特許第6683916号(P6683916)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6683916
(24)【登録日】2020年3月31日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】無線機器及び無線通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04W 72/04 20090101AFI20200413BHJP
   H04W 16/26 20090101ALI20200413BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20200413BHJP
【FI】
   H04W72/04 150
   H04W72/04 132
   H04W16/26
   H04W84/12
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-116776(P2015-116776)
(22)【出願日】2015年6月9日
(65)【公開番号】特開2017-5463(P2017-5463A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2018年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】390040187
【氏名又は名称】株式会社バッファロー
(74)【代理人】
【識別番号】100122275
【弁理士】
【氏名又は名称】竹居 信利
(72)【発明者】
【氏名】水貝 章男
【審査官】 横田 有光
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/142966(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/161950(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/077295(WO,A1)
【文献】 韓国公開特許第10−2013−0109420(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24− 7/26
H04W 4/00−99/00
3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の周波数帯域のうちいずれかの周波数帯域を用いて親機として機能する他の無線機器と通信を行うとともに、子機との間で無線にて通信を行い、前記親機と、前記子機との間の通信を中継する無線機器であって、
当該無線機器自身または前記親機の少なくとも一方における周波数帯域ごとの使用状態を表す情報を取得する手段と、
前記取得した情報により表される周波数帯域ごとの使用状態から、前記周波数帯域の混雑を予測して予測結果情報を得る手段と、
前記予測結果情報に基づいて前記親機との間の通信に用いる周波数帯域を選択する手段と、
前記選択した周波数帯域を用いて前記親機との通信を行う手段と、
を備える無線機器。
【請求項2】
請求項1に記載の無線機器であって、
前記周波数帯域ごとの使用状態を表す情報を得る手段は、前記無線機器自身または前記親機の少なくとも一方を対象機器として、
当該対象機器の周波数帯域ごとの
当該対象機器に接続される前記子機の数、
当該対象機器に接続される前記子機の種類、
当該対象機器と、当該対象機器に接続される前記子機との間の通信の内容、の少なくともいずれかに関する情報を、前記使用状態を表す情報として得る、無線機器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の無線機器であって、
当該無線機器自身または前記他の無線機器の少なくとも一方が、前記子機との間で映像情報または音声情報の送受を行っている場合には、当該映像情報または当該音声情報の送受に用いている周波数帯域を特定する情報を出力し、
周波数帯域を選択する手段が、上記出力された情報で特定される周波数帯域とは異なる周波数帯域を選択する無線機器。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の無線機器であって、
予め定めたタイミングで、前記予測結果情報に基づく周波数帯域を選択する無線機器。
【請求項5】
請求項4に記載の無線機器であって、
前記予め定めたタイミングは、
前記親機と接続するタイミング、
一定の時間ごとのタイミング、
通信量(単位時間あたりデータ量)が閾値を超える通信が検出されたタイミング、
の少なくとも一つを含む無線機器。
【請求項6】
複数の周波数帯域のうちいずれかの周波数帯域を用いて互いに通信可能な第1の無線機器及び第2の無線機器を備え、当該第1の無線機器及び当該第2の無線機器はそれぞれ前記複数の周波数帯域のいずれかを用いて子機との間で通信を行い、前記第2の無線機器が前記第1の無線機器と前記子機との間の通信を中継する無線通信システムであって、
前記第2の無線機器が、
前記第1の無線機器または前記第2の無線機器の少なくとも一方における周波数帯域ごとの使用状態を表す情報を取得する手段と、
前記取得した情報により表される周波数帯域ごとの使用状態から、前記周波数帯域の混雑を予測して予測結果情報を得る手段と、
前記予測結果情報に基づいて前記第1の無線機器と前記第2の無線機器との間の通信に用いる周波数帯域を選択する手段とを備え、
