特許第6683721号(P6683721)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6683721電気工学用絶縁システムの製造方法、それから得られる製品、およびそれらの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6683721
(24)【登録日】2020年3月30日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】電気工学用絶縁システムの製造方法、それから得られる製品、およびそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/50 20060101AFI20200413BHJP
   H01B 3/40 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
   C08G59/50
   H01B3/40 G
【請求項の数】13
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-545303(P2017-545303)
(86)(22)【出願日】2016年2月12日
(65)【公表番号】特表2018-512471(P2018-512471A)
(43)【公表日】2018年5月17日
(86)【国際出願番号】EP2016052969
(87)【国際公開番号】WO2016150614
(87)【国際公開日】20160929
【審査請求日】2018年12月3日
(31)【優先権主張番号】15161029.2
(32)【優先日】2015年3月26日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516342265
【氏名又は名称】ハンツマン・アドヴァンスト・マテリアルズ・ライセンシング・(スイッツランド)・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 充利
(72)【発明者】
【氏名】バイゼレ,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】コリアール,ソフィ
(72)【発明者】
【氏名】ショーネンベルジェ,カトリーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ウィルバース,フーベルト
【審査官】 西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−118576(JP,A)
【文献】 特開2012−052096(JP,A)
【文献】 特表2013−506030(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0217806(US,A1)
【文献】 特表2011−528743(JP,A)
【文献】 特開2013−018925(JP,A)
【文献】 特開2015−028132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00−59/72
C08L 1/00−101/14
H01B 3/18− 3/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動圧力ゲル化(APG)による電気工学用絶縁システムの製造方法であって、
多成分熱硬化性樹脂組成物を使用し、該樹脂組成物が、
(A)少なくとも1種のエポキシ樹脂;ならびに
(B)(b1)少なくとも1種の脂環式アミンおよび(b2)少なくとも1種のポリエーテルアミンを含む、少なくとも1種の硬化剤;
を含む、上記方法。
【請求項2】
前記少なくとも1種のエポキシ樹脂(A)がビスフェノールAのジグリシジルエーテルである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記少なくとも1種の硬化剤成分(b1)が、1,2-ジアミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)プロパン、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン(イソホロンジアミン)、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタンビス(メチルアミン)(ノルボルナンジアミン)、3,3,5-トリメチル-N-(プロパン-2-イル)-5-[(プロパン-2-イルアミノ)メチル]シクロヘキシルアミン、Jefflink(登録商標)JL754、またはN-アミノエチルピペラジンである、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記少なくとも1種の硬化剤成分(b1)が、1,2-ジアミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン(イソホロンジアミン)、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタンビス(メチルアミン)(ノルボルナンジアミン)、Jefflink(登録商標)JL754、またはN-アミノエチルピペラジンである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記少なくとも1種の硬化剤成分(b1)が3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン(イソホロンジアミン)である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記少なくとも1種の硬化剤成分(b2)が、式
【化1】
