特許第6683921号(P6683921)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6683921
(24)【登録日】2020年3月31日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】積層剥離容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/02 20060101AFI20200413BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20200413BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20200413BHJP
   B32B 1/02 20060101ALI20200413BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20200413BHJP
   B32B 7/06 20190101ALI20200413BHJP
【FI】
   B65D1/02 111
   B65D65/40 D
   B65D83/00 G
   B32B1/02
   B32B27/32 Z
   B32B7/06
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-62563(P2016-62563)
(22)【出願日】2016年3月25日
(65)【公開番号】特開2017-171384(P2017-171384A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2018年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】内橋 健太郎
【審査官】 新田 亮二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−163531(JP,A)
【文献】 特開昭56−092058(JP,A)
【文献】 特開2005−298726(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02
B65D 83/00
B32B 1/00 − 43/00
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外殻と内袋とを有し且つ内容物の減少に伴って前記内袋が収縮する容器本体を備える積層剥離容器であって、
前記内袋を構成する内層は、シクロオレフィンポリマーとスチレン系熱可塑性エラストマーを含有する混合樹脂で構成される混合樹脂層を含み、
前記スチレン系熱可塑性エラストマーは、水素添加スチレン系共重合体からなる、積層剥離容器。
【請求項2】
前記混合樹脂において、前記シクロオレフィンポリマーに対する前記スチレン系熱可塑性エラストマーの質量比は、0.1〜2である、請求項1に記載の積層剥離容器。
【請求項3】
記水素添加スチレン系共重合体は、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体を含む、請求項1又は請求項2に記載の積層剥離容器。
【請求項4】
前記内層は、前記混合樹脂層よりも容器外側に、EVOH樹脂で構成されるEVOH層を備える、請求項1〜請求項の何れか1つに記載の積層剥離容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層剥離容器に関する。
【背景技術】
【0002】
外殻と内袋とを有し且つ内容物の減少に伴って内袋が収縮する容器本体を備える積層剥離容器が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3650175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような積層剥離容器には、内容物を吐出させる際のスクイズ力が小さいこと(スクイズ性)、容器を落下させたときに割れにくいこと(落下割れ耐性)、水蒸気を透過させにくいこと(水蒸気非透過性)などが求められる場合がある。積層剥離容器の内袋は、内容物を吐出させる際に速やかに収縮するように、通常は、非常に薄い肉厚で形成される。このため、落下割れ耐性及び水蒸気非透過性が良好でないという問題が生じやすい。一方、落下割れ耐性及び水蒸気非透過性を高めるために内袋の肉厚を大きくすると、スクイズ性が悪化しやすい。このため、スクイズ性、落下割れ耐性及び水蒸気非透過性の全てを良好にすることは容易ではない。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、スクイズ性、落下割れ耐性及び水蒸気非透過性の全てにおいて優れた積層剥離容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、外殻と内袋とを有し且つ内容物の減少に伴って前記内袋が収縮する容器本体を備える積層剥離容器であって、前記内袋を構成する内層は、シクロオレフィンポリマーとスチレン系熱可塑性エラストマーを含有する混合樹脂で構成される混合樹脂層を含む、積層剥離容器が提供される。
【0007】
