特許第6684295号(P6684295)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6684295
(24)【登録日】2020年3月31日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】管理支援システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20200413BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20200413BHJP
   A61B 5/18 20060101ALI20200413BHJP
   A61B 5/16 20060101ALI20200413BHJP
   G08B 21/06 20060101ALI20200413BHJP
   G08B 21/00 20060101ALI20200413BHJP
   A61B 5/0245 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
   G08G1/16 F
   G08G1/00 D
   A61B5/18
   A61B5/16 130
   G08B21/06
   G08B21/00 U
   A61B5/0245 C
【請求項の数】6
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2018-21653(P2018-21653)
(22)【出願日】2018年2月9日
(65)【公開番号】特開2019-139466(P2019-139466A)
(43)【公開日】2019年8月22日
【審査請求日】2019年9月26日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000153546
【氏名又は名称】株式会社日立物流
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 公則
(72)【発明者】
【氏名】南雲 秀明
【審査官】 武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−203913(JP,A)
【文献】 特開2014−123287(JP,A)
【文献】 特開2013−065246(JP,A)
【文献】 特開2017−027414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
A61B 5/0245
A61B 5/16
A61B 5/18
G08B 21/00
G08B 21/06
G08G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象車両を運転する運転者の運転状態の管理を支援する、管理支援システムであって、
前記対象車両に搭載され、前記対象車両の走行状態を監視する第一監視装置と、
前記対象車両に搭載され、前記運転者の運転時体調状態を監視する第二監視装置と、
前記第一監視装置及び前記第二監視装置に対して無線通信が可能に構成されたサーバと、
前記サーバに対して無線通信が可能に構成された管理者端末と
前記対象車両に搭載され、前記対象車両が走行する道路が一般道から高速道に変更された時点、及び、前記高速道から前記一般道に変更された時点において、当該変更された旨の情報を、変更された時刻に関する情報と共に前記サーバに対して送信する、走行道路判定装置を備え、
前記第一監視装置は、前記走行状態が所定の第一警告条件を満たすと、前記対象車両内に第一警告信号を出力すると共に、前記走行状態に対応する第一監視情報を、発信元である前記対象車両又は前記運転者を識別するための識別情報と共に前記サーバに送信し、
前記第二監視装置は、前記運転時体調状態が所定の第二警告条件を満たすと、前記対象車両内に第二警告信号を出力すると共に、前記運転時体調状態に対応する第二監視情報を、前記識別情報と共に前記サーバに送信し、
前記サーバは、
前記第一監視装置から送信された前記第一監視情報と、前記第二監視装置から送信された前記第二監視情報とを受信する受信部と、
前記運転者の運転状態が要監視レベルであるかどうかを判定するための要監視判定条件が記憶された記憶部と、
前記受信部で受信した前記第一監視情報及び前記第二監視情報に基づいて、前記要監視判定条件を満たすか否かの判定を行う判定処理部と、
前記判定処理部が前記要監視判定条件を満たすと判定した場合に、前記管理者端末に対して、前記運転者の運転状態が要監視レベルであることを示す要監視通知情報を、前記識別情報と共に、前記管理者端末に対して送信する送信部と、を備え
前記記憶部は、前記対象車両が走行する道路が前記一般道か前記高速道かに応じて異なる前記要監視判定条件を記憶していることを特徴とする、管理支援システム。
【請求項2】
前記第一監視情報は、前記走行状態の危険度に応じて数値化された情報を含み、
前記第二監視情報は、前記運転者の非覚醒度に応じて数値化された情報を含み、
前記受信部は、前記第一監視情報及び前記第二監視情報を受信すると、発信元である前記識別情報と、受信した日時に関する時刻情報と共に、前記第一監視情報及び前記第二監視情報を記憶部に記憶し、
前記要監視判定条件は、前記危険度及び前記非覚醒度に応じて定められた、監視対象発生時間間隔及び発生回数閾値に関する情報を含み、
前記判定処理部は、前記記憶部に記憶された前記第一監視情報、前記第二監視情報、及び前記時刻情報に基づき、前記監視対象発生時間間隔内における、前記第一監視情報に記載された前記危険度、又は、前記第二監視情報に記載された前記非覚醒度の発生回数が、
前記発生回数閾値を上回る場合に、前記要監視判定条件を満たすと判定することを特徴とする、請求項1に記載の管理支援システム。
【請求項3】
前記第一監視装置は、前記対象車両と当該対象車両の前方に位置する前方障害物との離間距離、前記対象車両が走行中の車線の逸脱の有無、及び前記対象車両の加速度の少なくとも一方を検知し、当該検知結果に基づいて予め設定された前記危険度を決定し、
前記第二監視装置は、前記運転者の心拍及び脈波の少なくとも一方を検知し、当該検知結果に基づいて予め設定された前記非覚醒度を決定することを特徴とする、請求項2に記載の管理支援システム。
【請求項4】
前記記憶部は、前記識別情報に応じた前記要監視判定条件を記憶していることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の管理支援システム。
【請求項5】
前記記憶部は、前記運転者の、前記対象車両を運転する前における体調状態である、運転前体調状態に関する情報を、前記識別情報に関連付けて記憶しており、
前記サーバは、前記運転者別に前記運転前体調状態に基づいて前記要監視判定条件を補正する補正処理部を備えたことを特徴とする、請求項4に記載の管理支援システム。
【請求項6】
前記対象車両に搭載され、前記対象車両の現在の位置情報を検知して、前記サーバに対して送信する、位置情報検知装置を備え、
前記サーバは、
前記受信部において前記第一監視情報又は前記第二監視情報を受信すると、前記各監視情報と共に、受信時における前記対象車両の前記位置情報を前記記憶部に記憶し、
前記判定処理部が前記要監視判定条件を満たすと判定すると、前記送信部が前記管理者端末に対して、前記要監視通知情報を、前記識別情報及び前記位置情報と共に送信することを特徴とする、請求項1〜のいずれか1項に記載の、管理支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象車両を運転する運転者の運転状態の管理を支援する、管理支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運転者の生体信号をリアルタイムに取得すると共に、この生体信号を分析・解析して運転に適さない体調状態と判断した場合には、休憩を促したり、アラームを発生して覚醒させたりする装置が存在する。このような装置としては、脳波を感知して判断するものや(下記特許文献1参照)、心拍数、血圧、自律神経に関する情報から判断するもの(下記特許文献2参照)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6132327号公報
【特許文献2】特開2014−27961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
運転者の疲労度や眠気は、運転状態に大きく影響する。一般的に、運転者は、安全運転を行うべく、疲労や眠気を感じた場合には、車両を停止させて休憩を取ることが奨励されている。
【0005】
一方で、運転者も人間であるため、搬送先である目的地点や事前に予定していた休憩地点が近づいているなどの地理的環境要因や、なるべく早く目的地点に輸送物を届けたいという心理的環境要因により、自身の体調を過信して運転を継続してしまう場合が起こり得る。このような場合に、上記の各装置を車両に搭載しておけば、警告音の通知によって自身の体調を客観的に知ることができると共に、休憩を取ることの動機付けとして作用させることができる。
