(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、電極部の酸化を防止するために、ボンディングヘッドや、基板が載置されるステージを、チャンバ内に収容し、当該チャンバ内を真空雰囲気または不活性ガスで充填していた。このようにボンディングヘッドおよびステージをチャンバ内に収容した場合、装置全体が大型で複雑となる。また、ボンディングに先だって、チャンバ内を真空または不活性ガスで充填する必要があり、実装工程が煩雑となっていた。さらに、直接接合する場合、チップ部品と接合対象物(基板等)との平行度のバラツキを吸収するバンプが存在しないため、ごく微小な粒子であっても、接合精度の低下を招く。そのため、直接接合する場合は、ボンディングに先だって、チップ部品の電極部および接合対象物の被接合部(電極部)の表面を十分に洗浄しておく必要があり、非常に手間であった。
【0006】
そこで、本願では、より簡易な手順および構成で、チップ部品を接合対象物に直接接合できる半導体装置の製造方法および製造装置を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願で開示する半導体装置の製造方法は、チップ部品の電極部を、接合対象物に設けられた被接合部に直接接合する半導体装置の製造方法であって、前記接合対象物を液槽内に載置する載置工程と、前記液槽内に液体を注入する液体注入工程と、前記液槽に貯留された液中において、ボンディングヘッドで保持した前記チップ部品を、前記接合対象物に重ね合わせることにより、前記電極部を前記被接合部に接合する工程と、を備える。
【0008】
かかる方法によれば、チップ部品と接合対象物が、液中に配されるため、異物が簡易かつ効果的に除去される。結果として、より簡易な手順で、チップ部品を接合対象物に直接接合できる。
【0009】
上述の製造方法は、さらに、前記載置工程の後、前記液体注入工程の前に、前記接合対象物の位置を検出する位置検出工程と、前記位置検出工程での位置検出結果に基づいて、前記接合対象物と前記ボンディングヘッドとの相互の位置決めを行う位置決め工程と、を備えてもよい。
【0010】
かかる方法とすれば、液体の影響を受けることなく、位置を検出できるため、より正確な位置決めができ、接合精度を向上できる。
【0011】
また、前記液体は、前記電極部の接合面または前記被接合部の接合面をエッチングし、前記電極部の接合面または前記被接合部の接合面に活性層を生成するエッチング液であって、前記接合する工程は、前記活性層が生成された前記接合面のいずれかを他方の前記接合面に接合してもよい。この場合、前記電極部または前記被接合部は、接合面となる金属の薄膜を有し、前記エッチング液は、前記金属の薄膜をエッチングして前記接合面に活性層を生成してもよい。
【0012】
かかる方法とすれば、電極部および被接合部を事前に活性化処理しなくても、これらを液中に配することで活性化できるため、表面活性化接合をより簡易に実施できる。
【0013】
また、前記電極部または前記被接合部は、接合面となる金属の薄膜を有し、前記接合する工程は、前記電極部と前記被接合部とを前記薄膜を介して接合してもよい。この場合、前記液体は、超純水、フッ素系不活性液体、シリコーンオイルからなる群、または、これらの混合液からなる群から選択されてもよい。
【0014】
かかる方法とすれば、原子拡散接合をより簡易に実施できる。
【0015】
また、前記電極部は、銅の薄膜からなり、前記液体には、前記電極部の酸化を防止するためのイオン調整剤が添加されてもよい。
【0016】
かかる構成とすることで、電極部および被接合部の酸化を効果的に防止でき、より好適に、電極部を直接接合できる。
【0017】
本願で開示する半導体装置の製造装置は、チップ部品の各電極部を、接合対象物に設けられた被接合部に直接接合する半導体装置の製造装置であって、液体が貯留されるとともに、その内部に前記接合対象物が載置される液槽と、前記液槽に貯留された液中において、前記チップ部品と前記接合対象物とを相互に重ね合わせることにより、前記チップ部品の前記電極部を前記接合対象物の前記被接合部に直接接合するボンディングヘッドと、を備える。
【0018】
かかる構成とすれば、チップ部品と接合対象物が、液中に配されるため、異物が簡易かつ効果的に除去される。結果として、より簡易な構成で、チップ部品を接合対象物に直接接合できる。
