特許第6684320号(P6684320)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6684320
(24)【登録日】2020年3月31日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】回転電機の冷却構成
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/20 20060101AFI20200413BHJP
   H02K 9/19 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
   H02K5/20
   H02K9/19 A
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-136379(P2018-136379)
(22)【出願日】2018年7月20日
(65)【公開番号】特開2020-14354(P2020-14354A)
(43)【公開日】2020年1月23日
【審査請求日】2018年7月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】514150181
【氏名又は名称】大銀微系統股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】HIWIN MIKROSYSTEM CORP.
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】黎振安
(72)【発明者】
【氏名】蕭瑞濱
(72)【発明者】
【氏名】鄭立巍
【審査官】 安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−042661(JP,A)
【文献】 中国実用新案第206060428(CN,U)
【文献】 特開2013−141334(JP,A)
【文献】 特開2015−211562(JP,A)
【文献】 実開平01−131256(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/20
H02K 9/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の半環状周面と第2の半環状周面を備える環状周面を有するスリーブと、
複数の流路を形成するように、互いに平行して前記スリーブの前記環状周面に設置される複数の分流壁と、
複数の第1の分流領域を形成するように、それぞれ前記第1の半環状周面における対応する前記分流壁の間に設置される複数の第1のストッパ壁と、
複数の第2の分流領域を形成するように、それぞれ前記第2の半環状周面における対応する前記分流壁の間に設置される複数の第2のストッパ壁と、を有し、
また、前記第1の分流領域と前記第2の分流領域とは非対称的に配置され、
入水孔及び出水孔を備え、前記スリーブに嵌着されるハウジングをさらに有し、前記入水孔及び前記出水孔が、それぞれ二つの第1の分流領域に対応して前記ハウジングの両端に設置され
前記入水孔に対応する前記第1の分流領域の流路数は、前記出水孔に対応する前記第1の分流領域の流路数より多い回転電機の冷却構成。
【請求項2】
前記第1のストッパ壁の各々は、二つの隣り合う第1の分流領域を連通させる溝を含む請求項1に記載の回転電機の冷却構成。
【請求項3】
前記溝は、弧状の外形を呈する請求項2に記載の回転電機の冷却構成。
【請求項4】
前記溝は、矩形状の外形を呈する請求項2に記載の回転電機の冷却構成。
【請求項5】
前記溝の底面が前記環状周面に平行し、且つ前記溝の二つの対向する側面が互いに平行する請求項2に記載の回転電機の冷却構成。
【請求項6】
前記入水孔に対応する前記第1の分流領域の流路数は、少なくとも前記出水孔に対応する前記第1の分流領域の流路数の1.5倍である請求項1に記載の回転電機の冷却構成。
【請求項7】
前記溝の幅は、少なくとも前記流路の幅の2倍である請求項2に記載の回転電機の冷却構成,。
【請求項8】
前記流路の深さは、少なくとも前記溝の深さの2倍である請求項2に記載の回転電機の冷却構成。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に関し、特に回転電機の冷却構成に関する。
【背景技術】
【0002】
工業自動化技術の急速な発展に伴い、回転電機は様々な複合工作機械での高速回転の加工に広く適用されてきた。回転電機は、ステータコアの鉄損及びコイルの銅損によって熱が発生するので、工作機械の主軸を駆動させる場合、高温による熱変形が加工精度に大きく影響する。したがって、現在の回転電機における放熱設計には、モータケースに冷却流路を設け、冷却液を流入させてケースに直接接触させることにより冷却を行うことがトレンドである。
【0003】
