(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
誘電体基板(21)を含むアンテナ基板(13)と、前記アンテナ基板の第1の面(13a,21b)に形成されたアンテナ素子(14,23)とを有する平面アンテナ(11,20)と、
前記アンテナ基板の第1の面において前記アンテナ素子の所望の放射方向以外を取り囲む電波吸収体(12)と、を備え、
前記アンテナ基板の第1の面に近接して対向する無線端末(100)のアンテナ(110)と前記平面アンテナとが空間的に結合され、前記平面アンテナと前記アンテナ(110)が放射遠方界領域ではない近距離で向かい合わせに設置され、前記アンテナ素子と前記電波吸収体は前記アンテナ基板の第1の面に配置されていることを特徴とする平面アンテナ装置。
各前記平面アンテナの前記アンテナ基板の第1の面の法線と、各前記平面アンテナの放射面の法線が平行であり、各前記平面アンテナの放射方向は各前記平面アンテナの放射面の法線方向であることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の無線端末測定装置。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明に係る無線端末測定装置及び無線端末測定方法の実施形態について図面を用いて説明する。なお、各図面上の各構成の寸法比は、実際の寸法比と必ずしも一致していない。
【0036】
図1に示すように、本実施形態に係る無線端末測定装置1は、ビーム方向を制御可能なアンテナ110を少なくとも1つ有するDUT100に対して、送受信特性の測定やビームフォーミング測定などを行うものである。例えば、無線端末測定装置1は、複数の平面アンテナ装置10が収容されたシールドボックス50と、測定部51と、表示部52と、操作部53と、を備えている。アンテナ110は、ビーム方向が制御可能であるフェイズドアレーアンテナを構成している。
【0037】
DUT100は、例えば5G対応のミリ波通信を行うことができるスマートフォンなどの無線端末である。
【0038】
アンテナ110は、垂直偏波や水平偏波などの直線偏波の電波を放射するようになっている。また、アンテナ110は、直線偏波の偏波方向を時間的に切り替えることが可能な構成であってもよい。
【0039】
平面アンテナ装置10は、
図2及び
図3に示すように、平面アンテナ11と、電波吸収体12と、を備える。平面アンテナ11は、例えば、パッチアンテナや後述する円偏波アンテナであり、誘電体基板を含むアンテナ基板13と、アンテナ基板13の一面13aに形成されたアンテナ素子14と、を有する。電波吸収体12は、アンテナ基板13の一面13aにおいてアンテナ素子14の所望の放射方向以外を取り囲むように配置される。
図3の符号113を付した領域は、アンテナ素子14の所望の放射方向の範囲の一例を示している。
【0040】
DUT100のDUT基板111の一面111aには、複数のアンテナ素子112からなるアンテナ110が設置されている。DUT基板111の一面111aと平面アンテナ11のアンテナ基板13の一面13aとが近接して対向することにより、DUT100のアンテナ110と平面アンテナ11とが空間的に結合されるようになっている。
【0041】
電波吸収体12は、例えば、アンテナ素子14を四方から囲む4つの壁部15により構成される。各壁部15の高さは、平面アンテナ11の実効面積の領域から、DUT100のアンテナ110の実効面積の領域に向かう任意の直線を遮らない高さである必要がある。なお、上記の所望の放射方向は、例えば、この任意の直線の方向に相当する。
【0042】
DUT100のアンテナ110から放射される電磁界の領域のうち、アンテナ110に近接する領域は、放射に寄与しない電磁界成分が主となるリアクティブ近傍界領域と呼ばれ、アンテナ110の放射面からの距離によって指向性の変化がない領域は放射遠方界領域と呼ばれる。また、リアクティブ近傍界領域と放射遠方界領域の間の領域は放射近傍界領域と呼ばれる、距離に応じて指向性が変化する領域である。
【0043】
放射近傍界領域は、アンテナ110の開口長Dに対し、アンテナ110の放射面から下記の式(1)を満たす距離R離れた位置として規定される。ここで、λは自由空間波長である。
【数1】
【0044】
