単一の化合物または複数の化合物の混合物であってよい。本明細書で有用なさび止め剤の例としては以下のものが挙げられるが、これらに限定されるわけではない:油溶性の高分子量有機酸、たとえば2−エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ベヘン酸、およびセロチン酸、さらには油溶性のポリカルボン酸、たとえばダイマー酸およびトリマー酸、たとえばトール油脂肪酸から製造されるもの、オレイン酸、およびリノール酸。その他の好適な腐食防止剤としては、以下のものが挙げられる:約600〜約3000の分子量範囲にある長鎖アルファ,オメガ−ジカルボン酸、ならびに、その中のアルケニル基が約10個以上の炭素原子を含むアルケニルコハク酸、たとえば、テトラプロペニルコハク酸、テトラデセニルコハク酸、ヘキサデセニルコハク酸。また別の有用なタイプの酸性腐食防止剤は、そのアルケニル基中に約8〜約24個の炭素原子を有するアルケニルコハク酸と、アルコール、たとえばポリグリコールとのハーフエステルである。そのようなアルケニルコハク酸の、相当するハーフアミドもまた有用である。有用なさび止め剤は、高分子量の有機酸である。いくつかの実施形態では、エンジンオイルにさび止め剤が含まれない。
【0135】
さび止め剤は、存在する場合、潤滑オイル組成物の全重量を基準にして約0重量%〜約5重量%、約0.01重量%〜約3重量%、約0.1重量%〜約2重量%とするに十分な量で使用することができる。
【0136】
一般論としては、好適な潤滑剤組成物には、以下の表2に示した範囲で、添加剤成分を含むことができる。
【0138】
上述のそれぞれの成分のパーセントは、最終的な潤滑オイル組成物の重量を基準とした、それぞれの成分の重量パーセントを表している。潤滑オイル組成物の残りの部分は、1種または複数のベースオイルからなっている。
【0139】
本明細書に記載の組成物を配合するのに使用される添加剤は、ベースオイル中に個々にブレンドしてもよく、または各種の二次的組合せを利用してブレンドしてもよい。しかしながら、添加剤濃縮物(すなわち、添加剤プラス希釈剤、たとえば炭化水素溶媒)を使用して、全部の成分を同時にブレンドすることが好適となり得る。
【実施例】
【0140】
以下の実施例は、説明のためのものであって、本開示の方法および組成を限定するものではない。この分野で通常用いられ、当業者に自明である各種の条件およびパラメーターをその他の適切に修正したり適用したりすることは、本開示の趣旨および範囲内である。本明細書において引用されたすべての特許および公刊物は、参照によりその全体を本明細書に完全に取り入れたものとする。
【0141】
測定上の有効濃度を評価するための試験
本開示による潤滑剤配合物を評価するために、分散剤の各種の組合せにおいて、煤を分散させるそれらの性能について試験した。分散剤を含まない流体を使用して燃焼させたディーゼルエンジンを用いて、4.3重量%の煤を含む煤入りのオイルを発生させた。次いでそのオイルを、コーン/プレート式のレオメーターで剪断速度掃引により試験して、Newtonian/非Newtonian挙動を調べた。
【0142】
未処理の煤入りのオイルについての結果を
図1に示す。
【0143】
未処理の煤入りのオイル(曲線A、分散剤含まず)は、剪断速度の関数としての粘度では非直線状の曲線を与えたが、このことは、それが非Newtonian流体であり、煤がオイル中で凝集していることを示唆している。低い剪断において高い粘度であることは、煤の凝集を示唆している。未処理の煤入りのオイルの場合の勾配は、約0.00038であった。
【0144】