【0006】
ところで、運送業者は、複数の車両を保有すると共に、多数の運転者を雇用している。安全管理の観点から、運送業者は、各運転者の運転状態を管理することを希望する場合が多い。しかし、上記の各装置は、あくまで各車両内において警告音を発して、運転者に意識させることを目的として開発されたものである。つまり、各車両にこれらの装置を搭載したとしても、離れた場所の各運転者の運転状態を管理することができない。
【0007】
近年のIoT技術の進歩により、種々の分野において、装置間で通信を可能にする技術が開発されている。本発明者らは、この点を踏まえ、まず、上記特許文献に記載されているような、運転中における運転者の生体信号を監視する装置に対して、別途の通信手段を設けると共に、当該装置から車両に対して警告音が通知された場合には、その旨の警告情報をサーバに送信する機能を搭載することを検討した。
【0008】
かかる構成を採用することで、管理者はサーバにアクセスすることで、各運転者の体調が低下していることを知ることができる。また、管理者が、運転者の体調の低下を認識できるため、例えば携帯電話などを使って運転者に対して休憩を取るように口頭で指示を与えることができる。これにより、運転者に対して強制的に休憩を取得する働き掛けを行うことができ、事故を未然に防止する効果が期待される。
【0009】
しかし、多くの運転者を雇用する運送業者においては、管理者が管理する対象となる運転者の数が必然的に多くなる。この場合、管理者はサーバを監視し続ける必要があり、管理者に課される作業負担が増大してしまうという課題がある。
【0010】
このような課題に対しては、サーバが車両に搭載された前記装置から送信された前記警告情報を受信した時点で、サーバから管理者の端末に対してその旨の情報を送信させる方法が考えられる。具体的には、管理者が保有するスマートフォンやパソコンなどの端末に対してアラートが通知される仕組みを採用することが考えられる。しかし、かかる方法であっても、極めて多くの運転者を雇用する運送業者の場合、管理者の端末に対して、高い頻度で通知がされることが想定されるところ、やはり管理者に対して高い作業負担が課せられてしまうという課題が存在する。
【0011】
本発明者は、鋭意研究により、このような課題の背景の一つに、上記の生体信号を検知して運転者の体調を監視する装置自体の特性が関与していることを突き止めた。すなわち、上記の装置は、運転時の事故を可能な限り未然に防ぐ観点で、運転者の生体信号が平常時の値として設定されている値から少しでも逸脱すると警告音を発生するように構成されているのが一般的である。このため、検知された生体信号からは警告音が発せられるような状態であっても、実際に運転者の健康状態は平常時と遜色ないという場合が起こり得る。このことは、生体信号によって検知された情報と、実際の運転者の体調との相関関係には、個人差が存在するという事情も関与する。
【0012】
従って、上記の装置に通信手段を設け、前記装置から警告音が発生された旨の情報をサーバに送信する機能を搭載すると、多数の運転者を管理する管理者の端末には前記情報が通知される頻度が高くなってしまう。更に、上述したように、警告音が発せられた旨の信号が通知された場合であっても、実際の運転者の体調に問題がない場合が含まれるところ、管理者は、当該運転者が真に監視が必要な状態であるか否かを認識することができない。しかしながら、大きな事故の発生は未然に防止しなければならないという事情がある。つまり、上記のシステムを運用した場合、管理者は、数多く通知される前記情報に基づき、同時に多くの運転者を監視することを必要とされる結果となり、やはり管理者に対して高い作業負担を課してしまうこととなる。
【0013】
本発明は、上記の課題に鑑み、運転者が真に監視が必要な運転状態である場合に、管理者によって当該運転者を重点的に監視させることを可能にした、管理支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、対象車両を運転する運転者の運転状態の管理を支援する、管理支援システムであって、
前記対象車両に搭載され、前記対象車両の走行状態を監視する第一監視装置と、
前記対象車両に搭載され、前記運転者の運転時体調状態を監視する第二監視装置と、
前記第一監視装置及び前記第二監視装置に対して無線通信が可能に構成されたサーバと、
前記サーバに対して無線通信が可能に構成された管理者端末とを備え、
前記第一監視装置は、前記走行状態が所定の第一警告条件を満たすと、前記対象車両内に第一警告信号を出力すると共に、前記走行状態に対応する第一監視情報を、発信元である前記対象車両又は前記運転者を識別するための識別情報と共に前記サーバに送信し、
前記第二監視装置は、前記運転時体調状態が所定の第二警告条件を満たすと、前記対象車両内に第二警告信号を出力すると共に、前記運転時体調状態に対応する第二監視情報を、前記識別情報と共に前記サーバに送信し、
前記サーバは、
前記第一監視装置から送信された前記第一監視情報と、前記第二監視装置から送信された前記第二監視情報とを受信する受信部と、
前記運転者の運転状態が要監視レベルであるかどうかを判定するための要監視判定条件が記憶された記憶部と、
前記受信部で受信した前記第一監視情報及び前記第二監視情報に基づいて、前記要監視判定条件を満たすか否かの判定を行う判定処理部と、
前記判定処理部が前記要監視判定条件を満たすと判定した場合に、前記管理者端末に対して、前記運転者の運転状態が要監視レベルであることを示す要監視通知情報を、前記識別情報と共に、前記管理者端末に対して送信する送信部と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
本明細書において、「管理者」とは、必ずしも法律上の「運行管理者」である必要はなく、「管理者端末」に対する操作権限を有する者を指す。
【0016】
前記管理支援システムは、対象車両に搭載された、第一監視装置及び第二監視装置から送信される情報に基づいて、運転者の運転状態が要監視レベルであるかどうかを判定する。第一監視装置は、対象車両の走行状態を監視する装置である。第二監視装置は、運転者の運転時体調状態を監視する装置である。
【0017】
第一監視装置は、対象車両の走行状態が所定の第一警告条件を満たすと、対象車両内に第一警告信号を出力する。例えば、対象車両が急ブレーキを掛けた場合や、対象車両と前方障害物(車両や歩行者など)との離間距離が極めて短くなった場合、第一監視装置は、これらの状況を検知すると共に、車両内で第一警告信号を出力する。第一警告信号は、スピーカなどから発せられる警告音であっても構わないし、メーターパネルやナビゲーション用画面など、運転者が視認可能な位置に表示される文字又は画像情報であっても構わない。また、バイブレータを運転者が着座するシートに設けるなどして、振動を与えるようにしてもよい。運転者は、第一警告信号を認知することで、走行状態が前記第一警告条件を満たすような運転をしていたことを認識する。これにより、安全運転を心掛ける動機付けとしての作用が奏される。
【0018】
第二監視装置は、運転者の運転時体調状態が所定の第二警告条件を満たすと、対象車両内に第二警告信号を出力する。例えば、第二監視装置は、運転者が眠気や疲労感に襲われている状態であることを検知した場合、車両内で第二警告信号を出力する。第二警告信号は、第一警告信号と同様に、スピーカなどから発せられる警告音であっても構わないし、メーターパネルやナビゲーション用画面など、運転者が視認可能な位置に表示される文字又は画像情報であっても構わない。運転者は、第二警告信号を認知することで、自己が眠気や疲労感に襲われていることを認識する。これにより、運転者の意識を覚醒させる作用が奏される。
【0019】
第一監視装置は、走行状態が第一警告条件を満たすことを検知すると、前記走行状態に対応する情報(第一監視情報)を、識別情報と共にサーバに送信する。同様に、第二監視装置は、運転時体調状態が第二警告条件を満たすことを検知すると、前記運転時体調状態に対応する情報(第二監視情報)を、識別情報と共にサーバに送信する。サーバは、判定処理部において、各装置から送信された第一監視情報及び第二監視情報に基づいて、運転者の運転状態が要監視レベルであるかどうかの判定を行う。
【0020】
第一監視装置や第二監視装置は、運転の安全性を担保する目的で、警告条件(第一警告条件、第二警告条件)が厳格に設定されていることが想定される。
【0021】
例えば、第一監視装置であれば、隣の車線から他の車両が急に割り込んできた場合、車間距離が狭くなったことを検知して第一警告条件を満たしていると判断する場合があり得る。すなわち、運転者の運転状態には特に問題がないものの、他の車両の走行状態に影響して走行状態が第一警告条件を満たしてしまう場合がある。このため、第一監視装置の監視結果のみから、運転者に疲労感や眠気が存在しているかどうかを真に判断することは難しい。
