(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。添付図面では、類似の構成要素には、同様の参照符号を付して表すこととする。
【0018】
なお、本明細書中において、「シート束のオフセット搬送」とは、排紙口から処理トレイ上に搬入されたシートを集積したシート束を、シート搬送方向と直交(又は交差)する方向に移動(幅寄せ移動)させることを意味し、「オフセット量」とはシート束のオフセット搬送の際のシート搬送方向と直交(又は交差)する方向の移動量を意味する。また、「シート束の整合」とは、排紙口から処理トレイ上に搬入された複数のシートを、所定の基準(例えば、シート搬送方向と直交する方向すなわち幅方向の中心位置であるセンター基準、または幅方向の片側に設定される片側基準)に従って処理トレイ上でシート束を予め定められた姿勢及び位置に配置することを意味する。例えば、「シートを整合した後、オフセットする」とは、複数のシートを前述の基準に従って予め定められた位置及び姿勢で配置した後、その状態のままシート束全体をシート搬送方向と直交(又は交差)する方向に移動させることを意味する。
【0019】
図1は、本発明によるシート束処理装置を備えた画像形成システムを示している。
図1に示されている画像形成システムは、画像形成装置Aと、後処理装置(以下、シート束処理装置と記載する。)Bとを含んで構成されており、画像形成装置Aによって画像形成されたシートを、シート束処理装置Bで部揃え集積し、集積されたシート束に針なし綴じなどの後処理を施して、下流側の第1のスタックトレイ21又は第2のスタックトレイ22に収納する。なお、本明細書中において、
図1の画像形成システムの手前側を装置正面側、奥側を装置後部側と称することとする。
【0020】
以下、画像形成装置A、シート束処理装置Bについて詳細に説明する。
【0021】
[画像形成装置]
画像形成装置Aは、
図1に示されているように、ケーシング1内に、給紙部2と画像形成部3と画像データ記憶部(図示せず)とを備えており、給紙部2からシートを画像形成部3へ送り、画像形成部3でシート上に画像を形成した後、本体排紙口12からシートを搬出する。
【0022】
給紙部2は、図示されている実施形態では、複数のカセット2a,2b,2c,2dを含んでおり、各カセット2a,2b,2c,2dには、予め選定された異なる規格サイズのシートを収納可能になっている。また、給紙部2には、手差しトレイ1xが設けられており、使用者が使用目的に応じたシートを挿入できるように構成されている。このような構成の給紙部2にセットされたシートは、サイズ、紙質(コーティング紙、普通紙など)、紙の厚さなどのシート条件に関する情報を後述するコントロールパネル13から入力できるように構成されている。
【0023】
画像形成部3は、給紙部2から送られたシートに画像を形成するように構成されていればよく、種々の画像形成機構が採用可能である。図示されている実施形態では、画像形成部3として、静電式画像形成機構が示されている。しかしながら、画像形成部3は、図示される静電式画像形成機構に限定されるものではなく、インクジェット式画像形成機構、オフセット式画像形成機構などを採用することも可能である。
【0024】
図1に示されているように、画像形成部3には、発光器(レーザヘッドなど)6と、感光ドラム7と、現像器8が設けられており、感光ドラム7の表面に発光器6で潜像(静止画像)を形成し、現像器8でトナーインクを付着するようになっている。感光ドラム7上に付着されたたインク画像(トナーインク)は、給紙部2から送られたシートに転写チャージャ9で画像転写され、画像転写されたシートは、定着ローラ10で定着された後に、排紙経路11へ送られる。
【0025】
画像データ記憶部は、図示されていないが、画像形成部3の発光器6で感光ドラム7上に形成する画像データを記憶する記憶メモリによって構成され、この画像データ記憶部に画像読取ユニット4からデータ転送されるようになっている。また、画像データ記憶部には、例えばネットワークの一部を構成するコンピュータなどからもデータ転送され得る。
【0026】
このように構成された画像形成装置Aの上部には、原稿画像を読み取る画像読取ユニット4が設けられており、画像読取ユニット4のさらに上部に、原稿給送ユニット5が搭載されている。画像読取ユニット4は、透明ガラスで形成されたプラテン4aと、読取キャリッジ4bと、光電変換素子4cとを備え、プラテン4a上に載置された原稿シートの画像を読取キャリッジ4bで走査して読み取り、光電変換素子4cにより電気信号に変換し、画像データ記憶部に記憶する。また、原稿給送ユニット5は、給紙トレイ5aを含み、給紙トレイ5a上に載置された原稿シートを一枚ずつ分離して画像読取ユニット4のプラテン4aに自動的に給送するように構成されている。
【0027】
[シート束処理装置(後処理装置)]
画像形成装置Aに連結されたシート束処理装置(後処理装置)Bは、
図2に全体構成を、
図3に内部構造を示すように、装置ハウジング20と、第1のスタックトレイ21と、第2のスタックトレイ22とを備え、画像形成装置Aの本体排紙口12から排出された画像形成済みのシートを受け取り、(1)本体排紙口12から排出されたシートを、後処理を施すことなく第1のスタックトレイ21に収納する(「プリントアウトモード」)か、(2)本体排紙口12から排出されたシートを束状に部揃えして綴じ処理を施した後、第1のスタックトレイ21に収納する(「綴じモード」)か、又は(3)本体排紙口12から排出されたシートを束状に部揃えした後、冊子状に折り畳んで第2のスタックトレイ22に収納する(「シート束折りモード」)ように構成されている。
【0028】
シート束処理装置Bの装置ハウジング20の内部には、搬入口23と排紙口24との間に略水平方向に略直線状に延びるシート搬入経路P1が設けられている。シート搬入経路P1の搬入口23は、
図1に示されているように、画像形成装置Aの本体排紙口12に連なるように配置され、本体排紙口12から排出されたシートをシート搬入経路P1を介してシート束処理装置B内に搬入できるようになっている。さらに、装置ハウジング20の内部には、シート搬入経路P1から分岐しシートを反転方向に移送する第1のスイッチバック搬送路SP1及び第2のスイッチバック搬送路SP2が設けられており、第1のスイッチバック搬送路SP1はシート搬入経路P1よりも下流側(装置後端部側)に配置され、第2のスイッチバック搬送路SP2は第1のスイッチバック搬送路SP1よりも上流側に配置されている。また、シート搬入経路P1の排紙口24の下流側には、排紙口24と段差を隔てた下方に処理トレイ29が配置されている。