本発明者らは、内層を構成する樹脂について種々の検討を行ったところ、内袋を構成する内層が、シクロオレフィンポリマーとスチレン系熱可塑性エラストマーを含有する混合樹脂で構成される混合樹脂層を含む場合に、スクイズ性、落下割れ耐性及び水蒸気非透過性の全てが良好になることを見出し、本発明の完成に到った。
【0008】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記混合樹脂において、前記シクロオレフィンポリマーに対する前記スチレン系熱可塑性エラストマーの質量比は、0.1〜2である。
好ましくは、前記スチレン系熱可塑性エラストマーは、水素添加スチレン系共重合体からなる。
好ましくは、前記水素添加スチレン系共重合体は、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体を含む。
好ましくは、前記内層は、前記混合樹脂層よりも容器外側に、EVOH樹脂で構成されるEVOH層を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態の積層剥離容器1の容器本体3の斜視図である。
図2】(a)は、それぞれ、図1の容器本体3の正面図であり、(b)は、容器本体3に弁部材4を装着した状態での、(a)中のB−B断面図である。
図3】容器本体3の口部9に装着するキャップ23の一例を示す、図2(c)に対応する断面図である。
図4】底シール突出部27が折り曲げられ且つ内袋14が収縮した状態での、図2(c)に対応する断面図である。
図5】(a)は筒体5の正面図、(b)は筒体5の底面図、(c)は(b)中のA−A断面図、(d)は(c)中のB−B断面図、(e)は弁部材4の断面図、(f)は弁部材4を外殻12に装着した状態を示す断面図、(g)は移動体6がストッパー部5hに当接して空洞部5gを閉塞させた状態を示す断面図である。
図6】内層13の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴について独立して発明が成立する。
【0011】
図1図2に示すように、本発明の一実施形態の積層剥離容器1は、容器本体3と、弁部材4を備える。容器本体3は、内容物を収容する収容部7と、収容部7から内容物を吐出する口部9を備える。
【0012】
図2に示すように、 容器本体3は、収容部7及び口部9において、外層11と内層13を備えており、外層11によって外殻12が構成され、内層13によって内袋14が構成される。内容物の減少に伴って内層13が外層11から離れることによって、内袋14が外殻12から離れて収縮する。なお、収容部7に内容物を収容する前に内層13を外層11から剥離する予備剥離工程を行う場合がある。この場合、予備剥離後に収容部7内にエアーを吹き込むか又は内容物を収容することによって内層13を外層11に接触させる。そして、内容物の減少に伴って内層13が外層11から離れる。一方、予備剥離工程を行わない場合は、内容物の吐出の際に内層13が外層11から剥離されて外層11から離れる。
【0013】
口部9には、図3に例示するキャップ23と係合可能な係合部9dが設けられている。キャップ23は、打栓式で装着するものであってもよく、ネジ式で装着するものであってもよい。図3に示すように、キャップ23は、本体部23aと、本体部23aに設けられた吐出口23bと、本体部23aから円筒状に延びる外周部23fの略先端に設けられた係合部23cと、外周部23fの内側において本体部23aから円筒状に延びるインナーリング23dと、インナーリング23dの内側に設けられ且つ吐出口23bに連通する流通路23gと、流通路23gに設けられた逆止弁23eを備える。キャップ23が口部9に装着された状態で、収容部7内の内容物は、流通路23gを通って吐出口23bから吐出される。一方、逆止弁23eが吐出口23bからの外気の流入を遮断するので、容器本体3の内袋14内には外気は侵入せず、内容物の劣化が抑制される。なお、ここで示したキャップ23の構造は一例であって、例えば別の構成の逆止弁を有するキャップ23を採用してもよい。
【0014】
収容部7は、図1図2に示すように、断面が略円形状である筒状の筒状部7bと、筒状部7bの一部が凹まされて形成されたパネル部7cを有する。容器本体3は、筒状(例:円筒状)の積層パリソンをブロー成形することによって形成されるので、容器本体3の各部の肉厚は、ブロー比が大きい部位ほど(中心軸Cからの距離が大きい部位ほど)小さくなる。パネル部7cは、筒状部7bよりも中心軸Cに近いので、筒状部7bよりも肉厚が大きくなる。このため、パネル部7cの剛性が筒状部7bよりも高くなる。
【0015】
本実施形態では、外殻12には、収容部7において、外殻12と内袋14の間の中間空間21と、容器本体3の外部空間Sを連通する外気導入孔15が設けられている。外気導入孔15は、具体的には、パネル部7cに隣接した位置(より具体的にはパネル部7cと口部9の間の領域)に設けられる。
【0016】
外気導入孔15には、中間空間21と外部空間Sの間の空気の出入りを調節する弁部材4が設けられている。弁部材4は、収容部7に設けられた弁部材取付凹部7aに装着される。弁部材4は、収容部7を圧縮したときには閉じて中間空間21から外部空間Sへ向かう空気の流れを遮断することによって中間空間21内の圧力を高めて、外殻12に加えられた圧力が内袋14に伝わりやすくする機能を有する。一方、弁部材4は、収容部7に加えた圧縮力が除かれたときには開いて外部空間Sから中間空間21へ向かう空気を通過させる機能を有する。このため、中間空間21内に外気が導入されて外殻12がスムーズに元の形状に復帰する。