以下の実施例で使用した潤滑剤組成物は、上で調製した煤入りのオイルと同一のサンプルを使用して調製したものである。その煤入りのオイルに、単一の分散剤または添加剤組成物を各種の濃度で添加した。それぞれの配合物中に存在させた追加の成分は、以下のものである:1種または複数の抗酸化剤;1種または複数の洗浄剤;1種または複数のアッシュレスのTBNブースター;1種または複数の腐食防止剤;1種または複数の金属ジヒドロカルビルジチオホスフェート;1種または複数のアッシュフリーのリン化合物;1種または複数の消泡剤;1種または複数の摩耗防止剤;1種または複数の流動点降下剤;および1種または複数の摩擦調節剤。それぞれの潤滑剤組成物で使用された分散剤または添加剤組成物の量における変化に釣り合うように、煤入りのオイルの量を変化させて、組成をバランスさせた。潤滑剤組成物中におけるその他すべての添加剤の量は一定に維持した。
【0145】
それぞれの潤滑剤組成物を、コーン/プレート式のレオメーターでの剪断速度掃引にかけて、Newtonian/非Newtonian挙動を測定し、Newtonian挙動が観察された分散剤または添加剤組成物の有効濃度を測定した。すべての試験は、同一の一定温度100℃で実施した。それぞれの潤滑剤組成物について、数段階の分散剤濃度で試験した。それぞれの曲線の勾配を計算した。分散剤の有効濃度は、その潤滑剤組成物がNewtonian挙動を示す、潤滑剤中の分散剤の濃度とみなした。したがって、有効濃度とは、粘度対剪断速度において経時的な変化が示されない潤滑剤組成物が得られる分散剤の濃度であった。これは、粘度対剪断速度の曲線の勾配がゼロとなる分散剤の濃度を見出すことにより求めた。
【0146】
それぞれ第一および第二の分散剤のみを含む潤滑剤組成物(比較例1および2)、さらには相乗効果性分散剤の各種の組合せ物を数種の異なる濃度で含む潤滑剤組成物(実施例1〜5)について、試験を実施した。
【0147】
比較例1〜2および実施例1〜5のそれぞれについての計算上の有効濃度(EC)の計算のためのデータを得るために、これらの例において使用された個々の分散剤についてのそれぞれ有効濃度を求め、表3に示した。反応生成物のそれぞれは、特に断らない限り、4:3〜2:1の範囲のPIBSA:アミンのモル比を有していた。
【0148】
【表3】
【0149】
比較例1
上述の煤入りのオイルのサンプル、および上に列記した追加の添加剤と共に2種の分散剤を含む添加剤組成物を使用して、潤滑剤組成物を調製した。第一の分散剤は、MW1300のHR PIBおよびMW2300のHR PIBの混合物を含むPIBSAであった。第二の分散剤は、高反応性PIBとコハク酸無水物(「SA」)を1.75:1のSA:PIBのモル比で使用した反応生成物であった。そのようにして得られたPIBSAを、次いで、テトラエチレンペンタミン(「TEPA」)と、4:3〜2:1の範囲のPIBSA:アミンのモル比を使用して、反応させた。
【0150】
その潤滑剤組成物中の第一の分散剤の重量パーセントを29.5重量%で一定に維持し、潤滑剤組成物の全重量を基準にして2.25重量%のポリマー対潤滑剤組成物が得られるようにした。第二の分散剤の重量パーセントを変化させて、潤滑剤組成物の全重量を基準にして潤滑剤組成物に対して、第二の分散剤のポリマーの量を変えるようにした。その添加剤組成物を煤入りのオイルに添加して、潤滑剤組成物を作った。
【0151】
潤滑剤組成物中の分散剤の組合せの測定上の有効濃度を、先に説明した方法を使用して求めた。
【0152】
添加剤組成物における分散剤の組合せについての計算上の有効濃度は、組成物中の個々の分散剤それぞれの計算上の有効濃度を加えることによって求めた。第一の分散剤についての計算上の有効濃度は、その添加剤組成物中の分散剤のパーセント(この場合、29.5重量%)に、その分散剤についての測定上の有効濃度(7.63重量%)(これは、先に説明したプロセスを使用して求めたもので、表3に見出すことができる)を乗算することによって求める。