【0029】
[シート搬入経路]
シート搬入経路P1には、搬入口23から受け取ったシートを排紙口24へ向けて搬送する搬入ローラ25と、搬入経路P1の出口端に設けられ搬送されてきたシートを排紙口24から排紙させる排紙ローラ26とが設けられており、これらのローラは正逆転可能な駆動モータ(図示せず)によって駆動されるようになっている。また、シート搬入経路P1の搬入口23及び排紙口24の近傍には、それぞれ、シートの先端及び/又は後端を検出する入口センサS1及び出口センサS2が設けられている。搬入ローラ25は、
図1に示されているように、シート搬入経路P1に沿って複数の箇所に設けてもよい。排紙ローラ26は、
図4に示されているように、駆動軸26xに所定間隔で複数のローラ体が配置されたローラユニットを一対互いに圧接させた構成を有しており、搬入ローラ25も同様の構成を有している。このような構成を有した搬入ローラ25及び排紙ローラ26は、シート搬入経路P1に沿って搬入口23から排紙口24へシートを移送する際に、異なる幅サイズのシートをセンター基準又はサイド基準で搬出するように「排紙基準位置Fx」(
図4参照)が設定されている。排紙基準位置Fxは上流側に位置する画像形成装置Aのシート搬送基準と一致するように設定されることが好ましい。
【0030】
シート搬入経路P1には、さらに、第2のスイッチバック搬送路SP2にシートを案内する経路切換片27が配置され、ソレノイドなどの作動手段(図示せず)によって駆動されるようになっている。また、シート搬入経路P1上には、シートにスタンプ(捺印手段)、パンチ(穿孔手段)などの後処理を施す後処理ユニット28が設けられている。図示されている実施形態では、後処理ユニット28は、装置仕様に応じて装置ハウジング20に着脱可能なようにシート搬入経路P1の搬入口23の近傍に配置されている。
【0031】
[第1のスイッチバック搬送経路]
シート搬入経路P1の下流側に設けられた第1のスイッチバック搬送路SP1は次のように構成されている。シート搬入経路P1には、その出口端に、排紙ローラ26と排紙口24が設けられ、排紙口24の下流側には、排紙口24と段差を隔てた下方に処理トレイ29が設けられている。処理トレイ29は、排紙口24から排出された複数のシートを積載支持するトレイによって構成されている。
【0032】
処理トレイ29には、
図3及び
図4に示されているように、処理トレイ29に搬入されるシートの搬入方向前側の側辺の位置を規制する規制部材30が設けられていると共に、処理トレイ29上でシートを搬送するための搬送機構として、処理トレイ29の上方に配置される正逆転ローラ31と、正逆転ローラ31の搖動と後述するシフト移動とを行うための搖動シフト機構32と、掻き込み回転体33とが設けられている。
【0033】
規制部材30は、後述する押出レバー38と同様に、断面略コの字形状のチャネル部材によって構成されており、その内側に処理トレイ29上を搬送されるシートの搬入方向先端を当接させて停止させる規制面を有している。
【0034】
正逆転ローラ31は、処理トレイ29の搬出方向前端部(第1のスタックトレイ21側の端部)付近に設けられており、
図4に示されているように、センター基準Sxを挟んで左右各一つずつ対称的に配置されている。また、正逆転ローラ31は、処理トレイ29の上方に配置されており、搖動シフト機構32によって、処理トレイ29上の最上のシートと接する作動位置と処理トレイ29上の最上のシートから離間する待機位置との間で昇降自在となっていると共に、正逆転ローラ31の回転軸線方向(図示されている実施形態では、処理トレイ29からのシート束の搬出方向と垂直な方向)にシフト移動が可能となっている。
【0035】
搖動シフト機構32は、
図7に示されているように、装置フレーム(図示せず)に回転可能に支持された搖動駆動軸32bと、搖動駆動軸32bに基端部を固定され搖動駆動軸32b周りに搖動可能となっているブラケット32aと、装置フレーム(図示せず)に回転可能に支持された回転駆動軸32cと、回転駆動軸32cに固定されている回転駆動歯車32dと、ブラケット32aに回転可能に支持されている伝動歯車32eと、搖動回転軸32bに取り付けられたラック32fと、ラック32fに係合するピニオン32gとを含み、ブラケット32aの先端部に正逆転ローラ31が回転可能に支持されている。図示されている実施形態では、搖動駆動軸32bと回転駆動軸32cは、処理トレイ29からのシート束の搬出方向に垂直な方向すなわち処理トレイ29上におけるシート束の幅方向に延びるように配置されている。
【0036】
ブラケット32aの基端部は搖動駆動軸32bと固定されており、図示されていない搖動モータを用いて搖動駆動軸32bを正逆回転させることにより、ブラケット32aが搖動駆動軸32b周りに所定角度搖動され、これに伴って、正逆転ローラ31が作動位置と搖動位置との間で昇降されるようになっている。また、回転駆動歯車32dは、回転駆動軸32cに固定されており、回転駆動軸32cに連動して回転するようになっている。回転駆動歯車32dには、伝動歯車32eが噛合しており、図示されていない正逆転モータによって回転駆動軸32cが正逆転方向に回転されると、正逆転ローラ31が回転駆動歯車32d及び伝動歯車32eを介して正逆回転されるようになっている。
【0037】
ラック32fには、搖動駆動軸32bと回転駆動軸32cとが貫通して延びており、ラック32fは、ラック32fに対する搖動回転軸32b及び回転駆動軸32cの回転を許容する一方、搖動駆動軸32bの回転軸線方向のラック32fに対する搖動駆動軸32bの移動を許容しないように、搖動駆動軸32bに取り付けられている。なお、図示されている実施形態では、ラック32fは、ラック32fに対する回転駆動軸32cの回転軸線方向の移動を許容するように構成されている。したがって、ラック32fに係合するピニオン32gを図示されないシフト駆動モータによって回転させると、回転駆動軸32cに対して搖動駆動軸32bがその回転軸線方向に移動し、これに伴って、ブラケット32aに支持される正逆転ローラ31が、搖動回転軸32bの回転軸線方向すなわち排出方向と垂直な方向にシフト移動する。なお、正逆転ローラ31が要求される距離分だけシフト移動しても回転駆動軸32cの正逆回転が正逆転ローラ31に伝達されるように、回転駆動歯車32dは、搖動駆動軸32bの回転軸線方向の移動に伴って、ブラケット32aに支持される伝動歯車32eが回転駆動軸32cに対して要求される距離分だけ回転軸線方向に移動しても回転駆動歯車32dと伝動歯車32eの噛合が維持されるに十分な幅(回転軸線方向の長さ)を有している。