【0019】
上述の製造装置は、さらに、前記液槽に液体を注入および排出する注排出機構と、前記液槽に液体が注入されていない状態で、前記液槽に載置された前記接合対象物の位置を検出する位置検出機構と、前記位置検出機構による位置検出結果に基づいて、前記液槽に保持された前記接合対象物と前記ボンディングヘッドとを相互に位置決めする位置決め機構と、を備え、前記注排出機構は、前記位置検出機構により位置検出された後に、前記液槽に液体を注入してもよい。
【0020】
かかる構成とすれば、液体の影響を受けることなく、位置を検出できるため、より正確な位置決めができ、接合精度を向上できる。
【0021】
また、上述の製造装置は、さらに、前記ボンディングヘッドを前記液槽の液中から引き上げた際に、前記ボンディングヘッドに付着した液体を除去するヘッド除液機構を備えてもよい。
【0022】
かかる構成とすることで、ボンディングヘッドで新たなチップ部品をピックアップする際に、当該ボンディングヘッドに液体が付着していることを防止できる。
【0023】
また、上述の製造装置は、さらに、前記液槽内の液体に超音波振動を伝搬する超音波洗浄機構を備えてもよい。
【0024】
かかる構成とすることで、超音波振動により、液体内に配された接合対象物およびチップ部品をより、効果的に洗浄できる。
【発明の効果】
【0025】
本願で開示する半導体装置の製造方法および製造装置によれば、チップ部品と接合対象物が、液中に配されるため、異物が簡易かつ効果的に除去される。結果として、より簡易な手順および構成で、チップ部品を接合対象物に直接接合できる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して半導体装置の製造装置10について説明する。
図1は、半導体装置の製造装置10の構成を示す図である。この製造装置10は、チップ部品110を、接合対象物である基板100に、直接接合するのに特に適した装置である。
【0028】
ここで、直接接合とは、チップ部品110に形成された電極部112と、接合対象物(基板100等)に形成された電極部102(被接合部)とを、バンプや接着剤、ワイヤ等の中継部材を介在させることなく、直接、接触させて接合することをいう。代表的な直接接合としては、原子拡散接合と、表面活性化接合と、がある。原子拡散接合および表面活性化接合は、いずれも、接合部材(電極部102,112)の融点以下の温度条件で、当該接合部材を、塑性変形が生じない程度に重ねて接合する接合方法である。原子拡散接合は、金属薄膜同士を接触させて接合させた際に、接合面間に生じる金属原子の拡散を利用して接合する手法である。表面活性化接合は、接合面を表面処理して、当該接合面の表面の原子を、化学結合しやすい活性な状態したうえで、接合する手法である。以下の説明では、原子拡散接合を利用してボンディングする場合を例に挙げて説明する。ただし、本願で開示する技術は、原子拡散接合に限らず、表面活性化接合や、他の直接接合を利用したボンディング技術に適用できる。
【0029】
製造装置10の説明に先だって、チップ部品110および接合対象物である基板100の構成について
図2、
図3を参照して説明する。
図2は、チップ部品110および基板100の概略斜視図であり、
図3は、基板100にチップ部品110を接合した状態を示す概略断面図である。
【0030】
チップ部品110は、スクライブ工程を経てウェハから切り離されてチップ状とされたICである。チップ部品110のボンディング面には、1以上(図示例では12個)の電極部112が、所定のパターンで高密度に形成されている。この電極部112は、導電性金属、例えば、金や銅等を含む。図面では、見易さのために電極部112を厚く図示しているが、実際には、この電極部112の厚みは、原子拡散接合ができる程度に十分に薄い。具体的には、電極部112は、数nm〜数百nmの厚みの金属薄膜を備える。こうした電極部112は、例えば、スパッタリング等で形成される。ボンディング面には、さらに、1以上(図示例では3個)の位置決めマーク114が設けられている。ここで、これまでの説明で明らかな通り、このチップ部品110は、バンプを有さない、バンプレスチップである。
【0031】
