(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両のエンジンの廃熱により加熱される作動媒体が循環する流路及び前記流路に設けられ前記作動媒体を膨張させて機械エネルギを生成する膨張器を含むランキンサイクルを備える車両の制御装置において、
前記ランキンサイクルは、前記流路の前記膨張器より上流側と下流側とを連通するバイパス流路及び前記バイパス流路を開閉可能なバイパス弁を含み、
前記車両の衝突が発生するか否かを予測する予測部と、
前記バイパス弁の駆動を制御するバイパス弁制御部と、
を備え、
前記バイパス弁制御部は、前記衝突が発生すると予測された場合に、前記バイパス弁を開放した後、前記膨張器へ供給される前記作動媒体の蒸気圧が目標圧力に近づくように前記バイパス弁の開度を制御する、
車両の制御装置。
前記ポンプ制御部は、前記衝突が発生すると予測された後において、前記衝突が回避されたと予測された場合に、前記ランキンサイクルポンプの駆動制御を、前記衝突が発生すると予測されない場合に実行される通常制御へ復帰させる、請求項2に記載の車両の制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0022】
<1.充電システムの構成>
まず、
図1を参照して、本発明の実施形態に係る車両の充電システム10の概略構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る充電システム10の概略構成の一例を示す模式図である。
図1に示したように、充電システム10は、エンジン14と、冷却水流路16と、駆動力伝達系18と、駆動輪22と、高電圧バッテリ30と、モータ・ジェネレータ40と、発電機60と、ランキンサイクル70と、ステアリング操舵角センサ202と、車速センサ204と、加速度センサ206と、ポンプ回転数センサ208と、蒸気圧センサ210と、制御装置100と、を備える。
【0023】
エンジン14は、車両の走行状態に応じて運転又は停止する。例えば、エンジン14は、車両の走行中において要求トルクに応じて運転又は停止する。エンジン14の運転により生成された駆動力は、駆動力伝達系18を介して、駆動輪22へ伝達される。エンジン14のシリンダブロックやシリンダヘッドには、冷却水が循環する冷却水流路16が、エンジン14を冷却するために、設けられている。エンジン14の廃熱は、冷却水流路16内を循環する冷却水によって回収される。冷却水流路16は、エンジン14の外部においてランキンサイクル70の熱交換器78と接続され、熱交換器78においてランキンサイクル70の作動媒体と熱交換を行う。
【0024】
高電圧バッテリ30は、高電圧(例えば、200V)の電力供給源である。具体的には、高電圧バッテリ30は、車両の駆動力を出力するモータ・ジェネレータ40へ電力を供給する他、車両内の各種装置へ電力を供給する低電圧バッテリへ電力を供給する。高電圧バッテリ30には発電機60により発電された電力及びモータ・ジェネレータ40により発電された電力が、それぞれ蓄電される。
【0025】
モータ・ジェネレータ40は、車両の駆動力を生成する駆動用モータとしての機能を有する。また、モータ・ジェネレータ40は、車両の減速時に車両の運動エネルギを用いて発電し、発電された電力を高電圧バッテリ30へ蓄電する発電機としての機能を有する。モータ・ジェネレータ40は、例えば、三相交流式のモータとインバータ装置とを備え、インバータ装置を介して高電圧バッテリ30と電気的に接続されている。なお、当該インバータ装置はコンバータ装置としての機能も有する。
【0026】
モータ・ジェネレータ40が駆動用モータとして機能する場合、高電圧バッテリ30から供給される直流電力がインバータ装置によって交流電力に変換され、モータへ供給される。それにより、モータによって駆動力が生成される。モータ・ジェネレータ40により生成された駆動力は、駆動力伝達系18を介して、駆動輪22へ伝達される。制御装置100は、インバータ装置を制御することによって、モータ・ジェネレータ40による駆動力の生成を制御する。
【0027】
モータ・ジェネレータ40が車両の減速時に発電機として機能する場合、制御装置100によりインバータ装置が制御されることによって、駆動輪22の回転エネルギを用いてモータにより発電が行われ、発電された交流電力がインバータ装置により直流電力に変換され、高電圧バッテリ30へ蓄電される。それにより、駆動輪22の回転に抵抗が与えられ、制動力が発生する。制御装置100は、インバータ装置を制御することによって、モータ・ジェネレータ40による発電を制御する。具体的には、制御装置100は、インバータ装置を介してモータ・ジェネレータ40の出力電圧を制御する。
【0028】
ランキンサイクル70は、車両のエンジン14の廃熱を用いて、機械エネルギを生成する。
図1に示したように、ランキンサイクル70は、作動媒体流路72と、ランキンサイクルポンプ74と、熱交換器78と、膨張器86と、凝縮器90と、タンク98と、バイパス流路82と、バイパス弁94と、を含む。
【0029】
作動媒体流路72は、ランキンサイクル70の作動媒体が循環する流路である。作動媒体として、例えば、水、フロン又はアルコールが適用され得る。
【0030】
ランキンサイクルポンプ74は、タンク98に貯留された作動媒体を吸い上げ、作動媒体流路72内で作動媒体を循環させるポンプである。ランキンサイクルポンプ74の駆動は、制御装置100によって制御される。ランキンサイクルポンプ74は、例えば、電動モータを備え、制御装置100からの動作指示に基づいて当該電動モータが駆動されることによって、ランキンサイクルポンプ74の回転数が制御されるように構成される。
