(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6683989
(24)【登録日】2020年3月31日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】天井パネル材
(51)【国際特許分類】
E04B 9/04 20060101AFI20200413BHJP
E04B 9/00 20060101ALI20200413BHJP
E04B 1/94 20060101ALI20200413BHJP
E04C 2/20 20060101ALI20200413BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20200413BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20200413BHJP
B32B 15/20 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
E04B9/04 B
E04B9/00 D
E04B1/94 V
E04C2/20 L
B32B15/08 E
B32B5/18
B32B15/20
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-41426(P2017-41426)
(22)【出願日】2017年3月6日
(65)【公開番号】特開2018-145679(P2018-145679A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2019年4月2日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513195259
【氏名又は名称】日本大亜株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001184
【氏名又は名称】特許業務法人むつきパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】末武 洋一
【審査官】
村田 泰利
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−239417(JP,A)
【文献】
特開2006−257752(JP,A)
【文献】
実開昭57−202518(JP,U)
【文献】
特開平09−209490(JP,A)
【文献】
実開昭61−144118(JP,U)
【文献】
実開昭56−140419(JP,U)
【文献】
特開平09−060154(JP,A)
【文献】
韓国登録特許第10−0953127(KR,B1)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0016184(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/94
E04B 9/00
E04B 9/04
E04C 2/00−2/54
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メラミン樹脂の難燃性樹脂発泡体からなる平板状のベース層と、アルミ合金製のシートからなり前記ベース層の一面に積層された第1の表層と、前記ベース層及び前記第1の表層の間に介在された第1の接着層と、アルミ合金製のシートからなり前記ベース層の前記一面に対向する対向面に積層された第2の表層と、前記ベース層及び前記第2の表層の間に介在された第2の接着層と、によって構成され、前記第1の表層から前記第2の表層へ向けて締結部材を貫通させて固定部材に固定される天井パネル材であって、
前記アルミ合金製のシートは、30μm以上で50μm以下の範囲の厚みを有し、
前記第1の接着層は、前記ベース層に対して部分的に形成されることにより、前記ベース層と前記第1の表層との間に空気層を形成し、
前記第1の表層の端部を折り返して接着することにより、前記ベース層の側面を覆う第3の表層が形成されている
ことを特徴とする天井パネル材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物等の天井に適用される天井パネル材に関し、特に、軽量でかつ所望の剛性及び難燃性を備えた天井パネル材に関する。
【背景技術】
【0002】
オフィスビルや大型店舗等の建築物における天井には、従来、石膏ボードの意匠面に紙等を積層した化粧パネルが用いられている。これらの化粧パネルは、硬質で建築構造物としての高い剛性が得られる反面、ビス止め部分等では割れや欠け等が生じやすいため、こうした割れや欠け等が生じた化粧パネルは脆くなってしまい、修復や再利用が困難となる。また脆くなった化粧パネルを放置してしまうと、地震等の衝撃が負荷されると破断して落下する危険性がある。