(式中、xは2〜8の数である)で示されるアミン末端ポリプロピレングリコール(PPG)である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記少なくとも1種の硬化剤成分(b2)が、式
【化2】
(式中、yは5〜40の数であり、x+zの和が3〜8の数である)で示される、ポリエチレングリコール(PEG)主骨格をベースとするポリエーテルジアミンである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記少なくとも1種の硬化剤成分(b2)が、式
【化3】
(式中、Rは水素、CHまたはCであり;nは0、1または2であり;x+y+zが3〜100の数である)で示されるアミン末端ポリプロピレングリコール(PPG)である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記少なくとも1種の硬化剤成分(b2)が、ブチレンオキシドキャップされたアルコールのアミノ化によって製造される、式
【化4】
の末端基を有する第一アミンであるJEFFAMINE(登録商標)XTJポリエーテルアミンである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記樹脂組成物が、
(A) ビスフェノールAのジグリシジルエーテル;ならびに
(B)(b1)3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン(イソホロンジアミン)と、(b2)JEFFAMINE(登録商標)D-230、JEFFAMINE(登録商標)D-400、JEFFAMINE(登録商標)T-403、JEFFAMINE(登録商標)XTJ-568、JEFFAMINE(登録商標)ED-600、およびJEFFAMINE(登録商標)ED-900からなる群から選ばれるポリエーテルアミンの少なくとも1種とを含む硬化剤;
を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
(A)少なくとも1種のエポキシ樹脂;ならびに
(B)(b1)少なくとも1種の脂環式アミンと、(b2)少なくとも1種のポリエーテルアミンとを含む少なくとも1種の硬化剤;
を含む多成分熱硬化性樹脂組成物の、自動圧力ゲル化(APG)によって電気工学用絶縁システムを製造するための使用。
【請求項12】
自動圧力ゲル化(APG)によって電気工学用絶縁システムを製造するための多成分熱硬化性樹脂組成物であって、
(A)少なくとも1種のエポキシ樹脂;ならびに
(B)(b1)少なくとも1種の脂環式アミンと、(b2)少なくとも1種のポリエーテルアミンとを含む少なくとも1種の硬化剤;
を含む、上記組成物。
【請求項13】
中電圧スイッチギヤ用途や高電圧スイッチギヤ用途のための、および中電圧計器用変圧器や高電圧計器用変圧器としての、請求項1〜10のいずれかに記載の方法で製造された製品の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多成分熱硬化性エポキシ樹脂組成物が使用される、電気工学用絶縁システムの製造方法に関する。本発明の製造方法によって得られるケース入り絶縁製品(insulation encased articles)は、優れた機械的特性、電気的特性、および誘電的特性を示し、例えば絶縁体、ブッシング、スイッチギヤ、および計器用変圧器として使用することができる。
【背景技術】
【0002】
電気工学用絶縁システムの製造には、一般にエポキシ樹脂組成物が使用される。しかしながら、これらエポキシ樹脂組成物のほとんどは、無水物を硬化剤として使用する。化学薬品に対する規制の枠組みが進展していることから、エポキシ樹脂中に無水物を使用することは、R42ラベル(呼吸器感作物質)のために近い将来制限されるであろうと考えられる。従ってある種の無水物は、REACH規制のSVHC候補リスト(極めて重要な物質)に既に載っている。従って数年したら、これらの物質はもはや、特別な許可がなければ使用できなくなるであろう。既知の無水物はいずれもR42ラベルされており、毒物学者によれば、まだ知られていない無水物でもR42ラベルされるであろうと考えられているため、無水物を含有しない解決策が望ましい。
【0003】
エポキシ樹脂(特に複合材料を製造するための)用の硬化剤としてはアミンがよく知られている。しかしながら、アミン硬化剤は反応性が高すぎて、電気ポッティングやカプセル封入の用途に対しては処理できないことが多い。処理しようとするエポキシ樹脂組成物の量が増すにつれて、発熱量の制御が極めて重要になる。熱硬化性樹脂の硬化による熱の放出が、その処理量のために制御できないと、熱硬化性樹脂の機械的特性の低下を、あるいは熱硬化性樹脂の熱分解さえも引き起こすことがある。さらに、熱硬化性樹脂と接触している構造部品の機械的特性の低下も起こりうる。特に自動圧力ゲル化法(APG)では、硬化プロフィール〔すなわち、モールド内のゲル化フロント(gelation front)〕を制御するために、発熱ピーク温度を低くすることが重要である。硬化剤としてアミンが使用される場合、エポキシ樹脂組成物の硬化プロフィールが不適切であり、APGに利用するには発熱量が高すぎる。
【0004】
