(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6684098
(24)【登録日】2020年3月31日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】透明弾性体キャップ、透明弾性体キャップ付き印鑑の使用方法およびキャップ状カバー
(51)【国際特許分類】
G06T 1/00 20060101AFI20200413BHJP
B41K 1/02 20060101ALI20200413BHJP
B41K 1/36 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
G06T1/00 400F
B41K1/02 Z
B41K1/02 J
B41K1/36 F
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-14646(P2016-14646)
(22)【出願日】2016年1月28日
(65)【公開番号】特開2017-134672(P2017-134672A)
(43)【公開日】2017年8月3日
【審査請求日】2018年11月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】506344343
【氏名又は名称】ウィッツェル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104547
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100097995
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 悦一
(72)【発明者】
【氏名】奥田 稔
(72)【発明者】
【氏名】茶位 利昭
(72)【発明者】
【氏名】山下 宏之
【審査官】
新井 則和
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭48−008306(JP,U)
【文献】
特開2013−242833(JP,A)
【文献】
特開昭62−140187(JP,A)
【文献】
特開2002−019372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/00
B41K 1/02
B41K 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印鑑に、その印面を覆うようにして着脱可能に取り付けられるキャップ状の透明弾性体キャップであって、
裏面が前記印面に密着し、表面が光学部品の表面に密着可能なシート状の透明弾性体シート部と、
この透明弾性体シート部の外周部に設けられて前記印鑑の外周面に着脱可能に取り付けられる筒状の取付部と、を備え、
前記透明弾性体シート部の表面を、印面電子化装置の光学部品の表面に密着させ電子化された印影を得ることを特徴とする透明弾性体キャップ。
【請求項2】
印鑑に請求項1に記載の透明弾性体キャップを取り付けてなる透明弾性体キャップ付き印鑑を把持して、前記透明弾性体キャップの透明弾性体シート部の表面を、印面電子化装置の光学部品の表面に密着させ電子化された印影を得ることを特徴とする透明弾性体キャップ付き印鑑の使用方法。
【請求項3】
請求項1に記載の透明弾性体キャップに、当該透明弾性体キャップを覆うようにして着脱可能に取り付けられることを特徴とするキャップ状カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印鑑の印面を光学的に読み取る際に必要となる透明弾性体キャップ、透明弾性体キャップ付き印鑑の使用方法およびキャップ状カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
印鑑を電子画像情報として記録する際、捺印した印影をスキャナー等で記録するのではなく、エラストマー等の透明弾性体シートを用いて直接印影を電子情報として記録する技術が知られている。
この技術の一例として特許文献1に記載の印面電子化装置が知られている。この印面電子化装置は、直角プリズムの長辺面に光源もしくは光拡散版を装着し、斜辺面に密着可能な透明弾性体シートを装着し、短辺面に相対する位置に電子式カメラを装着し、電子式カメラの出力を映像信号処理装置に接続した構成となっている。
【0003】
このような印面電子化装置では、透明弾性体シートの表面に印鑑の印面を密着させるが、印鑑の印面に接触していない透明弾性体シートの表面に到達した光は全反射するため、この部分を電子式カメラでは白色と認識し、印面に接触(密着)している透明弾性体シートの表面に到達した光線は印面で乱反射するため、この部分を電子式カメラでは印面と同じ色と認識する。
したがって、印面の凹凸が同色の印鑑であっても、電子式カメラでは印面の凸の部分は印面の色で、印面の凹の部分は白色と見えるため、容易に凹凸の差が認識できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−242833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、透明弾性体シートに傷や汚れが生じた場合や、透明弾性体シートが経年劣化を起こした場合、電子化された印影の品質が低下してしまう。
