(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6684318
(24)【登録日】2020年3月31日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】回転電気機械の冷却構造
(51)【国際特許分類】
H02K 5/20 20060101AFI20200413BHJP
H02K 9/19 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
H02K5/20
H02K9/19 A
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-134903(P2018-134903)
(22)【出願日】2018年7月18日
(65)【公開番号】特開2020-14320(P2020-14320A)
(43)【公開日】2020年1月23日
【審査請求日】2018年7月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】514150181
【氏名又は名称】大銀微系統股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】HIWIN MIKROSYSTEM CORP.
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】黎振安
(72)【発明者】
【氏名】蕭瑞濱
(72)【発明者】
【氏名】鄭立巍
【審査官】
安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−042661(JP,A)
【文献】
中国実用新案第206060428(CN,U)
【文献】
特開2015−211562(JP,A)
【文献】
特表2008−527955(JP,A)
【文献】
特開2013−141334(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/20
H02K 9/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状周面を備え、前記環状周面は第一半環状周面及び第二半環状周面を含む、スリーブと、
前記スリーブの前記環状周面上に互いに平行に設けられることで、複数の主通路が形成される、複数の主分流壁体とを含み、且つ各前記主分流壁体は主開口を含み、そのうち2つの隣り合う前記主分流壁体の2つの前記主開口は、それぞれ前記第一半環状周面と前記第二半環状周面上に配置され、
さらに前記スリーブ上に套設されるケースを含み、そのうちケースは入水孔及び出水孔を含み、前記入水孔及び前記出水孔はそれぞれ前記ケースの両端に設け、且つそれぞれ両端の主通路に対応させ、
前記入水孔に対応する前記主通路の幅は前記出水孔に対応する前記主通路の幅よりも大きいことを特徴とする、回転電気機械の冷却構造。
【請求項2】
前記入水孔に対応する前記主通路の幅と前記出水孔に対応する前記主通路の幅の比率は2〜3倍の間であることを特徴とする、請求項1に記載の回転電気機械の冷却構造。
【請求項3】
各前記主通路上に互いに平行に設けられることで、複数の副通路が形成される、複数の副分流壁体をさらに含み、そのうち各前記副分流壁体は、2つの副開口を含み、且つ2つの前記副開口は前記第一半環状周面及び前記第二半環状周面上にそれぞれ配置されることを特徴とする、請求項1に記載の回転電気機械の冷却構造。
【請求項4】
前記入水孔に対応する前記主通路の前記副通路の数は前記出水孔に対応する前記主通路の前記副通路の数よりも多いことを特徴とする、請求項3に記載の回転電気機械の冷却構造。
【請求項5】
前記入水孔に対応する前記主通路の前記副通路の数と前記出水孔に対応する前記主通路の前記副通路の数の比率は2〜3倍の間であることを特徴とする、請求項4に記載の回転電気機械の冷却構造。
【請求項6】
前記主分流壁体及び前記副分流壁体は台形状外形を呈することを特徴とする、請求項3に記載の回転電気機械の冷却構造。
【請求項7】
各前記台形状外形の前記主分流壁体及び前記副分流壁体は、頂部及び底部を含み、前記頂部は第一寸法を有し、前記底部は第二寸法D2を有し、そのうち前記第一寸法は前記第二寸法よりも小さいことを特徴とする、請求項6に記載の回転電気機械の冷却構造。
【請求項8】
前記第一寸法と前記第二寸法の比率は0.2〜0.8の間であることを特徴とする、請求項7に記載の回転電気機械の冷却構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転電気機械に係り、特に、回転電気機械の冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
工業における自動化技術の急速な発展に伴い、様々な複合加工機で回転電気機械が広く使用され、高速回転による加工が行われている。回転電気機械は、ステータコアの鉄損やコイルの銅損によって熱が発生し、回転電気機械を工作機械の主軸を駆動に用いた場合には、高温によって熱変形を起こし、加工精度に重大な影響をもたらす。このため、モータハウジングには冷却通路が設計されており、現在の回転電気機械の放熱設計では、冷却液を通してハウジングと直接接触させて冷却するものが主流となっている。
