特許第6683683号(P6683683)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6683683
(24)【登録日】2020年3月30日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】自動車用計算機
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20200413BHJP
   B62D 6/00 20060101ALI20200413BHJP
   B62D 101/00 20060101ALN20200413BHJP
   B62D 111/00 20060101ALN20200413BHJP
   B62D 113/00 20060101ALN20200413BHJP
   B62D 119/00 20060101ALN20200413BHJP
   B62D 137/00 20060101ALN20200413BHJP
【FI】
   G05B23/02 301V
   B62D6/00ZYW
   B62D101:00
   B62D111:00
   B62D113:00
   B62D119:00
   B62D137:00
【請求項の数】11
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-510362(P2017-510362)
(86)(22)【出願日】2015年8月4日
(65)【公表番号】特表2017-526075(P2017-526075A)
(43)【公表日】2017年9月7日
(86)【国際出願番号】FR2015052149
(87)【国際公開番号】WO2016027022
(87)【国際公開日】20160225
【審査請求日】2018年8月3日
(31)【優先権主張番号】14/57935
(32)【優先日】2014年8月22日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】511110625
【氏名又は名称】ジェイテクト ユーロップ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デヴィル ジャン−リュック
(72)【発明者】
【氏名】ピアジェ ピエール−ウィレム
【審査官】 稲垣 浩司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−245052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
B62D 6/00
B62D 101/00
B62D 111/00 − 113/00
B62D 119/00
B62D 137/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車(2)用計算機(1)であって、前記自動車のパワーステアリングシステムを管理することが意図されるステアリングコントロールモジュールのような、前記自動車のオンボードシステム(4)を管理することが意図される少なくとも1つのメインコントロールモジュール(3)を含み、
前記メインコントロールモジュール(3)は、前記自動車(2)の連続する動作状況及び/又は前記オンボードシステム(4)の動作を表す複数の内部変数(6)を使用し、
前記計算機(1)は、前記メインコントロールモジュール(3)に加えて、統合モニタリングモジュール(10)を有することを特徴とし、
前記統合モニタリングモジュールは、
所定のスライディング収集期間(dacquis)にわたって、時間の関数として1つ又はいくつかの内部変数(6)によって連続して取られる値を、バッファメモリ(12)に記録するように構成された収集ユニット(11)と、
一方では、前記自動車(2)又はオンボードシステム(4)の危険又は異常であると考えられる予め規定された動作状況に対応する、「アラートイベント」と呼ばれるイベントの出現を、1つ又はいくつかの内部変数(6)に関係する1つ又はいくつかの所定のトリガー条件から検出するように、他方では、前記アラートイベントが発生した、「トリガータイム」(ttrig)と呼ばれる時間を識別するように、構成されたトリガーユニット(13)と、
トリガーユニット(13)に依存して配置され、アラートイベントの場合に、1つ又はいくつかの内部変数(6)にそれぞれ対応し、『プリイベント時間』(dpre-trig)と呼ばれる所定の時間だけ前記トリガータイム(ttrig)より前の開始時間(tstart)から『ポストイベント時間』(dpost-trig)と呼ばれる所定の時間だけ前記トリガータイム(ttrig)より後の終了時間(tend)までにわたる各時間間隔(drecord)をカバーする、1つ又はいくつかの記録(17)を、バッファメモリ(12)から抽出し、前記1つ又はいくつかの記録(17)を不揮発性メモリ(18)に格納するように構成された抽出及びバックアップユニット(16)と、
を備える自動車用計算機。
【請求項2】
前記統合モニタリングモジュール(10)の、より詳しくは前記統合モニタリングモジュールの前記収集ユニット(11)及び前記トリガーユニット(13)の応答時間は、前記メインコントロールモジュール(3)において、関係する前記内部変数(6)のいずれか1つの更新時間から1ミリ秒以下である
ことを特徴とする請求項1の計算機。
【請求項3】
前記収集ユニット(11)及び前記トリガーユニット(13)における前記内部変数(6)の更新周波数及び処理周波数は、前記メインコントロールモジュール(3)における前記内部変数(6)の更新周波数と同じである
ことを特徴とする請求項1又は2の計算機。
【請求項4】
前記統合モニタリングモジュール(10)の帯域幅は、前記内部変数(6)を記録及び格納するための有効データとして、1Mbit/s、1.5Mbit/s、又は2Mbit/s以上である
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項の計算機。
【請求項5】
前記トリガー条件は、その2進の計算結果が切り替わるときに、その2進の計算結果が、前記トリガータイム(ttrig)を示すトリガー信号(14)を生成する、1つ以上のブール式によって表現される
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項の計算機。
【請求項6】
逆ポーランド記法が、前記トリガー条件を既定する前記ブール式のシンタックスに使用される
ことを特徴とする請求項5の計算機。
【請求項7】
前記トリガー条件は、編集可能なファイル(15)に含まれる1つ又はいくつかの数式によって表現され、前記トリガーユニット(13)は、前記数式を解釈及び実行するために、前記ファイル(15)を読み取り可能なコマンドインタープリタを含む
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項の計算機。
【請求項8】