【0031】
熱交換器78には、作動媒体流路72及び冷却水流路16が接続される。熱交換器78において、作動媒体と冷却水との間で熱交換が行われる。それにより、作動媒体は、エンジン14の廃熱を有する冷却水によって加熱され、気化する。
【0032】
膨張器86は、作動媒体流路72に設けられ、熱交換器78で気化した作動媒体を膨張させて機械エネルギを生成する。具体的には、膨張器86において、作動媒体は膨張室へ吸入され、膨張室で作動媒体が膨張し、羽根車が作動媒体の流れを受けることにより、当該羽根車と接続された回転体の回転運動のエネルギが生成される。膨張器86は発電機60と接続されており、膨張器86で生成された機械エネルギは発電機60へ伝達される。
【0033】
凝縮器90は、膨張器86を通過した気相の作動媒体を、ファンによる送風等によって、冷却して凝縮する。凝縮器90によって凝縮された作動媒体は、タンク98へ貯留される。
【0034】
バイパス流路82は、作動媒体流路72の膨張器86より上流側と下流側とを連通する流路である。バイパス流路82には、バイパス流路82を開閉可能なバイパス弁94が設けられる。バイパス弁94によりバイパス流路82が閉鎖されている状態において、作動媒体は、ランキンサイクルポンプ74、熱交換器78、膨張器86、凝縮器90及びタンク98を順に流れる。バイパス弁94の駆動は、制御装置100によって制御される。バイパス弁94として、例えば、電磁弁が適用され、制御装置100からの動作指示に基づいて、当該電磁弁が駆動されるように構成される。なお、バイパス弁94は、開度が連続的に可変な弁であってもよく、開状態及び閉状態の2つの開度のみを切り替え可能な弁であってもよい。
【0035】
ランキンサイクル70において、作動媒体流路72を循環する作動媒体は、膨張器86より上流側において、比較的高圧な状態となっている。バイパス弁94を開放することによって、膨張器86の上流側と下流側とを連通することにより、膨張器86へ供給される作動媒体の蒸気圧を低下させることができる。それにより、ランキンサイクル70の作動媒体を効果的に減圧させることができる。
【0036】
発電機60は、膨張器86により生成された機械エネルギを用いて発電し、発電された電力を高電圧バッテリ30へ蓄電する。発電機60は、例えば、三相交流式のモータとコンバータ装置とを備え、コンバータ装置を介して高電圧バッテリ30と電気的に接続されている。モータは膨張器86の回転体と接続され、回転体の回転運動のエネルギがモータへ伝達される。制御装置100によりコンバータ装置が制御されることによって、モータへ伝達される回転運動のエネルギを用いてモータにより発電が行われ、発電された交流電力がコンバータ装置により直流電力に変換され、高電圧バッテリ30へ蓄電される。制御装置100は、コンバータ装置を制御することによって、発電機60による発電を制御する。具体的には、制御装置100は、コンバータ装置を介して発電機60の出力電圧を制御する。
【0037】
ステアリング操舵角センサ202は、運転者によるステアリングホイールの操作に応じたステアリング操舵角を検出し、検出結果を出力する。
【0038】
車速センサ204は、車両の速度である車速を検出し、検出結果を出力する。
【0039】
加速度センサ206は、車両の加速度を検出し、検出結果を出力する。
【0040】
ポンプ回転数センサ208は、ランキンサイクルポンプ74の回転数を検出し、検出結果を出力する。
【0041】
蒸気圧センサ210は、ランキンサイクル70の作動媒体流路72の膨張器86より上流側に設けられ、膨張器86へ供給される作動媒体の蒸気圧(以下、単に、作動媒体の蒸気圧とも称する。)を検出し、検出結果を出力する。
【0042】
制御装置100は、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)、CPUが使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する記憶素子であるROM(Read Only Memory)、CPUの実行において使用するプログラムや、その実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶する記憶素子であるRAM(Random Access Memory)等で構成される。
【0043】
制御装置100は、充電システム10を構成する各装置の動作を制御する。具体的には、制御装置100は、制御対象である各アクチュエータに対して電気信号を用いて動作指示を行う。より具体的には、制御装置100は、ランキンサイクルポンプ74の駆動、バイパス弁94の駆動、発電機60による発電、及びモータ・ジェネレータ40による発電並びに駆動力の生成を制御する。また、制御装置100は、各センサから出力された情報を受信する。制御装置100は、CAN(Controller Area Network)通信を用いて各センサと通信を行ってもよい。なお、本実施形態に係る制御装置100が有する機能は複数の制御装置により分割されてもよく、その場合、当該複数の制御装置は、CAN等の通信バスを介して、互いに接続されてもよい。本実施形態では、制御装置100が行うバイパス弁94の駆動制御によって、事故が起きた場合であっても、安全をより確実に確保することが可能となる。なお、制御装置100の詳細については、後述する。
【0044】
<2.参考例での車両の衝突時における作動媒体の蒸気圧挙動>
続いて、本実施形態に係る制御装置100の詳細についての説明に先立って、
図2を参照して、参考例での車両の衝突時における作動媒体の蒸気圧挙動について説明する。なお、参考例に係る車両には、本実施形態に係る充電システム10と同様に、エンジンの廃熱を用いて機械エネルギを生成するランキンサイクル及び当該機械エネルギを用いて発電する発電機が搭載される。
