(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
金属箔であり、第1の主面と前記第1の主面とは反対側の第2の主面を有する負極集電体と、前記第1の主面と前記第2の主面に形成された負極活物質層とを有する負極と、
金属箔であり、第3の主面と前記第3の主面とは反対側の第4の主面を有する正極集電体と、前記第3の主面と前記第4の主面に形成された正極活物質層とを有する正極と、
前記正極と前記負極を絶縁するセパレータと、
前記正極と前記負極と前記セパレータを浸漬する電解液と
を有し、
前記正極、前記負極及び前記セパレータは積層され、前記第1の主面及び前記第3の主面が捲回内側となり、前記第2の主面及び前記第4の主面が捲回外側となるように捲回され、前記セパレータが前記正極と前記負極を隔てている電気化学デバイスであって、
前記第1の主面は、前記セパレータを介して前記正極と対向し、
前記第2の主面は、前記セパレータを介して前記正極と対向する第1の領域と、最も捲回外側であって前記正極と対向しない第2の領域とを有し、
前記第2の領域は前記第1の主面に前記負極活物質層が形成され、かつ前記第2の主面に前記負極活物質層が形成されていない第1の未塗工領域を含み、前記第1の未塗工領域の前記第2の主面には前記負極集電体を介して前記第1の主面に形成された負極活物質層と対向するように金属リチウムが接合され、前記電解液に浸漬されることで、前記負極活物質層にリチウムイオンのプレドープがなされている
電気化学デバイス。
金属箔であり第1の主面と前記第1の主面とは反対側の第2の主面を有する負極集電体の前記第1の主面と前記第2の主面に負極活物質層を形成し、前記第1の主面に前記負極活物質層が設けられ、前記第2の主面に前記負極活物質層が設けられていない未塗工領域を形成して負極を作製する工程と、
前記未塗工領域の前記第2の主面に金属リチウムを接合する工程と、
金属箔であり、第3の主面と前記第3の主面とは反対側の第4の主面を有する正極集電体と、前記第3の主面と前記第4の主面に形成された正極活物質層とを有する正極を準備し、前記正極、セパレータ及び前記負極を積層して積層体を形成する工程と、
前記積層体を前記第1の主面及び前記第3の主面が捲回内側となり、前記第2の主面及び前記第4の主面が捲回外側となるように捲回して、前記セパレータが前記正極と前記負極を隔てている蓄電素子を形成する工程であって、前記第1の主面は前記セパレータを介して前記正極と対向し、前記第2の主面は前記セパレータを介して前記正極と対向する第1の領域と、最も捲回外側であって前記正極と対向しない第2の領域とを有し、前記第2の領域に前記未塗工領域が設けられている蓄電素子を形成する工程と、
前記蓄電素子を電解液に浸漬させ、前記金属リチウムから前記負極活物質層にリチウムイオンをドープさせる工程と
を具備する電気化学デバイスの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のようにリチウムイオンのプレドープが必要な電気化学デバイスにおいて、リチウム源の配置方法には、リチウム用集電体にリチウムを貼付し、リチウム用集電体を負極集電体に接続する方法がある。しかし、リチウム用集電体を別途用意する必要があり、リチウム用集電体を負極集電体に接続する工程も必要となることから生産性が低いという問題がある。
【0008】
また、特許文献1〜3に記載の発明では、リチウムイオンを負極にプレドープする際に発生する微小なリチウム粉が負極と対向する正極に到達し、電圧降下が生じるため、信頼性が確保されないおそれもある。
【0009】
以上のような事情の鑑み、本発明の目的は、生産性かつ信頼性に優れた電気化学デバイス及びこの電気化学デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る電気化学デバイスは、負極と、正極と、セパレータと、電解液とを有する。
上記負極は、金属箔であり、第1の主面と上記第1の主面とは反対側の第2の主面を有する負極集電体と、上記第1の主面と上記第2の主面に形成された負極活物質層とを有する。
上記正極は、金属箔であり、第3の主面と上記第3の主面とは反対側の第4の主面を有する正極集電体と、上記第3の主面と上記第4の主面に形成された正極活物質層とを有する。
上記セパレータは、上記正極と上記負極を絶縁する。
上記電解液は、上記正極と上記負極と上記セパレータを浸漬する。
上記電気化学デバイスは、上記正極、上記負極及び上記セパレータが積層され、上記第1の主面及び上記第3の主面が捲回内側となり、上記第2の主面及び上記第4の主面が捲回外側となるように捲回され、上記セパレータが上記正極と上記負極を隔てている電気化学デバイスであって、