【0153】
第二の分散剤についての計算上の有効濃度は、分散剤の残りのパーセント(この場合、70.5)に、その分散剤についての測定上の有効濃度(1.51重量%)を乗算することによって計算する。第二の分散剤の測定上の有効濃度は、先に説明したプロセスを使用して測定したものであり、表3に含めている。
【0154】
添加剤組成物中の個々の分散剤についての計算上の有効濃度は、それぞれ2.25重量%と1.06重量%であった。したがって、両方の分散剤を含む添加剤組成物についての計算上の有効濃度は、潤滑剤組成物の全重量を基準にしてポリマーの3.31重量%であった。この添加剤組成物についての測定上の有効濃度は、潤滑剤組成物の全重量を基準にして4.26重量%であった。測定上の有効濃度は、粘度対剪断速度のグラフを描き、その曲線の勾配がゼロとなる濃度を見出すことにより求めた。測定上の有効濃度および計算上の有効濃度を、表4に示す。この場合、計算上の有効濃度が測定上の有効濃度よりも低いが、これは、この2種の分散剤が相乗的効果をもたらしていないことを示している。
【0155】
比較例2
上述の煤入りのオイルのサンプル、および上に列記した追加の添加剤と共に2種の分散剤を含む添加剤組成物を使用して、潤滑剤組成物を調製した。第一の分散剤は、高反応性PIBを含むPIBSA(SA:PIBのモル比、1.2:1)を、トリエチレンテトラアミンおよびE−100ボトムと、4:3〜2:1の範囲のPIBSA:アミンのモル比で反応させた反応生成物を後処理したものであった。その反応生成物は、無水マレイン酸およびホウ酸を用いて後処理した。
【0156】
第二の分散剤は、高反応性PIBを含むPIBSA(SA:PIBのモル比、1.75:1)を、テトラエチレンペンタミンと、4:3〜2:1の範囲のPIBSA:アミンのモル比で反応させた反応生成物であった。
【0157】
その潤滑剤組成物中の第一の分散剤の重量パーセントを25重量%で一定に維持し、潤滑剤組成物の全重量を基準にして1.81重量%のポリマー対潤滑剤組成物が得られるようにした。第二の分散剤の重量パーセントを変化させて、潤滑剤組成物の全重量を基準にして潤滑剤組成物に対して、第二の分散剤のポリマーの量を変えるようにした。その添加剤組成物を煤入りのオイルに添加して、潤滑剤組成物を作った。
【0158】
潤滑剤組成物中の分散剤の組合せの測定上の有効濃度を、先に説明した方法を使用して求めた。
【0159】
添加剤組成物における分散剤の組合せについての計算上の有効濃度は、組成物中の個々の分散剤それぞれの計算上の有効濃度を加えることによって求めた。第一の分散剤についての計算上の有効濃度は、その添加剤組成物中の分散剤のパーセント(この場合、25%)に、その分散剤についての測定上の有効濃度(7.23重量%)(これは、先に説明したプロセスを使用して求めたもので、表3に見出すことができる)を乗算することによって求める。
【0160】
第二の分散剤についての計算上の有効濃度は、分散剤の残りのパーセント(この場合、75%)に、その分散剤についての測定上の有効濃度(1.51重量%)を乗算することによって計算する。第二の分散剤の測定上の有効濃度は、先に説明したプロセスを使用して求めたもので、表3に含めている。
【0161】
添加剤組成物における個々の分散剤についての計算上の有効濃度は、それぞれ1.81重量%および1.13重量%であった。したがって、両方の分散剤を含む添加剤組成物についての計算上の有効濃度は、潤滑剤組成物の全重量を基準にしてポリマーの2.94重量%であった。この添加剤組成物についての測定上の有効濃度は、潤滑剤組成物の全重量を基準にして3.36重量%であった。測定上の有効濃度は、粘度対剪断速度のグラフを描き、その曲線の勾配がゼロとなる濃度を見出すことにより求めた。測定上の有効濃度および計算上の有効濃度を、表4に示す。この場合、計算上の有効濃度が測定上の有効濃度よりも低いが、これは、この2種の分散剤が相乗的効果をもたらしていないことを示している。