【0045】
参考例では、ランキンサイクルの作動媒体が循環する作動媒体流路の内部と外気とを連通させる開口部及び当該開口部を開閉可能な外気開放弁が設けられ、当該外気開放弁の駆動は制御装置によって制御される。具体的には、参考例に係る制御装置は、車両の衝突が発生したことが検出された場合に、衝突後における作動媒体の圧力の上昇による作動媒体流路の破損を防止するために、外気開放弁を開放する。
【0046】
図2は、参考例に係る制御が行われた場合における、車両の衝突が発生した状況下での、各種状態量の推移の一例を示す模式図である。
図2では、時刻T11において、車両の加速度がマイナス側へ振れ、時刻T12において、衝突が発生した場合における、各種状態量の推移が示されている。
【0047】
参考例では、時刻T12において、車両の衝突が発生したことが検出されたことをトリガとして、制御装置から外気開放弁を開放するための制御指示が出力される。ここで、当該制御指示が制御装置から出力される時刻から外気開放弁が実際に開放される時刻までの間において、制御装置と外気開放弁との間での通信による遅れが生じる。例えば、
図2に示したように、時刻T12の後の時刻T13において、外気開放弁が実際に開放される。また、外気開放弁が開放される時刻から作動媒体の蒸気圧が低下し始める時刻までの間において、応答遅れが生じる。例えば、
図2に示したように、時刻T13の後の時刻T14において、作動媒体の蒸気圧が低下し始める。
【0048】
このように、車両の衝突が発生したことが検出されたことをトリガとして、外気開放弁を開放する制御が行われる場合、衝突が発生した時刻T12において、作動媒体は高圧の状態となっている。また、衝突が発生した時点から実際に作動媒体の減圧が開始されるまでの間に、通信による遅れ及び応答遅れが生ずる。ゆえに、衝突が発生した直後において、作動媒体を十分に減圧することが困難となり得る。それにより、事故により車両が受ける衝撃によって作動媒体流路が直接的に破壊された場合、被害が増大するおそれがある。
【0049】
また、参考例に係る制御装置は、車両の衝突が発生したことが検出された場合に、発電機の回転を停止させる。具体的には、時刻T12において、車両の衝突が発生したことが検出されたことをトリガとして、制御装置から発電機の回転を停止させるための制御指示が出力される。ここで、当該制御指示が制御装置から出力される時刻から発電機の回転数が実際に低下し始めるまでの間において、通信による遅れ及び応答遅れが生じる。例えば、
図2に示したように、時刻T12の後の時刻T13において、発電機の回転数が実際に低下し始める。
【0050】
このように、車両の衝突が発生したことが検出されたことをトリガとして、発電機の回転を停止させる制御が行われる場合、衝突が発生した時刻T12において、発電機は回転した状態となっている。また、衝突が発生した時点から実際に発電機の回転数の低下が開始されるまでの間に、通信による遅れ及び応答遅れが生ずる。ゆえに、衝突が発生した直後において、発電機の回転を停止させることが困難となり得る。よって、事故により車両が受ける衝撃によって発電機の配線が直接的に破壊されることによって、短絡が生じるおそれがある。それにより、事故が起きた際の被害がより増大するおそれがある。
【0051】
<3.制御装置の構成>
続いて、
図3を参照して、本実施形態に係る制御装置100の機能構成について説明する。
図3は、本実施形態に係る制御装置100の機能構成の一例を示す説明図である。
図3に示したように、制御装置100は、予測部102と、バイパス弁制御部104と、発電制御部106と、ポンプ制御部108と、を含む。なお、以下の説明では、車両の衝突が発生すると予測されない場合に制御装置100により実行される各種制御を通常制御とも称する。
【0052】
(予測部)
予測部102は、車両の衝突が発生するか否かを予測し、予測結果をバイパス弁制御部104、発電制御部106、及びポンプ制御部108へ出力する。当該予測結果は、バイパス弁制御部104、発電制御部106、及びポンプ制御部108によって各種処理において用いられる。なお、当該予測結果は、制御装置100の記憶素子に記憶されてもよく、その場合、バイパス弁制御部104、発電制御部106、及びポンプ制御部108は、記憶素子に記憶された当該予測結果を参照して、各種処理を行ってもよい。
【0053】
例えば、予測部102は、ステアリング操舵角に基づいて、車両の衝突が発生するか否かを予測してもよい。具体的には、予測部102は、ステアリング操舵角の絶対値が閾値より高い場合に、衝突が発生すると予測してもよい。当該閾値は、車両が走行路から外れるおそれがあるか否かを判定し得る値に設定される。具体的には、当該閾値は、車速が高いほど小さい値に設定される。予測部102は、例えば、車速と当該閾値との関係性を表すマップを用いて、現在の車速に応じた値を当該閾値として算出してもよい。車速と当該閾値との関係性を表すマップは、制御装置100の記憶素子に記憶され得る。
【0054】
それにより、ステアリング操舵角に基づいて、適切に車両の衝突が発生するか否かを予測することができる。なお、予測部102は、ステアリング操舵角センサ202から制御装置100へ出力される検出結果に基づいて、ステアリング操舵角を示す情報を取得し得る。
【0055】
