特許第6683945号(P6683945)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6683945
(24)【登録日】2020年3月31日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】排気マニホールド
(51)【国際特許分類】
   F01N 13/10 20100101AFI20200413BHJP
   F01N 13/08 20100101ALI20200413BHJP
【FI】
   F01N13/10
   F01N13/08 E
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-250564(P2015-250564)
(22)【出願日】2015年12月22日
(65)【公開番号】特開2017-115642(P2017-115642A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年11月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】和田 大河
(72)【発明者】
【氏名】久保 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】前田 健吾
【審査官】 楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−324625(JP,A)
【文献】 特開2013−185498(JP,A)
【文献】 特開平07−139345(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103470888(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 13/00〜13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多気筒の内燃機関に接続され、複数の排気ポートにそれぞれ連通する連通穴が形成されたフランジと、
前記連通穴を排気管に接続される一つの出口穴に集合させる集合管とからなる排気マニホールドにおいて、
前記内燃機関と前記フランジとの間に配される空間を備え、
前記フランジには、前記空間として、前記連通穴の間に配されると共に、前記気筒の並び方向で、前記内燃機関の上部に位置する幅に対して下部に位置する幅が狭くされている空間のみが形成される
ことを特徴とする排気マニホールド。
【請求項2】
請求項1に記載の排気マニホールドにおいて、
前記フランジには、
前記内燃機関の上部に位置する前記空間の端側、及び、前記内燃機関の下部に位置する前記空間の下側に、前記内燃機関に固定されるボルトが挿入されるボルト穴が形成されている
ことを特徴とする排気マニホールド。
【請求項3】
請求項1もしくは請求項2に記載の排気マニホールドにおいて、
前記空間は、前記フランジの肉厚を薄くすることで、前記内燃機関との間に形成される空間である
ことを特徴とする排気マニホールド。
【請求項4】
請求項3に記載の排気マニホールドにおいて、
前記空間は前記気筒の並び方向に複数備えられ、
前記出口穴に近い側の、前記フランジの肉厚を薄くする方向の深さは、前記出口穴から遠い側の前記空間の前記フランジの肉厚を薄くする方向の深さよりも浅くなっている
ことを特徴とする排気マニホールド。
【請求項5】
請求項4に記載の排気マニホールドにおいて、
前記内燃機関は4気筒の内燃機関であり、
端部側の前記連通穴の間に前記空間がそれぞれ形成され、
前記フランジの上部には、両端部、及び、中央部の3箇所にボルト穴が形成され、
前記フランジの下部には、両端部、及び、両側の二つの気筒の間のそれぞれの4箇所にボルト穴が形成され、
前記空間は、両側の二つの気筒の間のそれぞれに備えられている
ことを特徴とする排気マニホールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多気筒の内燃機関の排気を排出するための排気マニホールドに関する。
【背景技術】
【0002】
多気筒の内燃機関(エンジン)の複数の排気ポートには排気マニホールドがフランジを介して接続され、複数の排気ポートからの排気が排気マニホールドで集合されて排気管に送られる(例えば、特許文献1参照)。一般に、エンジンは上側が開放されて放熱が適切に行われる。また、エンジンの上側には水冷のシリンダヘッドが配され、温度が比較的低い温度に維持されている。
【0003】
エンジンに接合される排気マニホールドのフランジは、高温の排気ガスに晒されて高温になりやすいが、エンジンの上側が開放されて放熱が適切に行われると共に、フランジとシリンダヘッドが接触して十分に冷却され、過熱が抑制されている。しかし、エンジンの下側は熱がこもりやすく、排気マニホールドのフランジの下側の温度が高くなる傾向にある。このため、排気マニホールドのフランジには、上側と下側の温度に差が生じて上下方向に温度分布が発生し、フランジが変形する虞があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平7−32899号公報
【発明の概要】
【0005】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、内燃機関に接合されるフランジの温度分布を抑制することができる排気マニホールドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明の排気マニホールドは、多気筒の内燃機関に接続され、複数の排気ポートにそれぞれ連通する連通穴が形成されたフランジと、前記連通穴を排気管に接続される一つの出口穴に集合させる集合管とからなる排気マニホールドにおいて、前記内燃機関と前記フランジとの間に配される空間を備え、前記フランジには、前記空間として、前記連通穴の間に配されると共に、前記気筒の並び方向で、前記内燃機関の上部に位置する幅に対して下部に位置する幅が狭くされている空間のみが形成されることを特徴とする。