【0017】
弁部材4は、外気導入孔15を開閉可能な機能を有するものであればよく、その構成例としては、弁部材4自体に貫通孔と開閉可能な弁を設けて、この弁の働きによって貫通孔を開閉することによって、外気導入孔15を開閉するように構成されているものや、外気導入孔15の縁と弁部材4の間の隙間を弁部材4の移動によって開閉することによって、弁部材4が外気導入孔15を開閉するように構成されているものが挙げられる。前者の弁部材4は、外気導入孔15のサイズに多少のばらつきがある場合でも弁部材4が問題なく機能するので、特に目薬容器などの小型の容器に好適に適用される。
【0018】
ここで、図4及び図5を用いて、弁部材4の一例について説明する。弁部材4は、外部空間Sと中間空間21を連通させるように設けられた空洞部5gを有する筒体5と、空洞部5g内に移動可能に収容された移動体6とを備える。筒体5及び移動体6は、射出成形などによって形成され、後述するストッパー部5hを乗り越えるように、移動体6を空洞部5g内に押し込むことによって、移動体6を空洞部5g内に配置させることができる。本実施形態では、空洞部5gは、略円柱形状であり、移動体6は、略球形であるが、本実施形態と同様の機能を実現できる形状であれば、別の形状であってもよい。空洞部5gの横断面(図5(d)の断面)での直径は、移動体6の対応する断面での直径よりもわずかに大きくなっており、移動体6が図5(c)の矢印B方向に自由に移動可能な形状となっている。空洞部5gの横断面の直径/移動体6の対応する断面での直径で規定される比の値は、1.01〜1.2が好ましく、1.05〜1.15が好ましい。この値が小さすぎると移動体6のスムーズな移動が妨げられ、この値が大きすぎると空洞部5gを囲む面5jと移動体6との間の隙間が大きくなりすぎて、容器本体3を圧縮したときに移動体6に加わる力が不十分になりやすいからである。
【0019】
筒体5は、外気導入孔15内に配置される軸部5aと、軸部5aの外部空間S側に設けられ且つ筒体5が中間空間21に入り込むことを防ぐ係止部5bと、軸部5aの中間空間21側に設けられ且つ筒体5が容器本体3の外側から引き抜かれることを防ぐ膨径部5cを有する。軸部5aは、中間空間21側に向かって先細り形状になっている。軸部5aの外周面が外気導入孔15の縁に密着することによって筒体5が容器本体3に装着される。このような構成によって、外気導入孔15の縁と筒体5の間の隙間を低減することができ、その結果、容器本体3を圧縮したときに中間空間21内の空気が外気導入孔15の縁と筒体5の間の隙間から流出することを抑制することができる。なお、筒体5は、軸部5aの外周面が外気導入孔15の縁に密着することによって、容器本体3に装着されるので、膨径部5cは必ずしも必須ではない。また、軸部5aは、容器外側に向かって先細り形状になっていてもよく、軸部5aの外周形状が軸方向に沿って変化しない柱状になっていてもよい。
【0020】
空洞部5gを囲む面5jには、移動体6が中間空間21側から外部空間S側に向かって移動するときに移動体6を係止するストッパー部5hが設けられている。ストッパー部5hは、環状の突起で構成されており、移動体6がストッパー部5hに当接すると空洞部5gを通じた空気の流通が遮断されるようになっている。
【0021】
また、筒体5の先端は、平坦面5dとなっており、平坦面5dには、空洞部5gに連通する開口部5eが設けられている。開口部5eは、平坦面5dの中央に設けられた略円形の中央開口部5e1と、中央開口部5e1から放射状に広がる複数のスリット部5e2を有する。このような構成によれば、移動体6が空洞部5gの底部に当接している状態でも空気の流れが妨げられない。
【0022】
弁部材4は、図5(f)に示すように、膨径部5c側から外気導入孔15内に挿入され、係止部5bが外殻12の外面に当接する位置まで押し込まれると、軸部5aの外周面が外気導入孔15の縁に密着した状態で、外殻12に保持される。中間空間21に空気が入っている状態で外殻12を圧縮すると、中間空間21内の空気が開口部5eを通じて空洞部5g内に入り、移動体6を押し上げてストッパー部5hに当接させる。移動体6がストッパー部5hに当接すると、空洞部5gを通じた空気の流れが遮断される。
【0023】
この状態で外殻12をさらに圧縮すると、中間空間21内の圧力が高まり、その結果、内袋14が圧縮されて、内袋14内の内容物が吐出される。また、外殻12への圧縮力を解除すると、外殻12が自身の弾性によって復元しようとする。外殻12の復元に伴って中間空間21内が減圧されることによって、図5(g)に示すように、移動体6に対して容器内側方向の力FIが加わる。これによって、移動体6が空洞部5gの底に向かって移動して、図5(f)に示す状態となり、移動体6と面5jの隙間及び開口部5eを通って中間空間21内に外気が導入される。
【0024】
弁部材4は、膨径部5cが外気導入孔15を押し広げながら、膨径部5cを中間空間21内に挿入することによって容器本体3に装着することができる。そのため、膨径部5cの先端は、先細り形状になっていることが好ましい。このような弁部材4は、容器本体3の外側から膨径部5cを中間空間21内に押し込むだけで装着可能なので、生産性に優れている。なお、筒体5の先端に平坦面5dが設けられているので、弁部材4を中間空間21内に押し込んだときに、弁部材4の先端が内袋14に衝突しても内袋14が傷つきにくくなっている。