【0003】
こうした問題点を考慮して、例えば、特許文献1では、合成樹脂発泡体からなるボードの両面に表面材と裏面材とを貼り付けた天井化粧パネルであって、当該表面材及び裏面材が、反りを防止するアルミ箔と、剛性を確保する紙層と、表面を覆う透明なプラスチック層とが積層されたものが開示されている。また、特許文献2には、難燃性を有する平板状の断熱材と、当該断熱材の少なくとも片面に積層されたアルミニウム箔等の金属箔と、積層された金属箔の表面に被覆されたつや消し層とを含む天井ボードが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−247352号公報
【特許文献2】特開2016−61108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載された天井化粧パネルは、合成樹脂発泡体からなるボードを主構成としているため、従来の石膏ボードと比べれば軽量化されたものであるが、上記ボードの表裏面に貼り付けられる表面材及び裏面材がいずれもアルミ箔と紙層とプラスチック層とからなる積層体で構成されるため、これらの表面材及び裏面材を製造するのに手間がかかる上に、軽量化の効果も十分とは言えない。
【0006】
一方、上記特許文献2に記載された天井ボードは、ベースとなる断熱材により所望の難燃性を得られるものの、具体的な実施形態としては、つや消し層を表面に形成した厚み25μm程度の薄いアルミニウム箔を、断熱材の片面に接着することにより、意匠性に優れるとの効果を得た例のみが開示されており、天井ボード単体として高い剛性を得る点については考慮されているとは言えない。
【0007】
そこで、本発明の目的は、難燃性を確保しつつ、構造物としての高い剛性を得ることができる天井パネル材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明による天井パネルは、難燃性樹脂発泡体からなる平板状のベース層と、アルミ合金製のシートからなり前記ベース層の一面に積層された第1の表層と、前記ベース層及び前記第1の表層の間に介在された第1の接着層と、アルミ合金製のシートからなり前記ベース層の前記一面に対向する対向面に積層された第2の表層と、前記ベース層及び前記第2の表層の間に介在された第2の接着層と、によって構成され、前記アルミ合金製のシートは、30μm以上で50μm以下の範囲の厚みを有することを特徴とする。
【0009】
かかる発明によれば、厚さの小さい単なるアルミ箔ではなく、十分な剛性を得られるアルミ合金製のシートを、難燃性樹脂発泡体からなるベース層の両面に積層したため、天井パネルとしての難燃性を確保しつつ高い剛性を得ることができる。
【0010】
上記の発明において、前記難燃性樹脂発泡体は、メラミン樹脂又はフェノール樹脂からなる発泡体であってもよい。また、前記第1の表層又は前記第2の表層の端部を折り返して接着することにより、前記ベース層の側面を覆う第3の表層が形成されてもよい。さらに、前記第1の接着層又は前記第2の接着層の少なくとも一方は、前記ベース層の全面に対して部分的に形成されていてもよい。
【0011】
かかる発明によれば、上記の効果に加えて、ベース層の側面での剛性を確保できるとともに、ベース層と第1及び第2の表層との間の難燃性を得ることも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施例1による天井パネル材の具体的な構成の概略を示す部分斜視図である。
【
図2】
図1に示す矢印Aの方向から見た部分側面図である。
【
図3】実施例1による天井パネル材の天井への取付構造の概要を示す部分断面図であって、
図3(a)は取り付ける前の状態を示し、
図3(b)は取り付けた後の状態を示す。
【
図4】本発明の実施例2による天井パネルの具体的な構造を示す部分断面図であって、
図4(a)は側壁部を形成する前の状態を示し、
図4(b)は側壁部を形成した後の状態を示す。
【
図5】本発明の実施例3による天井パネルの具体的な構造を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明による天井パネル材の具体例について図面を用いて説明する。
【0014】
<実施例1>
図1は、本発明の実施例1による天井パネル材の具体的な構成の概略を示す部分斜視図である。また、
図2は、
図1に示す矢印Aの方向から見た部分側面図である。
図1に示すように、本発明による天井パネル材100は、難燃性発泡体からなる平板状のベース層110と、ベース層110の一方の面(上面)側に積層された第1の表層120と、ベース層110の他方の面(下面)側に積層された第2の表層130と、を含む。そして、