前記抽出及びバックアップユニット(16)は、暗号化鍵、書込み防止、及び/又はアクセス制限のような、前記不揮発性メモリ(18)に格納された前記記録(17)が変更又は偽造されるのを防ぐ安全装置を含む
ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項の計算機。
【請求項9】
前記統合モニタリングモジュール(10)は、前記メインコントロールモジュール(3)によって使用される前記内部変数(6)に対して、書込みアクセスではなく、読取り専用アクセスのみが可能である
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項の計算機。
【請求項10】
前記メインコントロールモジュール(3)が前記統合モニタリングモジュール(10)によって速度低下しないことを確実にするために、前記メインコントロールモジュール(3)の実行速度を制御するように構成されたチェッキングモジュールを有する
ことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項の計算機。
【請求項11】
前記メインコントロールモジュール(3)及び前記統合モニタリングモジュール(10)は、前記計算機(1)をプログラムすることによって得られる仮想モジュールである
ことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項の計算機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両、より詳しくは自動車に搭載されたシステムを管理するための電子計算機に関する。
【背景技術】
【0002】
さまざまな車載システムを管理することを目的とする1つ又はいくつかの計算機(「Electric Command Unit」に代えて「ECU」と呼ばれる)、特に、パワートレイン制御計算機、ブレーキシステム制御計算機、ステアリング制御計算機等を自動車に装備することが知られている。
【0003】
しかし、計算機の増加は、そのような計算機によって行われる機能の増加と同様に、不具合の発生を増加させる傾向にあり、それは、場合によっては、車両又はその乗員にとって危険な状況につながり得る。
【0004】
更に、インシデント又は事故の場合に、本当にそのインシデントの原因である不具合を確実に特定すること、及び、前記不具合の正確な原因を求めることはなおさら、不可能ではないにしても、一般に時間がかかり、かつ困難である。
【0005】
本発明に付与された目的は、したがって、前述の不利な点を克服すること、及び、不具合の監視及びそのような不具合の原因の診断を容易にする新しいタイプの計算機を提案することを目指す。
【発明の概要】
【0006】
本発明のものとされる目的は、自動車用の計算機によって達成され、前記自動車は、前記自動車のパワーステアリングシステムを管理することが意図されるステアリングコントロールモジュールのような、前記自動車のオンボードシステムを管理することが意図される少なくとも1つのメインコントロールモジュールを含み、
前記メインコントロールモジュールは、前記自動車の連続する動作状況及び/又は前記オンボードシステムの動作を表す複数の内部変数を使用し、
前記計算機は、前記メインコントロールモジュールに加えて、統合モニタリングモジュールを有することを特徴とし、
前記統合モニタリングモジュールは、
所定のスライディング収集期間にわたって、時間の関数として1つ又はいくつかの内部変数によって連続して取られる値を、バッファメモリに記録するように構成された収集ユニットと、
一方では、前記自動車又はオンボードシステムの危険又は異常であると考えられる予め規定された動作状況に対応する、「アラートイベント」と呼ばれるイベントの出現を、1つ又はいくつかの内部変数に関係する1つ又はいくつかの所定のトリガー条件から検出するように、他方では、前記アラートイベントが発生した、「トリガータイム」と呼ばれる時間を識別するように、構成されたトリガーユニットと、
トリガーユニットに依存して配置され、アラートイベントの場合に、1つ又はいくつかの内部変数にそれぞれ対応し、『プリイベント時間』と呼ばれる所定の時間だけ前記トリガータイムより前の開始時間から『ポストイベント時間』と呼ばれる所定の時間だけ前記トリガータイムより後の終了時間までにわたる各時間間隔をカバーする、1つ又はいくつかの記録を、バッファメモリから抽出し、前記1つ又はいくつかの記録を不揮発性メモリに格納するように構成された抽出及びバックアップユニットと、
を備える。
【0007】
有利なことに、オンボードシステムの管理(例えば、パワーステアリングシステムの管理)を保証する計算機の中心に、統合モニタリングモジュールを直接統合することにより、前記統合モニタリングモジュールがコントロールモジュールの内部の全てのデータに、すなわち、前記コントロールモジュールによって取得され、処理され、又は生成されるような、選択された内部変数の全体に、リアルタイムで直接(ソースにおいて)アクセスすることが可能になる。これは特に、これらのデータをフィルタリング及び/又は計算機の外に転送することによって引き起こされる情報の遅延又は喪失を被ることがない。
【0008】
内部変数の統合モニタリングモジュールによる処理、より詳しくはアラートイベントの検出は、よって特に速く信頼性があり、これは前記統合モニタリングモジュールの性能及び反応性を最も効果的にする。
【0009】
更に、不具合(アラートイベント)を直ちに認識することによって、及び、前記不具合の出現(又は少なくとも明らかにすること)を特徴付ける、トリガータイムに関して過去に戻る(プリイベント時間にわたって)記録のバックアップを直ちに引き起こすことによって、統合モニタリングモジュールは、不具合の原因を特定し、より詳しくは前記不具合に先行し前記不具合につながるイベントの連続及び連鎖を確かめるために、重要なヒストリ情報を提供かつ保存する。
【0010】
本発明のおかげで、不具合の原因の正確かつ信頼できる診断を、容易に帰納的に実行することが、よって可能となる。
【0011】
特に、関係のある内部変数の選択されたものの記録から、どのオンボードシステム、又はどの運転者若しくは車両の挙動が失敗であるのかを確かめること、従って、適切な場合には、将来において、そのような不具合の発生を防ぎ、又はそれから生じる結果を限定するために、必要な方策をとることが、よって可能である。
【0012】
同様に、ポストイベント時間にわたる、不具合の出現後の、関係すると考えられる、これらの同じ内部変数の変遷の記録された形跡を保持することによって、不具合の出現に連続する、オンボードシステム、車両及び/又は運転者の挙動及び反応が、帰納的(事後的)に行われる分析によって正確に知られる。よって、車両及びその乗員の安全に資するべく、オンボードシステムがその仕様の要求に従って十分に応答したかどうかを、調べることができる。
【0013】