以下、平面アンテナ装置10とDUT100との間で多重反射が抑制できる原理について説明する。ここでは、平面アンテナ11とアンテナ110が放射遠方界領域ではない近距離で向かい合わせに設置されていることを想定する。
【0045】
電波吸収体12が平面アンテナ11に取り付けられていない場合、アンテナ110から放射された電磁波は、
図4(a)に矢印で示すように、全方向に拡散しながら平面アンテナ11に入射する。このうち、平面アンテナ11の実効面積の領域に入射した電磁波は、平面アンテナ11によって受信される。それ以外の電磁波はアンテナ基板13等により拡散反射される。なお、
図4(a)では、アンテナ110を構成する複数のアンテナ素子14のうちの1つから放射される電磁波の放射方向のみを示している。
【0046】
平面アンテナ11で受信されずに反射された電磁波は、
図5(a)に矢印で示すように、平面アンテナ11のアンテナ基板13等で拡散反射されてDUT100に入射する。このうち、アンテナ110の実効面積の領域に入射した電磁波は、アンテナ110によって受信される。それ以外の電磁波はDUT100のDUT基板111等により拡散反射される。なお、
図5(a)では、
図4(a)においてアンテナ110から放射された電磁波のうちの一部に関する反射波のみを図示している。
【0047】
さらに、アンテナ110で受信されずに反射された電磁波の一部は、
図6(a)に矢印で示すように、再び平面アンテナ11に入射して受信される。つまり、
図4(a)、
図5(a)、及び
図6(a)に示したように、平面アンテナ装置10とDUT100との間で電磁波の反射が複数回繰り返されることになる。このとき、平面アンテナ11は、最初にアンテナ110から直接放射された電磁波と、平面アンテナ11とDUT100の間で反射されて2回目以降に受信される電磁波との合成波を受信することになる。
【0048】
最初に平面アンテナ11に受信されて得られる信号と、2回目以降に平面アンテナ11に受信されて得られる信号の位相関係は、平面アンテナ11とDUT100の設置距離によって定まるため、この設置距離が変化した場合、平面アンテナ11とアンテナ110との伝送特性S
21は波打つこととなる。
【0049】
一方、
図2に示したように、電波吸収体12が平面アンテナ11に取り付けられている場合、アンテナ110から放射された電磁波が平面アンテナ11に入射するところまではほぼ同様であるが(
図4(b))、平面アンテナ11で拡散反射された電磁波のほとんどが電波吸収体12により吸収され強度が低下する(
図5(b))。なお、
図4(b)及び
図5(b)の矢印における破線部分は、電波吸収体12により妨げられて強度が低下した電磁波を表している。
【0050】
さらに、DUT100で拡散反射された電磁波は、平面アンテナ11に入射する途中でも電波吸収体12によって吸収されるため、更に強度が低下する(
図6(b))。このように、平面アンテナ11で2回目以降に受信される電磁波が電波吸収体12により大きく低下するため、平面アンテナ11に受信されて得られる信号は最初に受信された信号が主となる。このため、平面アンテナ11とDUT100の設置距離を変化させた場合の伝送特性S
21の波打ちを低減することができる。
【0051】
以下、平面アンテナ11の一例として円偏波アンテナの構成について説明する。
図7から
図11は、円偏波アンテナの基本構造を示している。
【0052】
すなわち、
図7は、円偏波アンテナ20の構成を説明するために示す斜視図である。また、
図8(a),(b)は、円偏波アンテナ20の構成を説明するために示す正面図である。また、
図9は、円偏波アンテナ20の構成を説明するために示す背面図である。また、
図10(a)は、
図8(a)の4A−4A線拡大断面図である。また、
図10(b)は、
図8(a)の変形例における4B−4B線拡大断面図である。また、
図11は、
図8(a)の5−5線拡大断面図である。
【0053】
本実施形態における円偏波アンテナ20は、基本的には、
図7から
図11に示すように、誘電体基板21と、誘電体基板21の一面21a側に重合される地板導体22と、誘電体基板21の反対面21bに形成され、所定の偏波の回転方向を有する円偏波型のアンテナ素子23と、を有している。アンテナ素子23は、既に述べたアンテナ素子14の一例である。また、既に述べたアンテナ基板13は、アンテナ素子23を除く円偏波アンテナ20の全ての構成を含むものとする。また、アンテナ基板13の一面13aは、誘電体基板21の反対面21bに相当する。なお、反対面21bを第1の面とも称し、一面21aを第2の面とも称する。
