(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
樹脂積層シート及び容器の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態の容器10は、例えば丼や惣菜等の食品(被収容物の一例)を包装するための容器(食品包装用容器)である。この容器10は、樹脂シートを積層してなる樹脂積層シート1のシート成形によって形成される。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の樹脂積層シート1は、熱可塑性樹脂層2と、熱可塑性樹脂層2の一方の面に積層されたポリスチレン系樹脂非発泡層3とを備えている。また、本実施形態の樹脂積層シート1は、熱可塑性樹脂層2の他方の面に積層されたポリプロピレン系樹脂非発泡層4をさらに備えている。
【0017】
熱可塑性樹脂層2は、樹脂積層シート1の基材となる層である。熱可塑性樹脂層2は、熱可塑性樹脂を主体として構成されている。熱可塑性樹脂層2を構成する熱可塑性樹脂は、特に限定されない。例えばポリオレフィン(ポリエチレンやポリプロピレン等)、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート等)、及びアクリル樹脂等の一般的な熱可塑性樹脂を適宜使用することができる。これらは、それぞれ、単独重合体、他の単量体との共重合体、他の樹脂との混合物、又はそれらの組み合わせであって良い。また、熱可塑性樹脂層2は、発泡層であっても良いし、非発泡層であっても良い。
【0018】
熱可塑性樹脂層2の好ましい一例としては、耐熱性及び断熱性の観点から、ポリプロピレン系樹脂発泡層が挙げられる。ポリプロピレン系樹脂発泡層は、ポリプロピレン系樹脂を主体とする発泡層である。ポリプロピレン系樹脂発泡層を構成するポリプロピレン系樹脂は、特に限定されないが、例えばプロピレンの単独重合体、プロピレンと他の単量体との共重合体、又はプロピレンと他の樹脂との混合物等であって良い。また、ポリプロピレン系樹脂としては、歪み硬化性を有するポリプロピレン系樹脂を含むものを好ましく用いることができる。ここで、「歪み硬化性」とは、ポリプロピレン系樹脂の伸長粘度が歪み速度の増加に伴って急激に上昇する特性を意味する。歪み硬化性を有するポリプロピレン系樹脂の一例としては、電子線照射又は化学的架橋によって分岐構造を分子鎖に導入したポリプロピレン系樹脂、或いは、超高分子量成分を混合することによって分子鎖同士の絡み合いを大きくしたポリプロピレン系樹脂が挙げられる。
【0019】
ポリプロピレン系樹脂は、上記の歪み硬化性を有するポリプロピレン系樹脂だけを含むものであっても良いが、歪み硬化性を有さないポリプロピレン系樹脂との混合物であっても良い。歪み硬化性を有さないポリプロピレン系樹脂の一例としては、市販の一般的な直鎖状ポリプロピレン系樹脂が挙げられる。
【0020】
熱可塑性樹脂層2(ポリプロピレン系樹脂発泡層)の構成材料が、歪み硬化性を有するポリプロピレン系樹脂と歪み硬化性を有さないポリプロピレン系樹脂との両方を含む場合、その配合比は、重量%基準で、60:40〜100:0とすることができる。歪み硬化性を有するポリプロピレン系樹脂の含有量を60重量%以上とすることで、独立気泡率の高い発泡体を得ることができ、耐熱性及び機械的強度を向上させることができる。熱可塑性樹脂層2(ポリプロピレン系樹脂発泡層)の構成材料における歪み硬化性を有するポリプロピレン系樹脂の含有量の好ましい一例は、100重量%である。
【0021】
熱可塑性樹脂層2には、必要に応じて、微量の添加剤が含まれても良い。添加剤としては、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、造核剤、滑剤、充填材、強化材、顔料、染料、難燃剤、及び帯電防止剤等が例示される。
【0022】
熱可塑性樹脂層2の厚みは、特に限定されないが、例えば0.3〜5mmであって良い。熱可塑性樹脂層2の厚みが0.3mmよりも薄ければ剛性や断熱性が不十分となる可能性があり、5mmより厚ければ成形性が不十分となる可能性がある。熱可塑性樹脂層2の厚みは、好ましくは0.6〜3mmであり、0.8〜2.4mmがさらに好ましい。
【0023】
