(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記インプラントが眼内インプラント送達装置を用いて眼に入れられる、請求項1記載の眼内インプラントであって、前記眼内インプラント送達装置が、(a)外壁と、近接端と、近接端開口部と、遠端と、遠端開口部と、カニューラの内部を通じて延びているルーメンとを有する、カニューラ;(b)眼内にインプラントするための寸法と構造を有しており、ルーメン内に配置される眼内インプラント、および(c)遠端が閉鎖されており、上記カニューラの外壁と接触しており、カニューラの遠端及び遠端開口部を覆っており、カニューラが眼に通過する際にそのカニューラの遠端及び遠端開口部が通過できるような構造になっているキャップを含んでなる、眼内インプラント。
【発明を実施するための形態】
【0021】
定義
本発明の目的に即して、以下に定義されているような用語が使われるが、その用語の文脈が別の意味を示唆する場合には、その定義に限定されない。
【0022】
本明細書中で使用されるとき、「眼房内注入物」とは、眼球内に入れられるべく構成され、寸法化され、設定された装置あるいは要素を指している。眼房内注入物は一般的には眼球の生理学的状況の下では生物分解性で、悪い副作用は起こさない。眼房内注入物は眼球の視力を妨げずに眼球に入れることができる。
【0023】
本明細書中で使用されるとき、「治療成分」とは眼球の医学的状態を治療するために用いられる1つ以上の治療薬あるいは物質を含む眼房内注入物の一部分を示している。この治療成分は1つの眼房内注入物の個別領域に置かれてもよいし、その注入物全体に均一に分散されていてもよい。この治療成分のうちの治療用薬剤は通常は眼科的に許容されるもので、その注入物が眼球内に入れられた場合に悪い反応を引き起こさないような形態で提供される。
【0024】
本明細書中で使用されるとき、「薬剤放出持続成分」とは、その注入物の治療薬を持続的に放出させるのに有効な、その眼房内注入物の一部分を示している。薬剤放出持続成分は生物分解性ポリマーマトリクスであってもよいし、あるいは、治療成分を含む注入物のコア領域を被覆するコーティングであってもよい。
【0025】
本明細書中で使用されるとき、「組み合わせられた」という表現は、混合、分散、結合、被覆、あるいは取り囲んでいる状態を意味する。
【0026】
本明細書中で使用されるとき、「眼球領域」あるいは「眼球箇所」という表現は、一般的には、眼球の前部及び後部を含む眼球のいずれかの領域を示しており、通常は、その眼球内に見出されるいずれかの機能的(例えば、視力に関する)あるいは構造的組織、あるいはその眼球の内部と外部を部分的あるいは完全に整合させている組織や細胞層などを含むが、これらに限定されない。眼球領域におけるその眼球部位の具体例としては前眼房、後眼房、硝子体腔、脈絡膜、脈絡膜上腔、結膜、結膜下腔、上強膜腔、角膜内腔、角膜上腔、強膜、扁平部、外科的に導入された無血管領域、及び網膜などがある。
【0027】
本明細書中で使用されるとき、「眼症状」とは、眼や眼の部分あるは領域に影響を及ぼしたり関与したりする病気や不快、あるいは状態を意味している。広く言えば、眼とは眼球とその眼球を構成する組織と流体、及び(斜紋筋や直筋などの)眼の周辺の筋、そして眼球内あるいはそれに近接した視神経の部分などを含んでいる。
【0028】
前眼房状態とは、流体水晶体嚢の後壁や毛様筋の前部の存在する、眼周囲の筋やまぶたや眼球組織あるいは流体など、水晶体嚢の後壁や毛様筋の前部の存在する液体などの眼球の前部(つまり、眼の前側)の部位や箇所に影響を及ぼす、あるいは関与する病気、不快、又は状態である。従って、前眼房状態は、前眼房領域あるいは箇所に血管を発達させたり神経を通したりする結膜、角膜、前目房、虹彩、後眼房(網膜の後側で、水晶体嚢の後壁の前側)、水晶体や水晶体嚢及び血管と神経に主として影響を及ぼし、あるいはそれらに関与する。
【0029】
従って、前眼房状態とは、例えば、無水晶体症、偽水晶体、乱視、眼瞼痙攣、白内障、結膜疾患、結膜炎、角膜疾患、角膜潰瘍、眼乾燥症候群、まぶたの疾患、涙器疾患、涙管障害、近視、老眼、瞳孔不全、屈折障害、及び斜視などの病気、不快、あるいは状態である。緑内障も前眼房状態の1つとみなすことができるが、それは、緑内障治療の臨床的な目標は、眼球前眼房の水性流体の高圧力を軽減させること(つまり眼圧低下)である場合もあり得るからである。
【0030】
後眼房状態とは、脈絡膜や強膜(水晶体嚢の後壁を通じて広がる平坦部位の後側の位置にある)、硝子体、硝子体腔、網膜、視神経(視神経円板)、及び後眼房領域あるいは箇所に新しい血管を発達させたり神経と通したりする血管及び神経に影響を及ぼしたり関与したりする病気、不快、あるいは状態である。
【0031】
従って、後眼房状態とは、例えば、急性斑点性神経網膜症;ベーチェット病;脈絡膜新血管形成;糖尿病によるブドウ膜炎;菌あるいはウイルス性感染症などの感染症;斑点性病変;非浸出性の加齢性病変や浸出性の加齢性病変;斑点性浮腫や嚢腫状斑点性浮腫及び糖尿病による斑点性浮腫などの浸出性の加齢による斑点性病変;多焦点脈絡膜炎;後眼房箇所あるいは位置に影響を及ぼす眼球外傷;眼球腫瘍;中心網膜血管閉塞や糖尿病性網膜炎(増殖性糖尿病性網膜炎を含む)、増殖性硝子体網膜症(PVR)、網膜前眼房疾患、網膜剥離、ブドウ膜性網膜疾患などの網膜不全;交感性眼炎;フォークト・コヤナギ−ハラダ(VKH)症候群;ブドウ膜拡散;眼球のレーザー治療による、あるいはその影響によって引き起こされる後眼房状態;光線力学療法、光凝固術、放射線網膜症、網膜上膜不全、網膜静脈分枝血管閉塞、前部虚血性視神経炎、非網膜炎性糖尿病性網膜機能障害、網膜炎色素障害、そして緑内障などである。緑内障は後眼房状態とみなすことができるが、それは、その治療目的が網膜細胞あるいは視神経細胞(つまり、神経保護)の損傷や喪失による視力の喪失やその発生頻度の低減を防ぐことにあるからである。