上記第1の主面は、上記セパレータを介して上記正極と対向し、
上記第2の主面は、上記セパレータを介して上記正極と対向する第1の領域と、最も捲回外側であって上記正極と対向しない第2の領域とを有し、
上記第2の領域は上記負極活物質層が形成されていない第1の未塗工領域を含み、上記第1の未塗工領域には金属リチウムが接合され、上記電解液に浸漬されることで、上記負極活物質層にリチウムイオンのプレドープがなされている
電気化学デバイスである。
【0011】
この構成によれば、金属リチウムが、セパレータを介して正極と対向しない最も捲回外側の第2の主面に接合される。これにより、負極にリチウムイオンがプレドープされる際に、微小なリチウム粉が発生したとしても、当該リチウム粉の正極との接触が抑制される。よって、負極へのプレドープの過程で発生するリチウム粉の影響による不具合が発生しにくくなり、これまでのリチウムイオンキャパシタよりも安定した信頼性を確保することが可能となる。
【0012】
また、上記電気化学デバイスは、負極集電体の第2の主面における第2の領域を金属リチウムの設置面として利用することができる。これにより、負極にリチウムイオンをプレドープするために、リチウム用集電体等の部品を別途準備し、当該部品を負極に接続する工程が不要となるので、生産性を向上させることもできる。従って、本発明により、生産性かつ信頼性に優れた電気化学デバイスを提供することが可能となる。
【0013】
上記第1の未塗工領域は、上記第2の領域の全体に設けられていてもよい。
【0014】
この構成によれば、負極集電体の第2の主面における第2の領域の全体に金属リチウムを貼り付けることができる。これにより、負極に十分な量のリチウムイオンをプレドープでき、キャパシタの高容量化を図ることができる。
【0015】
上記負極は、上記第1の領域に形成された第1の負極活物質層と、上記第2の領域に形成され、上記第1の負極活物質層と離間し、上記負極集電体の端部に形成された第2の負極活物質層とを含み、
上記第1の未塗工領域は、上記第1の負極活物質層と上記第2の負極活物質層との間に設けられていてもよい。
【0016】
負極集電体の端部に第2の負極活物質層が設けられることにより、負極集電体の切断辺によるセパレータの破損を防止することができる。
【0017】
上記第2の主面は、最も捲回内側の上記負極集電体の端部に上記負極活物質層が設けられていない第2の未塗工領域を含んでもよい。
【0018】
これにより、キャパシタの充放電に関与しない最も捲回外側の負極活物質層の一部が除去され、蓄電素子のコンパクト化を図ることが可能となる。
【0019】
上記負極集電体は、銅からなるものであってもよい。
【0020】
銅は、薄くても強度があり、柔軟性も高いため、負極集電体の材料として好適である。銅と金属リチウムとを圧着することで、圧着した界面に電解液が入り込むことによる界面側からの金属リチウムの溶融が抑制されると共に、負極集電体と金属リチウムの導通が維持される。これにより、リチウムイオンを適正に負極にプレドープすることができる。
【0021】
上記負極集電体は、複数の貫通孔を有してもよい。
【0022】
負極集電体に貫通孔を形成することにより、負極へのリチウムイオンのプレドープの効率を向上させることができる。
【0023】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る電気化学デバイスの製造方法は、
金属箔であり第1の主面と上記第1の主面とは反対側の第2の主面を有する負極集電体の上記第1の主面と上記第2の主面に負極活物質層を形成し、上記第2の主面に上記負極活物質層が設けられていない未塗工領域を形成して負極を作製する工程と、
上記未塗工領域に金属リチウムを接合する工程と、
金属箔であり、第3の主面と上記第3の主面とは反対側の第4の主面を有する正極集電体と、上記第3の主面と上記第4の主面に形成された正極活物質層とを有する正極を準備し、上記正極、セパレータ及び上記負極を積層して積層体を形成する工程と、
上記積層体を上記第1の主面及び上記第3の主面が捲回内側となり、上記第2の主面及び上記第4の主面が捲回外側となるように捲回して、上記セパレータが上記正極と上記負極を隔てている蓄電素子を形成する工程であって、上記第1の主面は上記セパレータを介して上記正極と対向し、上記第2の主面は上記セパレータを介して上記正極と対向する第1の領域と、最も捲回外側であって上記正極と対向しない第2の領域とを有し、上記第2の領域に上記未塗工領域が設けられている蓄電素子を形成する工程と、
上記蓄電素子を電解液に浸漬させ、上記金属リチウムから上記負極活物質層にリチウムイオンをドープさせる工程と
を具備する。
【0024】