【0022】
また、第二監視装置は、運転時体調状態を監視する装置であり、一例として、運転者の生体信号に基づいて監視する。しかし、運転者の生体信号が示す値と、実際の運転者の体調との相関関係は、運転者ごとに個人差が存在する。このため、第二監視装置の監視結果のみからは、運転者に疲労感や眠気が存在しているかどうかを真に判断することが難しい。
【0023】
本発明に係る管理支援システムが備えるサーバは、記憶部を備え、この記憶部は、予め、第一監視装置から送信された第一監視情報と、第二監視装置から送信された第二監視情報とに基づいて、運転状態が要監視レベルであるかどうかを判定するための要監視判定条件を記憶している。対象車両の走行状態と運転者の運転時体調状態とが一定の条件を満たした場合には、運転状態が良好ではなく、事故の発生可能性があることが考えられる。一例として、所定の時間内に、第一監視装置によって加速度の大きな変化が多数発生していることが検知された上、第二監視装置によって複数回にわたって運転者に眠気が訪れやすい状態であると検知されたような場合が対応する。
【0024】
本発明に係る管理支援システムが備えるサーバは、前記第一監視情報と前記第二監視情報とに基づき、運転者の運転状態が要監視レベルであると判定した場合に限り、管理者端末に対してその旨を示す要監視通知情報を送信する。つまり、本発明に係る管理支援システムによれば、第一監視装置及び第二監視装置において、それぞれに警告条件が設定されていて、それぞれの装置から警告が通知されるような状況が招来した場合であっても、運転者に対する監視が真に必要であると判定されなければ、管理者端末に対する通知が行われない。この結果、管理者は、管理者端末に対してサーバからの要監視通知情報が通知された場合に限り、当該要監視情報に関連付けられている運転者を監視対象として注視すればよく、管理負担が軽減される。
【0025】
第一監視装置及び第二監視装置は、それぞれ、各装置単独で警告信号を車両内に出力する機能を備えている。このため、第一監視装置又は第二監視装置は、車両内に単独で搭載された場合においても、運転者に対して安全運転を意識させる効果が一定程度存在する。しかし、上述したように、各装置は、単独で搭載された場合において事故を未然に防止する機能を最大限発現できるよう、警告信号を出力させる条件が厳格に設定されるのが一般的である。このような場合、運転者自身としては体調に何ら問題がないにもかかわらず、車両内において警告信号が頻繁に出力されるということが起こり得る。かかる状態が継続すると、運転者が車両内で警告信号が出力されることに慣れてしまい、警告信号の意義が低下してしまう。
【0026】
これに対し、上述したように、本発明に係る管理支援システムによれば、運転者に対する監視が真に必要であると判断された場合に、管理者端末に対して自動的に通知がされる。管理者は、この通知がされたことを検知すると、例えば、携帯電話、無線通信などの手段を用いて運転者に対して現在の体調などの確認することができる。つまり、運転者は、仮に車両に搭載された第一監視装置又は第二監視装置からの警告信号に慣れてしまっていたとしても、真に監視が必要な場合に限って管理者からこのような確認連絡が行われるため、自己の体調があまり良くないことを再認識でき、休憩を取得するなどの動機付けとすることができる。
【0027】
より具体的には、
前記第一監視情報は、前記走行状態の危険度に応じて数値化された情報を含み、
前記第二監視情報は、前記運転者の非覚醒度に応じて数値化された情報を含み、
前記受信部は、前記第一監視情報及び前記第二監視情報を受信すると、発信元である前記識別情報と、受信した日時に関する時刻情報と共に、前記第一監視情報及び前記第二監視情報を記憶部に記憶し、
前記要監視判定条件は、前記危険度及び前記非覚醒度に応じて定められた、監視対象発生時間間隔及び発生回数閾値に関する情報を含み、
前記判定処理部は、前記記憶部に記憶された前記第一監視情報、前記第二監視情報、及び前記時刻情報に基づき、前記監視対象発生時間間隔内における、前記第一監視情報に記載された前記危険度、又は、前記第二監視情報に記載された前記非覚醒度の発生回数が、
前記発生回数閾値を上回る場合に、前記要監視判定条件を満たすと判定するものとすることができる。
【0028】
例えば、運転者が眠気や疲労感を有している場合には、急ブレーキ、急加速、急ハンドルなどの特定の走行状態の発現頻度が高くなる傾向にある。また、このように運転者が眠気や疲労感を有している場合、第二監視装置が、運転者の生体信号に基づいて運転者の運転時体調状態を非覚醒度が高い状態であると判断する頻度が高まる。すなわち、上記管理支援システムによれば、限られた時間内に、高い頻度で、高い危険度及び/又は高い非覚醒度を示す状態が検知された場合に、サーバによって、運転者の運転状態が真に要監視レベルであると判定され、管理者端末にその旨の通知が自動的になされる。
【0029】
より具体的には、
前記第一監視装置は、前記対象車両と当該対象車両の前方に位置する前方障害物(車両、歩行者など)との離間距離、前記対象車両が走行中の車線の逸脱の有無、及び前記対象車両の加速度の少なくとも一方を検知し、当該検知結果に基づいて予め設定された前記危険度を決定し、
前記第二監視装置は、前記運転者の心拍及び脈波の少なくとも一方を検知し、当該検知結果に基づいて予め設定された前記非覚醒度を決定するものとすることができる。
【0030】
前記記憶部は、前記識別情報に応じた前記要監視判定条件を記憶しているものとしても構わない。
【0031】
上述したように、第二監視装置から得られる情報と、実際の運転者の真の体調(眠気、疲労度)との相関関係には、個人差が存在し得る。また、運転者の運転年数や運転技術などによって、第一監視装置から得られる情報と、実際の走行状態の危険度との相関関係には、個人差が存在し得る。上記構成によれば、各運転者の個人特性を考慮した、要監視判定条件を設定することができるため、運転者の運転状態が要監視レベルであるかどうかの判定精度を、より向上させることができる。
【0032】
また、前記記憶部は、前記運転者の、前記対象車両を運転する前における体調状態である、運転前体調状態に関する情報を、前記識別情報に関連付けて記憶しており、
前記サーバは、前記運転者別に前記運転前体調状態に基づいて前記要監視判定条件を補正する補正処理部を備えるものとしても構わない。
【0033】
例えば、運転者が運転前の状態で、体温が平熱よりも少し高い場合には、通常時よりも疲労しやすいことが予想される。また、例えば、運転者が運転前の状態で、自律神経の状態が好ましくない場合などにおいては、通常時よりも眠気が生じやすくなったり、漫然運転をしがちになることが予想される。このような場合には、例えば、補正処理部が当該運転者の要監視判定条件を、通常よりも厳格になるように補正する。これにより、通常であれば管理者端末に対して要監視通知情報が通知されないようなケースであっても、管理者端末に対して通知されるため、管理者が当該運転者を重点的に監視することができる。
【0034】
前記管理支援システムは、前記対象車両に搭載され、前記対象車両が走行する道路が一般道から高速道に変更された時点、及び、前記高速道から前記一般道に変更された時点において、当該変更された旨の情報を、変更された時刻に関する情報と共に前記サーバに対して送信する、走行道路判定装置を備え、
前記記憶部は、前記対象車両が走行する道路が前記一般道か前記高速道かに応じて異なる前記要監視判定条件を記憶しているものとしても構わない。
【0035】
一般道の走行時と高速道の走行時とでは、運転状態の態様や疲労の感じ方が異なる。上記構成によれば、各道路の態様に応じて要監視判定条件を切り替えることができるため、運転者の運転状態が要監視レベルであるかどうかの判定精度をより向上させることができる。走行道路判定装置としては、例えば対象車両に搭載されたETC(自動料金支払いシステム)を用いることができる。
【0036】
前記管理支援システムは、前記対象車両に搭載され、前記対象車両の現在の位置情報を検知して、前記サーバに対して送信する、位置情報検知装置を備え、
前記サーバは、
前記受信部において前記第一監視情報又は前記第二監視情報を受信すると、前記各監視情報と共に、受信時における前記対象車両の前記位置情報を前記記憶部に記憶し、
前記判定処理部が前記要監視判定条件を満たすと判定すると、前記送信部が前記管理者端末に対して、前記要監視通知情報を、前記識別情報及び前記位置情報と共に送信するものとしても構わない。
【0037】
上記構成によれば、管理者は、管理者端末に表示された位置情報に基づき、運転者の現在位置を認識できる。このため、例えば、前記位置情報の近くに存在する適切な休憩地点を運転者に連絡することができる。位置情報検知装置としては、例えば対象車両に搭載されたカーナビゲーションシステムを用いることができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明の管理支援システムによれば、運転者が真に監視が必要な運転状態である場合に、管理者に対して当該運転者に対して重点的な監視ができるよう、支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明の管理支援システムの第一実施形態の構成を模式的に示すブロック図である。