アミン硬化剤を含有するエポキシ樹脂の硬化プロフィールが不適切であるという問題をうまく処理するために、芳香族アミンの使用が提唱された。しかしながら現在、考えられる芳香族アミンは、ポッティング用途やキャスティング用途で使用してはならない禁止物質リストに載っている。上記したように、脂肪族アミン等の他のアミンは反応性が高すぎて、低収縮で低発熱量の大形部品のキャスティングには適しているものの、APGにおいては許容しうるゲル化プロフィールをもたらさない。さらに、硬化体の幾つかの特性が、無水物硬化による熱硬化樹脂より劣る(例えば、高湿度状態調節後の長期老化、耐トラッキング性、耐アーク性、および誘電特性)。従って、スイッチギヤ、変圧器、および他の用途に適する改良された特性を有する電気絶縁システムを製造するための、ポッティング用途やカプセル封入用途において有利に使用することができる、新規の無水物非含有熱硬化性エポキシ組成物が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、無水物非含有熱硬化性エポキシ組成物を使用することができて、硬化プロフィールを所望の仕方で制御することができる、という自動圧力ゲル化(APG)による電気工学用絶縁システムの製造方法を提供することである。本発明の他の目的は、優れた機械的特性、電気的特性、および誘電的特性を示し、電気工学における例えば絶縁体、ブッシング、スイッチギヤ、および計器用変圧器として使用することができる、本発明の製造方法から得られるケース入り製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従って本発明は、自動圧力ゲル化(APG)による電気工学用絶縁システムの製造方法に関し、このとき多成分熱硬化性樹脂組成物が使用され、該樹脂組成物が、(A)少なくとも1種のエポキシ樹脂;および(B)(b1)少なくとも1種の脂環式アミンと(b2)少なくとも1種のポリエーテルアミンとを含む少なくとも1種の硬化剤;を含む。
【0007】
絶縁システムは一般に、キャスティング法、カプセル封入法、および含浸法〔例えば、重力キャスティング、真空キャスティング、自動圧力ゲル化(APG)、真空圧力ゲル化(VPG)、および注入など〕によって製造される。
【0008】
電気工学用絶縁システム(例えばキャストエポキシ樹脂絶縁体)を製造するための代表的な方法は、自動圧力ゲル化法(APG法)である。APG法は、エポキシ樹脂を硬化・成形することによって、エポキシ樹脂で造られるキャスティング物品を短時間で製造することを可能にする。APGプロセスを実施するためのAPG装置は一般に、一対のモールド(以後、単にモールドと呼ぶ)、パイプを介してモールドに連結された樹脂混合タンク、およびモールドを開いたり閉じたりするための開閉システムを含む。
【0009】
硬化性エポキシ樹脂組成物を高温のモールド中に注入する前に、エポキシ樹脂と硬化剤とを含む硬化性組成物の成分を、注入のために調製しなければならない。
プレフィルドシステム(pre-filled system:既にフィラーを含有する成分を含んでなるシステム)の場合、沈降を防止して均一な配合物を得るために、供給タンク中の成分を加熱しながら撹拌する必要がある。均一化させた後、成分を合わせて混合器中に移し、高温・減圧にて混合して、配合物を脱気する。脱気した混合物を、引き続き高温のモールド中に注入する。
【0010】
非プレフィルドシステム(non-pre-filled system)の場合、一般には、エポキシ樹脂成分と硬化剤成分を、高温・減圧にてフィラーと個別に混合して、エポキシ樹脂の予備混合物と硬化剤の予備混合物を調製する。必要に応じて、あらかじめさらなる添加剤を加えることもできる。さらなる工程にて、2つの成分を、一般には高温・減圧で混合することによって合わせて最終的な反応混合物を形成させる。引き続き、脱気した混合物をモールド中に注入する。
【0011】
典型的なAPG法では、予熱・乾燥した金属導体すなわち挿入物を、真空チャンバー中に置かれたモールド中に配置する。開閉システムによってモールドを閉じた後、樹脂混合タンクに圧力をかけることによって、エポキシ樹脂組成物を、モールドの底部に配置された入口からモールド中に注入する。注入する前に、通常は樹脂組成物を40〜60℃の適度な温度に保持して、適切なポットライフ(エポキシ樹脂の使用可能時間)が確実に得られるようにし、このとき同時に、キャスティング物品を適度に短い時間で得るために、モールドの温度を約120℃以上に保持する。エポキシ樹脂組成物を高温のモールド中に注入した後、樹脂組成物の硬化が進み、このとき同時に、樹脂混合タンク中のエポキシ樹脂に加えた圧力を約0.1〜0.5メガパスカルに保持する。
【0012】
樹脂10kg超で造られる大形のキャスティング物品を、APG法によって短時間(例えば20〜60分)で適切に製造することができる。通常は、モールドから取り出されるキャスティング物品を別個のキュア装置においてポストキュアして、エポキシ樹脂の反応を完全なものにする。
【0013】
少なくとも1種のエポキシ樹脂(A)は、少なくとも1つの隣接エポキシ基、好ましくは2つ以上の隣接エポキシ基、例えば、2つ又は3つの隣接エポキシ基を含有する化合物である。エポキシ樹脂は、飽和もしくは不飽和化合物、脂肪族化合物、脂環式化合物、芳香族化合物、または複素環式化合物であってよく、置換されていてもよい。エポキシ樹脂はさらに、単量体化合物であっても高分子化合物であってもよい。本発明で使用する上で有用なエポキシ樹脂についての概説が、例えばLee, HとNevilleによる“Handbook of Epoxy Resins, McGraw-Hill Book Company, New York (1982)”に記載されている。
【0014】
本発明の成分(A)に関して本明細書に開示の実施態様において使用されるエポキシ樹脂はいろいろ変わってよく、従来のエポキシ樹脂と市販のエポキシ樹脂を含み、これらは単独でも2種以上の組み合わせでも使用することができる。本明細書に開示の組成物のためのエポキシ樹脂を選定する際には、最終製品の特性だけでなく、樹脂組成物の処理に影響を及ぼす可能性のある粘度や他の特性もよく考慮しなければならない。
【0015】
当業者に公知の特に適したエポキシ樹脂は、多官能性のアルコール、フェノール類、脂環式カルボン酸、芳香族アミン、またはアミノフェノール類とエピクロロヒドリンとの反応生成物をベースとしている。
【0016】
