特許第6684314号(P6684314)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6684314
(24)【登録日】2020年3月31日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】橋脚撤去工法
(51)【国際特許分類】
   E01D 19/02 20060101AFI20200413BHJP
   E01D 24/00 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
   E01D19/02
   E01D24/00
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-123907(P2018-123907)
(22)【出願日】2018年6月29日
(65)【公開番号】特開2020-2670(P2020-2670A)
(43)【公開日】2020年1月9日
【審査請求日】2018年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】503258867
【氏名又は名称】株式会社ナベカヰ
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡 邊 龍 一
【審査官】 苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−016940(JP,A)
【文献】 特開2007−085049(JP,A)
【文献】 特開2004−293260(JP,A)
【文献】 特開昭59−145805(JP,A)
【文献】 特開昭54−075828(JP,A)
【文献】 米国特許第9138817(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 24/00
E04G 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近接する線路又は道路と橋脚との間にクレーン吊り下ろしのハンガーネットを設置する段階(S1)と、
重機に装着したブレーカで、橋脚に切り欠きを形成する段階(S2)と、
重機で橋脚の頂部を掴み、衝撃吸収マウンドの上に引き倒す段階(S3)と、
重機で橋脚の周囲を掘り下げ、地中の基礎部分を露出させる段階(S4)と、
露出した基礎部分を破砕し撤去する段階(S5)と、
掘り下げ穴に埋め戻し土を投入する段階(S6)と、
埋め戻し土を重機で踏み固める段階(S7)と、
が備えられることを特徴とする橋脚撤去工法。
【請求項2】
前記切り欠きを形成する段階(S2)では、切り欠き部分の鉄筋が切断されずに残されることを特徴とする請求項1に記載の橋脚撤去工法。
【請求項3】
前記切り欠きを形成する段階(S2)では、切り欠きの内側支点における開口角度(θ)が90度より大きくされることを特徴とする請求項2に記載の橋脚撤去工法。
【請求項4】
前記基礎部分を破砕し撤去する段階(S5)が終了すると、掘り下げ穴に埋め戻し土を投入する段階(S6)と埋め戻し土を重機で踏み固める段階(S7)の終了を待たずに、次の橋脚のハンガーネットを設置する段階(S1)が開始されることを特徴とする請求項1に記載の橋脚撤去工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋脚撤去工法に係り、より詳しくは、工期の短縮が図れる橋脚撤去工法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、橋脚撤去方法が示される。これによれば、橋脚をワイヤソーで小ブロックに解体し、レール上に設置した門型クレーンで吊り上げ、移動先の場所まで搬送を行なっている。ワイヤーソーは、橋脚に巻き付けたワイヤを循環駆動するもので、水で冷却して切断する。一般には、ワイヤーソーは、低騒音、低振動とされるが、切断に時間がかかり、粉塵を水で流すので、排水処理設備も必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−265884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、安全で工期短縮が図れる橋脚撤去工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による橋脚撤去工法は、近接する線路又は道路と橋脚との間にクレーン吊り下ろしのハンガーネットを設置する段階(S1)と、重機に装着したブレーカで、橋脚に切り欠きを形成する段階(S2)と、重機で橋脚の頂部を掴み、衝撃吸収マウンドの上に引き倒す段階(S3)と、重機で橋脚の周囲を掘り下げ、地中の基礎部分を露出させる段階(S4)と、露出した基礎部分を破砕し撤去する段階(S5)と、掘り下げ穴に埋め戻し土を投入する段階(S6)と、埋め戻し土を重機で踏み固める段階(S7)と、が備えられることを特徴とする。
【0006】
切り欠きを形成する段階(S2)では、切り欠き部分の鉄筋が切断されずに残されることを特徴とする。
【0007】
前記切り欠きを形成する段階(S2)では、切り欠きの内側支点における開口角度(θ)が90度より大きくされることを特徴とする。
【0008】