【0054】
さらに、地板導体22を挟んだ誘電体基板21の反対側には、アンテナ素子23に励振信号を給電するための給電部26が形成されている。給電部26は、給電用誘電体基板27と、給電用誘電体基板27の地板導体22と反対側の表面に形成され、地板導体22をアースとするマイクロストリップ線路の給電ライン28と、を有する。
【0055】
上記の誘電体基板21及び給電用誘電体基板27としては、準ミリ波帯で低損失のRO4003(Rogers社)などの材料を用いることができる。
【0056】
この誘電体基板21及び給電用誘電体基板27の材質としては、低損失で誘電率が2〜5程度の材料であれば使用可能であり、例えば、ガラスクロステフロン基板や各種熱硬化樹脂基板が候補となる。例えば、
図10(a)に示す構成では、誘電体基板21及び給電用誘電体基板27の誘電率をいずれも3.62とし、誘電体基板21の高さh
1を1.1mm、給電用誘電体基板27の高さh
2を0.3mmなどとすることができる。
【0057】
アンテナ素子23は、誘電体基板21の反対面21b側に、例えば、パターン印刷技術によって形成された右巻き矩形スパイラル(
図8(a)参照)又は左巻き矩形スパイラル(
図8(b)参照)の不平衡型のアンテナである。
【0058】
また、円偏波アンテナ20は、アンテナ素子23のスパイラル中心側の側端部(給電点)に一端が接続され、誘電体基板21をその厚さ方向に貫通して地板導体22の穴22aを非導通に通過し、更に給電部26を構成する給電用誘電体基板27を貫通してその表面に他端側を突出させる給電ピン(feed pin)25を有している。
【0059】
なお、給電部26は、上記のマイクロストリップ線路の構成に限定されず、不平衡型の給電線、例えば、同軸ケーブルや、地板導体22をアースとするコプレーナ線路あるいはマイクロストリップ線路等により給電ピン25の他端側から給電される構成であればよい。
図8(a)に示した構成の円偏波アンテナ20は、給電ピン25から給電されることにより、アンテナ素子23から主偏波の回転方向が左回りの円偏波(left hand circular polarization:LHCP)の電波を放射することができる。一方、
図8(b)に示した構成の円偏波アンテナ20は、給電ピン25から給電されることにより、アンテナ素子23から主偏波の回転方向が右回りの円偏波(right hand circular polarization:RHCP)の電波を放射することができる。なお、
図9以降の図面では、特に断りのない限り主偏波がLHCPの構成のみを示す。
【0060】
ただし、これだけの構造のみによる円偏波アンテナでは、誘電体基板21の表面に沿った表面波が励振されるため、その表面波の影響によって円偏波アンテナとして所望の特性が得られない。
【0061】
そこで、本実施形態の円偏波アンテナ20では、誘電体基板21の表面に沿った表面波の励振を抑制するための構造として、上記構造に加えて、
図10(a)、
図11に示しているように、複数の金属ポスト30によって構成されるキャビティ構造を採用している。
【0062】
具体的には、例えば円柱状の複数の金属ポスト30は、それぞれの一端側が地板導体22に接続され、誘電体基板21をその厚さ方向に沿って貫通し、かつそれぞれの他端側が誘電体基板21の反対面21bまで延びて、アンテナ素子23を囲むように所定間隔で設けられることにより、キャビティを構成する。
【0063】
さらに、本実施形態の円偏波アンテナ20は、上記キャビティ構造に加えて、誘電体基板21の反対面21b側に、複数の金属ポスト30の各他端側をその並び方向に沿って順次短絡し、かつ各金属ポスト30との接続位置からアンテナ素子23方向に所定距離延びて設けられる枠状導体32を備えている。
【0064】
そして、本実施形態の円偏波アンテナ20では、このキャビティ構造と、枠状導体32との相乗効果によって、表面波を抑圧することができるようにしている。つまり、本実施形態の円偏波アンテナ20は、上記のキャビティ構造と枠状導体32とを備えることにより、従来の一般的な平面アンテナと比較して、アンテナ側面からの電波の漏れを大幅に抑制することができる。