前記第1の無線機器と前記第2の無線機器とが、その間で、前記選択した周波数帯域を用いて通信を行う無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線機器及び無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線LANを利用した通信において、無線通信装置間の干渉等の問題を解消するため、無線周波数を効率的かつ柔軟に割り当てようとする技術が、特許文献1に開示されている。この特許文献1に開示の技術では、エリア内通信で使用している周波数を避けて、エリア間通信の周波数を定めることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−152732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の無線LANシステムでは、各無線LAN通信装置の無線周波数帯域の使用状況を考慮していないという問題点があった。このため、無線LAN親機と無線LAN中継機とを備えるネットワークにおいて、これら無線LAN親機と無線LAN中継機との間の通信に用いる周波数帯域を選択しようとするとき、必ずしも空きの多い(通信効率のよい)周波数帯域が割り当てられないことがあった。
【0005】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、無線LAN通信装置等においてその周波数帯域ごとの使用状況を考慮した通信を行うことができる無線機器及び無線通信システムを提供することを、その目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記従来例の問題点を解決する本発明は、複数の周波数帯域のうちいずれかの周波数帯域を用いて他の無線機器と通信を行う無線機器であって、無線機器自身または前記他の無線機器の少なくとも一方における周波数帯域ごとの使用状態を表す情報を取得する手段と、前記取得した情報により表される周波数帯域ごとの使用状態から、前記周波数帯域の混雑を予測して予測結果情報を得る手段と、前記予測結果情報に基づいて前記他の無線機器との間の通信に用いる周波数帯域を選択する手段と、選択した周波数帯域を用いて前記他の無線機器との通信を行う手段と、を備えることとしたものである。
【0007】
このようにしたことで、周波数帯域ごとの混雑を考慮しつつ無線機器間での通信に用いる周波数帯域を選択できる。
【0008】
また前記周波数帯域ごとの使用状態を表す情報を得る手段は、無線機器自身または前記他の無線機器の少なくとも一方を対象機器として、当該対象機器の周波数帯域ごとの、対象機器に接続される子機の数、対象機器に接続される子機の種類、対象機器と、対象機器に接続される子機との間の通信の内容、の少なくともいずれかに関する情報を得ることとしてもよい。
【0009】
これより、比較的多くの子機が接続している周波数帯域や、複数のチャンネルを用いた通信を行っている周波数帯域、比較的通信量の多い通信を行うと予測される子機が接続している周波数帯域などを避けて無線LAN中継機との間での通信に用いる周波数帯域を選択する等の制御が可能となる。
【0010】
さらに当該無線機器自身または前記他の無線機器の少なくとも一方が、子機との間で映像情報または音声情報の送受を行っている場合には、当該映像情報または音声情報の送受に用いている周波数帯域を特定する情報を出力し、周波数帯域を選択する手段が、上記出力された情報で特定される周波数帯域とは異なる周波数帯域を選択することとしてもよい。
【0011】
これにより、比較的通信量の多い通信を行うと予測される子機が接続している周波数帯域などを避けて無線機器間での通信に用いる周波数帯域を選択する等の制御が可能となる。
【0012】
また、予測結果情報に基づく周波数帯域の選択は、予め定めたタイミングで行うこととしてもよい。さらに前記予め定めたタイミングは、前記他の無線機器と接続するタイミング、一定の時間ごとのタイミング、通信量(単位時間あたりデータ量)が閾値を超える通信が検出されたタイミング、の少なくとも一つを含んでもよい。
【0013】
また本発明の一態様は、複数の周波数帯域のうちいずれかの周波数帯域を用いて互いに通信可能な第1の無線機器及び第2の無線機器を備え、当該第1の無線機器及び第2の無線機器はそれぞれ前記複数の周波数帯域のいずれかを用いて子機との間で通信を行う無線通信システムであって、前記第1の無線機器または第2の無線機器の少なくとも一方における周波数帯域ごとの使用状態を表す情報を取得する手段と、前記取得した情報により表される周波数帯域ごとの使用状態から、前記周波数帯域の混雑を予測して予測結果情報を得る手段と、前記予測結果情報に基づいて前記第1の無線機器と第2の無線機器との間の通信に用いる周波数帯域を選択する手段とを備え、前記第1の無線機器と第2の無線機器とが、その間で、前記選択した周波数帯域を用いて通信を行うこととしたものである。
【0014】
このようにしたことで、周波数帯域ごとの使用状況を考慮しつつ無線機器間での通信に用いる周波数帯域を選択できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、周波数帯域ごとの混雑を考慮しつつ無線機器間での通信に用いる周波数帯域を選択できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態に係る無線通信システムの例を表す構成ブロック図である。
図2】本発明の実施の形態に係る無線通信システムが備える無線LAN通信装置が保持する通信状況情報の概要例を表す説明図である。
図3】本発明の実施の形態に係る無線通信システムの親機の例を表す機能ブロック図である。