図2】第一監視装置の内部構成を模式的に示すブロック図である。
図3】第一警告条件の一例と、各条件に係る走行状態の危険度に応じて数値化された情報との対応関係を示す表である。
図4】第二監視装置の内部構成を模式的に示すブロック図である。
図5】運転者の各種生体信号に基づいて判定部によって特定された運転時体調状態の例と、各状態に対応する判定値との対応関係を示す表である。
図6】サーバが備える記憶部に記憶されている要監視判定条件の一例を示す表である。
図7】要監視通知情報を受信した管理者端末に表示される画面の一例である。
図8】第一実施形態の管理支援システムの処理フローを模式的に示すフローチャートである。
図9】本発明の管理支援システムの第一実施形態の構成を模式的に示す別のブロック図である。
図10】要監視通知情報を受信した管理者端末に表示される画面の別の一例である。
図11】本発明の管理支援システムの第一実施形態の構成を模式的に示す別のブロック図である。
図12】本発明の管理支援システムの第二実施形態の構成を模式的に示すブロック図である。
図13】自律神経の状態を評価する際の指標の一例である。
図14】サーバが備える記憶部に記憶されている、運転前体調状態を考慮した要監視判定条件の一例を示す表である。
図15】運転者に対して通知される要監視近接情報のイメージの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
[第一実施形態]
本発明に係る管理支援システムの第一実施形態につき、図面を参照して説明する。この管理支援システムは、対象車両を運転する運転者の運転状態の管理を支援する用途に利用される。
【0041】
図1は、管理支援システムの全体構成を模式的に示すブロック図である。管理支援システム1は、対象車両10、サーバ60、及び管理者端末80を備えて構成される。
【0042】
<対象車両10>
対象車両10は、運転者2によって運転される車両である。本実施形態では、対象車両10が、貨物を運送するためのトラックである場合を例に挙げて説明するが、運転者2が運転して複数の地点間を往来する用途で用いられる車両であれば、バス、タクシーなど、他の車両であっても構わない。
【0043】
対象車両10は、車両内に搭載された、第一監視装置20、第二監視装置30を備える。第一監視装置20と第二監視装置30とは、いずれもサーバ60との間で無線通信が可能に構成されている。この通信の形式は限定されず、例えば、Wi-Fi(登録商標)や、インターネットなどを利用することができる。
【0044】
(第一監視装置20)
第一監視装置20は、対象車両10の走行状態を監視する装置である。より詳細には、図2に示されるように、第一監視装置20は、対象車両10の走行状態を検知する検知部21、検知部21で検知された結果に基づいて、対象車両10の走行状態が所定の警告条件を満たしているかどうかを判定する判定部22、警告信号を出力する警告出力部23、及び所定の情報をサーバに送信するための送信部24を備える。
【0045】
検知部21は、対象車両10の加速度を検知する加速度センサや、前方障害物(車両や歩行者など)との離間距離、及び/又は車線逸脱状況を検知する撮像センサを含む。更に、第一監視装置11は、対象車両10の速度を検知する速度センサを含むものとしてもよい。これらのセンサの一部は、対象車両10自体に搭載されたセンサで構成されていても構わない。
【0046】
判定部22は、検知部21で検知された対象車両10の各種情報に基づいて、対象車両10の走行状態が所定の警告条件(以下、「第一警告条件」という。)を満たしているかどうかを判定する演算処理部であり、専用のソフトウェア及び/又はハードウェアで構成される。第一警告条件は、予め第一監視装置20内の記憶部(不図示)に記憶されている。
【0047】
図3は、第一警告条件の一例と、各条件に係る走行状態の危険度に応じて数値化された情報との対応関係を示す表である。なお、図3及び後述する図5では、判定値として「m−n」(m,nはいずれも数字)という表記をしているが、これは前者の「m」がデータの取得元の装置(センサ)の種類を示すものであり、後者の「n」が危険度を数値に置き換えて示したものである。データの取得元の装置とは、第一監視装置20か第二監視装置30か、及び/又は、第一監視装置20内における加速度センサか撮像センサか、などに対応する。判定値の表記方法は一例であり、この方法に限定されない。
【0048】
(1)対象車両10が、所定速度以上(例えば時速55km以上)で走行中、ウインカーを出さずに対象車両10が車線を跨いだことを検知部21が検知すると、判定部22は、この走行状態に対して、判定値1−1(左車線)、又は判定値1−2(右車線)を設定する。
【0049】
(2)検知部21によって検知された情報に基づき、判定部22は、対象車両10がそのままの車速で走り続けた時に、前方の車両がいた地点へ到達する秒数が所定以下(例えば3秒以下)になることを判定すると、この走行状態に対して、判定値1−3を設定する。
【0050】
(3)検知部21によって検知された情報に基づき、判定部22は、対象車両10が低速(例えば時速30km以下)で走行中、対象車両10の車体が予め設定された仮想バンパー範囲内に入ることを判定すると、この走行状態に対して、判定値1−4を設定する。
【0051】
(4)検知部21によって検知された情報に基づき、判定部22は、対象車両10がそのままの車速で走り続けた時に、所定秒(例えば2.5秒)以内に前方車両に衝突する危険性があることを判定すると、この走行状態に対して、判定値1−5を設定する。
【0052】
(5)検知部21によって検知された情報に基づき、判定部22は、走行中に対象車両10が前方の歩行者に衝突する危険性があることを判定すると、この走行状態に対して、判定値1−6を設定する。
【0053】
(6)検知部21によって検知された加速度の変化に基づき、判定部22は、対象車両10に発生したGの大きさに応じて、この走行状態に対して、判定値2−1(危険度小),2−2(危険度中),2−3(危険度大)を設定する。判定値2−3が最も危険度が高い運転である。なお、この判定に際して、判定部22はエンジンが始動したタイミングを検知し、同タイミングでの加速度の変化については第一警告条件から排除するものとしても構わない。また、判定値2−1については、第一警告条件から排除しても構わない。
【0054】
第一監視装置20は、判定部22において、対象車両10の走行状態が、上記の例に示されるような条件(第一警告条件)を満たすことが判定されると、警告出力部23から対象車両10内に対して警告信号(第一警告信号)を出力する。また、このとき、第一監視装置20は、送信部24から、この時点における対象車両10の走行状態を示す情報(第一監視情報d1)を、運転者2の識別情報diと共にサーバ60に対して送信する。
【0055】
警告出力部23は、対応する音声信号、又は文字若しくは画像信号を生成し、出力する手段であり、専用のソフトウェア及び/又はハードウェアで構成される。送信部24は、判定部22において判定された情報に基づき、第一監視情報d1を運転者2の識別情報diに関連付けした送信用データに変換した上で、無線通信を介してサーバ60に対して送信する手段であり、専用のソフトウェア及び/又はハードウェアで構成される。
【0056】
第一警告信号は、運転者2に認識可能な態様であればよく、例えば、第一監視装置20又は対象車両10に搭載されたスピーカから出力される音声信号であっても構わないし、第一監視装置20又は対象車両10に搭載された画面上に出力される、文字又は画像信号であっても構わない。また別の例としては、運転者2が着座するシートに対して出力されるバイブレータからの振動信号であっても構わない。更には、第一監視装置20と運転者2が保有するスマートフォンとが通信可能に構成されている場合には、運転者2のスマートフォンに対して音声信号や文字・画像信号が出力される構成としても構わない。
【0057】
その際、第一警告信号に警告の内容を示す情報が含まれるものとしても構わない。例えば第一監視装置20によって、上記判定値1−1に対応する走行状態であると判定されると、対象車両10が左側に対して車線をはみ出した旨の音声信号がスピーカより出力されるものとしても構わないし、対象車両10が左側に対して車線をはみ出した旨の文字情報や画像情報が画面上に表示されるものとしても構わない。
【0058】
運転者2は、対象車両10内において、第一警告信号に対応する音声や文字・画像情報を認知することで、走行状態が第一警告条件を満たすような運転をしていたことを認識する。これにより、運転者2に対して、以後の運転に対して留意するように働き掛けがなされる。
【0059】
第一監視装置20からサーバ60に対して送信される第一監視情報d1には、該当する警告の内容が含まれる。一例として、第一監視情報d1には、図3に示した各判定値が含まれる。