適切なポリグリシジルエーテルを生成させるべく、エピクロルヒドリンとの反応に対して考慮される脂肪族アルコールは、例えばエチレングリコール、ポリ(オキシエチレン)グリコール(例えば、ジエチレングリコールやトリエチレングリコール)、プロピレングリコール、ポリ(オキシプロピレン)グリコール、プロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、ペンタン-1,5-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、ヘキサン-2,4,6-トリオール、グリセロール、1,1,1-トリメチロールプロパン、およびペンタエリスリトールである。
【0017】
適切なポリグリシジルエーテルを生成させるべく、エピクロルヒドリンとの反応に対して考慮される脂環式アルコールは、例えば1,4-シクロヘキサンジオール(キニトール)、1,1-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキセ-3-エン、ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)メタン、および2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンである。
【0018】
適切なポリグリシジルエーテルを生成させるべく、エピクロルヒドリンとの反応に対して考慮される芳香核を含有するアルコールは、例えば、N,N-ビス-(2-ヒドロキシエチル)アニリンと4,4'-ビス(2-ヒドロキシエチルアミノ)ジフェニルメタンである。
【0019】
ポリグリシジルエーテルは、1分子当たり2つ以上のフェノール性ヒドロキシル基を有する物質から誘導するのが好ましく、該物質としては、例えばレゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)、1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、4,4'-ジヒドロキシジフェニル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン(ビスフェノールS)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン(ビスフェノールAP)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチレン(ビスフェノールAD)、フェノール-ホルムアルデヒドノボラック樹脂、クレゾール-ホルムアルデヒドノボラック樹脂、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、および2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパンなどがある。
【0020】
他の幾つかの実施態様としては、例えば、p-アミノフェノール類のトリグリシジルエーテル(これらに限定されない)がある。2種以上のエポキシ樹脂の混合物も使用することができる。
【0021】
少なくとも1種のエポキシ樹脂成分(A)は、市販されているか、あるいはそれ自体公知の方法に従って製造することができる。市販の製品は、例えば、Dow Chemical社から市販のD.E.R.330、D.E.R.331、D.E.R.332、D.E.R.334、D.E.R.354、D.E.R.580、D.E.N.431、D.E.N.438、D.E.R.736、またはD.E.R.732、あるいはHuntsman社から市販のARALDITE(登録商標)MY740またはARALDITE(登録商標)CY228である。
【0022】
最終組成物中のエポキシ樹脂(A)の量は、組成物中の成分(A)と(B)の総重量を基準として例えば30重量%〜92重量%である。一実施態様では、エポキシ樹脂(A)の量は、成分(A)と(B)の総重量を基準として例えば45重量%〜87重量%である。他の実施態様では、エポキシ樹脂(A)の量は、成分(A)と(B)の総重量を基準として例えば50重量%〜82重量%である。
【0023】
本発明の好ましい実施態様では、少なくとも1種のエポキシ樹脂(A)はビスフェノールAのジグリシジルエーテルである。
少なくとも1種の硬化剤成分(b1)は脂環式アミンである。脂環式アミンという用語は、脂環式アミン類および脂環式-芳香族混合アミン誘導体(例えばメチレン架橋アミノベンジル-シクロヘキシルアミン)を表わす。シクロヘキシルアミンの例としては、1,2-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3,5-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,4-ビス(4-アミノシクロヘキシルメチル)シクロヘキシルアミン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、4,4'-ビス(4-シクロヘキシルメチル)ジシクロヘキシルアミン、2,2-ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)プロパン、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン(イソホロンジアミン)、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタンビス(メチルアミン)(ノルボルナンジアミン)、3,3,5-トリメチル-N-(プロパン-2-イル)-5-[(プロパン-2-イルアミノ)メチル]シクロヘキシルアミン、Huntsman社から市販のJefflink JL754、4-アミノシクロヘキシル-4-ヒドロキシシクロヘキシルメタン、およびN-アミノエチルピペラジンなどが挙げられる。脂環式-芳香族混合アミンの例としては、4-(4'-アミノベンジル)シクロヘキシルアミン、2,4-ビス(4-アミノシクロヘキシルメチル)アニリン、部分水素化トリメチレンテトラアニリンとその類縁体、および水素化ビスアニリンAと水素化ビスアニリンPなどが挙げられる。
【0024】