図4】本発明の実施の形態に係る無線通信システムの中継機の例を表す機能ブロック図である。
図5】本発明の実施の形態に係る無線通信システムの親機が生成する応答情報の例を表す説明図である。
図6】本発明の実施の形態に係る無線通信システムの動作例を表すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本実施の形態に係る無線通信システムは図1に例示するように、第1の無線機器10と、第2の無線機器20と、子機(クライアント機能部としての機能を有する無線通信機器)としてのクライアント装置30とを備えて構成される。また図1の例では、クライアント装置30として、複数のクライアント装置30a,30b,…が示されている。以下では、各クライアント装置30a,b,…を区別する必要がない場合は、単にクライアント装置30と記す。
【0018】
第1の無線機器10、及び第2の無線機器20はいずれもアクセスポイントとして機能する。またこれら第1の無線機器10や第2の無線機器20は、複数の周波数帯域のうちいずれかの周波数帯域に属するチャンネルを用いて他の無線機器と通信を行う。ここで周波数帯域は、予め定められた周波数の範囲であり、この周波数の範囲には、複数のチャンネル(実施の通信を行うための無線通信路)が設定されている。本実施の形態の一例では、第1の無線機器10、及び第2の無線機器20はIEEE802.11b、11a、11g、11n、11ac等の規格に従い、無線周波数帯域として2.4GHz帯と5GHz帯とを用いるものとする。この例において、各無線周波数帯域に含まれる複数のチャンネルの具体的構成は、広く知られているので、ここでの詳しい説明を省略する。
【0019】
また本実施の形態の一例において第1の無線機器10は、図1に示したように、制御部11と、記憶部12と、有線LANインタフェース部13と、無線LANインタフェース部14とを備えており、第2の無線機器20は、制御部21、記憶部22、及び無線LANインタフェース部23を備えている。
【0020】
ここで第1の無線機器10の制御部11は、CPU等のプログラム制御デバイスであり、記憶部12に格納されたプログラムに従って動作する。本実施の形態では、この制御部11は、無線LANのアクセスポイント機能を実現する動作を行う。本実施の形態では、この制御部11は、図2に例示するように、無線LANインタフェース部14が無線にてデータを送受している(通信相手となっている)第2の無線機器20やクライアント装置30等の子機を特定する情報(無線LANによる通信を行っている子機を特定する情報、例えば各子機のMACアドレス等)を、当該それぞれの子機との通信に用いているチャンネルを特定する情報に関連付けて通信状況情報として記憶部12に格納している。またこの制御部11は、第2の無線機器20からの要求に応答して、この記憶部12に格納している通信状況情報に関する情報を提供する。この制御部11の動作については後に述べる。
【0021】
制御部11は、有線LANインタフェース部13または無線LANインタフェース部14が、当該記憶している通信状況情報に含まれる情報で特定される子機宛のデータを受信すると、当該受信したデータを、無線LANインタフェース部14に出力して、宛先となった子機宛に送出させる。またこの制御部11は、いずれかの子機から当該記憶している情報で特定される他の子機宛でないデータを受信すると、有線LANインタフェース部13に対して当該受信したデータを出力して、有線LANを介して当該データを送出させる。
【0022】
記憶部12は、メモリデバイス等であり、制御部11によって実行されるプログラムを保持する。このプログラムは、DVD−ROM等のコンピュータ可読、かつ持続的(non-transitory)な記録媒体によって提供され、この記憶部12に複写されたものであってもよいし、ネットワーク等の通信回線を介して提供され、この記憶部12に複写されたものであってもよい。またこの記憶部12は、制御部11のワークメモリとしても動作する。
【0023】
有線LANインタフェース部13は、有線LANに接続される。この有線LANインタフェース部13は、有線LANを介して情報を受信し、当該受信した情報を制御部11に出力する。またこの有線LANインタフェース部13は、制御部11から入力される指示に従い、有線LANを介して指示された情報を送出する。
【0024】
無線LANインタフェース部14は、少なくとも一つの無線LANインタフェースモジュール140a,b,…(以下、無線LANインタフェースモジュール140a,b,…を区別する必要がない場合は、単に無線LANインタフェースモジュール140とする)を有している。無線LANインタフェースモジュール140は、指定された周波数帯域に属する指定されたチャンネルを用いて、第2の無線機器20やクライアント装置30等、他の無線機器や子機との間で無線にて通信を行い、これら他の無線機器や子機から受信した情報を制御部11に出力する。またこの無線LANインタフェースモジュール140は、制御部11から入力される指示に従い、指示された情報を、上記指定されたチャンネルを用いて、指示された子機宛に送出する。本実施の形態では、この無線LANインタフェース部14の無線LANインタフェースモジュール140は、それぞれ複数の周波数帯域のいずれかに属している、いずれかのチャンネルでの無線通信が可能なものとする。具体的に以下の例では無線LANインタフェースモジュール140は、無線周波数帯域として、無線LAN規格の一つであるIEEE802.11b、11a、11g、11n、11ac等の規格に従い2.4GHz帯と5GHz帯と(特に区別するときにはこれらの周波数帯域を規格周波数帯域と呼ぶ)を用いるものとする。