熱可塑性樹脂層2が発泡層である場合における独立気泡率は、特に限定されないが、例えば60%以上であって良い。独立気泡率が60%未満であれば剛性や断熱性が不十分となる可能性がある。独立気泡率は、好ましくは70%以上であり、80%以上がさらに好ましい。また、熱可塑性樹脂層2に含まれる気泡の気泡径は、特に限定されないが、例えば8〜300μmであって良く、好ましくは10〜220μmである。
【0024】
さらに、熱可塑性樹脂層2が発泡層である場合における厚さ1mm当たりの気泡数は、特に限定されないが、例えば10〜30であって良い。単位厚み当たりの気泡数が10個未満であれば、断熱性が不十分となる可能性があり、また、シート表面の平滑性が損なわれて見栄えが悪くなるとともに、ポリスチレン系樹脂非発泡層3やポリプロピレン系樹脂非発泡層4が積層しにくくなる可能性がある。逆に、30個を超えて多くなると、脆くなって成形性が不十分となる可能性がある。単位厚み当たりの気泡数は、好ましくは15〜20である。
【0025】
ポリスチレン系樹脂非発泡層3は、ポリスチレン系樹脂を主体とする非発泡層である。ポリスチレン系樹脂非発泡層3を構成するポリスチレン系樹脂は、特に限定されないが、例えばスチレンの単独重合体、スチレンと他の単量体との共重合体、又はポリスチレンと他の樹脂との混合物等であって良い。他の単量体や他の樹脂としては、例えばポリオレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂、及びアクリル樹脂等が例示される。中でも、ポリオレフィン系樹脂との混合物を好ましく用いることができ、ポリスチレン系樹脂非発泡層3の構成材料が、ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂とを含むことが好ましい。
【0026】
この場合のポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂との配合比は、重量%基準で、50:50〜90:10とすることができる。50重量%以下のポリオレフィン系樹脂を含有させることで、ポリスチレン系樹脂単独での非発泡層に比べて、柔らかく温かみのある質感の独特の意匠性を発現させることができる。一方、ポリオレフィン系樹脂の含有量が10%未満であれば(すなわち、ポリスチレン系樹脂の含有量が90重量%より多ければ)、ポリスチレン系樹脂非発泡層3が熱可塑性樹脂層2から剥離しやすくなる可能性がある。ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂とのより好ましい配合比は、重量%基準で、55:45〜85:15である。
【0027】
上記の場合において、ポリスチレン系樹脂としては、耐衝撃性ポリスチレン(High Impact Polystyrene;HIPS)を使用しても良い。
【0028】
また、ポリスチレン系樹脂非発泡層3の構成材料が、スチレン系熱可塑性エラストマーをさらに含んでも良い。スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、特に限定されないが、例えばスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)又はその水素添加物、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)又はその水素添加物、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(SIBS)、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン共重合体(SEP)、及びスチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)等を用いることができる。
【0029】
また、例えば、ポリスチレン系樹脂非発泡層3の構成材料が、ポリスチレン系樹脂とスチレン系熱可塑性エラストマーとポリオレフィン系樹脂とを含んでも好ましい。この場合、ポリスチレン系樹脂は50〜85重量%、スチレン系熱可塑性エラストマーは0〜10重量%、ポリオレフィン系樹脂は50〜10重量%であることが好ましい。好ましい配合は、ポリスチレン系樹脂が55〜85重量%、スチレン系熱可塑性エラストマーが約5重量%、ポリオレフィン系樹脂が40〜10重量%である。
【0030】