このような場合、透明弾性体シートを取り換える場合があるが、交換すべき透明弾性体シートはプリズムの表面に均一に密着しているため、当該透明弾性体シートをプリズムの表面から取り外し難い(剥し難い)という問題がある。
【0006】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、プリズム等の光学部品の表面に透明弾性体シートを密着させておかなくても、電子化された印影をその品質を低下させることなく得ることができる透明弾性体キャップ、透明弾性体キャップ付き印鑑の使用方法およびキャップ状カバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の透明弾性体キャップは、印鑑に、その印面を覆うようにして着脱可能に取り付けられるものであって、
裏面が前記印面に密着し、表面が光学部品の表面に密着可能なシート状の透明弾性体シート部と、
この透明弾性体シート部の外周部に設けられて前記印鑑の外周面に着脱可能に取り付けられる筒状の取付部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
ここで、光学部品としては、例えばプリズムや導光体等が挙げられるがこれに限ることはない。
【0009】
本発明においては、印鑑に取付部によって透明弾性体キャップを取り付けておき、その透明弾性体シート部の表面を、印面電子化装置のプリズム等の光学部品の表面に密着させることによって、プリズムの表面に透明弾性体シートを密着させておかなくても、電子化された印影をその品質を低下させることなく得ることができる。
また、透明弾性体キャップの透明弾性体シート部に傷や汚れが生じた場合や、透明弾性体シート部が経年劣化を起こした場合、当該透明弾性体キャップを印鑑から取り外して、新たな透明弾性体キャップに容易に交換することができる。
【0010】
また、本発明の透明弾性体キャップ付き印鑑の使用方法は、印鑑に透明弾性体キャップを取り付けてなる透明弾性体キャップ付き印鑑を把持して、透明弾性体シート部の表面を、印面電子化装置の光学部品の表面に密着させることを特徴とする。
【0011】
本発明においては、透明弾性体キャップ付き印鑑を把持して、透明弾性体シート部の表面を、印面電子化装置のプリズム等の光学部品の表面に密着させるので、プリズムの表面に透明弾性体シートを密着させておかなくても、電子化された印影をその品質を低下させることなく得ることができる。
【0012】
また、本発明のキャップ状カバーは、前記透明弾性体キャップに、当該透明弾性体キャップを覆うようにして着脱可能に取り付けられることを特徴とする。
【0013】
本発明においては、透明弾性体キャップにキャップ状カバーを取り付けることによって、透明弾性体キャップへのごみや埃などの付着を防ぎ、再度印面を取得する際にも良好な状態で印面の画像を取得することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、プリズム等の光学部品の表面に透明弾性体シートを密着させておかなくても、電子化された印影をその品質を低下させることなく得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施の形態に係る透明弾性体キャップを印鑑に装着した状態を示す要部の断面図である。
【
図2】透明弾性体キャップ付き印鑑と印面電子化装置の概略構成を示す断面図である。
【
図3】本実施の形態に係るキャップ状カバーを透明弾性体キャップに取り付けた状態を示す要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施の形態に係る透明弾性体キャップを印鑑に装着した状態を示す要部の断面図である。
印鑑1は円柱状に形成されており、その先端面(
図1では下端面)に印面2が形成されている。印面2には複数の凹部2aが形成されており、これら凹部2a以外の複数の凸部2bの先端面が印影の形状を構成するようになっている。
なお、印鑑1は円柱状に限らず、四角柱状やその他の多角形柱状、楕円柱状であってもよい。
【0017】
印鑑1の先端部には、キャップ状の透明弾性体キャップ3が着脱可能に取り付けられている。この透明弾性体キャップ3は、伸縮性を有するエラストマーによって形成されているが、これに限ることはない。例えば、透明弾性体キャップ3は、ウレタン系、スチレン系、シリコーン系等の高分子で構成され、全光線透過率90%以上の無色透明、かつ、デュロメーターA硬度0〜70またはアスカーC硬度0〜80の範囲のものを使うことが好ましい。
【0018】
また、透明弾性体キャップ3は、透明弾性体シート部3aと、この透明弾性体シート部3aの外周部に当該透明弾性体シート部3aと一体的に設けられた取付部3bとを備えている。
透明弾性体シート部3aは円板状に形成された透明なシートであり、その厚さは0.1mm〜10mmとなっている。そして、この透明弾性体シート部3aの裏面(
図1において上面)に、印鑑1の印面2が着脱可能に密着するようになっている。
なお、印鑑1が四角柱状やその他の多角形柱状、楕円柱状であった場合、透明弾性体シート部3aは、それらの形状に合わせて、四角形板状、多角形板状、楕円板状とすればよい。
【0019】
取付部3bは円筒状に形成され、その内周面が印鑑1の外周面に着脱可能に密着するようになっている。つまり、取付部3bの内径は印鑑1の外径より若干小さくなっており、印鑑1の先端部を取付部3bの内側に押し込むことによって、取付部3bを径方向に弾性的に拡げ、その弾性復帰力によって取付部3bの内周面が印鑑1の外周面に密着するようになっている。
