特許第6683847号(P6683847)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6683847強力でバランスのとれた双方向性プロモーター
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6683847
(24)【登録日】2020年3月30日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】強力でバランスのとれた双方向性プロモーター
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/85 20060101AFI20200413BHJP
   C12N 15/861 20060101ALI20200413BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20200413BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20200413BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20200413BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20200413BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20200413BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
   C12N15/85 ZZNA
   C12N15/861 Z
   C12N7/01
   A61K35/761
   A61P37/04
   A61P43/00 105
   A61K48/00
   A61K39/00 G
【請求項の数】17
【全頁数】51
(21)【出願番号】特願2018-566443(P2018-566443)
(86)(22)【出願日】2017年6月19日
(65)【公表番号】特表2019-521679(P2019-521679A)
(43)【公表日】2019年8月8日
(86)【国際出願番号】EP2017064952
(87)【国際公開番号】WO2017220499
(87)【国際公開日】20171228
【審査請求日】2018年12月18日
(31)【優先権主張番号】16175189.6
(32)【優先日】2016年6月20日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516257833
【氏名又は名称】ヤンセン ファッシンズ アンド プリベンション ベーフェー
【氏名又は名称原語表記】JANSSEN VACCINES & PREVENTION B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149010
【弁理士】
【氏名又は名称】星川 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ワンダーリッヒ,ケルスティン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェリンガ,ジョート
【審査官】 井関 めぐみ
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/175639(WO,A1)
【文献】 特表2002−503461(JP,A)
【文献】 特開2011−015685(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/025717(WO,A1)
【文献】 Gene Therapy,2003年,Vol.10,p.1941-1949
【文献】 Journal of General Virology,2014年,Vol.95,p.1574-1584
【文献】 Journal of Virology,2002年,Vol.76, No.18,p.9493-9504
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/85
A61K 35/761
A61K 39/00
A61K 48/00
A61P 37/04
A61P 43/00
C12N 7/01
C12N 15/861
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの方向において第1の導入遺伝子に、かつ逆方向において第2の導入遺伝子に作動可能に連結された双方向性プロモーター(hCMV−rhCMVプロモーター)を含む組換え核酸分子であって、前記hCMV−rhCMVプロモーターは、
(i)エンハンサーと、その両側に配置されている、
(ii)前記エンハンサーの一方の側のヒトサイトメガロウイルス主要最初期プロモーター(hCMVプロモーター)と、
(iii)前記エンハンサーの他方の側のアカゲザルサイトメガロウイルス主要最初期プロモーター(rhCMVプロモーター)と
を含み、
(iv)前記第1の導入遺伝子は、前記hCMVプロモーターの下流に位置し、および
(v)前記第2の導入遺伝子は、前記rhCMVプロモーターの下流に位置する、組換え核酸分子。
【請求項2】
前記エンハンサーは、ヒトサイトメガロウイルス主要最初期エンハンサー(hCMVエンハンサー)である、請求項1に記載の組換え核酸分子。
【請求項3】
前記第1および第2の導入遺伝子は、異なり、およびそれらの少なくとも1つは、抗原をコードする、請求項1または2に記載の組換え核酸分子。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の組換え核酸分子を含む組換えベクターまたは組換えウイルス。
【請求項5】
プラスミドベクターである、請求項4に記載の組換えベクター。
【請求項6】
アデノウイルスである、請求項4に記載の組換えウイルス。
【請求項7】
前記アデノウイルスは、E1領域に欠失を有する、請求項6に記載の組換えアデノウイルス。
【請求項8】
ヒトアデノウイルス血清型35またはヒトアデノウイルス血清型26である、請求項6または7に記載の組換えアデノウイルス。
【請求項9】
遺伝的に安定な組換えアデノウイルスであって、前記アデノウイルスが標的細胞に感染すると、それぞれが強力に発現される第1および第2の導入遺伝子を含む遺伝的に安定な組換えアデノウイルスを製造する方法であって、
a)1つの方向において第1の導入遺伝子に、かつ逆方向において第2の導入遺伝子に作動可能に連結された請求項1に記載の双方向性hCMV−rhCMVプロモーターを含むコンストラクトを調製する工程と、
b)前記コンストラクトを前記組換えアデノウイルスのゲノムに組み込む工程と
を含む方法。
【請求項10】
前記エンハンサーは、hCMVエンハンサーである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記組換えアデノウイルスは、そのゲノムのE1領域に欠失を有する、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1および第2の導入遺伝子は、異なり、およびそれらの少なくとも1つは、抗原をコードする、請求項9〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記組換えアデノウイルスは、ヒトアデノウイルス血清型35またはヒトアデノウイルス血清型26である、請求項9〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
細胞内で少なくとも2つの導入遺伝子を発現させるインビトロまたはエクスビボ方法であって、請求項4〜8のいずれか一項に記載の組換えベクターまたは組換えウイルスを細胞に提供する工程を含む方法。
【請求項15】
少なくとも2つの抗原に対する免疫応答を誘導する方法で用いるための医薬組成物であって、請求項4〜8のいずれか一項に記載の組換えベクターまたは組換えウイルスを含み、前記方法が、前記組換えベクターまたは組換えウイルスを対象に投与する工程を含む、医薬組成物。
【請求項16】
請求項6〜8のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスのゲノムを含む組換えDNA分子。
【請求項17】
請求項4〜8のいずれか一項に記載の組換えベクターまたは組換えウイルスと、薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワクチン接種および遺伝子治療における用途のための医薬分野および遺伝子送達分野に関する。より詳細には、本発明は、プラスミドベクター、ウイルスベクターおよび組換えウイルスなどの組換えベクターによる2つの導入遺伝子の発現のための強力でバランスのとれた双方向性プロモーターに関する。
【背景技術】
【0002】
組換えベクターは、異種タンパク質の発現のための種々の分子生物学的用途(例えば、遺伝子治療およびワクチン接種におけるそれらの適用を含む)において広く使用されている。これらの遺伝子治療およびワクチン接種の用途では、ウイルスベクターなどのベクターは、宿主細胞に導入すべき目的の1つまたは複数の遺伝子のキャリアとして使用される。例えば、ウイルスベクターは、所望の抗原をコードする遺伝子またはその一部を発現させて、免疫応答を惹起するために使用され得る。
【0003】
最も初期のウイルスベクターは、一般に1つの導入遺伝子のみを含み、および多くのストラテジーが初期世代ベクターについて発表されている。例えば、発表されたストラテジーは、様々な異なるアデノウイルス(rAd)ベクターの使用を報告しており、導入遺伝子発現カセットがrAdの異なる領域、例えばE1領域、E3領域、またはE4と右ITRとの間などに配置され得ることを示している。しかし、ワクチンの目的では、保護および広いカバー範囲を達成するために、2つ以上の抗原または異なる株からの同じ抗原が必要であることが多い。したがって、場合により、1つのベクターから少なくとも2つの抗原を発現させることが望ましい。1つのウイルスベクターに2つの抗原をコードさせるための様々な方法が記載されている。
【0004】
rAdを用いる最初の2抗原法では、1つの抗原発現カセットがE1領域に配置され、第2のカセットがE3領域に配置された(例えば、(Vogels et al.,2007))。rAdを用いる異なる2抗原法では、1つの抗原発現カセットがE1に配置され、第2のカセットがE4と右ITRとの間に配置された(例えば、(Holman et al.,2007;Pham et al.,2009;Schepp−Berglind et al.,2007))。rAdを用いる別の2抗原法は、組換えによる遺伝的不安定性を防止するために、2つの異なるプロモーター配列を用いてヘッドトゥーテール方式でE1領域に配置された2つの抗原発現カセットを使用することである(例えば、(Belousova et al.,2006;C.D.Harro et al.,2009))。
【0005】
2抗原法の別の例は、プラス鎖RNAウイルスの配列内リボソーム進入部位(IRES)、例えば脳心筋炎ウイルス(EMCV)に由来するものを使用して、2つのタンパク質に翻訳される単一の転写物を産生することである(例えば、(Amendola,Venneri,Biffi,Vigna,&Naldini,2005;Na&Fan,2010))。他の例としては、宿主細胞スプライシング機構の利用、または口蹄疫2A配列などのプラス鎖RNAウイルスに由来する「切断」ペプチドもしくは他のウイルスに由来する均等物の使用による、2つのタンパク質に切断されるポリタンパク質の産生が挙げられる。発表された報告によると、これらのストラテジーは、全て等しく有用でありかつ成功し得る。
【0006】
代替的に、双方向性プロモーターの使用は、ウイルスベクターを用いて2つの抗原を発現するための別の方法である。例えば、レンチウイルスベクター(Heilbronn&Weger.2010)およびアデノウイルスベクター(Na&Fan,2010;Post&Van Meir,2010;Robbins&Ghivizzani,1998;Walter&Stein,2000)について異なる双方向性プロモーターが記載されている。
【0007】
一般に、2つの異なるタイプの双方向性プロモーター、双方向特性を有する天然に存在する配列、および合成的に設計された双方向性プロモーターが使用のために知られている。双方向特性を有する天然に存在する配列は、ウイルス、植物または哺乳動物ゲノムにおいて見出すことができる(Andrianaki,Siapati,Hirata,Russell,&Vassilopoulos,2010;Barski,Siller−Lopez,Bohren,Gabbay,&Aguilar−Cordova,2004)。例えば、ヒトゲノム中の多くのプロモーターがいくつかの双方向特性を有することが報告されている。双方向特性を有するヒトプロモーターは、GABP部位の過剰提示によって特徴付けられる(Collins,Kobayashi,Nguyen,Trinklein,&Myers,2007)。
【0008】
天然に存在する配列とは対照的に、合成による双方向性プロモーターは、異なる一方向性プロモーターの望ましい特性を利用するように設計することができる。例えば、Amendolaらは、ヒトサイトメガロウイルス由来の最小プロモーター(minCMV)をヒトホスホグリセリン酸キナーゼプロモーター(PGK)またはヒトユビキチンCプロモーター(UBI C)と組み合わせることにより、レンチウイルスベクターにおいて使用するための2つの異なる合成双方向性プロモーターを作製した(Amendola et al.,2005)。双方向性プロモーターを構築するために、1つのエンハンサーのみを使用して、一方向性プロモーターが逆向き(ヘッドトゥーヘッド)に構成された。Amendolaらによれば、強力な最小プロモーターをこの構成で完全な哺乳動物プロモーターと組み合わせると、両側からの協調発現がもたらされた。新たに作製された多価ベクターの重要な特徴としては、例えば、アップスケーリング中の遺伝的安定性、大規模でのベクターの生産性、両方の抗原の強力な発現、両方の抗原のバランスのとれた発現、および挿入された発現カセットから発現された両方の抗原のサイズ制限が挙げられる。
【0009】
以前に開示された方法と比較して特に良好な結果が得られた、最近記載されたストラテジーでは、双方向性マウスサイトメガロウイルス(mCMV)プロモーターを使用して2つの導入遺伝子を発現した(国際公開第2016/166088号パンフレット)。そこでは、第1の導入遺伝子は、1つの方向において双方向性mCMVプロモーターに作動可能に連結され、第2の導入遺伝子は、逆方向において双方向性mCMVプロモーターに作動可能に連結された。双方向性mCMVプロモーターを有するrAdは、遺伝的に安定であると決定され、単一の導入遺伝子のみを有するrAdに匹敵する遺伝的安定性を提供した。さらに、T細胞およびB細胞応答に関する発現抗原の免疫原性のELISPOTおよびELISA分析に基づいて、両方の導入遺伝子は、両方の抗原に対する免疫原性応答を生成するのに十分に発現することがわかった。したがって、mCMV双方向性プロモーターは、以前に記載されたいくつかの他のストラテジーよりも優れていることが記載された。しかし、mCMVプロモーターの両側の発現レベルのバランスをさらに改善し得ることがわかった。双方向性mCMVプロモーターの右側(3’末端)に位置する抗原の発現は、プロモーターの左側(5’末端)に位置する抗原と比較して約10倍高かった。2つのコードされた抗原の発現における不均衡は、より低く発現された抗原と比較して、高度に発現された抗原に対してより強い免疫応答をもたらす。この種の差次的発現は、特定の用途では有用であり得るが、他の用途では、mCMVプロモーターのいくつかの利点を、よりバランスのとれた発現、すなわち双方向性mCMVプロモーターおよび文献に記載されている他の双方向性プロモーターよりも強力でかつバランスのとれた双方向性プロモーターと組み合わせるストラテジーを有することも望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、強力であり、比較的短く、同一配列の長い内部ストレッチを有さないかまたはそれが限定されている、mCMV双方向性プロモーターと比較して両側の発現バランスが改善された双方向性プロモーターを特定し、かつ2つの導入遺伝子の強力でバランスのとれた発現により、遺伝的に安定な組換えウイルスを提供することが依然として要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、双方向性hCMV−rhCMVプロモーターを含む組換え核酸分子と、双方向性hCMV−rhCMVプロモーターを含むベクター、例えばプラスミドベクター、ウイルスベクターおよびウイルスとを提供する。本発明の組換えベクターは、2つの導入遺伝子を含み、hCMV−rhCMV双方向性プロモーターのhCMV部分およびrhCMV部分の転写方向(5’から3’へ)は、互いから離れる方向に向かい(ヘッドトゥーヘッド配置)、第1の導入遺伝子は、左側で1つの方向において作動可能に連結され、発現は、双方向性プロモーターのhCMV部分によって制御され、および第2の導入遺伝子は、右側で逆方向において作動可能に連結され、発現は、双方向性プロモーターのrhCMV部分によって制御される。hCMVエンハンサーは、2つの異なるプロモーター間の中間において、hCMVプロモーター部分の方向を向いて配置される。エンハンサーは,配向非依存性であり得るため、このエンハンサーは、双方向性プロモーターのhCMV部分およびrhCMV部分に作動可能に連結された両方の導入遺伝子の協調発現を提供する。例えば、図1Dを参照されたい。図1Dは、代表的なhCMV−rhCMVプロモーターの異なる構築ブロックの同一性および配向を示す。好ましくは、本発明によるhCMV−rhCMVプロモーターは、配列番号4に対して少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、および最大100%同一であるヌクレオチド配列を含む。