【0038】
このように構成された正逆転ローラ31は、処理トレイ29上にシートを進入させる際には、処理トレイ29から離間した受け入れ位置(例えば待機位置)に移動し、シートの進行方向後端が処理トレイ29上に到達すると、作動位置に下降して処理トレイ29上の最上のシートの上面に当接した状態でシートを規制部材30へ向けて搬送する方向(
図3中の反時計回り)に回転するように制御される。また、後述するように、引き剥がし処理時には、正逆転ローラ31は、作動位置に下降してその回転軸線方向にシフト移動しながらシート束を搬出する方向(
図3中の時計回り)に回転し、処理トレイ29上のシート束に対して圧着歯の稜線方向に力を付与するように制御される。
【0039】
掻き込み回転体33は、図示されている実施形態では、二つのプーリの間に掛け渡された無端ベルトで構成され、一方のプーリが下側の排紙ローラ26の駆動軸26xと共に回転するようになっており、他方のプーリが駆動軸26xと同軸のプーリの中心軸線を中心に処理トレイ29上に垂下するように搖動自在に軸支されている。掻き込み回転体33は、処置トレイ29上に積載されているシート束の最上位置のシートの上に搬送されてくる新たなシートの上面に係合し、当該シートの先端を押圧しながら
図3中の反時計回りに回転して、シートを規制部材30に当接するまで送り込む。これにより、処理トレイ29上を規制部材30まで搬送する間に生じ得るシートのカールやスキューを解消させることができる。掻き込み回転体33は、ベルトに限定されるものではなく、パドル部材やローラなどによって構成してもよい。
【0040】
このように構成されたシート搬入経路SP1では、排紙口24から排出されたシートが、処理トレイ29上を第1のスタックトレイ21へ向かって移動し、シートの進行方向後端が排紙口24から排出されて処理トレイ29上に到達した後に、
図3中の反時計回りに回転する正逆転ローラ31により、第1のスタックトレイ21へ向かう方向(以下、「搬出方向」とも記載する。)と逆方向(以下、「搬入方向」とも記載する。)に規制部材30へ向かってスイッチバック搬送される。このとき、掻き込み回転体33は、正逆転ローラ31と協働して、シートを処理トレイ29に沿って規制部材30に当接するまで送り込む。
【0041】
[第2のスイッチバック搬送路]
シート搬入経路P1から分岐された第2のスイッチバック搬送路SP2は、
図1に示されているように、略鉛直方向に延びており、第2のスイッチバック搬送路SP2の下流側には、第2のスイッチバック搬送路SP2から送られるシートを部揃え集積する集積ガイド34が設けられている。集積ガイド34には、一対の折ローラ35と、中綴じステープラ36とが設けられており、集積ガイド34に集積されたシート束の中央部を中綴じステープラ36によって綴じ合わせ、折ローラ35によって冊子状に折り合わせて第2のスタックトレイ22に収納するようになっている。中綴じステープラ36や折ローラ35は、公知であり、適宜のタイプのものを使用することができるので、ここでは詳しい説明を省略する。
【0042】
[処理トレイ]
上述したように、排紙口24の下流側には、排紙口24と段差を隔てた下方に処理トレイ29が設けられている。本実施形態では、排紙口24から排出されたシートの進行方向前側部分を第1のスタックトレイ21で支持し、それと反対側の進行方向後側部分を処理トレイ29で支持する構造(いわゆるブリッジ支持構造)を採用し、それによって処理トレイ29の寸法を全体として搬出入方向に小型化している。
【0043】
処理トレイ29上には、上述した規制部材30に加えて、サイド整合機構37と、押出レバー38と、斜行ローラ47と、綴じ装置がさらに設けられている。規制部材30は、排紙口24から処理トレイ29上に排出されたシートの処理トレイ29への搬入方向前端側の側面に当接することにより、シートの搬出入方向の位置を規制する。サイド整合機構37は、処理トレイ29上のシート及びシートが集積されたシート束を搬出入方向に直交する方向(すなわち幅方向)に移動させ、その側辺を基準にしてシートの幅方向の位置及び姿勢を規制及び/又は整合させる。押出レバー38は、シート束の搬出入方向に移動可能になっており、処理トレイ29上のシート束の搬出方向後側の側辺に当接して処理トレイ29から搬出する方向にシート束に力を付与する。斜行ローラ47は、処理トレイ29上のシート束の最上のシートと接する作動位置と処理トレイ29上のシート束の最上のシートから離間する待機位置との間で昇降自在となるように構成されており、作動位置に下降されたときに圧着綴じ処理を施されたシート束に当接してシート束に搬出方向に対して斜め方向の力をシート束に付与する。綴じ装置は処理トレイ29上で整合されたシート束に綴じ処理を施す。なお、図示されている実施形態では、綴じ装置として、圧着綴じ処理を行う針なし綴じ装置39が設けられている。しかしながら、綴じ装置として、針なし綴じ装置39に加えて、ステープルを使って綴じ処理を行うステープル綴じ装置を設けてもよい。
【0044】
サイド整合機構37は、
図4に示されているように、処理トレイ29のセンター基準Sxを挟んで左右に配置された一対の整合部材40a,40bを含んでいる。整合部材40a,40bは、互いに内側面を対向させて、処理トレイ29の紙載面から垂直上方に延出する平板状の部材によって構成されている。各整合部材40a,40bの内側面は、それぞれ、処理トレイ29上のシートの幅方向の近接する側辺と当接して、シートの幅方向の位置を規制する規制面40xとして機能する。
【0045】
各整合部材40a,40bは、それぞれ、処理トレイ29の背面側に配置された可動支持部材41a,41bと、処理トレイ29に貫設された幅方向の直線状スリット(図示せず)を介して一体的に結合されている。整合部材40a,40bは、各可動支持部材41a,41bに形成されたラック42a,42bに噛合するピニオン43a,43bを駆動モータMa,Mbで個別に回動することによって、それぞれ、独立して互いに接近又は離反する向きに移動させ、所望の幅方向位置に停止させることができる。これにより、処理トレイ29に搬入されるシートのサイズに応じて各整合部材40a,40bの位置を個別に設定し、シート束を幅方向に移動(オフセット搬送)させる際に、その位置、移動量及びオフセット量を決定することができる。
【0046】
押出レバー38は、