【0025】
図1図2及び図4に示すように、収容部7の底面29には、凹領域29aと、凹領域29aを挟むように設けられる周縁領域29bが設けられ、凹領域29aには、図2及び図4に示すように、底面29から突出する底シール突出部27が設けられる。図4に示すように、底シール突出部27を折り曲げることによって、容器本体3の耐衝撃性を向上させると共に容器本体3の自立性を向上させることが可能になっている。
【0026】
次に、容器本体3の層構成についてさらに詳細に説明する。容器本体3は、外層11と内層13を備える。外層11は、復元性が高くなるように、内層13よりも肉厚に形成される。
【0027】
外層11は、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体及びその混合物などで構成される。尚、容器の直径が30mm以下になる場合は、外層11に低密度ポリエチレンを含むように構成するのが好ましい。この構成によれば、内容液を吐出させるためのスクイズが容易になる。例えば、外層11は低密度ポリエチレンの単層で構成することができる。また、外層11は、低密度ポリエチレンと、成形時のバリを使用したリサイクル材との多層で構成することもできる。
【0028】
図6に示すように、本実施形態では、内層13は、容器外面側に設けられたEVOH層13aと、EVOH層13aの容器内面側に設けられた混合樹脂層13bと、EVOH層13aと混合樹脂層13bの間に設けられた接着層13cを備える。EVOH層13aを設けることで酸素バリア性、及び外層11からの剥離性を向上させることができる。接着層13cは省略してもよい。
【0029】
EVOH層13aは、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)樹脂で構成される層であり、エチレンと酢酸ビニル共重合物の加水分解により得られる。EVOH樹脂のエチレン含有量は、例えば25〜50mol%であり、酸素バリア性の観点から32mol%以下が好ましい。エチレン含有量の下限は、特に規定されないが、エチレン含有量が少ないほどEVOH層13aの柔軟性が低下しやすいので25mol%以上が好ましい。
【0030】
接着層13cは、EVOH層13aと混合樹脂層13bとを接着する機能を有する層であり、例えば上述したポリオレフィンにカルボキシル基を導入した酸変性ポリオレフィン(例:無水マレイン酸変性ポリエチレン)を添加したものや、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)である。接着層13cの一例は、低密度ポリエチレン又は直鎖状低密度ポリエチレンと、酸変性ポリエチレンの混合物である。
【0031】
混合樹脂層13bは、シクロオレフィンポリマーとスチレン系熱可塑性エラストマーを含有する混合樹脂で構成される。このような混合樹脂を用いて構成された混合樹脂層13bを内層13に含めることによって、積層剥離容器のスクイズ性、落下割れ耐性、及び水蒸気非透過性を高めることができる。また、シクロオレフィンポリマーは薬剤吸着性が低いので、混合樹脂層13bを内層13の最内層として用いることによって、内層13への薬剤吸着を抑制することができる。
【0032】
混合樹脂層13bを構成する混合樹脂は、ISO 527に準じて測定される引張弾性率が好ましくは800〜2000MPaであり、さらに好ましくは900〜1900MPaである。この引張弾性率は、具体的には例えば、800、850、900、950、1000、1050、1100、1150、1200、1250、1300、1350、1400、1450、1500、1550、1600、1650、1700、1750、1800、1850、1900、1950、2000MPaであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。混合樹脂の引張弾性率が大きすぎると、スクイズ性が悪くなりやすい。
【0033】
シクロオレフィンポリマーは、主鎖及び/又は側鎖に脂環式構造を有する重合体である。重合体の脂環式構造としては、飽和環状炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和環状炭化水素(シクロアルケン)構造等が挙げられる。これらの中でも、機械的強度、耐熱性等の観点から、シクロアルカン構造やシクロアルケン構造が好ましく、シクロアルカン構造が最も好ましい。
【0034】
脂環式構造を構成する炭素原子数は、格別な制限はないが、通常4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個の範囲であるときに、機械的強度、耐熱性、及び成形性の特性が高度にバランスされ、好適である。
【0035】
シクロオレフィンポリマー中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択されればよいが、通常50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。シクロオレフィンポリマー中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合が過度に少ないと透明性及び耐熱性に劣り好ましくない。
【0036】