また、予測部102は、車両の安全走行を確保するための制御である安全走行制御が実行されているか否かを示す情報に基づいて、車両の衝突が発生するか否かを予測してもよい。具体的には、予測部102は、安全走行制御が実行されている場合に、衝突が発生すると予測してもよい。安全走行制御は、例えば、車輪がロックすることを防止するためのABS(Antilock Brake System)制御、衝突被害を防止するために自動的に制動力を発生させる自動ブレーキ制御、又は車両の旋回時における横滑りを防止するための横滑り防止制御を含んでもよい。予測部102は、ABS制御、自動ブレーキ制御、及び横滑り防止制御のうち少なくとも1つが実行されている場合に、衝突が発生すると予測してもよい。
【0056】
それにより、安全走行制御の実行状況に基づいて、適切に車両の衝突が発生するか否かを予測することができる。なお、安全走行制御の各々は、本実施形態に係る制御装置100と異なる他の制御装置によって実行され得る。制御装置100は、例えば、安全走行制御の各々を実行する他の制御装置から各安全走行制御が実行されているか否かを示す情報を、CAN通信を用いて受信し得る。
【0057】
なお、予測部102は、ステアリング操舵角に基づく衝突発生の予測及び安全走行制御が実行されているか否かを示す情報に基づく衝突発生の予測を併用してもよい。具体的には、予測部102は、ステアリング操舵角の絶対値が閾値より高いこと、及び安全走行制御が実行されていることの少なくとも一方が満たされる場合に衝突が発生すると予測してもよい。
【0058】
また、予測部102は、衝突が発生すると予測された後において、車両の衝突が回避されたか否かを予測してもよい。例えば、予測部102は、衝突が発生すると予測された後において、ステアリング操舵角の絶対値が閾値以下であること、安全走行制御が実行されていないこと、及び車両の衝突が発生したことが検出されていないことが全て満たされる場合に、車両の衝突が回避されたと予測してもよい。なお、予測部102は、衝突が発生すると予測された後において、ステアリング操舵角の絶対値が閾値以下であり、かつ、車両の衝突が発生したことが検出されていない場合に、車両の衝突が回避されたと予測してもよい。また、予測部102は、衝突が発生すると予測された後において、安全走行制御が実行されていなく、かつ、車両の衝突が発生したことが検出されていない場合に、車両の衝突が回避されたと予測してもよい。
【0059】
予測部102は、車両の衝突が回避されたか否かについての予測結果をバイパス弁制御部104、発電制御部106、及びポンプ制御部108へ出力する。当該予測結果は、バイパス弁制御部104、発電制御部106、及びポンプ制御部108のそれぞれによる各種処理において用いられる。なお、当該予測結果は、制御装置100の記憶素子に記憶されてもよく、その場合、バイパス弁制御部104、発電制御部106、及びポンプ制御部108は、記憶素子に記憶された当該予測結果を参照して、各種処理を行ってもよい。
【0060】
なお、制御装置100は、加速度センサ206から出力される検出結果に基づいて、車両の衝突が発生したことを検出してもよい。例えば、制御装置100は、車両の加速度の絶対値が所定の値を上回ったときに、車両の衝突が発生したことを検出してもよい。また、衝突の発生の検出は、本実施形態に係る制御装置100と異なる他の制御装置によって行われてもよい。その場合、制御装置100は、車両の衝突が発生したか否かについての検出結果を、CAN通信を用いて受信し得る。
【0061】
(バイパス弁制御部)
バイパス弁制御部104は、バイパス弁94の駆動を制御する。具体的には、バイパス弁制御部104は、バイパス弁94へ動作指示を出力することによって、バイパス弁94の開度を制御する。なお、通常制御において、バイパス弁制御部104は、基本的にバイパス弁94を閉鎖する。また、本実施形態に係るバイパス弁制御部104は、予測部102から出力される予測結果に応じて、バイパス弁94の開度を制御する。
【0062】
本実施形態に係るバイパス弁制御部104は、具体的には、車両の衝突が発生すると予測された場合に、バイパス弁94を開放する。それにより、車両の衝突が発生するより前の時点において、ランキンサイクル70における作動媒体の減圧を開始させることができる。ゆえに、衝突が実際に発生する時点において、作動媒体を低圧の状態にすることができる。よって、事故により車両が受ける衝撃によって作動媒体流路72が直接的に破壊された場合における被害を低減することができる。従って、事故が起きた場合であっても、安全をより確実に確保することができる。
【0063】
また、バイパス弁制御部104は、車両の衝突が発生すると予測された場合に、バイパス弁94を開放した後、膨張器86へ供給される作動媒体の蒸気圧が目標圧力に近づくようにバイパス弁94の開度を制御してもよい。例えば、バイパス弁制御部104は、車両の衝突が発生すると予測された場合に、作動媒体の蒸気圧が当該目標圧力を下回るまでの間、バイパス弁94を継続して開放し、作動媒体の蒸気圧が当該目標圧力を下回った後において、作動媒体の蒸気圧が当該目標圧力に近づくようにバイパス弁94の開度を制御してもよい。バイパス弁制御部104は、具体的には、作動媒体の蒸気圧が当該目標圧力に近づくように、バイパス弁94の開放及び閉鎖を繰り返してもよい。
【0064】
当該目標圧力は、事故により車両が受ける衝撃によって作動媒体流路72が直接的に破壊された場合における被害を効果的に抑制し得る値に、車両の各種設計仕様に応じて適宜設定される。なお、当該目標圧力の設定値は、制御装置100の記憶素子に記憶され得る。作動媒体の蒸気圧を目標圧力の近傍の圧力に維持することによって、通常制御への復帰の際に、作動媒体の蒸気圧を迅速に上昇させることができる。
【0065】
また、バイパス弁制御部104は、車両の衝突が発生すると予測された後において、車両の衝突が回避されたと予測された場合に、バイパス弁94を閉鎖してもよい。それにより、車両の衝突が発生するか否かについての予測結果に基づいて、バイパス弁94の駆動制御を適切に通常制御へ復帰させることができる。