図2に示すように、ベース層110と第1の表層120との間には、第1の接着層140が介在されており、ベース層110と第2の表層130との間には、第2の接着層150が介在されている。ここで、天井パネル100の仕様の一例としては、全体の厚み(
図4(a)の符号T参照)が10乃至15mm、単位面積あたりの重量が700g/m
3以下である。
【0015】
ベース層110は、例えば、メラミン樹脂やフェノール樹脂、あるいは不燃性の硬質ポリウレタン樹脂等の発泡体からなり、低密度で十分な難燃性を備える材料で構成されている。ベース層110は、その一例として、原料となる樹脂発泡体の塊から所定形状の平板に切り出したものを適用できる。
【0016】
第1の表層120及び第2の表層130は、いずれもアルミ合金製のシート材料で構成される。このとき、アルミ合金製シートの一例としては、一般に市販されている純アルミ系合金や、成形性を備えたAl−Mn系合金あるいは構造材として用いられるAl−Mg系合金等の板状材料が例示できる。ここで、
図2に示す第1の表層120の厚さT1及び第2の表層130の厚さT2は、天井パネル材100全体の剛性を確保しつつ軽量化を実現するために、それぞれ30μmを下限とし、50μmを上限とするのが好ましい。なお、厚さT1及びT2は同一であっても良いし異なるものであってもよい。また、第1の表層120及び第2の表層130のうちの一方を天井の意匠面として使用する場合、当該意匠面に所定の柄を印刷した紙等のシート材を追加的に貼着するように構成してもよい。
【0017】
第1の接着層140及び第2の接着層150は、樹脂材であるベース層110と金属層である第1の表層120あるいは第2の表層130とを面接合する層であり、例えば、エポキシ樹脂系、アクリル樹脂系、酢酸ビニル系、シリコーン系あるいはゴム系等であって、ベース層110との接着性の良好なものであれば任意のものを採用し得る。なお、第1の接着層140及び第2の接着層150は、いずれもベース層110の接着面の全面に配置されてもよいし、部分的に配置されるものであってもよい。
【0018】
図3は、実施例1による天井パネル材の天井への取付構造の概要を示す部分断面図であって、
図3(a)は取り付ける前の状態を示し、
図3(b)は取り付けた後の状態を示している。
図3に示すように、実施例1による天井パネル材100は、建築物の天井に設けられた梁状の固定部材160に、例えばクギ等の締結部材170を介して固定される。このとき、ベース層110の両面に形成されている第1の表層120及び第2の表層130は、いずれも上記締結部材170が貫通できる程度でかつ両面で最低限の剛性を得られる程度の厚みとされている。なお、
図3では、締結部材170としてクギを用いた場合を例示しているが、固定部材160の材質に応じて着脱自在に固定できるものであれば、例えばネジ付きのボルトあるいは万力等の機械的締結手段や接着構造等、任意の手法を採用できる。
【0019】
かかる構成により、本発明の実施例1による天井パネル材100は、難燃性樹脂発泡体からなる平板状のベース層110の表裏両面に、アルミ合金製のシートからなり前記ベース層の一面に積層された第1の表層120と、アルミ合金製のシートからなり前記ベース層の前記一面に対向する対向面に積層された第2の表層130と、を積層した構造を採用し、これら第1の表層120及び第2の表層130の厚みを30μm以上で50μm以下の範囲としたことにより、表裏両面の表層が厚さの小さい単なるアルミ箔ではなく、十分な剛性を得られるアルミ合金製のシートで構成されるため、天井パネルとしての難燃性を確保しつつ高い剛性を得ることができる。
【0020】
<実施例2>
図4は、本発明の実施例2による天井パネルの具体的な構造を示す部分断面図であって、
図4(a)は側壁部を形成する前の状態を示し、
図4(b)は側壁部を形成した後の状態を示している。
図4に示すように、実施例2による天井パネル200は、難燃性発泡体からなる平板状のベース層210と、ベース層210の一方の面(上面)側に積層された第1の表層220と、ベース層210と第1の表層220との間に介在された第1の接着層240と、ベース層210の他方の面(下面)側に積層された第2の表層230と、ベース層210と第2の表層230との間に介在された第2の接着層250と、を含む。ここで、ベース層210、第1の表層220及び第2の表層230、並びに第1の接着層240及び第2の接着層250は、いずれも実施例1で例示したものと同様のものを適用し得る。
【0021】