【0012】
特定の実施形態では、組換えウイルスおよび組換えウイルスベクターは、組換えアデノウイルス(rAd)およびrAdベクターである。本発明の双方向性hCMV−rhCMVプロモーターで生成されたrAdは、遺伝的に安定しており、継代13(p13)に至るまでPCR分析によって欠失バンドは検出されず、したがって単一導入遺伝子のみを有するウイルスに匹敵する遺伝的安定性を提供する。さらに、双方向性hCMV−rhCMVプロモーターは、わずかに943個のヌクレオチドを有する比較的短い双方向性プロモーターであり、2つの導入遺伝子の強力で非常にバランスのとれた発現を提供する。したがって、本発明の双方向性hCMV−rhCMVプロモーターは、組換え(ウイルス)ベクターを用いた遺伝子治療およびワクチン用途における使用に好適であり、特に非常にバランスのとれた強力な発現が重要である場合、および/または小サイズの双方向性hCMV−rhCMVプロモーターが有用である場合に好適である。
【0013】
一般的なかつ好ましい実施形態は、本明細書に添付の独立請求項および従属請求項によってそれぞれ定義され、簡潔にするために、それらは、参照により本明細書に組み込まれる。本発明の様々な態様の他の好ましい実施形態、特徴および利点は、下の詳細な説明と添付の図面とから明らかになるであろう。
【0014】
一実施形態では、本発明は、左側のhCMVプロモーターおよび右側のrhCMVプロモーターを含む双方向性hCMV−rhCMVプロモーターを提供し、この双方向性hCMV−rhCMVプロモーターは、左側で1つの方向において第1の導入遺伝子に作動可能に連結され、およびこの双方向性hCMV−rhCMVプロモーターは、右側で逆方向において第2の導入遺伝子に作動可能に連結されている。
【0015】
別の実施形態では、本発明は、第1および第2の導入遺伝子を含む組換えウイルスを製造する方法であって、1つの方向において第1の導入遺伝子に、かつ逆方向において第2の導入遺伝子に作動可能に連結された双方向性hCMV−rhCMVプロモーターを含むコンストラクトを調製する工程と、前記コンストラクトを組換えウイルスのゲノムに組み込む工程とを含む方法も提供する。
【0016】
特定の実施形態では、組換えウイルスは、組換えアデノウイルスである。
【0017】
特定の実施形態では、組換えアデノウイルスは、E1領域に欠失を有し、かつ特定の実施形態では、このE1領域に双方向性hCMV−rhCMVプロモーターと第1および第2の導入遺伝子とを含む。代替的に、組換えアデノウイルスの他の領域も使用され得る。例えば、双方向性プロモーター発現カセットはまた、組換えアデノウイルスのE4領域と右ITRとの間のゲノムの右端に配置され得る。
【0018】
特定の実施形態では、第1および第2の導入遺伝子は、異なり、およびそれらの少なくとも1つは、抗原をコードする。特定の実施形態では、両方は、異なる抗原をコードする。
【0019】
特定の実施形態では、アデノウイルスは、ヒトアデノウイルス血清型26またはヒトアデノウイルス血清型35である。
【0020】
別の実施形態では、本発明は、細胞内で少なくとも2つの導入遺伝子を発現させる方法であって、本発明による組換えベクターを細胞に提供する工程を含む方法も提供する。
【0021】
別の実施形態では、本発明は、少なくとも2つの抗原に対する免疫応答を誘導する方法であって、本発明による組換えベクターを対象に投与する工程を含む方法も提供する。
【0022】
別の実施形態では、本発明は、本発明による組換えアデノウイルスのゲノムを含む組換えDNA分子も提供する。
【0023】
別の実施形態では、本発明は、本発明による組換えアデノウイルスなどの組換えベクターと、薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む医薬組成物も提供する。特定の実施形態では、医薬組成物は、ワクチンである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1-1】試験した双方向性プロモーターコンストラクトの概略図(異なる双方向性プロモーター配列の構築ブロックの同一性および配向についての注釈を含む)である。P:プロモーター、Enh:エンハンサー、I:イントロン。
図1-2】(上記の通り。)
図1-3】(上記の通り。)
図1-4】(上記の通り。)
図1-5】(上記の通り。)
図2】HEK293細胞における一過性トランスフェクションで評価した、異なる双方向性プロモーターコンストラクトによるルシフェラーゼおよびeGFPの発現である。ルシフェラーゼ発現は、相対発光量(RLU)として測定し、eGFP発現は、FACSにより平均蛍光強度(MFI)として測定する。異なるプロモーターコンストラクトをスクリーニングする3つの異なる実験の結果を示す。異なる双方向性プロモーターの左側からのルシフェラーゼ発現および右側からのeGFP発現の結果の棒グラフを示す。陽性対照:一方向性hCMVプロモーターの制御下のルシフェラーゼまたはeGFP;非トランスフェクト細胞を陰性対照として使用する。
図3】(A)pshuttle26における双方向性プロモーターhCMV−rhCMV用の双方向性発現カセットの構成(双方向性プロモーターコンストラクトの両側に導入遺伝子を挿入するために使用される制限部位の同一性および位置を含む)である。P:プロモーター、Enh:エンハンサー、TG:導入遺伝子、pA:SV40(右側)または牛成長ホルモン(BGH)(左側)に由来するポリアデニル化シグナル。プラスミドベクターpshuttle26における表示。同じ双方向性発現カセット構成をpAdapt35で使用した。(B)hCMV−rhCMV双方向性プロモーターを示す概略図(構築ブロックのヌクレオチド位置を含む)である。矢印は、転写の方向を表す。
図4】A549細胞に1000VP/細胞で感染させたAd26rAdベクター(A)およびAd35rAdベクター(B)における双方向性プロモーターコンストラクトの左側または右側におけるルシフェラーゼおよびeGFP導入遺伝子の発現である。ルシフェラーゼ発現は、相対発光量(RLU)として測定し、eGFP発現は、FACSにより平均蛍光強度(MFI)として測定する。異なるhCMV−rhCMV双方向性プロモーターコンストラクトについての結果を、一方向性hCMVプロモーターの制御下でのルシフェラーゼまたはeGFPについての100VP/細胞および1000VP/細胞の陽性対照ならびにエンプティベクターに感染させた細胞と比較する。Ad26rAdベクターについて、hCMV−rhCMVを双方向性mCMVプロモーターとさらに比較する。
図5】E1領域に双方向性hCMV−rhCMVプロモーターを保有し、双方向性hCMV−rhCMVプロモーターの右側または左側にeGFPおよびルシフェラーゼをコードするAd26ベクターゲノム上での、連続増殖とそれに続くPCRによる遺伝的安定性試験である。パネルの上から下に、PER.C6細胞におけるP5、P10、およびP13での連続増殖後の1ベクター当たり5つのプラークについてのPCR産物を示す。各パネルのレーン1〜5は、左側にルシフェラーゼ、右側にeGFPを有する双方向性hCMV−rhCMVプロモーターを示す。各パネルのレーン6〜10は、左側にeGFP、右側にルシフェラーゼを有する双方向性hCMV−rhCMVプロモーターを示す。レーン11は、kBマーカーを示す。レーン12は、Ad26.Luc.hCMV−rhCMV.eGFPのプラスミド陽性対照を示す。レーン13は、rAd26.eGFP.hCMV−rhCMV.Lucのプラスミド陽性対照を示す。レーン14は、導入遺伝子を含まない発現カセットのPCR産物サイズのプラスミド対照を示す。レーン15は、陰性水PCR対照を示す。ラベル表示:P5、P10、P13:ウイルス継代数。予想されるPCR産物以外の追加のバンドは、非特異的PCR産物である。注:欠失バンドの欠如は露出過多の画像で確認された。
【発明を実施するための形態】
【0025】
新しい双方向性プロモーターコンストラクトの強度およびバランスを比較した実験結果を本明細書に記載する。結果は、双方向性hCMV−rhCMVプロモーターが、HEK293細胞におけるpAdAptプラスミドベクターによる一過性トランスフェクション、ならびに1つの方向において双方向性hCMV−rhCMVプロモーターに作動可能に連結された第1の導入遺伝子、および逆方向において双方向性hCMV−rhCMVプロモーターに作動可能に連結された第2の導入遺伝子を有する双方向性hCMV−rhCMVプロモーターを含むrAd26およびrAd35によるウイルス感染に基づいて、2つの導入遺伝子の強力かつバランスのとれた発現を提供することを示す。双方向性hCMV−rhCMVプロモーターはまた、わずかに943個のヌクレオチドを有する比較的短い双方向性プロモーターである。さらに、双方向性hCMV−rhCMVプロモーターを有するrAdは、遺伝的に安定しており、継代13(p13)に至るまでPCR分析によって欠失バンドは検出されず、したがって単一導入遺伝子のみを有するウイルスに匹敵する遺伝的安定性を提供する。したがって、双方向性hCMV−rhCMVプロモーターを有するrAdは、非常にバランスのとれた強力な発現が重要である場合、および/または小サイズの双方向性hCMV−rhCMVプロモーターが、例えばサイズが限られたベクターまたはウイルスゲノム中に導入遺伝子のための空間をより多く空けておくために他のより長い双方向性プロモーターと比較して有用である場合の遺伝子治療およびワクチン用途における使用に好適である。
【0026】
したがって、本発明は、1つの方向において第1の導入遺伝子に作動可能に連結され、かつ逆方向において第2の導入遺伝子に作動可能に連結された双方向性hCMV−rhCMV双方向性プロモーターを含む組換え核酸分子であって、hCMV−rhCMV双方向性プロモーターのhCMV部分およびrhCMV部分の転写方向(5’から3’へ)は、互いから離れる方向に向かい、左側からの発現は、双方向性プロモーターのhCMV部分によって制御され、および右側からの発現は、双方向性プロモーターのrhCMV部分によって制御される、組換え核酸分子に関する。特定の実施形態では、本発明は、細胞において2つの導入遺伝子を発現するための、双方向性hCMV−rhCMVプロモーターを含むベクター、ウイルスベクター、およびウイルスの使用に関する。
【0027】
特定の実施形態では、本発明は、宿主細胞による異種タンパク質の産生を可能にするために使用するプラスミドベクターに関する。例えば、双方向性hCMV−rhCMVプロモーターを含むプラスミドベクターは、異種多サブユニットタンパク質複合体の2つの異なる成分を発現するために使用され得る。このようなプラスミドベクターは、例えば、(1)双方向性hCMV−rhCMVプロモーター、(2)各導入遺伝子のリボソーム結合部位をmRNAに提供する配列、(3)各導入遺伝子のコード領域、すなわち所望のポリペプチドをコードするヌクレオチドの配列、(4)翻訳開始のための各導入遺伝子のコザックコンセンサス配列、(5)各導入遺伝子のコード全体が読み取られたときに翻訳を終結させる各導入遺伝子の終止配列、および(6)ベクターがゲノムに直接挿入されない場合、ベクター全体が細胞内に一旦再生されることを可能にする複製起点を含むDNA配列であり得る。その後、例えば、トランスフェクションまたはエレクトロポレーションにより、ベクターを組み込むように宿主細胞を誘導し、宿主細胞の機能の一部として2つの導入遺伝子を発現するように宿主細胞を増殖させる。
【0028】
特定の実施形態では、本発明は、双方向性hCMV−rhCMVプロモーターを含むrAdおよびrAdベクター、ならびにrAdおよびrAdベクターを作製および使用する方法に関し、ここで、rAdおよびrAdベクターは、双方向性hCMV−rhCMVプロモーターおよび2つの導入遺伝子を含み、第1の導入遺伝子は、1つの方向において双方向性hCMV−rhCMVプロモーターに作動可能に連結され、および第2の導入遺伝子は、逆方向において双方向性hCMV−rhCMVプロモーターに作動可能に連結されている。
【0029】
本発明のrAdは、大規模な量またはバッチで製造され得る。rAdの「バッチ」は、単一製造容器において1回の製造工程で製造される組成物であり、または代替的に単一容器(例えば、バイオリアクター、バッグ、フラスコ、ボトル、複数回投与バイアル、単回投与バイアル、シリンジなど)に含まれる組成物中の複数のrAd粒子を指し得る。本発明によるrAdのバッチまたは本発明によるrAdを含む組成物は、好ましくは、少なくとも10個のrAd粒子を含み、特定の実施形態では、少なくとも10、10、1010、1011、1012、1013、1014、1015、1016、1017、1018個またはそれを超えるrAd粒子、最大で1020個のrAd粒子を含む(例えば、単回製造工程において大規模バイオリアクター内で製造される場合)。バッチまたは組成物は、rAd以外のさらなる関連する成分を含んでもよく、または含まなくてもよい。
【0030】
本明細書で使用される場合、組換えアデノウイルスの「組換え」という用語は、野生型アデノウイルスとは対照的に、人の手によって改変されていることを意味し、例えば異種遺伝子、遺伝子群、またはその一部、および双方向性hCMV−rhCMVプロモーターを含む。
【0031】
本明細書中の配列は、当該技術分野で慣用されているように5’から3’の方向で示される。
【0032】
「アデノウイルスカプシドタンパク質」は、特定のアデノウイルスの血清型および/または向性の決定に関与する、アデノウイルスのカプシドのタンパク質を指す。アデノウイルスカプシドタンパク質は、一般に、繊維、ペントンおよび/またはヘキソンタンパク質を含む。本発明による特定の血清型の(または「それをベースとする」)rAdは、通常、その特定の血清型の繊維、ペントンおよび/またはヘキソンタンパク質を含み、好ましくはその特定の血清型の繊維、ペントンおよびヘキソンタンパク質を含む。これらのタンパク質は、一般に、rAdのゲノムによってコードされる。特定の血清型のrAdは、任意選択的に、他のアデノウイルス血清型に由来する他のタンパク質を含有し、かつ/またはコードし得る。
【0033】
本明細書で使用される場合、rAdは、少なくとも配列において野生型からの誘導によってアデノウイルスを「ベースとする」。この誘導は、出発物質として野生型ゲノムまたはその一部を使用した分子クローニングにより達成することができる。野生型アデノウイルスゲノムの既知の配列を使用して、DNA合成および/または分子クローニングの分野のビジネスを有するサービス会社(例えば、GeneArt,GenScripts,Invitrogen,Eurofins)による日常的手順を用いて実施され得るDNA合成により、ゲノム(の一部)を新規に作製することも可能である。したがって、非限定的な例として、Ad35のヘキソン、ペントン、および繊維を含むrAdは、Ad35をベースとするrAdなどと見なされる。
【0034】
本発明のアデノウイルスベクターは、rAdベクターと称される。rAdベクターの調製は、当該技術分野でよく知られている。
【0035】
特定の実施形態では、本発明によるrAdベクターは、ウイルス複製に必要なアデノウイルスゲノムのE1領域、例えばE1a領域および/またはE1b領域の少なくとも1つの必須遺伝子機能が欠損している。特定の実施形態では、本発明によるアデノウイルスベクターは、非必須E3領域の少なくとも一部が欠損している。特定の実施形態では、ベクターは、E1領域の少なくとも1つの必須遺伝子機能と、非必須E3領域の少なくとも一部とが欠損している。アデノウイルスベクターは、「多重欠損」であり得、これは、アデノウイルスベクターがアデノウイルスゲノムの2つ以上の領域のそれぞれにおいて1つ以上の必須遺伝子機能が欠損していることを意味する。例えば、前述のE1−欠損またはE1−、E3−欠損アデノウイルスベクターは、E4領域の少なくとも1つの必須遺伝子および/またはE2領域(例えば、E2A領域および/またはE2B領域)の少なくとも1つの必須遺伝子がさらに欠損していることができる。
【0036】