最終組成物中の硬化剤成分(b1)の量は、組成物中の成分(A)と(B)の総重量を基準として例えば30重量%〜92重量%である。一実施態様では、エポキシ樹脂(A)の量は、成分(A)と(B)の総重量を基準として例えば1重量%〜30重量%である。一実施態様では、硬化剤成分(b1)の量は、成分(A)と(B)の総重量を基準として例えば2重量%〜20重量%である。他の実施態様では、硬化剤成分(b1)の量は、成分(A)と(B)の総重量を基準として例えば3重量%〜15重量%である。
【0025】
好ましい脂環式アミンとしては、1,2-ジアミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン(イソホロンジアミン)、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタンビス(メチルアミン)(ノルボルナンジアミン)、Jefflink JL754、およびN-アミノエチルピペラジンなどがある。
【0026】
本発明の特に好ましい実施態様では、少なくとも1種の硬化剤成分(b1)は3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン〔イソホロンジアミン(IPDと表示される)〕である。
【0027】
脂環式アミンは単独でも使用できるし、あるいはこれとは別に、少なくとも2種(例えば2種、3種または4種)の脂環式アミンの混合物も使用することができる。
少なくも1種の硬化剤成分(b2)はポリエーテルアミンである。ポリエーテルアミンは、例えば、ポリエーテルジアミンやポリエーテルトリアミン等のポリエーテルポリアミンである。
【0028】
有用なポリエーテルジアミンとしては、末端が共にアミン基によって終結されたポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシドコポリマー等のポリオキシアルキレンジアミンがある。このようなポリエーテルジアミンは、式HN(PO)(EO)(PO)NH(式中、xは0〜10の数であり、yは0〜40の数であり、zは0〜10の数であり、EOはエチレンオキシドであり、POはプロピレンオキシドである)を有してよい。ポリエーテルポリアミンはさらに、末端が共にアミン基によって終結された他のポリエチレンオキシドポリマーもしくはポリプロピレンオキシドポリマーであってもよい。エチレンオキシド(EO)とプロピレンオキシド(PO)を使用する代表的なポリエーテルジアミンとしては、下式で示されるポリエーテルジアミンがある。
【0029】
【化1】
【0030】
他のタイプのポリエーテルポリアミンやエーテルオリゴマーも使用することができる。ポリテトラヒドロフランのジアミンも、単独にて、あるいは他のアルキレンオキシドもしくはオレフィン系モノマーと共重合させて形で使用することができる。幾らかのエーテル酸素原子を含んだ炭化水素鎖を有する任意の第一ポリアミンも使用することができる。酸素原子は、ある一定の間隔で配置してもよいし(従ってポリエーテルポリアミンは、単一の反復モノマー単位を有する)、あるいは酸素原子は、異なる間隔で配置してもよい(ランダムであっても、ある反復パターンに従って分散させてもよい)。従ってポリエーテルポリアミンは、エーテルコポリマー(ランダム、ブロック、反復、または交互であってよい)のジアミンであっても、あるいは3種以上の異なるエーテルモノマー単位を有するエーテルマルチポリマーのジアミンであってもよい。ポリエーテルポリアミンは、第一アミンを有していても、あるいは第二アミンを有していてもよい。
【0031】
ポリエーテルポリアミンのポリエーテル成分の酸素原子は、全て又は一部を他の電気陰性化学種(例えばイオウ)で置き換えることができる。従って、ポリチオエーテルポリアミンを使用することができる。
【0032】
このようなポリエーテルポリアミンの市販品の例としては、Huntsman社から市販のJEFFAMINE(登録商標)ポリエーテルアミンがある。これらアミンのエーテル単位は、エチレンオキシド単位、プロピレンオキシド単位、またはこれらの組み合わせである。JEFFAMINE(登録商標)ポリエーテルアミンは一般に、オキシプロピレン単位、またはオキシエチレン単位とオキシプロピレン単位の組み合わせを有する。硬化剤成分(b2)として好ましいJEFFAMINE(登録商標)ポリエーテルアミンは、JEFFAMINE(登録商標)Dシリーズ、JEFFAMINE(登録商標)EDシリーズ、JEFFAMINE(登録商標)Tシリーズ、およびJEFFAMINE(登録商標)XTJシリーズのポリエーテルアミンである。
【0033】
JEFFAMINE(登録商標)Dシリーズのポリエーテルアミンは、一般式:
【0034】
【化2】
【0035】
で示されるアミン末端ポリプロピレングリコール(PPG)であり、ここで、xは2〜8の数である(特にJEFFAMINE(登録商標)D-230の場合、xは約2.5であり;JEFFAMINE(登録商標)D-400の場合、xは約6.1である)。
【0036】
JEFFAMINE(登録商標)EDシリーズのポリエーテルアミンは、一般式:
【0037】
【化3】
【0038】
で示される、主としてポリエチレングリコール(PEG)骨格をベースとするポリエーテルジアミンであり、ここで、yは5〜40の数であり、x+zの和は3〜8の数である(特にJEFFAMINE(登録商標)ED-600の場合、yは約9.0であって、x+zは約3.6であり;特にJEFFAMINE(登録商標)ED-900の場合、yは約12.5であって、x+zは約6.0である〕。
【0039】
JEFFAMINE(登録商標)Tシリーズのポリエーテルアミンは、一般式:
【0040】
【化4】
【0041】
で示されるアミン末端ポリプロピレングリコール(PEG)であり、ここで、Rは水素、CHまたはCであり;nは0、1または2であり;x+y+zは3〜100の数である(特にJEFFAMINE(登録商標)T-403の場合、RはCであり、nが1であり、x+y+zが5〜6の数である)。