適切な場合には、このようにして、オンボードシステムの、反応の起こり得る欠如、又は不完全若しくは不適切な反応が、前記オンボードシステム又はそのコントロールモジュールの本質的な故障から来ているのかどうか、又は、他のシステムの故障、若しくは運転者の不十分な挙動に関連付けられた外部の理由から来ているのかどうか、を解明することが特に可能である。
【0014】
例として、ステアリングのステアリング角を自動的に修正する機能が提供されたパワーステアリング管理システムは、もしステアリングアシストモータに電源を供給することになっているバッテリ(外部システム)の電圧が考慮される時点で十分ではないなら、前記システムが車両の進路を緊急に修正しようとする間に動作することを防止され得るということが、理解される。
【0015】
結局、トリガー時間の両側での、バッファメモリから引き出される情報の読出し及びバックアップによって、不具合の原因及び結果の完全な見通しを事後的に再構成することが可能になる。
【0016】
有利なことに、統合モニタリングモジュールによってモニタされる内部変数の記録の不揮発性メモリ記憶装置により、第1に、バッファメモリの消去後でさえ、特に車両のイグニッションが切られた後でも、記録を頑丈に保存すること、第2に、これらの記録を計算機の外部の診断ツールに利用可能にし続けること、が可能になる。これにより前記記録がダウンロードされ及び分析されることが可能である。
【0017】
統合モニタリングモジュールによって収集されたデータの活用が、よって、非常に便利に、完全に安全に、適切であると考えられるいかなる時においても、達成され得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明の他の目的、特徴、及び有利な点は、単に図示のために非制限的な目的で提供される添付の図面を使用するとともに、以下の明細書を読めばより詳細に明らかになる。
図1図1は、統合モニタリングモジュールを含む本発明による計算機の全体的な構成を模式的に示す。
図2図2は、図式に従って、バッファメモリに含まれる記録の全体から、内部変数の時間的な変遷を表す信号の記録を抽出する原理を示す。
図3図3は、図に従って、外部ユーザーと本発明による統合モニタリングモジュールが装備された計算機との間のあり得る対話を示し、前記統合モニタリングモジュールの設定動作及び前記統合モニタリングモジュールの遠隔取り調べ動作を含む。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、図1に図式化されているように、車両(例えば自動車2の(オンボード)計算機1に関し、前記計算機1は、前記車両2のオンボードシステム4を管理することが意図される少なくとも1つのメインコントロールモジュール3を備える。
【0020】
オンボードシステム4は、どのような種類のものであってもよく、例えば、パワートレインを管理する(及び、特に燃料の燃焼を管理する)システム、ブレーキを管理するシステム(特にABSシステム)、サスペンションを管理するシステム等に対応し得る。したがって、計算機1は、パワートレイン管理計算機、ブレーキ管理計算機、サスペンション管理計算機等のそれぞれであり得る。
【0021】
特に好ましい変形例によると、図1に図示された変形例に対応して、計算機は、車両2のパワーステアリングシステム4を管理することが意図されるステアリングコントロールモジュール3を有し、パワーステアリング計算機を構成する。
【0022】
それ自体知られているやり方で、そのようなパワーステアリングシステム4は、ステアリングコラムに取り付けられたステアリングホイールを含む。ステアリングハウジングにスライド可能に取り付けられ、前記ステアードホイールを支えるスタブアクスルにリンクするステアリングタイロッドを駆動する、ステアリングラックを例えば含むステアリング機構によって、ステアリングホイールは、運転者がステアードホイール(好ましくは駆動輪)のステアリング角を変更することを可能にする。
【0023】
前記パワーステアリングシステム4は、適切な場合には、ウォームホイール及びウォームスクリュー減速機のような減速機、操作力、及び、より詳しくは、予め規定されたアシスト則に従ってメインコントロールモジュール3によって決められる操作トルクによって、ステアリング機構に力を与えるように構成された電気アシストモータ5も、好ましくは含む。
【0024】
更に、メインコントロールモジュール3によって駆動されるオンボードシステム4が何であっても、前記メインコントロールモジュール3は、車両2の、及び/又は前記オンボードシステム4の動作の、連続する実際の状況を表す複数の内部変数6を使用する。
【0025】
前記内部変数6は、計算機1によって内部で処理されるいかなるデータも、より詳しくはメインコントロールモジュール3がアクセス可能ないかなるデータも、前記メインコントロールモジュール3によって収集されるいかなるデータも、その動作中に前記メインコントロールモジュール3によって処理される又は前記メインコントロールモジュール3によって生成されるいかなるデータも、有し得る。前記データは、考慮される時点において、車両の状態(車両の速度、横加速度等)の、より詳しくはオンボードシステム4の状態(ステアリングホイールの位置、アシストモータによって加えられたトルク等)の、特徴を表すパラメータ、それとも車両の環境(外部の温度等)の特徴を表すパラメータを表す。
【0026】
前記内部変数6の性質及び数は、特に、コントロールモジュール3によって管理されるオンボードシステム4に応じて変化し得る。
【0027】
例として、パワーステアリングシステム4の場合、内部変数6は、特に次のものを有し得る、又は次のものから選ばれ得る。すなわち、ステアリングホイールの角位置の測定値、ステアリングホイールの回転速度、運転者によってステアリングホイールに与えられるステアリングホイールトルクの測定値、アシストモータ5によって供給されるモータトルクの測定値、前記アシストモータに適用されるトルク設定値の測定値、車両の横加速度又はヨー速度の測定値又は推定値、アシストモータに電源を供給する電池の端子において利用可能な供給電圧等である。
【0028】
前記内部変数6の全て又は一部は、オンボードシステムに属するセンサ7によって供給され得る。それは、計算機1に関連しており、前記計算機1によって管理される。
【0029】
パワーステアリングシステム4の場合、前記センサ7は、アシストモータ5のシャフトの相対角位置の測定値、及び/又はステアリングホイールとステアリングコラムとの間に挿入されたトーションバーの変形を測定する磁気ステアリングホイールトルクセンサから、ステアリングシステムの位置、より詳しくはステアリングホイールの位置を求めることを可能にする「レゾルバ」タイプのセンサを特に有し得る。
【0030】
図2に図示されているように、内部変数6は、有利なことに、電気的な、好ましくはデジタルの信号の形を取る。信号の1つ又はいくつかの特性(振幅、周波数…)は、前記内部変数のそれぞれが表すパラメータの値に応じて、時間とともに変化する。
【0031】
前記内部変数6のサンプリング周波数(更新頻度)は、ことによると調整可能であるが、計算機1によって規定される。