ポリスチレン系樹脂非発泡層3には、必要に応じて、微量の添加剤が含まれても良い。添加剤としては、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、造核剤、滑剤、充填材、強化材、顔料、染料、難燃剤、及び帯電防止剤等が例示される。
【0031】
ポリスチレン系樹脂非発泡層3の厚みは、特に限定されないが、例えば5〜200μmであって良い。ポリスチレン系樹脂非発泡層3の厚みが5μmよりも薄ければ当該ポリスチレン系樹脂非発泡層3を積層することによる意匠性の向上効果が不十分となる可能性がある。逆に、200μmより厚ければ成形性が不十分となる可能性があり、また、原料コストが嵩んでしまう。ポリスチレン系樹脂非発泡層3の厚みは、好ましくは5〜100μmであり、10〜50μmがさらに好ましい。
【0032】
本実施形態の樹脂積層シート1において、ポリスチレン系樹脂非発泡層3の表面の静摩擦係数は、0.8以上である。ここで、ポリスチレン系樹脂非発泡層3の表面の静摩擦係数は、JIS K 6253−3:2012に準拠して測定して得られる値とする。静摩擦係数が0.8以上であれば、樹脂積層シート1におけるポリスチレン系樹脂非発泡層3の表面に手が触れた状態で樹脂積層シート1を面方向に摺動させるためには、ある程度大きな外力が必要となる。逆に言えば、樹脂積層シート1が簡単には面方向に摺動しないことになり、ポリスチレン系樹脂非発泡層3の表面における滑り止め性を向上させることができる。ポリスチレン系樹脂非発泡層3の表面の静摩擦係数は、好ましくは0.8〜0.9である。
【0033】
また、ポリスチレン系樹脂非発泡層3の表面の算術平均粗さは、1.4μm以上である。ここで、ポリスチレン系樹脂非発泡層3の表面の算術平均粗さは、JIS B 0601−3:2001に準拠して測定して得られる値とする。算術平均粗さが1.4μm以上であれば、ポリスチレン系樹脂非発泡層3の表面に微小な(ミクロな)凹凸が形成されて滑りにくくなる。よって、ポリスチレン系樹脂非発泡層3の表面の静摩擦係数が0.8以上であることとも相俟って、当該表面における滑り止め性を効果的に向上させることができる。なお、凹凸はミクロンオーダーで直接は視認不可能なので、当該凹凸によって見栄えが悪くなるという不都合はない。ポリスチレン系樹脂非発泡層3の表面の算術平均粗さは、好ましくは1.4〜1.8μmである。
【0034】
また、ポリスチレン系樹脂非発泡層3の表面の光沢度は、12%以下である。ここで、ポリスチレン系樹脂非発泡層3の表面の光沢度は、JIS Z 8741における方法3(60度鏡面光沢)に準拠して測定して得られる値とする。光沢度が12%以下であれば、ポリスチレン系樹脂非発泡層3の表面が適度につや消しされて意匠性が向上する。特に、ポリスチレン系樹脂非発泡層3を構成するポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂との配合比が重量%基準で50:50〜90:10であることによる柔らかく温かみのある質感とも相俟って、独特の意匠性を発現させることができる。ポリスチレン系樹脂非発泡層3の表面の光沢度は、好ましくは11%以下であり、8〜11%がさらに好ましい。
【0035】
ポリプロピレン系樹脂非発泡層4は、ポリプロピレン系樹脂を主体とする非発泡層である。ポリプロピレン系樹脂非発泡層4を構成するポリプロピレン系樹脂は、特に限定されないが、例えばプロピレンの単独重合体、プロピレンと他の単量体との共重合体、又はポリプロピレンと他の樹脂との混合物等であって良い。
【0036】
ポリプロピレン系樹脂非発泡層4には、必要に応じて、微量の添加剤が含まれても良い。添加剤としては、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、造核剤、滑剤、充填材、強化材、顔料、染料、難燃剤、及び帯電防止剤等が例示される。
【0037】
ポリプロピレン系樹脂非発泡層4の厚みは、特に限定されないが、例えば5〜200μmであって良い。ポリプロピレン系樹脂非発泡層4の厚みが5μmよりも薄ければシート表面の平滑性が損なわれる可能性がある。逆に、200μmより厚ければ成形性が不十分となる可能性があり、また、原料コストが嵩んでしまう。ポリプロピレン系樹脂非発泡層4の厚みは、好ましくは20〜100μmであり、30〜80μmがさらに好ましい。