【0065】
なお、複数の金属ポスト30は、
図10(b)に示すように、誘電体基板21を貫通する複数の穴301を形成し、この複数の穴301の内壁にメッキ加工(スルーホールメッキ)することによって複数の中空状の金属ポスト30′として実現することもできる。
【0066】
この場合、スルーホールメッキによる複数の中空状の金属ポスト30′の下端部は、誘電体基板21の一面21a側にパターン印刷技術によって形成されるランド302を介して地板導体22に接続されるようになされている。
【0067】
以下、上記のキャビティ構造と枠状導体32とによる表面波抑圧の効果を説明するために、各部の構造パラメータと、当該構造パラメータを変えて得られた円偏波アンテナ20の特性についてのシミュレーション結果について説明する。
【0068】
まず、各部の構造パラメータとなり得る要素について説明する。
【0069】
この円偏波アンテナ20の使用周波数はK及びKaバンド帯の18〜40GHzであり、アンテナ素子23の方形スパイラルは、基本長をa0とし、該a0並びにその任意倍数の長さの線路を90度の角度ごとに配置して構成する。
【0070】
このような方形スパイラルの典型的な例を
図12(a)に示す。すなわち、この例では、素子幅Wを0.25mm、基本長a0を0.45mmとし、以下、90度の角度ごとに2a0、2a0、3a0、3a0、4a0、4a0の線路長とし、最終線路長を3a0とし、全体で9巻き(nine−turn spiral)の方形スパイラルとしている。
【0071】
また、
図12(b)に示す方形スパイラルは、
図12(a)における基本長a0よりも長くした基本長a0′とし、巻数を減らした場合である。
【0072】
この例では、素子幅Wを0.25mm、基本長a0′を0.7mmとし、以下、90度の角度ごとに2a0′、2a0′、3a0′、3a0′、4a0′の線路長とし、最終線路長を約1.5a0′とし、全体で8巻き(eight−turn spiral)の方形スパイラルとしている。
【0073】
この場合、最終線路長は、円偏波の軸比(axial ratio)や反射特性を最適化するように約1.5a0′に選んである。
【0074】
なお、以下の説明及び実施形態では、円偏波アンテナ20に採用すべきアンテナ素子23として方形スパイラルの例を示している。
【0075】
しかるに、
図13に示すように、円偏波アンテナ20に採用すべきアンテナ素子23としては、方形スパイラルに代えて、円形スパイラルのアンテナ素子23を用いることもできる。
【0076】
この
図13に示す円形スパイラルのアンテナ素子23は、例えば、基準点からの半径初期値SR=0.2mm、素子幅W=0.35mm、スパイラル間隔d=0.2mm、巻き数2.125の円形スパイラルによるアンテナ素子23の場合であり、このような円形スパイラルによるアンテナ素子23を円偏波アンテナ20に用いた場合でも、上述した方形スパイラルのアンテナ素子23を用いた場合とほぼ同等の結果が得られている。
【0077】
また、誘電体基板21の外形はアンテナ素子23のスパイラル中心を中心とする正方形で、
図8(a),(b)に示すように、その一辺の長さをL(以下、外形長と記す)とし、キャビティの外形もこれと同心の正方形としている。
【0078】
また、キャビティは、
図10(a),(b)に示すように、その内寸をLwとしている。さらに、枠状導体32には、キャビティ内壁から内側へ延びる所定幅(以下、リム幅と記す)L
Rを有するリムが設けられている。
【0079】
また、キャビティを形成する複数の金属ポスト30の直径は、それぞれ、0.3mmであり、各金属ポスト30の間隔は0.9mmである。
【0080】
図14は、複数の金属ポスト30によるキャビティ及び枠状導体32を設けない場合における垂直面(
図7、
図8でyz面)の放射特性についてのシミュレーション結果を示している。
【0081】
図14において、F1、F1′は、外形長L=18mmのときの主偏波(左回り円偏波:LHCP)と交差偏波(右回り円偏波:RHCP)の特性であり、F2、F2′は、外形長L=24mmのときの主偏波と交差偏波の特性である。
【0082】