【0060】
また、上述したように、第一監視装置20からサーバ60に対しては、第一監視情報d1と共に、運転者2を識別するための識別情報diが併せて送信される。第一監視装置20は、例えば搭載された対象車両10を識別するための情報(車両番号など)を記憶しているものとしても構わないし、運転者2の情報(社員IDなど)を記憶しているものとしても構わない。前者の場合、識別情報diとしては対象車両10の番号が記載されると共に、例えばサーバ60に、予め現時点における対象車両10と運転者2との対応状況が記載されたテーブルが記憶されているものとしても構わない。後者の場合、識別情報diとしては運転者2の社員IDが記載される。この場合においては、運転者2が対象車両10に乗車する前に、第一監視装置20に対して事前に運転者2の社員IDを一時的に記憶させる処理が行われるものとしても構わない。
【0061】
(第二監視装置30)
第二監視装置30は、運転者2の運転時における体調状態を監視する装置である。より詳細には、図4に示されるように、第二監視装置30は、運転者2の運転時体調状態を検知する検知部31、検知部31で検知された結果に基づいて、運転者2の運転時体調状態が所定の警告条件を満たしているかどうかを判定する判定部32、警告信号を出力する警告出力部33、及び所定の情報をサーバに送信するための送信部34を備える。
【0062】
検知部31は、例えば運転者2が着座するシートに設けられたセンサによって構成され
、運転者2の心拍、脈波などの生体信号を検知する。一例として圧力センサを利用することができる。
【0063】
判定部32は、検知部31で検知された運転者2の各種生体信号に基づいて、運転者2の運転時体調状態を特定すると共に、特定された運転時体調状態が所定の警告条件(以下、「第二警告条件」という。)を満たしているかどうかを判定する演算処理部であり、専用のソフトウェア及び/又はハードウェアで構成される。第二警告条件は、予め第二監視装置30内の記憶部(不図示)に記憶されている。
【0064】
図5は、運転者2の各種生体信号に基づいて判定部32によって特定された運転時体調状態の例と、各状態に対応する判定値の対応関係である。
【0065】
(1)判定部32は、検知部31において検知された生体信号の情報に基づき、運転者2の着座が確認できないと判断した場合には、運転者2の運転時体調状態に対して、判定値3−0を設定する。この設定はなくても構わない。
【0066】
(2)判定部32は、検知部31において検知された生体信号の情報に基づき、運転者2の交感神経が亢進されており興奮状態であると判断した場合には、運転者2の運転時体調状態に対して判定値3−1を設定し、運転者2に対して疲労感が全く又はほとんどないと判断した場合には、運転者2の運転時体調状態に対して判定値3−2を設定する。判定値3−1及び3−2は、運転者2の非覚醒度が低い(覚醒度が高い)状態に対応する。
【0067】
(3)判定部32は、検知部31において検知された生体信号の情報に基づき、運転者2に対して眠気が訪れやすい状態であると判断した場合には、運転者2の運転時体調状態に対して判定値3−3を設定し、運転者2に対して疲労感が感じられると判断した場合には、運転者2の運転時体調状態に対して判定値3−4を設定する。判定値3−3及び3−4は、運転者2の非覚醒度があまり低くない(覚醒度があまり高くない)状態に対応する。
【0068】
(4)判定部32は、検知部31において検知された生体信号の情報に基づき、運転者2が眠気を有していると判断した場合には、運転者2の運転時体調状態に対して判定値3−5を設定し、運転者2の入眠の予兆が検知されると判断した場合には、運転者2の運転時体調状態に対して判定値3−6を設定する。判定値3−5及び3−6は、運転者2の非覚醒度が高い(覚醒度が低い)状態に対応する。
【0069】
(5)判定部32は、検知部31において検知された生体信号の情報に基づき、運転者2が覚低状態(覚醒低下状態)を検知できないと判断した場合には、運転者2の運転時体調状態に対して判定値3−7を設定し、運転者2が切迫睡眠又は確実に睡眠状態であると判断した場合には、運転者2の運転時体調状態に対して判定値3−8を設定する。判定値3−7及び3−8は、運転者2の非覚醒度が極めて高い(覚醒度が極めて低い)状態に対応する。
【0070】
本実施形態では、判定部32によって、運転者2の運転時体調状態に対応する判定値が、3−3〜3−8であると判定された場合に、警告出力部33から対象車両10内に対して警告信号(第二警告信号)を出力する。すなわち、この実施形態では、第二警告条件が、運転者2の運転時体調状態が、3−3〜3−8であるかどうかに設定されている。また、このとき、第二監視装置30は、送信部34から、この時点における運転者2の運転時体調状態を示す情報(第二監視情報d2)を、運転者2の識別情報diと共に、サーバ60に対して送信する。
【0071】
警告出力部33は、対応する音声信号、又は文字若しくは画像信号を生成し、出力する手段であり、専用のソフトウェア手段及び/又はハードウェア手段で構成される。送信部34は、判定部32において判定された情報に基づき、第二監視情報d2を運転者2の識別情報diに関連付けた送信用データに変換した上で、無線通信を介してサーバ60に対して送信する手段であり、専用のソフトウェア手段及び/又はハードウェア手段で構成される。
【0072】
第二警告信号は、運転者2に認識可能な態様であればよく、例えば、第二監視装置30又は対象車両10に搭載されたスピーカから出力される音声信号であっても構わないし、第二監視装置30又は対象車両10に搭載された画面上に出力される、文字又は画像信号であっても構わない。更には、第二監視装置30と運転者2が保有するスマートフォンとが通信可能に構成されている場合には、運転者2のスマートフォンに対して音声信号や文字・画像信号が出力される構成としても構わない。
【0073】
その際、第二警告信号に警告の内容を示す情報が含まれるものとしても構わない。例えば第二監視装置30によって、上記判定値4−7に対応する走行状態であると判定されると、運転者2に眠気が感じられる旨の音声信号がスピーカより出力されるものとしても構わないし、運転者2に眠気が感じられる旨の文字情報や画像情報が画面上に表示されるものとしても構わない
【0074】
運転者2は、対象車両10内において、第二警告信号に対応する音声や文字・画像情報を認知することで、自己が眠気や疲労感に襲われていることを認識させられ、意識が覚醒する。これにより、例えば運転者2に対して、自発的に休憩を促すよう働き掛けがなされる。
【0075】
第二監視装置30からサーバ60に対して送信される第二監視情報d2には、該当する警告の内容が含まれる。一例として、第二監視情報d1には、図5に示した各判定値が含まれる。
【0076】
また、上述したように、第二監視装置30からサーバ60に対しては、第二監視情報d2と共に、運転者2を識別するための識別情報diが併せて送信される。第二監視装置30は、例えば搭載された対象車両10を識別するための情報(車両番号など)を記憶しているものとしても構わないし、運転者2の情報(社員IDなど)を記憶しているものとしても構わない。
【0077】
なお、各警告信号が音声信号で構成される場合において、第一監視装置20から出力される警告信号と、第二監視装置30から出力される警告信号とは、同一のスピーカから発せられるものとしても構わない。同様に、各警告信号が文字又は画像信号で構成される場合において、第一監視装置20から出力される警告信号と、第二監視装置30から出力される警告信号とは、同一の画面上に表示されるものとしても構わない。
【0078】
<サーバ60>
図1に示されるように、本実施形態において、サーバ60は、受信部61、記憶部62、判定処理部63、送信部64を備える。受信部61は、電気通信回線を介して受信したデータを演算可能な態様に変換する機能を有する処理手段であり、送信部64は、データを所定の送受信可能な態様に変換して、電気通信回線を介して送信する処理手段である。判定処理部63は、取得した情報に基づいて所定の信号処理(演算)を行う演算処理部であり、専用のソフトウェア及び/又はハードウェアで構成される。記憶部62は、フラッシュメモリ、ハードディスクなどの記憶媒体で構成される。
【0079】
受信部61は、第一監視装置20から送信される第一監視情報d1、及び第二監視装置30から送信される第二監視情報d2を受信すると、記憶部62に記憶させる。このとき、上述したように、第一監視情報d1及び第二監視情報d2には、それぞれ運転者2を識別するための識別情報diが関連付けられているため、これらの監視情報(d1,d2)が、識別情報di毎に記憶部62において記憶される。更には、受信部61において受信した日時、又は対象車両10から各監視情報(d1,d2)が送信された日時が、併せて記憶される。後者の場合、第一監視装置20の送信部24が第一監視情報d1を送信する際、又は第二監視装置30の送信部34が第二監視情報d2を送信する際、各監視情報(d1,d2)に対して送信日時に関する情報を記載する処理を行うものとすることができる。