従来の冷却流路は、互いに交差せず平行するように並設されるらせん状の流路設計があり、長軸の二つの対向端のそれぞれに入水口及び出水口が設けられ、冷却媒体が入水口かららせん状の流路を介して出水口へ流出することにより熱が奪われて、放熱冷却の目的が達成される。しかしながら、上記のらせん状の流路設計は、冷却経路の距離が比較的長く、圧力損失の増加をもたらし、冷却媒体の流速が入水口から出水口まで次第に低下するようにして、冷却効率を低下させる連続流路である。
【0004】
そこで、如何に冷却流路の設計によって流路内の圧力損失の低下と冷却効率の向上を実現するかことは、回転電機の冷却設計での大きな挑戦になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の主な目的は、非対称的に配置される第1の分流領域と第2の分流領域によって、交差する経路で流れる冷却媒体を提供して、回転電機の放熱効率を向上する回転電機の冷却構成を提供することにある。なお、各第1の分流領域中の逓減型流路設計により、冷却媒体の出口での流速及び熱対流係数を向上させて、出口での放熱効果を強化させ、モータ全体の放熱をより均一にする。
【0006】
よって、上記の目的を達成するために、本発明の提供する回転電機の冷却構成は、第1の半環状周面と第2の半環状周面を備える環状周面を有するスリーブと、複数の流路を形成するように、互いに平行してスリーブの環状周面に設置される複数の分流壁と、複数の第1の分流領域を形成するように、それぞれ第1の半環状周面における対応する分流壁の間に設置される複数の第1のストッパ壁と、複数の第2の分流領域を形成するように、それぞれ第2の半環状周面における対応する分流壁の間に設置される複数の第2のストッパ壁とを有し、また、それらの第1の分流領域とそれらの第2の分流領域とは非対称的に配置される。
【0007】
本発明の実施例において、第1のストッパ壁の各々には、二つの隣り合う第1の分流領域を連通させる溝を含む。
【0008】
本発明の実施例において、上記溝は弧状の外形又は矩形状の外形を呈する。
【0009】
本発明の実施例において、上記溝の底面が上記環状周面に平行し、且つ上記溝の二つの対向する側面が互いに平行する。
【0010】
本発明の実施例において、回転電機の冷却構成は、入水孔及び出水孔を備え、スリーブに嵌着されるハウジングをさらに有し、入水孔及び出水孔が、それぞれ二つの第1の分流領域に対応してハウジングの両端に設置される。
【0011】
本発明の実施例において、入水孔に対応する第1の分流領域の流路数は、出水孔に対応する第1の分流領域の流路数より多い。
【0012】
本発明の実施例において、入水孔に対応する第1の分流領域の流路数は、少なくとも出水孔に対応する第1の分流領域の流路数の1.5倍である。
【0013】
本発明の実施例において、溝の幅は、少なくとも流路の幅の2倍である。
【0014】
本発明の実施例において、流路の深さは、少なくとも溝の深さの2倍である。
【0015】
要するに、本発明に係る回転電機の冷却構成は、非対称的に配置される第1の分流領域と第2の分流領域により、交差の経路で流れる冷却媒体を提供することにより、回転電機の放熱効率を向上させる。なお、各第1の分流領域における逓減型流路設計により冷却媒体の出口での流速と熱対流係数を向上させて、出口での放熱効果を強化させ、モータ全体の放熱をより均一させる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施例における回転電機の冷却構成の斜視図である。
図2】本発明の第1の実施例における回転電機のスリーブの分解図である。
図3】本発明の第1の実施例における回転電機のスリーブの第1の半環状周面における前面図である。
図4】本発明の第1の実施例における回転電機のスリーブの第2の半環状周面における前面図である。
図5】本発明の第1の実施例における回転電機のスリーブにおける第1の分流領域と第2の分流領域を説明する模式図である。
図6図1の6−6方向に沿う断面図である。
図7A】本発明の第1の実施例における回転電機のスリーブにおける溝の構成を示す模式図である。
図7B】本発明の他の溝の実施例の構成を示す模式図である。
図7C】本発明の他の溝の実施例の構成を示す模式図である。
図8A】本発明の第1の実施例における回転電機の冷却構成における溝の幅と深さの構成を示す模式図である。
図8B】本発明の第1の実施例における回転電機の冷却構成における流路の幅と深さの構成を示す模式図である。
図9】本発明における溝と流路の幅との比率と降下電圧及び温度との関係グラフである。
図10】本発明における溝と流路の深さとの比率と降下電圧及び温度との関係グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず、図1図6を参照すると、本発明の第1の実施例において提供される回転電機の冷却構成は、スリーブ(10)、複数の分流壁(20)、複数の第1のストッパ壁(40)及び複数の第2のストッパ壁(50)を備える。
【0018】
スリーブ(10)は、第1の半環状周面(12)及び第2の半環状周面(13)を備える環状周面(11)を有し、第1の半環状周面(12)と第2の半環状周面(13)とが対称的に配置される。分流壁(20)は、複数の流路(30)を形成するように、互いに平行してスリーブ(10)の環状周面(11)に配置される。