【0038】
樹脂積層シート1の製造方法は、溶融工程と、発泡工程と、シート形成工程と、積層工程とを含む。溶融工程では、各層の樹脂原料をそれぞれ加熱して溶融する。発泡工程では、熱可塑性樹脂層2(本例ではポリプロピレン系樹脂発泡層)の溶融樹脂を発泡させる。その際に加える発泡剤としては、例えば炭化水素類、二酸化炭素、窒素、空気、及び水等を用いることができ、これらのうちの二種以上を併用しても良い。シート形成工程では、例えば押出機を用いて、各層の溶融樹脂からシートを形成する。積層工程では、各層のシートを積層する。シート形成工程と積層工程とは、別々の工程として順次実行されても良いし、同時に実行されても良い。すなわち、各層のシートを予めそれぞれ形成した後にそれらを積層しても良いし、各層のシートをそれぞれ押出形成するのと同時にそれらを積層しても良い。いずれにしても、上記の各工程を経て、樹脂積層シート1(本例ではポリプロピレン系樹脂発泡積層シート)を得ることができる。
【0039】
樹脂積層シート1の全体の厚みは、特に限定されないが、熱可塑性樹脂層2、ポリスチレン系樹脂非発泡層3、及びポリプロピレン系樹脂非発泡層4のそれぞれの厚みに応じたものとなり、例えば0.5〜5.5mmであって良い。樹脂積層シート1の全体の厚みは、好ましくは1〜3mmである。
【0040】
樹脂積層シート1の全体の密度は、特に限定されないが、例えば0.15〜0.85g/cm
3であって良い。全体の密度が0.15g/cm
3よりも小さいと成形品に成形した際の強度や高温での剛性が不十分となる可能性があり、0.85g/cm
3よりも大きいと成形品に成形した際の断熱性が不十分となる可能性がある。樹脂積層シート1の全体の密度は、好ましくは0.21〜0.55g/cm
3であり、0.25〜0.35g/cm
3がさらに好ましい。
【0041】
本実施形態の樹脂積層シート1によれば、熱可塑性樹脂層2に特定組成のポリスチレン系樹脂非発泡層3を積層し、そのポリスチレン系樹脂非発泡層3の物性を調整することで、滑り止め性及び見栄えを向上させることができる。
【0042】
このような樹脂積層シート1を用いて熱成形を行うことで、外表面の滑り止め性及び見栄えが向上した成形品(例えば
図2に示す容器10)を得ることができる。この容器10は、底部を形成する底面部11と、底面部11の周縁から上方に延びる周壁部12と、周壁部12の上端から外側に向かって延設されたフランジ部13とを備えている。なお、
図2には、容器10が平面視円形状に形成される例を示しているが、このような構成に限定されることなく、容器10が平面視で楕円状又は多角形状等に形成されても良い。また、底面部11が平面視多角形状に形成されるとともにフランジ部13が平面視円形状に形成される等、底面部11の平面視形状とフランジ部13の平面視形状とが互いに異なっても良い。
【0043】
ここで、容器10を熱成形するに際しては、
図3に示すように、樹脂積層シート1を、ポリスチレン系樹脂非発泡層3が最外層となるように配置して行う。このようにすれば、容器10における外表面の滑り止め性及び見栄えを向上させることができる。よって、容器10の外観に係る意匠性を高めることができるとともに、手を滑らせて容器10を落としてしまうような事態を回避しやすくできる。また、この構成では、ポリプロピレン系樹脂非発泡層4が最内層となるため、容器10の内面の耐油性を向上させることができる。
【0044】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明についてより具体的に説明する。但し、以下に記載する具体的な実施例によって本発明の範囲が限定される訳ではない。
【0045】
[実施例1]
ポリプロピレン系樹脂発泡層(熱可塑性樹脂層の一例;以下同様)の樹脂材料として、日本ポリプロ株式会社製のEX4000(100重量%)を準備し、その100重量部に対して造核剤として永和化成工業株式会社製のEE275Fを2.6重量部の割合で加え、リボンブレンダーで均一に混合した。ポリスチレン系樹脂非発泡層の樹脂材料として、PSジャパン株式会社製のHI408と日本ポリプロ株式会社製のBC3BRFとJSR株式会社製のTR2003とを、重量%基準で55:40:5の割合で準備し、これらをリボンブレンダーで均一に混合した。ポリプロピレン系樹脂非発泡層の樹脂材料として、日本ポリプロ株式会社製のBC3BRF(100重量%)を準備した。