図5に示されているように、断面略コの字形状のチャネル部材から構成され、その内側に処理トレイ29上のシート束の搬出方向後端に当接させるための当接面38xを有しており、コンベア装置44によって駆動されるようになっている。コンベア装置44は、駆動モータMcにより駆動される駆動プーリ45aと従動プーリ45bとの間に掛け回され、シートの搬出方向に沿って両方向に周回移動するコンベアベルト46を有し、このコンベアベルト46に押出レバー38が固定されている。押出レバー38は、上述のようなコンベア装置44によって駆動されることにより、
図5(a)に示されている処理トレイ29の搬出方向後端付近の初期位置と、
図5(b)に実線で且つ
図5(c)に想像線で示されている駆動プーリ45aと従動プーリ45bとの略中間である最大押出位置との間で、両方向に移動可能となっている。
【0047】
綴じ処理装置としての針なし綴じ装置39によって綴じ処理を施されたシート束を処理トレイ29から第1のスタックトレイ21へ搬出する場合、
図5(a)に示されているように、シート束の搬出方向後端側の側辺に押出レバー38の当接面38xを当接させた状態で、コンベア装置44を駆動して、押出レバー38を搬出方向に上述の最大押出位置まで移動させることによって、シート束が処理トレイ29上を搬出方向に
図5(b)に示される位置まで押し出される。さらに、正逆転ローラ31をシート束の上面に圧接させた状態で、正逆転ローラ31を駆動モータにより図中時計回りに回転させ、シート束を搬出方向に搬送し、
図5(c)に示されているように、処理トレイ29上から第1のスタックトレイ21へ搬出する。押出レバー38は、シート束の搬出方向後端側の側辺を当接面38xに当接させてその全体を押出レバー38の内側に保持するので、比較的高速で駆動することができる。これに対し、正逆転ローラ31は、シート束の最上面とのみ直接的に接触することから、比較的低速で回転させて、シート束を第1のスタックトレイ21へ向けて徐々に送り出すことが好ましい。正逆転ローラ31のみによる搬出が開始されると、押出レバー38は、コンベアベルト46を逆方向に移動させることによって、初期位置に復帰させる。このように、正逆転ローラ31と押出レバー38とは、綴じ処理を施されたシート束を処理トレイ29から第1のスタックトレイ21へ向けて搬出するためのシート束搬出機構として機能する。
【0048】
斜行ローラ47は、
図8に詳細に示されているように、装置フレーム(図示せず)に支持されたシャフト47b周りに搖動可能に基端部を軸支されたブラケット47aの先端部に回転可能に支持されており、ブラケット47aが搖動モータ(図示せず)の正逆転によってシャフト47b周りに所定角度搖動され、これに伴って斜行ローラ47が作動位置と待機位置との間で昇降される。さらに、ブラケット47bの基端部には、シャフト47bと同軸で回転駆動モータ(図示せず)によって回転駆動される駆動プーリ48aが設けられていると共に、ブラケット47bの先端部(斜行ローラ47側)には、斜行ローラ47に連結された従動プーリ48bが設けられており、駆動プーリ48aと従動プーリ48bとの間に掛けられた伝動ベルト49を介して、斜行ローラ47が回転駆動モータによって駆動され、作動位置においてシート束を綴じ装置から引き離す方向に回転するようになっている。これにより、斜行ローラ47は、後述する引き剥がし機構として機能する。
【0049】
針なし綴じ装置39は、互いと対向するように配置され圧接離間可能となっている一対の圧着歯部材39b、39cの間でシート束を加圧変形させて結束する。その一例を
図6を参照して説明する。針なし綴じ装置39は、ベースフレーム部材39aと、一対の圧着歯部材39b,39cと、支軸39xによりベースフレーム部材39aに搖動可能に軸支された可動フレーム部材39dとを備える。ベースフレーム部材39aにドライブカム39eが取り付けられていると共に、可動フレーム部材39dにフォロワーコロ39fが取り付けられており、ドライブカム39eにフォロワーコロ39fが係合している。ドライブカム39eが減速機構を介して駆動モータMdによって駆動されて回転し、フォロワーコロ39fがドライブカム39eのカム面に沿って従動することにより、可動フレーム部材39dが支軸39xを中心に搖動するようになっている。ベースフレーム部材39a及び可動フレーム部材39dには、それぞれ、圧着歯部材39b,39cが互いと対向するように取り付けられている。ベースフレーム部材39aと可動フレーム部材39dの間には、付勢スプリング(図示せず)が配置されており、一対の圧着歯部材39b,39cが互いから離間する方向に付勢されている。
【0050】
対向する圧着歯部材39b,39cの各加圧面には、
図6(a)に拡大図で示されているように、稜線方向に延びる複数の圧着歯が稜線方向と垂直な歯列方向に並んで形成されており、圧着歯部材39b,39cは、二つの加圧面に形成された複数の圧着歯によって形成される凹凸が互いと噛合するように配置されている。本実施形態では、
図6(b)に示されているように、綴じ部Saの波板形状がシート束の側辺に関して斜めに形成されるようにするために、複数の圧着歯の歯列方向が処理トレイ29のセンター基準Sxに関して所定の角度をなすように一対の圧着歯部材39b,39cが配置されている。このような構成により、一対の圧着歯部材39b,39cの間に挟まれて加圧されたシート束の綴じ部Saが、
図6(b)及び(c)に示されているように、断面波板形状に変形して密着し、結束される。また、付勢スプリングによって、シート束を挟圧した状態から一対の圧着歯部材39b,39cを離間させる動作が、より円滑かつ速やかに行われる。
【0051】
ベースフレーム部材39aには、一対の圧着歯部材39b,39cが圧接位置又は離間位置の何れにあるかを検出するために、図示しないポジションセンサを設けてもよい。ポジションセンサを設ければ、ポジションセンサからの一対の圧着部材39b,39cの相対位置関係を表す信号によって、綴じ処理を施した後の後述の引き剥がし処理をより円滑にかつ効率的に行うことができる。
【0052】
本実施形態では、シート束の圧着綴じ処理を行う綴じ処理位置Epが、
図4に示されているように、処理トレイ29の搬入方向奥側で、装置後部側すなわち
図4中左側の角部の外側の隣接領域に、処理トレイ29と重ならないように設定されている。針なし綴じ装置39は、綴じ処理位置Epに対応して、処理トレイ29の角部の外側の隣接領域に配置されている。したがって、処理トレイ29に搬入されたシート束は、搬入方向奥側で装置後部側に位置するコーナー部を綴じ部として、圧着綴じ処理を施される。