アデノウイルスベクター、それらを構築する方法、およびそれらを増殖させる方法は、当該技術分野でよく知られており、例えば米国特許第5,559,099号明細書、米国特許第5,837,511号明細書、米国特許第5,846,782号明細書、米国特許第5,851,806号明細書、米国特許第5,994,106号明細書、米国特許第5,994,128号明細書、米国特許第5,965,541号明細書、米国特許第5,981,225号明細書、米国特許第6,040,174号明細書、米国特許第6,020,191号明細書、米国特許第6,113,913号明細書、および米国特許第8,932,607号明細書、ならびにThomas Shenk,“Adenoviridae and their Replication”M.S.Horowitz,“Adenoviruses”,Chapters 67 and 68,respectively,in Virology,B.N.Fields et al.,eds.,3d ed.,Raven Press,Ltd.,New York(1996)、および本明細書で言及している他の参考文献に記載されている。一般に、アデノウイルスベクターの構築は、例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning,a Laboratory Manual,2d ed.,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989)、Watson et al.,Recombinant DNA,2d ed.,Scientific American Books(1992)、およびAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Wiley Interscience Publishers,NY(1995)、ならびに本明細書で言及している他の参考文献に記載されているものなど、当該技術分野でよく知られている標準的な分子生物学的手法の使用を含む。
【0037】
本発明によるアデノウイルスは、アデノウイルス科(Adenoviridae)に属し、好ましくはマストアデノウイルス属(Mastadenovirus)に属するものである。それは、ヒトアデノウイルスであり得るが、他の種に感染するアデノウイルス、例えば、限定はされないが、ウシアデノウイルス(例えば、ウシアデノウイルス3、BAdV3)、イヌアデノウイルス(例えば、CAdV2)、ブタアデノウイルス(例えば、PAdV3または5)、またはシミアンアデノウイルス(チンパンジーアデノウイルスまたはゴリラアデノウイルスなどのサルアデノウイルスおよび類人猿アデノウイルスを含む)でもあり得る。好ましくは、アデノウイルスは、ヒトアデノウイルス(HAdVまたはAdHu;本発明では、種の指示なしにAdに言及される場合にはヒトアデノウイルスを意味し、例えば、簡略表記の「Ad5」は、ヒトアデノウイルス血清型5であるHAdV5と同じものを意味する)、またはチンパンジーもしくはゴリラアデノウイルスなどのシミアンアデノウイルス(ChAd、AdCh、またはSAdV)である。
【0038】
最も進んだ研究は、ヒトアデノウイルスを用いて実施されており、本発明の特定の態様ではヒトアデノウイルスが好ましい。特定の好ましい実施形態では、本発明による組換えアデノウイルスは、ヒトアデノウイルスをベースとする。好ましい実施形態では、組換えアデノウイルスは、ヒトアデノウイルス血清型5、11、26、34、35、48、49または50をベースとする。本発明の特に好ましい実施形態によれば、アデノウイルスは、血清型26および35の1つのヒトアデノウイルスである。これらの血清型の利点は、ヒト集団における低い血清陽性率および/または低い既存の中和抗体力価である。rAd26ベクターの調製は、例えば、国際公開第2007/104792号パンフレットおよび(Abbink et al.,2007)に記載されている。Ad26のゲノム配列の例は、GenBankアクセッション番号EF153474および国際公開第2007/104792号パンフレットの配列番号1に見出される。rAd35ベクターの調製は、例えば、米国特許第7,270,811号明細書、国際公開第00/70071号パンフレットおよび(Vogels et al.,2003)に記載されている。Ad35のゲノム配列の例は、GenBankアクセッション番号AC_000019、および国際公開第00/70071号パンフレットの図6に見出される。
【0039】
シミアンアデノウイルスも、一般に、ヒト集団における低い血清陽性率および/または低い既存の中和抗体力価を有し、チンパンジーアデノウイルスベクターを使用した相当量の研究が報告されている(例えば、米国特許第6,083,716号明細書;ならびに国際公開第2005/071093号パンフレット;国際公開第2010/086189号パンフレット;および国際公開第2010085984号パンフレット;(Bangari&Mittal,2006;Cohen et al.,2002;Farina et al.,2001;Kobinger et al.,2006;Lasaro&Ertl,2009;Tatsis et al.,2007)。したがって、他の好ましい実施形態では、本発明による組換えアデノウイルスは、シミアンアデノウイルス、例えばチンパンジーアデノウイルスをベースとする。特定の実施形態では、組換えアデノウイルスは、シミアンアデノウイルス1、7、8、21、22、23、24、25、26、27.1、28.1、29、30、31.1、32、33、34、35.1、36、37.2、39、40.1、41.1、42.1、43、44、45、46、48、49、50またはSA7P型をベースとする。アカゲザルアデノウイルスベクターも有用な候補ベクターとして記載されている(例えば、(Abbink et al.,2015);国際公開第2014/078688号パンフレット)。したがって、他の好ましい実施形態では、本発明の組換えアデノウイルスは、アカゲザルアデノウイルス、例えば、非限定的な例であるRhAd51、RhAd52もしくはRhAd53(またはsAd4287、sAd4310AもしくはsAd4312;例えば、(Abbink et al.,2015)および国際公開第2014/078688号パンフレットを参照されたい)の1つをべーすとする。
【0040】
当業者であれば、アデノウイルスに加えて、他のウイルスも、本発明の双方向性プロモーターを使用するウイルスベクターとしての使用に好適であることを認識するであろう。例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、ポックスウイルスおよびレンチウイルスも本発明の双方向性プロモーターを含むように設計することができる。例えば、(Heilbronn&Weger,2010;Robbins&Ghivizzani,1998;Walther&Stein,2000)で論じられているような異なるベクターについての総説を参照されたい。
【0041】
上記のヒトおよび非ヒトアデノウイルスの大多数の配列は、知られており、その他については日常的な手順を用いて得ることができる。
【0042】
本発明による組換えアデノウイルスは、複製コンピテントまたは複製欠損であり得る。
【0043】
特定の実施形態では、アデノウイルスは、複製欠損であり、例えば、これは、このアデノウイルスがゲノムのE1領域に欠失を含むためである。「E1領域における欠失」は、野生型アデノウイルスと比較したときのこの領域における欠失を意味し、E1A、E1B 55KまたはE1B 21Kコード領域の少なくとも1つの欠失、好ましくはE1A、E1B 55K、およびE1B21Kコード領域の欠失を意味する。当業者に知られているように、アデノウイルスゲノムからの必須領域が欠失している場合、これらの領域でコードされる機能は、好ましくは、プロデューサー細胞によってトランスに提供される必要がある。すなわち、E1、E2および/またはE4領域の一部または全部がアデノウイルスから欠失した場合、これらは、プロデューサー細胞内、例えばそのゲノムに組み込まれ、またはいわゆるヘルパーアデノウイルスもしくはヘルパープラスミドの形態で存在する必要がある。アデノウイルスは、E3領域内にも欠失を有し得るが、これは複製に不要であるため、そのような欠失が補完される必要はない。
【0044】
使用し得るプロデューサー細胞(ときに当該技術分野および本明細書において「パッケージング細胞」、または「補完細胞」、または「宿主細胞」とも称される)は、所望のアデノウイルスが増殖できる任意のプロデューサー細胞であり得る。例えば、組換えアデノウイルスベクターの増殖は、アデノウイルス内の欠損を補完するプロデューサー細胞内で行われる。そのようなプロデューサー細胞は、好ましくは、それらのゲノム内に少なくとも1つのアデノウイルスE1配列を有し、それによりE1領域内に欠失を有する組換えアデノウイルスを補完することができる。E1によって不死化されたヒト網膜細胞、例えば911またはPER.C6細胞(例えば、米国特許第5,994,128号明細書を参照されたい)、E1−形質転換羊膜細胞(例えば、欧州特許第1230354号明細書を参照されたい)、E1−形質転換A549細胞(例えば、国際公開第98/39411号パンフレット、米国特許第5,891,690号明細書を参照されたい)、GH329:ヒーラ細胞(Gao,Engdahl,&Wilson,2000)、293細胞など、任意のE1−補完プロデューサー細胞を使用することができる。特定の実施形態では、プロデューサー細胞は、例えば、HEK293細胞、またはPER.C6細胞、または911細胞、またはIT293SF細胞などである。
【0045】
亜群CまたはEアデノウイルスに由来しないE1欠損アデノウイルスでは、非亜群CまたはEアデノウイルスのE4−orf6コード配列をAd5などのアデノウイルス亜群CのE4−orf6で交換することが好ましい。これにより、例えば、293細胞またはPER.C6細胞などのAd5のE1遺伝子を発現する、よく知られている相補的な細胞株におけるこのようなアデノウイルスの増殖が可能になる(例えば、(Havenga et al.,2006);国際公開第03/104467号パンフレットを参照されたい。これらは、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0046】
代替の実施形態では、アデノウイルスベクターに(例えば、Ad5の)異種E4orf6領域を入れる必要はないが、代わりにE1欠損非亜群CまたはEベクターを、例えばAd5からのE1とE4orf6との両方を発現する293−ORF6細胞株などのE1および適合性E4orf6の両方を発現する細胞株において増殖させる(例えば、293−ORF6細胞の生成について記載している(Brough,Lizonova,Hsu,Kulesa,&Kovesdi,1996);そのような細胞株を使用したE1欠失非亜群Cアデノウイルスベクターの生成についてそれぞれ記載している(Abrahamsen et al.,1997:Nan et al.,2003)を参照されたい)。
【0047】
代替的に、増殖させる血清型由来のE1を発現する補完細胞を使用することができる(例えば、国際公開第00/70071号パンフレット、国際公開第02/40665号パンフレットを参照されたい)。
【0048】
E1領域に欠失を有するAd35などの亜群Bアデノウイルスでは、例えば、pIX開始コドンの直接上流の243bp断片(Ad35ゲノム中のBsu36I制限部位によって5’末端で標識される)などのpIXオープンリーディングフレームの直接上流の166bpまたはこれを含む断片など、アデノウイルスのE1B 55Kオープンリーディングフレームの3’末端を保持することが好ましく、これは、pIX遺伝子のプロモーターがこの領域に部分的に存在するため、アデノウイルスの安定性を高めるからである(例えば、(Havenga et al.,2006);国際公開第2004/001032号パンフレットを参照されたい。これらは、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0049】
本発明のベクターまたは(アデノ)ウイルスにおける「異種核酸」(本明細書では「導入遺伝子」とも呼ばれる)は、ベクターまたは(アデノ)ウイルスに天然に存在しない核酸である。それは、例えば、標準的な分子生物学的手法によりベクターまたは(アデノ)ウイルス中に導入される。それは、特定の実施形態では、目的タンパク質またはその一部をコードし得る。それは、例えば、アデノウイルスベクターのE1またはE3欠失領域にクローニングされ得る。本発明の好ましい実施形態では、双方向性hCMV−rhCMVプロモーター制御下にある2つの導入遺伝子を有する発現カセットがアデノウイルスゲノムのE1領域に配置される。導入遺伝子は、一般に、発現制御配列に作動可能に連結される。これは、例えば、導入遺伝子をコードする核酸をプロモーターの制御下に置くことで行われ得る。導入遺伝子の発現のために多数のプロモーターを使用することができ、それらは、当業者に知られている。
【0050】
核酸の相同ストレッチが不安定性をもたらし得ることが知られている。例えば、1つのアデノウイルスベクターにおいて2つの同一の(hCMV)プロモーターを使用することが可能であると以前に報告されており、より広範な試験により、アデノウイルスの遺伝的不安定性につながるようであった(国際公開第2016/166088号パンフレット)。したがって、本発明者らは、アデノウイルスベクターにおける相同組換えによる欠失を防ぐために、双方向性プロモーターを設計する際、配列同一性の広範なストレッチを有するプロモーター構築ブロックの使用を最小限に抑えようとした。重要なことに、本発明のhCMV−rhCMV双方向性プロモーターによって調節される導入遺伝子を有するアデノウイルスベクターは、本明細書において遺伝的に安定であることが示された。
【0051】
本明細書で使用される場合、「プロモーター」、または「プロモーター領域」、または「プロモーターエレメント」という用語は、同義的に使用され、それが作動可能に連結している核酸配列の転写を制御する核酸配列断片(典型的にはDNAであるが、これに限定されるものではない)を指す。プロモーター領域は、RNAポリメラーゼの認識、結合、および転写開始に十分な特異的配列を含む。さらに、プロモーター領域は、任意選択的に、このRNAポリメラーゼの認識、結合、および転写開始活性を調節する配列を含み得る。これらの配列は、シス作用性であるかまたはトランス作用因子応答性であり得る。さらに、プロモーターは、調節の性質により、構成的であるかまたは調節的であり得る。
【0052】
プロモーターが核酸配列のストレッチから構築され、多くの場合、転写開始部位、RNAポリメラーゼの結合部位、TATAボックスなどの一般的転写因子結合部位、特異的転写因子結合部位などのエレメントまたは機能単位を核酸配列のストレッチ中に含むことを当業者は認識するであろう。エンハンサー、ときにプロモーター配列の末端のイントロンなどのさらなる調節配列も存在し得る。以下、本明細書では、このような機能単位を「構築ブロック」と称し、これらは、核酸のストレッチ中で組み合わされて機能的プロモーター配列を構築し得る。構築ブロックは、互いに直接隣接し得るが、プロモーター機能において直接的な役割を有さない核酸のストレッチによって分離され得る。当業者は、核酸ストレッチ中のヌクレオチドがプロモーター機能に関係しているか否かを試験する方法、および標準的な分子生物学的方法により、例えば、プロモーター活性を保持しながらその長さを最小化するためにまたは活性を最適化するために、構築ブロックおよび/またはヌクレオチドを所与のプロモーター配列から除去または付加する方法を知っている。
【0053】
本明細書中で使用される場合、「エンハンサー」または「エンハンサー構築ブロック」という用語は、遺伝子またはいくつかの遺伝子の転写を刺激または増強するためにタンパク質(アクチベータータンパク質)によって結合され得る調節DNA配列(例えば、50〜1500bp)を指す。これらのアクチベータータンパク質(別名、転写因子)は、メディエータ複合体と相互作用し、ポリメラーゼIIおよび基本転写因子を動員し、次に遺伝子の転写を開始する。エンハンサーは、一般にシス作用性であるが、それらが調節する1つまたは複数の遺伝子の開始部位の上流または下流に位置し得る。さらに、エンハンサーは、前方向または後方向であり得、かつ転写に影響を及ぼすために転写開始部位の近くに位置する必要はなく、いくつかは、開始部位の数十万塩基対上流または下流に位置することが見出されている。エンハンサーは、イントロン内に見出すこともできる。
【0054】
「双方向性プロモーター」という用語は、プロモーターエレメントの他にエンハンサーエレメントおよびイントロンエレメントを含み得、かつ本明細書中に記載される構築ブロックによって定義される連続遺伝子調節配列を指す。これらの双方向性プロモーターは、双方向性プロモーター配列の両側に配置された導入遺伝子の発現を制御する双方向様式で遺伝子を発現させる。例えば、本発明の双方向性プロモーターは、2つの異なる導入遺伝子の転写を双方向様式で指向し、かつ一方の側に第1のプロモーター構築ブロックが隣接し、他方の側に第2のプロモーター構築ブロックが隣接したエンハンサー構築ブロックを含み、その結果、導入遺伝子は、それぞれのプロモーター構築ブロックの下流に存在する。隣接するとは、構築ブロック間にいくつかの追加ヌクレオチドが存在し得るため、必ずしも直接的に接することを意味しないが、双方向性プロモーターがコンパクトなサイズを維持するように、あまり多くの追加配列が付加されないことが好ましいことに留意されたい。また、「上流」および「下流」という用語は、当該技術分野で一般に使用されている転写の方向に関するものであることにも留意されたい。例えば、慣例により、上流および下流という用語は、RNA転写が起こる5’から3’の方向に関する。上流は、RNA分子の5’末端方向であり、下流は、3’末端方向である。二本鎖DNAを考えると、上流は、対象の遺伝子のコード鎖の5’末端方向であり、下流は、3’末端方向である。DNAの逆平行性により、これは、鋳型鎖の3’末端が遺伝子の上流にあり、5’末端が下流にあることを意味する。例えば、図1Dを参照されたい。図1Dは、ヒトサイトメガロウイルス主要最初期エンハンサー(hCMVエンハンサー)をエンハンサー構築ブロックとして含み、その一方の側に第1プロモーター構築ブロックとしてヒトサイトメガロウイルス主要最初期プロモーター(hCMV)が隣接し、他方の側に第2のプロモーター構築ブロックとしてアカゲザルCMVプロモーター(rhCMV)が隣接している、好ましい双方向性hCMV−rhCMVプロモーターを示す。本発明の双方向性hCMV−rhCMVプロモーターは、2つの導入遺伝子に作動可能に連結されており、第1の導入遺伝子は、hCMVプロモーター構築ブロックに作動可能に連結され、および第2の導入遺伝子は、rhCMVプロモーター構築ブロックに作動可能に連結され、それにより、第1および第2の導入遺伝子のそれぞれは、それぞれのプロモーターの下流に位置し、かつ第1および第2の導入遺伝子は、hCMVエンハンサーから外側の方向に転写される。