【0032】
参考までに、このサンプリング周波数は、図2に示されているように内部変数6のサンプリング周期(更新周期)が、1ms(1ミリ秒)に等しい又はこれより小さくなるように、好ましくは1kHz以上であるように選ばれる。
【0033】
本発明によると、そして図1に示されているように、計算機1は、メインコントロールモジュール3に加えて、統合モニタリングモジュール10を含む。
【0034】
本発明の意味において、統合モニタリングモジュール10は、計算機1の必須の部分であり、これにより、メインコントロールモジュール3に「できるだけ近い」前記統合モニタリングモジュール10の動作、特に、CAN(Controller Area Network)型の外部データ交換ネットワークを通ることなく、計算機1の内部で利用可能であり従って前記統合モニタリングモジュール10に直接アクセス可能な内部変数6の前記統合モニタリングモジュール10による収集及び特に高速な処理が可能になる。
【0035】
物理的に、メインコントロールモジュール3及び統合モニタリングモジュール10は、1つの同一の計算機1のケーシングに収容されていて、適切な場合には同一の電子カード又は同一のマイクロプロセッサにさえ収容されている。これは、これらの車両2内での実装を簡単にする。
【0036】
本発明によると、統合モニタリングモジュール10は、まず、スライディング収集期間dacquisにわたって、時間の関数として1つ又はいくつかの内部変数によって連続して取られる値を、バッファメモリ12に記録するように構成された収集ユニット11を含む。
【0037】
それによってモニタされ記録される内部変数6は、もちろん必要に応じて自由に選ばれ得る。
【0038】
内部変数6のモニタリングが行われている限り、収集ユニット11は、予め規定された好ましくは調整可能なサンプリング周波数に従って、それぞれが値が観測された時間を示すタイムスタンプ情報に関連付けられた、前記内部変数6によって取られる(全体の)瞬時値の連続を時系列で記録することにより、前記内部変数6の常時(permanente)収集を行う。
【0039】
よって、内部変数6に対応する信号のヒストリを、収集期間dacquisの全体にわたって、バッファメモリ12に一時的に格納すること、よって、この期間にわたって前記内部変数6の変遷を正確に知り、辿ることが可能である。
【0040】
バッファメモリ12がいっぱいになると、つまり、格納されたヒストリが収集期間dacquisの全体に等しい時間にわたっているときには、バッファメモリにおける新たな測定値(内部変数6の値及び関連するタイムスタンプ情報)を認めることは、「先入れ先出し」型のループ式データ記録(及び上書き)の原理に従って、最も古い測定値を消去することを伴う。
【0041】
参考までに、スライディング収集期間dacquisは、2〜3百マイクロ秒と数十秒との間に実質的に含まれ得る。
【0042】
よって、スライディング収集期間dacquisは、例えば、200μs若しくは500μs以上、又は1s、5s若しくは10s以上ですらあり得る。
【0043】
更に、スライディング収集期間dacquisは、例えば、300s、150s若しくは120s以下、又は30s若しくは20s以下ですらあり得る。
【0044】
全ての場合において、バッファメモリ12に割り当てられるメモリ空間のサイズは、それ相応に規定される。
【0045】
本発明によると、統合モニタリングモジュール10は、一方では、車両2又はオンボードシステム4の予め規定された動作状況に対応する、より詳しくは(車両2又はオンボードシステム4の)危険又は異常(典型的には前記動作状況はオンボードシステム4の誤動作又は車両の挙動の異常に対応し、それは車両の操縦不能、及び/又は前記車両の乗員又は他の道路使用者を危険にさらすこと、及び/又はことによると車両への損傷につながる、又はこれらを引き起こす恐れがあるので)であると考えられる動作状況に対応する、「アラートイベント」と呼ばれるイベントの出現を、1つ又はいくつかの内部変数6に関係する1つ又はいくつかの所定のトリガー条件から検出するように、他方では、前記アラートイベントが発生した、「トリガータイム」ttrigと呼ばれる時間を識別するように、構成されたトリガーユニット13を含む。
【0046】
有利なことに、トリガーユニット13は、計算機1内で利用可能な内部変数6から選ばれる、「検出変数」と呼ばれる1つ又はいくつかの内部変数を、前記検出変数の変遷が、この検出変数、これらの検出変数のそれぞれにトリガー条件又はいくつかの(累積的な)トリガー条件の同時組合せを満たすようにさせるときに、トリガーユニット13がアラート状態を診断し、トリガー信号14を出すように、リアルタイムでモニタする。
【0047】
トリガー条件が満たされる瞬間、すなわち実際には前記トリガー信号14の発出時間は、トリガータイムttrigを示す。
【0048】
例として、トリガー条件は、関係する内部変数6によって閾値が超えられることとして規定され得る。
【0049】
よって例えば、パワーステアリングシステム4の場合、トリガー条件は、車両のグリップの喪失を示す臨界ヨー速度閾値を超えることとして規定され得る。
【0050】
そのような閾値を超える条件の出現のモニタリングは、関係する内部変数6の瞬時値の、予め規定された閾値との単純な比較操作によって実行され得る(前記比較は、例えば、閾値が超えられているなら「真」、そうでなければ「偽」を返す)。
【0051】
もちろん、特に統計的な研究又は車両の乗員の安全の向上に関して注目されそうな、車両の寿命におけるある時点又は他の時点における、考慮される車両2又はオンボードシステム4のいかなる特定の動作状況も、適切なトリガー条件による規定の対象であり得、よってトリガーユニット13によるサーチの対象(すなわち、検出のためのモニタリングの対象)であり得る。
【0052】
もちろん、トリガー信号14を出させるアラートイベントは、それぞれが考慮される基本イベントに特有の1つ又はいくつかのトリガー条件によって規定されるいくつかの「基本」イベントの組合せに(同時発生に)、実際には対応し得る。
【0053】
例として、同時組合せに対応するであろう「供給不足に起因する、軌道を自動的に修正することが不可能なアンダーステアの車両」型の特定の異常な動作状況(アラートイベント)を規定することが可能であり得る。組合せは、一方では、車両のヨー速度及びステアリングホイールの角位置を表す内部変数6についての条件によって特徴づけられるであろう「アンダーステア状況におけるグリップの喪失」型の第1の基本的なアラートイベントの組合せ、他方では、バッテリ電圧を測定する内部変数を、所定の低い閾値より下で推移及び/又は維持させることによって特徴づけられるであろう「アシストモータの供給の喪失」の第2の基本的なアラートイベントの組合せである。
【0054】
好ましくは、トリガー条件は、図2に図示されているように、その2進の計算結果が切り替わるときに、その2進の計算結果が、前記トリガータイムttrigを示すトリガー信号14を生成する、1つ又はより多くの(それぞれの)ブール式(ブール表現)によって表される。