【0162】
実施例1
上述の煤入りのオイルのサンプル、および上に列記した追加の添加剤と共に2種の分散剤を含む添加剤組成物を使用して、潤滑剤組成物を調製した。第一の分散剤は、MW1300のHR PIBおよびMW2300のMW PIBの混合物を含むPIBSAであった。
【0163】
その組合せ中の第二の分散剤は、高反応性PIBを含むPIBSA(SA:PIBのモル比、1.75:1)を、テトラエチレンペンタミンと、4:3〜2:1の範囲のPIBSA:アミンのモル比で反応させた反応生成物を後処理したものであった。その反応生成物を次いで、無水ナフタル酸を用いて後処理した。その潤滑剤組成物中の第一の分散剤の重量パーセントを29.5重量%で一定に維持し、潤滑剤組成物の全重量を基準にして2.25重量%のポリマー対潤滑剤組成物が得られるようにした。第二の分散剤の重量パーセントを変化させて、潤滑剤組成物の全重量を基準にして、潤滑剤組成物に対して第二の分散剤のポリマーの量を変えるようにした。その添加剤組成物を煤入りのオイルに添加して、潤滑剤組成物を作った。
【0164】
潤滑剤組成物についての測定上の有効濃度は、先に説明した方法を使用して求めた。その分散剤の組合せについての計算上の有効濃度は、比較例1に記載した方法を使用して計算した。第一および第二の分散剤についての計算上の有効濃度は、表3に示した測定上の有効濃度から、第一の分散剤には29.5%、および第二の分散剤には70.5%を使用して計算した。その添加剤組成物における測定上の有効濃度は2.78重量%であり、計算上の有効濃度は2.94重量%であった。それらの結果を表4に示す。計算上の有効濃度に比較して測定上の有効濃度の方が低いことは、これら2種の分散剤は、相乗的効果を備えていることを示唆している。
【0165】
実施例2
上述の煤入りのオイルのサンプル、および上に列記した追加の添加剤と共に2種の分散剤を含む添加剤組成物を使用して、潤滑剤組成物を調製した。その組合せ中の第一の分散剤は、1.15:1のSA:PIBのモル比を有する高反応性PIBおよびコハク酸無水物SAと、トリエチレンテトラミンおよびE−100(ボトム)の混合物とを、4:3〜2:1の範囲のPIBSA:アミンのモル比で反応させた反応生成物であった。
【0166】
その組合せ中の第二の分散剤は、1.75:1のSA:PIBのモル比を有する高反応性PIBおよびコハク酸無水物と、トリエチレンテトラミンおよびE−100(ボトム)の混合物とを、4:3〜2:1の範囲のPIBSA:アミンのモル比で反応させた反応生成物を後処理したものであった。その反応生成物を、次いで、無水ナフタル酸と無水マレイン酸との混合物を用いて後処理した。その潤滑剤組成物中の第一の分散剤の重量パーセントを50重量%で一定に維持し、潤滑剤組成物の全重量を基準にして1.65重量%のポリマー対潤滑剤組成物が得られるようにした。第二の分散剤の重量パーセントを変化させて、潤滑剤組成物の全重量を基準にして、潤滑剤組成物に対して第二の分散剤のポリマーの量を変えるようにした。その添加剤組成物を煤入りのオイルに添加して、潤滑剤組成物を作った。
【0167】
潤滑剤組成物についての測定上の有効濃度は、先に説明した方法を使用して求めた。その分散剤の組合せについての計算上の有効濃度は、比較例1に記載した方法を使用して計算した。第一および第二の分散剤についての計算上の有効濃度は、表3に示した測定上の有効濃度から、第一の分散剤には50%、および第二の分散剤には50%を使用して計算した。その添加剤組成物における測定上の有効濃度は1.89重量%であり、計算上の有効濃度は2.165重量%であった。それらの結果を表4に示す。計算上の有効濃度に比較して測定上の有効濃度の方が低いことは、これら2種の分散剤は、相乗的効果を備えていることを示唆している。
