(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6683881
(24)【登録日】2020年3月30日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】ポリマーホーゼルを備えるゴルフクラブヘッド
(51)【国際特許分類】
A63B 53/04 20150101AFI20200413BHJP
【FI】
A63B53/04 B
【請求項の数】17
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2019-220389(P2019-220389)
(22)【出願日】2019年12月5日
(62)【分割の表示】特願2017-561690(P2017-561690)の分割
【原出願日】2016年4月4日
(65)【公開番号】特開2020-39927(P2020-39927A)
(43)【公開日】2020年3月19日
【審査請求日】2019年12月9日
(31)【優先権主張番号】14/724,373
(32)【優先日】2015年5月28日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591086452
【氏名又は名称】カーステン マニュファクチュアリング コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レイモンド ジェー. サンダー
【審査官】
比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭61−263466(JP,A)
【文献】
特開昭59−101166(JP,A)
【文献】
実開昭58−194008(JP,U)
【文献】
特開昭58−185177(JP,A)
【文献】
実開昭52−158668(JP,U)
【文献】
米国特許第3571900(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC A63B 53/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフト若しくはシャフト・アダプタまたはそれらの両方を有するゴルフクラブのゴルフクラブヘッドのためのポリマーホーゼルを製造する方法であって、
樹脂と前記樹脂に埋め込まれている複数の不連続な繊維を含むポリマー材料から管状のホーゼル本体を成形するステップであって、成形された前記管状のホーゼル本体は、長手方向軸を備えており、中心長手方向軸を有する穴と前記シャフトまたは前記シャフト・アダプタを受け入れるように構成された開口部とを画定しており、前記管状のホーゼル本体は前記ポリマー材料が前記管状のホーゼル本体の第1の端部から前記管状のホーゼル本体の第2の端部へと流れるように、前記ポリマー材料を型の中へと射出することを有している、ステップと、
前記複数の不連続な繊維の少なくとも50%が前記管状のホーゼル本体の前記長手方向軸に対して平行または約30度以内に方向付けられるように、前記ポリマー材料の型流れが前記中心長手方向軸に対して平行となるように、前記管状のホーゼル本体の前記第1の端部で前記型にゲートを付けるステップと、を備え、
前記管状のホーゼル本体は、前記ゴルフクラブヘッドのボディと繋がっている、方法。
【請求項2】
前記複数の不連続な繊維のそれぞれは、約0.01mから約12mmの長さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記管状のホーゼル本体の前記第2の端部で前記型にベントを設けるステップをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記管状のホーゼル本体の前記第2の端部は、前記ゴルフクラブシャフトまたは前記シャフト・アダプタを前記穴の中に挿入できるようにする開口部を画定する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記成形するステップは、前記複数の不連続な繊維の少なくとも70%が前記長手方向軸に対して約20度以内に方向付けられるように実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
クラブヘッド・ボディが前記管状のホーゼル本体と一体に形成されるように、前記ポリマー材料からクラブヘッドのボディを成形するステップをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記成形するステップは、前記複数の不連続な短繊維の少なくとも60%が前記長手方向軸に対して約20度以内に方向付けられるように実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ゴルフクラブヘッドと、ゴルフクラブシャフト若しくはシャフト・アダプタまたはそれらの両方と、を有するゴルフクラブのためのポリマーホーゼルを製造する方法であって、