【0032】
用語、「生物分解性ポリマー」とは、生体内で分解するポリマーを指しており、ポリマーの腐食が、治療剤の放出と同時か又はその後で自然に起きるものを指している。特に、ポリマーの膨張を通じて薬剤を放出するように作用するメチルセルロースなどのヒドロゲルは「生物分解性ポリマー」には含まれない。「生物分解性」と「生物腐食性」は同じ意味であり、本明細書ではどちらを用いられていても意味は変わらない。生物分解性ポリマーはホモポリマー、コポリマー、あるいは2つを超えるポリマー単位を含むポリマーであってもよい。
【0033】
本明細書中で使用されるとき、用語「治療する」、「治療行為」、あるいは「治療」という表現は眼症状、眼球の傷あるいは損傷の緩和、解決、あるいは予防を意味しており、あるいは傷を受けたか損傷した眼球組織の治癒の促進を意味している。治療とは、通常、眼症状、眼球負傷あるいは損傷の少なくとも1つの徴候を軽減させるのに有効である。
【0034】
本明細書中で使用されるとき、用語「有効」という表現は、眼や眼の領域に対する甚大な負のあるいは不都合な副作用を引き起こさずに眼症状を治療したり、眼球の負傷や損傷を緩和あるいは予防するのに必要な薬剤のレベルあるいは量を意味している。上の見地で見れば、プロスタミドなどの治療薬の治療的に有効な量とは、眼症状の少なくとも1つの徴候を緩和するのに有効な量のことである。
【0035】
種々の期間にわたり薬剤を放出することができる眼球内注入物が開発されている。これらの注入物は、眼の硝子体などに挿入されると、治療的なレベルのプロスタミドを一定期間(例えば、約1週間、あるいはそれ以上)提供する。ここに開示されている注入物は、眼圧上昇に関連した眼症状を治療する上で、特に、少なくとも緑内障の1つの徴候を緩和する上で有効である。
【0036】
本発明の1つの実施形態で、眼球内注入物は生物分解性ポリマーマトリクスを含む。この生物分解性ポリマーマトリクスは1つのタイプの薬剤放出持続成分である。生物分解性ポリマーマトリクスは生物分解性眼球内注入物を形成するのに効果的である。この生物分解性眼球内注入物はその生物分解性ポリマーマトリクスと組み合わされたプロスタミドを含んでいる。この基質は眼の硝子体などの眼球領域あるいは眼球箇所に入れられた時点から約1週間より長期にわたる期間、一定量のプロスタミドの放出を持続させるのに有効な速度で分解する。
【0037】
この注入物のプロスタミド成分は1つ以上のタイプのプロスタミドを含んでいる。ある種の注入物では、プロスタミド成分は化学式(I)
【化1】
[式中、点線部分の結合は、単結合または二重結合であり、シスまたはトランス配置であってよく、
Aは2〜6個の炭素原子を有するアルキレン又はアルケニレン基であり、1つ以上のオキシド基が介在していてもよく、1つ以上のヒドロキシ、オキソ、アルコキシ、あるいはアルキルカルボキシ基で置換されていてもよく、該アルキル基は1〜6個の炭素原子を含んでおり;
Bは3〜7個の炭素原子を有するシクロアルキル基、または4〜10個の炭素原子を有し、ヘテロ原子が窒素、酸素及び硫黄原子から成る群から選択される、ハイドロカルビルアリール及びヘテロアリールから成る群から選択されるアリール基であり;
Xは−N(R
4)
2で、R
4は水素と1〜6個の炭素原子を有する低級アルキル基から成る群から独立に選択され;
Zは=Oであり、R
1及びR
2のうちの1つは=O、−OHまたは−O(CO)R
6基であり、他方が−OHまたは−O(CO)R
6基であるか、あるいはR
1が=Oで、R
2がHであって、R
6は1〜約20個の炭素原子を有する飽和または不飽和の非環式炭化水素基か、あるいは、−(CH
2)mR
7で、mは0〜10であり、R
7が3〜7個の炭素原子を有するシクロアルキル基であるか、または上記のハイドロカルビルアリールかヘテロアリールである]
で示される化合物、あるいはその薬学的に許容される塩を含んでなる。
【0038】
本発明による化合物の薬学的に許容される酸付加塩は、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩または重硫酸塩、リン酸塩または酸リン酸塩、酢酸塩、フマル酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、サッカラート、及びp-トルエン・スルホン酸塩などの、薬学的に許容される陰イオンを含有する非毒性付加塩を形成する酸から形成されるものである。好ましくは、プロスタミドは以下の化学式(II)を有している。
【化2】
[ここで、yは0または1であり、xは0または1で、x+yは両方が1ではなく、Yはアルキル、ハロ、ニトロ、アミノ、チオール、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルカルボキシ、及びハロ置換アルキルから成る群から選択される基であり、前記アルキル基は1〜6個の炭素原子を含んでおり、nは0であるか、あるいは1〜3の範囲の整数であり、R
3は=Oあるいは−OH又は−O(CO)R
6基で、斜線部分はアルファ配置を示し、黒塗りの三角形はベータ配置を示している。
【0039】
少なくとも1つのタイプの眼球内注入物において、プロスタミドはR