【0055】
本発明の好ましい双方向性プロモーターは、図3Bに示すような異なるエレメントの配列位置を有する、配列番号4を含む双方向性hCMV−rhCMVプロモーターであるが、当業者は、異なる構築ブロックの配列および介在配列の長さまたは同一性が、実質的に同様の結果が得られる程度まで変化され得ることを認識するであろう。例えば、異なるエンハンサーを置換について試験し、かつ/または実質的に同様の発現が得られ得るようにエンハンサー配列を微調整することができるであろう。同様に、イントロンをプロモーター構築ブロックの一方または両方の下流に隣接して付加することができ、かつ双方向性hCMV−rhCMVプロモーターが依然として活性であると予想される。場合により、これは、発現の増強をもたらし得るが、いずれの場合にも、イントロンがベクターまたはウイルスの空間を占めるため、導入遺伝子の空間を犠牲にし得るであろう。本明細書中に示すエンハンサーは、好ましいものであり、好適なサイズであり、バランスのとれた発現を生じ、アデノウイルスベクター環境において安定なコンストラクトを生じる。本発明の双方向性プロモーターの構築ブロック自体は、個々に既知であり得るが、一連の発明において組み合わされたことも、組み合わされることを示唆されたこともない。組み合わされることで、強力で非常にバランスがとれ、かつ比較的短いた双方向性プロモーターがもたらされる。本明細書中に示されるように、わずかに943個のヌクレオチドからなる比較的短い配列を有するにもかかわらず、hCMVエンハンサーとhCMVおよびrhCMVプロモーターとのこの新規な双方向性組合せは、驚くべきことに、2つの作動可能に連結された導入遺伝子の強力かつバランスのとれた転写を指向し得、さらに同時に、アデノウイルスベクターの複雑な環境において関連した導入遺伝子を有する双方向性プロモーターの安定な配置を維持することがわかった。本明細書中に提示したデータは、いくつかの他の同様に設計された双方向性プロモーターが強力なプロモーター活性を欠き、かつ/または不均衡な発現をもたらし、それにより、双方向性プロモーターの一方に作動可能に連結された導入遺伝子の発現が、そのような双方向性プロモーターの他方に作動可能に連結された導入遺伝子と比較して有意に強く(例えば、少なくとも5倍の差)発現されるという点において、既知の同様の構築ブロックに基づいてこのような双方向性プロモーターを作製することが予測不可能であったことを示す。両側からの類似の発現レベル(例えば、両側からの発現の差が2倍未満)およびアデノウイルスベクターの環境における安定性の要件を満たすプロモーターが達成可能であるか否かさえも、先験的に予測不可能であった。本発明は、驚くべきことに、これらの要件を満たし、かつ小さいサイズを有する双方向性プロモーターを提供し、これは、導入遺伝子を有するベクターのサイズ制限との関連で非常に有利であり得る(すなわちより大きい導入遺伝子を収容することができ、かつ/またはベクターがより安定であり得る)。
【0056】
さらなる調節配列も、本発明の双方向性プロモーターを含むコンストラクトに付加し得る。「調節配列」という用語は、本明細書では「調節エレメント」と同義的に使用され、それが作動可能に連結している核酸配列の転写を調節し、したがって転写調節因子としての役割を果たす核酸断片(典型的にはDNAであるが、これに限定されるものではない)を指す。調節配列は、多くの場合、転写タンパク質および/または転写因子の核酸結合ドメインによって認識される転写結合ドメインである核酸配列、エンハンサーまたはリプレッサーなどを含む。例えば、調節配列は、テトラサイクリンオペロンリプレッサータンパク質(tetR)の存在下で発現が阻害されるように、1つ以上のテトラサイクリンオペロンオペレーター配列(tetO)を含み得る。テトラサイクリンの不在下において、tetRタンパク質は、tetO部位に結合し、tetO部位に作動可能に連結される遺伝子の転写を抑制することができる。しかし、テトラサイクリンの存在下では、tetRタンパク質は、体構造が変化し、オペレーター配列への結合が妨げられ、作動可能に連結された遺伝子の転写を生じさせる。特定の実施形態では、本発明のrAdは、tetRタンパク質が発現するプロデューサー細胞株で産生されるベクター中で1つ以上の導入遺伝子の発現が阻害されるように、任意選択的に、双方向性hCMV−rhCMVプロモーターに作動可能に連結されたtetOを含み得る。その後、tetRタンパク質を発現しない対象または細胞にベクターが導入されると、発現は阻害されない(例えば、国際公開第07/073513号パンフレットを参照されたい)。特定の他の実施形態では、本発明のベクターは、任意選択的に、クマート遺伝子スイッチ系を含み得る。そこでは、発現の調節が、プロモーター下流に配置されたオペレーター部位(CuO)へリプレッサー(CymR)が結合することによって媒介される(例えば、(Mullick et al.,2006)を参照されたい)。
【0057】
本明細書で使用される場合、「リプレッサー」という用語は、組換え発現ベクターの異種タンパク質産物の生成に対して阻害し、干渉し、遅延させ、かつ/または抑制する能力を有する実体(例えば、タンパク質または他の分子)を指す。例えば、発現カセット内などの発現ベクターに沿う適切な位置での結合部位との干渉によるものである。リプレッサーの例としては、tetR、CymR、lacリプレッサー、trpリプレッサー、galリプレッサー、ラムダリプレッサー、および当該技術分野で知られている他の適切なリプレッサーが挙げられる。
【0058】
さらに、本発明の組換えベクター、ウイルスまたはアデノウイルスは、双方向性hCMV−rhCMV双方向性プロモーターを含み、hCMV−rhCMV双方向性プロモーターのhCMV部分およびrhCMV部分の転写方向(5’から3’へ)は、互いから離れる方向に向かい、およびhCMV−rhCMV双方向性プロモーターは、1つの方向において第1の導入遺伝子に作動可能に連結され、かつ逆方向において第2の導入遺伝子に作動可能に連結されている。したがって、双方向性プロモーターは、ベクターまたは(アデノ)ウイルスゲノムの第1の末端に向けて第1の導入遺伝子の発現を駆動し、ベクターまたは(アデノ)ウイルスゲノムのもう一方の末端に向けて第2の導入遺伝子の発現を駆動する。当業者であれば、提示された配列を変異させることができ、また日常的な方法によってプロモーター活性を試験し得ることを認識するであろう。一般的に、示されたプロモーター配列(エンハンサー配列を含まない)と少なくとも90%の同一性を有する配列は、依然として機能的活性を有し、したがって双方向性hCMV−rhCMVプロモーターと考えられる。したがって、本発明の双方向性hCMV−rhCMVプロモーターは、好ましくは、示されたプロモーター配列(エンハンサー配列以外)に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有する。双方向性hCMV−rhCMVプロモーターは、好ましくは、配列番号4に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有する。特定の好ましい実施形態では、双方向性hCMV−rhCMVプロモーターは、図1Dに示すような構築ブロックを含み、ここで、双方向性hCMV−rhCMVプロモーターは、一方の側に第1のプロモーター構築ブロックとしてhCMVプロモーターが隣接し、他方の側に第2のプロモーター構築ブロックとしてアカゲザルCMV(rhCMV)プロモーターが隣接しているhCMVエンハンサーをエンハンサー構築ブロックとして含む。特定の好ましい実施形態では、双方向性hCMV−rhCMVプロモーターは、図3に示すような異なるエレメントの配列位置を有する、配列番号4に対して100%の同一性を有するが、当業者は、異なる構築ブロックの配列および介在配列の長さがある程度まで変わり得、また、エンハンサーエレメントおよびイントロンエレメントの同一性も実質的に同様の結果が得られる程度まで変化され得ることを認識するであろう。
【0059】
「作動可能に連結された」または「作動的に連結された」という用語は、本明細書では同義的に使用され、核酸配列と、プロモーター、エンハンサー、転写および翻訳終結部位、ならびに他のシグナル配列などのヌクレオチド制御配列との機能的関係を指し、2つ以上のDNA断片がそれらの意図した目的のために協力して機能するように結合することを意味する。例えば、典型的にはDNAである核酸配列と、調節配列またはプロモーター領域との作動可能な連結は、DNAを特異的に認識し、それに結合し、それを転写するRNAポリメラーゼにより、そのようなDNAの転写が調節配列またはプロモーターから開始されるような、DNAと調節配列またはプロモーターとの間の物理的かつ機能的な関係を指す。発現および/またはインビトロ転写を最適化するために、それが発現される細胞型における核酸またはDNAの発現のための調節配列の改変が必要であり得る。そのような改変の望ましさまたは必要性は、経験的に判定され得る。
【0060】
導入遺伝子の双方向性hCMV−rhCMVプロモーターのいずれかの部分で制御される発現は、強力に発現される。本明細書中で使用される場合、「強力に発現される」または「強力な発現」は、例えば、ウェスタンブロット、FACS分析、または発光もしくは蛍光を使用する他のアッセイなどの異なるタンパク質検出技術によって測定される、双方向性hCMV−rhCMVプロモーターのいずれかの部分からの発現が、一方向hCMVプロモーター(配列番号9を有する)の制御下で単一の導入遺伝子を発現する一価ベクターからの発現の少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%であることを意味する。注目すべきことに、一方向性hCMVプロモーターは、PGK、UBICまたはRSV LTRプロモーターなどの他の一般に使用される一方向性プロモーターと比較して、はるかに強力である(Powell,Rivera−Soto,&Gray,2015)。したがって、hCMVプロモーターより強くない双方向性プロモーター(例えば、そのような一方向性hCMVプロモーターの少なくとも10%の発現レベルをもたらす)は、依然として強力であると考えられ得る。hCMVプロモーターは、ヒトサイトメガロウイルスの主要最初期(mIE)領域に由来し、ワクチンおよび遺伝子治療ベクターにおける強力な一方向性遺伝子発現のために頻繁に使用される。例えば、hCMVプロモーター配列は、hCMV AD169株mIE遺伝子座(X03922)に由来し得、かつNF1結合部位、エンハンサー領域、TATAボックスおよび第1のエキソンの一部を含み得る。より短い(例えば、エンハンサーおよびプロモーター領域のみを含み、NF1結合部位を欠く)またはより長い(例えば、追加の細胞因子結合部位および第1のイントロン配列を含む)他のhCMVプロモーター配列が知られている。長さが異なるこれらのhCMVプロモーターの全ては、強力な遍在的に活性なプロモーターであることがわかった。本明細書に記載の発現レベルの比較のために、hCMVプロモーター配列は、配列番号9であった。例えば、rAdにおける本発明の双方向性hCMV−rhCMVプロモーターのいずれかの部分からの発現レベルは、好ましくは、導入遺伝子が配列番号9の一方向性hCMVプロモーターの制御下にあるrAdからの発現レベルの少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または95%である。特定の実施形態では、双方向性hCMV−rhCMVプロモーターのいずれかの部分からの発現レベルは、導入遺伝子が配列番号9の一方向性hCMVプロモーターの制御下にあるrAdからの発現レベルの約10〜60%、例えば20〜50%、例えば約30%である。さらに、hCMVプロモーターの制御下で単一の抗原を発現するrAdから、発現が、有意なT細胞およびB細胞免疫応答を生じさせるのに十分であることは知られている。同様に、本発明の双方向性hCMV−rhCMVプロモーターによって発現される2つの導入遺伝子の発現は、両方の導入遺伝子に対して有意なT細胞およびB細胞免疫応答を生じさせると予測される。例えば、2つの導入遺伝子が対象に投与された際に免疫応答を誘発する抗原をコードする場合、2つの導入遺伝子の強力な発現は、両方の抗原に対して測定可能な免疫応答を生じさせると予測される。
【0061】
双方向性hCMV−rhCMVプロモーターの両側からの発現はまた、非常にバランスがとれている。本明細書で使用される場合、「バランスのとれた発現」、「発現のバランス」、「発現バランス」、または発現に言及したときの「バランスのとれた」は、例えば、ウェスタンブロット、FACS分析、または発光もしくは蛍光を使用する他のアッセイなどの異なるタンパク質発現検出手法による測定で、双方向性プロモーターの一方の側からの発現が双方向性プロモーターの他方の側からの発現と同等であることを意味する。例えば、本発明の双方向性hCMV−rhCMVプロモーターの一方の側からの発現レベルは、この双方向性プロモーターの他方の側からの発現レベルの少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、または95%であることが好ましい。特定の実施形態では、双方向性hCMV−rhCMVプロモーターの一方の側からの発現レベルは、この双方向性プロモーターの他方の側からの発現レベルの約70〜130%、例えば80〜120%、例えば90〜110%、例えば約100%である。別の例では、双方向性hCMV−rhCMVプロモーターの2つの側からの発現の比は、1/1、1.1/1、1.2/1、1.3/1、1.4/1、1.5/1、1.6/1、1.7/1、1.8/1、1.9/1、および2/1の範囲である。さらに、hCMVプロモーターの制御下で単一の抗原を発現するrAdから、発現が、有意なT細胞およびB細胞免疫応答を生じさせるのに十分であることは知られている。したがって、本発明の双方向性hCMV−rhCMVプロモーターによって発現される2つの抗原のバランスのとれた発現は、経時的な抗原の発現、および特定の型の免疫応答を生成する抗原自体の固有の能力にもよるが、両方の抗原に対して同等のT細胞およびB細胞免疫応答を生成し得るであろう。このように、本発明の双方向性hCMV−rhCMVプロモーターは、mCMV双方向性プロモーターと比較して発現のバランスが改善されている。比較すると、双方向性mCMVプロモーターの右側(3’末端)に位置する抗原の発現は、双方向性mCMVプロモーターの左側(5’末端)に位置する抗原と比較して約10倍高く(国際公開第2016/166088号パンフレットに記載されている)、これは、既に比較的バランスがとれていると考えられているが、本発明の双方向性プロモーターよりもはるかにバランスがとれていないことが明らかである。
【0062】
ベクターの重要な側面は、プラスミドベクターなどのDNAベクターであれ、アデノウイルスベクターなどのウイルスベクターであれ、所望の導入遺伝子配列を収容するこれらのベクターの能力である。このような能力は、ベクターのサイズ制約によって制限されることがあり、例えば、あるサイズ限界を超えた場合、不安定になるかまたは生成が不可能になることさえあり得る。したがって、プロモーター、特に2つ以上の導入遺伝子の発現を制御できる双方向性プロモーターが占める空間は、そのようなプロモーターが有するであろう機能的能力とは別に、新しいベクターを設計する際の重要な考慮事項である。本発明の双方向性プロモーターは、比較的短いという利点を有し、これは、ベクターの特定のサイズ限界において、導入遺伝子のためにより多くの空間が残ることを意味し、例えば導入遺伝子が免疫原である場合、より多くのエピトープが含まれることを可能にし、またはより大きいサイズの他の双方向性プロモーターと比較してより大きいタンパク質の発現を可能にする。
【0063】
「コード配列」、「コードする配列」、または「コードする」という用語は、本明細書では同義的に使用され、適切な調節配列に作動可能に連結されると、インビトロまたはインビボで転写され(DNA)、ポリペプチドに翻訳される(mRNA)、核酸配列を指す。
【0064】
例えば、ウシ成長ホルモンポリAシグナル(米国特許第5,122,458号明細書)などのポリアデニル化シグナルが導入遺伝子の後方に存在し得る。各導入遺伝子は、ポリAシグナルを有することが好ましく、また第1の導入遺伝子のポリAシグナルは、第2の導入遺伝子のポリAシグナルと異なることが好ましい。一実施形態では、第1のポリAシグナルは、SV40ポリAシグナルであり、第2のポリAシグナルは、ウシ成長ホルモンポリAシグナルである。