管状のホーゼル本体が中心長手方向軸を有する穴と前記ゴルフクラブシャフトまたは前記シャフト・アダプタを受け入れて取り付けられように構成された開口部とを画定するように、ポリマー材料から管状のホーゼル本体を成形するステップであって、前記ポリマー材料は埋め込まれた複数の不連続な短繊維を含む熱可塑性樹脂を有しており、前記管状のホーゼル本体を成形するステップは前記ポリマー材料が前記管状のホーゼル本体の第1の端部から前記管状のホーゼル本体の第2の端部へと流れるように、前記ポリマー材料を型の中へと射出することを有している、ステップと、
前記複数の不連続な短繊維の少なくとも70%が前記穴の前記中心長手方向軸に対して平行または約20度以内に方向付けられるように、前記管状のホーゼル本体の前記第2の端部で前記型にベントを設けるステップと、を備える、方法。
【請求項9】
前記ポリマー材料の型流れが前記中心長手方向軸に対して平行となるように、前記管状のホーゼル本体の前記第1の端部で前記型にゲートを付けるステップをさらに備える、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記複数の不連続な短繊維のそれぞれが、約0.01mmから約12mmの長さを有する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリマー材料は、約40重量%から約90重量%の樹脂のものである、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリマー材料は、約55重量%から約70重量%の樹脂のものである、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記熱可塑性樹脂が熱可塑性ポリアミドである、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記複数の不連続な短繊維がチョップドカーボンファイバーである、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記複数の不連続な短繊維がチョップドグラスファイバーである、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
前記管状のホーゼル本体の前記穴が、約8mmから約9mmの直径を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項17】
スプラインが前記管状のホーゼル本体と一体成型されている、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、ポリマーホーゼルを有するゴルフクラブヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフクラブは、概して、細長いシャフトの端部上に配置されたクラブヘッドを含む。プレー中、ボールを意図する方向へ、望ましい垂直方向軌道で打ち出すために、クラブヘッドをスイングして、地面に置かれた静止状態のボールに接触させることができる。
【0003】
ゴルフクラブヘッドを形成するとき、多くの設計パラメータを検討しなくてはならない。例えば、設計は、クラブとボールの間、ならびにクラブと地面の間で繰り返される衝撃力に耐える十分な構造的弾力性を提供しなくてはならない。クラブヘッドは、様々なルール設定協会により設定された最大サイズ要件に準拠する必要があり、またクラブのフェースは、事前に規定された最大値(適用可能な基準に従って測定される)を超える反発係数を有してはならない。いくつかの事前に規定された設計制約が満たされていると仮定して、クラブヘッド設計は、通常、重心の大きさおよび位置、ならびに重心および/またはシャフト回りのヘッドの慣性モーメントにより定量化される。
【0004】
クラブの慣性モーメントは、回転に対する(特に中心からずれた打撃における)クラブの抵抗に関連し、またクラブの「復元許容性(forgiveness)」の尺度として認識されることが多い。典型的なドライバー設計では、高い慣性モーメントは、ボールをプッシュまたはフェードさせるクラブの傾向を低減するために望ましい。高い慣性モーメントを達成することは、概して、質量を、可能な限りクラブの周囲の近くに(重心回りの慣性モーメントを最大化するために)、かつ可能な限りトウの近くに(シャフト回りの慣性モーメントを最大化するために)配置することを含む。
【0005】
慣性モーメントは、クラブヘッドの復元許容性に影響を与えるが、クラブフェースの背後の(かつソールの上の)重心の位置が、一般に、所与のフェース・ロフト角に対するショットの軌道に影響を与える。可能な限り後方に遠く(フェースから離れて)、かつ低く(ソールの近くに)位置付けられた重心により、通常、重心がより前方に、かつ/より高く配置された状態のクラブヘッドよりも高い軌道を有するボールの飛行が得られる。
【0006】