【0020】
なお、本実施の形態では、透明弾性体シート部3aと取付部3bとを一体的に形成したが別体に形成してもよい。この場合、取付部3bを透明弾性体シート部3aより機械的強度の高い樹脂等で形成し、この取付部3bの内周面に雌ねじを形成するとともに、印鑑1の先端部の雄ねじを形成し、これらをねじ結合してもよいし、嵌合等によって結合してもよい。
また、透明弾性体シート部3aと取付部3bとを別体に形成する場合、これらを機械的、または化学的に結合してもよい。
【0021】
このような透明弾性体キャップ3は、その透明弾性体シート部3aの裏面が印鑑1の印面2に密着するようにして、取付部3bが印鑑1に取り付けられて使用される。
この使用方法について
図2を参照して説明する。
図2は印面電子化装置10の概略構成を示す図である。
【0022】
印面電子化装置10は、直角プリズム11と、この直角プリズム11の長辺面に設けられた光源もしくは光拡散板12と、直角プリズム11の短辺面に対向して配置された電子式カメラ14と、これらを支える部品保持具15と、電子式カメラ14に接続されたカメラケーブル16と、このカメラケーブル16に接続された映像信号処理装置17と、映像信号処理装置17に接続された印面電子化装置通信端子18とを備えている。
なお、光源もしくは光拡散板12の色は白色とし、透明弾性体シート部3aの屈折率は直角プリズム11の屈折率とほぼ等しいものとする。
【0023】
そして、透明弾性体キャップ3を取り付けてなる透明弾性体キャップ付き印鑑1を把持して、透明弾性体シート部3aの表面を、印面電子化装置10の直角プリズム11の表面(斜辺面)11aに密着させる。
すると、光源もしくは光拡散板12から出射された光線は直角プリズム11内を進行し、透明弾性体シート部3aに達するが、直角プリズム11と透明弾性体シート部3aの屈折率がほぼ等しいため、透明弾性体シート部3a内を直進する。
光源もしくは光拡散板12から出射された光線が、印面2に接触していない、つまり凹部2aに対向する透明弾性体シート部3aの表面に到達し、この表面の法線と光線の成す角が全反射角以上であった場合、光線は100%反射されてプリズム11を通過し、電子式カメラ14に到達する。
【0024】
これに対し、光源もしくは光拡散板12から出射された光線が、印面2に接触している、つまり凸部2bに接触している透明弾性体シート部3aの表面に到達した場合、印面2と透明弾性体シート部3aとの間に空間が無いため光線は透明弾性体シート部3aの表面で反射することなく通過し、印面2に到達する。
印面2に到達した光線は印面2で乱反射した光線となり、その一部が直角プリズム11内を通過し、電子式カメラ14に到達する。
このように、印面2に接触していない透明弾性体シート部3aの表面に到達した光は全反射するため、この部分を電子式カメラ14では白色と認識し、印面2に接触している透明弾性体シート部3aの表面に到達した光線は印面2で乱反射するため、この部分を電子式カメラ14では印面と同じ色と認識する。
したがって、印面2の凹凸(凹部2aと凸部2b)が同色の印鑑1であっても、電子式カメラ14では印面の凸部2bは印面2の色で、印面2の凹部2aは白色と見えるため、容易に凹凸の差が認識できる。
【0025】
そして、電子式カメラ14からの出力信号は、カメラケーブル16を通して映像信号処理装置カメラ接続端子17aに入力され、映像信号処理装置17で信号処理をなされたあと、映像信号処理装置出力端子17bに出力され、印面電子化装置通信端子18に伝達される。
【0026】
このように、本実施の形態では、印鑑1に透明弾性体キャップ3を取り付けておき、その透明弾性体シート部3aの表面を、印面電子化装置10の直角プリズム11の表面11aに密着させることによって、直角プリズム11の表面11aに透明弾性体シートを密着させておかなくても、つまり、透明弾性体シートを予め直角プリズム11の表面11aに貼り付けておかなくても、電子化された印影をその品質を低下させることなく得ることができる。
また、透明弾性体キャップ3の透明弾性体シート部3aに傷や汚れが生じたした場合や、透明弾性体シート部3aが経年劣化を起こした場合、当該透明弾性体キャップ3を印鑑1から取り外して、新たな透明弾性体キャップ3に容易に交換することができる。
【0027】
また、
図3に示すように、印鑑1に取り付けられている透明弾性体キャップ3に、当該透明弾性体キャップ3を覆うようにして、キャップ状カバー5を着脱可能に取り付けることが好ましい。キャップ状カバー5は、筒状部5aとこの筒状部5aの端部に当該筒状部5aと一体的に設けられた底部5bとから構成されている。そして、筒状部5aによって、透明弾性体キャップ3の取付部3bが覆われ、底部5bによって透明弾性体キャップ3の透明弾性体シート部3aが覆われている。
このように、透明弾性体キャップ3に防汚用のキャップ状カバー5を取り付けることで、ごみや埃などの付着を防ぎ、再度印面を取得する際にも良好な状態で印面の画像を取得することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 印鑑
2 印面
3 透明弾性体キャップ
3a 透明弾性体シート部
3b 取付部
5 キャップ状カバー
10 印面電子化装置
11 直角プリズム(光学部品)
11a 表面