【0053】
[制御部]
次に、
図9を参照して、上述した画像形成システムの制御装置50の構成を説明する。画像形成システムの制御装置50は、画像形成装置Aを制御する制御部(以下「本体制御部」と記載する。)51と、シート束処理装置Bを制御する制御部(以下「後処理制御部」と記載する。)52とを備えている。
【0054】
本体制御部51は、画像形成制御部53と、給紙制御部54と、入力部としてのコントロールパネル13とを備えており、コントロールパネル13から「画像形成モード」と「後処理モード」の設定を行うことができる。画像形成モードでは、プリントアウト部数、シートサイズ、シート紙質、カラー印刷・モノクロ印刷、両面印刷・片面印刷、拡大印刷・縮小印刷、その他の画像形成条件を設定することができる。本体制御部51は、設定された画像形成条件に応じて画像形成制御部53及び給紙制御部54を制御して、所定のシートに画像形成した後、本体排紙口12からシートを順次排出させる。また、後処理モードでは、例えば、「プリントアウトモード」、「針なし綴じ仕上げモード(エコ綴じ仕上げモード)」、「シート束折り仕上げモード」などに設定することができる。本体制御部51は、後処理制御部52に後処理の仕上げモードとシート枚数、部数情報と綴じモード(1箇所綴じか2箇所以上の複数綴じか)情報、及び画像形成するシートの紙厚情報などデータを転送すると共に、画像形成の終了毎にジョブ終了信号を後処理制御部52に転送する。
【0055】
後処理制御部52は、ROM55とRAM56に接続された制御CPUによって構成されており、指定された後処理モードに応じて、ROM55に記憶された制御プログラムとRAM56に記憶された制御データとに基づいて、シート束処理装置Bを動作させる。このため、後処理制御装置52には、シート束処理装置Bに搭載された各モータの起動、停止及び正逆回転の制御を行うように、各モータの駆動回路が接続されている。各後処理モードでは、後処理制御部52は、シート束処理装備Bの制御を行って、次のような処理動作を実行させる。
【0056】
[プリントアウトモード]
プリントアウトモードでは、画像形成装置Aは、一連の文書を例えば第1ページから第nページまで順番に画像形成し、本体排紙口12から順次搬出する。シート束処理装置Bは、画像形成装置Aから搬出されたシートの先端が搬入口23に到達したことを入口センサS1によって検出すると、搬入ローラ25及び排紙ローラ26を回転駆動させて、シート搬入経路P1に沿ってシートを排紙ローラ26に導く。排紙口24付近に設けられた排紙センサS2によってシートの後端が検出されると、シート先端が作動位置の正逆転ローラ31の位置に到達する見込み時間の経過後、正逆転ローラ31が上方の待機位置(
図3に破線で示されている状態)から処理トレイ29上のシートと接する作動位置(
図3に実線で示されている状態)に下降し、正逆転モータによって正逆転ローラ31が
図3における時計回りに回転される。これにより、処理トレイ29上に進入したシートは、第1のスタックトレイ21へ向けて搬出され、第1のスタックトレイ21上に収納される。同様にして、後続するシートが第1のスタックトレイ21へ向けて順次搬出され、第1のスタックトレイ21上に堆積、収納される。
【0057】
このように、プリントアウトモードでは、画像形成装置Aによって画像形成されたシートは、シート束処理装置Bのシート搬入経路P1を経て、第1のスタックトレイ21に収納され、順に上方に積載収納されることとなる。プリントアウトモードでは、シートは、前述の第1のスイッチバック搬送路SP1及び第2のスイッチバック搬送路SP2には導かれない。
【0058】
[シート束折り仕上げモード]
シート束折り仕上げモードでは、シート束処理装置Bは画像形成装置Aから搬出されたシートを束状に部揃えした後、冊子状に仕上げる。詳細には、シート束処理装置Bは、画像形成装置Aから搬出されたシートの先端が搬入口23に到達したことを入口センサS1によって検出すると、搬入ローラ25及び排紙ローラ26を回転駆動させて、シート搬入経路P1に沿って排紙ローラ26に導く。次に、後処理制御部52は、入口センサS1によってシート後端を検出した時に発せられる信号を基準にして、シート後端が経路切換片27を通過したタイミングで、排紙ローラ26の回転を停止させると同時に経路切換片27を
図3に示されている状態から上方に旋回させ、排紙ローラ26を
図3における反時計回りに逆回転させる。これにより、シート搬入経路P1に進入したシートは、搬送方向を反転され、経路切換片27によって第2のスイッチバック搬送路SP2に導かれ、集積ガイド34に案内される。
【0059】
同様にして、後続のシートが第2のスイッチバック搬送路SP2を経て集積ガイド34上に部揃えされる。後処理制御部52は、ジョブ終了信号を受け取ると、中綴じステープラ36を動作させ、シート束の中央の2箇所にステープル綴じ処理を施した後、シート中央を折り曲げ位置に位置決めして、一対の折ローラ35によって折り処理を施し、冊子状に折り曲げられたシート束を第2のスタックトレイ22に搬出させるように制御する。
【0060】
[針なし綴じ仕上げモード]
本発明によるシート束処理装置Bでは、針なし綴じ仕上げモードにおいて、圧着綴じ処理の後で且つ処理トレイ29からシート束を搬出するシート束搬出処理の前に、針なし綴じ装置39の圧着歯部材39b,39cからのシート束の引き剥がし処理を行う点が特徴的となっている。以下、
図10から
図15を参照して、後処理制御部52が、針なし綴じ仕上げモード、特に当該モードにおける引き剥がし処理及びシート束搬出処理、において行うシート束処理装置Bの動作の制御について、詳細に説明する。
【0061】
針なし綴じ仕上げモードでは、画像形成装置Aが、プリントアウトモードの場合と同様に、一連の文書を第1ページから第nページまで順番に画像形成して、本体排紙口15から順次搬出し、シート束処理装置Bは、画像形成装置Aから搬出されたシートの先端が搬入口23に到達したことを入口センサS1によって検出すると、搬入ローラ25及び排紙ローラ26を回転駆動させて、シート搬入口経路P1に沿って排紙ローラ26に導く(ステップSt1)。また、シートの先端が搬入口23に到達したことが検出されると、処理トレイ29へのシートの搬入を妨げないようにセンター基準Sxから十分に離れたシート受け入れ位置に整合部材40a,40bを移動させると共に、正逆転ローラ31を待機位置(すなわちシート受け入れ位置)へ移動させる(ステップSt2)。