ここで、円偏波アンテナとして要求される放射特性は、主偏波については0°方向を中心として対称でブロードな単峰特性であり、交差偏波(完全な円偏波であればゼロである)については、広い角度範囲において主偏波より十分低い放射強度となる必要がある。
【0083】
これに対し、
図14の主偏波の特性F1、F2は、共に非対称で利得に大きな暴れがあり、また、交差偏波についてみれば、−60°、−40°の近傍で主偏波と同等又はそれに近い放射レベルになっていることが分かる。
【0084】
このような放射特性の乱れは、前記した表面波の影響によって発生している。
【0085】
図15は、複数の金属ポスト30によって内寸Lw=9mmのキャビティを設け、更にリム幅L
R=1.2mmの枠状導体32を設けたときの、外形長L=18mm及びL=24mmにした場合の主偏波の特性F3、F4と交差偏波の特性F3′、F4′についてのシミュレーション結果を示している。
【0086】
この
図15から明らかなように、主偏波の特性F3、F4は、0°方向を中心として対称でブロードな単峰特性となり、交差偏波の特性F3′、F4′についても、広い角度範囲において主偏波F3、F4より十分低い放射強度で緩慢な変化となっており、前記した円偏波アンテナとして要求される所望の特性が得られていることが分かる。
【0087】
また、各部の構造パラメータを変えて行った前記と同様の幾つかの各種の放射特性についてのシミュレーションの結果、枠状導体32が無い場合の放射特性は、誘電体基板21の外形長Lとキャビティ内寸Lwに対する依存性を示し、概略的な傾向を言えば、外形長Lが大きい(L=24,18mm)場合、キャビティ内寸Lwが3〜10mmまで大きくなるにつれて主偏波特性は3峰形から単峰形に近づくことが判明している。
【0088】
また、誘電体基板21の外形長Lが比較的小さい(L=12mm)場合、キャビティ内寸Lwが3〜10mmまで間で大きくなるにつれて主偏波特性は双峰形から単峰形に近づくことが判明している。
【0089】
しかし、いずれの場合でも、交差偏波の暴れが大きく使用角度範囲内いずれかにおいて主偏波成分との差が小さくなり、偏波選択性が低く、上記
図15のような所望の特性には至らないことが判明している。
【0090】
なお、リム幅L
Rの1.2mmは、誘電体基板21の表面に沿って伝播する表面波の波長のほぼ1/4に相当している。つまり、このリム幅L
R=1.2mmの部分は、その先端側からポスト壁側を見たとき、表面波に対してインピーダンスが無限大となるλg/4(λgは管内波長)の長さの伝送路を形成する。
【0091】
したがって、誘電体基板21の表面に沿った電流が流れないことになり、この電流阻止作用によって表面波の励振が抑圧され、放射特性の暴れを防いでいることになる。
【0092】
よって、円偏波アンテナ20を上記した以外の他の周波数帯に適用する場合には、その周波数に応じてリム幅L
Rを変更設定すればよい。
【0093】
ところで、本実施形態の円偏波アンテナ20は、誘電体基板21に、複数の金属ポスト30によるキャビティと枠状導体32を設けることによって共振器を構成し、この共振器をアンテナ素子23で励振していると考えることができる。
【0094】
本実施形態の円偏波アンテナ20は、共振器を構成しているので、共振周波数が存在し、その共振周波数では円偏波アンテナ20の入力インピーダンスが非常に大きくなり、放射をしなくなる。
【0095】
この場合、共振器の共振周波数は、共振器と円偏波のアンテナ素子23との構造パラメータで決まる。
【0096】
この構造パラメータは、前述したように、キャビティの内寸Lw、リム幅L
Rのほか、アンテナ素子23の巻数、アンテナ素子23の基本長a0、アンテナ素子23の素子幅Wなどである。
【0097】
したがって、アンテナ利得の周波数特性は、前記共振周波数付近で急激に深い落ち込み(ノッチ)が生じることになる。この共振周波数は、上記の構造パラメータを調整することにより、所望の値に設定することが可能である。
【0098】
以下、本実施形態の平面アンテナ装置10による多重反射の抑制について、
図16に示す実験系を用いて実験を行った結果を説明する。なお、