【0168】
実施例3
上述の煤入りのオイルのサンプル、および上に列記した追加の添加剤と共に3種の分散剤を含む添加剤組成物を使用して、潤滑剤組成物を調製した。第一の分散剤は、MW1300のHR PIBおよびMW2300のHR PIBの混合物を含むPIBSAであった。
【0169】
第二の分散剤は、高反応性PIB、SA(SA:PIBのモル比、1.2:1)と、トリエチレンテトラアミンおよびE−100重質アミンボトムの混合物とを、4:3〜2:1の範囲のPIBSA:アミンのモル比で反応させた反応生成物であった。その反応生成物を、次いで、無水マレイン酸とホウ酸との混合物を用いて後処理した。
【0170】
その組合せ中の第三の分散剤は、高反応性PIB、SA(SA:PIBのモル比、1.75:1)と、テトラエチレンペンタミンとを、4:3〜2:1の範囲のPIBSA:アミンのモル比で反応させた反応生成物であった。その反応生成物を次いで、無水ナフタル酸を用いて後処理した。潤滑剤組成物中の第一および第二の分散剤の重量パーセントを、それぞれ25重量%で一定に維持し、潤滑剤組成物に対して、潤滑剤組成物の全重量を基準にしてそれぞれ1.911重量%および1.810重量%のポリマーとなるようにした。第三の分散剤の重量パーセントを変化させて、潤滑剤組成物の全重量を基準にして、潤滑剤組成物に対して第三の分散剤のポリマーの量を変えるようにした。その添加剤組成物を煤入りのオイルに添加して、潤滑剤組成物を作った。
【0171】
潤滑剤組成物についての測定上の有効濃度は、先に説明した方法を使用して求めた。3種の分散剤の組合せについての計算上の有効濃度は、比較例1に記載した方法を使用した計算したが、そのパーセントの計算には第三の分散剤も含まれていた。第一、第二、および第三の分散剤の組合せについての計算上の有効濃度を、表3に示した3種個々の分散剤のそれぞれの測定上の有効濃度から、第一の分散剤には25%、第二の分散剤には25%、および第三の分散剤には50%を使用して、計算した。その添加剤組成物における測定上の有効濃度は3.94重量%であり、計算上の有効濃度は4.216重量%であった。それらの結果を表4に示す。計算上の有効濃度に比較して測定上の有効濃度の方が低いことは、これら3種の分散剤の組合せが相乗的効果を備えていることを示唆している。
【0172】
【表4】
【0173】
実施例4
上述の煤入りのオイルのサンプル、および上に列記した追加の添加剤と共に2種の分散剤を含む添加剤組成物を使用して、潤滑剤組成物を調製した。第一の分散剤は、高反応性PIBを含むPIBSA(SA:PIBのモル比、1.2:1)を、トリエチレンテトラアミンおよびE−100ボトムと、4:3〜2:1の範囲のPIBSA:アミンのモル比で反応させた反応生成物を後処理したものであった。次いでその反応生成物を、無水マレイン酸およびホウ酸を用いて後処理した。
【0174】
その組合せ中の第二の分散剤は、高反応性PIBを含むPIBSA(SA:PIBのモル比、1.75:1)を、テトラエチレンペンタミンと、4:3〜2:1の範囲のPIBSA:アミンのモル比で反応させた反応生成物を後処理したものであった。その反応生成物を次いで、無水ナフタル酸を用いて後処理した。その潤滑剤組成物中の第一の分散剤の重量パーセントを25重量%で一定に維持し、潤滑剤組成物の全重量を基準にして1.81重量%のポリマー対潤滑剤組成物が得られるようにした。第二の分散剤の重量パーセントを変化させて、潤滑剤組成物の全重量を基準にして、潤滑剤組成物に対して第二の分散剤のポリマーの量を変えるようにした。その添加剤組成物を煤入りのオイルに添加して、潤滑剤組成物を作った。