図4(a)に示すように、実施例2による天井パネル200において、その一例として、第2の表層230の一端がベース層210の端部に対して長手方向(図示上で紙面に垂直な方向)の全面に張り出した張出部230aを形成している。このとき、張出部230aのベース層210の端部Eからの張り出し長さLは、積層体としての天井パネル200の総板厚Tとほぼ同一となるように設定される。そして、
図4(b)に示すように、張出部230aを折曲部230bで折り曲げて、当該張出部230aをベース層210の端部Eに沿うように側面側接着層250aを介して接着固定する。これにより、ベース層210の側面にアルミ合金製のシートからなる側壁部(第3の表層230a)が形成される。なお、
図4では、第2の表層230の一端に張出部230aを形成した場合を例示したが、第1の表層220の一端に張出部を形成するように構成してもよい。このとき、第1の表層220あるいは第2の表層230のうち、天井の意匠面となる側(すなわち居室側)に向く側の表層に上記張出部を設けるのが好ましい。
【0022】
かかる構成により、本発明の実施例2による天井パネル材200は、ベース層210に積層される表層の一端に張出部(符号230a)を形成し、これを折曲部(符号230b)で折り曲げてベース層210に対する側壁部として接着固定したことにより、実施例1による天井パネルで得られた効果に加えて、第3の表層(側壁部)が天井パネル200の板厚方向にも所定の剛性を発揮するため、建築構造物としてさらに高い剛性を得ることが可能となる。
【0023】
<実施例3>
図5は、本発明の実施例3による天井パネルの具体的な構造を示す部分断面図である。
図5に示すように、実施例3による天井パネル300は、難燃性発泡体からなる平板状のベース層310と、ベース層310の一方の面(上面)側に積層された第1の表層320と、ベース層310と第1の表層320との間に介在された第1の接着層340と、ベース層310の他方の面(下面)側に積層された第2の表層330と、ベース層310と第2の表層330との間に介在された第2の接着層350と、を含む。ここで、ベース層310、第1の表層320及び第2の表層330、並びに第1の接着層340及び第2の接着層350は、いずれも実施例1で例示したものと同様のものを適用し得る。
【0024】
また、
図5に示すように、実施例3による天井パネル300において、その一例として、第1の接着層340がベース層310の外縁部近傍の領域のみに部分的に形成されており、その余の領域では、ベース層310と第1の表層320との間に接着層を介しない空隙(空気層)342が形成されている。このとき、第1の接着層340をベース層310の内側に部分的に島状に配置してもよい。これにより、空気層342の存在によりベース層310と第1の表層320とが直接接触しない領域が形成される。なお、
図5では、第1の接着層340の一部に空隙(空気層)342を形成した場合を例示したが、第2の表層350も部分的な配置として、上記空隙(空気層)を形成するように構成してもよい。このとき、第1の接着層340あるいは第2の接着層350のうち、天井の意匠面となる側(すなわち居室側)に向く側の接着層に上記空気層を設けるのが好ましい。
【0025】
かかる構成により、本発明の実施例3による天井パネル材300は、第1の接着層340が部分的に形成されて、ベース層310と第1の表層320との間に接着層を介しない空隙(空気層)342が形成されることにより、実施例1による天井パネルで得られた効果に加えて、ベース層310と第1の表層320との間の空隙342が断熱層としての機能も発揮するため、建築構造物として難燃性に加えて断熱性を備えた天井パネル材とすることが可能となる。
【0026】
以上、本発明による実施例及びこれに基づく変形例を説明したが、本発明は必ずしもこれらの例に限定されるものではない。また、当業者であれば、本発明の主旨又は添付した特許請求の範囲を逸脱することなく、様々な代替実施例及び改変例を見出すことができるであろう。
【0027】
その一態様として、上記した実施例2では、ベース層の一端において張出部を形成した場合を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本発明による天井パネル材の外縁近傍の4辺のすべてにおいて、一方の表層から張出部を形成し、これらを折り曲げて第3の表層(側壁部)となるように形成してもよい。また、上記の実施例1乃至3で示した天井パネル材の構成を互いに組み合わせて用いてもよいことは、当業者であれば当然に理解されるであろう。
【符号の説明】
【0028】
100、200、300 天井パネル材
110、210、310 ベース層
120、220、320 第1の表層
130、230、330 第2の表層
140、240、340 第1の接着層
150、250、350 第2の接着層
160 固定部材
170 締結部材
230a 張出部
230b 折曲部
342 空隙