上記負極を作製する工程では、第1の主面と上記第1の主面とは反対側の第2の主面を有する金属箔である負極集電体を準備し、
上記第1の主面の全体に第1の負極活物質層を形成し、上記第2の主面に所定の間隔を空けて複数の第2の負極活物質層を形成し、
第2の負極活物質層の間で上記負極集電体と上記第1の負極活物質層を共に裁断してもよい。
【0025】
上記負極を作製する工程では、第1の主面と上記第1の主面とは反対側の第2の主面を有する金属箔である負極集電体を準備し、
上記第1の主面の全体に第1の負極活物質層を形成し、上記第2の主面に所定の間隔を空けて複数の第2の負極活物質層を形成し、
第2の負極活物質層、上記負極集電体及び上記第1の負極活物質層を共に裁断してもよい。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本発明によれば生産性かつ信頼性に優れた電気化学デバイス及びこの電気化学デバイスの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の電気化学デバイスについて説明する。本実施形態に係る電気化学デバイスは、リチウムイオンキャパシタ等の、電荷の輸送にリチウムイオンを利用する電気化学デバイスである。
【0029】
[電気化学デバイスの構成]
図1は、本実施形態に係る電気化学デバイス100の構成を示す斜視図である。同図に示すように電気化学デバイス100は、蓄電素子110が容器120(蓋及び端子は図示略)に収容されて構成されている。容器120内には、蓄電素子110と共に電解液が収容されている。
【0030】
図2は蓄電素子110の斜視図であり、
図3は蓄電素子110の拡大断面図である。
図2及び
図3に示すように、蓄電素子110は、負極130、正極140及びセパレータ150を有し、これらが積層された積層体が捲回芯Cの回りに捲回されて構成されている。なお、以下の図においてX、Y及びZ方向は相互に直交する3方向である。なお、捲回芯Cは必ずしも設けられなくてもよい
【0031】
蓄電素子110を構成する負極130、正極140、セパレータ150の積層順は、
図2に示すように、捲回芯C側に向かって(捲回外側から)セパレータ150、負極130、セパレータ150、正極140の順となる。また、蓄電素子110は、
図2に示すように負極端子131と正極端子141を有する。負極端子131は負極、正極端子141は正極に接続され、
図2に示すように、それぞれ蓄電素子110の外部に引き出されている。
【0032】
負極130は、
図3に示すように、負極集電体132及び負極活物質層133を有する。負極集電体132は、導電性材料からなり、銅箔等の金属箔であるものとすることができる。負極集電体132は表面が化学的あるいは機械的に粗面化された金属箔や、貫通孔が形成された金属箔であってもよく、本実施形態では典型的には貫通孔が形成された金属箔が採用される。
【0033】
負極活物質層133は、負極集電体132上に形成されている。負極活物質層133の材料は、負極活物質がバインダ樹脂と混合されたものとすることができ、さらに導電助材を含んでもよい。負極活物質は、電解液中のリチウムイオンが吸着可能な材料であり、例えば難黒鉛化炭素(ハードカーボン)、グラファイトやソフトカーボン等の炭素系材料を用いることができる。
【0034】
バインダ樹脂は、負極活物質を接合する合成樹脂であり、例えばスチレンブタジエンゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、芳香族ポリアミド、カルボキシメチルセルロース、フッ素系ゴム、ポリビニリデンフルオライド、イソプレンゴム、ブタジエンゴム及びエチレンプロピレン系ゴム等を用いてもよい。
【0035】
導電助剤は、導電性材料からなる粒子であり、負極活物質の間での導電性を向上させる。導電助剤は、例えば、黒鉛やカーボンブラック等の炭素材料が挙げられる。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。なお、導電助剤は、導電性を有する材料であれば、金属材料あるいは導電性高分子などであってもよい。
【0036】
図4は捲回前の負極130を示す模式図であり、
図4(a)は側面図、
図4(b)はZ方向から見た図である。本実施形態に係る負極130は、
図4(a)に示すように、負極集電体132の第1主面132a及び第2主面132bの両面に負極活物質層133が形成されている。
【0037】
ここで、負極130は、
図4(a)に示すように、第2主面132bに負極活物質層133が形成されていない第1及び第2未塗工領域130a,130bと、剥離領域130cが設けられている。
【0038】