【0042】
JEFFAMINE(登録商標)XTJシリーズのポリエーテルアミンは、JEFFAMINE(登録商標)D-230の低級アミン類縁体〔JEFFAMINE(登録商標)XTJ-568として市販〕、およびJEFFAMINE(登録商標)T-403の低級アミン類縁体〔JEFFAMINE(登録商標)XTJ-566として市販〕である。好ましいのはJEFFAMINE(登録商標)XTJ-568である。JEFFAMINE(登録商標)XTJポリエーテルアミンは、ブチレンオキシドキャップされたアルコールのアミノ化によって造られる第一アミンである。反応の結果、下式で示される末端基を有する第一アミンが得られる。
【0043】
【化5】
【0044】
ポリエーテルポリアミンは、単独でも、あるいは少なくとも2種(例えば2種、3種、または4種)の異なるポリエーテルポリアミンの混合物でも使用することができる。
最終組成物中の硬化剤成分(b2)の量は、組成物中の成分(A)と(B)の総重量を基準として例えば2重量%〜40重量%である。一実施態様では、硬化剤成分(b2)の量は、成分(A)と(B)の総重量を基準として例えば5重量%〜30重量%である。他の実施態様では、硬化剤成分(b2)の量は、成分(A)と(B)の総重量を基準として例えば5重量%〜20重量%である。
【0045】
本発明の方法に従って硬化剤成分(b2)として使用することができる特定のJEFFAMINE(登録商標)ポリエーテルアミンとしては、JEFFAMINE(登録商標)D-230、JEFFAMINE(登録商標)D-400、JEFFAMINE(登録商標)T-403、JEFFAMINE(登録商標)XTJ-568、JEFFAMINE(登録商標)ED-600、およびJEFFAMINE(登録商標)ED-900などがあり、特に好ましいのはJEFFAMINE(登録商標)D-230、JEFFAMINE(登録商標)D-400、JEFFAMINE(登録商標)T-403、およびJEFFAMINE(登録商標)XTJ-568である。
【0046】
本発明に従った方法は、前記樹脂組成物が、以下の(A)と(B)を含む場合が好ましい:
(A) ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、
(B) (b1)および(b2)を含む硬化剤:
(b1)3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン(イソホロンジアミン);および
(b2)JEFFAMINE(登録商標)D-230、JEFFAMINE(登録商標)D-400、JEFFAMINE(登録商標)T-403、JEFFAMINE(登録商標)XTJ-568、JEFFAMINE(登録商標)ED-600、およびJEFFAMINE(登録商標)ED-900の群〔好ましいのはJEFFAMINE(登録商標)D-230、JEFFAMINE(登録商標)D-400、JEFFAMINE(登録商標)T-403、JEFFAMINE(登録商標)XTJ-568〕から選ばれるポリエーテルアミンの少なくとも1種。
【0047】
本発明の方法に従った多成分熱硬化性樹脂組成物は、電気絶縁において一般的に使用されるフィラー(金属粉末、木粉、ガラス粉末、ガラスビーズ、半金属酸化物、金属酸化物、金属水酸化物、半金属窒化物、金属窒化物、半金属炭化物、金属炭化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、天然鉱物、および合成鉱物からなる群から選ばれる)の1種以上を含有してよい。
【0048】
好ましいフィラーは、ケイ砂、シラン処理石英粉末、シリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、Mg(OH)2、Al(OH)、ドロマイト、[CaMg(CO2]、シラン処理Al(OH)、AlO(OH)、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、炭化ホウ素、ドロマイト、白亜、CaCO、バライト、石膏、ハイドロマグネサイト、ゼオライト、滑石、雲母、カオリン、および珪灰石からなる群から選択される。特に好ましいのは、シリカ、珪灰石、または炭酸カルシウムである。
【0049】
フィラー材料は、例えば、フィラー材料の被覆に対して公知のシランまたはシロキサン(例えば、架橋していてもよいジメチルシロキサン)あるいは他の公知の被覆材料で、必要に応じて被覆することもできる。
【0050】
最終組成物中のフィラーの量は、例えば、熱硬化性エポキシ樹脂組成物の総重量を基準として30重量%〜75重量%である。一実施態様では、フィラーの量は、熱硬化性エポキシ樹脂組成物の総重量を基準として例えば40重量%〜75重量%である。他の実施態様では、フィラーの量は、熱硬化性エポキシ樹脂組成物の総重量を基準として例えば50重量%〜70重量%である。さらに他の実施態様では、フィラーの量は、熱硬化性エポキシ樹脂組成物の総重量を基準として例えば60重量%〜70重量%である。
【0051】
混合液体樹脂のレオロジー特性を改良させるための加工助剤、シリコーンを含めた疎水性化合物、湿潤/分散剤、可塑剤、反応性もしくは非反応性希釈剤、軟化剤、促進剤、酸化防止剤、光吸収剤、顔料、難燃剤、繊維、および電気的用途に一般的に使用されている他の添加剤からさらなる添加剤を選択することができる。これらの添加剤は当業者に公知である。
【0052】
本発明はさらに、自動圧力ゲル化(APG)によって電気工学用絶縁システムを製造するために、(a)少なくとも1種のエポキシ樹脂;および(b)(b1)少なくとも1種の脂環式アミンと、(b2)少なくとも1種のポリエーテルアミンとを含む少なくとも1種の硬化剤;を含む多成分熱硬化性樹脂組成物を使用することに関する。
【0053】