1,R
2及びR
3がOHであり、yは1であり、xは0であり、XはN(H)(C
2H
5)、例えば、シクロペンタンN−エチル・ヘプテンアミド−5−cis−2−(3α−ヒドロキシ−5−フェニル−トランス−ペンテニル)−3,5−ジヒドロキシ,[1
α.,2
β.,3
α,5
α]である。
【0040】
この化合物、シクロペンタンN−エチル・ヘプテンアミド−5−cis−2−(3α−ヒドロキシ−5−フェニル−トランス−ペンテニル)−3,5−ジヒドロキシ,[1
α.,2
β.,3
α,5
α]はビマトプロストとしても知られており、Limigan.RTM(Allergan,Inc.CA)の商標で眼炎治療に一般的に使われている。
【0041】
あるいは、プロスタミドは米国特許第6,395,787号に開示されているプロスタミドのいずれであってもよく、参照により本明細書に組み込まれる。
【0042】
このように、上記注入物は、ビタモプロスト、その塩、あるいはその混合物を含むか、実質的にビタモプロスト、その塩、あるいはその混合物から成るか、ビタモプロスト、その塩、あるいはその混合物から成る。
【0043】
プロスタミドは微粒子状あるいは粉末形状であってもよく、生物分解性ポリマーマトリクスに取り込まれていてもよい。通常、プロスタミド粒子は約3000ナノメートル未満の有効平均寸法を有している。いくつかの注入物では、3000ナノメートル未満の有効平均粒子寸法を有している場合もある。例えば、その粒子は500ナノメートル未満の有効平均粒子寸法を有している場合もある。さらに別の注入物においては、その粒子はその有効平均粒子寸法が約400ナノメートル未満であり、さらに別の実施形態では約200ナノメートル未満の寸法である。
【0044】
この注入物のプロスタミドの割合は、好ましくは注入物の約10重量%〜90重量%である。より好ましくは、プロスタミドは注入物の約20重量%〜約80重量%である。好ましい実施形態では、プロスタミドは注入物の約20重量%である(例えば、15%〜25%)。別の実施形態では、プロスタミドは注入物の約50重量%で含まれる。
【0045】
注入物内での使用に適したポリマー材料あるいは組成物は、眼の機能や生理には実質的な干渉を及ぼさないようにするために、眼球との両立性、つまり生物学的両立性のあるものである。そうした材料とは少なくとも部分的には、そしてより好ましくはほとんど完全に生物分解性あるいは生物腐食性のものである。
【0046】
有用な材料ポリマー材料の例としては、有機性エステル類及び有機性エーテルから誘導されたもの及び/又はそれらを含んでいるもので、分解されると、生理学的に許容されるモノマーを含む分解性生物をもたらすものである。無水物、アミド、オルソエステルなどから誘導されたもの及び/又はそれらを含んでいる材料ポリマー材料であってもよく、それら自体でも、あるいは他のモノマーとの組み合わせで使用してもよい。この材料ポリマー材料は付加あるいは縮合ポリマーであってもよく、縮合ポリマーの方が好適である。この材料ポリマー材料は交差結合していても非交差結合していてもよく、例えば、その材料ポリマー材料の約5%未満、あるいは約1%未満のような軽度の交差結合をしているものが好適である。ほとんどの場合、そのポリマーは、炭素と水素の他に、酸素と窒素のうちの少なくとも1つを含んでおり、好適には酸素を含んでいる。その酸素はオキシ、例えばヒドロキシやエーテル、カルボン酸エステルなどの非オキソ−カルボニルとして存在していてもよい。窒素はアミド、シアノ、及びアミドとして存在していてもよい。制御された薬剤提供のためのカプセル化について述べているHeller, Biodegradable Polymers in Controlled Drug Delivery, In: CRC Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, Vol. 1, CRC Press, Boca Raton, Fla. 1987,pp.39−90に記載されているポリマーも本発明において使用することは可能である。
【0047】
さらに興味があるのは、ホモポリマー、コポリマー、あるいは多糖類である、ヒドロキシ脂肪族カルボン酸のポリマーである。これらのポリエステル類にはD乳酸、L乳酸、ラセミ化合物乳酸、グリコール酸、ポリカプトラクトーン、及びそれらの組み合わせなどが包含される。一般的に言えば、L乳酸塩、D乳酸塩を用いることによって、遅腐食性ポリマーあるいは材料ポリマー材料が得られ、腐食は乳酸ラセミ化合物を用いることでかなり促進される。
【0048】
有用な多糖類には、アルギン酸カルシウム、機能化セルロース、そして特に、分子量が例えば約5kD〜500kDの範囲で、水には不溶性であることを特徴とするカルボキシメチルセルロース・エステル類などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
その他の目的のポリマーには、ポリビニルアルコール、ポリエステル類、ポリエーテル類、そして生体適合性があって、生物分解性及び/又は生物腐食性のこれら化合物の組み合わせなどであるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
本発明での使用に適するポリマーあるいは材料ポリマー材料の好ましい特性としては、生体適合性、治療成分との共存性、本発明による薬剤伝達システムを作る上でのそのポリマーの使い易さ、生理学的環境の下での半減期が少なくとも約6時間、好ましくはほぼ1日より長いこと、そして、硝子体の粘着性をそれほど増大させないこと、そして水に対する不溶性などである。