第1未塗工領域130a内の負極集電体132には、
図4(b)に示すように、リチウムイオンの供給源となる金属リチウムMが接合される。金属リチウムMの形状は特に限定されないが、蓄電素子110の厚みを低減するため、箔状が好適である。金属リチウムMは、後述するリチウムイオンのプレドープにおいて負極活物質層133にドープ可能な程度の量とすることができる。
【0039】
第1未塗工領域130aと第2未塗工領域130bのX方向の長さは特に限定されないが、第2未塗工領域130bのX方向の長さは、好適には捲回芯Cの直径に対して1/2π倍程度の長さである。
【0040】
剥離領域130c内の負極集電体132には、
図4(a)に示すように、負極端子131が接続され、負極130の外部に引き出されている。また、本実施形態に係る剥離領域130cは、剥離領域130c内の負極集電体132が露出しないように、
図4(a)に示すように、テープTにより封止されている。テープTの種類は特に限定されず、好適には耐熱性かつ電解液の溶剤に対して耐溶剤性を有するものが採用される。負極端子131は、例えば、銅端子である。
【0041】
正極140は、
図3に示すように、正極集電体142及び正極活物質層143を有する。正極集電体142は、導電性材料からなり、アルミニウム箔等の金属箔であるものとすることができる。正極集電体142は表面が化学的あるいは機械的に粗面化された金属箔や、貫通孔が形成された金属箔であってもよい。
【0042】
正極活物質層143は、正極集電体142上に形成されている。正極活物質層143の材料は、正極活物質がバインダ樹脂と混合されたものとすることができ、さらに導電助材を含んでもよい。正極活物質は、電解液中のリチウムイオン及びアニオンが吸着可能な材料であり、例えば活性炭やポリアセン炭化物等を利用することができる。
【0043】
バインダ樹脂は、正極活物質を接合する合成樹脂であり、例えばスチレンブタジエンゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、芳香族ポリアミド、カルボキシメチルセルロース、フッ素系ゴム、ポリビニリデンフルオライド、イソプレンゴム、ブタジエンゴム及びエチレンプロピレン系ゴム等を用いてもよい。
【0044】
導電助剤は、導電性材料からなる粒子であり、正極活物質の間での導電性を向上させる。導電助剤は、例えば、黒鉛やカーボンブラック等の炭素材料が挙げられる。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。なお、導電助剤は、導電性を有する材料であれば、金属材料あるいは導電性高分子などであってもよい。
【0045】
図5は捲回前の正極140を示す模式図であり、
図5(a)は側面図、
図5(b)は平面図である。本実施形態に係る正極140は、
図5(a)に示すように、正極集電体142の第3主面142aと第4主面142bの両面に正極活物質層143が形成され、第3主面142aに正極活物質層143が形成されていない剥離領域140aが設けられている。
【0046】
ここで、剥離領域140a内の正極集電体142には、
図5に示すように、正極端子141が接続され、正極140の外部に引き出されている。なお、正極140において、正極端子141が配置される剥離領域140aは第4主面142bに形成されてもよい。また、剥離領域140aは、テープ等で封止されていてもよい。正極端子141は、例えば、アルミ端子である。
【0047】
セパレータ150は負極130と正極140を絶縁し、
図3に示すように、第1セパレータ151及び第2セパレータ152を有する。
【0048】
第1セパレータ151と第2セパレータ152は、負極130と正極140を隔て、後述する電解液中に含まれるイオンを透過する。具体的には、第1セパレータ151及び第2セパレータ152は、織布、不織布、合成樹脂微多孔膜等であるものとすることができる。また、第1セパレータ151及び第2セパレータ152は連続した一枚のセパレータであってもよい。
【0049】
図6は蓄電素子110の断面図である(負極端子131及び正極端子141は図示略)。本実施形態に係る蓄電素子110は、
図6に示すように、第1セパレータ151及び第2セパレータ152を介して負極130と正極140が積層され、捲回されている。具体的には、負極集電体132の第1主面132aと正極集電体142の第3主面142aが捲回内側となり、負極集電体132の第2主面132bと正極集電体142の第4主面142bが捲回外側となるように構成されている。
【0050】
ここで、蓄電素子110は最も捲回外側(最外周)の電極が負極130となる構成であり、