基礎部分を破砕し撤去する段階(S5)が終了すると、掘り下げ穴に埋め戻し土を投入する段階(S6)と埋め戻し土を重機で踏み固める段階(S7)の終了を待たずに、次の橋脚のハンガーネットを設置する段階(S1)が開始されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明による橋脚撤去工法によれば、
(1)重機に装着したブレーカで、橋脚に切り欠きを形成する段階(S2)と、重機で橋脚の頂部を掴み、衝撃吸収マウンドの上に引き倒す段階(S3)を設けたので、ワイヤーソーによる切断に比較して、短い工期で橋脚の撤去があできる。
(2)橋脚の一側にクレーン吊り下ろしのハンガーネットを設置する段階(S1)を設けたので、近接の線路や道路へ解体部材が飛散することを防止できる。
(3)重機で橋脚の頂部を掴み、衝撃吸収マウンドの上に引き倒す段階(S3)を設けたので、衝撃をやわらげることができる。
(4)重機で橋脚の周囲を掘り下げる段階(S4)と、地中の基礎部分を撤去する段階(S5)と、掘り下げ穴に埋め戻し土を投入する段階(S6)と、埋め戻し土を重機で踏み固める段階(S7)と、を設けたので、整備された更地を提供できる。
【0010】
切り欠き部分の鉄筋を切断せずに残したので、切り欠きを設けても、橋脚上部が転倒しないようにできる。鉄筋を切断してしまうと、橋脚の切り残し代が大きくなり、橋脚の転倒には複数台の重機が必要になる。鉄筋を残したので、転倒時の衝撃が緩和できる。
【0011】
切り欠きの内側支点における開口角度(θ)を90度以上としたので、例えばθが90度なら、橋脚を完全に水平に転倒させることができる。θが小さい場合、重機では、切り欠きの形成も難しい。
【0012】
基礎部分を破砕し撤去する段階(S5)が終了すると、次の橋脚のハンガーネットを設置する段階(S1)を開始したので、段階(S6)と段階(S7)が、次の橋脚の段階(S1)と重なって、1基あたり工程が3日程度、短縮できる。橋脚が20基なら、約60日(=3日×20基)の短縮ができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明による橋脚撤去工法を示す現場の平面図である。
図2】切り込み具合いを示す橋脚の正面図である。
図3図2のb−b断面図である。
図4図1のa−a矢視図で、段階(S1)を示す説明図である。
図5図1のa−a矢視図で、段階(S2)を示す説明図である。
図6図4のb−b矢視図で、橋脚の切り欠き状況を示す図である。
図7図1のa−a矢視図で、段階(S3)を示す説明図である。
図8図1のa−a矢視図で、段階(S4)を示す説明図である。
図9図8の掘り下げ穴を示す平面図である。
図10図1のa−a矢視図で、段階(S5)を示す説明図である。
図11図1のa−a矢視図で、段階(S6)を示す説明図である。
図12図1のa−a矢視図で、段階(S7)を示す説明図である。
図13】複数の橋脚を撤去する場合の工程図である。
図14】本発明による橋脚撤去工法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付の図面を参照して、本発明による橋脚撤去工法をを詳細に説明する。
【実施例】
【0015】
図1は、本発明による橋脚撤去工法を示す現場の平面図である。現場は河川敷で、図1に示すように、電車の線路70が走っており、これに隣接して撤去すべき複数の橋脚1がある。橋脚1と橋脚の間隔は約60mである。なお、橋脚1に載置される橋本体は撤去されているとする。橋脚1は、長手方向が、前後方向を向いているので、左右方向に転倒させるものとする。重機は、橋脚1の地上部分の高さが約8.75mなので、橋脚1の上部を把持できるようにブーム長が31mのSK2200を用意した。SK2200は、バケット容量(重機の大きさを示す指標)が10mの重機である。橋脚1の側面に切り欠きを形成する重機は、ZX1000K(3.5m)で、アタッチメントには超大型のブレーカが装着される。解体のガラを重ダンプ60に積み込む重機は、SK210(0.7m)である。掘削用の重機は、SK500(1.9m)である。散水機も用意される。橋脚1の線路側には、クレーン61で、重量が2.6トンのハンガーネット62がカーテンのように吊り下げられる。クレーン61は、吊性能が6.5トンである。橋脚1の周囲にはバリケードが張り巡らされる。
【0016】
図2は、切り込み具合いを示す橋脚1の正面図である。橋脚1を前方から見た場合、正面が橋脚1の短手方向となる。橋脚1は、橋脚上部1aと、地中の橋脚下部1bからなる。地上部分の橋脚上部1aは、高さが約8.75mである。切り欠き2は、正面から見て左側に形成され、地盤面から2.9mの高さの位置に中心がある。橋脚1の幅(左右方向)は、長さが2.8mであり、切り欠き2は、斜線で示すように、2.1mの奥行きがある。開口角度θは、切り欠きの内側の角度で、本実施例では約90度に開口させた。開口角度θが90度以上であれば、橋脚上部1aが転倒した時、斜めではなく完全に横倒しできる。右側が切り残し部で、約70cmの幅を残している。橋脚1は鉄筋コンクリート製で、内部には点線で示すように、縦方向に延びる多数の鉄筋65が設けられている。鉄筋65の直径は22mmである。切り欠き2の形成時、鉄筋65は切断しないで残す。切り欠き2を形成した後、Pで示す位置に重機で力を加え、橋脚1を左方向に転倒させる。鉄筋65を残すことで、転倒時の衝撃も緩和できる。
【0017】