【0080】
判定処理部63は、記憶部62に記憶(蓄積)された、運転者2別の各監視情報(d1,d2)に基づいて、所定の判定条件(以下、「要監視判定条件」という。)を満たすか否かの判定を行う。要監視判定条件に関する情報は、記憶部62に予め記憶されている。
【0081】
図6は、要監視判定条件の一例を示す表である。判定処理部63は、受信部61において第一監視情報d1又は第二監視情報d2を受信したことを確認すると、記憶部62に対して、この受信時刻を起点として、予め定められた所定時間以前の間に、当該運転者2の識別情報diに関連付けられた第一監視情報d1又は第二監視情報d2の内容及び回数を検出する。
【0082】
図6に示される例では、以下の内容が要監視判定条件として記憶部62に記憶されている。この例では、要監視判定条件として、第一監視情報d1及び第二監視情報d2に応じて予め定められた、監視対象発生時間間隔(例えば、10分又は30分など)及び発生回数閾値(例えば10回又は100回など)に関する情報が含まれる。また、この例では、各判定値に対応する監視情報(d1,d2)は、図3又は図5に示される例に対応する。
【0083】
(1)条件1:以下の条件が一つでも成立する。
・サーバ60は、現在時刻を含む過去10分以内の間に、判定値1−6を示す第一監視情報d1を1回以上受信している。
・サーバ60は、現在時刻を含む過去10分以内の間に、判定値1−5を示す第一監視情報d1を10回以上受信している。
・サーバ60は、現在時刻を含む過去10分以内の間に、判定値2−3を示す第一監視情報d1を2回以上受信している。
・サーバ60は、現在時刻を含む過去10分以内の間に、判定値3−8を示す第二監視情報d2を5回以上受信している。
【0084】
(2)条件2:以下の条件が全て成立する。
・サーバ60は、現在時刻を含む過去30分以内の間に、判定値1−1、1−2、又は1−5を示す第一監視情報d1を30回以上受信している。
・サーバ60は、現在時刻を含む過去30分以内の間に、判定値2−2、又は2−3を示す第一監視情報d1を100回以上受信している。
【0085】
(3)条件3:以下の条件が全て成立する。
・サーバ60は、現在時刻を含む過去30分以内の間に、判定値1−1、1−2、又は1−5を示す第一監視情報d1を30回以上受信している。
・サーバ60は、現在時刻を含む過去30分以内の間に、判定値3−5、3−6,3−7,又は3−8を示す第二監視情報d2を10回以上受信している。
【0086】
(4)条件4:以下の条件が全て成立する。
・サーバ60は、現在時刻を含む過去30分以内の間に、判定値2−2、又は2−3を示す第一監視情報d1を100回以上受信している。
・サーバ60は、現在時刻を含む過去30分以内の間に、判定値3−5、3−6,3−7,又は3−8を示す第二監視情報d2を10回以上受信している。
【0087】
判定処理部63は、上記の要監視判定条件を満たすことを確認すると、運転者2の運転状態が要監視レベルであることを示す情報(以下、「要監視通知情報da」という。)を作成する。送信部64は、要監視通知情報daを、運転者2の識別情報diと共に、管理者端末80に対して送信する。
【0088】
<管理者端末80>
管理者端末80は、サーバ60に対して通信可能な機器であれば、その態様には限定されず、例えば、スマートフォン、タブレットPC、ノートブックPC、デスクトップPCなどの汎用機器、又は管理支援システム1に係る専用の端末で構成される。管理者端末80が汎用機器からなる場合には、管理支援システム1の動作に対応させるための専用のアプリケーションプログラムがインストールされているものとして構わない。管理者端末80は、サーバ60の設置場所とは離れた位置に保管されているか、又は管理者によって保有(携帯)されているものとすることができる。
【0089】
管理者端末80は、サーバ60の送信部64から送信された要監視通知情報daを受信する受信部81と、受信した要監視通知情報daに基づいて表示用の情報を作成する表示処理部82と、表示処理部82が作成した情報を表示する表示部83とを備える。受信部81は、電気通信回線を介して受信したデータを演算可能な態様に変換する機能を有する処理手段である。表示処理部82は、取得した情報に基づいて所定の信号処理(演算)を行う演算処理部であり、専用のソフトウェア及び/又はハードウェアで構成される。表示部83は、モニタ画面に対応する。例えば管理者端末80がスマートフォンで構成される場合のように、表示部83と管理者端末80とが一体で構成されていても構わないし、管理者端末80がデスクトップPCで構成される場合のように、表示部83と管理者端末80とが別体で構成されていても構わない。
【0090】
図7は、要監視通知情報daを受信した管理者端末80に表示される画面の一例である。図7に示す例では、表示部83には、メッセージ表示領域88と、操作領域89とが表示される。
【0091】
メッセージ表示領域88には、対象となる運転者2及び対象車両10を特定するための情報と、要監視レベルであることを示す情報とが表示される。また、操作領域89には、管理者によって操作可能な操作ボタン(89a、89b、‥‥)が表示される。この例では、今回通知された要監視通知情報daの内容を詳細に見るための操作ボタン89aと、対象となる運転者2に対して連絡を取るための操作ボタン89bとが表示されている。
【0092】
例えば管理者が操作ボタン89aを操作すると、管理者端末80は、図示しない送信部からサーバ60に対して、対象となる情報を取得するための指示信号を送信する。サーバ60は、この指示信号を受信すると、例えば記憶部62から、対象となる運転者2の直近の所定時間内における各監視情報(d1,d2)を管理者端末80に対して送信し、管理者端末80の表示部83に情報を表示させる。これにより、管理者は、対象となる運転者2が、直近においてどのような運転状態をしていたかを認識することができる。
【0093】
更に、サーバ60の記憶部62において、運転者2毎に、業務計画に関する情報が記憶されている場合には、サーバ60から当該情報が管理者端末80に対して送信される。例えば、今回通知された要監視通知情報daの時刻と、業務計画に関する情報とを照合し、例えば現在A地点からB地点に向かって進行中である旨を管理者端末80の表示部83に表示させることができる。
【0094】
また、管理者が指示ボタン89bを操作すると、管理者端末80から、運転者2の携帯電話、又は運転者2が運転している対象車両10に搭載されている無線通信機器に対して連絡を取ることができる。この場合、管理者端末80は、必要に応じて通話機能やメッセージ送信機能を有しているものとして構わない。これにより、管理者は、運転者2に対して直接口頭によって注意を促す言葉を伝えることができ、事故を未然に防ぐことができる。また、管理者端末80から、運転者2の携帯電話、又は運転者2が運転している対象車両10に対して、注意を促す旨の文字情報を送信するものとしても構わない。
【0095】
<フローチャート>
図8は、本実施形態の管理支援システム1の処理フローを模式的に示すフローチャートである。内容が重複するため、簡略化して説明する。
【0096】
対象車両10の走行中、第一監視装置20は対象車両10の走行状態を監視し(ステップS11)、第二監視装置30は運転者2の運転時体調状態を監視する(ステップS21)。これらの監視は、対象車両10の走行時に常時行われるものとして構わない
【0097】
第一監視装置20は、対象車両10の走行状態が上述した第一警告条件を満たしていると判定すると(ステップS12においてYES)、対象車両10内に第一警告信号を出力すると共に(ステップS13)、この時点における対象車両10の走行状態を示す第一監視情報d1をサーバ60に対して送信する(ステップS14)。
【0098】
第二監視装置30は、対象車両10の走行状態が第二警告条件を満たしていると判定すると(ステップS22においてYES)、対象車両10内に第二警告信号を出力すると共に(ステップS23)、この時点における運転者2の運転時体調状態を示す第二監視情報d2をサーバ60に対して送信する(ステップS24)。
【0099】
サーバ60は、各監視情報(d1,d2)を受信すると、記憶部62に記憶させる(ステップS31)。そして、判定処理部63において記憶部62に記憶された、運転者2別の各監視情報(d1,d2)に基づいて要監視判定条件を満たすか否かの判定を行う(ステップS32)。要監視判定条件を満たしている場合には(ステップS32においてYES)、管理者端末80に対して、運転者2の運転状態が要監視レベルであることを示す要監視通知情報daを送信する(ステップS33)。
【0100】
上記の構成によれば、サーバ60によって、対象車両10の過去の走行状態と運転者2の運転時体調状態に基づいて要監視レベルにあると判断された場合に限り、管理者端末80に対してその旨の通知がなされる。この結果、対象車両10に搭載されている監視装置(20,30)から警告がされる都度、管理者が確認する場合と比較して、管理者の管理負担が軽減する。
