(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6684316
(24)【登録日】2020年3月31日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】ヨウ化脂肪酸エチルエステルの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 67/307 20060101AFI20200413BHJP
C07C 69/63 20060101ALI20200413BHJP
C11C 3/04 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
C07C67/307
C07C69/63
C11C3/04
【請求項の数】13
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-129357(P2018-129357)
(22)【出願日】2018年7月6日
(65)【公開番号】特開2019-23182(P2019-23182A)
(43)【公開日】2019年2月14日
【審査請求日】2018年7月6日
(31)【優先権主張番号】106123300
(32)【優先日】2017年7月12日
(33)【優先権主張国】TW
(31)【優先権主張番号】107117730
(32)【優先日】2018年5月24日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】595096431
【氏名又は名称】財團法人食品工業發展研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】林 志強
(72)【発明者】
【氏名】董 志宏
(72)【発明者】
【氏名】朱 燕華
(72)【発明者】
【氏名】蘇 鼎元
【審査官】
水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特公昭44−028489(JP,B1)
【文献】
米国特許第06124357(US,A)
【文献】
中国特許出願公開第101020634(CN,A)
【文献】
特開2004−083550(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第00198344(EP,A1)
【文献】
中国特許出願公開第101020633(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第103045373(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第105062693(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第101245007(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第101676255(CN,A)
【文献】
IODOCYCLOHEXANE,Organic Syntheses, Coll.Vol.4,1963年,pp.543-544
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 67/30−67/307
C07C 69/62−69/657
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪酸エチルエステル及びトリグリセリドからなる群から選ばれた脂肪酸エステルをリン酸とプロトン付加反応させて、プロトン化された脂肪酸エステルを生成するステップaと、
前記ステップaの後、プロトン化された脂肪酸エステルをヨウ化アルカリ金属とヨウ化反応させて、ヨウ化脂肪酸エステルを得るステップbと、を含む、ヨウ化脂肪酸エチルエステルの製造方法。
【請求項2】