クラブヘッドの周囲重量を増加させることによって、高い慣性モーメントが得られるが、クラブヘッドの合計質量/スイングウェイト(すなわち、重心の大きさ)における増加は、クラブヘッド速度および打った距離に対して、強い負の影響を有する。言い換えると、クラブヘッド速度(および打った距離)を最大にするためには、低い合計質量が望ましいが、低い合計質量は、概して、クラブヘッドの慣性モーメント(および復元許容性)を低下させる。
【0007】
スイング速度(質量)と復元許容性(慣性モーメント)との間の対立関係においては、特定のゴルファーまたは能力レベルにクラブの性能を合わせるために、クラブヘッドの全体にわたって特定の位置に様々な量の質量を配置することが望ましい場合がある。この方法では、合計のクラブヘッド質量は、概して、構造的な質量と自由裁量の質量との2つのカテゴリーに分類することができる。
【0008】
構造的な質量とは、概して、繰り返される衝撃に耐えるのに必要な構造的弾力性をクラブヘッドに提供するのに必要とされる材料の質量を指す。構造的な質量は、設計依存性の高いものであり、設計者に、特定の質量分布に対する比較的低い制御量を提供する。他方で、自由裁量の質量とは、クラブの性能および/または復元許容性をカスタマイズするだけの目的で、クラブヘッド設計に追加され得る任意の付加質量である。理想的なクラブ設計においては、顧客により期待されるスイングウェイトを維持しつつ、構造的な質量の量を最小化して(弾力性を犠牲にすることなく)、クラブ性能をカスタマイズするより大きな能力を設計者に提供することになる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
ゴルフクラブヘッドは、フェース、クラブヘッド・ボディ、およびホーゼルを含む。ホーゼルは、長手方向軸に沿って延びるとともに穴を画定する管状のホーゼル本体を有する。穴は、ゴルフクラブシャフトまたはシャフト・アダプタを受け入れるように構成される。管状のホーゼル本体は、樹脂および複数の繊維を含むポリマー材料から成形され、各繊維は、約0.01mmから約12mmの長さを有する。
【0010】
一構成では、ゴルフクラブヘッドのためのポリマーホーゼルを製作する方法は、ポリマー材料から管状のホーゼル本体を成形するステップを含む。管状のホーゼル本体は、長手方向軸の回りに成形されており、ゴルフクラブシャフトまたはシャフト・アダプタを受け入れるように構成された穴を画定する。さらに、ポリマー材料は、樹脂と、約0.01mmから約12mmの長さをそれぞれが有する複数の繊維を含む。樹脂は、熱可塑性のものであることが好ましく、カーボン充填ポリアミドとすることができる。
【0011】
本発明の上記の特徴および利点、ならびに他の特徴および利点は、添付図面と併せて読めば、本発明を実施するための最良の形態の以下の詳細な説明から容易に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】取外し可能なフェースを有するゴルフクラブの概略的な正面図である。
【0013】
【
図2】線2−2に沿った
図1のホーゼルの概略的な部分横断面図である。
【0014】
【
図3】埋め込まれた繊維の方向を示す、
図2で提供された「
図3」とマークされた領域の一部の概略的な拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面を参照すると、ここで、同様の参照数字は、様々な図における同様の、または同一の構成要素を識別するために使用されるが、
図1は、全体的にフェース部分12(すなわち、「フェース12」)と、ボディ部分14(すなわち、「ボディ14」)とを含むウッドタイプのゴルフクラブヘッド10(すなわち、「クラブヘッド10」)の概略的な斜視図を示している。
図1で概略的に示されるように、クラブヘッド10は、細長いシャフト16の端部に取り付けることができ、細長いシャフト16は、ユーザにより把持され、かつスイングされて、クラブヘッド10に、概して弧状運動を付与することができる。
【0016】
クラブヘッド10のフェース12は、概してクラブヘッド10の先端面を形成し、かつクラブヘッド10から外に延びるわずかな凸形/弧状の湾曲を有する。一実施形態では、フェース12の湾曲(すなわち、突出部および/またはロール部)は、約7インチから約20インチの半径を有する。さらに、一般に理解されるように、フェース12は、クラブが、中立的な打つ位置で保持されたとき、垂直平面に対してある角度で配置することができる。この角度は、一般に、クラブのロフト角または傾斜と呼ぶことができる。
図1で示されるものなど、ウッドタイプのクラブヘッド(ハイブリッドウッドを含む)は、最も一般的に、約8.5度から約24度のロフト角を有することができるが、他のロフト角も可能であり、市販されている。
【0017】