【0101】
上述したように、管理支援システム1は、対象車両10の走行状態に基づく情報と、運転者2の体調状態に基づく情報とを組み合わせて、運転状態が要監視レベルであるか否かを判定している。このため、管理支援システム1によれば、危険性が高い状態かどうかの判断精度が高められている。このため、管理支援システム1が運用されると、運転者2は、管理者から直接連絡が来たことで、現に危険な状態であったことを認識できる。
【0102】
すなわち、管理支援システム1によれば、単に対象車両10に搭載されている各装置(20,30)が警告信号を出力する状態ではなく、それよりは危険な状態(事故が起こる蓋然性がある状態)に限って、サーバ60から管理者に対して通知がなされる。このため、管理者から運転者2に対して直接連絡が来ることは、まさに、運転者2が事故が起こる蓋然性がある状態であることを意味する。つまり、運転者2は、管理者から直接連絡が来たことにより、現に事故が起こる蓋然性がある状態で運転をしていたことを認識させられ、少なくとも一時的に覚醒できると共に、直ちに近くの適切な場所で休憩を取ることへの強い働き掛けが可能となる。
【0103】
なお、サーバ60の記憶部62に記憶されている要監視判定条件は、運転者2に応じて設定されているものとしても構わない。第二監視装置30が監視する運転者2の運転時体調状態は、運転者2の生体信号に基づいて監視される。しかし、生体信号は個人差が存在するところ、第二監視装置30において判定された判定値が示す内容と、実際の運転者2の体調状態とが、必ずしも一致しない場合が想定される。
【0104】
また、運転者2の運転年数や運転技術などによっては、第一監視装置20において判定された判定値が示す内容と、実際の対象車両10の危険度とが、必ずしも一致しない場合が想定される。
【0105】
このため、予め各運転者2の生体信号の傾向や運転技術などを考慮して、運転者2別に、要監視判定条件を設定しておき、サーバ60の記憶部62に記憶しておくものとすることができる。例えば、運転者2に応じて、図6に例示された条件における、監視対象発生時間間隔や発生回数閾値を変更したり、第一監視情報d1と第二監視情報d2の組み合わせの条件を変更することができる。
【0106】
<別構成例>
(1)図9に示すように、対象車両10が、対象車両10の現在の位置情報を検知する位置情報検知装置11を備える場合、各監視装置(20,30)からサーバ60に対して各監視情報(d1,d2)が送信される時点における対象車両10の位置情報dgが併せて送信されるものとしても構わない。位置情報検知装置11は、例えば対象車両10に搭載された、カーナビゲーションシステムで構成される。この構成によれば、各警告条件を満たした時点における対象車両10の位置情報dgが、各監視情報(d1,d2)に関連付けられて、サーバ60の記憶部62に記憶されることができる。
【0107】
位置情報dgは、位置情報検知装置11から各監視装置(20,30)に対して送信された後、各監視装置(20,30)から、各監視情報(d1,d2)と共にサーバ60に対して送信されるものとしても構わない。また、別の方法として、各監視装置(20,30)からサーバ60に対して各監視情報(d1,d2)が送信される時点で、位置情報検知装置11からサーバ60に対して位置情報dgが送信されるものとしても構わない。
【0108】
更に、別の方法として、位置情報検知装置11は、所定の時間間隔で定期的にサーバ60に対して位置情報dgを送信しても構わない。この場合、サーバ60は、位置情報dgを記憶部62に記憶しておくと共に、各監視装置(20,30)から送信された各監視情報(d1,d2)を受信した時点で、最も近い時刻に送信された位置情報dgを記憶部62から読み出すものとしても構わない。
【0109】
ステップS32において、判定処理部63が、運転者2別の各監視情報(d1,d2)に基づいて要監視判定条件を満たすと判定した場合には(ステップS32においてYES)、管理者端末80に対して、運転者2の運転状態が要監視レベルであることを示す要監視通知情報daを、運転者2の識別情報di、及び位置情報dgと共に管理者端末80に対して送信する。
【0110】
図10は、位置情報dgと共に要監視通知情報daを受信した管理者端末80に表示される画面の一例である。図10に示す例では、メッセージ表示領域88内に、対象車両10の位置に関する情報が簡易的に示されている。この場合において、管理者が指示ボタン89aを操作すると、運転者2の現在の位置に関する詳細な情報を管理者端末80の表示部83に表示できる。管理者は、この情報に基づき、対象車両10の現在地近くの適切な休憩所を検知して、運転者2に対して伝達させることができる。
【0111】
(2)更に、図11に示すように、対象車両10は、走行中の道路が一般道と高速道との間で切り換えられた旨を検知する走行道路判定装置12を備えるものとしても構わない。この場合、各監視装置(20,30)からサーバ60に対して、各監視情報(d1,d2)が送信される時点における対象車両10の走行道路が一般道か高速道かを示す道路情報deが、併せて送信されるものとしても構わない。走行道路判定装置12は、例えば対象車両10に搭載された、自動料金支払いシステム(ETC)で構成される。この構成によれば、各警告条件を満たした時点における対象車両10の道路情報deが、各監視情報(d1,d2)に関連付けられて、サーバ60の記憶部62に記憶されることができる。
【0112】
道路情報deは、走行道路判定装置12から各監視装置(20,30)に対して送信された後、各監視装置(20,30)から、各監視情報(d1,d2)と共にサーバ60に対して送信されるものとしても構わない。また、別の方法として、各監視装置(20,30)からサーバ60に対して各監視情報(d1,d2)が送信される時点で、走行道路判定装置12からサーバ60に対して道路情報deが送信されるものとしても構わない。
【0113】
更に、別の方法として、走行道路判定装置12はサーバ60に対して、所定の時間間隔で定期的にサーバ60に対して道路情報deを送信しているものとしても構わない。この場合、サーバ60は、道路情報deを記憶部62に記憶しておくと共に、各監視装置(20,30)から送信された各監視情報(d1,d2)を受信した時点で、最も近い時刻に送信された道路情報deを記憶部62から読み出すものとしても構わない。
【0114】
サーバ60の記憶部62には、予め対象車両10が走行する道路が一般道か高速道かに応じて、要監視判定条件が記憶されている。例えば、図6に例示された条件における、対象車両10が走行する道路が一般道か高速道かに応じて、監視対象発生時間間隔や発生回数閾値、及び/又は第一監視情報d1と第二監視情報d2の組み合わせの条件を異ならせることができる。これにより、対象車両10が走行する道路の特性に適した要監視判定条件に基づいて、運転者2の運転状態が危険性が高いかどうかの判断精度が更に高められる。この場合、ステップS33において、サーバ60が管理者端末80に対して要監視通知情報daと共に道路情報deを併せて送信するものとしても構わない。
【0115】
なお、図11に示す例では、対象車両10が走行道路判定装置12と共に位置情報検知装置11を備えている場合を示しているが、位置情報検知装置11を備えない構成とすることも可能である。
【0116】
[第二実施形態]
本発明に係る管理支援システムの第二実施形態につき、第一実施形態と異なる箇所を主として説明する。図12は、本実施形態における管理支援システムの全体構成を模式的に示すブロック図である。本実施形態の管理支援システム1は、サーバ60が補正処理部65を備えている点が異なる。補正処理部65は、取得した情報に基づいて所定の信号処理(演算)を行う演算処理部であり、専用のソフトウェア及び/又はハードウェアで構成される。
【0117】
なお、図12に示す管理支援システム1は、対象車両10が位置情報検知装置11及び走行道路判定装置12を備えている場合について示されているが、これらの装置(11,12)を備えない構成としても構わない。
【0118】
本実施形態において、運転者2は、対象車両10の運転を行う前の体調状態(運転前体調状態)に関する情報の取得処理が行われる。この情報としては、例えば、運転者2の体温、血圧、自律神経、脈波、心拍数、血中酸素濃度などを利用することができる。これら、運転者2の運転前体調状態を計測する装置を、以下では、「運転前体調測定装置」と呼ぶ。この運転前体調測定装置は、対象車両10が駐車されている営業所などに常設しておいても構わないし、各対象車両10に搭載されていても構わない。また、運転前体調測定装置は、単一の装置であっても、複数の装置群であっても構わない。
【0119】