図16は実験系を真上から見た断面図である。ここでは、DUTとして4×4パッチアンテナアレー100'を用い、4×4パッチアンテナアレー100'をテフロン(登録商標)製の固定治具101に取り付けて固定した。この4×4パッチアンテナアレー100'は、16個のアンテナ素子112の各素子の給電を独立に入り切りすることが可能であり、一部の素子のみに給電することで、4×4よりも小型なアレーアンテナを模擬することも可能である。
【0099】
また、平面アンテナ装置10の平面アンテナ11としては、
図7等に示した円偏波アンテナ20を用いた。実験は、平面アンテナ装置10のアンテナ基板13とDUT基板111の間隔dを変化させながら、ベクトルネットワークアナライザ(VNA)102で伝達特性S
21を測定することで行った。なお、測定周波数は28GHzとした。
【0100】
図17は、4×4パッチアンテナアレー100'の全てのアンテナ素子112に給電した場合の実験結果と、4×4パッチアンテナアレー100'の中央2×2素子のみに給電した場合の実験結果を示している。また、
図17は、円偏波アンテナ20に電波吸収体12を取り付けた場合の結果を実線で、円偏波アンテナ20に電波吸収体12を取り付けていない場合の結果を破線で示している。
図17の結果より、アンテナ素子112の給電数に関わらず、円偏波アンテナ20に電波吸収体12を取り付けていない場合は間隔dの変化に応じて、S
21のレベルが大きく波打っていることが分かる。一方、円偏波アンテナ20に電波吸収体12を取り付けた場合には、S
21のレベルの波打ちは小さくなっていることが分かる。
【0101】
以上の測定結果から、円偏波アンテナ20に電波吸収体12を取り付けることで、平面アンテナ装置10とDUTの間の多重反射に起因するS
21の波打ちを抑制する効果が得られることを確認できた。
【0102】
以下、シールドボックス50の構成について説明する。
図18及び
図19に示すように、シールドボックス50は、DUT100を周囲の電磁波からシールドするものであり、筐体120と、トレー121と、アンテナ保持部122と、を主に備えている。
【0103】
筐体120のサイズは、例えば、幅が560mm、奥行きが620mm、高さが560mmである。筐体120は、例えば、鉄、ステンレス、アルミニウム、銅、真鍮やこれらの合金などの導電性の金属からなっており、外部に対して電磁波シールド機能を有する。筐体120は、これらの材質の金属の板に対して折り曲げなどの加工を行うことによって製造できるが、軽量化、省資源化のためにこれらの材質の板にパンチングによる穴あけを行なってもよい。あるいは、始めから板の代わりに網状の材料を採用してもよい。なお、穴や網目の大きさは、DUT100が出力する被測定信号の電波の波長よりも十分に小さければ(例えば1/10波長以下)、シールドボックスとしての遮蔽性能を保つことができる。
【0104】
なお、シールドボックス50においては、DUT100のアンテナ110又は平面アンテナ装置10で発生する電磁波のシールドボックス50内での反射を抑制するとともに、これらの電磁波がシールドボックス50の外に漏洩するのを防止するための電波吸収体が、その内壁面に沿って設けられている。
【0105】
トレー121は、DUT100を載置するための引き出し状の部材であり、少なくともDUT100が載置される箇所の厚さ方向全体にわたって、比誘電率が比較的低く誘電損失の少ないポリエチレン、ポリアセタール(POM)やテフロン(登録商標)などの合成樹脂で形成されている。
【0106】
トレー121は、筐体120の両側方に設置された2つのエアシリンダ130に取り付けられており、エアシリンダ130のY軸方向の往復運動によって、筐体120から引き出されて載置面121aにDUT100を載置可能な状態と、載置面121aにDUT100が載置された状態で筐体120の内部に収容される状態と、を取ることが可能になっている。載置面121aに載置可能なDUT100のサイズは、例えば、幅が38mm〜221mm、高さが123mm〜306mm程度である。
【0107】
図19及び
図20に示すように、アンテナ保持部122は、例えば、X軸方向に延伸する2つのアンテナガイド123と、Y軸方向に延伸する2つのアンテナガイド124と、からなり、シールドボックス50内において複数の平面アンテナ装置10を保持するようになっている。各アンテナガイド123,124は、比誘電率が比較的低く誘電損失の少ないポリエチレン、ポリアセタール(POM)やテフロン(登録商標)などの合成樹脂で形成されている。