電気工学用絶縁システムの製造は、自動圧力ゲル化(APG)または真空キャスティングによって行われることが多い。無水物硬化をベースとする公知のエポキシ樹脂組成物を使用する場合、このような方法は一般に、エポキシ樹脂組成物をその最終的な不溶解性三次元構造物に造形するに足る時間(通常は最大で10時間)にわたってモールド中でキュアする工程、および硬化エポキシ樹脂組成物の最終的な物理的・機械的特性を発現させるために、脱型した物品を高温でポストキュアする工程、を含む。
【0054】
このような後硬化工程は、物品の形状とサイズに応じて、最大で30時間かかることがある。
本発明のプロセスを実施するとき、硬化プロフィールと収縮を、所望の仕方で有利に制御することができる。無水物硬化をベースとする公知のエポキシ樹脂組成物と比較して、より短い硬化時間およびより低いモールド温度とキュア温度を適用することができる。さらに、ポストキュア時間をかなり短縮することができて、ポストキュア温度を下げることができ、こうしたことが処理時間とエネルキーの節約をもたらす。ポストキュア処理は省くこともできる。本発明の方法に従った熱硬化性エポキシ樹脂組成物のポットライフは、当業界に公知の一般的な応用手法を使用するのに十分である。無水物硬化をベースとする公知のエポキシ樹脂組成物と比較して、本発明の方法に従った熱硬化性エポキシ樹脂組成物は、臭気の排出がより少ないことを特徴とする。本発明の方法によれば、硬化プロフィール(すなわち、モールド内のゲル化フロント)を制御するためのより低い発熱ピーク温度がもたらされ、このことは無水物硬化をベースとする公知のエポキシ樹脂組成物を使用して行われる方法と同様である。
【0055】
本発明の方法は、優れた機械的特性、電気的特性、および誘電的特性を示すケース入り製品を製造するのに有用である。
従って本発明は、本発明の方法によって得られる絶縁システム製品に関する。製品のガラス転移温度は、公知の高温硬化無水物ベース熱硬化性エポキシ樹脂組成物の場合と同じ範囲である。
【0056】
本発明に従って製造される絶縁システム製品の有望な用途は、乾式変圧器、特に、樹脂構造物中に導体を含有する乾式配電変圧器(特に真空キャスト乾式配電変圧器)用のキャストコイル;ブレーカー用途やスイッチギヤ用途等の、屋内使用や屋外使用のための中電圧絶縁体と高電圧絶縁体;中電圧ブッシングや高電圧ブッシング;ならびに、ロングロッドの複合キャップ式絶縁体として、中電圧セクター中のベース絶縁体用として、屋外電源スイッチ、測定変換器、リードスルー、および過電圧プロテクターに関連した絶縁体の製造において、電源スイッチと電気機械において、トランジスタと他の半導体素子のための及び/又は電気設備に含浸させるための被覆材料として;である。
【0057】
特に、本発明の方法に従って製造される製品は、中電圧スイッチギヤと高電圧スイッチギヤの用途および計器用変圧器(6kV〜72kV)に使用される。
以下に実施例を挙げて本発明を説明する。特に明記しない限り、温度は摂氏温度で、部は重量部で表示し、パーセント値は重量%に関する。重量部は、キログラム対リットルの比における容量部に関連している。
【実施例】
【0058】
実施例1
100部のARALDITE(登録商標)MY740をエポキシ樹脂成分(A)として、および成分(b1)としての8部のイソホロンジアミンと、成分(b2)としての20部のJEFFAMINE(登録商標)XTJ-568とを含有する28部の混合物を硬化剤成分(B)として使用することによって熱硬化性樹脂組成物を調製した。総計192部のSilica W12(Quarzwerk社から市販)をフィラーとして使用した(熱硬化性エポキシ樹脂組成物の総重量を基準として60重量%)。成分(A)と(B)を適切な量のフィラーと個別に予備混合した。フィラー入りの成分(A)と(B)の予備混合物を、40℃の温度でバッチミキサー中に供給し、110〜120℃に予熱したモールド中に注入し、モールドの温度を、この温度で(最高でも120℃)2時間保持した。Mettler SC 822eにより示差走査熱量測定法で測定した発熱量は126J/gであった。
【0059】
実施例2
実施例1の手順を繰り返した。しかしながら、192部の代わりに総計238部のSilica W12をフィラーとして使用した。成分(A)と(B)を適切な量のフィラーと個別に予備混合し、実施例1に記載のように処理した。
【0060】
比較例
比較のため、Huntsman社から市販のARALDITE(登録商標)キャスティング樹脂システムを使用した。ARALDITE(登録商標)キャスティング樹脂は、100部のARALDITE(登録商標)CY228(ビスフェノールAのジグリシジルエーテル)、85部のHardener HY918(無水物硬化剤)、0.8部のAccelerator DY062(第三アミン促進剤)、および340部のSilica W12(熱硬化性エポキシ樹脂組成物の総重量を基準として65重量%)を含有する。個々の成分(樹脂と硬化剤)を、適切な量のフィラーおよび添加剤と混合した。予備混合物を、60℃の温度でバッチミキサー中に供給し、135℃に予熱したモールド中に注入し、モールドの温度を、この温度で硬化が完了するまで保持した。硬化時間は、140℃の最高温度にて10時間であった。Mettler SC 822eにより示差走査熱量測定法で測定した発熱量は120J/gであった。
【0061】
実施例1と2および比較例に従って調製した組成物について、モールドとしてシリンダーを使用することによってAPGトレイル(APG trails)を行った。離型剤(Huntsman社から市販のQZ66)を使用した。外部圧力(約3バール)下でモールド中に注入した熱硬化性キャスティング樹脂組成物の総重量は約1.1kgであった。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】