図6に示すように、最も捲回外側の負極集電体132の第2主面132bに第1未塗工領域130aが設けられ、最も捲回内側の負極集電体132の端部に第2未塗工領域130bが設けられる。
【0051】
また、負極集電体132の第1主面132aは、
図6に示すように、第1セパレータ151を介して正極140(正極活物質層143)と対向している。第2主面132bは、同図に示すように、第2セパレータ152を介して正極140(正極活物質層143)と対向する第1領域132cと、最も捲回外側となり第2セパレータ152を介して正極140(正極活物質層143)と対向しない第2領域132dとを有する。
【0052】
第2主面132bは
図6に示すように第2未塗工領域130bを含み、第2領域132dは第1未塗工領域130aを含む。本実施形態に係る第1未塗工領域130aは、
図6に示すように第2領域132dの全体に設けられ、金属リチウムMが配置される。なお、第1未塗工領域130aは、必ずしも第2領域132dの全体に設けられなくてもよく、第2領域132dの一部に設けられてもよい。
【0053】
容器120は、蓄電素子110を収容する。容器120の上面及び下面は図示しない蓋によって閉塞されるものとすることができる。容器120の材質は、特に限定されず、例えばアルミニウム、チタン、ニッケル、鉄を主成分とする金属又はステンレス等からなるものとすることができる。
【0054】
電気化学デバイス100は以上のように構成されている。蓄電素子110と共に容器120に収容される電解液は、リチウムイオンとアニオンを含む液体、例えばLiBF
4やLiPF
6を電解質として溶剤(炭酸エステル等)に溶解させた液体とすることができる。
【0055】
[電気化学デバイスの効果]
次に、電気化学デバイス100の効果について説明する。本実施形態に係る電気化学デバイス100は、金属リチウムMが接合された蓄電素子110が電解液と接触すると、金属リチウムMが酸化溶解し、金属リチウムMからリチウムイオン(Li+)と電子(e−)が生じる。これにより、リチウムイオンが電解液中に拡散し、負極活物質層133に含まれる負極活物質にドーピングされ、電子が負極130に流れる。この状態でエージングされることにより、負極130(負極活物質層133)にリチウムイオンのプレドープが施される。
【0056】
ここで、これまでの一般的なリチウムイオンキャパシタでは、負極にリチウムイオンをプレドープする方法として、金属リチウムが貼付けられたリチウム用集電体が負極に接続された蓄電素子を電解液に浸漬させる方法が広く行われている。しかしながら、このような方法では、リチウム用集電体を別途用意する必要があり、リチウム用集電体を負極集電体に接続する工程も必要となることから生産性が低いという問題がある。
【0057】
また、上記のようなリチウムイオンキャパシタでは、負極にリチウムイオンをプレドープする際に、プレドープの過程で発生する微小なリチウム粉によって電圧低下等の不具合が生じ、キャパシタの信頼性が確保されないおそれもある。
【0058】
これに対し、本実施形態に係る電気化学デバイス100は、
図6に示すように、リチウムイオンの供給源となる金属リチウムMが、セパレータ150を介して正極140と対向しない最も捲回外側の第2主面132bに接合される。
【0059】
これにより、負極130にリチウムイオンがプレドープされる際に、微小なリチウム粉が発生したとしても、当該リチウム粉の正極140との接触が抑制される。従って、負極130へのプレドープの過程で発生するリチウム粉の影響による不具合が発生しにくくなり、これまでのリチウムイオンキャパシタよりも安定した信頼性を確保することが可能となる。
【0060】
また、本実施形態に係る電気化学デバイス100は、
図6に示すように、第2主面132bにおける最も捲回外側の第2領域132dの全体に金属リチウムMを貼り付けることができるので、負極130に十分な量のリチウムイオンをプレドープでき、キャパシタの高容量化を図ることもできる。特に、最も捲回外側の第2領域132dは、セパレータを介して正極140と対向しない領域であるので、この領域を第1未塗工領域130aとして利用することにより、蓄電素子110の容量を減少させることなく、金属リチウムMを配置することができる。
【0061】
さらに、負極130にリチウムイオンをプレドープするために、これまでのリチウムイオンキャパシタのように、リチウム用集電体を別途用意する必要もなく、リチウム用集電体を負極集電体132に接続する工程も不要となることから生産性を確保することもできる。
【0062】
[電気化学デバイスの製造方法]
本実施形態に係る電気化学デバイス100の製造方法について説明する。なお、以下に示す製造方法は一例であり、電気化学デバイス100は、以下に示す製造方法とは異なる製造方法によって製造することも可能である。