【0066】
また、バイパス弁制御部104は、車両の衝突が発生したことが検出された場合に、バイパス弁94を開放してもよい。上述したように、バイパス弁制御部104は、車両の衝突が発生すると予測された後において、例えば、作動媒体の蒸気圧が目標圧力に近づくようにバイパス弁94の開度を制御する。このような制御が実行されている際に車両の衝突が発生したことが検出された場合に、バイパス弁制御部104は、バイパス弁94を開放してもよい。それにより、事故が起きた場合、事故後における作動媒体の圧力の上昇を抑制することができる。ゆえに、事故後において、作動媒体の圧力が上昇を続けることにより作動媒体流路72が破損することを防止することができる。ゆえに、事故後における作動媒体流路72の破損による二次的な被害を防止することができる。
【0067】
(発電制御部)
発電制御部106は、発電機60による発電を制御する。具体的には、発電制御部106は、発電機60のコンバータ装置へ動作指示を出力することによって、発電機60の発電量を制御する。より具体的には、当該コンバータ装置が、動作指示に基づいて、発電機60のモータの界磁電流を調整することによって、発電機60の出力電圧が制御される。それにより、発電機60の発電量が制御される。なお、通常制御において、発電制御部106は、例えば、高電圧バッテリ30の残存容量SOC(State Of Charge)、作動媒体の蒸気圧等の車両の状態量に基づいて、発電機60の発電量を制御する。
【0068】
ここで、発電機60の発電量に応じて、発電機60のモータの回転軸に制動力として掛かる負荷が変動する。具体的には、発電機60の発電量が大きいほど、発電機60のモータの回転軸に制動力として掛かる負荷が大きくなる。ゆえに、発電制御部106は、発電機60の発電量を制御することによって、発電機60の回転数を制御することができる。また、発電制御部106は、予測部102から出力される予測結果に応じて、発電機60の回転数を制御してもよい。
【0069】
発電制御部106は、車両の衝突が発生すると予測された場合に、発電機60の回転を停止させてもよい。発電制御部106は、具体的には、発電機60の回転が停止する程度に発電機60の発電量を増大させることによって、発電機60の回転を停止させる。それにより、車両の衝突が発生するより前の時点において、発電機60の回転数の低下を開始させることができる。ゆえに、衝突が実際に発生する時点において、発電機60を回転が停止した状態にすることができる。よって、事故により車両が受ける衝撃によって発電機60の配線が直接的に破壊された場合であっても、短絡が生じることを防止することができる。従って、事故が起きた際の被害をより低減することができる。
【0070】
また、発電制御部106は、車両の衝突が発生すると予測された後において、車両の衝突が回避されたと予測された場合に、発電機60の回転を復帰させてもよい。発電制御部106は、具体的には、発電機60の発電制御を通常制御へ復帰させることにより、発電機60の回転を復帰させる。それにより、車両の衝突が発生するか否かについての予測結果に基づいて、発電機60の発電制御を適切に通常制御へ復帰させることができる。
【0071】
(ポンプ制御部)
ポンプ制御部108は、ランキンサイクルポンプ74の駆動を制御する。具体的には、ポンプ制御部108は、ランキンサイクルポンプ74へ動作指示を出力することによって、ランキンサイクルポンプ74の回転数を制御する。なお、通常制御において、ポンプ制御部108は、例えば、燃料噴射量やエンジン回転数等の車両の状態量に基づいて、ランキンサイクルポンプ74の回転数を制御する。また、ポンプ制御部108は、予測部102から出力される予測結果に応じて、ランキンサイクルポンプ74の回転数を制御してもよい。
【0072】
ポンプ制御部108は、車両の衝突が発生すると予測された場合に、ランキンサイクルポンプ74の回転数を低減させてもよい。このような場合には、上述した制御装置100によるバイパス弁94の駆動制御及び発電機60の発電制御によって、作動媒体の蒸気圧は低減され、発電機60による回転は停止される。ゆえに、充電システム10は、事故が起きた場合における被害を低減するために、発電が行われない状態になる。よって、ランキンサイクルポンプ74の回転数を低減させることによって、発電に利用されない不要な電力の消費を抑制することができる。また、ランキンサイクルポンプ74の回転数を低減させることによって、作動媒体の蒸気圧を低減させる効果を促進させることができるので、車両の衝突が発生すると予測された場合に、より迅速に作動媒体の蒸気圧を低減させることができる。
【0073】
また、ポンプ制御部108は、車両の衝突が発生すると予測された場合に、ランキンサイクルポンプ74の回転数を予め設定した所定の目標回転数に近づくように制御してもよい。当該目標回転数は、ランキンサイクルポンプ74を停止させずに、継続して駆動させることができるような値に、車両の各種設計仕様に応じて適宜設定される。なお、当該目標回転数の設定値は、制御装置100の記憶素子に記憶され得る。ランキンサイクルポンプ74の回転数を目標回転数に維持することによって、通常制御への復帰の際に、ランキンサイクルポンプ74の回転数を迅速に上昇させることができる。
【0074】
また、ポンプ制御部108は、車両の衝突が発生すると予測された後において、車両の衝突が回避されたと予測された場合に、ランキンサイクルポンプ74の駆動制御を、車両の衝突が発生すると予測されない場合に実行される通常制御へ復帰させてもよい。それにより、車両の衝突が発生するか否かについての予測結果に基づいて、ランキンサイクルポンプ74の駆動制御を適切に通常制御へ復帰させることができる。