クラブヘッド10のボディ14は、概して、フェース12をサポートし、かつフェース12を細長いシャフト16に結合するのを助けるように構成され得る。フェース12は、例えば、接着剤、機械的な締結具30、または溶接(すなわち、フェース12およびボディ14に同様の材料が使用される場合)を使用することにより、ボディ14に固定することができる。ボールとのインパクトは、インパクト点の近くでかなり大きな応力を生成する可能性があるので、一構成では、フェース12は、予測されるどんなインパクト負荷にも耐えるのに適した1つまたは複数の金属材料から形成することができる。適切な材料の例は、これだけに限らないが、ステンレス鋼またはチタンの様々な合金を含むことができる。
【0018】
図1を再度参照すると、ボディ14は、概して、下側部分22(すなわち、「ソール22」)および上側部分24(すなわち、「クラウン24」)を含むことができる。この説明においては、クラウン24は、クラブヘッド10が中立的な打つ位置(すなわち、シャフト16が、垂直平面内に、かつ水平な基準面に対して規定のライ角で完全に維持される位置)に保持されたとき、表面が垂直な接線を有するソール22と接することができる。最後に、クラブヘッド10は、ゴルフクラブシャフト16または適切なシャフト・アダプタ28を受け入れるように構成されたホーゼル26を含む。
【0019】
金属合金で経済的に実行可能なものを超えて構造的な質量を低減するために、クラブヘッド10のボディ14は、ポリマー材料から形成することができる。ポリマー材料の比較的低密度の性質はまた、金属から作られた同様の設計のものよりも、構造的な重量の不利が少ない、より多くの設計融通性を可能にする。一構成では、望ましい設計融通性は、射出成形、圧縮成形、吹込成形、熱成形、または同様のものなどの成形技法を用いて、ポリマー材料を成形して形にすることにより達成され得る。最大の設計融通性を提供するために好ましい成形技法は、射出成形である。
【0020】
重量の節約および設計融通性は重要であるが、ポリマー材料は、さらにクラブヘッド10がボールをインパクトするときに受ける応力に耐える十分な強度を有する必要がある。これは、構造設計と材料設計の選択を組み合わせることによって達成することができる。材料選択に関しては、約200MPa(ASTM D638による)を超える引張強さを有する成形可能なポリマー材料を使用することが好ましく、約250MPaを超えることがより好ましい。
【0021】
一実施形態では、ボディ14は、樹脂および複数の不連続な繊維(すなわち、「チョップド・ファイバー」)を含むポリマー材料から形成することができる。不連続な/チョップド・ファイバーは、例えば、チョップドカーボンファイバー、またはチョップドグラスファイバーを含むことができ、またボディ14を成形する前に樹脂内に埋め込まれる。一構成では、ポリマー材料は、「長繊維の熱可塑性物質」とすることができ、その場合、不連続な繊維が、熱可塑性樹脂に埋め込まれ、またそれぞれは、約3mmから約12mmの設計された繊維長さを有する。別の構成では、ポリマー材料は、「短繊維の熱可塑性物質」とすることができ、その場合、不連続な繊維が、同様に、熱可塑性樹脂に埋め込まれるが、それぞれは、約0.01mmから約3mmの設計された長さを有することができる。いずれの場合も、繊維長さは、成形工程により影響を受ける可能性があり、破損するため、述べられた範囲よりも短くなるものもあり得る。さらにいくつかの構成では、不連続なチョップド・ファイバーは、約10を超えるアスペクト比(例えば、繊維の長さ/直径)により特徴付けることができるが、約50を超え、約1500未満であることがより好ましい。使用される不連続なチョップド・ファイバーの特定のタイプにかかわらず、材料は、約0.01mmから約12mmの繊維長さを有し、かつ約40重量%から約90重量%の樹脂含有率、より好ましくは、約55重量%から約70重量%の樹脂含有率を有することができる。
【0022】
1つの適切な材料は、チョップドカーボンファイバー(すなわち、カーボン充填ポリアミド)で充填された熱可塑性ポリアミド(例えば、PA6またはPA66)を含むことができる。他の樹脂は、いくつかのポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート、エンジニアリング・ポリウレタン、および/または他の同様の材料を含むことができる。
【0023】
一構成では、ボディ14は、完全に単一の工程により成形することができる。複雑な幾何形状が望ましい場合、ロストコア成形、または折り畳み式のスライドを備えた射出成形などの成形技法を使用して、任意の内側凹部もしくは空洞部を形成することができる。別の構成では、一体の設計に代えて、ボディ14は、2つ以上の部分として形成されて、その後で共に接合することができる。このようなマルチピースの設計は、成形工程の複雑さを低減できるが、構成要素を共に融合させるためのさらなる製作段階を加える可能性がある。
【0024】