基板100にも、1以上(図示例では12個)の電極部102が形成されている。この電極部102は、チップ部品110の電極部112が接合される被接合部として機能する。基板100の電極部102も、チップ部品110の電極部112と同様に、導電性金属、例えば、金や銅等を備える金属薄膜であり、スパッタリング等で形成される。また、基板100にも、1以上(図示例では3個)の位置決めマーク104が設けられている。なお、
図2、
図3では、電極部102は、基板100の上表面から突出しているが、電極部102は、その上表面が、外部に露出するとともに基板100の上表面に連なるように(電極部102が突出しないように)、基板100内に埋め込まれていてもよい。
【0032】
チップ部品110を基板100上にボンディングする際には、チップ部品110の位置決めマーク114と、基板100の位置決めマーク104とが正確に合致するように、チップ部品110を基板100に対して相対的に位置決めしたうえで、当該チップ部品110を、基板100に重ね合わせる。そして、チップ部品110の電極部112を、基板100の電極部102に、適度な荷重で押し当てると、各電極部112,102を構成する金属原子の拡散現象により、両電極部112,102が接合される。
【0033】
次に、製造装置10について、
図1を参照して説明する。製造装置10は、ステージ12、液槽14、ボンディングヘッド16、制御部18等を備えている。ステージ12には、基板100が載置される。ステージ12は、載置された基板100が動かないように、当該基板100を保持する基板保持機構(図示せず)が設けられている。基板保持機構としては、例えば、基板100を底面側から吸着保持する吸着機構や、基板100を爪部材でステージ12上に押し付けて固定するクランプ機構等を用いることができる。
【0034】
また、ステージ12には、当該ステージ12に載置保持された基板100の平行度を調整する基板平行度調整機構12aが内蔵されている。基板平行度調整機構12aは、ステージ12上面の傾きを調整して、当該ステージ12に載置された基板100を水平に調整する機構である。この基板平行度調整機構12aは、例えば、凸状半球面部材と凹状半球面部材とを組み合わせた球面軸受け機構でもよいし、ステージ12内の所定の3点を独立して昇降させるリフト機構等でもよい。
【0035】
なお、後述するように、ステージ12が収容される液槽14には、液体50が注入され、ステージ12の周囲は、液体50で満たされる。したがって、基板保持機構および基板平行度調整機構12aは、いずれも、液体50に触れても問題なく動作できる構成、あるいは、機構に液体50が触れない防止構成であることが望まれる。
【0036】
こうしたステージ12は、液槽14に収容され、固定されている。液槽14は、液体50が貯留可能な容器である。液槽14は、ステージ12および当該ステージ12に載置された基板100を、液中に浸漬できる程度の大きさを有していれば、その形状、サイズは、特に限定されない。液槽14には、当該液槽14に液体50を注入するための注入配管32と、液槽14に貯留された液体50を外部に排出する排出配管34と、が接続されている。注入配管32は、液槽14と、液体供給源20とを接続しており、当該注入配管32の途中には、液体50を送り出すための注入ポンプ36と、注入バルブ38が設けられている。注入ポンプ36および注入バルブ38は、いずれも、制御部18により駆動制御されており、注入バルブ38を開放した状態で注入ポンプ36を駆動することで、液槽14に液体50が注入される。注入配管32は、液槽14に接続されていれば、その接続箇所は特に限定されないが、気泡発生を防止することを考えると、注入配管32は、液槽14の底面近傍に接続されることが望ましい。
【0037】
排出配管34は、液槽14と、ドレンとを接続しており、当該排出配管34の途中には、排出バルブ40が設けられている。排出バルブ40は、制御部18により駆動が制御されており、排出バルブ40を開放することで、液体50が排出される。排出配管34は、液槽14の底面に接続されることが望ましい。なお、排出配管34は、ドレンに進む排液ルートだけでなく、注入配管32に戻る還流ルートを有していてもよく、液体50の流出先を、排液ルートまたは還流ルートに切り替えできるようにしてもよい。還流ルートを設ける場合には、循環して流れる液体50から異物を除去するフィルタを設けることが望ましい。還流ルートを設けることで、液槽14に供給された液体50を循環させることができ、液体50に適度な流れを生じさせることができる。これにより、異物が液槽14内で滞留することを防止でき、チップ部品110の直接接合をより好適に行うことができる。