運転前体調測定装置は、運転者2の運転前における各種生体信号を計測すると、この生体信号をサーバ60に対して送信する。サーバ60は、運転者2の運転前における各種生体信号を、記憶部62に記憶させる。すなわち、運転前体調測定装置はサーバ60との間で無線通信が可能に構成されている。なお、少なくとも、運転前体調測定装置によって測定された各種生体信号がサーバ60に対して送信可能な態様であれば、必ずしも運転前体調測定装置が通信手段を備えていなくても構わない。
【0120】
サーバ60の記憶部62には、運転者2の過去の各種生体信号が記憶されている。更に、運転者2の過去の運転前及び運転後の各種生体信号あるいは生体信号の傾向が記憶されていてもよい。補正処理部65は、記憶部62から運転者2の各種生体信号を読み出すと共に、現時点における運転者2の体調状態(以下、「運転前体調状態」という。)を判定する。例えば、運転前に送信された運転者2の体温が、運転者2の過去の平均体温から2℃以上高い場合には、運転者2の運転前体調状態が要注意状態であると判定する。また、別の例として、図13に示す表の条件に基づいて、運転前に送信された運転者2の自律神経の状態を評価し、運転者2の運転前体調状態が要注意状態であるか否かを判定する。また、更に別の例として、運転前の生体信号から運転後の生体信号の傾向を予測し、運転前体調状態が注意状態であるか否かを判定する。
【0121】
なお、図13において、「LF」は交感神経を反映する指標に対応し、「HF」は副交感神経を反映する指標に対応する。また、偏差値Tiは、自律神経機能全体の働きを示す値(TP)を心拍数で補正した値(ccvTP)を、運転者2の年齢で偏差値化した値である。図13に示すLF、HF、及び偏差値Tiの各値は、いずれも運転前体調測定装置によって測定された運転者2の脈波、心拍などの生体信号の値に基づいて、補正処理部65によって演算処理によって算出可能である。なお、サーバ60の記憶部62は、各運転者2の年齢に関する情報が記憶されているものとすることができる。
【0122】
補正処理部65は、例えば、運転者2の運転前体調状態が「要注意」であると判定した場合には、記憶部62に記憶されている、運転者2の要監視判定条件を補正する。一例として、図14に示されるように、図6の例に対して以下の条件5が追加される。
【0123】
(5)条件5:以下の条件が一つでも成立する。なお、各値n、n、及びnは、運転者2の過去の傾向などに応じて適宜設定される。
・サーバ60は、現在時刻を含む過去10分以内の間に、判定値1−1、1−2、1−3,1−4,1−5、又は1−6を示す第一監視情報d1をn回以上受信している。
・サーバ60は、現在時刻を含む過去10分以内の間に、判定値2−2、又は2−3を示す第一監視情報d1をn回以上受信している。
・サーバ60は、現在時刻を含む過去10分以内の間に、判定値3−5、3−6,3−7,又は3−8を示す第二監視情報d2をn回以上受信している。
【0124】
この条件5が追加されることで、判定処理部63で判定する際の基準となる「要監視判定条件」は厳格化される。すなわち、サーバ60は、各監視装置(20,30)から送信された各監視情報(d1,d2)を受信したときに、ステップS32においてYESと判断する確率が上がる。つまり、管理者端末80に対して要監視通知情報daが送信される条件が厳格化され、管理者は、運転前体調状態が要注意と判断されている運転者2に対して、より注力して管理することができる。
【0125】
なお、図14におけるn、n2、及びnの各値は、運転者2の運転前体調状態に応じて適宜設定されるものとしても構わないし、予め定められた規定値であっても構わない。
【0126】
[別実施形態]
以下、別実施形態について説明する。
【0127】
〈1〉サーバ60の判定処理部63は、各監視装置(20,30)から送信された監視情報(d1,d2)に基づいて、運転者2の運転状態が要監視レベルに対してどの程度近づいているかを示す要監視近接情報を作成するものとしても構わない。例えば、サーバ60の記憶部62において、運転者2が運転する対象車両10から、過去20分間に判定値1−1,1−2,1−5のいずれかに対応した第一監視情報d1を22回受信した旨が記憶されているとする。この場合、サーバ60の判定処理部63は、同等の第一監視情報d1が今後10分間にわたって8回受信すれば、運転者2の運転状態が要監視レベルに達することを認識する。
【0128】
このような場合、例えば、サーバ60は、要監視近接情報を運転者2が保有するスマートフォンに送信することで、当該スマートフォンの画面上に、例えば、図15に示すような要監視近接情報をイメージ化した情報を表示するものとしても構わない。図15の例では、各監視情報(d1,d2)に応じた発生回数と、予め要監視判定条件において定められた発生回数閾値との乖離に基づき、現時点における運転者2の運転状態の評価を、スコアとして表示している。この例では、要監視判定条件に規定された監視対象発生時間間隔内に対象となる監視情報(d1,d2)の発生回数が閾値に達した場合をスコア100として、現在の発生回数が閾値にどの程度近接しているかをスコア表示したものである。
【0129】
運転者2は、例えば停止中などにおいて、スマートフォン上に表示されたこの画像情報を確認することで、現時点における自己の運転状態を視覚的に認識することができる。
【0130】
〈2〉上記実施形態では、各監視装置(20,30)は、それぞれ各警告条件に達したことを検知した時点で、各警告信号(d1,d2)をサーバ60に送信するものとして説明した。このとき、各監視装置(20,30)は、サーバ60に対して、対象車両10の加速度や、前方障害物(車両、歩行者など)との間の近接状態に係る画像情報、運転者2の脈波に係る情報などの生データを併せて送信するものとしても構わない。更には、各警告条件に達しない場合においても、定期的に、各監視装置(20,30)が検知した情報をサーバ60に対して送信するものとしても構わない。
【0131】
これにより、サーバ60の記憶部62において、運転者2の平常時における走行状態や体調状態に係る情報が蓄積されるため、運転者2毎の特性を考慮した要監視判定条件を設定することが可能となり、運転者2の運転状態が危険性が高いかどうかの判断精度が更に高められる。
【0132】
〈3〉第一監視装置20及び/又は第二監視装置30は、それぞれ、2種類以上の装置を含んで構成されていても構わない。例えば、各監視装置(20,30)における無線通信を実現する手段(送信部24,34)を無線通信用の端末装置(例えばスマートフォンやパソコン)により構成してもよい。無論、その他の構成についても同様の置換・変更が可能である。
【0133】
〈4〉上述した各警告条件や要監視判定条件は、あくまで一例であり、本発明はこの内容に限定されない。例えば、対象車両10に搭載された第一監視装置20が速度センサを備えており、対象車両10の速度が極めて危険な高速で走行していることを検知すると、その旨の情報がサーバ60に送信され、サーバ60から直ちに管理者端末80に対して要監視通知情報が通知されるものとすることができる。また、別の例として、対象車両10において、当該対象車両10の連続走行時間を計測する時間計測装置が備えられており、所定時間以上連続して走行していることを検知すると、その旨の情報がサーバ60に送信され、サーバ60から直ちに管理者端末80に対して要監視通知情報が通知されるものとすることができる。
【0134】
〈5〉上記実施形態では、第一監視装置20及び第二監視装置30は、各警告条件に達したことを検知すると、対象車両10内において警告信号を出力するものとして説明した。しかし、本発明は、第一監視装置20及び第二監視装置30が、対象車両10内に警告信号を出力可能に構成されていればよく、必ずしも現に警告信号を出力しないものとしても構わない。
【0135】
〈6〉本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明のより良い理解のために詳細に説明したのであり、必ずしも説明の全ての構成を備えるものに限定されるものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0136】
1 : 管理支援システム
2 : 運転者
10 : 対象車両
11 : 位置情報検知装置
12 : 走行道路判定装置
20 : 第一監視装置
21 : 検知部
22 : 判定部
23 : 警告出力部
24 : 送信部
30 : 第二監視装置
31 : 検知部
32 : 判定部
33 : 警告出力部
34 : 送信部
60 : サーバ
61 : 受信部
62 : 記憶部
63 : 判定処理部
64 : 送信部
65 : 補正処理部
80 : 管理者端末
81 : 受信部
82 : 表示処理部
83 : 表示部
88 : メッセージ表示領域
89 : 操作領域
89a,89b : 操作ボタン
d1 : 第一監視情報
d2 : 第二監視情報
da : 要監視通知情報
de : 道路情報
dg : 位置情報
di : 識別情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13
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図15