【0055】
より詳しくは、トリガー信号14の値は、好ましくは、トリガー条件が満たされるなら1に等しく、そうでなければ0に等しい。
【0056】
比較的直感的なブール記法の使用により、厳密かつ実装が比較的簡単なシンタックスに従って、トリガー条件を論理的な命令の形にすることが可能になる。
【0057】
好ましくは、トリガー条件を規定するブール式のシンタックスには、処理及び前記式の解釈の速さを得るために、逆ポーランド記法(これによると演算子がオペランドの後に与えられる)が更に使用される。
【0058】
有利なことに、ブール式の更新、したがってその結果の更新は、前記式において考慮される内部変数6のうちの1つ又は残りの各更新時に自動的に行われる。
【0059】
したがって、トリガーユニット13は特に受動的である。
【0060】
好ましくは、トリガー条件は編集可能なファイル15に含まれる1つ以上の数式(ブール式)によって表現される。
【0061】
したがって、前記編集可能なファイル15の内容に単に介入することによって、すなわち、必要に応じて、前記ファイル15に含まれる1つ又はいくつかの式を、編集、追加、削除することによって、又は選択的にアクティブ/非アクティブにすることによって、トリガーユニット13の一般的な動作(ハードウェア及び/又はソフトウェア)アーキテクチャを、より広くは統合モニタリングモジュール10及び計算機1のオペレーティングアーキテクチャを本質的に修正する必要なしに、特に計算機1を本質的に再プログラムする必要なしに、トリガーユニット13を非常に自由に構成することが可能である。
【0062】
よって、トリガーユニット13は、前記ファイル15に含まれる式を解釈及び実行するために、編集可能なファイル15を読み取ることができるコマンドインタープリタを好ましくは含む(非常に多くのコマンドラインが前記インタープリタによって直接的に理解可能であるので)。
【0063】
前記コマンドインタープリタは、ブール記法の、特にAND、OR、NOT、XOR、NOR、NAND、IF...THENのようなブール演算子の知識、括弧演算子の知識、また、より大きい、より小さい、加算、減算、乗算、除算、累乗、べき、根、絶対値等のような一般の数学演算子の知識をも有していることによって、より詳しくは、ブール式のシンタックスを解釈可能である。
【0064】
トリガー条件の規定、及びより広くはトリガーユニット13の動作の様式の規定は、よって、非常に直感的な記法によって、コンパイルを必要とすることなく、実行され得、
編集可能なファイル15に含まれる式への単なる介入によって必要な頻度で修正され得る。よって、統合モニタリングモジュール10に大きな柔軟性が与えられる。
【0065】
編集可能なファイル15への介入は、例えば、車両の診断ソケットを通して作業場で実行され得る。
【0066】
本発明のあり得る実装によると、ファイル15にデフォールトで工場において(いくつかのトリガー条件の)いくつかの式のセット(予備)を提供することが、好ましくは可能である。前記式の少なくともいくつかは、デフォールトで非アクティブのままであり、特定の状況において、必要な場合にのみ、車両の流通に続いてアクティブになる。
【0067】
例えば、警戒を高めていくつかの車両の挙動をモニタすることにつながる車両の安全リコールに続いて、いくつかの式のアクティベーションが、そうでなければ、車両の老朽化、異常、又は特定のモニタリング手段を装着する(例えば、車両の次の整備の間に整備士の情報を完全なものにするために)ことが正当化される前記車両の危険な挙動がある程度を越えたことを自動的に検出する、車両2に搭載された他の計算機が主導して、いくつかの式のアクティベーションが、作業場において考慮され得る。
【0068】
反対に、統合モニタリングモジュール10の負荷を軽くするために、1つ又はいくつかの式が、もはや役に立たないときには、スタンバイ状態に(すなわち、非アクティブに)(再び)され得る。
【0069】
本発明によると、統合モニタリングモジュール10は、トリガーユニット13に依存して配置され、アラートイベントの場合に(より詳しくはトリガー信号14を認識した場合に)、1つ又はいくつかの内部変数にそれぞれ対応し、「プリイベント時間」dpre-trigと呼ばれる所定の時間だけ前記トリガータイムttrigより前の開始時間tstartから(それゆえtstart=ttrig−dpre-trig)「ポストイベント時間」dpost-trigと呼ばれる所定の時間だけ前記トリガータイムttrigより後の終了時間tendまで(それゆえtend=ttrig+dpost-trig)にわたる各時間間隔drecordをカバーする、1つ又はいくつかの記録17を、バッファメモリ12から抽出し、図2に示されているように、前記1つ又はいくつかの記録17を不揮発性メモリ18に格納するように構成された抽出及びバックアップユニット16を、最終的には含む。
【0070】
有利なことに、「摂動記録装置(perturbographe)」(「乱れグラフ」)と呼ばれる、本発明による統合モニタリングモジュール10は、よって、アラートイベントの場合に、アラートイベントの原因(トリガータイムttrigに関してプリイベント時間dpre-trig過去に遡ることによって)、及び前記アラートイベントのあり得る帰結(ポストイベント時間dpost-trigを記録に含めることによって)を理解するのに必要かつ十分なだけの時間間隔(時間範囲recordに限って、モニタされる内部変数6に関係するデータを部分的に保持するために、スライディング収集期間dacquis時間間隔(時間的なサブインターバル(ウィンドウ)recordをカバーする記録17を、バッファメモリ12が消去される前に、バッファメモリ12から抽出して不揮発性メモリ18に転送することを可能にする。
【0071】
有利なことに、統合モニタリングモジュール10は、よって、選択的な「ブラックボックス」としてふるまい得る。これは、不具合の理解に役に立つ期間のみに対応する、限られたサイズのデータサンプル(記録17)を収集及び保持する。各バックアップ記録17は、トリガータイムttrigの(わずかに)前に、すなわち、(アラートイベントの検出の)式が真という値を返す前に、始まり、トリガータイムttrigの(わずかに)後に、すなわち、式が真という値を返した(すなわち、1に等しいトリガー信号14を返した)後に、終了する。
【0072】
よって、統合モニタリングモジュール10は、行われるのがアラートイベントに対して遅すぎる(かつ前記イベントの原因を理解することができるようにしない)記録によって引き起こされるであろう情報のいかなる喪失をも、そうでなければ、縮小サイズの格納空間を使用する(バッファメモリ12及び不揮発性メモリ18の両方)バッファメモリ12の(ループ)スライディング消去のために生じるであろう情報の不可逆の喪失を、避けることを可能にする。内部変数6の変遷に関係する全てのデータの完全な網羅的な記憶装置に移行する必要はなく、関係のあるサンプル(記録17)のみの部分的な選択的バックアップのみが必要であるからである。