前記ステップaにおける脂肪酸エステルは、脂肪酸エチルエステルであり、該ヨウ化脂肪酸エステルは、ヨウ化脂肪酸エチルエステルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップaにおける脂肪酸エステルは、トリグリセリドであり、前記ステップbにおけるヨウ化脂肪酸エステルは、ヨウ化トリグリセリドであり、前記ステップbの後、ヨウ化トリグリセリドをエチルエステル化させて、ヨウ化脂肪酸エチルエステルを生成するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップaにおけるプロトン付加反応は、25℃〜80℃の温度で実施される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ステップaにおけるプロトン付加反応は、25分〜35分間実施される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップbにおけるヨウ化反応は、25℃〜80℃の温度で実施される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ステップbにおけるヨウ化反応は、3時間〜12時間実施される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
トリグリセリドは、植物油から由来する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
脂肪酸エチルエステルは、植物油とエタノールとを塩基の存在下で反応させることにより製造される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ヨウ化アルカリ金属は、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれた、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
脂肪酸エステルのリン酸に対するモル比は、0.02〜0.1の範囲内にある、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
脂肪酸エステルのヨウ化アルカリ金属に対するモル比は、0.2〜0.8の範囲内にある、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
プロトン付加反応は、攪拌しながら実施される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヨウ化脂肪酸エチルエステルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フランス企業ゲルベが製造販売しているリピオドールは、放射線検査における内部解剖構造の輪郭を描き且つ可視化するために、放射線不透過性造影剤として体内に注入されるヨウ化ケシ油の脂肪酸エチルエステルである。リピオドールは、例えば、リンパ管造影、子宮卵管造影、及び胃と肝臓との病変を診断するための造影剤として使用されている。
【0003】
近年、がんや脳卒中などの疾患の発生率が高まっているため、診断目的で放射線検査に使用されるリピオドールなどの放射線不透過性造影剤の需要が高まっている。しかしながら、リピオドールは比較的高価である。従って、当業者は、安価で入手しやすい食用油から合成するヨウ化脂肪酸エチルエステルを開発して、リピオドールの代用品として使用することが望ましい。
【0004】
中国特許第103045373B号明細書には、植物油とヨウ化水素ガスとを付加反応させてヨウ化植物油を生成させるヨウ化植物油エチルエステルの製造方法が開示されている。該付加反応は、25℃の温度で16時間〜96時間の範囲の期間実施される。
【0005】
中国特許出願公開第101676255A号明細書は、ヨウ化植物性脂肪酸及びそのエステルを合成するための合成方法を開示している。該合成方法においては、鹸化及び酸性化反応により植物油から調製された植物性脂肪酸をヨウ化水素酸とヨウ化反応させて、ヨウ化植物性脂肪酸を得る。該ヨウ化反応は、0℃〜50℃の範囲の温度で、1時間〜96時間の範囲の期間実施される。
【0006】
前記先行技術に開示された方法は両方とも比較的反応速度が遅く、従って、時間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】中国特許第103045373B号明細書
【特許文献2】中国特許出願公開第101676255A号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
従って、本開示の目的は、反応速度が向上するヨウ化脂肪酸エチルエステルの製造方法の提供である。