【0062】
次に、排紙口24付近に設けられた排紙センサS2によってシートの後端が排紙ローラ26を通過したことを検出すると(ステップSt3)、後処理制御装置52は、シート先端が作動位置の正逆転ローラ31の位置に到達する見込み時間の経過後、
図11A(a)に示されているように、正逆転ローラ31を上方の待機位置から処理トレイ29上のシートと接する作動位置へ下降させ(ステップSt4)、
図3中の反時計回りに正逆転ローラ31を所定量回転させて処理トレイ29上で規制部材30へ向けてシートを送り込む(ステップSt5)。このとき、掻き込み回転体33も
図3中の反時計回りに回転させられ、
図11A(b)に示されているように、シートの進行方向前端側の側辺が規制部材30に当接するまで、シートが搬送される。
【0063】
処理トレイ29へのシートの搬入がシートの規制部材30への当接によって停止すると、後処理制御部52は、正逆転ローラ31を待機位置へ上昇して停止させ(ステップSt6)、
図11A(b)に示されているように、受け入れ位置から、シートを幅方向の両側から挟み込むように、整合部材40a,40bを内側に移動させる(ステップSt7)。整合部材40a,40bは、それぞれの規制面40xをシートの幅方向の両側の側辺(すなわち幅方向に面した二つの側辺)に当接させ、両規制面40xの離隔距離がシートの幅寸法と一致する位置(整合位置)まで移動させられる。これにより、各シートは、
図11A(c)に示されているように、その幅方向の中心が処理トレイ29のセンター基準Sxに一致するように整合される。一つのシート束として綴じられる所定枚数のシートが処理トレイ29上に上述したように整合されて集積されるまで、上記のステップSt1からステップSt7が繰り返される(ステップSt8)。
【0064】
所定枚数のシートが処理トレイ29上に整合されて集積されると、後処理制御部52は、整合部材40a,40bと押出レバー38を駆動して、シートを集積させたシート束を綴じ処理位置へ移動させる(ステップSt9)。図示される実施形態では、後処理制御部52は、まず、
図11B(d)に示されているように、整合部材40a,40bを受け入れ位置に復帰させずに、シート束を幅方向の両側から挟んだまま、幅方向に綴じ処理位置Ep側へ向けて所定のオフセット量だけオフセット移動させる。このとき、整合部材40a,40bは、シート束の装置後部側の側辺がその幅方向に綴じ処理位置Epを少し越えた位置で停止させられる。
図11B(d)に示されている状態では、シート束の装置後部側の側辺は、針なし綴じ装置39の離間された圧着歯部材39b,39cの間に、圧着歯部材39b,39cから十分に隔離して配置されている。この状態で、後処理制御部52は、コンベア装置44を駆動して搬出方向(処理トレイ29から搬出する方向)に押出レバー38を移動させ、シート束を搬出方向に押し出して、所定の距離だけ搬出方向に移動させる。押出レバー38は、搬出方向に綴じ処理位置Epよりも少し手前の位置でシート束の側辺を停止させる。これにより、
図11B(e)に示されているように、綴じ処理を施そうとするシート束のコーナー部が綴じ処理位置Epに位置決めされる。
【0065】
シート束のコーナー部が綴じ処理位置Epに位置決めされると、後処理制御部52は、コマンド信号を発信して、針なし綴じ装置39を駆動させ、圧着綴じ処理を実行させる(ステップSt10)。これにより、針なし綴じ装置39は、噛合する一対の圧着歯部材39b,39cの間でシート束のコーナー部を、
図6(c)に示されている断面波形形状に加圧変形させて結束させる。圧着綴じ処理後、針なし綴じ装置39は、一対の圧着歯部材39b,39cを離間させると共に、後処理制御部52に処理エンド信号を発信する。
【0066】
圧着綴じ処理が終了すると、後処理制御部52は、押出部材としての押出レバー38及びサイド整合機構37によって構成される引き剥がし機構を駆動して、離間した圧着歯部材39b,39cの一方に密着しているシート束のコーナー部を圧着歯部材39b又は39cから引き剥がす引き剥がし処理を行った後(ステップSt11)、押出レバー38と正逆転ローラ31とによって構成されるシート束搬出機構を駆動して、処理トレイ29から第1のスタックトレイ21へ圧着綴じ処理を施されたシート束を搬出するシート束搬出処理を実行する(ステップSt12)。引き剥がし処理及びシート束搬出処理は以下で詳しく説明する。
【0067】
[引き剥がし処理及びシート束搬出処理]
圧着綴じ処理の際には、圧着歯を有した一対の圧着歯部材39b,39cをシート束に強く押し付けるため、シート束が一対の圧着歯部材39b,39cの一方に食いついて密着した状態となってしまい、この状態でシート束を強制的に搬出すると、結束が弱くなったり、搬送機構やシートの破損を生じる恐れがある。このため、本発明によるシート束処理装置Bでは、圧着綴じ処理後に引き剥がし機構を用いて引き剥がし処理を行った後に、処理トレイ29からシート束を搬出する。引き剥がし機構は、圧着歯部材39b,39cの圧着歯に食い込んだシート束の圧着歯に対する抵抗が小さくなる方向にシート束に力を付与することによって、小さい力で圧着歯からシート束を引き剥がすようにしている。本実施形態では、シート束の圧着歯に対する抵抗が最も小さくなるように、引き剥がし機構が圧着歯部材39b,39cの圧着歯の稜線方向にシート束に力を付与する。
【0068】
以下では、引き剥がし機構として、斜行ローラ47と、シフトローラとしての正逆転ローラ31と、二つの線形独立な方向(すなわち非平行な方向)の力をシート束に付与できる二つの押出部材としての押出レバー38及び整合部材40aの組み合わせとを用いる場合の引き剥がし処理及びシート束搬出処理の際の制御手順を
図12及び
図13を参照して詳細に説明する。
【0069】
後処理制御部52は、圧着綴じ処理が終了すると、
図13(a)に示されているように、駆動モータMbを駆動して、針なし綴じ装置39から遠い側(
図13中の右側)の整合部材40bを待機位置へ向かってシート束の幅方向に面する側辺から離れる方向に移動させると共に、搖動モータ(図示せず)を駆動して、斜行ローラ47及びシフトローラとしての正逆転ローラ31を上方の待機位置からシート束に当接する作動位置へ下降させる(ステップSt21)。
【0070】
次に、後処理制御部52は、斜行ローラ47及び正逆転ローラ31をシート束に当接させた状態で、図示されていない回転駆動モータを駆動させてシート束を針なし綴じ装置39から引き離す方向(