【0046】
ポリプロピレン系樹脂発泡層用の押出機として、40mmφの二軸押出機(プラスチック工学研究所社製、型式:RT−40−S2−36−L、L/D=36)1基を準備した。ポリスチレン系樹脂非発泡層用及びポリプロピレン系樹脂非発泡層用の押出機として、40mmφの単軸押出機(ジー・エム・エンジニアリング社製、型式:VGM40−25、L/D=25)2基を準備した。これらの押出機の先端を2種3層フィードブロック(クローレンジャパン社製、型式:クローレンFGフィードブロック)に装着し、このフィードブロックにTダイを装着した。
【0047】
ポリプロピレン系樹脂発泡層用の二軸押出機のシリンダー温度を200〜230℃、ポリスチレン系樹脂非発泡層用の単軸押出機のシリンダー温度を210℃、ポリプロピレン系樹脂非発泡層用の単軸押出機のシリンダー温度を210℃に設定し、各押出機のホッパーに樹脂材料を供給して溶融させた。ポリプロピレン系樹脂発泡層用の二軸押出機のシリンダーには、発泡剤として二酸化炭素(液化炭酸ガス)を注入し、さらに混練した。
【0048】
大気圧下において、共押出法により、ポリプロピレン系樹脂非発泡層、ポリプロピレン系樹脂発泡層、及びポリスチレン系樹脂非発泡層を積層しながら、3層のシート状物を押出形成した。この3層のシート状物を25℃に調節した水冷ロールを通過させて急冷し、ポリプロピレン系樹脂発泡積層シートを得た。
【0049】
また、得られたポリプロピレン系樹脂発泡積層シートから、小型真空圧空成形機(株式会社脇坂エンジニアリング社製、型式:FVS−500型)を用いて、成形品を作製した。ポリプロピレン系樹脂発泡積層シートを、50×40cmのクランプで固定し、設定温度300℃のヒーターで上下から約15秒間加熱した後、差圧形成法により、165×165×56mmの大きさの丼型容器を得た。その際、ポリスチレン系樹脂非発泡層が容器外側となり、ポリプロピレン系樹脂非発泡層が容器内側となるように、熱成形を行った。
【0050】
[実施例2]
ポリスチレン系樹脂非発泡層の樹脂材料の組成を、HI408:BC3BRF:TR2003=65:30:5(重量%)としたことを除いては実施例1と同様にして、ポリプロピレン系樹脂発泡積層シート及び成形品を得た。
【0051】
[実施例3]
ポリスチレン系樹脂非発泡層の樹脂材料の組成を、HI408:BC3BRF:TR2003=70:25:5(重量%)としたことを除いては実施例1と同様にして、ポリプロピレン系樹脂発泡積層シート及び成形品を得た。
【0052】
[実施例4]
ポリスチレン系樹脂非発泡層の樹脂材料の組成を、HI408:BC3BRF:TR2003=75:20:5(重量%)としたことを除いては実施例1と同様にして、ポリプロピレン系樹脂発泡積層シート及び成形品を得た。
【0053】
[実施例5]
ポリスチレン系樹脂非発泡層の樹脂材料の組成を、HI408:BC3BRF:TR2003=85:10:5(重量%)としたことを除いては実施例1と同様にして、ポリプロピレン系樹脂発泡積層シート及び成形品を得た。
【0054】
[比較例1]
ポリスチレン系樹脂非発泡層の樹脂材料の組成を、HI408:BC3BRF:TR2003=45:50:5(重量%)としたことを除いては実施例1と同様にして、ポリプロピレン系樹脂発泡積層シート及び成形品を得た。
【0055】
[比較例2]
ポリスチレン系樹脂非発泡層の樹脂材料の組成を、HI408:BC3BRF:TR2003=90:5:5(重量%)としたことを除いては実施例1と同様にして、ポリプロピレン系樹脂発泡積層シート及び成形品を得た。
【0056】
[比較例3]
ポリスチレン系樹脂非発泡層を設けずにポリプロピレン系樹脂発泡層の両面にポリプロピレン系樹脂非発泡層を設けたことを除いては実施例1と同様にして、ポリプロピレン系樹脂発泡積層シート及び成形品を得た。
【0057】
[評価]
実施例1〜5及び比較例1〜3のポリプロピレン系樹脂発泡積層シートについて、シート全体の厚み、非発泡層の厚み、シート全体の密度、独立気泡率、単位厚み当たりの気泡数、表面粗さ、静摩擦係数、及び光沢度を測定した。また、実施例1〜5及び比較例1〜3の成形品について、滑り止め性及び外観性を評価した。また、実施例3及び比較例3のポリプロピレン系樹脂発泡積層シートについて、シート表面の電子顕微鏡写真を撮影した。
【0058】