【0007】
請求項1に係る本発明では、内燃機関とフランジの間の空間が、上方側の面積が広くなっているので、エンジンとフランジが直接接触する面積が狭くなり、温度が低いシリンダヘッドからの熱伝達が抑制され(冷却が抑制され)、フランジの上部と下部の温度差が少なくなる。
【0008】
このため、本発明の排気マニホールドは、内燃機関に接合されるフランジの温度分布を抑制することが可能になる。
【0009】
そして、請求項2に係る本発明の排気マニホールドは、請求項1に記載の排気マニホールドにおいて、前記フランジには、前記内燃機関の上部に位置する前記空間の端側、及び、前記内燃機関の下部に位置する前記空間の下側に、前記内燃機関に固定されるボルトが挿入されるボルト穴が形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る本発明では、空間の側部、下部でフランジが内燃機関に固定されるため、フランジの取り付き剛性を確保することができる。
【0011】
また、請求項3に係る本発明の排気マニホールドは、請求項1もしくは請求項2に記載の排気マニホールドにおいて、前記空間は、前記フランジの肉厚を薄くすることで、前記内燃機関との間に形成される空間であることを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る本発明では、フランジの肉厚を薄くすることで空間を形成することができる。空間を形成する例としては、フランジと内燃機関の間にスペーサを介在させたり、排気ポートと連通穴の接続部のシールを行うためのガスケットの厚さを調整したりすることも可能である。
【0013】
また、請求項4に係る本発明の排気マニホールドは、請求項3に記載の排気マニホールドにおいて、前記空間は前記気筒の並び方向に複数備えられ、前記出口穴に近い側の、前記フランジの肉厚を薄くする方向の深さは、前記出口穴から遠い側の前記空間の前記フランジの肉厚を薄くする方向の深さよりも浅くなっていることを特徴とする。
【0014】
請求項4に係る本発明では、出口穴に近い側の空間の深さが浅くなっているので、高温になりやすい出口穴に近い側のフランジに対し断熱効果が抑制され(冷却効果が高められ)、気筒の並び方向に対する温度分布を抑制することができる。
【0015】
また、請求項5に係る本発明の排気マニホールドは、請求項4に記載の排気マニホールドにおいて、前記内燃機関は4気筒の内燃機関であり、端部側の前記連通穴の間に前記空間がそれぞれ形成され、前記フランジの上部には、両端部、及び、中央部の3箇所にボルト穴が形成され、前記フランジの上部には、両端部、及び、両側の二つの気筒の間のそれぞれの4箇所にボルト穴が形成され、前記空間は、両側の二つの気筒の間のそれぞれに備えられていることを特徴とする。
【0016】
請求項5に係る本発明では、空間が両側の二つの気筒の間のそれぞれに空間が備えられ、端部の内側の中央の気筒の間には空間が存在していないので、気筒の並び方向で熱による変形が生じやすい部位には空間が存在せず、ボルトの締結によりフランジを内燃機関に接合した際に、十分な面圧を確保することができる。このため、4気筒の内燃機関において、フランジの温度分布を抑制することができると共に、取付けの剛性(排気ポートと連通穴の接続部のシール性)を確保することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の排気マニホールドは、内燃機関に接合されるフランジの温度分布(特に上下方向の温度分布)を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施例に係る排気マニホールドが接合された内燃機関の外観図である。
図2】本発明の一実施例に係る排気マニホールドの接合状況を表す分解斜視図である。
図3】本発明の一実施例に係る排気マニホールドの外観図である。
図4】本発明の一実施例に係る排気マニホールドの要部(フランジ)の正面図である。
図5】本発明の一実施例に係る排気マニホールドのフランジの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1には本発明の一実施例に係る排気マニホールドが接合された内燃機関の外観、図2には排気マニホールドの接合状況を説明する分解斜視を示してある。図3には排気マニホールドの外観視を示してあり、図3(a)は上面から見た状態、図3(b)は接合面側から見た状態である。
【0020】
図1図2に示すように、直列の多気筒(4気筒)の内燃機関(エンジン)1のシリンダブロック2の上側にはシリンダヘッド3が備えられ、シリンダヘッド3には4つの排気ポート4が形成されている。シリンダヘッド3(エンジン1)の排気ポート4が臨む面には、ガスケット5を介して排気マニホールド11のフランジ12が接合されている。ガスケット5の排気ポート4の周囲に対応する部位にはビード6が形成されている。
【0021】
図1から図3に示すように、排気マニホールド11のフランジ12には、シリンダヘッド3に接合された際に、4つの排気ポート4に対向する連通穴13(図3中左側から13a、13b、13c、13d)がそれぞれ形成されている。連通穴13には集合管14の4つの端部が接合され、4つの端部から延びる集合管14には一つの出口穴15が設けられている。
【0022】
出口穴15には、図示しない排気管の端部が接合される。出口穴15は、図1中、右から2つ目の排気ポート4に対応する位置(連通穴13bに対応する位置)に設けられている。ガスケット5の排気ポート4の周囲に対応する部位にはビード6が形成されている。
【0023】
図4図5に基づいて排気マニホールド11(フランジ12)の構成を具体的に説明する。