なお、シクロオレフィンポリマー中の脂環式構造を有する繰り返し単位以外の残部は、格別な限定はなく、使用目的に応じて適宜選択される。
【0037】
シクロオレフィンポリマーの具体例としては、ノルボルネン系重合体が挙げられる。ノルボルネン系重合体は、例えば、特開平3−14882号公報や、特開平3−122137号公報等に開示されている公知の重合体であり、具体的には、ノルボルネン系モノマーの開環重合体、ノルボルネン系モノマーの付加重合体、ノルボルネン系モノマーとビニル化合物の付加型共重合体、及びこれらの水素添加物等が挙げられる。
【0038】
ノルボルネン系モノマーは分子内にノルボルネン環構造を有するモノマーであり、具体的には、ビシクロ[2.2.1]−ヘプタ−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]−ヘプタ−2−エン、トリシクロ[4.3.0.12,5]−デカ−3,7−ジエン等が挙げられる。これらのノルボルネン系モノマーは、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
ビニル化合物としては、ノルボルネン系モノマーと共重合可能なものであれば、格別な制限はない。例えば、エチレン、プロピレン、1−ヘキセン等の炭素数2〜20のエチレン又はα−オレフィン;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン等のシクロオレフィン;1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン等の非共役ジエン;等が挙げられる。これらのビニル系化合物は、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0040】
シクロオレフィンポリマーは、230℃におけるメルトフローレイト(MFR)が3〜20g/10分であることがより好ましく、5〜15g/10分であることがさらに好ましい。このMFRは、具体的には例えば、具体的には例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。このMFRは、ISO 1133に準じて測定することができる。
【0041】
シクロオレフィンポリマーは、ISO 527に準じて測定される引張弾性率が好ましくは1500〜2500MPaであり、さらに好ましくは1700〜2100MPaである。この引張弾性率は、具体的には例えば、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0042】
シクロオレフィンポリマーは、ISO 527に準じて測定される引張強さが好ましくは10〜100MPaであり、さらに好ましくは20〜80MPaであり、さらに好ましくは30〜60MPaである。この引張強さは、具体的には例えば、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100MPaであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0043】
シクロオレフィンポリマーは、ISO 178に準じて測定される曲げ弾性率が好ましくは1500〜2500MPaであり、さらに好ましくは1700〜2100MPaである。この曲げ弾性率は、具体的には例えば、具体的には例えば、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、2500であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0044】
スチレン系熱可塑性エラストマーとは、スチレン単位を有する熱可塑性エラストマーであり、スチレン系共重合体(例えば、スチレン−エチレン−スチレンブロック共重合体(SES)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)等)、水素添加スチレン系共重合体(例えば、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−ブチレン・ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBBS)、水素添加スチレン−ブタジエンゴム(HSBR)等)等から選ばれた一種又は二種以上をブレンドしたものを挙げることができる。この中でも、水素添加スチレン系共重合体が好ましく、SEBSが特に好ましい。
【0045】
スチレン系熱可塑性エラストマーがブロック共重合体である場合、スチレンブロックに対する非スチレンブロック(例えば、SEBS場合はエチレン・ブチレンブロック)の質量比は、好ましくは0.1〜10であり、さらに好ましくは0.2〜5、さらに好ましくは0.5〜2である。この質量比は、具体的には例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、4、5、6、7、8、9、10であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0046】
スチレン系熱可塑性エラストマーは、230℃におけるメルトフローレイト(MFR)が0.3〜10g/10分であることがより好ましく、0.4〜5g/10分であることがさらに好ましく、0.6〜3g/10分であることがさらに好ましい。このMFRは、具体的には例えば、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。このMFRは、ISO 1133に準じて測定することができる。