【0073】
よって、記録17の抽出及びバックアップを、選択的従って間欠的に、すなわち、常時ではなく、アラートイベントが起きるときには必ず、しかしアラートイベントが起きるときにのみ(ところが反対に、収集ユニット11による内部変数6の「全体の」スライディング収集、よってバッファメモリ12における前記変数の一時的な格納は、後に潜在的に役に立ち得る情報を喪失する危険を冒さないように、常時行われる)、行うことによって、最終的に、情報(ここでは内部変数6の記録17)が、前記情報とアラートイベントとの間にリンクが存在するので前記情報が関係のあるものである場合にのみ、持続可能なやり方で不揮発性メモリ18に保持される。
【0074】
時間間隔(記録時間recordのそれぞれ、より詳しくはポストイベント時間dpost-trigだけではなくプリイベント時間dpre-trigも、適切な場合には、例えば、モニタされ記録17のバックアップためのトリガーとして働くアラートイベントの性質に従って、ケースバイケースで求められ、調整される。
【0075】
参考までに、プリイベント時間dpre-trigは、所望の時間間隔(記録時間recordの5%から95%に含まれる値、好ましくは調整可能な値に、設定され得る。
【0076】
もちろん、プリイベント時間dpre-trigは、内部変数6のサンプリング周期Tsampより大きく、例えば前記サンプリング周期Tsampの3倍、5倍、又は10倍以上(又はそれ以上)であり、その結果、関係する内部変数の十分な一連の測定値を含む代表的なサンプルによって、記録17は、かなりの量のヒストリを辿ることができる。
【0077】
参考までに、前記プリイベント時間dpre-trigは、5ms、10ms、50ms、100ms以上であり得、1s、5s、10s又は30sより大きくさえあり得る。
【0078】
類似したやり方で、好ましくは調整可能なポストイベント時間dpost-trigは、所望の時間間隔(総記録時間recordに達するようにするために、プリイベント時間dpre-trigと相補的な値に設定される。
【0079】
ここで再び、ポストイベント時間dpost-trigは、内部変数6のサンプリング周期Tsampの3倍、5倍、又は10倍以上(又はそれ以上)である。
【0080】
参考までに、ポストイベント時間dpost-trigは、5ms、10ms、50ms、100ms以上であり得、1s、5s、10s又は30sより大きくさえあり得る。
【0081】
不揮発性メモリ18は、例えばフラッシュメモリ又はEEPROMメモリであり得る。これは、計算機1がオフになった後に読み出され得るように、記録17のデータを保持する。
【0082】
この不揮発性メモリ18内で、記録17は、データベース型の構造でアーカイブに格納され、インデックス付けされ得る。
【0083】
もちろん、不揮発性メモリ18は、複数の記録17を含むことができるような大きさを有し得る。
【0084】
複数の記録17を格納するこの能力により、同じ性質のいくつかの繰り返された記録、すなわち、全てが同一の内部変数又は内部変数の同一のグループに関係し、異なる時間において連続して実行される記録、及び/又は、異なる性質のいくつかの記録、すなわち、互いに異なり、更に同時に又は異なる時に実行された内部変数(又は内部変数のグループ)に関係する記録を格納することが、特に可能になり得る。
【0085】
特に、本発明により、同じ性質のアラートイベントのいくつかの発生に対応する(同じ内部変数の)いくつかの連続する記録17、すなわち、同じトリガー条件を繰り返し検出したことに基づいていて(すなわち、同じ式が繰り返し値「真」に切り替わって、値「真」を出力するときに)、抽出及びバックアップユニット16のいくつかの連続する異なるトリガリングに対応する記録を行うことが、特に可能になり得る。
【0086】
適切な場合には、特定のアラートイベントタイプの出現頻度(繰り返し周波数)を帰納的に測定し、例えば統計的な目的でさまざまな場合においてこのタイプのイベントの原因を、このタイプのイベントへのオンボードシステム4の反応とともに、研究することが可能である。
【0087】
それらの性質及び量がどのようなものであっても、不揮発性メモリ18に格納される記録データは、計算機1の外部の分析装置によって有利なことに検索可能である。分析装置は、例えば車両2の診断ソケットに接続され得、又はリモート送信によって統合モニタリングモジュール10から情報を得ることすら可能である。
【0088】
これらのデータは、また、適切な場合には、計算機1の内部の不揮発性メモリ18から、例えばオンボードネットワークCANを経由して、前記計算機1に一時的に又は明確に接続される、フラッシュメモリ又はハードディスクのタイプの外部の(離れた)記憶媒体に、エクスポートされ得る。
【0089】
もちろん、アラートイベントの発生の自動的な絶え間のないモニタリングが意図される式に加えて、例えば車両2に搭載された他の離れたところにある計算機から、又は計算機1の外部にある他のいかなる装置からも入力される外部トリガー信号14によって、抽出及びバックアップユニット16の起こり得るトリガリングを提供することが、完全に考慮され得る。
【0090】
外部起源のトリガー信号は、例えば計算機1に、より詳しくは統合モニタリングモジュール10に、オンボードネットワークCANによって、又は無線周波数によって、伝送され得る。
【0091】
特に好ましくあり得る実装によると、メインコントロールモジュール3及び統合モニタリングモジュール10(より詳しくは、収集ユニット11、バッファメモリ12、トリガーユニット13、抽出及びバックアップユニット16、及び/又は不揮発性メモリ18によって構成される前記統合モニタリングモジュール10の下部構造)は、仮想モジュールであり、計算機1をプログラムすることによって得られる。
【0092】
実際には、各モジュール3,10、各ユニット11,13,16はそれぞれ、割り当てられた特定のタスクを実行するために、これらのタスクが上述されているように、計算機1の電子回路に存在する命令のセットの形で、好ましくはプログラムされる、
有利なことに、そのような仮想構造は、特に追加のコスト又は制約なしに、現存するいかなる計算機1にも、統合モニタリングモジュール10を移植し、ことによると改造するのを特に簡単にする。
【0093】
更に、統合モニタリングモジュール10に特有のタスクを実行するため、及び内部変数6のモニタリングにリンクしたデータを記録するために、現存する計算機1にメモリ空間を割り当てることで十分であるので、そのような仮想構造は、リソースをほとんど必要としない。
【0094】
有利なことに、メインコントロールモジュール3、及び本発明に従ってこれにつながれた統合モニタリングモジュール10は、単一のハードウェア構造、特に共通のクロック及びキャッシュメモリを共有することが可能である。
【0095】
本発明による統合モニタリングモジュール10の統合は、追加の物理的な機器を必要としないが、計算機1の簡潔さ及び軽快さに、より広くはオンボードシステム4又は車両2の量及び重量に悪影響を与えない。