【0175】
潤滑剤組成物についての測定上の有効濃度は、先に説明した方法を使用して求めた。その分散剤の組合せについての計算上の有効濃度は、比較例1に記載した方法を使用して計算した。第一および第二の分散剤についての計算上の有効濃度は、表3に示した測定上の有効濃度から、第一の分散剤には25%、および第二の分散剤には75%を使用して計算した。その添加剤組成物における測定上の有効濃度は2.24重量%であり、計算上の有効濃度は2.55重量%であった。それらの結果を表4に示す。計算上の有効濃度に比較して測定上の有効濃度の方が低いことは、これら2種の分散剤は、相乗的効果を備えていることを示唆している。
【0176】
実施例5
上述の煤入りのオイルのサンプル、および上に列記した追加の添加剤と共に2種の分散剤を含む添加剤組成物を使用して、潤滑剤組成物を調製した。第一の分散剤は、高反応性PIBを含むPIBSA(SA:PIBのモル比、1.2:1)を、トリエチレンテトラアミンおよびE−100ボトムと、4:3〜2:1の範囲のPIBSA:アミンのモル比で反応させた反応生成物を後処理したものであった。次いでその反応生成物を、無水マレイン酸およびホウ酸を用いて後処理した。
【0177】
その組合せ中の第二の分散剤は、高反応性PIBを含むPIBSA(SA:PIBのモル比、1.75:1)を、トリエチレンテトラアミンおよびE−100ボトムと、4:3〜2:1の範囲のPIBSA:アミンのモル比で反応させた反応生成物を後処理したものであった。その反応生成物を、次いで、無水ナフタル酸および無水マレイン酸を用いて後処理した。その潤滑剤組成物中の第一の分散剤の重量パーセントを14重量%で一定に維持し、潤滑剤組成物の全重量を基準にして1.04重量%のポリマー対潤滑剤組成物が得られるようにした。第二の分散剤の重量パーセントを変化させて、潤滑剤組成物の全重量を基準にして、潤滑剤組成物に対して第二の分散剤のポリマーの量を変えるようにした。その添加剤組成物を煤入りのオイルに添加して、潤滑剤組成物を作った。
【0178】
潤滑剤組成物についての測定上の有効濃度は、先に説明した方法を使用して求めた。その分散剤の組合せについての計算上の有効濃度は、比較例1に記載した方法を使用して計算した。第一および第二の分散剤についての計算上の有効濃度は、表3に示した測定上の有効濃度から、第一の分散剤には14%、および第二の分散剤には86%を使用して計算した。その添加剤組成物における測定上の有効濃度は6.325重量%であり、計算上の有効濃度は2.52重量%であった。それらの結果を表4に示す。計算上の有効濃度に比較して測定上の有効濃度の方が低いことは、これら2種の分散剤は、相乗的効果を備えていることを示唆している。
【0179】
実施例6
上述の煤入りのオイルのサンプル、および上に列記した追加の添加剤と共に2種の分散剤を含む添加剤組成物を使用して、潤滑剤組成物を調製した。第一の分散剤は、MW1300のHR PIBおよびMW2300のHR PIBの混合物を含むPIBSAであった。
【0180】
その組合せ中の第二の分散剤は、高反応性PIB、SA(SA:PIBのモル比、1.75:1)と、テトラエチレンペンタミンとを、4:3〜2:1の範囲のPIBSA:アミンの比率で反応させた反応生成物であった。その反応生成物を次いで、無水ナフタル酸を用いて後処理した。
【0181】
3種の個別の試験において、潤滑剤組成物中で、第一の分散剤を3種の異なる重量パーセントを用いて使用した。第一の試験では、第一の分散剤の重量パーセントを、29.5重量%で一定に維持して、潤滑剤組成物の全重量を基準にして2.25重量%のポリマー対潤滑剤組成物が得られるようにした。第二の試験では、第一の分散剤の重量パーセントを10重量%で一定に維持して、0.763重量%ポリマーを与え、第三の試験では、第一の分散剤の重量パーセントを5重量%で一定に維持して、すべて潤滑剤組成物の全重量を基準にして0.382重量%のポリマー対潤滑剤組成物を得た。第二の分散剤の重量パーセントをそれぞれの試験で変化させて、潤滑剤組成物の全重量を基準にして、潤滑剤組成物に対して第二の分散剤のポリマーの量を変えるようにした。その添加剤組成物を煤入りのオイルに添加して、潤滑剤組成物を作った。