【0065】
イントロンを含む配列も本発明の双方向性プロモーターの一方または両方の末端に配置し得る。例えば、イントロンは、特にインビボでタンパク質の発現を増大させ得ることが知られている。本明細書で使用されるイントロンは、当該技術分野で知られている正常な機能と構造を有し、タンパク質合成の情報をコードせず、スプライシングとして知られているプロセスにより、メッセンジャーRNAの翻訳前に除去される核酸中のポリヌクレオチド配列である。イントロンは、スプライス供与部位(イントロンの5’末端、通常、GU配列)およびスプライス受容部位(イントロンの3’末端、通常、GA配列)を含む。組換えアデノウイルス中に導入遺伝子のための空間がより多く残るよう、ウイルスベクターにおいてあまり多くの空間を占めないようにするために、比較的短いイントロンおよびより短いイントロンに改変されたイントロンを使用することが好ましいものの、本発明では、種々の異なるイントロンを潜在的に使用することができる。双方向性プロモーターの一方の側で第1のイントロンを、双方向性プロモーターの他方の側で第2の異なるイントロンを使用する、すなわち各導入遺伝子の前に異なるイントロン配列が置かれることが好ましい。特定の実施形態では、イントロンは、キメライントロンであり得る。当業者は、多くの異なるイントロンが入手可能であり、使用され得ることを認識している。しかし、本発明のプロモーターの利点は、適切な発現のためにそのようなイントロンを必要としないことであり、したがって、好ましい実施形態では、双方向性プロモーターのプロモーター構築ブロックと、両側のそれぞれの導入遺伝子との間にイントロンが存在しない。
【0066】
本発明の双方向性プロモーターは、特定の実施形態では、例えば、ワクチンの適用においてこれらの抗原に対する免疫応答を生成する目的で、2つの抗原の発現を駆動するために使用することができる。しかし、バランスのとれた導入遺伝子発現レベルがまた、免疫応答が主要な目的ではない導入遺伝子、例えば遺伝子治療目的、異種タンパク質複合体の発現、または2つの抗体鎖の比例発現に使用される2つの異なる導入遺伝子にも関連し得ることは当業者に直ちに明らかであろう。したがって、本発明は、単一組換えベクター、例えばアデノウイルスベクターからの発現が所望される、任意の組み合わせの導入遺伝子を用いて実施され得る。そのため、導入遺伝子の同一性は、本発明では重要でなく、それは、例えば、任意の導入遺伝子を含むベクターまたはアデノウイルスに適している。好適な導入遺伝子は、当業者によく知られており、例えば、遺伝子治療目的などで治療効果を有するポリペプチドをコードするオープンリーディングフレーム、またはワクチン接種目的でrAdベクターが使用される場合に免疫応答が所望されるポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームなどの導入遺伝子オープンリーディングフレームを含み得る。特に好ましい異種核酸は、免疫応答を生じさせる必要がある抗原決定基をコードする目的遺伝子である。このような抗原決定基も、通常、抗原と称される。組換えアデノウイルスが対象に投与されると、抗原に対する免疫応答が生じる。任意の所望の抗原がアデノウイルスベクターによってコードされ得る。本発明による典型的な実施形態では、抗原は、疾患または病態を引き起こし得る生物に由来するペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質である。したがって、好ましいさらなる実施形態では、前記目的異種核酸は、免疫原性(または抗原性)決定因子をコードする。より好ましくは、前記免疫原性決定因子は、細菌、ウイルス、酵母または寄生生物に由来する抗原である。このような生物によって引き起こされる疾患は、一般に「感染症」と称される(したがって、疾患は、「感染する」生物に限定されず、宿主に侵入して疾患を引き起こすものも含む)。例えば、腫瘍抗原などのいわゆる「自己抗原」も最新技術の一部を形成し、本発明による組換えアデノウイルス中の異種核酸によってコードされ得る。抗原決定基(または抗原)を取得する非限定的な例は、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)などのマラリアを引き起こす生物、マイコバクテリウム・ツベルクローシス(Mycobacterium tuberculosis)などの結核を引き起こす生物、酵母、またはウイルスである。他の好ましい実施形態では、フラビウイルス(例えば、西ナイルウイルス、C型肝炎ウイルス、日本脳炎ウイルス、デングウイルス)、エボラウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、およびマールブルグウイルスなどのウイルスに由来する抗原が本発明による組成物で使用され得る。一実施形態では、前記抗原は、熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)に由来するCSタンパク質またはその免疫原性部である(CSをコードするアデノウイルスベクターの例については、例えば、(Havenga et al.,2006;Ophorst et al.,2006);国際公開第2004/055187号パンフレットを参照されたい。これらは、全て参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。別の実施形態では、抗原決定基は、Ag85A、Ag85Bおよび/もしくはTB10.4タンパク質またはそれらの免疫原性部分などのM・ツベルクローシス(M.tuberculosis)に由来する1つの抗原のタンパク質またはいくつかの抗原の融合タンパク質である(このようなTBワクチンウイルスの構築および製造については、例えば、国際公開第2006/053871号パンフレットを参照されたい。これは、参照により本明細書に組み込まれる)。さらに別の実施形態では、前記抗原決定基は、エボラウイルスまたはマールブルグウイルスなどのフィロウイルス由来のGPなどのウイルス糖タンパク質またはその免疫原性部分である(例えば、(Geisbert et al.,2011;Sullivan et al.,2006;Sullivan et al.,2003)。またさらなる実施形態では、前記免疫原性決定因子は、gag、pol、env、nef、またはそれらの変異体などのHIVタンパク質に由来する(アデノウイルスベースのHIVワクチンの例については、例えば、国際公開第2009/026183号パンフレット、国際公開第2010/096561号パンフレット、国際公開第2006/120034号パンフレット、国際公開第02/22080号パンフレット、国際公開第01/02607号パンフレットを参照されたい)。他の実施形態では、前記抗原決定基は、インフルエンザウイルスに由来するHA、NA、MもしくはNPタンパク質またはこれらのいずれかの免疫原性部分である(例えば、(Hu et al.,2011;Zhou et al.,2010);(Vemula&Mittal,2010)による総説)。他の実施形態では、抗原決定基は、麻疹ウイルスに由来するHAタンパク質またはその免疫原性部分である(例えば、国際公開第2004/037294号パンフレット)。他の実施形態では、抗原決定基は、狂犬病ウイルス糖タンパク質である(例えば、(Zhou,Cun,Li,Xiang,&Ertl,2006))。さらなる実施形態では、抗原は、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)に由来する、例えばRSV Fタンパク質(例えば、国際公開第2013/139911号パンフレットおよび国際公開第2013/139916号パンフレットを参照されたい)もしくはRSV Gタンパク質、またはその両方、あるいは他のRSVタンパク質である。他の実施形態では、抗原は、ヒトパピローマウイルスまたは他のウイルスなどの別のウイルス由来である。組換えアデノウイルスは、同じ生物由来の2つの異なる抗原をコードし得る。組換えアデノウイルスはまた、異なる生物に由来する抗原の組み合わせ、例えば第1の生物に由来する第1の抗原と第2の生物に由来する第2の抗原とをコードし得る。例えば、抗原およびToll様受容体(TLR)アゴニスト、例えばdsRNAまたはその模倣剤などのTLR3アゴニストなど、抗原および例えばアジュバントを同じアデノウイルス中にコードすることも可能である(例えば、国際公開第2007/100908号パンフレット)。特定の実施形態では、組換えベクター、例えば組換えアデノウイルスは、それぞれ双方向性hCMV−rhCMVプロモーターの制御下にある2つの異なる抗原をコードする。他の実施形態では、ベクターまたは組換え(アデノ)ウイルスは、それぞれ双方向性hCMV−rhCMVプロモーターの制御下にある抗原と免疫モジュレーターとをコードする。特定の実施形態では、双方向性hCMV−rhCMVプロモーターの制御下にある第1および第2の導入遺伝子以外に、さらなる異種配列または導入遺伝子がベクターまたは組換え(アデノ)ウイルス中に存在し得る。
【0067】
本発明は、遺伝的に安定な組換えアデノウイルスであって、アデノウイルスが標的細胞に感染すると、それぞれが強力に発現される第1および第2の導入遺伝子を含む遺伝的に安定な組換えアデノウイルスを製造する方法であって、1つの方向において第1の導入遺伝子に、かつ逆方向において第2の導入遺伝子に作動可能に連結された双方向性hCMV−rhCMVプロモーターを含むコンストラクトを調製する工程と、前記コンストラクトを組換えアデノウイルスのゲノムに組み込む工程とを含む方法も提供する。コンストラクト自体の調製は、当業者に知られ、組換えアデノウイルス技術の分野において日常的に行われており、本明細書中に例示されている、よく知られた標準的な分子クローニング方法の使用を包含する(例えば、(Holterman et al.,2004;Lemckert et al.,2006;Vogels et al.,2003);Sambrook,Fritsch and Maniatis,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd edition、1989;Current Protocols in Molecular Biology,Ausubel FM,et al,eds,1987;the series Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.);PCR2:A Practical Approach,MacPherson MJ,Hams BD,Taylor GR,eds,1995を参照されたい)。双方向性hCMV−rhCMVプロモーターは、上記のような特徴を有し、日常的な方法によって得ることができる。便宜のため、当業者は、例えば、プラスミド形態の導入遺伝子の容易な操作と導入のために、E1領域までのゲノムの左部分のための第1の部分、および第1の部分との再結合時に完全なアデノウイルスゲノムをもたらすゲノムの残部のためのより大きい第2の部分など、より小型の断片にクローニングすることでアデノウイルスゲノムを操作し得る(例えば、国際公開第99/55132号パンフレットを参照されたい)。
【0068】
本発明のrAdは、先行技術で示された2つの導入遺伝子を発現するための種々の代替方法によって調製されるアデノウイルスと異なり、2つの導入遺伝子を発現することができ、かつ遺伝的に安定であり、さらに双方向性プロモーターによって駆動される2つの導入遺伝子のバランスのとれた発現も提供するという利点を有する。したがって、双方向性hCMV−rhCMVプロモーターは、2つの導入遺伝子を発現するアデノウイルスの遺伝的不安定性および2つの導入遺伝子の不均衡な発現の問題を解決し、また、その比較的小さいサイズのために、より大きいサイズを有する特定の他の双方向性プロモーターよりも有意に多くの導入遺伝子配列のための空間を可能にする(例えば、それは、mCMV双方向性プロモーターよりも約1kb短く、したがって、理論的にはサイズ容量の制約を有する所与のベクターは、導入遺伝子がmCMVプロモーターによって駆動される同じベクターよりも全体で約1kb長い導入遺伝子を収容し得る)。
【0069】
遺伝的安定性を試験するために、適切な細胞株、例えばヘルパー細胞株PER.C6(登録商標)においてrAdをレスキューし、継代する。ウイルスDNAを特定の継代数で単離し、rAdゲノムの完全性を以下の1つ以上によって分析し得る:導入遺伝子領域の存在、または欠失バンドが存在しないことに関するPCR分析、制限断片における差異の有無に関するrAdゲノムの制限消化、および/またはrAd配列における変異の有無に関するrAdゲノムまたはrAdゲノムのPCR産物の配列決定。本発明のrAdに関して、「遺伝的に安定な」とは、ヌクレオチド配列が、rAdの作製のために使用されたプラスミドからその後のrAd生産段階まで変化せず、その結果、2つの導入遺伝子を発現するrAdが、大規模バッチ生産に適するように、(例えば、hCMVプロモーター後方に)単一導入遺伝子を有する同等のrAdと同じ遺伝的安定性を有することを意味する。例えば、発現カセット側方のプライマーを使用したPCR分析が、rAdまたは出発原料のより初期の継代数と比較して欠失断片(バンド)を示さず、かつ/またはE1、E3、およびE4領域のPCR産物の配列決定が、ヌクレオチド配列に変化がないことを裏付ける。双方向性プロモーターを有する発現カセットを含む領域の配列を決定することにより、発現カセットを含む領域においてヌクレオチド配列に変化がないことを確認することが好ましい。
【0070】
単一製造ウイルスバッチの試験消化などの他の試験法と比較して、この試験では遺伝的安定性が完全に評価される。アッセイ感度は、以下の手段、すなわちいくつかのウイルス集団(プラーク)を単離し、拡張継代に供することによって増大する。拡張継代を、発現カセット側方のプライマーを用いたPCR分析と組み合わせることにより、他の方法では見過ごされるおそれのあるrAd集団中の少ない割合の欠失変異体の検出が可能になる。さらに、配列解析の実施により、導入遺伝子のオープンリーディングフレーム中の停止コドンの導入などの点変異の発生が排除される。より具体的には、ウイルス変異は、常に偶発事象を呈するため、1つのプラークが安定であっても、別のものは欠失バンドを提示することがある。したがって、遺伝的安定性を正しく評価するために、いくつかのウイルス集団(プラーク)を試験する必要がある。ベクターが親ベクターよりも効率的に複製できる変異が生じた場合、これは、変異体バージョンの増生をもたらし得るが、これは、本研究で説明されているように拡張継代後にのみ観察されることが多い。本発明のrAdは、ウイルスが大規模生産活動中に十分に安定しているように、用いられる試験系において少なくとも10継代まで遺伝的に安定していることが好ましく、少なくとも13継代まで遺伝的に安定していることがより一層好ましい。最近、双方向性mCMVプロモーターの制御下にある2つの導入遺伝子を有する組換えアデノウイルスが遺伝的に安定であることが見出された。例えば、国際公開第2016/166088号パンフレットを参照されたい(これにはまた、1つのベクターからの2つの抗原の発現について当該技術分野で記載されてきた種々の他の解決策が、安定なrAdまたは強力な発現をもたらさなかったと記載されており、したがって、mCMVプロモーターがこの問題の最も好ましい解決策であるとその中に記載されていた)。本願は、本発明の双方向性hCMV−rhCMVプロモーターの制御下にある2つの導入遺伝子を有する組換えアデノウイルスも遺伝的に安定であり、さらに、2つの導入遺伝子が双方向mCMVプロモーターの制御下にある状況と比較して、2つの導入遺伝子のよりバランスのとれた発現を有することを示す。
【0071】
本発明の方法により作製される組換えアデノウイルスは、組換えアデノウイルスについて上で記載した実施形態に従って調製することができる。
【0072】
本発明は、細胞内で少なくとも2つの導入遺伝子を発現させる方法であって、本発明によるベクターまたは組換えウイルス、例えば組換えアデノウイルスを細胞に提供する工程を含む方法も提供する。組換えアデノウイルスを細胞に提供する工程は、アデノウイルスを対象へ投与することにより、またはインビトロもしくはエクスビボでアデノウイルスを細胞へ導入(例えば、感染)することにより行われ得る。特定の実施形態では、本発明は、例えば、組換えアデノウイルスを対象に投与することにより、細胞内で少なくとも2つの導入遺伝子を発現するために使用する組換えアデノウイルスベクターを提供する。
【0073】
本発明は、少なくとも2つの抗原に対する免疫応答を誘導する方法であって、本発明によるベクター、例えば組換え(アデノ)ウイルスを対象に投与する工程を含む方法も提供する。本発明は、少なくとも2つの抗原に対する免疫応答を誘導するために使用する、本発明によるベクターまたは組換え(アデノ)ウイルスも提供する。
【0074】
本発明は、本発明の双方向性hCMV−rhCMVプロモーターまたは本発明の組換えアデノウイルスのゲノムを含む組換えDNA分子も提供する。当業者は、これが、一緒になって本発明の単一組換えDNA分子を形成し得る、少なくとも2つの異なる組換えDNA分子の組み合わせであり得ることを認識するであろう。そのような分子は、ゲノムを操作し、新規の組換えアデノウイルスを作製する上で有用である。ゲノムは、許容細胞におけるアデノウイルスの複製およびパッケージングに必要なタンパク質をコードする。