図8中の時計回り)に斜行ローラ47を回転させると共に、図示されていない正逆転モータ及びシフト駆動モータを駆動して、正逆転ローラ31をシート束の幅方向に針なし綴じ装置39から離れる向きへシフト移動させながらシート束を搬出する方向に回転させる(ステップSt22)。このとき、正逆転ローラ31のシフト移動及び回転は、正逆転ローラ31のシフト移動によりシート束に付与される力と正逆転ローラ31の回転によりシート束に付与される力の合力の作用方向に延びる力作用軸線が圧着歯部材39b,39cの圧着歯の稜線方向と略平行な方向に延びるように制御される。同時に、シート束の隣接する異なる側辺に押出レバー38及び整合部材40aが当接した状態で、コンベア装置44を駆動して搬出方向に押出レバー38を移動させると共に、駆動モータMaを駆動して整合部材40aを幅方向(搬出方向と垂直な方向)に他方の整合部材40bへ向かって移動させる。このとき、押出レバー38と整合部材40aの移動は、押出レバー38の移動によりシート束に付与される力と整合部材40aの移動によりシート束に付与される力との合力の作用方向に延びる力作用軸線が圧着歯39b,39cの圧着歯の稜線方向と略平行な方向に延びるように制御される。
【0071】
これにより、斜行ローラ47の回転によりシート束に付与される力と、正逆転ローラ31のシフト移動及び回転によりシート束に付与される力の合力と、押出レバー38と整合部材40aによりシート束に付与される力の合力とが、いずれも、圧着歯部材39b,39cの圧着歯の稜線方向、すなわち圧着歯部材39b,39cの圧着歯に食い込んだシート束の圧着歯に対する抵抗が最も小さくなる方向にシート束に作用し、
図13(b)に示されているように、針なし綴じ装置39に対して圧着歯の稜線方向にシート束を移動させる。この結果、小さい力で圧着歯部材39b,39cからのシート束の引き剥がしを行うことができる。このように、斜行ローラ47と、シフトローラとしての正逆転ローラ31と、押出レバー38と整合部材40aとの組み合わせとは、引き剥がし機構として機能する。
【0072】
引き剥がし処理が完了すると、後処理制御部52は、斜行ローラ47の回転、正逆転ローラ31のシフト移動、整合部材40aの移動を停止させ(ステップSt23)、シート束搬出処理の妨げとならないように、搖動モータ(図示せず)を駆動して、シート束に当接する作動位置から上方の待機位置へ斜行ローラ47を上昇させる(ステップSt24)。なお、正逆転ローラ31の回転及び押出レバー38の搬出方向への移動は継続させる(ステップSt25)。押出レバー38は、上記ステップSt23の後、所定距離だけシート束を搬出方向に移動させると、停止され、その後は、
図13(c)に示されているように、正逆転ローラ31のみにより、処理トレイ29から第1のスタックトレイ21へ向けてシート束を搬出し、押出レバー38は、搬出方向への移動時と逆方向に駆動モータMcを回転させることにより、
図11Aに示されている初期位置に復帰させられる(ステップSt26)。このとき、シート束の最上のシートが下側のシートに対して滑らないように、正逆転ローラ31を比較的低速で回転させ、第1のスタックトレイ21へ向けてシート束を徐々に送り出すことが好ましい。なお、正逆転ローラ31のみでもシート束の搬出処理を行うことが可能であり、ステップSt23において、斜行ローラ47、正逆転ローラ31のシフト移動、整合部材40aの移動を停止させる際に、押出レバー38の搬出方向の移動を停止させてもよい。
【0073】
このように、シート束は正逆転ローラ31及び押出レバー38により搬出方向に移動される。すなわち、ここでは、正逆転ローラ31及び押出レバー38はシート束搬出機構として機能している。
【0074】
シート束が処理トレイ29上から搬出方向に搬出され、シート束の搬出方向後端(
図13(c)における上側の端部)が正逆転ローラ31を通過すると(ステップSt27)、後処理制御部52は正逆転ローラ31の回転を停止させ、シート束搬出処理を完了させる(ステップSt28)。
【0075】
図12及び
図13では、引き剥がし機構として、斜行ローラ47と、シフトローラとしての正逆転ローラ31と、二つの線形独立な方向(すなわち非平行な方向)の力をシート束に付与できる二つの押出部材としての押出レバー38及び整合部材40aとが用いられる場合の制御手順を例示している。しかしながら、引き剥がし機構として、斜行ローラ47、正逆転ローラ31、押出レバー38と整合部材40aの組み合わせのうちの一つ又は二つの組み合わせを用いることも可能である。例えば、正逆転ローラ31を引き剥がし機構として用いず、斜行ローラ47と、押出レバー38及び整合部材40aの組み合わせとによって引き剥がし処理を行うこともでき、斜行ローラ47を設けず、シフトローラとしての正逆転ローラ31と、押出レバー38及び整合部材40aの組み合わせとによって引き剥がし処理を行うこともできる。
【0076】
正逆転ローラ31を引き剥がし機構として用いず、斜行ローラ4と、押出レバー38及び整合部材40aの組み合わせとによって引き剥がし処理を行う場合は、後処理制御部52は以下のような制御を行う(
図14参照)。
【0077】
後処理制御部52は、圧着綴じ処理が終了すると、駆動モータMbを駆動して、整合部材40bを待機位置へ向かってシート束の幅方向に面する側辺から離れる方向に移動させると共に、搖動モータ(図示せず)を駆動して、斜行ローラ47を上方の待機位置からシート束に当接する作動位置へ下降させる(ステップSt31)。このとき、ステップSt21と異なり、正逆転ローラ31は作動位置に下降させない。次に、後処理制御部52は、斜行ローラ47をシート束に当接させた状態で、図示されていない回転駆動モータを駆動して、シート束を針なし綴じ装置39から引き離す方向に斜行ローラ47を回転させる(ステップSt32)。同時に、シート束の隣接する異なる側辺に押出レバー38及び整合部材40aが当接した状態で、コンベア装置44を駆動して搬出方向に押出レバー38を移動させると共に、駆動モータMaを駆動して整合部材40aを幅方向(搬出方向と垂直な方向)に他方の整合部材40bへ向かって移動させる。このとき、押出レバー38と整合部材40aの移動は、押出レバー38の移動によりシート束に付与される力と整合部材40aの移動によりシート束に付与される力との合力の作用方向に延びる力作用軸線が圧着歯39b,39cの圧着歯の稜線方向と略平行な方向に延びるように制御される。
【0078】
この場合も、
図12及び