【0003】
従来の冷却通路は、互いに交差せず平行な複数の列が螺旋状に通路を形成するよう設計されており、長軸の両端部にはそれぞれ、入水口と放水口が設けられ、冷却媒体が入水口から流入し、螺旋状の通路を通過して放水口から流出して熱を奪うことで、放熱・冷却するという目的を達成している。しかし、このような螺旋状の通路設計は連続式の通路に属し、冷却経路の距離が長いため、圧力損失が増加することで冷却媒体の流速が入水口から放水口に向かって徐々に減少し、冷却効率の低減を招いてしまう。
【0004】
このため、通路内の圧力損失が低減し、且つ冷却効率が向上するような冷却通路を如何に設計するかが、回転電気機械の冷却設計における大きな課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このため、本発明は、環状周面上に互い違いに配置された主分流壁体の主開口により、冷却媒体に互い違い式の経路による流れを提供し、これにより回転電気機械の放熱効率を向上させるという回転電気機械の冷却構造を提供することを主な目的としている。また、主通路の入水孔から出水孔までの通路幅が徐々に減少する設計、及び各主通路の入水孔から出水孔における副通路数が相違する設計により、出口部の放熱効果を強化して、回転電気機械全体の放熱をより均一にさせている。さらに、主分流壁体及び副分流壁体の台形状外形構造によって放熱面積を拡大することにより、全体の放熱効果を強化させている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明が提供する回転電気機械の冷却構造は、スリーブ及び複数の主分流壁体を含み、そのうちスリーブは環状周面を備え、且つ環状周面は第一半環状周面及び第二半環状周面を含む。主分流壁体は、スリーブの環状周面上に互いに平行に設けられ、それにより複数の主通路が形成される。各主分流壁体は主開口を含み、そのうち2つの隣り合う主分流壁体の2つの主開口は、それぞれ第一半環状周面と第二半環状周面上に配置される。
【0007】
本発明の1つの実施例では、回転電気機械の冷却構造は、スリーブ上に套設されるケースをさらに含み、そのうちケースは入水孔及び出水孔を含み、入水孔及び出水孔はそれぞれケースの両端に設け、且つそれぞれ両端の主通路に対応させる。
【0008】
本発明の1つの実施例では、入水孔に対応する主通路の幅は、出水孔に対応する主通路の幅よりも大きく、そのうち入水孔に対応する主通路の幅と出水孔に対応する主通路の幅の比率は2〜3倍の間である。
【0009】
本発明の1つの実施例では、回転電気機械の冷却構造は、複数の副分流壁体をさらに含み、各主通路上に互いに平行に設けられることで、複数の副通路が形成され、そのうち各副分流壁体は、第一半環状周面及び第二半環状周面上にそれぞれ配置される2つの副開口を含む。
【0010】
本発明の1つの実施例では、入水孔に対応する主通路の副通路の数は、出水孔に対応する主通路の副通路の数よりも多く、そのうち入水孔に対応する主通路の副通路の数と出水孔に対応する主通路の副通路の数の比率は2〜3倍の間である。
【0011】
本発明の1つの実施例では、主分流壁体及び副分流壁体は、台形状外形を呈しており、そのうち各台形状外形の主分流壁体及び副分流壁体は、第一寸法を有する頂部及び第二寸法を有する底部を含み、且つ第一寸法は第二寸法よりも小さい。
【0012】
本発明の1つの実施例では、第一寸法と第二寸法の比率は0.2〜0.8の間である。
【発明の効果】
【0013】
要約すると、本発明の回転電気機械の冷却構造は、環状周面上に互い違いに配置された主分流壁体の主開口により、冷却媒体に互い違い式の経路による流れを提供し、これにより回転電気機械の放熱効率を向上させている。また、主通路の入水孔から出水孔までの通路幅が徐々に減少する設計、及び各主通路の入水孔から出水孔における副通路数が相違する設計により、出口部の放熱効果を強化して、回転電気機械全体の放熱をより均一にさせている。さらに、主分流壁体及び副分流壁体の台形状外形構造によって放熱面積を拡大することにより、全体の放熱効果を強化させている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施例の回転電気機械の冷却構造の分解図である。
【
図2】本発明の第1実施例の回転電気機械の冷却構造中の第一幅と第二幅の比率及び圧力降下と温度の関係を示すグラフである。
【
図3】本発明の第2実施例の回転電気機械の冷却構造の斜視図である。
【
図4】本発明の第2実施例の回転電気機械の冷却構造の正面図である。
【
図5】本発明の第3実施例の回転電気機械の冷却構造の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0015】
最初に、
図1を参照して、本発明の第1実施例が提供する回転電気機械の冷却構造は、スリーブ10及び複数の主分流壁体20を含む。スリーブ10は環状周面11を備え、且つ環状周面11は第一半環状周面12及び第二半環状周面13を含み、そのうち第一半環状周面12及び第二半環状周面13の配置は対称を呈している。主分流壁体20は、スリーブ10の環状周面11上に互いに平行に設けられる、それにより複数の主通路21が形成される。