【0075】
本開示で使用される数値に関する「約」という用語は、値±10%を意味する。
【0076】
プロデューサー細胞は、細胞およびウイルスの数、ならびに/またはウイルス力価を増大させるために培養される。細胞の培養は、本発明による目的ウイルスの代謝、および/または成長、および/または分裂、および/または生成を可能にするために行われる。これは、当業者によく知られた方法によって行うことができ、例えば、限定はされないが、適切な培地中で細胞に栄養素を提供することが挙げられる。好適な培地は、当業者によく知られており、一般に、商業的供給源から大量に得られ、または標準的なプロトコルに従ってカスタムメイドすることができる。培養は、例えば、バッチ、流加、連続系などを使用して、シャーレ、ローラーボトルまたはバイオリアクター内で行うことができる。細胞を培養するための好適な条件が知られている(例えば、Tissue Culture,Academic Press,Kruse and Paterson,editors(1973)、およびR.I.Freshney,Culture of animal cells:A manual of basic technique,fourth edition(Wiley−Liss Inc.,2000,ISBN 0−471−34889−9を参照されたい)。
【0077】
通常、アデノウイルスは、培養物中の適切なプロデューサー細胞に暴露され、ウイルスが取り込まれる。通常、最適な撹拌は、約50〜300rpm、典型的には約100〜200、例えば約150であり、DOは、典型的には、20〜60%、例えば40%であり、最適pHは、6.7〜7.7であり、最適温度は、30〜39℃、例えば34〜37℃であり、最適MOIは、5〜1000、例えば約50〜300である。通常、アデノウイルスは、プロデューサー細胞に自然に感染し、細胞を感染させるにはプロデューサー細胞をrAd粒子と接触させれば十分である。一般に、アデノウイルスのシードストックを培養液に加えて感染を開始させ、その後、アデノウイルスは、プロデューサー細胞内で増殖する。これは、全て当業者にとって日常的である。
【0078】
アデノウイルスの感染後、ウイルスは、細胞内で複製し、それにより増幅される。このプロセスは、本明細書ではアデノウイルスの増殖と称する。アデノウイルス感染は、最終的に、感染した細胞の溶解をもたらす。したがって、アデノウイルスの溶解特性は、ウイルス産生の2つの異なるモードを可能にする。第1のモードは、細胞溶解前にウイルスを回収し、外部因子を使用して細胞を溶解するものである。第2のモードは、生成されたウイルスによって(殆ど)完全に細胞が溶解した後、ウイルス上清を回収するものである(例えば、米国特許第6,485,958号明細書を参照されたい。これには、宿主細胞を溶解せず、外部因子によってアデノウイルスを回収することが記載されている)。外部因子を使用して細胞を能動的に溶解してアデノウイルスを回収することが好ましい。
【0079】
能動的な細胞溶解に使用することができる方法は、当業者に知られており、例えば国際公開第98/22588号パンフレット、p.28−35で論じられている。これに関する有用な方法は、例えば、凍結融解、固体せん断、高張および/または低張溶解、液体せん断、超音波処理、高圧押出、洗浄剤溶解、上記の組み合わせなどである。本発明の一実施形態では、細胞は、少なくとも1種の洗浄剤を使用して溶解する。洗浄剤の使用による溶解は、方法が容易であり、かつ容易に拡大可能であるという利点を有する。
【0080】
使用できる洗浄剤およびその使用方法は、当業者に一般に知られている。いくつかの例が、例えば、国際公開第98/22588号パンフレット、p29−33で論じられている。洗浄剤としては、陰イオン性、陽イオン性、双性イオン性および非イオン性洗浄剤を挙げることができる。洗浄剤の濃度は、例えば、約0.1%〜5%(w/w)の範囲内で変えることができる。一実施形態では、使用する洗浄剤は、Triton X−100である。
【0081】
ヌクレアーゼを使用して、汚染核酸、すなわち殆どがプロデューサー細胞由来の核酸を除去することができる。本発明での使用に好適なヌクレアーゼの例としては、Benzonase(登録商標)、Pulmozyme(登録商標)、または当該技術分野で一般に使用されている任意の他のDNaseおよび/もしくはRNaseが挙げられる。好ましい実施形態では、ヌクレアーゼは、Benzonase(登録商標)であり、これは、特定のヌクレオチド間の内部リン酸ジエステル結合を加水分解することによって核酸を迅速に加水分解し、それにより細胞溶解産物の粘度を低下させる。Benzonase(登録商標)は、Merck KGaAから商業的に入手し得る(コードW214950)。ヌクレアーゼの使用濃度は、好ましくは、1〜100単位/mlの範囲である。ヌクレアーゼ処理に代えてまたはヌクレアーゼ処理に加えて、臭化ドミフェンなどの選択的沈殿剤を使用して、アデノウイルス精製中、アデノウイルス調製物から宿主細胞DNAを選択的に沈殿除去することも可能である(例えば、米国特許第7,326,555号明細書;(Goerke,To,Lee,Sagar,&Konz,2005);国際公開第2011/045378号パンフレット;国際公開第2011/045381号パンフレットを参照されたい)。
【0082】
プロデューサー細胞の培養物からアデノウイルスを回収する方法は、国際公開第2005/080556号パンフレットに広範に記載されている。
【0083】
特定の実施形態では、回収されたアデノウイルスは、さらに精製される。アデノウイルスの精製は、例えば、国際公開第05/080556号パンフレット(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている清澄化、限外ろ過、ダイアフィルトレーションまたはクロマトグラフィを用いた分離を含む数工程で行うことができる。清澄化は、ろ過工程により行うことができ、細胞溶解物から細胞残屑および他の不純物を除去する。限外ろ過は、ウイルス溶液の濃縮に使用される。限外ろ過装置を使用するダイアフィルトレーションまたは緩衝液交換は、塩、糖などの除去および交換のための一方法である。当業者は、各精製工程の最適な条件を見出す方法を知っている。また、国際公開第98/22588号パンフレット(この全体が参照により本明細書に組み込まれる)にもアデノウイルスベクターの生成および精製方法が記載されている。これらの方法は、宿主細胞を増殖させ、この宿主細胞をアデノウイルスで感染させ、この宿主細胞を回収および溶解し、粗溶解物を濃縮し、粗溶解物の緩衝液を交換し、この溶解物をヌクレアーゼで処理し、クロマトグラフィを用いてウイルスをさらに精製することを含む。
【0084】
好ましくは、精製には、例えば国際公開第98/22588号パンフレット、p.61−70に論じられているように少なくとも1つのクロマトグラフィ工程が使用される。アデノウイルスのさらなる精製に関して、クロマトグラフィ工程を含む多数のプロセスが記載されている。当業者は、これらのプロセスを知っており、プロセスを最適化するためにクロマトグラフィ工程の厳密な使用法を変更することができる。例えば、アニオン交換クロマトグラフィ工程によってアデノウイルスを精製することが可能であり、例えば国際公開第2005/080556号パンフレットを参照されたい。多くの他のアデノウイルス精製方法が記載されており、これらは、当業者の実現可能な範囲内にある。アデノウイルスを生成し精製するさらなる方法は、例えば、国際公開第00/32754号パンフレット、国際公開第04/020971号パンフレット、国際公開第2006/108707号パンフレット、ならびに米国特許第5,837,520号明細書および同第6,261,823号明細書に開示されており、これらは、全て参照により本明細書に組み込まれる。
【0085】
ヒトに投与するために、本発明は、ベクターまたは組換えウイルス、例えばrAdと、薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む医薬組成物を用いることができる。この場合、「薬学的に許容される」という用語は、担体または賦形剤が、使用する用量および濃度において、それらが投与される対象に望ましくないまたは有害な影響を引き起こさないことを意味する。このような薬学的に許容される担体および賦形剤は、当該技術分野でよく知られている(Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th edition,A.R.Gennaro,Ed.,Mack Publishing Company[1990];Pharmaceutical Formulation Development of Peptides and Proteins,S.Frokjaer and L.Hovgaard,Eds.,Taylor&Francis[2000];およびHandbook of Pharmaceutical Excipients,3rd edition,A.Kibbe,Ed.,Pharmaceutical Press[2000]を参照されたい)。精製されたrAdは、好ましくは、滅菌溶液として処方されて投与されるが、凍結乾燥製剤を利用することも可能である。滅菌溶液は、滅菌ろ過または当該技術分野でそれ自体知られている他の方法によって調製される。その後、溶液は、凍結乾燥されるか、または医薬投与容器に充填される。溶液のpHは、一般に、pH3.0〜9.5、例えばpH5.0〜7.5の範囲である。rAdは、通常、好適な緩衝液を含む溶液中にあり、rAdの溶液は、塩も含有し得る。任意選択により、アルブミンなどの安定剤が含まれ得る。特定の実施形態では、洗浄剤が添加される。特定の実施形態では、rAdは、注射用製剤に製剤化され得る。これらの製剤は、有効量のrAdを含み、滅菌液体溶液、液体懸濁液または凍結乾燥バージョンであり、任意選択により安定剤または賦形剤を含有する。アデノウイルスワクチンはまた、鼻腔内投与用にエアロゾル化され得る(例えば、国際公開第2009/117134号パンフレットを参照されたい)。
【0086】
例えば、アデノウイルスは、アデノウイルス世界標準にも使用されている緩衝液(Hoganson et al.,2002):20mMトリスpH8、25mM NaCl、2.5%グリセロール中に保存することができる。ヒトへの投与に好適な他の有用な調合緩衝液は、20mMトリス、2mM MgCl、25mM NaCl、10%w/vスクロース、0.02%w/vポリソルベート80である。組換えアデノウイルスに好適な別の調合緩衝液は、10〜25mMクエン酸緩衝液pH5.9〜6.2、4〜6%(w/w)ヒドロキシプロピル−ベータ−シクロデキストリン(HBCD)、70〜100mM NaCl、0.018〜0.035%(w/w)ポリソルベート−80、および任意選択的に0.3〜0.45%(w/w)エタノールを含む。明らかに、他の多くの緩衝液を使用することができ、例えば欧州特許第0853660号明細書、米国特許第6,225,289号明細書、および国際公開第99/41416号パンフレット、国際公開第99/12568号パンフレット、国際公開第00/29024号パンフレット、国際公開第01/66137号パンフレット、国際公開第03/049763号パンフレット、国際公開第03/078592号パンフレット、国際公開第03/061708号パンフレットに見出され得るものをはじめとする、精製(アデノ)ウイルス製剤の保存および医薬品投与に好適ないくつかの配合例が知られている。
【0087】
特定の実施形態では、アデノウイルスを含む組成物は、1種以上のアジュバントをさらに含む。適用される抗原決定基に対する免疫応答をさらに増大させるアジュバントは、当該技術分野で知られており、アデノウイルスおよび好適なアジュバントを含む医薬組成物は、例えば、国際公開第2007/110409号パンフレット(参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている。「アジュバント」および「免疫刺激剤」という用語は、本明細書では同義的に使用され、免疫系の刺激を引き起こす1種以上の物質と定義される。この場合、アジュバントは、本発明のアデノウイルスベクターの免疫応答を増強させるために使用される。好適なアジュバントの例としては、水酸化アルミニウムおよび/またはリン酸アルミニウムなどのアルミニウム塩;MF59などのスクアレン−水エマルションをはじめとする油エマルション組成物(または水中油型組成物)(例えば、国際公開第90/14837号パンフレットを参照されたい);例えば、QS21および免疫賦活性錯体(ISCOMS)などのサポニン製剤(例えば、米国特許第5,057,540号明細書;および国際公開第90/03184号パンフレット、国際公開第96/11711号パンフレット、国際公開第2004/004762号パンフレット、国際公開第2005/002620号パンフレットを参照されたい);細菌または微生物の派生物(その例として、モノホスホリルリピドA(MPL)、3−O−脱アシル化MPL(3dMPL)、CpGモチーフ含有オリゴヌクレオチド、ADPリボース化細菌毒素またはそれらの変異体(大腸菌(E.coli)易熱性エンテロトキシンLT、コレラ毒素CTなど)がある)が挙げられる。例えば、C4結合タンパク質(C4bp)のオリゴマー化ドメインの目的抗原への融合物をコードする異種核酸(Ogun,Dumon−Seignovert,Marchand,Holder,&Hill,2008)、またはdsRNAなどのTLR3アゴニストなどのtoll様受容体(TLR)アゴニストをコードする異種核酸(例えば、国際公開第2007/100908号パンフレットを参照されたい)などを使用して、ベクターでコードされたアジュバントを使用することも可能である。本発明によるこのようなrAdは、例えば、双方向性プロモーターの一方の側の目的抗原と、双方向性プロモーターの他方の側のTLR3アゴニストとをコードし得る。このようなrAdは、特に、例えば経口投与などの粘膜経路を介した投与に適している(例えば、国際公開第2007/100908号パンフレットを参照されたい)。特定の実施形態では、本発明の組成物は、例えば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、リン酸カリウムアルミニウム、またはそれらの組み合わせの形態のアルミニウムをアジュバントとして1用量当たり0.05〜5mg、例えば0.075〜1.0mgのアルミニウム含有量の濃度で含む。
【0088】
他の実施形態では、組成物は、アジュバントを含まない。
【0089】
本発明による医薬組成物は、特定の実施形態では、ワクチンであり得る。
【0090】
アデノウイルス組成物は、対象、例えばヒト対象に投与され得る。1回の投与で対象に提供されるアデノウイルスの総用量は、当業者に知られているように様々であり得、一般に1×10ウイルス粒子(vp)〜1×1012vp、好ましくは1×10vp〜1×1011vp、例えば3×10〜5×1010vp、例えば10〜3×1010vpである。
【0091】
アデノウイルス組成物の投与は、標準的な投与経路を用いて行うことができる。非限定的実施形態としては、例えば、皮内、筋肉内などの注射、または皮下もしくは経皮、または例えば鼻腔内、口腔などの粘膜投与などによる非経口投与が挙げられる。一実施形態では、組成物は、例えば、腕の三角筋または大腿の外側広筋への筋肉内注射によって投与される。当業者は、ワクチン中の抗原に対する免疫応答を誘導するために、組成物、例えばワクチンを投与する様々な可能性を認識している。
【0092】
本明細書で用いられる対象は、好ましくは、哺乳動物、例えば齧歯類、例えばマウス、または非ヒト霊長類、またはヒトである。対象は、好ましくは、ヒト対象である。
【0093】
1つ以上のアデノウイルスワクチンの1回以上の追加免疫投与を提供することも可能である。追加ワクチン接種を行う場合、一般に、そのような追加ワクチン接種は、組成物を対象に最初に投与(これは、こうした場合、「初回ワクチン接種」と称される)した後、1週間〜1年、好ましくは2週間〜4カ月の時点で同じ対象に投与されるであろう。代替の追加免疫レジメンでは、異なるベクター、例えば異なる血清型の1つ以上のアデノウイルス、またはMVAなどの他のベクター、またはDNA、またはタンパク質を初回ワクチン接種または追加免疫ワクチン接種として対象に投与することも可能である。
【0094】
本明細書全体にわたり、特許、公開公報、技術論文および学術論文などの各種刊行物が括弧に入れて引用されており、それぞれの完全引用は、本明細書の最後に見出し得る。これらの引用刊行物のそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0095】
さらなる説明なしに、当業者であれば、ここまでの説明ならびに次の具体的な方法および実施例により、本発明を作成して使用し、かつ請求項に記載された方法を実施することができるであろう。したがって、次の実施例は、本発明のいくつかの実施形態、特徴および利点を具体的に示すが、本開示の残りの部分を限定するものとして決して解釈されるべきではない。実施例は、単に本発明を明確にするに過ぎない。
【0096】
方法
細胞培養:
PER.C6(登録商標)細胞(Fallaux et al.,1998)を、10mMのMgClを添加した10%ウシ胎児血清(FBS)含有ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中で維持した。
【0097】
pAdApt35プラスミドおよびpshuttle26プラスミドにおけるアデノウイルスベクターの構築
異なる双方向性プロモーター構築物をpAdApt35プラスミド(Vogels et al.2007)またはpshuttle26プラスミドにクローニングした。Pshuttle26は、以前に記載されたpAdapt26プラスミド(Abbink et al.,2007)に基づいて構築した。Ad26ベクターゲノムの右側部分を含む2−Kb断片を合成し、CMVプロモーターのSpeI部位が最初に単一bp置換の導入によって破壊されたpAdApt26.Lucにサブクローニングした。結果として、pshuttle26は、Ad26コスミドとの相同組換えにより、またはAd26完全長ゲノムプラスミドとの相同組換えにより、アデノウイルスベクターを構築するために使用され得る。
【0098】
pAdapt35プラスミドおよびpshuttle26プラスミドは、1つのプロモーターおよび1つのSV40由来ポリAシグナルを有する標準的な一方向性発現カセットのみを有するため、別の導入遺伝子とBGHポリAシグナルを配置するための制限部位を融合PCRによって付加した。SpeI、NotI−BGHポリA−EcoRI−ルシフェラーゼ−KpnI、SalI、AvrIIを含む融合PCR産物を、SpeIおよびAvrII制限部位を介した分子クローニングによって正しい配向でプラスミドに挿入した。結果として、一方向性hCMVプロモーターは、隣接制限部位AvrIIおよびHindIIIを用いて双方向性プロモーター配列によって置換され得る。導入遺伝子を双方向性プロモーターの両側に、一方の側はHindIIIおよびXbaI制限部位を使用して、他方の側はAvrII、SalIまたはKpnIを使用して配置した(図3A)。AvrII、SalIまたはKpnIの選択は、プラスミド配列における制限部位の独自性に依存した。異なる双方向性プロモーターコンストラクトを有する完全な双方向性発現カセットをpShuttle26プラスミドにクローニングし、SpeIまたはNotIおよびXbaI制限部位を用いてpAdapt35プラスミドに移した。コザック配列(5’GCCACC3’)が各ATG開始コドンの直前に含まれ、2つの停止コドン(5’TGA TAA3’)が各コード配列末端に付加された。本明細書に記載のように、組換えアデノウイルスおよびベクターは、一般に、rAdまたはrAdベクターと称され、より具体的にはrAd35またはrAd26および関連ベクターと称される。
【0099】
アデノウイルスの生成、感染および増殖
全てのアデノウイルスをPER.C6細胞中で相同組換えにより生成し、以前に記載されているようにして生成した(rAd35では(Havenga et al.,2006);rAd26では(Abbink et al.,2007))。簡単に記載すると、PER.C6細胞を、製造業者(Life Technologies)によって提供された使用説明書に従ってリポフェクタミンを使用して、プラスミドをコードするrAdベクターでトランスフェクトした。rAd35ベクターをレスキューするために、pAdApt35プラスミドおよびpWE/Ad35.pIX−rITR.dE3.5orf6コスミドを使用し、一方、rAd26ベクターのためにpShuttle26プラスミドおよびpWE.Ad26.dE3.5orf6コスミドを使用した。十分な細胞変性効果(CPE)に達した1日後に細胞を収集し、凍結解凍させ、3,000rpmで5分間遠心分離し、−20℃で貯蔵した。次いで、ウイルスを、マルチウェル24組織培養プレートの単一ウェルで培養したPER.C6細胞内でプラーク精製し、増幅させた。T25組織培養フラスコを使用して培養されたPER.C6細胞において、さらに増幅させた。
【0100】
発現の分析
発現の強度および発現バランスを評価するために、高感度緑色蛍光タンパク質(eGFPタンパク質アクセッション番号AAB02572.1)およびホタルルシフェラーゼ(ルシフェラーゼタンパク質アクセッション番号ACH53166)をコードするレポーター遺伝子を用いてウイルスベクターを作製した。相対eGFP平均蛍光強度(MFI)およびルシフェラーゼ相対発光量(RLU)を、HEK293細胞(pAdAptベクターまたはpshuttleベクターによる一過性トランスフェクション)またはA549細胞(ウイルス感染)との各プロモーターおよびレポーター遺伝子の組み合わせについて記録した。ルシフェラーゼ活性は、Luminoskan(商標)Ascentマイクロプレート照度計において、0.1%DTT(1M)の存在下、細胞溶解物中で測定した。eGFP蛍光は、フローサイトメーター(FACS)において、トリプシン処理、遠心分離、およびPBS/1%FBS(非ウイルス物質)またはCellFix(ウイルス物質)における細胞ペレットの再懸濁により測定した。
【0101】
PER.C6細胞内のアデノウイルスベクターの遺伝的安定性試験
PER.C6細胞内にいくつかの継代を含む生産工程における遺伝的安定性を確実にするために、ワクチンベクターの遺伝的安定性試験を実施した。組換えワクチンベクターの作製、プラーク精製、およびT25形態への増殖を上述のように行った。簡単に記載すると、組換えウイルスをE1相補細胞株PER.C6においてプラスミドトランスフェクションによって作製し、プラーク精製した。マルチウェル24(MW24)からT25フラスコへの規模拡大のために5つのプラークを選択した。続いて、新しいPER.C6細胞をウイルス継代数13までT25形態で感染させた。感染の2日後に完全細胞変性効果を与える所定の感染性容積(rAd35では50、rAd26では900のウイルス粒子/細胞比の範囲内にあることが遡及的に判定された)を使用してウイルスを増殖させた。ウイルスDNAをp13材料から単離し、PCR分析により、完全導入遺伝子発現カセットの存在を試験した。ワクチンベクターをPER.C6細胞内で継代数13まで増殖させた。感染の2日後に完全なCPEを与える方法で増殖を行った。rAd35ウイルスは、完全CPEの2日後に回収し、一方、rAd26ウイルスは、完全CPEの1日後に回収した。ウイルスDNAを継代2、継代5、継代10、および継代13で単離し、導入遺伝子発現カセットの両側に位置するプライマーを使用したPCR分析により、欠失が存在しないことを試験した。欠失変異体の欠如は、以下のパラメータによって定義した:PCR産物のバンドサイズは、陽性対照(ウイルスレスキューのために使用されたプラスミドのPCR産物)に一致し、予測されたPCR産物を下回るバンドはなく(追加的なバンドが非特異的なPCR産物であることが示されない限り、それらは、陽性対照にも存在するため)、承認されたアッセイ:PCR HO対照においてバンドがない。遺伝的安定性をさらに確認するために、発現カセットおよびいくつかのプラーク隣接領域のPCR産物の配列を決定した。
【0102】
実施例1:双方向性プロモーターコンストラクトの設計
強力な双方向マウスCMV(mCMV)プロモーターを、以前の研究(国際公開第2016/166088号パンフレット)の、アデノウイルスベクターのE1領域における双方向性発現カセットからの2つの抗原の発現に有用なプロモーターとして同定した。mCMV双方向性プロモーターを有するベクターは、抗原を発現し、遺伝的に安定であり、コードされた抗原の両方に対する免疫応答を誘導したが、抗原発現および誘導された免疫応答は、以下に説明するようにバランスがとれていなかった。双方向性プロモーターの右側に置かれた抗原の発現は、双方向性プロモーターの左側に置かれた抗原よりも高く、双方向性プロモーターの右側に置かれた抗原に対してより高い免疫応答を生じた。mCMVの発現レベルの双方向の差は、約10倍であった。しかし、1つの抗原のみを発現する2つのベクターの混合物を置換するために、特定の用途では、両方の抗原の同等レベルの抗原発現を誘導するバランスのとれた双方向性プロモーターが望ましい。さらに、双方向性プロモーターのサイズが比較的小さい場合に有益であろう。
【0103】
強力でよりバランスのとれた双方向性プロモーターを特定するために、新しい双方向性プロモーターのパネルを設計した。アデノウイルスベクターの全体的なサイズ制限のため、抗原のための十分な空間を保持するために最大サイズ2kBを有する小さいサイズの双方向性プロモーターの設計が好ましかった。さらに、アデノウイルスベクターにおける相同組換えによる欠失を防ぐために、配列同一性の広範なストレッチのない(<15ヌクレオチド)構築ブロックが好ましかった。本発明の双方向性プロモーターは、双方向性プロモーター配列の両側に配置された遺伝子の発現を制御する双方向様式で遺伝子を発現させる。これらの双方向性プロモーターは、プロモーターエレメントの他にエンハンサーエレメントおよびイントロンエレメントを含み、本明細書中に記載される構築ブロックによって定義される連続遺伝子調節配列である。合成双方向性プロモーターの設計に使用される構築ブロックは、既知の強力な一方向性プロモーター、エンハンサーおよびイントロン配列に由来する。プロモーターは、プロモーター配列の下流に配置された1つの遺伝子の発現を駆動し、通常、TATAボックス配列および転写開始部位(TSS)を含む。エンハンサー配列は、プロモーターからの遺伝子発現を増強することができる。イントロン配列は、インビトロ、および特にインビボでの遺伝子発現を増加させると記載されている。
【0104】
双方向性プロモーターコンストラクトの以下のパネルを設計し、試験した。
1.rCMV−hEF1α I(図1A、配列番号1)
2.rCMV−hEF1α II(図1B、配列番号2)
3.rhCMV−CAG1(図1C、配列番号3)
4.hCMV−rhCMV(図1D、配列番号4)
5.rCMV−CAG(図1E、配列番号5)
6.rhCMV−CAG2(図1F、配列番号6)
7.rCMV bidir 1(図1G、配列番号10)
8.rCMV bidir 2(図1H、配列番号8)
9.rCMV bidir 1.1(図1I、配列番号7)
10.hCMV−CAG4(図1J、配列番号11)
【0105】
以前の特許出願(国際出願第PCT/欧州特許出願公開第2016/057982号明細書)中の他の双方向性プロモーターコンストラクトも試験した。
1.mCMV bidir.
2.hCMV−CAG
3.mCMV−CAG
【0106】
双方向性プロモーター設計およびそれらの構築ブロックの概略図を図1に示し、以下により詳細に説明する。
【0107】
異なる設計で使用されるプロモーターおよびエンハンサー構築ブロックは、サイトメガロウイルス最初期(IE)領域(本明細書中では、通常、hCMVプロモーターおよびhCMVエンハンサーと称され、ときにhCMV IEとも称される)、ニワトリベータアクチン/ウサギベータグロビンプロモーター配列、およびヒト伸長因子1αプロモーター(hEF1αプロモーター)配列に由来する。イントロンは、キメラニワトリベータアクチン/ウサギベータグロビン配列、hEF1α第1イントロンおよびヒトアポリポタンパク質A−1イントロン(hApoA1イントロン)に由来する。
【0108】
ヒトサイトメガロウイルス主要最初期プロモーターは、種々の哺乳動物細胞株における強力なプロモーターとして知られている(Powell et al.,2015)。hCMVおよび他のヘルペスウイルスは、3期、すなわち最初期(IE)、初期および後期において遺伝子を発現する。主要最初期プロモーターは、種々の哺乳動物細胞株において高レベルで異種遺伝子を活性化する。
【0109】
ヒトサイトメガロウイルスの主要最初期プロモーターおよびエンハンサーは、導入遺伝子発現カセットの設計において最も頻繁に使用される(Addison,Hitt,Kunsken,&Graham,1997;C.Harro et al.,2009)が、マウス(mCMV)(Addison et al.,1997;Chatellard et al.,2007;C.Harro et al.,2009)、ラット(rCMV)(Sandford&Burns,1996;Voigt,Sandford,Hayward,&Burns,2005)およびアカゲザル(rhCMV)(Barry,Alcendor,Power,Kerr,&Luciw,1996;Chan,Chiou,Huang,&Hayward,1996;Chang et al.,1993;Hansen,Strelow,Franchi,Anders,&Wong,2003)などの他の種に感染するサイトメガロウイルスの主要最初期プロモーターおよびエンハンサーも知られており、強力な発現カセットの設計に使用され得る。具体的には、アカゲザルCMV配列は、オナガザルヘルペスウイルス5型(Cercopithecine herpesvirus 5)の主要最初期領域に由来する。アカゲザルCMVショートプロモーター部分をhCMVおよびチンパンジーCMVショートプロモーターとのアラインメントによって同定した。hEF1αプロモーターも哺乳動物細胞における異種遺伝子発現のための強力なプロモーター配列であると記載されている(Kim,Uetsuki,Kaziro,Yamaguchi,&Sugano,1990)。
【0110】
hCMVエンハンサー、ニワトリベータアクチンプロモーター(A)およびハイブリッドニワトリベータアクチン/ウサギベータグロビンイントロン(G)配列からなるキメラプロモーターCAGは、異種遺伝子の発現のための強力なプロモーターであると記載され、短縮することができ、抗原の発現に利用することができる(Richardson et al.,2009)。Richardsonらによる研究は、ハイブリッドイントロンが有意に短縮されたΔ829CAGプロモーターバージョンを生じるCAGプロモーターの改変を記載している。このhCMVエンハンサーを含まないΔ829CAGプロモーターバージョン(Δ829AG)を双方向性プロモーターの設計のためのビルディングブロックとして使用した(図面ではAG部分として示すが、双方向性プロモーターの名称ではCAGと称し、本明細書全体を通してCAGまたはAGと称する)。
【0111】
以下では、双方向性プロモーター配列を設計するための構築ブロックの配置を記載する。
【0112】
短縮されたAGプロモーターおよびhEF1αプロモーターは、記載された強力な調節配列の重要な部分としてイントロンを有する。AGプロモーターまたはhEF1αプロモーターが双方向性プロモーター設計において使用された場合、本発明者らはまた、双方向性プロモーター設計の反対側に異種イントロン配列を配置した。rCMV最初期プロモーターの異なる潜在的な双方向性プロモーター設計をマウスCMVプロモーターの天然の双方向性に基づいて作製した。
【0113】
hEF1α由来のイントロンおよびmCMVプロモーター配列の合成組み合わせにより、強力な調節配列が得られることは以前から記載されている。したがって、hEF1α配列をrCMVプロモーター(mCMVのようなムロメガロウイルスに由来する別のプロモーター)およびエンハンサーのエレメントと組み合わせて、双方向性プロモーター配列rCMV−hEF1αIおよびrCMV−hEF1αIIを設計した(例えば、図1Aおよび1Bを参照されたい)。hEF1αイントロンは、発現レベルを増加させると記載されているが、非常に長い配列であるため、本発明者らの設計では、CAGプロモーターについての実験的方法(Richardson et al.,2009)によって記載されるように、hEF1αイントロン配列を有意に短縮することを試みた。この目的のために、記載されたスプライスドナー、スプライスアクセプターおよび推定分岐点部位、さらに記載された細胞因子結合部位を保存しながら、イントロン配列の一部を除去した。プロモーター/イントロン組み合わせhEF1α Iがプロモーター/イントロン組み合わせhEF1α IIよりも多くの部位を保存し、双方向性プロモーターrCMV−hEF1α IおよびrCMV−hEF1α IIが得られる、2種の異なるバージョンの短縮イントロンを設計した。
【0114】
さらなる双方向性プロモーターの設計は、アカゲザルCMV(rhCMV)、ラットCMV(rCMV)およびヒトCMV(hCMV)を含む、異なる種に由来するサイトメガロウイルス主要最初期プロモーターのエンハンサーおよびプロモーター配列と組み合わせた、短縮されたAGプロモーターに基づく。これらの双方向性プロモーターは、rhCMV−CAG1、rhCMV−CAG2、hCMV−CAG4およびrCMV−CAGと呼ばれる。rhCMV−CAG1とrhCMV−CAG2との間の差異は、rhCMVエンハンサー配列の配向である。
【0115】
さらなる双方向性プロモーター設計は、hCMVエンハンサー、ヒトCMVプロモーター(hCMV)、およびアカゲザルCMVプロモーター(rhCMV)の組み合わせに基づいて行った。得られた双方向性プロモーターコンストラクトは、本文全体を通してhCMV−rhCMVと呼ばれる。
【0116】
2つのプロモーターが隣接した1つのエンハンサーの配置が2つの目的遺伝子の協調発現をもたらすことが以前に記載されている(Amendola et al,2005)ため、強力なプロモーターおよびエンハンサー構築ブロックの使用は、理論的には同等の強度およびバランスの双方向性プロモーターをもたらす。
【0117】