実施例1の熱硬化性エポキシ樹脂組成物のポットライフは、表1のデータから明らかなように、当業者に公知の一般的な適用方法を使用するのに十分な程度である。実施例1の組成物は、臭気の排出が少ないことを特徴とする。比較例の組成物の臭気排出は、はるかに強烈である。実施例1の組成物の場合には、表2のゲル化時間データから明らかなように、硬化時間がより短く、硬化温度がより低いため有利である。さらに、表3に記載した対応データから明らかなように、ポストキュア時間をかなり短くすることができ、そしてポストキュア温度を下げることができる。さらに、表3に記載のデータから、ポストキュアの前と後のガラス転移温度および実施例1の組成物のポストキュア後の収縮率が、比較例による既知組成物の特性と同じ範囲であるということがわかる。
【0066】
【表4】
【0067】
実施例1の硬化組成物の関連した機械的特性(亀裂抵抗や靱性など)は、比較例の硬化組成物の特性と同等以上である。実施例1の硬化組成物の基本的な電気的・誘電的特性も、表4のデータから明らかなように、比較例の硬化組成物の特性と同等である。
[1] 自動圧力ゲル化(APG)による電気工学用絶縁システムの製造方法であって、
多成分熱硬化性樹脂組成物を使用し、該樹脂組成物が、
(A)少なくとも1種のエポキシ樹脂;ならびに
(B)(b1)少なくとも1種の脂環式アミンおよび(b2)少なくとも1種のポリエーテルアミンを含む、少なくとも1種の硬化剤;
を含む、上記方法。
[2] 前記少なくとも1種のエポキシ樹脂(A)がビスフェノールAのジグリシジルエーテルである、[1]に記載の製造方法。
[3] 前記少なくとも1種の硬化剤成分(b1)が、1,2-ジアミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)プロパン、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン(イソホロンジアミン)、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタンビス(メチルアミン)(ノルボルナンジアミン)、3,3,5-トリメチル-N-(プロパン-2-イル)-5-[(プロパン-2-イルアミノ)メチル]シクロヘキシルアミン、Jefflink JL754、またはN-アミノエチルピペラジンである、[1]または[2]に記載の製造方法。
[4] 前記少なくとも1種の硬化剤成分(b1)が、1,2-ジアミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン(イソホロンジアミン)、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタンビス(メチルアミン)(ノルボルナンジアミン)、Jefflink JL754、またはN-アミノエチルピペラジンである、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の製造方法。
[5] 前記少なくとも1種の硬化剤成分(b1)が3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン(イソホロンジアミン)である、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の製造方法。
[6] 前記少なくとも1種の硬化剤成分(b2)が、式
【化1】
(式中、xは2〜8の数である)で示されるアミン末端ポリプロピレングリコール(PPG)である、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の製造方法。
[7] 前記少なくとも1種の硬化剤成分(b2)が、式
【化2】
(式中、yは5〜40の数であり、x+zの和が3〜8の数である)で示される、ポリエチレングリコール(PEG)主骨格をベースとするポリエーテルジアミンである、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の製造方法。
[8] 前記少なくとも1種の硬化剤成分(b2)が、式
【化3】
(式中、Rは水素、CHまたはCであり;nは0、1または2であり;x+y+zが3〜100の数である)で示されるアミン末端ポリプロピレングリコール(PPG)である、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の製造方法。
[9] 前記少なくとも1種の硬化剤成分(b2)が、ブチレンオキシドキャップされたアルコールのアミノ化によって製造される、式
【化4】
の末端基を有する第一アミンであるJEFFAMINE(登録商標)XTJポリエーテルアミンである、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の製造方法。
[10] 前記樹脂組成物が、
(A) ビスフェノールAのジグリシジルエーテル;ならびに
(B)(b1)3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン(イソホロンジアミン)と、(b2)JEFFAMINE(登録商標)D-230、JEFFAMINE(登録商標)D-400、JEFFAMINE(登録商標)T-403、JEFFAMINE(登録商標)XTJ-568、JEFFAMINE(登録商標)ED-600、およびJEFFAMINE(登録商標)ED-900からなる群から選ばれるポリエーテルアミンの少なくとも1種とを含む硬化剤;
を含む、[1]〜[9]のいずれか一項に記載の製造方法。
[11] (A)少なくとも1種のエポキシ樹脂;ならびに
(B)(b1)少なくとも1種の脂環式アミンと、(b2)少なくとも1種のポリエーテルアミンとを含む少なくとも1種の硬化剤;
を含む多成分熱硬化性樹脂組成物の、自動圧力ゲル化(APG)によって電気工学用絶縁システムを製造するための使用。
[12] [1]〜[10]のいずれか一項に記載の製造方法によって得られる製品。
[13] 中電圧スイッチギヤ用途や高電圧スイッチギヤ用途のための、および中電圧計器用変圧器や高電圧計器用変圧器としての、[12]に記載の製品の使用。