特許第6683729号(P6683729)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6683729
(24)【登録日】2020年3月30日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】3進数論理回路
(51)【国際特許分類】
   H03K 19/20 20060101AFI20200413BHJP
   H01L 21/8238 20060101ALI20200413BHJP
   H01L 27/092 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
   H03K19/20 210
   H01L27/092 C
   H01L27/092 K
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-553344(P2017-553344)
(86)(22)【出願日】2015年12月29日
(65)【公表番号】特表2018-517331(P2018-517331A)
(43)【公表日】2018年6月28日
(86)【国際出願番号】KR2015014377
(87)【国際公開番号】WO2017010637
(87)【国際公開日】20170119
【審査請求日】2017年10月12日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0098638
(32)【優先日】2015年7月10日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515351884
【氏名又は名称】ユニスト(ウルサン ナショナル インスティテュート オブ サイエンス アンド テクノロジー)
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】キョン・ロク・キム
(72)【発明者】
【氏名】スン・ヘ・シン
(72)【発明者】
【氏名】エ・サン・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ジェ・ウォン・ジョン
【審査官】 工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭49−38061(JP,B1)
【文献】 特開昭61−145932(JP,A)
【文献】 特開昭61−198753(JP,A)
【文献】 特開平6−85569(JP,A)
【文献】 特表2009−540750(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K19/20
H01L21/8238
H01L27/092
H01L27/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源電圧VDDにプルアップ素子100のドレインまたはソースが連結され、及び、GNDにプルダウン素子200のドレインまたはソースが連結され、前記プルアップ素子100のドレインまたはソースと前記プルダウン素子200のドレインまたはソースが直列に連結され、並びに、前記プルアップ素子100及び前記プルダウン素子200のゲートに入力される入力電圧VIN及び、前記プルアップ素子100のドレインまたはソース及び前記プルダウン素子200のドレインまたはソースの接続部から出力される出力電圧VOUTを含むが、
前記入力電圧VINによっていずれもオフになった場合、前記プルアップ素子100及び前記プルダウン素子200がいずれも出力電圧VOUTにだけ影響を受ける単純抵抗として動作し、電圧分配を介して、第3の進数(「1」状態)を形成し、前記プルアップ素子100またはプルダウン素子200の一方だけオンになって電流を流せば、VDD(「2」状態)またはGND(「0」状態)が出力電圧VOUTとして出力され、
前記入力電圧VINに影響を受けず、前記出力電圧VOUTにだけ影響を受ける電流ICON成分と、前記入力電圧VINに影響を受け、前記出力電圧VOUTに影響を受けない電流IEXT成分と、を有し、
前記出力電圧に影響を受ける電流ICONは、ゲート電圧に独立的な接合BTBT(Band-To-Band Tunneling)電流IBTBTであり、前記入力電圧に影響を受ける電流IEXT、電流Isubであり
2進インバータにおいて、チャネルドーピング濃度を増加させて、BTBT電流IBTBT特性と電流Isub特性とを得て、3進インバータ特性曲線により3進インバータで動作することを特徴とする3進数論理回路。
【請求項2】
前記出力電圧VOUTに影響を受ける電流ICONは、前記出力電圧VOUTが作動電圧VDDの二分の一(VOUT=VDD/2)であるとき、電流値Iを有し、前記入力電圧VINに影響を受ける電流IEXTは、前記入力電圧VINが作動電圧VDDの二分の一(VIN=VDD/2)であるとき、電流値Iを有し、前記入力電圧VINと作動電圧VDDとが同一(VIN=VDD)である地点において、最大電流IMAXに指数的に増加することを特徴とする請求項1に記載の3進数論理回路。