【0051】
マトリクスを形成するために含まれる生物分解性の材料ポリマー材料は、望ましくは酵素あるいは加水分解に対する不安定であることを前提とする。水溶性ポリマーは有用な水不溶性ポリマーを提供するために、加水分解性あるいは生物分解性の不安定な交差結合と架橋させることができる。安定性の程度は、モノマーの選択、ホモポリマーとコポリマーのいずれを用いるか、ポリマーの混合物を用いるか、そして、そのポリマーが末端酸基を含んでいるかどうかに応じて広い範囲で変わり得る。
【0052】
ポリマーの生物分解性を制御し、従って、その注入物の持続的放出特性を制御する上で同様に重要なのは、その注入物内で用いられるポリマー性組成物の相対平均分子量である。放出特性を制御するために、分子量が同じ、あるいは異なった種々のポリマー性組成物を用いることができる。いくつかの注入物では、そのポリマーの相対平均分子量が約9〜64kDの範囲であり、通常は、約10〜約54kDの範囲であるが、さらに通常は、約12〜約45kDの範囲である。
【0053】
いくつかの注入物では、グリコール酸と乳酸のコポリマーが用いられ、この場合の生物分解の速度はグリコール酸と乳酸の比率によって制御される。最も急速に分解されるコポリマーではグリコール酸と乳酸のそれぞれの量がほぼ等しくなっている。比率が等しくないホモポリマーあるいはコポリマーは分解に対してより抵抗性を示す。グリコール酸と乳酸の比率はその注入物の脆弱性にも影響を及ぼし、大型の形状のためにはより柔軟な注入物が望ましい。ポリ乳酸ポリグリコール酸(PLGA)コポリマーマーにおける乳酸の割合(%)は0〜100%の範囲であってよく、好ましくは約15〜85%、そしてより好ましくは約35〜65%である。いくつかの注入物では、50/50PLGAコポリマーが用いられている。
【0054】
眼球内注入物の生物分解性ポリマーマトリクスは、2つ以上の生物分解性ポリマーの混合物を含み得る。例えば、注入物は、第1の生物分解性ポリマーと異なった第2の生物分解性ポリマーの混合物を含み得る。それら生物分解性ポリマーのうちの1つ以上のものが端末酸基を持っていても差し支えない。
【0055】
腐食性のポリマーからの薬剤の放出はいくつかのメカニズム、あるいはメカニズムの組み合わせの結果である。これらのメカニズムのうちには、その注入物の表面からの脱離や水和化されたポリマーの孔性経路を通じての溶出、拡散、そして腐食などがある。腐食は全体的なものと表面でのもの、あるいはその組み合わせがある。ここで述べられている場合、眼球内注入物のマトリクスは一定量のプロスタミド成分の放出を眼に注入してから1週間以上は持続させるのに有効な速度で薬剤を放出することができる。いくつかの注入物では、治療上有効な量のプロスタミド成分が注入後約30〜35日間以上放出される。例えば、1つの注入物がビマトプロストを含んでいて、その注入物のマトリクスが眼に注入されてから約1ヶ月間も治療上有効な量のビマトプロストの放出が持続されるのに有効な速度で分解する。別の例では、その注入物がビマトプロストを含んでいて、そのマトリクスが40日間以上、例えば約6ヶ月間、治療上有効な量のビマトプロストの放出を持続させるのに有効な速度で薬剤を放出する。
【0056】
生物分解性の眼球内注入物の一例では、異なる生物分解性ポリマーの混合物を含む生物分解性ポリマーマトリクスと組み合わされているプロスタミドを含む。それらの生物分解性ポリマーのうちの少なくとも1つは分子量が約63.3kDのポリラクチドである。第2の生物分解性ポリマーは分子量が約14kDのポリラクチドである。こうした混合物は治療上有効な量のプロスタミドを放出をその注入物が眼に入れられた時点から約1ヶ月以上の期間にわたって持続させるのに効果的である。
【0057】
生物分解性の眼球内注入物のもう1つの例では、プロスタミドがそれぞれ約0.16dl/g〜約1.0dl/gの固有の粘度を有する異なった生物分解性ポリマーの混合物を含む生物分解性ポリマーマトリクスと組み合わされている。例えば、それらの生物分解性ポリマーの1つは約0.3dl/gの固有粘度を持っていてもよい。第2の生物分解性ポリマーは約1.0dl/gの固有粘度を持っていてもよい。さらに別の注入物は約0.2dl/g〜0.5dl/gの範囲の固有粘度を有する生物分解性ポリマーを含み得る。上に示されている固有粘度は25℃の温度下で0.1%クロロホルム内で判定することができる。
【0058】
1つの特殊な注入物ではビマトプロストが2つの異なったポリラクチド・ポリマーの組み合わせと結合されている。ビマトプロストはその注入物の重量の約20%の割合で存在している。1つのポリラクチド・ポリマーは分子量が約14kDで、固有粘度が約0.3dl/gであり、他方のポリラクチド・ポリマーは分子量が約63.3kDで、固有粘度が約1.0dl/gである。これら2つのポリラクチド・ポリマーはその注入物内で1:1の比率で存在している。こうした注入物はビマトプロストを2ヶ月間以上放出させるのに有効である。この注入物は押し出し加工プロセスで作られるロッドあるいはフィラメントの形状で提供される。
【0059】
本発明による注入物の好ましい処方は、APIを30%、R203Sを45%、R202Hを20%,PEG3350を5%,あるいはAPIを20%,R203Sを45%,R202Hを10%、RG752Sを20%,PEG3350を5%で、APIがビマトプロストである。好ましい注入物処方で用いることができる構成成分の濃度範囲はAPIが5〜40%、R203Sが10〜60%、R202Hが5〜20%、RG752Sが5〜40%、そしてPEG3350が0〜15%である。PLA/PLGAポリマーはドイツ、IngelheimのBoehringer Ingelheimから提供されているResomer製品ラインに含まれており、以下のような製品がある。