【0019】
第1のストッパ壁(40)は、それぞれ複数の第1の分流領域(42)を形成するように第1の半環状周面(12)における対応する分流壁(20)の間に設置され、第2のストッパ壁(50)は、それぞれ複数の第2の分流領域(52)を形成するように、第2の半環状周面(13)における対応する分流壁(20)の間に設置される。第1の半環状周面(12)に配置される第1の分流領域(42)と第2の半環状周面(13)に配置される第2の分流領域(52)とが非対称的に配置される。
【0020】
本実施例において、回転電機の冷却構成は、入水孔(61)及び出水孔(62)を備え、上記スリーブ(10)に嵌着されるハウジング(60)をさらに有し、入水孔(61)及び出水孔(62)が、それぞれ二つの第1の分流領域(42)に対応してハウジング(60)の両端に設置される。第1の半環状周面(12)に四つの第1の分流領域(42)が配置され、第1の分流領域(42)の各々は、それらに含まれる流路数が、入水孔(61)から出水孔(62)への方向に低減するように設計される。具体的に、入水孔(61)に対応する第1の分流領域(42)は六つの流路(30)を有するが、その隣り合う第1の分流領域(42)は五つの流路(30)を有する。出水孔(62)に対応する第1の分流領域(42)は二つの流路(30)を有するが、その隣り合う第1の分流領域(42)は三つの流路(30)を有する。しかしながら、本実施例における流路数は単なる例示であり、入水孔(61)に対応する第1の分流領域(42)の流路数が、少なくとも出水孔(62)に対応する第1の分流領域(42)の流路数の1.5倍であることは、設計原則である。
【0021】
以上のように、本発明の第1の実施例において提供される回転電機の冷却構成は、非対称的に配置される第1の分流領域(42)及び第2の分流領域(52)により、交差の経路で流れる冷却媒体を提供するので、従来技術における連続な流路設計と比べると、放熱効率が良い。なお、第1の分流領域(42)の各々は、逓減型流路設計により、入口での流速が遅く熱対流係数が低いが、出口での流速が早く熱対流係数が高いので、出口での放熱効果を強化させ、モータ全体の放熱をより均一させる。
【0022】
図7A〜図7Cを参照すると、第1のストッパ壁(40)における異なる溝(41)の実施例をそれぞれ示している。本実施例の第1の分流領域(42)における第1のストッパ壁(40)の各々は、連通する二つの隣り合う第1の分流領域(42)における溝(41)を備えるので、第1のストッパ壁(40)での冷却媒体による乱流を回避して、流路圧損を低下させる目的を達成させる。図7Aに示す実施例において、溝(41)の底面が、環状周面(11)に平行し、且つその溝(41)の二つの対向する側面が互いに平行する。図7Bに示す実施例において、溝(41)は、弧状の外形を呈する。図7Cに示す実施例において、溝(41)は、矩形状の外形を呈する。しかしながら、本発明に係る溝(41)は、上記実施例に制限されてなく、その連通面積が、目的とする流路圧損の低下程度に依存する。
【0023】
図8図10を参照すると、図8Aと図8Bは、それぞれ本発明の第1の実施例における溝(41)の幅(W1)と深さ(D1)及び流路(30)の幅(W2)と深さ(D2)を示し、図9は、溝(41)の幅(W1)と流路(30)の幅(W2)との比率と降下電圧及び温度との関係グラフであり、図10は、溝(41)の深さ(D1)と流路(30)の深さ(D2)との比率と降下電圧及び温度との関係グラフである。溝(41)の幅(W1)と流路(30)の幅(W2)との比率が2〜4倍の間にある場合、流路内の圧損を低減させて好適な放熱効果を得るが、溝(41)の深さ(D1)と流路(30)の深さ(D2)との比率が0.1〜0.5倍の間にある場合も、流路内の圧損を低減させて好適な放熱効果を得る。
【0024】
上記流路構成設計の説明により、本発明に係る回転電機の冷却構成は、以下のような主要な効果が達成される。
【0025】
1. 従来技術における連続な流路設計には、長距離の冷却経路による圧力損失が増加して冷却効率が低下することに対して、本発明に係る回転電機の冷却構成には、非対称的に配置される第1の分流領域(42)及び第2の分流領域(52)により、交差の経路で流れる冷却媒体を提供することにより、回転電機の放熱効率を向上させる。なお、第1の分流領域(42)の各々は、逓減型流路設計により冷却媒体の出口での流速と熱対流係数を向上させて、出口での放熱効果を強化させ、モータ全体の放熱をより均一させる。
【0026】
2. 本発明における第1のストッパ壁(40)は、連通する二つの隣り合う第1の分流領域(42)における溝(41)により、第1のストッパ壁(40)での冷却媒体による乱流を回避して、流路圧損を低下させる目的を達成させる。なお、溝(41)と流路(30)とのアスペクト比を最適に設計することにより、二つの隣り合う第1の分流領域(42)の連通面積及び流路(30)の通路面積を制御して、流路内の圧損を低下させ好適な放熱効果を達成させる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9
図10