【0038】
液槽14に供給される液体50は、直接接合、特に、原子拡散接合を阻害しないものであれば特に限定されない。ここで、後述するように、直接接合の場合は、極僅かな異物(粒子)も問題となるため、液体50は、高いレベルで異物が除去されたものでなければならない。したがって、液体50としては、例えば、電気抵抗率が15MΩ・cm以上の超純水を用いることができる。超純水を用いる場合、液体供給源20として、超純水製造装置を用いることができる。また、超純水に替えて、化学的に不活性な液体、例えば、フッ素系不活性液体、シリコーンオイル等を用いてもよい。すなわち、液体は、超純水、フッ素系不活性液体、シリコーンオイルからなる群、または、これらの混合液からなる群から選択されればよい。また、これらの液体50には、電極部102,112の表面の酸化を防止するイオン調整剤が添加されてもよい。イオン調整剤としては、例えば、硫酸イオン等を用いることができる。
【0039】
また、原子拡散接合ではなく、表面活性化接合を行う場合、液体50は、基板100の電極部102またはチップ部品110の電極部112の接合面に活性層を生成するエッチング液であってもよい。こうしたエッチング液にも、酸化を防止するイオン調整剤が添加されてもよい。
【0040】
液槽14の上側には、ボンディングヘッド16が設けられている。ボンディングヘッド16は、チップ部品110を保持するとともに、当該チップ部品110を基板100上に押し当てて、ボンディングする。このボンディングヘッド16の先端部17には、チップ部品110を保持するチップ保持機構(図示せず)が設けられている。チップ保持機構は、チップ部品110を裏面から吸着保持する吸着機構でもよいし、チップ部品110を一対のアームで挟持する挟持機構でもよい。ここで、ボンディングヘッド16の先端部17も、液体50に浸されるため、これらチップ保持機構も、液体50に触れても問題なく動作できる構成、あるいは、機構に液体50が触れない防水構成であることが望まれる。
【0041】
ボンディングヘッド16は、昇降動作と、水平移動と、鉛直軸R回りの自転とが可能となっている。また、ボンディングヘッド16には、チップ平行度調整機構16aが設けられており、その先端面の水平面に対する傾斜を調整できるようになっている。チップ平行度調整機構16aは、ボンディングヘッド16の先端面の傾きを調整して、当該先端面に保持されたチップ部品110を水平に調整する機構である。このチップ平行度調整機構16aとしては、凸状半球面部材と凹状半球面部材とを組み合わせた球面軸受け機構等を用いることができる。
【0042】
液槽14およびボンディングヘッド16の近傍には、チップ部品110および基板100の位置を検出する位置検出機構24が設けられている。位置検出機構24は、チップ部品110、および、基板100の位置および姿勢を検出できるのであれば、特に限定されない。位置検出機構24は、例えば、非接触で物体までの距離を検出する非接触測距センサや、物体を撮像して画像データを取得するカメラ等を単独で用いて、または、組み合わせて構成される。
【0043】
図1の図示例では、位置検出機構24は、ボンディングヘッド16に保持されたチップ部品110を撮像するチップ用カメラ42と、ステージ12に保持された基板100を撮像する基板用カメラ44と、を備えている。各カメラ42,44で撮像することで得られる画像データは、制御部18に送られる。制御部18は、送られた画像データに基づいて、チップ部品110および基板100の位置および姿勢を算出する。位置および姿勢の算出には、種々の公知の画像処理技術を用いることができる。例えば、パターンマッチング技術を用いて、チップ部品110および基板100の画像データから位置決めマーク104,114を検出し、当該位置決めマーク104,114の歪みや回転量、サイズ等に基づいて、チップ部品110および基板100の位置および姿勢を検出するようにしてもよい。また、別の方法として、ステレオ計測法、三角測量法等を用いて、チップ部品110および基板100の位置および姿勢を検出するようにしてもよい。なお、チップ用カメラ42および基板用カメラ44は、いずれも、単一でもよいし、複数でもよい。