【0009】
本開示により、脂肪酸エチルエステル及びトリグリセリドからなる群から選ばれた脂肪酸エステルをリン酸とプロトン付加反応させて、プロトン化された脂肪酸エステルを生成するステップaと、
プロトン化された脂肪酸エステルをヨウ化アルカリ金属とヨウ化反応させて、ヨウ化脂肪酸エステルを得るステップbと、を含む、ヨウ化脂肪酸エチルエステルの製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照して、以下の実施形態の詳細に説明することにより明白になる。
【
図1】実施例1〜5に示されるように、本開示によるヨウ化脂肪酸エチルエステルの製造方法の第1の実施形態のフロー図である。
【
図2】実施例6に示されるように、本開示によるヨウ化脂肪酸エチルエステルの製造方法の第2の実施形態のフロー図である。
【
図3】市販のリピオドール及び実施例3のヨウ化脂肪酸エチルエステルのX線写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1を参照すると、本開示によるヨウ化脂肪酸エチルエステルの製造方法の第1の実施形態は、
脂肪酸エステルをリン酸とプロトン付加反応させて、プロトン化された脂肪酸エステルを生成するステップAと、
プロトン化された脂肪酸エステルをヨウ化アルカリ金属とヨウ化反応させて、ヨウ化脂肪酸エステルを得るステップBと、
残余のヨウ素イオンを除去するステップCとを備える。
【0012】
特定の実施形態において、ステップAで使用される脂肪酸エチルエステルは、植物油及びエタノールを塩基の存在下で反応させることにより製造される。反応に適した植物油の例は、これらに限定されないが、ひまわり油、大豆油、落花生油、ゴマ油、ヒマシ油、綿実油、菜種油、ベニバナ油、アマニ油、トウモロコシ油、ケシ油、クルミ油、ニガキモドキ油(鴉胆子油)、キャノーラ油、パーム油、オリーブ油、ヤシ油、ぬか油、ツバキ油、小麦胚芽油、グレープシード油、及びそれらの組み合わせを含む。具体的には、ステップAで使用される脂肪酸エチルエステルは、植物油由来のトリグリセリドをエチルエステル化することによって得ることができる。
【0013】
特定の実施形態において、ステップAには、脂肪酸エステルのリン酸に対するモル比が0.02〜0.1の範囲内にある。プロトン付加反応は、攪拌しながら25℃〜80℃の温度で25分〜35分間実施される。
【0014】
ステップBに使用するヨウ化アルカリ金属の例は、これらに限定されないが、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、及びそれらの組み合わせを含む。ステップBにおけるヨウ化反応は、25℃〜80℃の温度で3時間〜12時間実施される。
【0015】
例示的な実施形態において、脂肪酸エステルのヨウ化アルカリ金属に対するモル比は、0.2〜0.8の範囲内にある。
【0016】
例示的な実施形態において、残余のリン酸及び残余のヨウ化アルカリ金属を除去するために、ステップBの後、精製工程を実施する。
【0017】
図2を参照すると、本開示によるヨウ化脂肪酸エチルエステルの製造方法の第2の実施形態は、
トリグリセリドをリン酸とプロトン付加反応させて、プロトン化されたトリグリセリドを生成するステップA’と、
プロトン化されたトリグリセリドをヨウ化アルカリ金属とヨウ化反応させて、ヨウ化トリグリセリドを得るステップB’と、
ヨウ化トリグリセリドをエチルエステル化させて、ヨウ化脂肪酸エチルエステルを形成するステップB’'と、
残余のヨウ素イオンを除去するステップC’とを含む。
【0018】
特定の実施形態において、ステップA’に使用するトリグリセリドは、第1の実施形態において上述した植物油から由来する。
【0019】
特定の実施形態において、ステップA’では、トリグリセリドのリン酸に対するモル比が0.02〜0.1の範囲内にある。プロトン付加反応は、攪拌しながら25℃〜80℃の温度で25分〜35分間実施される。
【0020】
ステップB’に使用するヨウ化アルカリ金属の例は、これらに限定されないが、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、及びそれらの組み合わせを含む。ステップB’におけるヨウ化反応は、25℃〜80℃の温度で3時間〜12時間実施される。