図2を参照すると、ホーゼル26は、全体的に、長手方向軸42に沿って整列され、かつシャフト16またはシャフト・アダプタ28を受け入れるように構成された中心穴44を画定する管状のホーゼル本体40を含む。ホーゼル本体40が、シャフト16を直接受け入れるように構成される場合、穴44は、約8.5mmから約9.5mmの直径を有することができる。そうではなく、ホーゼル本体40が、シャフト・アダプタ28を受け入れるように構成される場合、穴44は、約8.5mmから約20mm、または約10mmから約15mmの直径を有することができる。さらに、穴44は、約20mmから約40mm、または約25mmから約35mmの、長手方向軸42に沿って測定された深さを有することができる。
【0025】
図示のように、管状のホーゼル本体40は、全体的に第1の端部46と第2の端部48の間で延びている。第1の端部46は、第1の開口部50を画定し、それを通って、ゴルフクラブシャフト16またはシャフト・アダプタ28が穴44の中に挿入され得る。第1の開口部50は、穴と同様の直径を有することができるが、またはわずかに大きく、かつ/または面取りされた入口面を画定することができる。一構成では、第2の端部48は、第1の開口部50よりも小さい直径を有する第2の開口部52を画定することができる。第2の開口部52は、例えば、ねじ56のねじ付部分54が穴44の中へと延びることを可能にするが、ねじ56の頭部58が入るのを妨げることのできる寸法にすることができる。ねじ56は、シャフト16またはシャフト・アダプタ28の端部を管状のホーゼル本体40の第2の端部48に固定するように動作可能であり、したがって、シャフト16またはシャフト・アダプタ28を穴44から引き抜かれないようにすることができる。
【0026】
一構成では、ホーゼル本体40の内部表面58は、複数のスプライン60を含むことができる。複数のスプライン60は、第1の端部46に直接隣接することができ、またシャフト16もしくはシャフト・アダプタ28が、穴44の中に挿入されたとき、シャフト16もしくはシャフト・アダプタ28と、ホーゼル本体40との間の相対的な回転を阻止するように動作可能にすることができる。各スプライン60はそれぞれ、例えば、約0.25mmから約0.5mmの高さもしくは深さを有することができる。
【0027】
ゴルフクラブヘッド10の構造的な重量をさらに低減するために、ホーゼル26、および特に管状のホーゼル本体40は、樹脂と、複数の不連続な/チョップド・ファイバーを共に含むポリマー材料から成形することができる。チョップド・ファイバーは、チョップドカーボンファイバー、またはチョップドグラスファイバーを含むことができ、かつボディ14を成形する前に、樹脂の中に埋め込まれる。一構成では、ホーゼル本体40を形成するために使用されるポリマー材料は、約0.01mmから約12mmの繊維長さ、および約40重量%から約90重量%、またはより好ましくは約55重量%から約70重量%の樹脂含有率を有することが望ましい「長繊維の熱可塑性物質」もしくは「短繊維の熱可塑性物質」とすることができる。
【0028】
ホーゼル本体40のための1つの適切な材料は、チョップドカーボンファイバーで充填された(例えば、PA6またはPA66などの)熱可塑性ポリアミド(すなわち、カーボン充填ポリアミド)を含むことができる。他の樹脂は、いくつかのポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート、エンジニアリング・ポリウレタン、および/または他の同様の材料を含むことができる。
【0029】
ホーゼル26は、概して、クラブヘッド10の高応力部分であるため、ポリマーホーゼルの設計は、予測される衝撃力に繰り返して耐えるのに十分な強度を確実に有することが重要である。最低の可能な重量で必要な強度を達成する最適化された設計を提供するために、可能な限り多くの埋め込まれた強化繊維を長手方向軸42と平行な方向に整列させることが好ましい。100%の繊維を完全に整列させることは達成できない可能性が高いが、繊維の少なくとも50%が、穴44の長手方向軸42に対する平行の約30度以内の平均的長手方向を有する繊維方向をホーゼル本体40の全体にわたって達成することが好ましい。他の、さらにより好ましい実施形態では、繊維の少なくとも60%が、長手方向軸42に対する平行の約20度以内に方向付けられる、または繊維の少なくとも70%が、約10度以内に方向付けられる。
【0030】
図3は、ホーゼル本体40の壁74を形成するポリマー樹脂72内に埋め込まれた複数のチョップド・ファイバー70を概略的に示している。図示のように、各繊維70は、約0.01mmから約12mmである長さ76を有することができる(示された繊維は、必ずしも寸法または密度において縮尺を合わせて示されていないことに留意されたい)。射出成形などの成形工程中に、埋め込まれた繊維70は、流れるポリマーの方向に整列する傾向がある。何らかの繊維(すなわち、特に短繊維の熱可塑性物質)および樹脂を用いる場合、その整列は、型の壁、または部品の縁部の近くでより完全に生ずる傾向がある。これらの層は、せん断層78またはスキン層と呼ばれる。反対に、中心のコア層80内では、繊維70は、よりランダム化され、かつ/または流れるポリマーに対して直角になることがある。これらの実施形態では、コア層80の厚さ82は、成形速度(すなわち、遅い成形速度は、薄いコア層80を生ずる可能性がある)および型設計を含む様々な成形パラメータにより変えることができる。本設計の場合、任意のランダム化されたコア層80の厚さ82を最小化することが望ましい。