【0075】
また、ポンプ制御部108は、車両の衝突が発生したことが検出された場合に、ランキンサイクルポンプ74の駆動を停止させてもよい。上述したように、ポンプ制御部108は、車両の衝突が発生すると予測された後において、例えば、ランキンサイクルポンプ74の回転数を目標回転数に近づくように制御する。このような制御が実行されている際に車両の衝突が発生したことが検出された場合に、ポンプ制御部108は、ランキンサイクルポンプ74の駆動を停止させてもよい。それにより、事故が起きた場合、事故後における作動媒体の圧力の上昇をより効果的に抑制することができる。ゆえに、事故後において、作動媒体の圧力が上昇を続けることによって作動媒体流路72が破損することを、より効果的に防止することができる。ゆえに、事故後における作動媒体流路72の破損による二次的な被害をより効果的に防止することができる。
【0076】
<4.動作>
続いて、本実施形態に係る制御装置100が行う処理の流れについて説明する。
【0077】
(制御フロー)
まず、
図4〜
図7にそれぞれ示すフローチャートを参照して、本実施形態に係る制御装置100による制御フローについて説明する。
図4は、本実施形態に係る制御装置100が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図4に示した処理は、車両の制御システムが起動した後において、常時実行され得る。
【0078】
図4に示したように、まず、予測部102は、車両の衝突が発生するか否かを予測する(ステップS100)。車両の衝突が発生すると予測されなかった場合(ステップS100/NO)、ステップS100の処理が繰り返され、その間において制御装置100は通常制御を実行する。一方、車両の衝突が発生すると予測された場合(ステップS100/YES)、バイパス弁制御部104、発電制御部106、及びポンプ制御部108によって衝突予測時処理が行われる(ステップS200)。
【0079】
そして、制御装置100は、車両の衝突が発生したことが検出されたか否かを判定する(ステップS300)。車両の衝突が発生したことが検出されたと判定された場合(ステップS300/YES)、バイパス弁制御部104及びポンプ制御部108によって衝突発生時処理が行われる(ステップS400)。
【0080】
一方、車両の衝突が発生したことが検出されたと判定されなかった場合(ステップS300/NO)、予測部102は、車両の衝突が回避されたか否かを予測する(ステップS500)。車両の衝突が回避されたと予測されなかった場合(ステップS500/NO)、ステップS200の処理へ戻る。一方、車両の衝突が回避されたと予測された場合(ステップS500/YES)、バイパス弁制御部104、発電制御部106、及びポンプ制御部108によって通常制御への復帰処理が行われる(ステップS600)。
【0081】
続いて、
図5を参照して、車両の衝突が発生すると予測された場合に制御装置100が行う衝突予測時処理(
図4に示したステップS200)について、より詳細に説明する。
【0082】
図5は、本実施形態に係る制御装置100が行う衝突予測時処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図5に示したように、衝突予測時処理では、まず、バイパス弁制御部104が、バイパス弁94を開放する(ステップS202)。次に、発電制御部106が、発電機60の回転を停止させる(ステップS204)。次に、ポンプ制御部108が、ランキンサイクルポンプ74の回転数を低減させる制御を開始する(ステップS206)。
【0083】
そして、バイパス弁制御部104は、作動媒体の蒸気圧が目標圧力を下回ったか否かを判定する(ステップS208)。作動媒体の蒸気圧が目標圧力を下回ったと判定された場合(ステップS208/YES)、バイパス弁制御部104は、作動媒体の蒸気圧が当該目標圧力に近づくようなバイパス弁94の開度制御を開始し(ステップS210)、
図5に示した処理は終了する。一方、作動媒体の蒸気圧が目標圧力を下回ったと判定されなかった場合(ステップS208/NO)、ステップS210の処理は行われずに、
図5に示した処理は終了する。
【0084】
続いて、
図6を参照して、車両の衝突が発生したことが検出された場合に制御装置100が行う衝突発生時処理(
図4に示したステップS400)について、より詳細に説明する。
【0085】
図6は、本実施形態に係る制御装置100が行う衝突発生時処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図6に示したように、衝突発生時処理では、まず、バイパス弁制御部104が、バイパス弁94を開放する(ステップS402)。次に、ポンプ制御部108が、ランキンサイクルポンプ74の駆動を停止させ(ステップS404)、
図6に示した処理は終了する。
【0086】
続いて、
図7を参照して、車両の衝突が回避されたと予測された場合に制御装置100が行う通常制御への復帰処理(
図4に示したステップS600)について、より詳細に説明する。
【0087】
図7は、本実施形態に係る制御装置100が行う通常制御への復帰処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図7に示したように、通常制御への復帰処理では、まず、バイパス弁制御部104が、バイパス弁94を閉鎖する(ステップS602)。次に、発電制御部106が、発電機60の回転を復帰させる(ステップS604)。次に、ポンプ制御部108が、ランキンサイクルポンプ74の駆動制御を通常制御へ復帰させ(ステップS606)、