合成双方向性プロモーター設計に加えて、rCMV mIE領域に由来する潜在的に天然の双方向性プロモーターを双方向性プロモーター配列rCMV bidir 1およびrCMV bidir 2およびrCMV bidir 1.1のベースとして使用した。3つの双方向性プロモーターの設計の全ては、rCMVエンハンサー配列の両側に推定最小rCMVプロモーターおよび推定最小rCMV vOX2プロモーターを有するが、設計は、エンハンサー断片の長さおよびエンハンサー断片の配向が異なる。vOX2プロモーターは、MIE領域の直接右側のラット細胞CD200(vOX2)遺伝子の転写を駆動している(Voigt et al.,2005)。
【0118】
実施例2:レポーター遺伝子の強力でバランスのとれた発現のための異なるプロモーターコンストラクトのスクリーニング
第1のスクリーニング実験において、異なる双方向性プロモーターコンストラクトからの発現を、レポーター遺伝子ルシフェラーゼおよびeGFPを使用して、HEK293における一過性トランスフェクションにより、定量的強度読み出しについて評価した。pAdapt35プラスミドの一過性トランスフェクションでは、双方向性プロモーターは、双方向性プロモーターの左側にルシフェラーゼ導入遺伝子を、右側にeGFP導入遺伝子を有した。
【0119】
異なる双方向性プロモーター設計を有するプラスミドを用いて、3つの独立したトランスフェクション実験を行った。実験1(図2A)では、プロモーターrCMV bidir.2、rCMV−hEF1α II、rhCMV−hEF1α I、rhCMV−CAG1およびhCMV−rhCMVを試験した。rCMV bidir.2、rCMV−EF1α IIおよびrhCMV−CAG1は、一方向制御のhCMVプロモーター(配列番号9)よりも効力が低いものの、常に双方向性プロモーター機能を示すが、rCMV−hEF1α Iは、eGFP発現について陰性対照を上回るプロモーター強度を示さず、ルシフェラーゼ発現についてそれほど低いプロモーター強度を示さない。実験1では、hCMV−rhCMVが最も強力な双方向性プロモーターである。驚くべきことに、hCMV−rhCMVは、一方向性hCMVプロモーターより発現レベルがわずかに低いものの、非常にバランスのとれた導入遺伝子発現を有する強力な双方向性プロモーターである。スクリーニング実験2(図2B)では、プロモーターhCMV−CAG4、rCMV bidir.1.1、rCMV−CAGを試験した。hCMV−CAG4プロモーターは、両側で強力なプロモーター活性を示し、それは、この実験における一方向性hCMV対照と同等であるか、またはそれよりもさらに高かった。rCMV bidir.1.1プロモーターは、予想に反して両側で低いプロモーター強度を示した。双方向性rCMV−CAGプロモーターは、hCMV一方向性対照の強度と比較して両側からより低く、また双方向性hCMV−rhCMVプロモーター(このデータは図2Aに示されている)と比較しても両側でより低く、かつバランスがとれていない双方向性プロモーター強度を示す。第3のスクリーニング実験では、2つの新しい双方向性プロモーターrhCMV−CAG2、rCMV bidir.1、および2つの既に試験した双方向性プロモーターhCMV−rhCMVおよびhCMV−CAG4を試験した。rhCMV−CAG2は、一方向性hCMV対照と比較して弱いものの、双方向性プロモーター強度を示したが、rCMV bidir1は、プロモーターの右側に配置されたeGFPの発現のみを誘導し、ルシフェラーゼ活性は、非トランスフェクト細胞対照の範囲であった。この実験3では、双方向性プロモーターhCMV−rhCMVおよびhCMV−CAG4を再び試験し、それらの有望な強度およびバランスを確認した。このような細胞に基づく生物学的トランスフェクション実験において予想されるように、実験1と実験3との間にいくらかの変動が観察される。hCMV−rhCMVおよびhCMV−CAG4の両方は、一方向性hCMVプロモーター対照と比較して実験1よりも実験3において低い強度を示す。hCMV−rhCMVは、hCMV−CAG4よりも効力が低いが、eGFPおよびルシフェラーゼ発現に関してよりバランスがとれている。したがって、hCMV−rhCMVは、非常にバランスのとれた導入遺伝子発現を有する強力な双方向性プロモーターであり、かつまた比較的短いという利点を有する。
【0120】
驚くべきことに、構築ブロックの全ての組み合わせが、強力でバランスのとれた双方向性プロモーターをもたらしたわけではない。例えば、hCMV−CAG4、およびrhCMV−CAG1、およびrhCMV−CAG2は、それらの構築ブロックに関して類似している。3つの異なる設計は、全て異なる種に由来するが、記載された強力なCMV由来のエンハンサーおよびプロモーターと、以前に記載された同一の強力なCAGプロモーターとを使用する。しかし、驚くべきことに、hCMV−CAG4は、rhCMV−CAG1およびrhCMV−CAG2よりも強力である。さらに、CAGプロモーター部分は、hCMVプロモーターより強力であると記載されているが、双方向性の設定では、hCMVプロモーター構築ブロックに結合した導入遺伝子の発現は、CAGプロモーター構築ブロックに結合した導入遺伝子の発現を超えていた。これは、他のコンステレーションにおいて使用された場合、以前から知られている構築ブロックから新たな双方向性プロモーターを作製することの予測が不可能であることを明確に示している。試験した双方向性プロモーターコンストラクトのセットから、hCMV−rhCMVは、強力な双方向性プロモーターコンストラクトの最もバランスのとれた候補として特定された。記載された強力なプロモーターおよびエンハンサーの構築ブロックからのhCMV−rhCMVプロモーターの設計から、このプロモーターが強力であり(他の新規なhCMV−CAG4双方向性プロモーターよりもやや弱いが)、かつ非常にバランスがとれている(国際公開第2016/166088号パンフレットに記載されたmCMV双方向性プロモーターよりもはるかにバランスがとれており、さらにhCMV−CAG4双方向性プロモーターよりもいくぶんバランスがとれている)ことは予測できなかった。さらに、双方向性hCMV−rhCMVプロモーターは、他のプロモーター設計よりもかなり短い(1kB未満の長さを有する)という利点を有する。これは、この双方向性プロモーターの使用が他の双方向性プロモーターと比較して、rAdsなどの空間制限を有するベクターにおいて、導入遺伝子のためのより多くの空間を残す(すなわちより長い導入遺伝子を可能にする)ことを意味する。異なる一方向性プロモーター構築ブロックからなる残りの試験された合成双方向性プロモーター設計は、主に良好な双方向性プロモーター機能を示したが、それらは、一般に、hCMV−rhCMVプロモーターよりも強力でなく、かつバランスがとれていなかった。
【0121】
rCMV最初期プロモーターを、マウスCMV双方向性プロモーターに匹敵するが、それほど強力ではない双方向性プロモーターとして設計することができる。これらの結果は、構築ブロックのいずれの組合せが双方向性プロモーターの良好な機能(両方向における強力な発現、すなわちhCMV一方向性プロモーターの制御下で少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%の発現)を提供するかを予測することは不可能であることを示している。
【0122】
構築ブロックの同一性および配向についての注釈を含むhCMV−rhCMVの概略図を図3に示す。双方向性hCMV−rhCMVプロモーターの右側は、アカゲザルCMVプロモーター構築ブロック(rhCMV)を含み、双方向性hCMV−rhCMVプロモーターの左側は、hCMVプロモーター構築ブロックと、hCMVプロモーターと同じ方向の双方向性プロモーターの左側を指すように逆向きのhCMVエンハンサー構築ブロックとを含む。ここでの「左」および「右」という用語は、説明を容易にするために用いられているが、当業者は、双方向性hCMV−rhCMVプロモーターコンストラクトも向きを変え、逆向きで用いられ得ることを直ちに認識するであろう。hCMV−rhCMVプロモーターは、1kb未満の比較的小さいサイズであり、組換えアデノウイルスベクターにおける双方向性プロモーターとしての使用によく適していることにも留意されたい。
【0123】
実施例3:hCMV−rhCMV発現カセットを有するアデノウイルスベクターからの導入遺伝子発現の強度およびバランス
アデノウイルスベクターのE1領域からの発現の強度およびバランスをさらに評価するために、本発明者らは、E1領域にhCMV−rhCMV双方向性発現カセットを有するAd26ベクターおよびAd35ベクターを生成した。4つの異なるベクトル、すなわちAd26.eGFP.hCMV−rhCMV.Luc、Ad26.Luc.hCMV−rhCMV.eGFP、Ad35.eGFP.hCMV−rhCMV.LucおよびAd35.Luc.hCMV−rhCMV.eGFPを作成し、非相補性A549細胞の形質導入時のレポーター遺伝子発現の強度およびバランスを評価した。形質導入は、100VP/細胞および1000VP/細胞で行った。両方のVP/細胞比での結果は、類似していたため、1000VP/細胞での形質導入の結果のみを図4に示す。100VP/細胞および1000VP/細胞での発現の10倍の差異を推定するために、一方向性hCMVプロモーターの制御下でレポーター遺伝子を発現する陽性対照ベクターAd.LucおよびAd.eGFPの形質導入を示す。パネル4Aは、hCMV−rhCMVが、1000VP/細胞でのAd26.LucおよびAd26.eGFP対照ベクターよりわずかに低い発現レベルにおいて、Ad26 E1双方向性発現カセットからの両方のレポーター遺伝子の強力な発現を誘導することを示す。Ad26.Luc.hCMV−rhCMV.eGFPをAd26.Luc.mCMV bidir.eGFPとさらに直接比較すると、Ad26.Luc.hCMV−rhCMV.eGFPは、mCMV bidirと比べてeGFP導入遺伝子の発現の低下を示すが、全体的によりバランスのとれた導入遺伝子の発現も示している。パネル4Bは、Ad35ベクターにおけるhCMV−rhCMV双方向性発現カセットからの導入遺伝子の発現を示す。興味深いことに、Ad35ベクターにおける発現プロフィールは、Ad26ベクターにおける発現プロフィールとわずかに異なっていた。したがって、強力な双方向性プロモーターは、異なる血清型に由来するrAdVにおいて使用され得るが、異なるプロモーターは、1つのrAdVにおける使用が他のものよりも最適であり得、さらに、プロモーターおよび発現カセットの複雑な設計が最適なウイルスベクターのために必要とされることを例示する。
【0124】
実施例4:E1領域にhCMV−rhCMV双方向性発現カセットを有するアデノウイルスベクターの遺伝的安定性試験
導入遺伝子の発現に加えて、AdVを産生している間の遺伝的安定性は、2つの抗原を発現する有用なAdVにとって重要なパラメータである。したがって、先行出願の国際公開第2016/166088号パンフレットに記載のように遺伝的安定性を試験した。簡潔に記載すると、ベクターAd26.Luc.hCMV−rhCMV.eGFPおよびAd26.eGFP.hCMV−rhCMV.LucをPER.C6細胞におけるプラスミドトランスフェクションによって生成し、ウイルス集団をプラークピッキングによって単離した。1ベクター当たり10個のプラークをウイルス継代数(vpn)3まで増殖させた。その後、5つのプラークを選択し、vpn13まで継代を延長した。遺伝的安定性をE1発現カセット領域(図5)ならびにE3およびE4領域(E3およびE4PCRのデータは示さず)の同一性PCRによって評価した。小さい欠失または点変異の欠如をvpn13のE1 PCR産物の標準的なサンガーシーケンシングによって確認した。Ad26.Luc.hCMV−rhCMV.eGFPおよびAd26.eGFP.hCMV−rhCMV.Lucの両方の5つのプラークのうちの5つがvpn13まで遺伝的に安定なままであった。
【0125】
結論
上記のように、新しい双方向性プロモーターコンストラクトのパネルをスクリーニングすることにより、いずれの双方向性プロモーターコンストラクトが所望のプロモーター特性を与えるかを予測することは不可能であることがわかった。実際、非常に類似しているように思われる双方向性プロモーターコンストラクトでさえ、必ずしも同じ結果を与えない。例えば、左側にヒトCMVプロモーター(hCMV)および右側に短いアカゲザルCMVプロモーター(rhCMV)を有する双方向性hCMV−rhCMVプロモーターは、特にrAd26およびrAd35ベクターのE1領域からの2つの異なる導入遺伝子のバランスのとれた発現を示した。驚くべきことに、双方向性hCMV−rhCMVプロモーターは、導入遺伝子発現の強度およびバランスを兼ね備え、かつまた長さが1kB未満と非常に小さい。双方向性hCMV−rhCMVプロモーターを有するrAdは、PER.C6細胞においてP13に連続継代した後でさえも遺伝的に安定であることがわかった。したがって、本発明の双方向性hCMV−rhCMVプロモーターは、遺伝子治療およびワクチンに使用することができる組換えウイルスベクターでの使用、特にバランスのとれた強力な発現が重要である場合、および/または小サイズの双方向性hCMV−rhCMVプロモーターが有用である場合の使用に驚くほど好ましい特性を備えたプロモーターである。
【0126】
【表1】

以下の態様を包含し得る。
[1] 1つの方向において第1の導入遺伝子に、かつ逆方向において第2の導入遺伝子に作動可能に連結された双方向性プロモーター(hCMV−rhCMVプロモーター)を含む組換え核酸分子であって、前記hCMV−rhCMVプロモーターは、
(i)エンハンサーと、その両側に配置されている、
(ii)前記エンハンサーの一方の側のヒトサイトメガロウイルス主要最初期プロモーター(hCMVプロモーター)と、
(iii)前記エンハンサーの他方の側のアカゲザルサイトメガロウイルス主要最初期プロモーター(rhCMVプロモーター)と
を含み、
(iv)前記第1の導入遺伝子は、前記hCMVプロモーターの下流に位置し、および
(v)前記第2の導入遺伝子は、前記rhCMVプロモーターの下流に位置する、組換え核酸分子。
[2] 前記エンハンサーは、ヒトサイトメガロウイルス主要最初期エンハンサー(hCMVエンハンサー)である、上記[1]に記載の組換え核酸分子。
[3] 前記第1および第2の導入遺伝子は、異なり、およびそれらの少なくとも1つは、抗原をコードする、上記[1]または[2]に記載の組換え核酸分子。
[4] 上記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の組換え核酸分子を含む組換えベクターまたは組換えウイルス。
[5] プラスミドベクターである、上記[4]に記載の組換えベクター。
[6] アデノウイルスである、上記[4]に記載の組換えウイルス。
[7] 前記アデノウイルスは、E1領域に欠失を有する、上記[6]に記載の組換えアデノウイルス。
[8] ヒトアデノウイルス血清型35またはヒトアデノウイルス血清型26である、上記[6]または[7]に記載の組換えアデノウイルス。
[9] 遺伝的に安定な組換えアデノウイルスであって、前記アデノウイルスが標的細胞に感染すると、それぞれが強力に発現される第1および第2の導入遺伝子を含む遺伝的に安定な組換えアデノウイルスを製造する方法であって、
a)1つの方向において第1の導入遺伝子に、かつ逆方向において第2の導入遺伝子に作動可能に連結された上記[1]に記載の双方向性hCMV−rhCMVプロモーターを含むコンストラクトを調製する工程と、
b)前記コンストラクトを前記組換えアデノウイルスのゲノムに組み込む工程と
を含む方法。
[10] 前記エンハンサーは、hCMVエンハンサーである、上記[9]に記載の方法。
[11] 前記組換えアデノウイルスは、そのゲノムのE1領域に欠失を有する、上記[9]または[10]に記載の方法。
[12] 前記第1および第2の導入遺伝子は、異なり、およびそれらの少なくとも1つは、抗原をコードする、上記[9]〜[11]のいずれか一項に記載の方法。
[13] 前記組換えアデノウイルスは、ヒトアデノウイルス血清型35またはヒトアデノウイルス血清型26である、上記[9]〜[12]のいずれか一項に記載の方法。
[14] 細胞内で少なくとも2つの導入遺伝子を発現させる方法であって、上記[4]〜[8]のいずれか一項に記載の組換えベクターまたは組換えウイルスを細胞に提供する工程を含む方法。
[15] 少なくとも2つの抗原に対する免疫応答を誘導する方法であって、上記[4]〜[8]のいずれか一項に記載の組換えベクターまたは組換えウイルスを対象に投与する工程を含む方法。
[16] 上記[6]〜[8]のいずれか一項に記載の組換えアデノウイルスのゲノムを含む組換えDNA分子。
[17] 上記[4]〜[8]のいずれか一項に記載の組換えベクターまたは組換えウイルスと、薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む医薬組成物。
【0127】
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図1-2】
図1-3】
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図3
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【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]