【0024】
図4にはフランジ12のシリンダヘッド3への接合面を表す正面視(図3(b)中ガスケット5を除いた状態)を示してある。図5にはフランジ12の断面を示してあり、図5(a)は図4中のa-a線矢視、図5(b)は図4中のb-b線矢視、図5(c)は図4中のc-c線矢視である。
【0025】
図4図5(a)に示すように、フランジ12の上部の両端部、及び、中央部の3箇所にはボルト穴17(図中左側から17a、17b、17c)が形成されている。図4図5(c)に示すように、フランジ12の下部の両端部、及び、両側の二つの連通穴13の間、即ち、連通穴13aと13bの間、連通穴13cと13dの間(気筒の間)のそれぞれの4箇所にボルト穴18(図中左側から18a、18b、18c、18d)が形成されている。
【0026】
図4図5(a)(b)に示すように、フランジ12のシリンダヘッド3との間には空間21が配され、空間21は、連通穴13aと13bの間、及び、連通穴13cと13dの間に配されている(図中左側が空間21a、右側が空間21b)。そして、空間21a、21bは、図中左右方向で(気筒の並び方向で)、シリンダヘッド3の上部に位置する幅Hに対して下部に位置する幅が狭くされている。
【0027】
空間21aの上部は、ボルト穴17a、17bの間に端部が配されて幅Hとなり、空間21aの下部はボルト穴18bに向かい、漸次幅が狭くなっている。空間21bの上部は、ボルト穴17b、17cの間に端部が配されて幅Hとなり、空間21bの下部はボルト穴18cに向かい漸次幅が狭くなっている。
【0028】
つまり、シリンダヘッド3とフランジ12の間の空間21は、上方側の面積が広くなっているので、フランジ12の上部は、シリンダヘッド3とフランジ12が直接接触する面積が狭くなり、水冷機構が備えられて温度が低いシリンダヘッド3に対して断熱される(熱伝達が抑制されて冷却が抑制され)る。これにより、熱がこもりやすいフランジ12の下部に対して上部との温度差が少なくなり、フランジ12の上下方向の熱分布が抑制される。
【0029】
そして、空間21の側部、及び、下部でフランジ12がシリンダヘッド3に固定されるため、空間21が存在しても、フランジ12の取り付き剛性を確保することができる。
【0030】
また、両側の二つの気筒の間(連通穴13aと13bの間、連通穴13cと13dの間)のそれぞれに空間21が備えられ、中央の気筒の間(連通穴13bと13cの間)には空間21が存在していないので、気筒の並び方向(左右方向)で熱による変形が生じやすい部位(湾曲した時に隙間が多くなる部位)には空間21が存在しない。
【0031】
このため、ボルトの締結によりフランジ12をシリンダヘッド3に接合した際に、連通穴13bと13cの間の部位の面圧を十分に確保することができる。そして、シリンダヘッド3に対するフランジ12の浮き上がりが生じにくいため、振動が発生しても、ボルトの頭部の内側とフランジ12のボルト穴17の周囲の面との間で、こすれが生じることがなく、ボルトの緩みが発生する虞がなくなる。
【0032】
従って、4気筒の内燃機関において、フランジ12の温度分布を抑制することができると共に、取付けの剛性、即ち、排気ポート4(図1参照)と連通穴13の接続部のシール性)を確保することができる。
【0033】
図5(a)(b)に示すように、空間21は、フランジ12の肉厚をシリンダヘッド3に対向する面側から薄くすることで、シリンダヘッド3との間に形成されている。尚、フランジ12とシリンダヘッド3の間にスペーサを介在させたり、ガスケット5の厚さを調整したりすることで、空間を形成することも可能である。
【0034】
そして、出口穴15に近い側の空間21a、即ち、ボルト穴17a、17bの間に配される空間21aは、高温の排気ガスに晒される部位である。このため、図4図5(b)に示すように、出口穴15から遠い側の空間21b、即ち、ボルト穴17b、17cの間に配される空間21bには深部空間22が設けられ、出口穴15に近い側の空間21aが浅くなっている。
【0035】
つまり、図5(b)に示すように、出口穴15に近い側の空間21aの深さd1に対し、深部空間22の深さd2が深く形成されている。これにより、出口穴15に近く高温に晒される側の空間21aの容積が、出口穴15から遠い側の空間21bの容積よりも少なくなり、フランジ12に対する断熱効果が抑制され(冷却効果が高められ)、連通穴13の並び方向(気筒の並び方向)に対する温度分布を抑制することができる。
【0036】
エンジン1に接合される排気マニホールド11のフランジ12は、高温の排気ガスに晒されて高温になりやすいが、エンジン1の上側が開放されて放熱が適切に行われると共に、フランジ12とシリンダヘッド3が接触して十分に冷却され、過熱が抑制される一方、エンジン1の下側は熱がこもりやすく、排気マニホールド11のフランジ12の下側の温度が高くなる傾向にある。
【0037】
上述した排気マニホールド11は、シリンダヘッド3に接合されるフランジ12の上側とシリンダヘッド3との間に、空間21を形成してフランジ12の上側の断熱効果を高めて冷却効果を抑制し、フランジ12の上下方向の温度分布を抑制することが可能になっている。このため、排気マニホールド11のフランジの上側と下側の温度差が抑制され、上下方向の温度分布を抑制して、フランジ12の変形をなくすことができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、多気筒の内燃機関の排気を排出するための排気マニホールドの産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 内燃機関(エンジン)
2 シリンダブロック
3 シリンダヘッド
4 排気ポート
5 ガスケット
11 排気マニホールド
12 フランジ
13 連通穴
14 集合管
15 出口穴
17 ボルト穴
21 空間
22 深部空間



図1
図2
図3
図4
図5