この例において2.4GHz無線周波数帯域には1から14チャンネルの複数のチャンネルが含まれ、また5GHz無線周波数帯域には、W52/53/56/58のタイプに分けられた各チャンネルが含まれる。なお、以下では説明を簡略にするため、周波数帯域は2.4GHz帯と5GHz帯と、といった規格周波数帯域とするが、本実施の形態はこれに限らず、周波数帯域は、5GHzのW52と、5GHzのW53と、…というようなタイプごとの周波数帯域(以下特に区別する場合にはタイプ周波数帯域と呼ぶ)であってもよい。また、規格周波数帯域と、タイプ周波数帯域とを混在して用いてもよい。例えば本実施の形態では、2.4GHzと、5GHzのW52と、5GHzのW53と、…といったように、周波数帯域を区別してもよい。つまり本実施の形態で周波数帯域は複数のチャンネルを含んだ周波数の範囲をいうものであり、必ずしもIEEE802.11b、11a、11g、11n、11ac等の規格において定められた周波数帯域(バンド)に一致しない。
【0025】
また第2の無線機器20の制御部21は、CPU等のプログラム制御デバイスであり、記憶部22に格納されたプログラムに従って動作する。本実施の形態の一例では、この制御部21が無線中継機としての動作を行う。第2の無線機器20がその親機として機能する第1の無線機器10に対して通信可能に接続されるとともに、第2の無線機器20に対する子機であるクライアント装置30との間でも通信可能に接続される。
【0026】
そしてこの制御部21は、第2の無線機器20にとっての親機である第1の無線機器10と、第2の無線機器20にとっての子機であるクライアント装置30との間の通信を中継する処理を行う。
【0027】
なお、制御部21が第1の無線機器10との間で通信を行う方法としては、制御部21のアクセスポイントとしての動作において、第1の無線機器10との間で通信を行う方法(アクセスポイント間通信、いわゆるWDS(Wireless Distribution System)を用いる方法)のほか、制御部21がアクセスポイントとして機能するとともにクライアントとしても機能し、クライアントとしての機能により第1の無線機器10との間で通信をする方法(この方法には、後に説明する無線LANインタフェース部23が複数の無線LANインタフェースモジュールを備える場合には各無線LANインタフェースモジュールをそれぞれアクセスポイントとしての機能に対応するものとクライアントとしての機能に対応するものとに分けて用いてもよいし、一つの無線LANインタフェースモジュールを時分割的に用いてもよい)等があるが、本実施の形態では、どのような方法を用いるかは問われない。
【0028】
また本実施の形態の第2の無線機器20は、さらに他の第2の無線機器20との間でも通信可能に接続されていてもよい。この場合、第1の無線機器10に近い側(上流側)の第2の無線機器20が、第1の無線機器10から遠い側(下流側)にある他の第2の無線機器20の親機として機能し、より上流側の第1の無線機器10または第2の無線機器20と、この下流側の第2の無線機器20との間の通信を中継する。この場合、上流側の第2の無線機器20は下流側第2の無線機器20にとっての親機として動作する。
【0029】
この制御部21は、第1の無線機器10の制御部11と同様に、無線LANインタフェース部23が無線にてデータを送受している子機(クライアント装置30または他の第2の無線機器20)を特定する情報(例えば各子機のMACアドレス等)を、それぞれとの通信に用いている周波数帯域を特定する情報に関連付けて通信状況情報として記憶部22に格納している(図2に例示したものと同様のものとなる)。
【0030】
また本実施の形態では、この第2の無線機器20の制御部21は、第2の無線機器20自身と、その親機である第1の無線機器10(本発明の他の無線機器に相当する)との少なくとも一方を対象装置として、この対象装置における周波数帯域ごとの使用状態を表す情報を取得し、当該取得した情報により表される周波数帯域ごとの使用状態から、周波数帯域ごとの混雑を予測する。そして制御部21は、当該予測の結果を表す予測結果情報を得る。また、この制御部21は、この予測結果情報に基づいて自己(第2の無線機器20自身)と親機である第1の無線機器10との間の通信に用いる周波数帯域を選択し、第1の無線機器10との間で、当該選択した周波数帯域に属するチャンネルを用いた通信を行うよう、無線LANインタフェース部23を制御する。この制御部21の詳しい動作の内容は後述する。
【0031】
記憶部22は、メモリデバイス等であり、制御部21によって実行されるプログラムを保持する。このプログラムは、DVD−ROM等のコンピュータ可読、かつ持続的(non-transitory)な記録媒体によって提供され、この記憶部22に複写されたものであってもよいし、ネットワーク等の通信回線を介して提供され、この記憶部22に複写されたものであってもよい。またこの記憶部22は、制御部21のワークメモリとしても動作する。
【0032】