【請求項3】
前記プルアップ素子100及び前記プルダウン素子200で出力される電流は、
[数1]
IOUT(VIN, VOUT)=ICON(VOUT)+IEXP(VIN
=IC exp[±α(VOUT=VDD/2)]+IE exp[±β(VIN=VDD/2)]
と計算されるが、
前記数式において、αとβは、各電流メカニズムの指数係数であり、前記α及びβの前の「+」符号と「−符号」は、それぞれ前記プルダウン素子200と前記プルアップ素子100とに適用される符号であることを特徴とする請求項2に記載の3進数論理回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3進数論理回路に係り、さらに詳細には、オフ状態でのjunction BTBTの漏れ電流と臨界電流とのメカニズムを利用して、CMOS基盤の2進論理ゲートと同一な回路構成において、3進論理ゲートを作ることにより、bit densityを高めることができる3進数論理回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2進数論理基盤のデジタルシステムは、多量のデータを早く処理するために、CMOS素子の小型化を介した情報の密度(bit density)を高めるのに力を注いだ。しかし、最近30nm以下に集積されながら、量子的トンネリング効果による、漏れ電流と電力消費との増加により、bit densityを高めるのに制約を受けている。かようなbit densityの限界を克服するために、多重値論理(multi-valued logic)のうち一つである3進数論理素子及びその回路への関心が急激に高まっており、特に、3進数論理具現のための基本単位として、標準3進数インバータ(STI)の開発が活発に進められている。しかし、1つの電圧源に2つのCMOSを使用する既存の2進数インバータと異なり、STIに係わる従来技術は、さらに多くの電圧源を必要としたり、複雑な回路構成が要求されたりするという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】大韓民国実用新案公報第20−1994−0008249号(1994.12.05.)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のような問題点を解決するために、本発明は、2進数の論理が直面したbit densityの限界を克服し、従来の3進数論理の複雑な回路から脱し、簡単な構成の低電力3進数論理回路を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による3進数論理回路は、電源電圧VDD及びGND間に直列に連結されたプルアップ素子100及びプルダウン素子200、並びに入力電圧VIN及び出力電圧VOUTを含むが、前記入力電圧VINによっていずれもオフになった場合、前記プルアップ素子100と前記プルダウン素子200とがいずれも出力電圧VOUTにだけ影響を受ける単純抵抗として動作し、電圧分配を介して、第3の進数(「1」状態)を形成し、前記プルアップ素子100またはプルダウン素子200の一方だけオンになって電流を流せば、VDD(「2」状態)またはGND(「0」状態)が出力電圧VOUTとして出力されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明による3進数論理回路は、オフ状態でのjunction BTBTの漏れ電流と臨界電流とのメカニズムを利用して、CMOS基盤の2進論理ゲートと同一回路構成において、3進論理ゲートを作ることにより、bit densityを確実に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】プルアップ素子とプルダウン素子とから構成された本発明による3進数論理回路の構成図、及びプルアップ素子とプルダウン素子との出力電流−入力電圧特性グラフ図面である。
図2】プルアップ素子とプルダウン素子との出力電流−出力電圧特性によるSTIの作動原理を図示した図面である。
図3】数学的な電圧伝達曲線を図示した図面である。
図4】平面32nm nMOS素子構造、並びに低チャネルドーピング及び高チャネルドーピングでのBTBT発生の比率を示す図面である。
図5】チャネルドーピングによる出力電流−入力電圧特性、及び電圧伝達曲線を示す図面である。
図6】素子シミュレーション電流−電圧データ、及び[数式1]に基づいた電流−電圧モデリングの比較図面である。
図7】SNMを表現して分析した図面である。