Resomer モノマー比率 個別dL/g
RG502 50:50ポリ (D,L−ラクチド−コ−グルコリド) 0.2
RG502H 50:50ポリ (D,L−ラクチド−コ−グルコリド) 0.2
RG503 50:50ポリ (D,L−ラクチド−コ−グルコリド) 0.4
RG504 0.5
RG505 0.7
RG506 0.8
RG752 75:25ポリ (D,L−ラクチド−コ−グルコリド) 0.2
RG755 75:25ポリ (D,L−ラクチド−コ−グルコリド) 0.6 (40000)
RG756 0.8
RG858 85:15ポリ (D,L−ラクチド−コ−グルコリド) 1.4
R202H ポリ(D,L−ラクチド) 0.3
R203 ポリ(D,L−ラクチド) 1.0 (40000)
R206 ポリ(D,L−ラクチド)、酸末端 0.2
R104 ポリ(D,L−ラクチド) (3500)
【0060】
生物分解性ポリマーマトリクスを含む眼球内注入物からのプロスタミドの放出は最初に一気に放出した後に放出されるプロスタミドの量を徐々に増大させてもよいし、最初はプロスタミド成分をゆっくり放出し、その後放出量を増大させてもよい。注入物がほぼ完全に分解されると、放出されたプロスタミドの割合が約100%となる。既存の注入物と比較して、ここで開示されている注入物は、眼に入れてから約1週間後まで、プロスタミドは完全に放出しない、あるいはほぼ100%が放出される。
【0061】
注入物の寿命全期間を通じて注入物からのプロスタミドの放出を比較的に定まった量で行うのが好ましい。例えば、その注入物の寿命期間中に、プロスタミドが1日当たり約0.01.mu.g〜約2.mu.gの割合で放出されるのが望ましい。しかしながら、その放出量は生物分解性ポリマーマトリクスの処方に応じて変えて、増大することも減少させることも可能である。さらに、プロスタミドの放出特性には1回以上の線形部分及び/又は1回以上の非線形部分があってもよい。放出量は一度その注入物が分解あるいは腐食を始めた後は、ゼロにはならないことが好ましい。
【0062】
注入物は一体構成で、活性薬剤がそのポリマー性マトリクス全体に均一に分散されていてもよいし、あるいは、カプセル化されていて、活性薬剤の受け皿がポリマー性マトリクスでカプセル化された状態でもよい。製造の容易さから、通常は一体構成の方がカプセル化よりも好まれる。しかしながら、カプセル化された受け皿タイプの注入物も、薬剤の治療レベルの範囲が狭い場合では、利点がある場合もある。さらに、プロスタミドを含む治療成分がマトリクス内で不均等なパターンで分散されている場合もある。例えば、注入物がその注入物の第2の部分と比較してより高い濃度でプロスタミドを含んでいる部分を有していてもよい。
【0063】
本明細書に開示されている眼球内注入物は外科的に注入するために、1mm超、あるいは3mm〜10mmの範囲、例えば2mm超の大きさの針で投与するために、約5.mu.m〜約10.mu.mの範囲、あるいは約10.mu.m〜約1mmの範囲の寸法を有している。注射で注入される場合、その注入物は、その直径が針の内部を動いて注入できる限り、いかなる適切な長さを有していてもよい。例えば、長さが約6mm〜約7mmの注入物を眼に注入することができる。針を用いて投与される注入物はその針の内径未満の直径を持っていなければならない。いくつかの注入物においては、その直径は約500.mu.m未満である。ヒトの硝子体腔は長さが例えば1〜10mmの範囲のいろいろな形状の比較的大きな注入物を収容することができる。この注入物は直径が約2mm x 0.75mmの筒状のペレット(ロッドなど)であってもよい。あるいは、この注入物は長さが約7mm〜約10mmでm直径が約0.75mm〜約1.5mmの筒状ペレットであってもよい。
【0064】
この注入物は、硝子体など眼への注入物の挿入とその注入物の収容の両方を容易するために、少なくともある程度の柔軟性を持っていてもよい。注入物の総重量は通常は約250〜5000.mu.gであり、より好ましくは500〜1000.mu.gである。例えば、注入物は約500.mu.g、あるいは約1000.mu.gである。ヒト以外の個体の場合、その注入物の寸法と重さは、その個体のタイプに応じて、大きくしたり、小さくしたりすることができる。例えば、ヒトの硝子体の体積は約3.8mlであり、ウマのそれは約30ml、そしてゾウの場合は約60〜100mlの範囲である。ヒト用の寸法の注入物を他の動物に合わせて大きくしたり小さくしたりすることも可能で、ウマの場合は約8倍にされ、ゾウの場合であれば、例えば、約26倍にされる。
【0065】
このように、注入物は中心を1つの材料で形成し、表面を同じかあるいは異なった組成物の1つ以上の層で調製することもできる。この場合、それらの層は交差結合されていてもよいし、分子量はむと度や多孔性の程度などが異なっていてもよい。例えば、薬剤の最初のボーラスを迅速に放出することが望ましい場合には、初期の分解速度を速めるために、その中心部をポリ乳酸塩−ポリグリコール酸塩コポリマーで被覆したポリ乳酸塩としてもよい。あるいは、中心部から見れば外側のポリ乳酸塩が分解を開始したら、中心部も溶け出して、眼から急速に洗い出されるように、中心部をポリ乳酸塩で被覆したポリビニルアルコールとしてもよい。
【0066】