図7に示した処理は終了する。
【0088】
(各種状態量の推移)
続いて、
図8〜
図10を参照して、本実施形態に係る制御装置100による制御が行われた場合における、各種状態量の推移について説明する。なお、以下では、理解を容易にするために、予測部102は、安全走行制御が実行されている場合に、衝突が発生すると予測するものとする。また、予測部102は、衝突が発生すると予測された後において、安全走行制御が実行されていなく、かつ、車両の衝突が発生したことが検出されていない場合に、車両の衝突が回避されたと予測するものとする。
【0089】
まず、本実施形態に係る制御装置100による制御が行われた場合における、車両の衝突の発生が予測された後に衝突が発生した状況下での、各種状態量の推移について説明する。
図8は、本実施形態に係る制御装置100による制御が行われた場合における、車両の衝突の発生が予測された後に衝突が発生した状況下での、各種状態量の推移の一例を示す模式図である。
図8では、時刻T21において、車両が減速を開始し、時刻T25において、衝突が発生した場合における、各種状態量の推移が示されている。
【0090】
図8に示したように、時刻T21において、車両の加速度がマイナス側へ振れることに応じて、安全走行制御が始動した場合、予測部102により衝突が発生すると予測され、衝突予測時処理が行われる。それにより、時刻T21において、バイパス弁制御部104からバイパス弁94へ動作指示が出力され、時刻T21の後、バイパス弁94が開放される。そして、バイパス弁94が開放された後、作動媒体の蒸気圧が低下し始める。また、時刻T21において、発電制御部106から発電機60へ動作指示が出力され、時刻T21の後、発電機60の回転数が低下し始め、時刻T22において、発電機60の回転が停止する。また、時刻T21において、ポンプ制御部108からランキンサイクルポンプ74へ動作指示が出力され、時刻T21の後、ランキンサイクルポンプ74の回転数が低下し始める。
【0091】
また、
図8に示したように、時刻T23において、作動媒体の蒸気圧が目標圧力を下回った場合、バイパス弁制御部104は、作動媒体の蒸気圧が目標圧力に近づくようなバイパス弁94の開度制御を開始する。具体的には、
図8に示したように、時刻T23以後において、バイパス弁制御部104がバイパス弁94の開放及び閉鎖を繰り返すことによって、作動媒体の蒸気圧は目標圧力の近傍の圧力を維持するように推移する。
【0092】
また、ポンプ制御部108は、例えば、ランキンサイクルポンプ74の回転数を所定の目標回転数に近づくように制御する。それにより、
図8に示したように、ランキンサイクルポンプ74の回転数は、時刻T24までの間、目標回転数へ向かって低下し続け、時刻T24以後において、目標回転数を維持するように推移する。
【0093】
そして、時刻T25において、制御装置100により車両の衝突が発生したことが検出されたと判定され、衝突発生時処理が行われる。それにより、時刻T25において、バイパス弁制御部104からバイパス弁94へ動作指示が出力され、時刻T25の後、バイパス弁94が開放される。そして、バイパス弁94が開放された後、作動媒体の蒸気圧が低下し始める。また、時刻T25において、ポンプ制御部108からランキンサイクルポンプ74へ動作指示が出力され、時刻T25の後、ランキンサイクルポンプ74の回転数が低下し始める。
【0094】
このように、本実施形態に係る制御装置100によれば、車両の衝突が発生すると予測されたことをトリガとして、バイパス弁94を開放する制御が行われることによって、衝突が実際に発生した時刻T25において、作動媒体を低圧の状態にすることができる。ゆえに、事故により車両が受ける衝撃によって作動媒体流路72が直接的に破壊された場合における被害を低減することができる。従って、事故が起きた場合であっても、安全をより確実に確保することができる。
【0095】
ここで、高圧の蒸気で満たされた閉空間の内部と外気とを連通させる開口部を開閉可能な外気開放弁を開放した後における閉空間内の蒸気圧の推移について説明する。
図9は、外気開放弁の開放後における閉空間内の蒸気圧の推移の一例を示す模式図である。なお、
図9では、閉空間の容積を3000[cm
3]、開口部の直径を20[mm]、外気開放弁の開放時における蒸気圧を3000[kPa]とした場合の蒸気圧の推移が示されている。また、
図9に示すグラフの縦軸において、蒸気圧が対数目盛により表示されている。
図9に示したように、当該閉空間内の蒸気圧は、具体的には、60[ms]経過した場合に、略3分の1に減圧される。ここで、ランキンサイクル70において、バイパス弁94の開放後からの経過時間に対する作動媒体の蒸気圧の減圧の特性は、作動媒体流路72の寸法やバイパス弁94の寸法等の車両の各種設計仕様に応じて異なる。ゆえに、車両の各種設計仕様に応じて、予測部102によって車両の衝突が発生すると予測されるための条件の厳しさを適宜設定することによって、衝突が実際に発生する時点において、より適切に作動媒体を低圧の状態にすることができる。
【0096】
また、本実施形態では、車両の衝突が発生すると予測されたことをトリガとして、発電機60の回転を停止させる制御が行われることによって、衝突が実際に発生した時刻T25において、発電機60を回転が停止した状態にすることができる。ゆえに、事故により車両が受ける衝撃によって発電機60の配線が直接的に破壊された場合であっても、短絡が生じることを防止することができる。従って、事故が起きた際の被害をより低減することができる。
【0097】
次に、本実施形態に係る制御装置100による制御が行われた場合における、車両の衝突の発生が予測された後に衝突が回避された状況下での、各種状態量の推移について説明する。