図7〜
図11は、電気化学デバイス100の製造プロセスを示す模式図である。
【0063】
図7(a)は、負極集電体132の元となる貫通孔が形成された金属箔232である。金属箔232は、例えば、銅箔である。金属箔232の厚みは特に限定されないが、例えば、数十μm〜数百μmとすることができる。
【0064】
次いで、金属箔232の裏面232bに負極活物質、導電助剤及びバインダ等を含む負極ペーストを塗布し、乾燥又は硬化させる。これにより、
図7(b)に示すように、金属箔232の裏面232bに負極活物質層233が形成される。
【0065】
続いて、
図7(c)に示すように、金属箔232の表面232aに、X方向に沿って、等間隔にマスキングテープMTを貼り付ける。そして、マスキングテープMTが貼り付けられた金属箔232の表面232aに、上記負極ペーストを再度塗布し、乾燥又は硬化させて、
図8(a)に示すように、金属箔232の表面232aに負極活物質層233を形成する。
【0066】
次いで、金属箔232の表面232aに形成された負極活物質層233を、マスキングテープMTを剥離することにより部分的に除去して、
図8(b)に示すように、金属箔232が露出している剥離領域230aが形成された電極層230を得る。これにより、同図に示すように、金属箔232の表面232aに所定の間隔を空けて複数の負極活物質層233が形成される。負極活物質層233は、マスキング以外の方法を利用して形成してもよい。
【0067】
次いで、
図8(c)に示すように、金属箔232の表面232aに所定の間隔を空けて形成された負極活物質層233の間で(
図8(c)に示す点線R1に沿って)、金属箔232と裏面232b上の負極活物質層233を共に裁断する。これにより、
図9(a)に示すように、金属箔232の表面232aに第1未塗工領域130aと第2未塗工領域130bが形成される。
【0068】
次いで、金属箔232の表面232aに形成された負極活物質層233を部分的に剥離して、
図9(b)に示すように、金属箔232が露出している剥離領域230bを形成する。そして、同図に示すように、剥離領域230b内の金属箔232に負極端子231を接続し、テープTで剥離領域230bを封止して負極130を得る。
【0069】
続いて、
図10(a)に示すように、正極集電体142の元となる貫通孔が形成された金属箔242を準備する。金属箔242は、例えば、アルミウム箔である。金属箔242の厚みは特に限定されないが、例えば、数十μm〜数百μmとすることができる。
【0070】
次に、金属箔242の表面242a及び裏面242bに正極活物質、導電助剤及びバインダ等を含む正極ペーストを塗布し、乾燥又は硬化させる。これにより、
図10(b)に示すように、金属箔242上に正極活物質層243が形成された電極層240を得る。
【0071】
次いで、電極層240を裁断し、金属箔242の表面242a及び裏面242bのうちどちらか一方に形成された正極活物質層243を部分的に剥離して、
図10(c)に示すように、金属箔242が露出している剥離領域240aを形成する。そして、同図に示すように、剥離領域240a内の金属箔242に正極端子241を接続して正極140を得る。
【0072】
続いて、負極130、正極140、第1セパレータ251及び第2セパレータ252を積層させ、
図11(a)及び
図11(b)に示すように、積層体310を得る。この際、
図11(a)に示すように、負極130が捲回内側、正極140が捲回外側となり、負極130の第2未塗工領域130bが捲回芯C側となるように、積層体310を配置する。なお、
図11(b)は、
図11(a)の積層体310の平面図である。
【0073】
次に、
図11(c)に示すように、正極140が第2未塗工領域130bと第2セパレータ252を介して対向しないように、正極140をX方向に所定量ずらす。そして、同図に示すように、第2未塗工領域130b内の金属箔232と負極活物質層233を捲回芯Cに挟持させ、積層体310を第1未塗工領域130aが最も捲回外側となるように捲回芯Cに時計周りに捲き付けて、捲回する。
【0074】
これにより、金属箔232の裏面232bと金属箔242の表面242aが捲回内側、金属箔232の表面232aと金属箔242の裏面242bが捲回外側である捲回体(
図2及び
図6参照)を得る。
【0075】
続いて、上記工程により得られた捲回体の最も捲回外側に配置された第1未塗工領域130aに、金属リチウムMを接合し(
図6参照)、蓄電素子110を得る。次いで、金属リチウムMが接合された蓄電素子110を電解液が入っている容器120に収容して、封口する。これにより、金属リチウムMから負極活物質層233にリチウムイオンがドープされる。