【0044】
ここで、繰り返し述べる通り、ステージ12を収容する液槽14には、液体50が注入される。液体50が注入された状態では、カメラ42,44や測距センサでの位置および姿勢の検出が難しくなる。そこで、位置検出機構24は、液槽14に液体50が注入される前の状態で、基板100の位置および姿勢を検出する。
【0045】
液槽14の上方には、さらに、ボンディングヘッド16の先端部から液体50を除去する除液機構26も設けられている。すなわち、後述するように、ボンディングヘッド16の先端部17は、ボンディングの過程で、液槽14に貯留された液体50内に進入する。液体50に進入した後、上方に引き上げられたボンディングヘッド16の先端部17には、液滴が付着する。除液機構26は、この先端部17に付着した液滴を除去する。除液機構26は、先端部17に付着した液体50を除去できるのであれば、その構成は限定されない。
図1の図示例では、除液機構26は、先端部17に、気体を噴射して液体50を吹き飛ばすブロア機構である。製造装置10は、さらに、液槽14内の液体50に超音波振動を付与することで、基板100やチップ部品110の電極部102,112から異物を除去する超音波洗浄機構22も有している。
【0046】
制御部18は、製造装置10全体の駆動を制御するもので、各種演算を行うCPUと、各種パラメータやプログラムを記憶する記憶部と、を備えている。なお、
図1では、制御部18を単一のユニットとして図示しているが、制御部18は、複数の制御ユニット(複数のCPU、複数の記憶部)を組み合わせて構成されてもよい。この場合、複数の制御ユニットは、有線または無線で接続される。また、複数の制御ユニットの一部は、液槽14等から遠く離れた遠隔地に配されてもよい。
【0047】
以上の説明から明らかな通り、本願で開示する製造装置10は、液体50内で、チップ部品110を基板100に直接接合している。このように、液中で、直接接合する理由について従来技術と比較して説明する。
【0048】
バンプを介して接合する従来技術の場合、チップ部品110および基板100の高さの多少のバラツキは、バンプにより吸収されていた。そのため、チップ部品110および基板100の間に微小な異物が存在していても、問題にならない場合が多かった。しかし、直接接合の場合、チップ部品110には、バンプは形成されておらず、チップ部品110の電極部112と、基板100の電極部102とが直接接合される。この場合、チップ部品110の電極部112、および、基板100の電極部102に付着する異物が、ごく微小なものであっても、接合精度を大きく悪化させる。
【0049】
特許文献1等では、こうした問題を避けるために、チップ部品110および基板100の電極部112,102の表面を洗浄したうえで、これらチップ部品110および基板100を真空雰囲気中または不活性ガス雰囲気中に保持し、直接接合していた。具体的には、真空雰囲気または不活性ガス雰囲気に保つことができるチャンバ(クリーンルーム)を設け、当該チャンバ内にボンディングヘッド16やステージ12を配していた。しかし、このようにボンディングヘッド16およびステージ12をチャンバ内に収容した場合、装置全体が大型で複雑となる。また、ボンディングに先だって、チャンバ内を真空または不活性ガスで充填する必要があり、実装工程が煩雑となっていた。さらに、ボンディングに先だって、チップ部品110および接合対象物の電極部の表面を十分に洗浄しておく必要があり、非常に手間であった。
【0050】
一方、本願で開示する製造装置10では、液体50内に基板100を配置し、当該液体50内でチップ部品110を基板100にボンディングする。この場合、ボンディングヘッド16等の周囲を真空雰囲気または不活性ガス雰囲気に保つ必要がないため、これらを収容するチャンバが不要となる。その結果、製造装置10を小型化、簡易化できる。
【0051】