【0021】
特定の実施形態において、トリグリセリドのヨウ化アルカリ金属に対するモル比は0.2〜0.8の範囲内にある。
【0022】
ステップB’'におけるエチルエステル化は、塩基の存在下でエタノールを使用することにより実施される。
【0023】
特定の実施形態において、残余のリン酸及び残余のヨウ化アルカリ金属を除去するために、ステップB’’の後、精製工程を実施する。
【0024】
本開示の方法で製造されたヨウ化脂肪酸エチルエステルは、ヨウ化脂肪酸エチルエステルの総重量に対して、30wt%〜45wt%のヨウ素含有量を有する。
【0025】
以下、本開示の実施例について説明する。これらの実施例は、例示的かつ説明的なものであり、且つ、本開示を限定するものと解釈されるべきではないことを理解されたい。
【0026】
製造例1:脂肪酸エチルエステルの製造
精製ひまわり油(100g、台湾糖業会社により市販されているもの)と水酸化ナトリウム(4g)とをエタノール(100ml、95wt%)に混合して混合物を形成し、60℃で1時間攪拌しながら反応して粗生成物を得た。
【0027】
粗生成物にn−ヘキサン(200ml)及び蒸留水(100ml)を添加して、水層を形成した。該水層を抽出により除去してn−ヘキサン層を得た。蒸留水で該n−ヘキサン層を洗って、残余の水酸化ナトリウム及びグリセロールを除去し、そして、減圧濃縮によりn−ヘキサンを除去して脂肪酸エチルエステルを得た。
【0028】
実施例1〜5:脂肪酸エチルエステルによるヨウ化脂肪酸エチルエステルの製造
表1に示されている温度で、製造例1の脂肪酸エチルエステル(10g)とリン酸水溶液(150ml、86.4wt%、J.T.Baker社により市販されているもの)とを30分間攪拌して混合して、プロトン付加反応を行うことにより、反応溶液を得た。脂肪酸エステルのリン酸水溶液におけるリン酸に対するモル比は0.02である。
【0030】
該反応溶液に、脂肪酸エステルのヨウ化カリウムに対するモル比が0.53になるヨウ化カリウム(15g)を添加して、表2に示されている反応条件でヨウ化反応を行った後、n−ヘキサン(20ml)を添加して水層を形成した。残余のリン酸を含有する該水層を抽出により除去して、n−ヘキサン層を得た。蒸留水で該n−ヘキサン層を洗って、n−ヘキサン層における残余のリン酸及びヨウ化カリウムを除去し、そして、減圧濃縮によりn−ヘキサンを除去して粗生成物を得た。
【0032】
該粗生成物にn−ヘキサン(30ml)、水酸化ナトリウム(2g)及びエタノール(20ml、95wt%)を添加して、25℃で5分間攪拌しながら反応して、蒸留水(30ml)を更に添加して水層を形成した。該水層を抽出により除去してn−ヘキサン層を得た。チオ硫酸ナトリウム水溶液(20ml、25wt%)を該n−ヘキサン層に添加し、そして、25℃で3時間攪拌しながら反応して水層を形成した。該水層を抽出により除去してn−ヘキサン層を得た。蒸留水で該n−ヘキサン層を洗って、n−ヘキサン層における残余の塩を除去し、そして、減圧濃縮によりn−ヘキサンを除去してヨウ化脂肪酸エチルエステルを得た。
【0033】
実施例6:植物油(トリグリセリドのソース)によるヨウ化脂肪酸エチルエステルの製造
ひまわり油(10g、トリグリセリド含有)とリン酸水溶液(50ml、86.4wt%)とを80℃で30分間攪拌することにより混合してプロトン付加反応を行い、これにより反応溶液を得た。ひまわり油のリン酸水溶液におけるリン酸に対するモル比は0.06である。
【0034】
該反応溶液に、ひまわり油のヨウ化カリウムに対するモル比が0.79になるヨウ化カリウム(10g)を添加し、そして、80℃で3時間ヨウ化反応させた後、n−ヘキサン(20ml)を添加して水層を形成した。抽出により残余のリン酸を含有する該水層を除去して、n−ヘキサン層を得た。蒸留水で該n−ヘキサン層を洗って、n−ヘキサン層における残余のリン酸及びヨウ化カリウムを除去し、そして、減圧濃縮によりn−ヘキサンを除去してヨウ化トリグリセリド含有のヨウ化生成物を得た。
【0035】
該ヨウ化生成物(10g)に水酸化ナトリウム(0.4g)及びエタノール(100ml、95wt%)を添加し、そして、60℃で1時間攪拌しながら反応した後、n−ヘキサン(20ml)及び蒸留水(10ml)を添加して水層を形成した。該水層を抽出により除去してn−ヘキサン層を得た。蒸留水で該n−ヘキサン層を洗って、n−ヘキサン層における残余の水酸化ナトリウム及びグリセロールを除去し、そして、減圧濃縮によりn−ヘキサンを除去して粗ヨウ化脂肪酸エチルエステルを得た。