この注入物は、繊維、シート、薄膜、微小球体、球体、円板状、額状などを含め、どのような形状であってもよい。注入物の寸法の上限は注入物の耐久度、挿入上の寸法限度、取り扱いの容易さなど種々の要因によって決められる。シートや薄膜形状が採用される場合、そのシートや薄膜は通常は少なくとも約0.5mm x 0.5mmの範囲であり、通常は約3〜10mmx5〜10mm、取り扱いやすさから厚みは0.1〜1.0mmである。繊維形状が用いられる場合、その繊維の直径は一般的には約0.05〜3mmの範囲であり、その繊維の長さは通常は約0.5〜10mmの範囲である。球状の場合は直径が約0.5.mu.m〜4mmの範囲で、他の形状の粒子とほぼ同様の体積を有している。
【0067】
注入物の寸法と形状は、放出速度、治療期間、及び注入箇所での薬剤濃度の調節にも用いることができる。注入物がより大型であれば、投与量はそれに比例して大きくなるしが、表面対質量比率に応じて、放出速度がよりゆっくりになる場合もある。注入箇所に応じて、注入物の具体的な寸法と形状が選ばれる。
【0068】
好ましくは、注入物の寸法は眼の虹彩角膜の生体組織に適合するように決められる。
【0069】
プロスタミド、ポリマー、及びその他の修飾因子の比率は、種々の比率を有するいくつかの注入物を作ることによって、経験的に決めることができる。溶解あるいは放出テストに関してUSPが承認している方法を用いて、放出速度を測定することができる(USP 23;NF 18(1995)pp.1790−1798参照)。例えば、無限シンク法を用いて、重量を量った注入物のサンプルを体積を量った0.9%NaCl水溶液に加えて、放出後の薬剤濃度が飽和時の5%未満とするように、溶液体積を調節する。その混合物を37℃の温度下で維持して、ゆっくり攪拌し、その注入物を懸濁液中に維持する。そして、分光高度法、HPLC、質量分光分析などのいろいろな方法で、吸収が定常的になるか、あるいは、薬剤の90%を超えて放出されるまで、溶解した薬剤の出現と時間との関係を観察する。
【0070】
ここに開示されている眼球内注入物内に含まれているプロスタミドに加えて、この眼球内注入物は米国特許第10/837,260号に記載されているような眼科的に許容される追加的な1つ又は複数の治療剤を含んでいてもよい。
【0071】
例えば、1つの注入物はビマトプロストとベータ・アドレナリン受容体拮抗剤を含んでいてもよい。より特殊な例として、この注入物はビマトプロストとチモロール(登録商標)の組み合わせを含んでいてもよい。あるいは、1つの注入物がビマトプロストとカルボン酸アニヒドラーゼ抑制剤の組み合わせを含んでいてもよい。例えば、この注入物はビマトプロストとドルゾアミド(Trusopt:登録商標)の組み合わせを含んでいてもよい。
【0072】
注入物がビマトプロストとラタノプラストの組み合わせを含むこともできる。別の注入物はビマトプロストとトラボプロストの組み合わせを含むこともできる。
【0073】
米国特許第10/837,260号に記載されているように、ここで開示されている眼球内注入物は、治療成分に加えて、効果的な量の緩衝剤、保存剤などを含むこともできる。
【0074】
本発明による注入物の少なくとも1つにおいては、プロスタミドが実質的にビマトプロストから成るような場合に、塩化ベンジルアルコニウム保存剤が配合される。
【0075】
さらに、米国特許第5,869,079号に記載されるような放出調節剤を注入物に含めることも可能である。放出調節剤の量は望まれる放出特性、その調節剤の活性、及び調節剤が無い場合のプロスタミドの放出特性に依存している。塩化ナトリウムや塩化カリウムなどの電解質も注入物に含めることができる。その緩衝剤や活性化剤が水を吸収しやすい場合は、それは放出加速剤としても作用する。親水性の添加物は、薬剤粒子を取り囲んでいる物質をより急速に溶解させ、露出されている薬剤の表面積が増え、放出速度を増大させるので、それによって、薬剤の生物腐食の速度が増大する。同様に、疎水性の緩衝剤や活性化剤はよりゆっくり溶解するので、薬剤粒子の露出を遅くし、それによって薬剤の生物腐食速度が遅くなる。いくつかの注入物においては、ビマトプロストと生物分解性ポリマーマトリクスで注入物は、眼に注入して以後、約3〜6ヶ月間、約0.1mg〜約0.5mgの範囲のビマトプロストを放出あるいは伝達することができる。注入物はロッド状あるいはウエハー状に構成することができる。ロッド状の注入物は720.mu.mノズルから押し出されたフィラメントから得ることができ、1mg寸法に切断される。ウエハー状の注入物は直径が約2.5mm、厚みが約0.127mm、そして重量が約1mgの円板状にすることができる。
【0076】
本明細書中で記載される注入物を作るためには、米国特許出願第10/837,260号に記載されているように、いろいろな技術を用いることができ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0077】
本発明による注入物は、例えば眼症状の少なくとも1つの徴候を緩和することによって、眼症状を治療するのに有効な量のプロスタミドを放出するように構成することができる。より詳細には、これらの注入物は開放隅角緑内障、眼圧上昇、慢性閉塞隅角緑内障、虹彩切開術を受けた患者、偽剥離性緑内障、そして色素性緑内障などの緑内障を治療する方法で用いることができる。プロスタミドを含有する注入物を眼の硝子体に注入することによって、プロスタミドが房水流を促進して、それによって眼圧を低下させると考えられている。
【0078】