また、高純度の液体50内でボンディングする場合、基板100およびチップ部品110が、当該高純度の液体50で洗浄され、基板100およびチップ部品110の電極部102,112に付着した異物が効率的に除去される。結果として、ボンディングに先だって、基板100およびチップ部品110を洗浄する必要がなく、工程を簡易化できる。また、液体50中でボンディングすることで、酸素等のボンディング阻害要因を排除した状態を容易に実現できる。換言すれば、脱酸素環境を作るために、高価な不活性ガスを多量に用いたり、真空環境を形成したりする必要がないため、ボンディングに適した環境を、簡易かつ低コストに実現できる。さらに、液体50の成分を調整することで、電極部102,112の酸化を抑制することができ、電極部102,112を、より好適に直接接合できる。
【0052】
次に、この製造装置10による半導体装置の製造の流れについて
図4を参照して説明する。
図4は、半導体装置の製造の流れを示すフローチャートである。半導体装置を製造するために基板100にチップ部品110をボンディングする場合は、まず、液槽14内のステージ12に基板100を載置し、セットする(S10)。このとき、液槽14は、液体50が注入されていない空の状態である。基板100のセットは、人の手による手動でもよいし、種々のローディング機構によって自動的に行われてもよい。
【0053】
基板100が載置されれば、続いて、制御部18は、位置検出機構24を駆動して、当該基板100の位置および姿勢を検出する(S12)。具体的には、基板用カメラ44で、基板100を撮像する。制御部18は、得られた画像データを画像解析して、基板100の位置および姿勢を算出する。なお、基板100に複数の位置決めマーク104および複数の電極部102が設けられている。制御部18は、この複数の位置決めマーク104および複数の電極部102の位置および姿勢を算出し、一時記憶する。なお、このとき、基板100が非水平であると判断した場合には、基板平行度調整機構12aを駆動して、基板100を水平に調整する。
【0054】
基板100の位置等が検出できれば、制御部18は、液槽14に、液体50を注入する(S14)。すなわち、制御部18は、注入バルブ38を開放するとともに、排出バルブ40を閉鎖する。また、制御部18は、注入ポンプ36を駆動して、液体供給源20から液槽14に液体50を送り出す。そして、制御部18は、液体50が、規定の水位に達すれば、液体50の注入を停止する。なお、液体50が規定の水位に達した時、注入を停止せずに、注入を継続するとともに、排出バルブ40を開放して、一定期間、液体50の注入と排出を並行して行うようにしてもよい。これにより、液槽14内に一定の流れが発生し、基板100に付着した異物の除去が促進される。また、このとき、超音波洗浄機構22を駆動して、基板100に超音波振動を付与するようにしてもよい。
【0055】
続いて、ボンディングヘッド16を駆動して、図示しないチップ供給源からチップ部品110をピックアップする(S16)。チップ部品110がピックアップできれば、制御部18は、位置検出機構24を駆動して、ボンディングヘッド16で保持されたチップ部品110の位置および姿勢を検出する(S18)。具体的には、チップ用カメラ42で撮像して得られた画像データを画像解析して、チップ部品110の位置および姿勢を算出する。チップ部品110の位置および姿勢が算出できれば、制御部18は、基板100に対するチップ部品110の位置および姿勢が適切になるように、ボンディングヘッド16の位置決めを行う(S20)。具体的には、制御部18は、チップ部品110が非水平の場合には、チップ平行度調整機構16aを駆動して、チップ部品110を水平にする。また、チップ部品110の位置決めマーク114が、基板100の対応する位置決めマーク104の真上に位置するように、ボンディングヘッド16の水平位置および鉛直軸R回りの回転量を調整する。
【0056】
基板100に対するチップ部品110の位置決めができれば、チップ部品110を基板100にボンディングする(S22)。具体的には、制御部18は、ボンディングヘッド16を降下させ、チップ部品110の電極部112を、基板100の電極部102に、適度な荷重で押し当てる。これにより、チップ部品110と基板100それぞれの電極部112,102を構成する原子が拡散し、両電極部112,102が接合される。
【0057】