【0096】
好ましくは、統合モニタリングモジュール10の応答時間、より詳しくは前記統合モニタリングモジュール10の収集ユニット11及びトリガーユニット13の応答時間は、メインコントロールモジュール3における、関係する内部変数6の1つ又は残りの更新時間から、1ミリ秒(1ms)以下である。
【0097】
よって、計算機1内部において状況の変化(内部変数6の1つ又はいくつかの値の変化)が示されるとすぐに、この変化が統合モニタリングモジュール10によってほとんどリアルタイムで考慮され、処理されるので、統合モニタリングモジュール10は特に受動的である。
【0098】
比較すると、回部の統合モニタリングモジュールに到達するために、内部変数6がオンボードネットワークCANを通らなければならないのであれば、前記内部変数の転送だけのために10msから100msの遅延が直ちに観測されるであろう。
【0099】
例えば、1ミリ秒より小さい、非常に短い応答時間(サイクルタイム)が、統合モニタリングモジュール10を内部で統合することによって有利なことに可能になり、遅延なしに、よって役立つ情報を喪失する危険なしに、アラートイベントが発生すると直ちに記録17のバックアップをトリガーすることを可能にし、よって、完全で詳細なヒストリを有すること、並びにアラートイベントの起源及び結果を正確に診断することが可能になる。
【0100】
統合モニタリングモジュール10の非常に短い応答時間のおかげで、統合モニタリングモジュール10によって更新され処理され、内部変数6の読み取りが行われるサンプリング周波数1/Tsamp_10は、特に高く、好ましくは数百Hz以上、又は1kHz以上であり得、
例えば100Hzと20kHzとの間に含まれ得る。これは、各イベント毎に、前記イベントがいかに短くても、モニタされる内部変数6毎に、より多くの数のデータを含む記録17を収集することを可能にする。
【0101】
アラートイベントが何であっても、特にイベントが短くかつ重大である場合(例えば高速での車両の制御の喪失に対応し、前記車両を道路から逸脱させる原因となる)、本発明は、前記イベントを完全かつ正確なやり方で帰納的に表現することを可能にする。
【0102】
統合モニタリングモジュール10のサンプリング周期Tsamp_10(よってサンプリング周波数1/Tsamp_10)は、前記統合モニタリングモジュール10の状況、特に検索されモニタされたアラートイベントのタイプに対する反応性に適合させるために、有利なことにプログラマブルである。
【0103】
実装の選択的な可能性によると、収集ユニット11及びトリガーユニット13における内部変数6の更新及び処理周波数(サンプリング周波数1/Tsamp_10)は、メインコントロールモジュール3における前記内部変数6の更新周波数(1/Tsamp_10)と同じである。
【0104】
言い換えると、前記モジュールがメインコントロールモジュール3と同じクロック周波数、すなわち、計算機1に特有の内部クロック周波数でクロック制御されるという事実のため、前記統合モニタリングモジュール10に非常に高い反応性及び高い精度を与え、統合モニタリングモジュール10は、特に細かい素晴らしい時間分解能の利益を得ることができる。
【0105】
統合モニタリングモジュール10の計算機1との統合により、前記統合モニタリングモジュール10を高速でメインコントロールモジュール3に同期させること、よって、アラートイベントの検出及び記録におけるいかなる遅延をも避けることが可能になる。
【0106】
好ましくは、統合モニタリングモジュール10の(有用)帯域幅は、内部変数6の記録及び格納用の有用なデータ(ペイロード)の1Mbit/s以上、1.5Mbit/s以上、又は2Mbit/s以上である。
【0107】
参考までに、収集ユニット11は、1ミリ秒の各更新サイクルにおいて、それぞれが2〜4バイトの50個の内部変数6を記録する能力を有し得る。抽出及びバックアップユニット16は、そこから出力及びバックアップする同じ能力を有し得る。
【0108】
有用データフローレート(又は「有用帯域幅」「ペイロード帯域幅」)、すなわち、内部変数6(前記内部変数の測定値及び測定時間)についての有効な情報を含むデータフローレートは、よって実際には、統合モニタリングモジュール10において車両のオンボードネットワークCAN(約500kbps〜1Mbps、又は実際には約100kbps〜200kbpsの絶対帯域幅を有するネットワークCAN)の有用データフローレートより大きく、特に少なくともその5倍の大きさであり得る。
【0109】
これらの特に高い内部転送レートのおかげで、これは、統合モニタリングモジュール10がメインコントロールモジュール3の内部変数6に直接アクセスすることができるという事実によって特に可能になるのであるが、計算機1の外部のCANタイプのネットワークを前記内部変数が通過する必要がなく、統合モニタリングモジュール10は特に効率がよい。
【0110】
更に、抽出及びバックアップユニット16は、例えば暗号化鍵、書込み防止、及び/又はアクセス制限(例えばパスワードによる)のような安全装置を含み、不揮発性メモリ18に格納された記録17の改変及び偽造を防止する。
【0111】
よって収集された情報の信憑性が保証され、これにより、適切な場合には、記録17を引き起こしたアラートイベントの信頼できる専門技術を帰納的に実現させることが可能になる。
【0112】
更に、統合モニタリングモジュール10自身が不具合の発生源ではないことを確実にするために、より詳しくは前記統合モニタリングモジュール10の動作がメインコントロールモジュール3の通常の動作に妨害を与えないことを確実にするために、準備がなされ、よって、車両、その乗員、又は他の道路使用者の安全を脅かさない。
【0113】
この目的のために、統合モニタリングモジュール10は、メインコントロールモジュール3によって使用される内部変数6に対して、好ましくは読み取り専用のアクセス権しか有さず、書込みアクセス権は有さない。
【0114】
有利なことに、「メモリ保護ユニット」タイプのそのような保護は、統合モニタリングモジュール10がメインコントロールモジュール3を妨害しないこと、より詳しくは統合モニタリングモジュール10による内部変数6の利用及び記録が前記内部変数の信頼性を変更しないことを保証し、それに基づいて、メインコントロールモジュール3は車両2の反応を決定する。
【0115】
同様の理由により、計算機1は、メインコントロールモジュール3が統合モニタリングモジュール10によって遅くならないことを確実にするために、メインコントロールモジュール3の実行速度を制御するように構成されたチェッキングモジュール(図示せず)を含み得る。
【0116】
「プロセスフローコントロール」タイプのそのようなチェックは、予め規定されたチェックポイントによってメインコントロールモジュール3の推移のタイミングを合わせることを特に含み得る。これは、例えばデータ(内部変数6)の回復又はメインコントロールモジュール3による周期的な動作の実行にその本質があり、これは前記メインコントロールモジュール3によって実装されるアルゴリズムの実行速度において遅延又はドリフトがないことを確かめるためである。