【0182】
潤滑剤組成物についての測定上の有効濃度は、先に説明した方法を使用して求めた。その分散剤の組合せについての計算上の有効濃度は、比較例1に記載した方法を使用して計算した。第一の試験では、第一および第二の分散剤についての計算上の有効濃度は、表3に示した測定上の有効濃度から、第一の分散剤には29.5%、および第二の分散剤には70.5%を使用して計算した。その添加剤組成物における測定上の有効濃度は2.78重量%であり、計算上の有効濃度は2.94重量%であった。
【0183】
第二の試験では、第一および第二の分散剤についての計算上の有効濃度は、表3に示した測定上の有効濃度から、第一の分散剤には10%、および第二の分散剤には90%を使用して計算した。その添加剤組成物における測定上の有効濃度は1.63重量%であり、計算上の有効濃度は1.654重量%であった。
【0184】
第三の試験では、第一および第二の分散剤についての計算上の有効濃度は、表3に示した測定上の有効濃度から、第一の分散剤には5%、および第二の分散剤には95%を使用して計算した。その添加剤組成物における測定上の有効濃度は1.41重量%であり、計算上の有効濃度は1.322重量%であった。
【0185】
実施例6についての結果を、表5に示す。計算上の有効濃度に比較して、第一および第二の試験での測定上の有効濃度が低いことは、第一および第二の分散剤のこれら2つの組合せが、相乗的効果を有していることを示している。しかしながら、第一の分散剤の濃度が最低である場合、その計算上の有効濃度が測定上の有効濃度よりも低く、第一の分散剤の濃度が比較的に低いところでは、相乗的効果が観察されないこと示している。
【0186】
【表5】
【0187】
実施例7
上述の煤入りのオイルのサンプル、および上に列記した追加の添加剤と共に2種の分散剤を含む添加剤組成物を使用して、潤滑剤組成物を調製した。第一の分散剤は、高反応性PIBを含むPIBSA(SA:PIBのモル比、1.2:1)を、トリエチレンテトラアミンおよびE−100ボトムと、4:3〜2:1の範囲のPIBSA:アミンのモル比で反応させた反応生成物を後処理したものであった。その反応生成物は、無水マレイン酸およびホウ酸を用いて後処理した。
【0188】
その組合せ中の第二の分散剤は、高反応性PIB、SA(SA:PIBのモル比、1.75:1)と、テトラエチレンペンタミンとを、4:3〜2:1の範囲のPIBSA:アミンの比率で反応させた反応生成物を後処理したものであった。その反応生成物を次いで、無水ナフタル酸を用いて後処理した。
【0189】
3種の個別の試験において、潤滑剤組成物中で、第一の分散剤を3種の異なる重量パーセントを用いて使用した。第一の試験では、第一の分散剤の重量パーセントを、25重量%で一定に維持して、潤滑剤組成物の全重量を基準にして1.81重量%のポリマー対潤滑剤組成物が得られるようにした。第二の試験では、第一の分散剤の重量パーセントを10重量%で一定に維持して、0.724重量%ポリマーを与え、第三の試験では、第一の分散剤の重量パーセントを5重量%で一定に維持して、すべて潤滑剤組成物の全重量を基準にして0.362重量%のポリマー対潤滑剤組成物を得た。第二の分散剤の重量パーセントをそれぞれの試験で変化させて、潤滑剤組成物の全重量を基準にして、潤滑剤組成物に対して第二の分散剤のポリマーの量を変えるようにした。その添加剤組成物を煤入りのオイルに添加して、潤滑剤組成物を作った。