なお、電極部112,102の接合に先だって、チップ部品110が液体50内に進入した時点で、ボンディングヘッド16の降下を一時的に停止させ、チップ部品110を液体50内で一時的に静止させてもよい。所定時間、チップ部品110を液体50内で静止させることで、チップ部品110に付着した異物も効果的に除去される。また、チップ部品110を液体50中で静止させる際には、液体50の注入と排出を並行して行ったり、超音波洗浄機構により液体50に超音波振動を付与したりしてもよい。いずれにしても、チップ部品110の異物も除去しておくことで、基板100およびチップ部品110を、より適切に直接接合できる。
【0058】
チップ部品110と基板100それぞれの電極部112,102を接合できれば、制御部18は、ボンディングヘッド16によるチップ部品110の保持を解除したうえで、当該ボンディングヘッド16を上昇させる(S24)。また、ボンディングヘッド16が所定の高さまで上昇すれば、除液機構26を駆動して、ボンディングヘッド16の先端部17に付着した液体50を除去する。具体的には、ブロアを動作して、先端部17に付着した液滴を吹き飛ばす。
【0059】
一つのチップ部品110の接合が完了すれば、制御部18は、全てのチップ部品110の接合が完了したか否かを確認する(S26)。基板100に接合すべきチップ部品110が残っている場合には、ステップS16に戻り、同様の処理を繰り返す。全てのチップ部品110の接合が完了すれば、ボンディング処理は、終了となる。ボンディング処理が終了となれば、液槽14から液体50を排出し、ステージ12から基板100を取り出す。
【0060】
以上の説明から明らかな通り、本願で開示する半導体装置の製造装置10および製造方法によれば、チップ部品110と基板100は、直接接合する際に、高純度の液体50内に配される。そのため、チップ部品110および基板100それぞれの電極部112,102に付着した異物を効率的に除去することが可能であり、直接接合を好適に行うことができる。また、チップ部品110と基板100を、高純度の液体50内に配することで、直接接合を阻害する酸素等が無い環境を容易に形成することができ、チャンバ等を設ける従来技術に比べて、製造装置10の小型化、簡易化が可能となる。
【0061】
なお、ここで説明した構成は、一例であり、直接接合する際に、チップ部品110および基板100を高純度の液体50内に配することができるのであれば、その他の構成は、適宜、変更されてもよい。例えば、上述の例では、ボンディングヘッド16を移動させて、チップ部品110の基板100に対する位置決めを行っている。しかし、ボンディングヘッド16に替えて、または、加えて、液槽14またはステージ12を移動させて、チップ部品110の基板100に対する位置決めを行ってもよい。
【0062】
また、上述の例では、チップ部品110および基板100それぞれの電極部112,102を、原子拡散接合により接合する場合を説明したが、他の直接接合法、例えば、表面活性化接合により接合してもよい。この場合、チップ部品110および基板100それぞれの電極部112,102は、接合に先だって、活性化するように表面処理されていてもよい。この場合、液体50は、この活性化状態を維持できるような、化学的に不活性な液体50を選択すればよい。また、別の形態として、液体50を、チップ部品110および基板100それぞれの電極部112,102の接合面をエッチングして、当該接合面に活性層を生成するエッチング液としてもよい。この場合、チップ部品および基板100は、事前に活性化されている必要はなく、製造の過程で、液体50に浸されればよい。また、上述の例では、ボンディングヘッド16は、チップ部品110を面で押圧して加圧する構成としているが、ローラ部材等でチップ部品110を端から順に押圧していくような構成としてもよい。また、チップ部品110は、必ずしも加圧される必要はなく、直接接合できるのであれば、チップ部品110と基板100とが、加圧されることなく、重ね合わされるだけでもよい。
【0063】
また、上述の例では、チップ部品110を基板100に接合する例を説明したが、チップ部品110が接合される接合対象物は、基板100以外でもよい。例えば、基板100の接合済みのチップ部品110を、接合対象物としてもよい。換言すれば、本願で開示する技術は、チップ部品110の上にチップ部品110を接合する場合に適用されてもよい。また、上述の例では、除液機構26や、超音波洗浄機構22を設けたが、これらは、適宜、省略されてもよい。