無線LANインタフェース部23は、少なくとも一つの無線LANインタフェースモジュール230a,b,…(以下、無線LANインタフェースモジュール230a,b,…を区別する必要がない場合は、単に無線LANインタフェースモジュール230とする)を備える。無線LANインタフェースモジュール230は、通信相手の子機として接続されているクライアント装置30や他の第2の無線機器20との間、並びに親機として接続される第1の無線機器10との間で、指定された周波数帯域に属するいずれかのチャンネルを用いて、無線にて通信を行い、これらの他の無線機器や子機から受信した情報を制御部21に出力する。またこの無線LANインタフェースモジュール230は、制御部21から入力される指示に従い、上記チャンネルを用いて、指示された情報を宛先となった他の無線機器や子機へ送出する。また本実施の形態では、この無線LANインタフェースモジュール230もまた、第1の無線機器10の無線LANインタフェース部14の無線LANインタフェースモジュール140と同様に、それぞれ複数の周波数帯域のいずれかに属している、いずれかのチャンネルでの無線通信が可能なものとし、一例として2.4GHz帯と5GHz帯との各周波数帯域に属するチャンネルを用いた通信を行うものとする。さらにこの無線LANインタフェースモジュール230は、制御部21からの制御を受けて、第1の無線機器10との間の通信に使用する周波数帯域を設定し、当該設定した周波数帯域に属するいずれかのチャンネルを用いて第1の無線機器10との間での通信を行う。なお、ある周波数帯域が決定されたときに、実際の通信に用いるチャンネルの選択する方法は広く知られている方法を用いてもよい。
【0033】
クライアント装置30は、例えばスマートフォン等の携帯端末のほか、テレビ等の映像機器や、IP電話機等を含む、種々の無線LAN通信装置(子機)である。このクライアント装置30は、無線LANの規格におけるクライアント機能を備えるものであり、第1の無線機器10または第2の無線機器20との間で通信を行い、通信相手となった第1の無線機器10または第2の無線機器20を介して、ウェブサーバや、SIP(Session Initiation Protocol)サーバ、その他の機器との間でデータの送受を行う。
【0034】
ここで、本実施の形態の第1の無線機器10の制御部11と、第2の無線機器20の制御部21との動作について説明する。本実施の形態において親機である第1の無線機器10の制御部11は、記憶部12に格納されたプログラムを実行することにより、図3に例示するように、通信状況情報要求受入部41と、通信状況情報応答部42とを機能的に実現する。また、第2の無線機器20の制御部21は、記憶部22に格納されたプログラムを実行することにより、図4に例示するように、使用状態取得部50と、混雑予測部51と、帯域選択部52と、無線通信制御部53とを機能的に実現する。
【0035】
ここで通信状況情報要求受入部41は、第2の無線機器20から通信状況情報の要求を受け入れて、通信状況情報応答部42に応答を指示する。通信状況情報応答部42は、記憶部12に格納している通信状況情報に係る応答情報を生成し、当該生成した応答情報を通信状況情報の要求元である第2の無線機器20に対して送出する。
【0036】
具体的に、ここで生成する応答情報は、記憶部12に格納されている通信状況情報そのものであってもよいが、次のような統計的な情報であってもよい。すなわち本実施の形態の一例では、この通信状況情報応答部42は、記憶部12に格納している通信状況情報に基づき、互いに異なる周波数帯域(現在使用しているか否かに関わらず、使用可能な各周波数帯域)ごとに、当該周波数帯域の周波数を利用して通信を行っている子機の数をカウントする。そして通信状況情報応答部42は、図5に例示するように、各周波数帯域を特定する情報B1,B2,…と、当該情報で特定される周波数帯域の周波数を利用して通信を行っている子機の数N[Bi](i=1,2,…)とを表す情報を応答情報として生成し、当該生成した応答情報を通信状況情報の要求元である第2の無線機器20に対して送出する。
【0037】
使用状態取得部50は、所定のタイミングで対象機器の通信状況情報を取得する。具体的に対象機器は、ここでは第1の無線機器10(つまり親機)と、自己自身(第2の無線機器20)とである。本実施の形態の使用状態取得部50は、親機である第1の無線機器10に対して通信状況情報の要求を送出する。
【0038】
なお、ここで上記所定のタイミングは、例えば第1の無線機器10(親機)との接続開始時または、予め定めた時間間隔ごととしてもよい。また通信量(単位時間あたりデータ量)に基づいて、通信量が閾値を超える通信が検出されたタイミングを上記所定のタイミングとしてもよい。
【0039】
使用状態取得部50は、通信状況情報の要求先である第1の無線機器10から通信状況情報に係る応答情報を受信して、記憶部22に保持する。また、この使用状態取得部50は、記憶部22に格納している、第2の無線機器20自身の通信状況情報を読み出し、第1の無線機器10から受信した応答情報に相当する情報を取得する。
【0040】
例えば第1の無線機器10から受信した応答情報が、図5に例示したような、通信状況情報に基づいて得られた統計的な情報であれば、この使用状態取得部50は、記憶部22に格納されている、第2の無線機器20自身の通信状況情報に基づいて同様な統計的な情報を生成する。ここでの例では使用状態取得部50は、この統計的な情報として具体的に、互いに異なる周波数帯域ごとに、当該周波数帯域の周波数を利用して通信を行っている子機の数を得るものとする。つまり、使用状態取得部50は、記憶部22に格納されている、第2の無線機器20自身の通信状況情報を参照し、互いに異なる周波数帯域ごとに、当該周波数帯域の周波数を利用して通信を行っている子機の数をカウントする。そして使用状態取得部50は、図5に例示したのと同様の、各周波数帯域を特定する情報B1,B2,…と、当該情報で特定する周波数帯域の周波数を利用して通信を行っている子機の数Nr[Bi](i=1,2,…)とを表す情報を生成する。