図13に示されている場合と同様に、斜行ローラ47の回転によりシート束に付与される力と、押出レバー38と整合部材40aによりシート束に付与される力の合力とが、いずれも、圧着歯部材39b,39cの圧着歯の稜線方向にシート束に作用して、針なし綴じ装置39に対して圧着歯の稜線方向にシート束を移動させ、小さい力で圧着歯部材39b,39cからのシート束の引き剥がしを行うことができる。
【0079】
引き剥がし処理が完了すると、後処理制御部52は、斜行ローラ47の回転と整合部材40aの移動を停止させて(ステップSt33)、シート束搬出処理の妨げとならないように、搖動モータを駆動して、作動位置から待機位置へ斜行ローラ47を上昇させる(ステップSt34)。なお、押出レバー38の搬出方向への移動は継続され(ステップSt35)、所定距離だけシート束を搬出方向に移動させると、押出レバー38は、停止され、搬出方向への移動時と逆方向に駆動モータMcを回転させることにより、初期位置に復帰させられる(ステップSt36)。次に、後処理制御部52は、図示されていない搖動モータを駆動して、正逆転ローラ31を待機位置から作動位置へ下降させ(ステップSt37)、正逆転ローラ31をシート束に当接させた状態で、図示されていない回転駆動モータを駆動させて、処理トレイ29から第1のスタックトレイ21へ向けてシート束を搬出し(ステップSt38)、シート束の搬出方向後端が正逆転ローラ31を通過すると(ステップSt39)、正逆転ローラ31の回転を停止させ、シート束搬出処理を完了させる(ステップSt40)。
【0080】
上記の場合において、引き剥がし機構として、押出レバー38及び整合部材40aを用いずに、斜行ローラ47のみを用いて、同様に引き剥がし処理を行うことができることは言うまでもない。
【0081】
また、斜行ローラ47を設けない又は引き剥がし機構として用いず、正逆転ローラ31と押出レバー38及び整合部材40aの組み合わせとによって引き剥がし処理を行う場合は、後処理制御部52は以下のような制御を行う(
図15参照)。
【0082】
後処理制御部52は、圧着綴じ処理が終了すると、駆動モータMbを駆動して、整合部材40bを待機位置へ向かってシート束の幅方向に面する側辺から離れる方向に移動させると共に、搖動モータ(図示せず)を駆動して、シフトローラとしての正逆転ローラ31を上方の待機位置からシート束に当接する作動位置へ下降させる(ステップSt41)。次に、後処理制御部52は、正逆転ローラ31をシート束に当接させた状態で、図示されていない正逆転モータ及びシフト駆動モータを駆動して、搖動回転軸32bの回転軸線に沿って(すなわち正逆転ローラ31の回転軸線方向に)正逆転ローラ31をシート束の幅方向に針なし綴じ装置39から離れる向きへシフト移動させながら、シート束を搬出する方向に回転させる(ステップSt42)。このとき、正逆転ローラ31のシフト移動及び回転は、正逆転ローラ31のシフト移動によりシート束に付与される力と正逆転ローラ31の回転によりシート束に付与される力の合力の作用方向に延びる力作用軸線が圧着歯部材39b,39cの圧着歯の稜線方向と略平行な方向に延びるように制御される。同時に、シート束の隣接する異なる側辺に押出レバー38及び整合部材40aが当接した状態で、コンベア装置44を駆動して搬出方向に押出レバー38を移動させると共に、駆動モータMaを駆動して整合部材40aを幅方向(搬出方向と垂直な方向)に他方の整合部材40bへ向かって移動させる。このとき、押出レバー38と整合部材40aの移動は、押出レバー38の移動によりシート束に付与される力と整合部材40aの移動によりシート束に付与される力との合力の作用方向に延びる力作用軸線が圧着歯39b,39cの圧着歯の稜線方向と略平行な方向に延びるように制御される。
【0083】
この場合も、
図12及び
図13に示されている場合と同様に、正逆転ローラ31のシフト移動及び回転によりシート束に付与される力の合力と、押出レバー38と整合部材40aによりシート束に付与される力の合力とが、いずれも、圧着歯部材39b,39cの圧着歯の稜線方向にシート束に作用して、針なし綴じ装置39に対して圧着歯の稜線方向にシート束を移動させ、小さい力で圧着歯部材39b,39cからのシート束の引き剥がしを行うことができる。
【0084】
引き剥がし処理が完了すると、後処理制御部52は、正逆転ローラ31のシフト移動と整合部材40aの移動を停止させる一方(ステップSt43)、正逆転ローラ31の回転及び押出レバー38の搬出方向への移動は継続させ、所定距離だけシート束を搬出方向にさらに移動させた後に、押出レバー38を停止させ(ステップSt44)、正逆転ローラ31のみにより、処理トレイ29から第1のスタックトレイ21へ向けてシート束を搬出する。なお、押出レバー38は、停止後に、搬出方向への移動時と逆方向に駆動モータMcを回転させることにより、
図11A(a)に示されている初期位置に復帰させられる。また、正逆転ローラ31のみでもシート束の搬出処理を行うことが可能であり、ステップSt43において、正逆転ローラ31のシフト移動、整合部材40aの移動を停止させる際に、押出レバー38の搬出方向の移動を停止させてもよい。次に、後処理制御部52は、シート束の搬出方向後端が正逆転ローラ31を通過すると(ステップSt45)、正逆転ローラ31の回転を停止させ、シート束搬出処理を完了させる(ステップSt46)。
【0085】
上記の場合において、引き剥がし機構として、押出レバー38及び整合部材40aを用いずに、正逆転ローラ31のみを用いて、同様に引き剥がし処理を行うことができることは言うまでもない。
【0086】
以上、図示される実施形態を参照して、本発明によるシート束処理装置及びこれを備えた画像形成システムについて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、シート束の綴じ位置及び針なし綴じ装置39の位置は、処理トレイ29に関して異なる位置に設定することができ、その場合にも、針なし綴じ装置39の圧着歯部材39b,39cの圧着歯に対するシート束の抵抗が小さくなる方向にシート束を移動することによって、上記実施形態と同様に、圧着歯部材39b,39cからのシート束の引き剥がし処理を小さい力で容易に行うことができる。また、図示されている実施形態では、引き剥がし機構の押出部材として、押出レバー38及び整合部材40aが用いられているが、押出部材は、シート束に二つの線形独立な力(すなわち非平行な方向の力)を付与できるものであれば、押出レバー38や整合部材40aに限定されるものではなく、例えば、押出レバー38や整合部材40aと同じ方向に移動することができる別の部材を設けてもよい。