【0036】
該粗ヨウ化脂肪酸エチルエステルにn−ヘキサン(30ml)、水酸化ナトリウム(20g)及びエタノール(20ml、95wt%)を添加し、25℃で5分間攪拌しながら反応した後、蒸留水(30ml)を更に添加して水層を形成した。該水層を抽出により除去してn−ヘキサン層を得た。チオ硫酸ナトリウム水溶液(20ml、25wt%)を該n−ヘキサン層に添加し、そして、25℃で3時間攪拌しながら反応して水層を形成した。該水層を抽出により除去してn−ヘキサン層を得た。蒸留水で該n−ヘキサン層を洗って、n−ヘキサン層における残余の塩を除去し、そして、減圧濃縮によりn−ヘキサンを除去してヨウ化脂肪酸エチルエステルを得た。
【0037】
実施例7:脂肪酸エチルエステルによるヨウ化脂肪酸エチルエステルの製造
実施例3に使用したヨウ化カリウムをヨウ化ナトリウム(24g)に変えて、脂肪酸エチルエステルのヨウ化ナトリウムに対するモル比が0.42であること以外、実施例3の手順を繰り返した。
【0038】
比較例1
実施例1に使用したヨウ化カリウムをヨウ化水素酸水溶液(15g、57wt%)に変えること以外、実施例1の手順を繰り返した。
【0039】
比較例2〜4
製造例1の脂肪酸エチルエステル(10g)にヨウ化水素酸水溶液(10g、57wt%)を添加し、そして、表3に示されている温度で12時間攪拌しながらヨウ素化反応を行い、そして、n−ヘキサン(20ml)を添加して水層を形成した。該水層を抽出により除去して、n−ヘキサン層を得た。蒸留水で該n−ヘキサン層を洗って、n−ヘキサン層における残余のヨウ化水素酸を除去し、そして、減圧濃縮によりn−ヘキサンを除去してヨウ化脂肪酸エチルエステルの粗生成物を得た。
【0041】
該粗生成物にn−ヘキサン(30ml)、水酸化ナトリウム(2g)及びエタノール(20ml、95wt%)を添加して、25℃で5分間攪拌しながら反応して、蒸留水(30ml)を更に添加して水層を形成した。該水層を抽出により除去してn−ヘキサン層を得た。チオ硫酸ナトリウム水溶液(20ml、25wt%)を該n−ヘキサン層に添加し、そして、25℃で3時間攪拌しながら反応させて水層を形成した。該水層を抽出により除去してn−ヘキサン層を得た。蒸留水で該n−ヘキサン層を洗って、n−ヘキサン層における残余の塩を除去し、そして、減圧濃縮によりn−ヘキサンを除去してヨウ化脂肪酸エチルエステルを得た。
【0042】
分析方法及び測定方法:
1.X線密度及びX線写真
リピオドール及び各実施例1〜7及び比較例1〜4で得たヨウ化脂肪酸エチルエステルのX線写真は、台湾国立成功大学病院(National Cheng Kung University Hospital, Taiwan)で実施された。実施例1〜7及び比較例1〜4で得たヨウ化脂肪酸エチルエステルのX線密度は、米国国立衛生研究所(the National Institutes of Health, USA)によって開発されたImageJソフトウェアを使用して定量化された。
【0043】
2.ヨウ素含有量
リピオドール及び各実施例1〜7及び比較例1〜4で得たヨウ化脂肪酸エチルエステルのヨウ素含有量は、中国薬局方(Chinese Pharmacopoeia)(2015版):1464−1465に記載されているヨウ素含有量測定方法によって測定された。
【0044】
3.遊離ヨウ素含有量
リピオドール及び各実施例1〜7及び比較例1〜4で得たヨウ化脂肪酸エチルエステルの遊離ヨウ素含有量は、中国薬局方(2015版):1464−1465に記載されている遊離ヨウ素含有量測定方法によって測定された。
【0045】
4.粘度
リピオドール及び各実施例1〜7及び比較例1〜4で得たヨウ化脂肪酸エチルエステルの粘度は、Thermo Scientific HAAKE RheoStress RS 1500レオメーターを用いて、100 1/sの剪断速度及び20℃の温度で測定された。
【0046】
リピオドール及び実施例3、6、7のヨウ化脂肪酸エチルエステルのX線密度、ヨウ素含有量、遊離ヨウ素含有量及び粘度は、表4に示されている。実施例3のヨウ化脂肪酸エチルエステル及びリピオドールのX線写真は、
図3に示されている。
【0048】
表4及び