図8】3進数インバータ、最小値、最大値の回路構成、及び真理表の図面である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照し、本発明の実施形態について、さらに詳細に説明する。それに先立ち、本明細書及び特許請求の範囲に使用された用語や単語は、一般的であったり辞書的であったりする意味に限定して解釈されるものではなく、発明者は、自身の発明を最も適した方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に立脚し、本発明の技術的思想に符合する意味と概念とに解釈されるものである。
【0009】
従って、本明細書に記載された実施形態と、図面に図示された構成は、本発明の最も望ましい一実施形態に過ぎず、本発明の技術的思想をいずれも代弁するものではないので、本出願時点において、それらを代替することができる多様な均等物及び変形例があるということを理解しなければならない。
【0010】
図1は、プルアップ素子(pull-up device)とプルダウン素子(pull-down device)とから構成された本発明による3進数論理回路の構成図である。
【0011】
図1(a)に図示されているように、本発明による3進数論理回路は、プルアップ素子100とプルダウン素子200とから構成される。
【0012】
図1(a)及び図1(b)に図示されているように、本発明による3進数論理回路の電流−電圧特性は、入力電圧に影響を受けず、出力電圧にだけ影響を受ける電流ICON成分と、入力電圧に影響を受け、出力電圧に影響を受けない電流IEXT成分とを有する。
【0013】
前記出力電圧に影響を受ける電流ICONは、出力電圧VOUTが、作動電圧VDDの二分の一(VOUT=VDD/2)であるとき、電流値Iを有し、前記入力電圧に影響を受ける電流IEXTは、入力電圧VINが作動電圧VDDの二分の一(VIN=VDD/2)であるとき、電流値Iを有し、入力電圧VINと作動電圧VDDとが同一(VIN=VDD)である地点において、最大電流IMAXに指数的に増加する。
【0014】
このとき、前記I,I及びIMAXの間には、「I<I<IMAX」のような等式が成立する。
【0015】
本発明による3進数論理回路の作動のための補完的な電流−電圧特性は、下記数式1(数1)によって表現される。
【0016】
【数1】
【0017】
前記数式1で、αとβは、各電流メカニズムの指数係数であり、前記α及びβの前の「+」及び「−」の符号は、それぞれ前記プルダウン素子200とプルアップ素子100とに適用される。
【0018】
ここで、前記IMAX=Iexp[β(VDD/2)]は、前記プルダウン素子200及びプルアップ素子100のいずれも同様である。
【0019】
本発明による3進数論理回路の作動原理について、前記数式1及び図2を参照して説明する。
【0020】
図2(a)ないし図2(c)には、低い「0」、中間「1」、高い「2」の3種の状態電圧遷移過程が図示されているが、前記低い「0」、中間「1」及び高い「2」は、それぞれ前記プルアップ素子100とプルダウン素子200との出力電流IOUT−出力電圧VOUT曲線が交差する地点によって決定される。
【0021】
前記低い「0」または高い「2」に遷移されるために、前記プルアップ素子100または前記プルダウン素子200は、VIN>VIL図2(a))またはVINIH図2(b))の範囲内において、IOUTあるいはIEXPとして、IEXPの優勢電流を示し、それぞれGND(VOL)あるいは作動電圧VDD・VOHに電流経路を作る。
【0022】
出力電流VOUTが、VIMH及びVIMLの周辺のVDD/2に遷移される間、前記プルアップ素子100とプルダウン素子200は、出力電流IOUTが、定電流ICONと指数電流IEXPとの和と類似しており、それは、遅い遷移過程を誘導する。
【0023】
最後に、追加的な中間「1」状態(VOM)は、VIMH<VIN<VIML範囲内のVOUT=VDD/2において、1つの交差点によって得られ、ここで、前記プルアップ素子100とプルダウン素子200との出力電流IOUTは、定電流ICOだけに支配される(図2(b))。
【0024】
MAX>Iである対称素子を仮定するとき、中間入力電圧(VIM=VIML−VIMH)と遷移電圧(VTR=VIMH−VIH=VIL−VIML)は、下の数式2(数2)と数式3(数3)とを誘導することができる。
【0025】
【数2】
【数3】
【0026】
ここで、VIL、VIH、VIML及びVIMHは、前記プルアップ素子100と前記プルダウン素子200との電流方程式の組み合わせによって決定される。
【0027】
例えば、VIMLは、VIN>VDD/2であるとき、{IEXP+ICONpull−down={ICONpull−up関係から、dVOUT/dVIN=−1によって得られる。
【0028】
標準3進数インバータ(STI)作動のために、VIL<VDD、VIML>VDD/2、VIMH<VDD/2及びVIH>0(GND)条件を満足しなければならず、結果として、α及びβに係わる次の基準になる。
【0029】
【数4】
【0030】
図2において、数学的例として、IMAX=10−5A、I=10−8A、log(IMAX/I)/(VDD/2)=6、α’=2、β’=10、VDD=1が使用された。