【0041】
混雑予測部51は、こうして得られた親機である第1の無線機器10の通信状況情報に係る情報と、自己の通信状況情報に係る情報とを用い、上記互いに異なる周波数帯域ごとの使用状況(周波数帯域ごとの通信量等)を予測する。一例として、この使用状況の予測は、各子機が単位時間あたり同じ量の通信を行うものとして、周波数帯域ごとの、当該周波数帯域の周波数を使用している子機の数そのものに基づいて、周波数帯域ごとの使用状況を数値化して予測してもよい。この例では、混雑予測部51は、ある情報Bi(i=1,2,…)で表される周波数帯域の周波数で第1の無線機器10との間で通信を行っている子機の数N[Bi]と、当該情報Biで表される周波数帯域の周波数で第2の無線機器20との間で通信を行っている子機の数Nr[Bi]とを加算して、当該情報Biで表される周波数帯域ごとの混雑の予測結果を表す予測結果情報を、E[Bi]=N[Bi]+Nr[Bi]とする。この値は、周波数帯域ごとの混雑の予測の結果に相当する。
【0042】
帯域選択部52は、混雑予測部51が生成した周波数帯域ごとの混雑の予測結果情報に基づいて第1の無線機器10と第2の無線機器20との間での通信に用いる周波数帯域を選択する。具体的な例として、本実施の形態の一例では、帯域選択部52は、予測結果情報として得られた周波数帯域ごとの混雑の予測を参照し、予測通信量E[Bi]の値が最も小さい周波数帯域を特定する情報(Bminとする)を無線通信制御部53に出力する。
【0043】
無線通信制御部53は、帯域選択部52が出力した情報で特定される周波数帯域に属するチャンネルにて、第1の無線機器10との間で通信を行うよう、無線LANインタフェース部23の無線LANインタフェースモジュール230を制御する。具体的に無線通信制御部53は、記憶部22に格納した通信状況情報を参照し、現在第2の無線機器20が第1の無線機器10との間で通信を行っている無線LANインタフェースモジュール230があるか否かを調べ、第1の無線機器10との間で通信を行っている無線LANインタフェースモジュール230があれば、当該無線LANインタフェースモジュール230が現在、第1の無線機器10との間の通信で利用している周波数帯域を表す情報Bpを取得する。そして無線通信制御部53は、ここで取得した情報Bpが、Bminと同じであるか否かを調べ、同じであればそのまま第1の無線機器10との間の通信を継続する(何もしない)。
【0044】
一方、ここで取得した情報Bpが、Bminと同じでなければ、無線通信制御部53は、第1の無線機器10との間の通信を行っている無線LANインタフェースモジュール230に対して、使用する周波数帯域を切り替えるよう指示する。そして無線LANインタフェースモジュール230が使用する周波数帯域を切り替えて、切替後の周波数帯域に属するチャンネルにて第1の無線機器10との間の通信を継続する。この切替の方法については、広く知られた方法を採用できるので、ここでの詳しい説明を省略する。
【0045】
[動作]
本実施の形態の無線LAN通信システムは以上の構成を備えており、次のように動作する。以下の例では、第1の無線機器10がクライアント装置30a,30b、及び第2の無線機器20との間で2.4GHz帯に属するチャンネルにて通信を行っており、クライアント装置30cとの間で5GHz帯に属するチャンネルでの通信を行っているものとする。また第2の無線機器20は、クライアント装置30d及び第1の無線機器10との間で2.4GHz帯に属するチャンネルにて通信を行っており、5GHz帯では通信を行っていない(5GHz帯での通信は可能であるが、通信相手がいない)ものとする。
【0046】
第2の無線機器20は、所定のタイミングで図6に例示した処理を開始し、第1の無線機器10に対して通信状況情報の要求を行う(S1)。第1の無線機器10は、この要求に対し、2.4GHz帯で3台、5GHz帯で1台の子機との通信を行っている旨の応答情報を送出する(S2)。
【0047】
また第2の無線機器20は、自己の通信状況情報として2.4GHz帯で1台、5GHz帯で0台の子機との通信を行っている旨の情報を生成する(S3)。そして第2の無線機器20は、各周波数帯域、すなわち2.4GHz帯及び5GHz帯のそれぞれにおいて、第1の無線機器10及び自己(第2の無線機器20)が通信を行っている子機の数の総計を、混雑の予測結果情報として演算する(S4)。ここでは当該予測結果情報は、2.4GHz帯について3+1=4、5GHz帯について、1+0=1となる。
【0048】
第2の無線機器20は、この予測結果情報を参照し、混雑の予測を表す値が最小となっている周波数帯域を候補周波数帯域として選択する(S5)。ここでは、5GHz帯の使用状況を表す値(上述の例では「1」)が、2.4GHz帯(上述の例では「5」)の使用状況を表す値よりも小さく、それが最小であるので、第2の無線機器20は、5GHz帯を候補周波数帯域として選択する。第2の無線機器20は現在、ここで選択した5GHz帯に属するチャンネルにて、第1の無線機器10との間で通信を行っているか否かを判断する(S6)。ここでの例では、第1の無線機器10と第2の無線機器20とは2.4GHz帯で通信を行っているので(S6においてNoであるので)、第2の無線機器20は第1の無線機器10との間の通信で利用する周波数帯域を候補周波数帯域である5GHz帯に切り替える(S7:周波数帯域の切替)。これにより第2の無線機器20と第1の無線機器10とは、5GHz帯の周波数帯域に属するチャンネルにて通信を行うようになる。
【0049】