【0190】
潤滑剤組成物についての測定上の有効濃度は、先に説明した方法を使用して求めた。その分散剤の組合せについての計算上の有効濃度は、比較例1に記載した方法を使用して計算した。第一の試験では、第一および第二の分散剤についての計算上の有効濃度は、表3に示した測定上の有効濃度から、第一の分散剤には25%、および第二の分散剤には75%を使用して計算した。その添加剤組成物における測定上の有効濃度は2.24重量%であり、計算上の有効濃度は2.55重量%であった。
【0191】
第二の試験では、第一および第二の分散剤についての計算上の有効濃度は、表3に示した測定上の有効濃度から、第一の分散剤には10%、および第二の分散剤には90%を使用して計算した。その添加剤組成物における測定上の有効濃度は1.398重量%であり、計算上の有効濃度は1.615重量%であった。
【0192】
第三の試験では、第一および第二の分散剤についての計算上の有効濃度は、表3に示した測定上の有効濃度から、第一の分散剤には5%、および第二の分散剤には95%を使用して計算した。その添加剤組成物における測定上の有効濃度は1.485重量%であり、計算上の有効濃度は1.303重量%であった。
【0193】
実施例7についての結果を、表6に示す。計算上の有効濃度に比較して、第一および第二の試験での測定上の有効濃度が低いことは、第一および第二の分散剤のこれら2つの組合せが、相乗的効果を有していることを示している。しかしながら、第一の分散剤の濃度が最低である場合、その計算上の有効濃度が測定上の有効濃度よりも低く、第一の分散剤の濃度が比較的に低いところでは、相乗的効果が観察されないこと示している。
【0194】
【表6】
【0195】
本開示のその他の実施形態は、本明細書を考慮し、本明細書に開示された実施形態を実施することで、当業者に明らかであろう。本明細書および請求項全体で使用されている、「1つの(a)」および/または「1つの(an)」の不定冠詞は、1または1超を示していてよい。本明細書および請求項全体で使用されている、成分の量、特性、たとえば、分子量、パーセント、比率、反応条件などを表す数字は、特に断らない限り、すべての場合において、「約」という用語の存在の有無に関わらず、「約」という用語で修飾されていると理解されたい。したがって、そうではないと明示されない限り、本明細書および請求項で言及される数値的パラメーターは、近似値であって、本開示によって得ようとする所望の性質に合わせて、変化させてもよい。少なくともかつ特許請求の範囲への均等論の適用を限定しようとするものではないが、それぞれの数値パラメーターは、少なくとも、記載されている有効数字の数を考慮し、通常使用される丸め技法を適用して、解釈するべきである。本開示の広い範囲を規定する数値範囲およびパラメーターが近似値であるにも関わらず、具体例で言及された数値は、可能な限り正確に記載されている。しかしながら、いかなる数値にも、それらそれぞれの試験測定で見出される標準偏差から必然的に由来するある種の誤差が本来的に含まれる。意図されているのは、本明細書および実施例は、単に例示的なものであると考え、本開示の真の範囲および趣旨が以下の請求項に示されているということである。
【0196】
前述の実施形態は、実務上では、ある程度の変更が許される。したがって、それらの実施形態は、上述の特定の例示に限定されるべきものではない。むしろ、前述の実施形態は、添付されている請求項(法律問題として受容可能なその均等物を含む)の趣旨および範囲内である。
【0197】
本特許権利者らは、開示された実施形態を公共に提供する意図はなく、開示されたいかなる修正形態または変更形態も、請求項の範囲内に文言的に入らないことがあり得る程度であっても、均等論の下で本明細書の一部とみなされる。