<シート全体の厚み、非発泡層の厚み、単位厚み当たりの気泡数>
ポリプロピレン系樹脂発泡積層シートから、120mm×120mmの大きさの試験片を切り出し、厚み方向の断面を、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、型式:JCM−6000Plus)によって撮影倍率40倍で撮影した。撮影画像において、試験片を幅方向に4等分する箇所(
図4において黒塗りの三角形で示す30mm間隔の3箇所)での厚みを計測し、それらの平均値を求めてシート全体の厚みとした。また、撮影画像において、上記箇所でのシート表面から気泡周縁までの最短距離を計測し、それらの平均値を求めて非発泡層の厚みとした。また、撮影画像において、上記箇所での厚み方向に沿う垂線に重なる気泡の数を計数し、それらの平均値をシート全体の厚みで徐算して小数点以下を四捨五入し、単位厚み当たりの気泡数とした。
【0059】
<密度>
ポリプロピレン系樹脂発泡積層シートから、40mm×40mmの大きさの試験片を切り出し、電子比重計(ミラージュ貿易社製、型式:ED−120T)を用いて、水中置換法によって密度を測定した。
【0060】
<独立気泡率>
ポリプロピレン系樹脂発泡積層シートから、幅方向にほぼ均等となる位置(3箇所)において30mm×40mmの大きさの試験片を切り出し、電子天秤(株式会社島津製作所製、型式:AUW220)及び厚さ測定用ゲージ(株式会社ミツトヨ製デジマチックキャリパー、型式:CD−10CX)を用いて、試験片の重量及び体積を計測した。3個の試験片を重ね合わせて積層体とし、空気比較式比重計(東京サイエンス株式会社製、型式:1000型)を用いて、ASTMD−2856に準拠した1−2−1気圧法によって積層体の体積を測定し、以下の式により独立気泡率を算出した。
独立気泡率[%]=(Vx−Vw)/(Va−Vw)×100
ここで、Vxは空気比較式比重計による積層体の体積[cm
3]であり、Vwは3枚の試験片の総重量[g]÷比重[g/cm
3]であり、Vaは3枚の試験片の総体積(見かけ体積)[cm
3]である。
【0061】
<表面粗さ>
ポリプロピレン系樹脂発泡積層シートから試験片を切り出し、表面粗さ形状測定機(東京精密株式会社製サーフコム、型式:1400D)を用い、JIS B 0601−3:2001に準拠して、ポリスチレン系樹脂非発泡層の表面の算術平均粗さRaを測定した。測定にあたっては、測定子の先端の曲率半径を2μmとし、押出方向に直交する方向に沿う4.0mmの範囲について、0.06mm/sの速度で測定した。カットオフ値は0.8mmとした。それぞれについて3回ずつ測定し、測定結果の平均値を採用した。なお、比較例3においては、ポリプロピレン系樹脂非発泡層の表面を対象として同様の測定を行った。
【0062】
<静摩擦係数>
ポリプロピレン系樹脂発泡積層シートから、63mm×63mmの大きさの試験片を切り出した。また、JIS K 6253:2012に準拠した硬さが78で厚み2mmのフッ素ゴムシート(クレハエラストマー株式会社製、品番:FB780N)を準備した。
図5に示すように、フッ素ゴムシート101を試験台に固定し、その上に、試験片102(滑り片)をポリスチレン系樹脂非発泡層(比較例3においては、一方のポリプロピレン系樹脂非発泡層)が下向きとなるように載置し、さらにその上に錘103を載置した。この状態で試験片102に取り付けた索引用糸104で試験片102を引っ張り、索引用糸104の他端に取り付けられたロードセル105で試験片102が滑り出す直前の張力を測定し、これを静摩擦力(Fs)とした。この静摩擦力(Fs)と、試験片102と錘103との合計質量による垂直抗力(Fp)とに基づき、静摩擦力(Fs)を垂直抗力(Fp)で除算したものを静摩擦係数(μ
s)とした(μ
s=Fs/Fp)。
【0063】
<光沢度>
ポリプロピレン系樹脂発泡積層シートから試験片を切り出し、ハンディ光沢計(株式会社堀場製作所製グロスチェッカ、型式:IG−320)を用い、JIS Z 8741の方法3(60度鏡面光沢)に準拠して、ポリスチレン系樹脂非発泡層の表面の光沢度を測定した。なお、比較例3においては、ポリプロピレン系樹脂非発泡層の表面を対象として同様の測定を行った。
【0064】
<滑り止め性>
得られた成形品について、手で持った際の保持のしやすさを評価した。良好に保持できるものを「○」、劣るものを「×」、どちらとも言えないものを「△」とした。