一方、処理S6において仮に、第1の無線機器10との間で、処理S5にて選択した周波数帯域にて通信を行っていると判断された場合(S6でYesの場合)、第2の無線機器20は周波数帯域を切り替えることなく、そのまま処理を終了する。
【0050】
なお、ここでは第2の無線機器20は、第1の無線機器10及び自己(第2の無線機器20)の双方を対象機器として、当該対象機器における通信状況の情報を双方とも参照して、混雑を予測することとしたが、本実施の形態はこれに限られない。例えば第2の無線機器20は第1の無線機器10のみを対象機器として、当該対象機器の通信状況の情報から混雑を予測してもよい。この場合、上記処理S4では、第1の無線機器10から受信した情報そのものを予測結果情報とする。またこの場合、処理S3の実行は必ずしも必要ではない。
【0051】
また第2の無線機器20は、自己を対象機器として、自己の通信状況の情報のみから混雑を予測してもよい。この場合、上記処理S4では、処理S3にて生成した情報そのものを予測結果情報とする。またこの場合、処理S1,S2の実行は必ずしも必要ではなく、また第1の無線機器10が通信状況情報の要求に応答する必要はない。
【0052】
[変形例]
また本実施の形態において、対象機器の周波数帯域ごとの混雑を表す値は、対象機器に接続される子機の数に基づくものに限られない。例えば本実施の形態において混雑の予測は、周波数帯域ごとの、対象機器に接続される子機の種類や、対象機器と対象機器に接続される子機との間の通信の内容の少なくともいずれかに関する情報を用いて行われてもよい。
【0053】
すなわち、本実施の形態の一例において第2の無線機器20の制御部21は、使用状況の情報として、周波数帯域ごとに得られた、各周波数帯域の周波数を利用している所定種類の子機の有無(または所定種類の子機の数)を得てもよい。ここで所定種類とは、例えば、比較的通信量が大きいメディア機器(映像情報または音声情報の送受を行っているクライアント装置30)等、予め定められた機器の種類である。
【0054】
この例では第1の無線機器10または第2の無線機器20の制御部11または制御部21は、周波数帯域ごとに、当該周波数帯域の周波数を用いて情報を送受しているメディア機器であるクライアント装置30の数をカウントして、通信状況情報として記憶部12または記憶部22に格納しておくものとする。
【0055】
なお制御部11または制御部21による、通信相手がメディア機器であるか否かの判断は次の例のようにして行う。すなわち通信相手がメディア機器であれば、
(1)映像情報のブラウズ要求がある
(2)ディレクトリを取得するためのUPnP内のアクション(Browseコマンド)が送出される
(3)UPnPにおけるデバイスクラスの情報にメディア機器である旨の情報が含まれる
のいずれかの条件が満足される。そこで、制御部11または制御部21は、通信の相手方である子機が送出する情報のうちに上記(1)から(3)に相当する情報が含まれるか否かを監視しておき、いずれかの情報が検出されたときに、当該通信の相手方である子機がメディア機器であると判断し、当該メディア機器であると判断した通信の相手方との通信で利用している周波数帯域を特定する情報と、当該相手方を特定する情報(相手方のMACアドレス等でよい)とを関連づけて、通信状況情報として記憶部12または22に格納する。
【0056】
この例では、第2の無線機器20の制御部21が第1の無線機器10に対して通信状況情報の要求を行うと、第1の無線機器10は、この要求に対し、2.4GHz帯及び5GHz帯のそれぞれにおいて検出したメディア機器の数を表す情報を応答情報として送出する。
【0057】
また第2の無線機器20の制御部21は、自己の通信状況情報として2.4GHz帯及び5GHz帯のそれぞれにおいて検出したメディア機器の数を表す情報と、第1の無線機器10が送出した応答情報に含まれる情報とを用い、2.4GHz帯及び5GHz帯のそれぞれにおいて、第1の無線機器10及び自己(第2の無線機器20)が通信を行っているメディア機器である子機の数の総計を、混雑の予測結果情報として演算する。ここで、映像情報または音声情報の送受に用いている無線通信の周波数が属する周波数帯域については、予測結果情報における混雑を表す値が「0」以外の値となっている。すなわち、この予測結果情報が、本発明における、映像情報または音声情報の送受に用いている無線通信の周波数が属する周波数帯域を特定する情報に相当する。
【0058】
第2の無線機器20の制御部21は、この予測結果情報を参照し、混雑を表す値が「0」(または最小)となっている周波数帯域(候補周波数帯域)を見出す、現在、当該見出された候補周波数帯域にて、第1の無線機器10との間で通信を行っているか否かを判断する。そして第2の無線機器20と第1の無線機器10との間の通信で、当該候補周波数帯域に属するチャンネルを利用していれば、そのまま通信を続ける。また、第2の無線機器20と第1の無線機器10との間の通信で、当該候補周波数帯域に属するチャンネルを利用していなければ、利用する周波数帯域を上記候補周波数帯域に切り替え、切り替え後の周波数帯域に属するチャンネルにて、第1の無線機器10との通信を行う。
【0059】
また、ここでの例でも、ここでは第2の無線機器20は、第1の無線機器10及び自己(第2の無線機器20)の双方を対象機器として、当該対象機器における通信状況の情報(通信相手のうち、メディア機器として判断された子機の数)を双方とも参照して、周波数帯域ごとの混雑を予測することとしたが、第1の無線機器10または第2の無線機器20のいずれか一方が通信しているメディア機器の数に基づいて、第1の無線機器10との間の通信に用いる周波数帯域を制御しても構わない。