本明細書中で開示される注入物は、米国特許出願第10/837,260号に記載されているような疾病あるいは状態を予防したり治療するために、プロスタミドあるいは上に述べたような追加的な治療剤を放出するように構成することもできる。
【0079】
1つの実施形態で、ここに開示されているような注入物がヒトあるいは動物の患者、好ましくは生きているヒトあるは動物の眼の後房部分に投与される。少なくとも1つの実施例においては、注入物は眼の網膜下腔にアクセスせずに投与される。例えば、患者を治療する方法は注入物を眼の後房に直接入れるステップを含んでいる。他の実施形態で、患者を治療する方法は、硝子体内注射、結膜下注射、テノン嚢下注射、球後注射、そして脈絡上注射の少なくとも1つの方法で注入物を患者に投与するステップを含んでいる。
【0080】
少なくとも1つの実施形態で、患者の眼の眼圧を低下させる方法は、ここで開示されているようなプロスタミドを含む注入物を、硝子体内注射、結膜下注射、テノン嚢下注射、球後注射、そして脈絡上注射の少なくとも1つの方法で注入物を患者に投与するステップを含んでいる。ヒトあるいは動物の眼の後部部分に組成物を注射するために、適当な寸法の針、例えば、22ゲージ針、27ゲージ針、28ゲージ針、あるいは30ゲージ針などの22−30ゲージの範囲の針を含んだ注射装置を効果的に用いることができる。注入物からプロスタミドが長期間放出されるので、注射を反復して行う必要性はそれほどない。
【0081】
さらに、眼症状を治療するための二重治療方式を用いる場合は、特にチモロール、ドルゾラミド、及びイアトプロストを含んだ組成物を局所的に投与するなど、眼球に追加的な治療薬を投与する1つ以上の追加的なステップを含んでもいい。
【0082】
いくつかの例では、注入物は、実質的にはビマトプロスト、その塩類、及びそれらの混合物と、生物分解性ポリマーマトリクスから成る治療成分を含む。その生物分解性ポリマーは実質的にはPLA、PLGA,あるいはその組み合わせから成る。眼に入れられると、その注入物はビマトプロストの約40%〜約60%を放出して、眼に入れてから約1日以内にビマトプロストの付加投薬量を達成する。その後、その注入物は1日あたりビマトプロストの約1%〜約2%を放出して、治療効果を持続させる。そうした注入物は眼圧を低下させ、例えば、数ヶ月間、潜在的名可能性としては1年か2年間は眼圧を15mm Hg未満に維持する効果を発揮することができる。
【0083】
本明細書中に開示されているその他の注入物は、眼に入れられてから2日間以内にその注入物から放出されるプロスタミドの量が、その注入物内のプロスタミドの総量の約95%未満となるように構成することができる。いくつかの注入物では、眼に入れられてから約1週間が経過するまでは、プロスタミドの95%が放出されない。また、いくつかの注入物では、眼に入れられてから約1日以内にプロスタミドの約50%が放出され、そして約2%が眼に入れられてから約1ヶ月間の間に放出される。他の注入物では、プロスタミドの約50%が眼に入れられてから約1日以内に放出され、そして、約1%が眼に入れられてから約2ヶ月間にわたり放出される。
【0084】
以下の実施例は、本発明を説明するためのものである。
【0085】
実施例1 初期放出量が高い眼房内ビマトプロスト注入物
ビマトプロストを30%、R203Sを45%、R202Hを20%、PEG3350を5%を含むビマトプロスト注入物を総重量で900mg(薬剤負荷270ug)製造した。この注入物のイン・ビトロでの放出速度を
図8に示す。この注入物は、最初に30日間に約70%を放出する。薬剤負荷が270ugの注入物は最初の30日間に189ug、あるいは1日あたり6.3ugを放出する。その注入物内の薬剤の残量(81ug)が次の4ヶ月間にわたり放出される(つまり、1日あたり675ng)。
正常なビーグル犬を通常の麻酔にかけ、3mm幅のナイフを右目の前房に挿入した。眼房内ビマトプロスト注入物をその前眼房に入れたところ、24時間以内に下角内に定着した。
図5に示すように、IOPは基底レベルから約60%程度低下して、この状態が少なくとも5ヶ月間持続された(
図5参照)。
図4に示されているように、上強膜血管が拡張される。
【0086】
実施例2 初期放出量が低い眼房内ビマトプロスト注入物
ビマトプロストを20%、R203Sを45%、R202Hを10%、RG752Sを20%,PEG3350を5%を含むビマトプロスト注入物を総重量300ugあるいは600ug(薬剤負荷がそれぞれ60あるいは120ug)製造した。この注入物のイン・ビトロでの放出量を
図9に示す。この注入物は最初の1ヶ月間にわたり薬剤負荷の約15%を放出する。60ug薬剤負荷の注入物は最初の30日間に9ug、あるいは1日当たり300ngを放出し、その後、60日間にわたり約50ug、あるいは1日当たり約700ngの放出を行う。実施例1の場合と同様、上強膜の血管の拡張が認められた。
【0087】
実施例3
以下の実験は、6匹のビーグル犬に以下で記載する注入物を挿入して行った。
注入物の処方:
アプリケータ内に長さ2mmのビマトプロスト注入物を入れたもの(20%ビマトプロスト、45%R203s、20%RG752s、10%R202H、5%PEG−3350)
アプリケータに長さ2mmの偽薬注入物を入れたもの(56.25%R203s、25%RG752s、12.25%R202H、6.25%PEG−3350)
イヌ1、2、3: API注入物眼房内OD(長さ2mmの注入物1個)、OS偽薬注入物
イヌ4、5、6: API注入物眼房内OD(長さ2mmの注入物2個)、OS偽薬注入物
【表1】