【0065】
<外観性>
得られた成形品について、外表面を目視観察して光沢の有無や風合いを評価した。柔らかい風合いで光沢が抑えられたものを「○」、硬い風合いで光沢を発するものを「×」、どちらとも言えないものを「△」とした。
【0066】
<電子顕微鏡写真>
ポリプロピレン系樹脂発泡積層シートから、120mm×120mmの大きさの試験片を切り出し、ポリスチレン系樹脂非発泡層の表面を、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、型式:JCM−6000Plus)によって撮影倍率100倍で撮影した。なお、比較例3においては、ポリプロピレン系樹脂非発泡層の表面を対象として同様の撮影を行った。
【0067】
以上の結果を、表1並びに
図6及び
図7にまとめた。なお、表1において、「PP発泡層」はポリプロピレン系樹脂発泡層を表し、「PS非発泡層」はポリスチレン系樹脂非発泡層を表し、「PP非発泡層」はポリプロピレン系樹脂非発泡層を表す。また、「wt%」は重量%を表し、「部」は重量部を表す。
【0069】
表1から明らかなように、実施例1〜5の成形品はいずれも滑り止め性及び外観性に優れていた。これに対して、比較例1〜3の成形品は、滑り止め性及び外観性の少なくとも一方が不十分であるか明らかに劣っていた。比較例3の結果と実施例1〜5の結果とを比較すると、ポリプロピレン系樹脂発泡層へのポリスチレン系樹脂非発泡層の積層により、良好な滑り止め性及び外観性が付与されていることが分かる。また、比較例1,2の結果と実施例1〜5の結果とを比較すると、ポリプロピレン系樹脂発泡層に積層するポリスチレン系樹脂非発泡層の組成が特定組成であって初めて、良好な滑り止め性及び外観性が付与されていることが分かる。
【0070】
なお、実施例3についての
図6の電子顕微鏡写真と比較例3についての
図7の電子顕微鏡写真とを比較すると、実施例3において、シート表面に微小な(ミクロンオーダーの)凹凸が形成されていることが確認できる。実施例3のポリプロピレン系樹脂発泡積層シートでは、この微小な凹凸により、良好な滑り止め性が付与されているとともに、つや消しされて柔らかい風合いを醸し出していることが理解できる。
【0071】
〔その他の実施形態〕
(1)上記の実施形態では、樹脂積層シート1が熱可塑性樹脂層2の片面にポリスチレン系樹脂非発泡層3を備えている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、ポリスチレン系樹脂非発泡層3が熱可塑性樹脂層2の両面に備えられても良い。
【0072】
(2)上記の実施形態では、樹脂積層シート1が熱可塑性樹脂層2とポリスチレン系樹脂非発泡層3とに加えポリプロピレン系樹脂非発泡層4をさらに備えている構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば樹脂積層シート1がポリプロピレン系樹脂非発泡層4を備えずに、熱可塑性樹脂層2とポリスチレン系樹脂非発泡層3だけを備えても良い。
【0073】
(3)各層の具体的な樹脂材料、その組成、厚み、独立気泡率、気泡径、及び気泡数等は、求められる特性に応じて適宜変更されて良い。
【0074】
(4)上記の実施形態では、共押出法によって熱可塑性樹脂層2とポリスチレン系樹脂非発泡層3とポリプロピレン系樹脂非発泡層4とを積層する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば押出ラミネート法や熱ラミネート法等の他の方法で各層を積層しても良い。
【0075】
(5)上記の実施形態において、樹脂積層シート1が、少なくとも一方の面に積層された印刷フィルム層をさらに備えても良い。この場合において、ポリスチレン系樹脂非発泡層3に積層される印刷フィルム層は、印刷が施されたポリプロピレン系樹脂フィルム又はポリスチレン系樹脂フィルムとすることができる。また、ポリプロピレン系樹脂非発泡層4に積層される印刷フィルム層は、印刷が施されたポリプロピレン系樹脂フィルムとすることができる。
【0076】
(6)上述した各実施形態(上記の実施形態及びその他の実施形態を含む;以下同様)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。