【0016】
本実施例では、回転電気機械の冷却構造はさらにケースを含み、スリーブ10上に套設され、そのうちケースは入水孔31及び出水孔32を含み、入水孔31及び出水孔32はそれぞれケースの両端に設け、且つそれぞれ両端の主通路21に対応させる。
【0017】
各主分流壁体20は主開口22を含み、そのうち2つの隣り合う主分流壁体の2つの主開口22は、それぞれ第一半環状周面12と第二半環状周面13上に配置して、主分流壁体20の主開口22を環状周面11上で互い違いに配置させる。また、入水孔31に対応する主通路21は第一幅W1を有し、出水孔32に対応する主通路21は第二幅W2を有し、そのうち第一幅W1は第二幅W2よりも大きい。さらに説明すると、入水孔31に対応する主通路21に隣接する別の主通路21は第一幅W1よりも若干小さな通路幅を有しており、出水孔32に対応する主通路21に隣接する別の主通路21は第二幅W2よりも若干大きな通路幅を有している。すなわち、各主通路21の通路幅は、入水孔31から出水孔32の方向へ徐々に減少する設計となっているが、実際の通路幅は実際のスリーブ10の全長に応じて調製し、
図2の第一幅W1と第二幅W2の比率及び圧力降下と温度の関係を示すグラフを参照すると、第一幅W1と第二幅W2の比率が2〜3倍の間である場合には、全体の温度を効果的に低下させ、且つ顕著な圧力降下が得られているため、第一幅W1と第二幅W2の比率は2〜3倍の間とするのが設計原則である。
【0018】
要約すると、本発明の第1実施例が提供する回転電気機械の冷却構造は、主分流壁体20の主開口22が環状周面11上に互い違いに配置されることによって冷却媒体に互い違い式の経路による流れを提供するものであり、従来技術における連続式の通路設計と比べてより優れた放熱効率を有する。また、主通路21の通路幅が徐々に減少する設計が入口部の流速を遅くして熱伝達係数を低くさせる一方で、出口部の流速を速めて熱伝達係数を高くさせており、それにより出口部の放熱効果が強化されて、回転電気機械全体の放熱がより均一となる。
【実施例2】
【0019】
図3及び
図4を参照して、本発明の第2実施例が提供する回転電気機械の冷却構造は、第1実施例が提供する回転電気機械の冷却構造と比較すると、さらに複数の副分流壁体40を含み、各主通路21上に互いに平行に設けられることで、複数の副通路41が形成される。各副分流壁体40は、第一半環状周面及び第二半環状周面上にそれぞれ配置される2つの副開口42を含む。また、入水孔31に近接する副通路41の数は出水孔32に近接する副通路41の数よりも多く、且つ比率は2〜3倍の間である。
【0020】
このため、本発明の第2実施例が提供する回転電気機械の冷却構造は、各主通路21中に複数の副通路41を並列に配置し、且つ入水孔31に近接する副通路41の数が出水孔32に近接する副通路41の数よりも多くなるよう設計することによって、入水孔31に近接する低温区域においては冷却媒体の流速を低下させ、一方で出水孔32に近接する高温区域においては冷却媒体の流速を上昇させて、出口部の放熱効果を強化し、モータ全体の放熱をより均一にさせることができる。
【実施例3】
【0021】
図5を参照して、本発明の第3実施例が提供する回転電気機械の冷却構造と第1実施例が提供する回転電気機械の冷却構造との違いは、主分流壁体20が台形状外形を呈することにある。主分流壁体20は、頂部23及び底部24を含み、そのうち頂部23は第一寸法D1を有し、且つ底部24は第二寸法D2を有する。第一寸法D1は第二寸法D2よりも小さく、且つ第一寸法D1と第二寸法D2の比率は0.2〜0.8の間である。なお、本実施例は主分流壁体20を例として説明しているが、この構造は第2実施例の副分流壁体40にも適用可能であり、主分流壁体20と副分流壁体40のどちらも台形状外形の分流壁構造を備えるようにしてもよい。
【0022】
本発明の第3実施例が提供する回転電気機械の冷却構造は、台形状外形の分流壁構造によって通路の総面積を拡大することで放熱面積を拡大し、それによって全体の放熱効果を強化させている。
【0023】
上記の各実施例の通路構造設計に関する説明により、本発明の回転電気機械の冷却構造が達成することのできる主要な効果は以下のように要約される。
【0024】
(1)従来技術における連続式の通路設計は、冷却経路の距離が長いため、圧力損失が増加することで冷却効率の低減を招いてしまうのに対し、本発明の回転電気機械の冷却構造は、主分流壁体20の主開口22が環状周面11上に互い違いに配置されることによって冷却媒体に互い違い式の経路による流れを提供し、放熱効率を向上させている。
【0025】
(2)本発明では、主通路21の入水孔31から出水孔32までの通路幅が徐々に減少する設計、及び各主通路21の入水孔31から出水孔32における副通路41の数が相違する設計により、入水孔31に近接する低温区域においては冷却媒体の流速を低下させ、一方で出水孔32に近接する高温区域においては冷却媒体の流速を上昇させて、出口部の放熱効果を強化し、回転電気機械全体の放熱をより均一にさせることができる。
【0026】
(3)本発明では、主分流壁体20及び副分流壁体40の台形状外形構造によって放熱面積を拡大することにより、全体の放熱効果を強化させている。