図3に示されるように、実施例3、6、7のヨウ化脂肪酸エチルエステルは、リピオドールと同様の物理化学的な性質を有する。
【0049】
なお、実施例3、6、7のヨウ化脂肪酸エチルエステルは、80℃の温度で3時間という比較的短い時間で実施されたヨウ素化ヨウ化反応により得られたことに注意されたい。
【0050】
実施例1及び比較例1のヨウ化脂肪酸エチルエステルのヨウ素含有量は、表5に示されている。
【0052】
表5に示されるように、実施例1のヨウ化脂肪酸エチルエステルのヨウ素含有量は、実施例1で使用したヨウ化カリウムをヨウ化水素酸水溶液に変えること以外は実施例1に類似する反応条件でヨウ化反応が実施された比較例1のヨウ化脂肪酸エチルエステルのヨウ素含有量より著しく高い。従って、本発明によるヨウ化脂肪酸エチルエステルの製造方法は、比較的高い反応速度を有することが実証されている。
【0053】
実施例1〜3のヨウ化脂肪酸エチルエステルのヨウ素含有量及び実施例1〜3のヨウ化脂肪酸エチルエステルのヨウ化期間は、表6に示されている。
【0055】
表6に示されるように、ヨウ化期間が長いほど、ヨウ化脂肪酸エチルエステルのヨウ素含有量が高い。
【0056】
実施例3〜5のヨウ化脂肪酸エチルエステルのヨウ素含有量及び実施例3〜5のヨウ化脂肪酸エチルエステルのヨウ化温度は、表7に示されている。
【0058】
表7に示されるように、ヨウ化温度が高いほど、ヨウ化脂肪酸エチルエステルのヨウ素含有量が高い。
【0059】
実施例1のヨウ化脂肪酸エチルエステル及び比較例2〜4のヨウ化脂肪酸エチルエステルのヨウ素含有量並びに実施例1及び比較例2〜4のヨウ化温度は、表8に示されている。
【0061】
表8に示されるように、比較例2〜4のヨウ化脂肪酸エチルエステルのヨウ素含有量は、実施例1のヨウ化脂肪酸エチルエステルのヨウ素含有量より著しく低い。具体的には、実施例1のヨウ化脂肪酸エチルエステルのヨウ素含有量は、実施例1で使用したヨウ化カリウムをヨウ化水素酸水溶液に変えること及び比較例4ではヨウ化反応の前にプロトン化反応を実施しないこと以外、実施例1に類似する反応条件でヨウ素化ヨウ化反応が実施された比較例2〜4のヨウ化脂肪酸エチルエステルのヨウ素含有量より著しく高い。
【0062】
意外にも、酢酸やp−トルエンスルホン酸のような他の一塩基酸、シュウ酸のような二塩基酸、及びクエン酸のような三塩基酸が使用される場合、プロトン化反応を実施することができなくなる。具体的には、これらのプロトン酸を用いると、ヨウ化アルカリ金属のヨウ素イオンがこれらのプロトン酸により酸化されてヨウ素になり、その後のヨウ化反応が実施できなくなる。
【0063】
上述の内容によれば、本開示のヨウ化脂肪酸エチルエステルの製造方法において、先ず、水素イオンの供給源とするリン酸で脂肪酸エステル(即ち、脂肪酸エチルエステル又はトリグリセリド)をプロトン化反応させて、プロトン化された脂肪酸エステルを生成し、そして、ヨウ素イオンの供給源とするヨウ化アルカリ金属でプロトン化脂肪酸エステルをヨウ素化反応させることにより、製造の反応速度が強化されている。
【0064】
これに対し、上記従来技術のヨウ化脂肪酸エチルエステルの製造方法においては、水素イオン及びヨウ素イオンの両方の供給源とするヨウ化水素ガスまたはヨウ化水素酸を用いてヨウ化反応を実施するので、反応速度が不十分である。
【0065】
上記においては、説明のため、本発明の全体的な理解を促すべく多くの具体的な詳細が示された。しかしながら、当業者であれば、一またはそれ以上の他の実施形態が具体的な詳細を示さなくとも実施され得ることが明らかである。また、本明細書における「一つの実施形態」「一実施形態」を示す説明において、序数などの表示を伴う説明は全て、特定の態様、構造、特徴を有する本発明の具体的な実施に含まれ得るものであることと理解されたい。更に、本説明において、時には複数の変化例が一つの実施形態、図面、またはこれらの説明に組み込まれているが、これは本説明を合理化させるためのもので、また、本発明の多面性が理解されることを目的としたものである。
【0066】
以上、本発明の好ましい実施形態及び変化例を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、最も広い解釈の精神および範囲内に含まれる様々な構成として、全ての修飾および均等な構成を包含するものとする。