図2に示すように、転倒させる橋脚1の上部の重心は、切り残し部3の支点より左側にあるので、半時計回りの回転モーメントMaが働く。重心にかかる重量は約300トン(1トンは1000kg)と算定され、よって回転モーメントMaは、約15トン・mと算出される。許容曲げモーメントMrは、Mr=at×ft×jから算出できる。atは鉄筋の断面積、ftは鉄筋の許容引張応力、jは応力中心間距離である。詳細な算出は省略するが、許容曲げモーメントMrは、約36トン・mと算定される。Maは、Mrより小さいので、切り欠き2を形成しても転倒することがない。
【0018】
図3は、図2のb−b断面図である。切り欠き2の横幅は2.1mで、切り残し部の横幅は70cmである。橋脚上部1aの縦幅は10mで、前後方向に長い。P×4.477(m)=(36トン−15トン)×9.054×0.35から、Pが約15トンと算出できる。Pは、重機で加える。
【0019】
図4は、図1のa−a矢視図で、段階(S1)を示す説明図である。段階S1では、橋脚1の一側(後方側)にクレーン61吊り下ろしのハンガーネット62を設置する。ハンガーネット62は、縦横が6m×6mの寸法である。ハンガーネット62は、高さ10mから吊り下げられ、高さ4mの位置までを覆い、解体物の線路70側への飛散防止を行なう。ハンガーネット62は、下側の両側にワイヤで錘が取付けられ、錘は地上面に据え置かれる。
【0020】
図5は、図1のa−a矢視図で、段階(S2)を示す説明図である。段階S2では、重機ZX1000K(3.5m)に超大型のブレーカ63を取付け、橋脚1に切り欠き2を形成する。散水機で散水しながら行なう。橋脚上部1aの転倒に備えて、解体のガラで、衝撃吸収マウンド64を形成する。
【0021】
図6は、図4のb−b矢視図で、橋脚の切り欠き2を示す図である。切り欠き2は、地盤面から2.9mの位置に中心があり、縦横の寸法は、縦が5.6m、横が10mである。切り欠き2内には、多数の鉄筋65があるが、切断はせず、そのまま残している。ブレーカ63でコンクリートを破砕する際は、鉄筋65を前後方向に曲げ、ブレーカ63を内部に入りやすくしている。橋脚上部1aの高さは、約8.75mである。
【0022】
図7は、図1のa−a矢視図で、段階(S3)を示す説明図である。段階S3では、ブーム長が31mの重機SK2200(10m)のニブラで橋脚1の頂部を掴み、衝撃吸収マウンド64の上に引き倒す。
【0023】
図8は、図1のa−a矢視図で、段階(S4)を示す説明図である。段階S4では、重機SK500(1.9m)で、橋脚1の周囲を掘り下げ、地中の基礎部分を露出させる。掘り下げ深さは約5mとした。
【0024】
図9は、図8の掘り下げ穴4を示す平面図である。線路70の位置は、図9の後方(右側)にある。
【0025】
図10は、図1のa−a矢視図で、段階(S5)を示す説明図である。段階S5では、重機ZX1000K(3.5m)に超大型のブレーカ63を取付け、露出した基礎部分を破砕し撤去する。
【0026】
図11は、図1のa−a矢視図で、段階(S6)を示す説明図である。段階S6では、掘り下げ穴4に埋め戻し土を投入する。高架鉄道の線路70の位置は、図11の後方(右側)にある。
【0027】
図12は、図1のa−a矢視図で、段階(S7)を示す説明図である。段階S7では、埋め戻し土を重機で踏み固める。深さ5mより下の橋脚下部1bは、地中に残る。
【0028】
図13は、複数の橋脚を撤去する場合の工程図である。一般には、複数の橋脚の撤去を行なうので、解体グループをA班とB班に分け、2チームで撤去を進めると、工期が半分にできる。図13では、第1橋脚から第3橋脚をA班が撤去し、第4橋脚から第6橋脚をB班が撤去することを示す。この場合、超大型のブレーカ63を装着した重機ZX1000K(3.5m)は、段階S5が終了すると、段階S6と段階S7では使用しない。そこで、次の橋脚の撤去の段階S1を、段階S6と段階S7の終了を待たずに開始する。1つ前の橋脚の段階S6、S7と、次の橋脚の段階S1を並行して行なうことで、工程が3日程度短縮できる。
【0029】
図14は、本発明による橋脚撤去工法を示すフローチャートである。S1は、橋脚1の一側(後方側)にクレーン61吊り下ろしのハンガーネット62を設置する段階である。S2は、重機に超大型のブレーカを取付け、橋脚1に切り欠き2を形成する段階である。S3は、ブーム長が31mの重機で橋脚1の頂部を掴み、衝撃吸収マウンド64の上に引き倒す段階である。S4は、重機で橋脚1の周囲を掘り下げ、地中の基礎部分を露出させる段階である。S5は、重機のブレーカで、露出した基礎部分を破砕し撤去する段階である。S6は、掘り下げ穴4に埋め戻し土を投入する段階である。S7は、埋め戻し土を重機で踏み固める段階である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、工期の短い橋脚撤去工法として好適である。
【符号の説明】
【0031】
1 橋脚
1a 橋脚上部
1b 橋脚下部
2 切り欠き
3 切り残し部
4 掘り下げ穴
5 埋め戻し土
60 重ダンプ
61 クレーン
62 ハンガーネット
63 ブレーカ
64 衝撃吸収マウンド
65 鉄筋
70 線路
S1〜S7 橋脚撤去工法の各工程
θ 開口角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14