【0076】
以上のようにして、電気化学デバイス100を製造することが可能である。なお、負極端子231は負極端子131に、正極端子241は正極端子141に対応する。また、剥離領域230bは剥離領域130cに、剥離領域240aは剥離領域140aに対応する。
【0077】
さらに、金属箔232は負極集電体132に、金属箔242は正極集電体142に対応し、負極活物質層233は負極活物質層133に、正極活物質層243は正極活物質層143に対応する。
【0078】
加えて、表面232a,242aは第2主面132b,第3主面142aにそれぞれ対応し、裏面232b,242bは第1主面132a,第4主面142bにそれぞれ対応する。また、第1セパレータ251は第1セパレータ151に、第2セパレータ252は第2セパレータ152に対応する。
【0079】
[変形例]
電気化学デバイス100の構成及び製造方法は上述のものに限られない。
図12は変形例に係る電気化学デバイス100の製造プロセスを示す模式図であり、
図13は変形例に係る蓄電素子110の断面図である。
【0080】
上記実施形態では、電極層230を裁断する際に、金属箔232の表面232aに所定の間隔を空けて形成された負極活物質層233の間で、金属箔232と裏面232bの全体に形成された負極活物質層233を共に裁断するが(
図8(c)参照)、これに限られず、
図12に示すように、金属箔232の表面232aに形成された負極活物質層233と、裏面232bの全体に形成された負極活物質層233と、金属箔232を共に裁断してもよい(
図12に示す点線R2に沿って裁断してもよい)。
【0081】
電極層230をこのように裁断することにより、負極130は、
図13に示すように、第2主面132bの第1領域132cに形成された第1負極活物質層133aと、第2領域132dに形成され、第1負極活物質層133aと離間し、負極集電体132の端部に形成された第2負極活物質層133bとを含む。そして、負極130は、同図に示すように、第1負極活物質層133aと第2負極活物質層133bとの間で、第2主面132b上に第1未塗工領域130aを有する構成となる。
【0082】
これにより、
図13に示すように、第2負極活物質層133bが負極集電体132の端部に設けられている。負極集電体132の切断辺は、鋭利になる場合もあるが、この構成によれば、第2負極活物質層133bが負極集電体132の切断辺上にあるため、切断辺による第2セパレータ152の破損を防止することが可能となる。
【実施例】
【0083】
本発明の実施例及び比較例に係る電気化学デバイスを作製し、特性試験を行った。
【0084】
[電気化学デバイスの作製]
(実施例)
電気化学デバイスは、以下のように作製した。まず、難黒鉛化炭素、導電助剤、バインダ及び増粘剤を混合し、水の中で混練することで負極ペーストを作製した。そして、エッチングにより形成された直径が100μmの貫通孔を主面の面積に対して30%の割合で有し、厚みが15μmの銅箔を負極集電体として、その一方の面に負極ペーストを塗布し、180℃、1kPa以下の減圧環境下で12時間乾燥させることで、厚みが50μmの負極活物質層を銅箔の裏面に形成した(
図7(b)参照)。
【0085】
次いで、銅箔の表面に、銅箔の長手方向に沿って210mm間隔で、幅が30mmであるマスキングテープを貼り付けた。次に、マスキングテープが貼付けられた銅箔の表面に負極ペーストを塗布し、80℃雰囲気で乾燥した。乾燥後にマスキングテープを剥離することにより、銅箔の表面に負極活物質層が形成されていない剥離領域を有する電極層を形成した(
図8(b)参照)。剥離領域を有する電極を180℃、1kPa以下の減圧環境下で12時間乾燥させた。
【0086】
続いて、当該電極層を裁断し、銅箔の表面に形成されている負極活物質層を部分的に剥離して剥離部を形成した。そして、当該剥離部に銅端子を針かしめし、剥離部を銅端子ごとテープで封止することで、幅が27mm、長さが210mmの負極を作製した(
図9(b)参照)。
【0087】
次に、活性炭、導電助剤、バインダ及び増粘剤を混合し、水の中で混練することで正極ペーストを作製した。そして、エッチングにより貫通孔が形成されることにより気体透過性が付与された厚みが30μmのアルミニウム箔を正極集電体として、その表裏両面に正極ペーストを塗布し、180℃、1kPa以下の減圧環境下で12時間乾燥させることで、厚みが約100μmの正極活物質層を表裏両面に有する電極層を作製した(
図10(b)参照)。
【0088】