【0047】
スチレン系熱可塑性エラストマーは、ISO 37に準じて測定される引張強さが好ましくは10〜80MPaであり、さらに好ましくは15〜60MPaである。この引張強さは、具体的には例えば、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80MPaであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0048】
シクロオレフィンポリマーに対するスチレン系熱可塑性エラストマーの質量比(エラストマー比)は、好ましくは0.1〜2であり、さらに好ましくは0.25〜1である。この質量比は、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0049】
混合樹脂層13bよりも容器内面側に別の内面層を設けてもよい。この内面層としては、例えば、上記のシクロオレフィンポリマーからなる層を用いることができる。シクロオレフィンポリマーは薬剤吸着性が低いので、混合樹脂層13bの内側にシクロオレフィンポリマー層を設けることによって薬剤吸着性をさらに低くすることができる。また、シクロオレフィンポリマー層の肉厚を大きくするとスクイズ性が悪くなりやすいので、混合樹脂層に対するシクロオレフィンポリマー層の肉厚比は、0.1〜1が好ましく、0.1〜0.5がさらに好ましい。この肉厚比は、具体的には例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【実施例】
【0050】
外層(LDPE層)/内層(EVOH層/接着層/最内層)の層構成を有し且つ図1と同様の形状を有する積層剥離容器本体をブロー成形によって形成した。最内層の樹脂組成は、表1に示す通りとした。その他の詳細は、以下の通りとした。
【0051】
口部の直径:18mm
積層剥離容器本体の容量: 15mL
外層の肉厚:0.45mm
内層の肉厚:0.15mm(EVOH層:0.03mm、接着層:0.03mm、最内層:0.09mm)
LDPE:サンテック F2206
EVOH:ソアノール ST230
接着層:ゼラス MC721APR5
COP:ゼオネックス 5000(主鎖にシクロペンタン構造を有するシクロオレフィンポリマー)
SEBS:タフテック H1051
PET:クラペット KS710B−8S
PP:エクセレン FH3711F6
【0052】
【表1】
【0053】
得られた積層剥離容器本体について、以下の評価を行い、その結果を表1に合わせて示した。表1に示すように、全ての実施例では、全ての評価項目について優れて結果が得られた。
尚、薬剤吸着の観点では、実施例においてSEBSの割合が少ないほど、薬剤の吸着量が小さいため、好ましい。特に、SEBSの割合が30%以下では、SEBSがCOP内に均一に分散して海島構造を作りやすく、薬剤の吸着量が、COP単体のものに近づくため、好ましい。すなわち、エラストマー比は、0.5以下が特に好ましい。
【0054】
<引張弾性率>
最内層を構成する樹脂について、ISO 527に準じて引張弾性率を測定した。
【0055】
<スクイズ性>
積層剥離容器本体の内層を外層から予備剥離し、口部が下方を向く状態にセットした。次に、パネル部7cの反対側の面にΦ16mm板を固定し、Φ16mm板を取り付けたプッシュプルゲージにてパネル部7c側より押し込み、15mm押し込むのに必要なスクイズ力を測定した。測定されたスクイズ力に基づいて、以下の基準でスクイズ性を評価した。
◎:スクイズ力≦28N
○:28N<スクイズ力≦32N
×:32N<スクイズ力
【0056】
<落下割れ耐性>
積層剥離容器本体内に水を10mL充填しアルミシールにて密閉した。その後、5℃恒温槽に48hr以上放置し、落下高さ1.5mより、容器本体を垂直に立てた状態で5回、容器本体を水平に寝かせた状態で5回落下させた。その後、容器本体の破損状況を目視確認し、落下割れ耐性を評価した。10本のサンプルについて試験を行い、1本以上の容器本体に破損が確認された場合の落下割れ耐性を×とし、全てのサンプルに破損が確認されなかった場合の落下割れ耐性を○とした。比較例1では、1本のサンプルにおいて、底部のパーティングライン付近にピンホールが確認され、比較例4では、3本のサンプルにおいて、水平落下後に外気導入孔付近にピンホールが確認された。
【0057】
<水蒸気非透過性>
積層剥離容器本体内に水を10mL充填し、アルミシールにて密閉した。その後、20℃×65%RH条件の恒温槽へ保管し、2週間保管時の水蒸気透過量を測定した。測定された水蒸気透過量から水蒸気透過率(=水蒸気透過量/10mL)を算出し、以下の基準で水蒸気非透過性を評価した。
◎:水蒸気透過率≦0.025%
○:0.025<水蒸気透過率≦0.030%
×:0.030%<水蒸気透過率
【符号の説明】
【0058】
1:積層剥離容器、3:容器本体、4:弁部材、5:筒体、6:移動体、7:収容部、9:口部、11:外層、12:外殻、13:内層、14:内袋、15:外気導入孔、21:中間空間、23:キャップ、27:底シール突出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6