【0117】
図3は、外部ユーザーと計算機1との間のコミュニケーション及びあり得る対話のいくつかのタイプ、より詳しくは統合モニタリングモジュール(「摂動記録装置」)10を図示する。
【0118】
第1のタイプのコミュニケーション(図3において1として参照される)は、工場又は作業場における外部装置による統合モニタリングモジュール10の構成動作に関する。
【0119】
特に、いくつかの構成パラメータが、適切な場合には、図3を参照して例えば次のようなメニューによって満たされ得る。すなわち、
項目1.1に示されているように、(収集ユニット11によって)モニタされるべき内部変数6(信号)、及び(抽出及びバックアップユニット16によって)記録されるべき内部変数6のリスト、
項目1.2に示されているように、トリガー条件、すなわち、記録を引き起こす式、適切な場合には、いくつかの連続する記録17の生成及び格納を制御することを可能にする再トリガー式、
項目1.3に示されているように、記録17の期間を、各記録17のサイズ(各データのコード化のバイトでの基本的なサイズ、及び/又は各記録に割り当てられた最大メモリ空間の全体のサイズであるかどうか)、及び/又は不揮発性メモリ18において許可された記録17の最大数とともに設定することを可能にする、プリイベント時間dpre-trig及びポストイベント時間dpost-trig
【0120】
第2のタイプのコミュニケーション(図3において2で参照される)は、摂動記録装置10によって収集された記録データの取り調べ及び分析に関する。
【0121】
よって、図3に図示されているように、記録17のデータは、
例えば、計算機1又はネットワークCANに接続された記録装置によってダウンロードされ(項目2.1)、
例えば時間グラフの形でマンマシンインタフェースに表示され(「MMI」、項目2.2)、
例えばExecel(商標)やMatLab(商標)のような、数値シミュレーション又は計算ツールにおいて使用されるように、さまざまなフォーマットでエクスポートされる(項目2.3)。
【0122】
もちろん、本発明は、1つ又はいくつかの所定のアラートイベントが生じるときに、計算機1の内部の1つ又はいくつかの変数6の変遷を、前記イベントの発生時間の前及び後(すなわち、トリガータイムttrigの前及び後)において記録(及びバックアップ)するために、例えば、オンボード計算機1内、より詳しくはパワーステアリング計算機1内での、前述の特性のいずれか1つによる統合モニタリングモジュール10の使用にも関係する。
【0123】
よって、本発明は、同一の計算機1内における、メインコントロールモジュール3のケーシング及び統合モニタリングモジュール10のケーシング(オンボードシステム4及びオンボードネットワークCANに適合する結合コネクタが提供される)の統合に関係する。これは、これらの2つのモジュールの統合運用を最適化するためである(高い、好ましくは共通のクロックで)。
【0124】
とりわけ、パワーステアリングシステム4への本発明の応用例は、アシストモータに適用されるモータトルク設定値、及び前記アシストモータに供給する利用可能なバッテリ電圧とともに、一方では、例えば線速度及びヨー速度のような、車両の動的パラメータ、
他方では、例えばステアリングホイールの角位置及び回転速度のような、パワーステアリングパラメータをモニタすることに本質がある。
【0125】
よって、ステアリングホイール角及び車両の線速度に関して、例えば低すぎるヨー速度(アンダーステア)、又は対照的に高すぎるヨー速度(オーバーステア)によって特徴付けられる、車両のグリップの喪失状態の発生を、トリガー条件として設定することが可能である。
【0126】
よって、記録17は、線速度及びヨー速度の動的パラメータ、ステアリングホイールの位置、ステアリングホイールの速度、モータトルク設定値、及びバッテリ電圧を含み得る。
【0127】
よって、もしパワーステアリングシステム4が自動的な軌道修正機能を含んでいれば、これらのパラメータの変遷に関して、前記機能が車両の機械的にあり得る修正操作を正しく実行したかどうかをチェックすることが可能である。
【0128】
故障の際には、車両の制御の喪失が、軌道修正機能の本質的な誤動作から(例えば計算誤り又はモータ設定値を適用する際の遅延から)もたらされたかどうか、又はシステム4の外部の障害、例えばアシストモータ5が設定された設定値に到達するのに十分なトルクを発生するのを妨げた、バッテリ電圧の低下から、もたらされたかどうかが、特にチェックされ得る。
【0129】
もちろん、本発明は、上述の変形例には全く限定されない。当業者は、前述の特性のうちの1つを自由に分離する又は組合せること、又はそれを均等物と置き換えることが、特に可能である。
【0130】
特に、上述したように、本発明は、いかなる車両、特に貨物及び/又は人を輸送することが意図される車両に搭載されるいかなるタイプの計算機1にも適用可能である。
【0131】
更に、よって、本発明はもちろん、車両2のモニタリング方法に関し、その特性、ステップ、及び機能が、有利なことに計算機1、モジュール3,10、及びユニット11,13,16によって実装される方法が、前記計算機1、前記モジュール3,10、及び前記ユニット11,13,16の説明から、必要な変更を加えて演繹され得る。
【0132】
特に、前記モニタリング方法は、よって、所定のスライディング収集期間dacquisにわたって、車両2のオンボードシステム4を管理することが意図されるメインコントロールモジュール3によって使用される1つ又はいくつかの内部変数6によって、時間の関数として連続して取られる値を、バッファメモリ12に記録する、収集ステップ(a)と、
前記車両2又はオンボードシステム4の危険又は異常であると考えられる予め規定された動作状況に対応する、「アラートイベント」と呼ばれるイベントの出現を検出するために、1つ又はいくつかの内部変数6に関係する1つ又はいくつかの所定のトリガー条件が分析され、アラートイベントが検出されると、前記アラートイベントが発生した、「トリガータイム」ttrigと呼ばれる時間が識別される、分析及びトリガーステップ(b)と、分析及びトリガーステップ(b)の間にアラートイベントが実際に検出される場合に(そしてそのような場合にのみ)、実行され、1つ又はいくつかの内部変数6にそれぞれ対応し、「プリイベント時間」dpre-trigと呼ばれる所定の時間だけ前記トリガータイムttrigより前の開始時間tstartから「ポストイベント時間」dpost-trigと呼ばれる所定の時間だけ前記トリガータイムttrigより後の終了時間tendまでにわたる各時間間隔drecordをカバーする、1つ又はいくつかの記録17を、バッファメモリ12から抽出し、前記記録17が不揮発性メモリ18に格納される、条件付き抽出及びバックアップステップ(c)と、を含む。
図1
図2
図3