図10は、本実施形態に係る制御装置100による制御が行われた場合における、車両の衝突の発生が予測された後に衝突が回避された状況下での、各種状態量の推移の一例を示す模式図である。
図10では、時刻T31において、車両が減速を開始し、時刻T35において、車両の衝突が回避された場合における、各種状態量の推移が示されている。
【0098】
時刻T31から時刻T35までの間において制御装置100により行われる処理及び各種状態量の推移については、
図8を参照して説明した、車両の衝突の発生が予測された後に衝突が発生した状況下における場合と同様であるので、説明を省略する。
【0099】
時刻T35において、車両の衝突が回避された場合、例えば、
図10に示したように、車両の加速度の絶対値が減少することに応じて、安全走行制御が終了する。また、時刻T35において、車両の衝突が発生したことは検出されないので、予測部102により車両の衝突が回避されたと予測され、通常制御への復帰処理が行われる。それにより、時刻T35において、バイパス弁制御部104からバイパス弁94へ動作指示が出力され、時刻T35の後、バイパス弁94が閉鎖される。そして、バイパス弁94が閉鎖された後、作動媒体の蒸気圧が上昇し始める。また、時刻T35において、発電制御部106から発電機60へ動作指示が出力され、時刻T35の後、発電機60の回転数が上昇し始める。また、時刻T35において、ポンプ制御部108からランキンサイクルポンプ74へ動作指示が出力され、時刻T35の後、ランキンサイクルポンプ74の回転数が上昇し始める。
【0100】
このように、本実施形態では、車両の衝突が回避されたと予測されたことをトリガとして、バイパス弁94の駆動制御、発電機60の発電制御、及びランキンサイクルポンプ74の駆動制御が通常制御へ復帰する。それにより、車両の衝突が回避された時刻T35以後において、各種制御を適切に通常制御へ復帰させることができる。
【0101】
また、本実施形態では、衝突予測時処理において、作動媒体の蒸気圧が目標圧力に近づくようにバイパス弁94の開度が制御され、ランキンサイクルポンプ74の回転数が所定の目標回転数に近づくように制御される。それにより、
図10に示したように、通常制御への復帰処理が開始する時刻T35において、作動媒体の蒸気圧は目標圧力の近傍の圧力となり、ランキンサイクルポンプ74の回転数は目標回転数の近傍の回転数となっている。ゆえに、通常制御への復帰の際に、作動媒体の蒸気圧及びランキンサイクルポンプ74の回転数を迅速に上昇させることができる。
【0102】
<5.むすび>
以上説明したように、本実施形態によれば、ランキンサイクル70には、作動媒体流路72の膨張器86より上流側と下流側とを連通するバイパス流路82及びバイパス流路82を開閉可能なバイパス弁94が設けられる。また、バイパス弁制御部104は、車両の衝突が発生すると予測された場合に、バイパス弁94を開放する。それにより、衝突が実際に発生する時点において、作動媒体を低圧の状態にすることができる。よって、事故により車両が受ける衝撃によって作動媒体流路72が直接的に破壊された場合における被害を低減することができる。従って、事故が起きた場合であっても、安全をより確実に確保することができる。
【0103】
上記では、本発明に係るランキンサイクル及び制御装置をハイブリッド車両に適用した例について説明したが、本発明に係る技術的範囲は係る例に限定されない。例えば、本発明に係るランキンサイクル及び制御装置は、エンジン14から出力される駆動力によって走行し、動力源として高電圧バッテリ30を有しない車両にも適用され得る。その場合、ランキンサイクル70によって生成された機械エネルギを用いて発電機60により発電された電力は、車両内の各種装置へ電力を供給する低電圧バッテリへ蓄電されてもよい。また、ランキンサイクル70によって生成された機械エネルギは、必ずしも発電に利用されなくてもよく、直接的に発電機以外の他の装置を駆動するために利用されてもよい。
【0104】
また、上記では、ランキンサイクル70は、車両のエンジン14の廃熱を回収する冷却水との間で熱交換を行うことにより、機械エネルギを生成する例について説明したが、本発明に係る技術的範囲は係る例に限定されない。例えば、ランキンサイクル70は、車両のエンジン14の廃熱を有する排気ガスとの間で熱交換を行うことにより、機械エネルギを生成してもよい。係る場合において、熱交換器78には、作動媒体流路72及び排気ガスの配管が接続され得る。
【0105】
また、上記では、エンジン14の運転により生成された駆動力は、駆動力伝達系18を介して、駆動輪22へ伝達される例について説明したが、当該駆動力は発電に利用されてもよい。例えば、エンジン14の運転により生成された駆動力は、エンジン14と接続された図示しない発電機へ伝達され、当該発電機による発電に用いられてもよい。なお、当該発電機によって発電された電力は、高電圧バッテリ30へ蓄電されるように構成し得る。
【0106】
また、本明細書においてフローチャートを用いて説明した処理は、必ずしもフローチャートに示された順序で実行されなくてもよい。いくつかの処理ステップは、並列的に実行されてもよい。また、追加的な処理ステップが採用されてもよく、一部の処理ステップが省略されてもよい。
【0107】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は係る例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は応用例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。