【0060】
さらに、ここまでの例においてメディア機器は、映像機器に限られず、音声機器(例えばIP電話機等)でもよい。第1の無線機器10の制御部11や、第2の無線機器20の制御部21は、通信の相手がIP電話機であるか否かを、例えばSIPプロトコルでの通信が行われているか否かにより判断すればよい。また対象機器である第1の無線機器10や第2の無線機器20は、接続されている子機との間の通信の内容を用いて、混雑の予測を行ってもよい。具体的に第1の無線機器10の制御部11や第2の無線機器20の制御部21は、RTP(Real-time Transport Protocol)やRTCP(Real-time Transport Control Protocol)を用いた通信を行い、映像情報または音声情報の送受を行っているクライアント装置30をメディア機器と判断して、上記の処理を行ってもよい。
【0061】
本実施の形態のこの例によると、比較的通信量が多いと考えられるメディア機器が使用している周波数帯域内のチャンネルを避けて、第1の無線機器10と第2の無線機器20とが通信を行うので、周波数帯域の利用効率を向上できる。
【0062】
[中継装置間での処理例]
なお、ここでの例では第1の無線機器10を親機とする例について述べたが本実施の形態はこれに限られず、第2の無線機器20が、自己よりも第1の無線機器10に近い側(通信の上流側)にある他の第2の無線機器20に接続されているときには、当該他の第2の無線機器20を親機として、当該親機と自己とを対象機器として上記の処理を行ってもよい。この場合、他の第2の無線機器20に対して親機として機能する第2の無線機器20の制御部21は、通信状況情報要求受入部41と、通信状況情報応答部42としての動作も行うこととなる。この例では第2の無線機器20を多段に構成している場合においても、第2の無線機器20間の通信に用いる周波数帯域を、各周波数帯域の使用状況に応じて設定できる。
【0063】
[通信状況の情報を用いる例]
またここまでの説明において、使用状況の予測は、対象機器とした第1の無線機器10等の親機と、第2の無線機器20自身との通信状況(周波数帯域ごとの接続子機数等)に基づいて行われるものとしたが、本実施の形態においては第2の無線機器20の制御部21はさらに、親機や、子機との間の通信に用いられる信号強度(RSSI)や、信号/ノイズ比(SNR)、パケットエラーレート等の通信品質に関係する情報を用いて予測結果情報を得てもよい。
【0064】
具体的に、この例では、第2の無線機器20の制御部21は、周波数帯域B1,B2,…ごとの予測結果情報U[Bi]を、当該周波数帯域に属するチャンネルにて通信を行っている子機の数E[Bi](当該第2の無線機器20にとって親機として機能するアクセスポイント装置20等が通信している子機の数N[Bi]と、自己自身が通信をしている子機の数Nr[Bi]のいずれか、またはその和)と、信号強度RSSIとを用い、
U[Bi]=E[Bi]+α/RSSI
などとして演算してもよい。ここでαは適宜実験的に定められる正の定数である。
【0065】
そして制御部21は、この使用状況の値U[Bi]が最小となっている周波数帯域Bminを検索し、当該周波数帯域Bminに属するチャンネルにて親機との通信を行うよう制御する。
【0066】
この例によると、RSSIが低いほど使用状況の値は大きく補正されるので、RSSIの低い周波数帯域に属するチャンネルが親機との通信に用いられる可能性が低くなる。またパケットエラーレート(PER)を用いる場合は、予測結果情報を、
U[Bi]=E[Bi]+β・PER
などというように(ただしβは適宜実験的に定められる正の定数とする)、この値が大きくなるほど、使用状況の値が大きく補正されるようにする。これにより、パケットエラーレートが比較的高い周波数帯域に属するチャンネルが親機との通信に用いられる可能性が低くなる。
【0067】
[複数チャンネルを利用している子機の考慮]
さらに第1の無線機器10または第2の無線機器20の制御部11または制御部21が生成する通信状況情報は、周波数帯域ごとに、当該周波数帯域の周波数を用いて情報を送受しているクライアント装置30、またはメディア機器であるクライアント装置30の数をカウントしたものに限られず、例えば複数のチャンネルを占有して通信を行っているクライアント装置30の数をカウントしたものであってもよい。
【0068】
[他の態様]
さらに以上の例では、第1の無線機器10等の親機に接続された第2の無線機器20が、当該親機との間の通信に用いる周波数帯域を選択することとしていたが、本実施の形態はこれに限られず、親機の制御部が、上述の第2の無線機器20の制御部21におけるのと同様の動作を行って、第2の無線機器20との間の通信に用いる周波数帯域を制御してもよい。この場合、親機は接続されている子機のうちから第2の無線機器20を識別する必要があるが、この識別は、第2の無線機器20が送出するパケットに予め定められた識別情報を含めておき、親機において当該識別情報を検出することで行うことができる。
【符号の説明】
【0069】
10 アクセスポイント装置、11 制御部、12 記憶部、13 有線LANインタフェース部、14 無線LANインタフェース部、20 中継装置、21 制御部、22 記憶部、23 無線LANインタフェース部、30 クライアント装置、41 通信状況情報要求受入部、42 通信状況情報応答部、50 使用状態情報取得部、51 混雑予測部、52 帯域選択部、53 無線通信制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6