【0031】
大多数の繊維70を穴44の長手方向軸42と平行な方向に整列させるために、さらに長手方向軸42と平行な型流れを用いて、ホーゼル本体40を成形することが望ましい可能性がある。一実施形態では、これは、ホーゼル本体40の第2の端部48の近くで対応する型にゲートを付け、かつ第1の端部46の近くで型にベントを設けることにより達成することができる。例えば、
図2で示すように、ホーゼル本体40は、84にゲートを付け、86にベントを設けることができる。このような型設計により、ポリマー材料が第2の端部48を囲んで棚部88を形成することが可能になり、その後、ポリマー材料は、第1の端部46の方向に一様に流れることができる。
【0032】
この設計では、スプライン60は、管状のホーゼル本体40と一体に成形することができる。さらにホーゼル26は、ボディ14と一体に成形することができるが、あるいは別々に成形して、溶接または接着などの接合法により取り付けることも可能である。
【0033】
一構成では、ゴルフクラブヘッド10のためのポリマーホーゼル26を製作する方法は、ポリマー材料から管状のホーゼル本体40を成形することを含む。管状のホーゼル本体40は、長手方向軸42の回りに成形され、かつゴルフクラブシャフト16またはシャフト・アダプタ28を受け入れるように構成された穴44を画定する。さらにポリマー材料は、樹脂72と、約0.01mmから約12mmの長さ76をそれぞれが有する複数の繊維70とを含む。樹脂は、熱可塑性のものであることが好ましく、カーボン充填ポリアミドとすることができる。
【0034】
管状のホーゼル本体40を成形することは、管状のホーゼル本体40の第1の端部46から管状のホーゼル本体の第2の端部48へと流れるように、ポリマー材料を型の中へと射出することを含むことができる。より一様な流れを促進するために、型は、管状のホーゼル本体40の第2の端部48にベントを設けることができる。一構成では、複数の繊維の少なくとも50%が、穴の長手方向軸に対する平行の約30度以内に方向付けられる。
【0035】
この方法で形成される場合、ホーゼル26は、穴44内で固定すべき金属挿入物、または補助的な金属製のホーゼル支持体に対する何らかの必要性を回避することができる。スプラインを付けたポリマーシャフト・アダプタ28を備えた成形されたポリマーホーゼル26の試験は、同じホーゼル26に対して累積して行われた複数の耐久性試験に、ホーゼルの完全性が損なわれる、または顕著に摩耗する何らかの徴候もなく合格している。累積試験は、フェース12とゴルフボールの間で(次第に速度を増加させる)3000回のインパクト、その後にロボット・スイング試験、およびシャフト・アダプタ28の数多くの挿入/取外しサイクルを含んでいる。
【0036】
「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」、「少なくとも1つの」、および「1つまたは複数の」は、相互に交換可能に使用されて、事項の少なくとも1つが存在するが、文脈が明確にその他の形を示さない限り、複数のこのような事項が存在する可能性のあることを示している。添付の特許請求の範囲を含む本明細書における(例えば、量または条件の)パラメータのすべての数値的な値は、数値的な値の前に「約」が実際にあるかどうかにかかわらず、すべての例において「約」という用語によって修飾されるものと理解されたい。「約」は、示された数値的な値が、何らかのわずかな不正確さを許容することを示している(値の正確さへの何らかの近接、その値の前後もしくはかなり近い、おおよそ)。あるいは、「約」により提供される不正確さが、他に当技術分野のこの普通の意味で理解されない場合、本明細書で使用される「約」は、このようなパラメータを測定および用いる通常の方法から生ずる可能性のある少なくとも変動を示す。加えて、範囲の開示は、すべての値、および範囲全体に含まれるさらに分割された範囲の開示を含む。範囲内の各値、および範囲の端点は、本明細書によりすべて別個の実施形態として開示される。「備える/含む(comprises)」、「備える/含む(comprising)」、「含む」、および「有する」という用語は、包含的なものであり、したがって、述べられた事項の存在を指定するが、他の事項の存在を排除するものではない。本明細書で使用される場合、「または」という用語は、列挙された事項のうちの1つまたは複数のものの任意の、かつすべての組合せを含む。様々な事項を互いに区別するために、第1、第2、第3などの用語が使用される場合、これらの指定は、単に便宜上のものに過ぎず、事項を限定するものではない。