続いて、当該電極層を裁断し、アルミニウム箔の表裏両面に形成されている正極活物質層のどちらか一方の正極活物質層を部分的に剥離して、剥離部を形成した。そして、当該剥離部にアルミ端子を針かしめすることにより、幅が24mm、長さが170mmの正極を作製した(
図10(c)参照)。
【0089】
次いで、密度が45%、厚みが35μmのセルロース製セパレータを長さ30mmで等幅に裁断し、セパレータを作製した。なお、上記セパレータの作製する際の乾燥条件は、160℃、1kPa以下の減圧環境下で12時間とした。
【0090】
次に上記で得られた正極、負極及びセパレータを積層して積層体を得た後、この積層体を銅箔の裏面が捲回内側となり、表面が捲回外側となるように捲回した(
図11(c)参照)。これにより、銅箔の表面に形成されている一方の未塗工領域が捲回内側に配置され、他方の未塗工領域が最も捲回外側に配置された捲回体を得た(
図6参照)。
【0091】
続いて、上記で得られた捲回体の最も捲回外側に配置された未塗工領域に、厚みが0.1mm、幅が25mm、長さが25mmである金属リチウムを接合した。次いで、セパレータ同士をテープで固定し、アルミ端子及び銅端子に封口のためのゴムをはめ込み蓄電素子を得た。
【0092】
次に、電解液が収容されている開口径が12.5mmのアルミニウム製のケースに上記蓄電素子を挿入して、封口することにより本実施例の電気化学デバイスを作製した。電解液はLiPF
6を溶質とするプロピレンカーボネート溶液(1mol/L)を採用した。
【0093】
(比較例)
続いて、比較例1〜3に係る電気化学デバイスを作製した。比較例1に係る電気化学デバイスはリチウム金属が負極活物質層とセパレータとの間に挿入されていることを除いて、実施例に係る電気化学デバイスと同様に作製した。
【0094】
比較例2に係る電気化学デバイスは、負極の最も捲回外側を正極の端部よりも突出させ、正極の端部より突出した箇所の負極活物質層にリチウム金属が貼り付けられる以外は、実施例に係る電気化学デバイスと同様に作製した。ここで、リチウム金属の量は、比較例2に係る電気化学デバイスの容量が実施例1の電気化学デバイスの容量と同等になる量とした。
【0095】
比較例3に係る電気化学デバイスは、充放電に関与しない負極活物質層が除去される以外は、比較例2に係る電気化学デバイスと同様に作成した。
【0096】
[特性評価]
次に、実施例及び比較例に係る電気化学デバイスを20個ずつ準備し、60℃環境で1週間保管した各デバイスの特性を調べた。具体的には各デバイスの容量と、電圧低下の有無と、金属リチウムの残存を調べた。
図14はその結果を示す表である。なお、
図14に記載されている「取得容量」は、各デバイスのそれぞれから得られた取得容量の平均値である。
【0097】
容量測定の測定条件は、充電電圧=3.8V、充電電流=0.5A、CV(constant voltage)時間=10分(電圧が3.8Vになるまでは0.5Aを流し、3.8Vに達したら3.8Vを10分間保持する)、放電電流を0.05Aとして2.2Vカットオフの条件で各デバイスを充放電させることにより測定した。また、電圧低下の有無は、上記と同じ条件で1000回充放電サイクル試験を行うことによって、20個のうち電圧が低下しているものがあるか調べた。
【0098】
図14に示すように、実施例に係る電気化学デバイスは、20個のうち全てのデバイスにおいて金属リチウムの残存は確認されず、全量がプレドープされていた。また、電圧が低下しているデバイスもなく、高容量であることが確認された。
【0099】
これに対し、比較例1に係る電気化学デバイスは、
図14に示すように、リチウム金属が残存しているデバイスが多く確認され、容量も実施例の電気化学デバイスと比較して低いことが確認された。
【0100】
また、比較例2に係る電気化学デバイスは、
図14に示すように、リチウム金属の残存と電圧の低下が確認されず、容量も実施例の電気化学デバイスと同等であるが、実施例の電気化学デバイスよりもリチウム金属の使用量が多かった。これにより、比較例2に係る電気化学デバイスは、実施例の電気化学デバイスと同等な容量を蓄電するために多くのリチウム金属が必要となるため、製造コストが高くなるおそれがある。
【0101】
さらに、比較例3に係る電気化学デバイスは、
図14に示すように、充放電サイクル試験後に電圧が低下しているデバイスが確認された。これは、リチウム金属を負極にプレドープする過程が発生した微小のリチウム粉が影響しているものと推察される。以上のことから、上記実施形態に係る電気化学デバイスは、金属リチウムのプレドープが良好に進行し、電圧低下等の特性劣化が生じにくい構造であるといえる。
【0102】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加えることは勿論である。