外科的手順:注入物を25G UTW針を有する特注アプリケータに装填した。通常の麻酔をかけてから、正常なビーグル犬の前眼房に角膜経由で注入物を挿入して、傷を自然に治癒させた。アプリケータは米国特許出願第20080033351号に掲載されているものであり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
実験結果を
図10及び11に示す。眼房内ビマトプロスト注入物によって、最大40%のIOP低下が認められ、2つの注入物を用いた例ではほとんどの時点でより大きな平均IOP低下が観察される。
図6に示すように、この実施例3では、活性注入物を用いた動物では上強膜流出血管の拡張は認められたが、実施例1で用いられたより速く薬剤を放出する注入物で治療された動物と比較すると、その拡張量は低かった。
【0088】
実施例4
事前に装填したアプリケータを用いて、1回の投与時に4匹のイヌに注入物を投与した(なお、米国特許出願第20080033351号に開示されているBimato IC DDSはアミドを放出するだけである。
図12と13に、注入物の投与量を変えた場合のPKが示されている。なお、用量反応はあり、特にICBでの優れた種はアミドである)。
【0089】
本発明は上に例示した実施形態に限定されるものではない。これらの実施形態は本発明の具体的な態様を説明することだけを意図して開示するものである。ここに述べられているものに加えて、本発明の種々の修正・変更が可能であることは、請求項を含め、最初に提出した明細書を注意深く読めば、当業者には明らかであろう。特に、上に開示した本発明は、活性薬学成分(API)としてプロスタミドを開示しているが、プロスタグランジン(あるいは患者の上昇したIOPを低下させるのに有効な薬品)あるいはそのプロドラッグをAPIとして用いることができる。注入物内のプロスタグランジンやそのプロドラッグとしては、1種類以上のプロスタグランジンやそのプロドラッグを含むことができる。これらの注入物で、プロスタグランジンやそのプロドラッグは以下の化学式
【化3】
[式中、点線で示してある結合部分はシス(cis)あるいはトランス配置の単結合あるいは二重結合を示しており、
Aは2〜6個の炭素原子を有するアルキレン又はアルケニレン基で、この基は1つ以上のオキシド基が介在していてもよく、1つ以上のヒドロキシ、オキソ、アルコキシ、あるいはアルキルカルボキシ基で置換されていてもよく、該アルキル基は1〜6個の炭素原子を含んでおり;
Bは3〜7個の炭素原子を有するシクロアルキル基、または4〜10個の炭素原子を有し、ヘテロ原子が窒素、酸素及び硫黄原子から成る群から選択される、ハイドロカルビルアリール及びヘテロアリールから成る群から選択されるアリール基であり;
Xは−N(R
4)
2で、R
4は水素と1〜6個の炭素原子を有する低級アルキル基から成る群から独立に選択され;
Zは=Oであり、R
1及びR
2のうちの1つは=O、−OHあるいは−O(CO)R
6基であり、他方が−OHあるいは−O(CO)R
6基であるか、あるいはR
1が=Oで、R
2がHであって、R
6は1〜約20個程度の炭素原子を有する飽和あるいは不飽和非環式炭化水素基か、あるいは、−(CH
2)mR
7で、mは0〜10であり、R
7が3〜7個の炭素原子を有するシクロアルキル基であるか、または上記のハイドロカルビルアリールかヘテロアリールである]
で示される化合物、あるいはその薬学的に許容される塩を含んでいる。
【0090】
好ましくは、プロスタグランジンやそのプロドラッグは以下の化学式(II)で示される構造を有している。
【化4】
[式中、yは0か1であり、xは0または1で、x+yは両方が1ではなく、Yはアルキル、ハロ、ニトロ、アミノ、チオール、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルカルボキシ、及びハロ置換アルキルから成る群から選択される基であり、前記アルキル基は1〜6個の炭素原子を含んでおり、nは0であるか、あるいは1〜3の範囲の整数であり、R
3は=Oあるいは−OH又は−O(CO)R
6基で、斜線部分はアルファ配置を示し、黒塗りの三角形はベータ配置を示している]。
【0091】
少なくとも1つのタイプの眼球内注入物において、上記プロスタグランジン・プロドラッグは、R
1,R
2及びR
3がOHであり、yは1であり、xは0であり、Xは(OC
3H
7)、例えば、シクロペンタン・ヘプテン−5−オイク酸−cis−2−(3α−ヒドロキシ−5−フェニルペンチル)−3,5−ジヒドロキシ,イソプロピル・エステル[1
α.,2
β.,3
α,5
α]、つまり、ラタノプロストである。
【0092】
少なくとも他の1つのタイプの眼球内注入物において、プロスタグランジン・プロドラッグは、R
1,R
2及びR
3がOHであり、yは0であり、xは1であり、YはCF
3であり、Xが(OC
3H
7)、例えば、シクロペンタン・ヘプテン−5−オイク酸−cis−2−(3α−ヒドロキシ−5−フェニルペンチル)−3,5−ジヒドロキシ,イソプロピル・エステル[1
α.,2
β.,3
α,5
α]、つまり、ラタノプロストである化合物を含む。
【0093】
あるいは、このプラスタグランジンはウノプロストンであってもよい。従って、この注入物はラタノプロスト、あるいはトラボプロスト、あるいはウノプロストンを含むか、実質的にそれらの成分から成るか、あるいはそれらの成分から成る。
【0094】
上に述べたようなすべての修正・変更は、添付する特許請求の範囲に規定される本発明の範囲内にある。