【0031】
図3は、β’とα’との関数として、3つの出力状態(VOH=VDD、VOM=VDD/2、VOL=GND)を有する標準3進数インバータ(STI)の電圧伝達曲線を示し、結果として、数式2によるVIMと数式3による遷移電圧との変更になる。
【0032】
図3の挿入されたグラフから分かるように、数式4によって与えられたα’及びβ’の範囲下において、低い遷移電圧VTRと高いVIMは、さらに大きいβ’、とさらに小さいα’とによって得られ、それは、理想的な標準3進数インバータ(STI)の電圧伝達曲線のために望ましい。
【0033】
しかし、前記プルアップ素子100及び前記プルダウン素子200が、いずれも数式2と数式3とから、log(β’/2α’)/β’項のため、特定飽和された値を有する。
【0034】
β’項において、かような非線形log(x)/x関数は、ただ前記プルアップ素子100及び前記プルダウン素子200の出力電流IOUTが、定電流ICONと指数電流IEXPとの合に類似するVDD/2近傍のVIMHとVIMLで誘導される。
【0035】
遷移電圧VTRのみを考慮したとき、大きいβ’が望ましく見えるが、しかしノイズマージンを考慮すれば、合理的なVIMのために最適条件があるように予想される。
【0036】
標準3進数インバータ(STI)の中間「1」状態のための必須な電流メカニズムである入力電圧に独立的な定電流ICONは、ゲート電圧に独立的な接合BTBT電流IBTBTを介して実現することができる。
【0037】
また、「0」状態及び「2」状態のための入力電圧に依存する指数電流IEXPは、臨界電圧以下の電流Isubによって作ることができる。
【0038】
図4は、32nm high−k/メタル−ゲート平面nMOSの断面、並びに低いチャネルドーピング(Nch=2x1018cm−3)、及び高いチャネルドーピング(Nch=2x1019cm−3)でのBTBT発生の比率を示している。1nmの酸化物厚、1x1020cm−3の高ドレインドーピング(HDD)、2.5x1019cm−3の低いドレインドーピング(LDD)など基本的な構造情報は、ITRSで報告した32nm低い静的パワーテクノロジーを基とした。素子シミュレーションは、BTBTモデル及びバンドギャップ縮小モデルを共にSynopsys SentaurusTMで進めた。
【0039】
チャネルドーピングを増加させることにより、最大BTBT発生領域が、ゲート下のLDD領域からHDDとボディー接合とに移動し、それは、主オフ電流メカニズムがgateに独立的なIBTBTになるようにした。
【0040】
図5は、チャネルドーピングによる出力電流−入力電圧特性と電圧伝達曲線とを示している。単純チャネルドーピングの増加により、2進インバータ特性曲線から3進インバータ特性曲線に変わるということが分かる。
【0041】
図6は、素子シミュレーション電流−電圧データと、数式1に基づいた電流−電圧モデリングと良好に合うということを示している。
【0042】
図7は、SNMを表現して分析したものであり、代表デザインにおいて(Nch=2x1019cm−3)、SNMは、200mVを、理想的なCMOSにおいては、230mVを有する。図7に挿入されたSNM等高線から、βが大きくなり、αが小さくなるほど、NMが大きくなるということが分かる。
【0043】
前述のような特性を有した本発明による3進数インバータ(STI)回路及び真理表、3進数インバータ(STI)回路が応用されたMINゲート回路及び真理表、並びにMAXゲート回路及び真理表は、図8に図示した通りである。
【0044】
プルアップ素子100と前記プルダウン素子200とが入力電圧に影響を受けない場合(いずれもオフになった場合)、2つの素子は、いずれも単純抵抗として動作し、電圧分配を介して、第3の進数(「1」状態)を形成する。一方、前記プルアップ素子100またはプルダウン素子200の一方だけオンになって電流を流せば、VDD(「2」状態)またはGND(「0」状態)が伝達される。
【0045】
入力電圧に影響を受けない電流領域は、前述のように、CMOSのgateに影響を受けないjunction band-to-band tunneling(BTBT)電流特性で具現可能であり、入力電圧に指数的に増加する電流領域は、CMOSの臨界電流(subthreshold電流)特性を利用する。
【0046】
以上のように、本発明は、たとえ限定された実施形態と図面とによって説明したにしても、本発明は、それらによって限定されるものではなく、本発明が属する技術分野において当業者によって、本発明の技術思想、及び特許請求の範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということはいうまでもない。
【符号の説明】
【0047】
100 プルアップ素子
200 プルダウン素子
図1(a)】
図1(b)】
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8(a)】
図8(b)】
図8(c)】