【0108】
アンテナ保持部122は、シールドボックス50内において、例えばDUT100の上方と下方に配置される。このアンテナ保持部122により、DUT100がシールドボックス50内に収容された際に、DUT100のアンテナ110と複数の平面アンテナ装置10との位置関係が固定されるようになっている。
【0109】
図20は、DUT100とDUT100の上方に配置されたアンテナ保持部122との位置関係を示している。
図20に示すように、X軸方向に延伸する2つのアンテナガイド123は、例えば、側方(Y軸方向)から平面アンテナ装置10を挿入可能な間隙123aと、平面アンテナ装置10の放射面を露出するための開口部123bを有している。同様に、Y軸方向に延伸する2つのアンテナガイド124は、例えば、側方(X軸方向)から平面アンテナ装置10を挿入可能な間隙124aと、平面アンテナ装置10の放射面を露出するための開口部124bを有している。平面アンテナ装置10は、放射面側(すなわち、反対面21b側)がDUT100の一面に対向するように配置されている。
【0110】
アンテナ保持部122は、アンテナガイド123,124の任意の箇所に任意の個数の平面アンテナ装置10を配置することが可能である。既に述べたように、円偏波アンテナ20はアンテナ側面からの電波の漏れが非常に少ないため、平面アンテナ11として円偏波アンテナ20を採用する場合には、各アンテナガイド123,124において平面アンテナ装置10を近接配置することも可能である。
【0111】
なお、
図20に示した例においては、開口部123b,124bが平面アンテナ装置10の放射面と反対側の一面21a側にも設けられているが、この一面21a側の開口部を設けずに平面アンテナ装置10の一面21a側を全て覆うような構成としてもよい。
【0112】
また、DUT100の下方に配置されたアンテナ保持部122も、DUT100の上方に配置されたアンテナ保持部122と同様の構成であり、平面アンテナ装置10を放射面側(すなわち、反対面21b側)がDUT100に対向するように保持する。
【0113】
なお、
図20において、DUT100の各アンテナ110から平面アンテナ装置10に向かう矢印は、ビームの方向の一例を示している。
【0114】
なお、X軸方向に延伸する2つのアンテナガイド123は、Y軸方向にそれぞれ平行移動させることが可能になっている。同様に、Y軸方向に延伸する2つのアンテナガイド124は、X軸方向にそれぞれ平行移動させることが可能になっている。さらに、DUT100の上方及び下方に配置されたアンテナ保持部122全体をZ軸方向にそれぞれ平行移動させることも可能になっている。
【0115】
このため、DUT100をトレー121の載置面121aに載置する際に厳密な位置決めを行わなくても、DUT100の載置位置やサイズに合わせて、アンテナガイド123,124の位置を移動させることにより、アンテナ保持部122に保持された複数の平面アンテナ装置10をDUT100の複数のアンテナ110に対して所望の位置に配置することが可能である。例えば、DUT100の各アンテナ110の真上に平面アンテナ装置10を配置することなども可能である。
【0116】
例えば、
図21(a)に示すようにDUT100がトレー121の載置面121aの中心に載置された状態、
図21(b)に示すようにDUT100がトレー121の載置面121aの中心から外れた位置に載置された状態、
図21(c)に示すようにサイズの大きなDUT100がトレー121の載置面121aに載置された状態のいずれの状態であっても、DUT100の載置位置に合わせてアンテナガイド123,124の位置を移動させることが可能である。
【0117】
図1に示すように、測定部51は、信号送信部60と、信号受信部61と、結合器62と、SW63と、ビーム方向制御部64と、解析処理部65と、記憶部66と、測定制御部67とを備えており、DUT100に対して送信電波の出力レベルや受信感度などに関する送受信特性の測定や、ビームフォーミング測定を行うようになっている。
【0118】
信号送信部60は、シールドボックス50に収容されたDUT100の各アンテナ110に向けて、各平面アンテナ装置10から試験信号を出力するようになっている。
【0119】
信号受信部61は、DUT100のアンテナ110から送信される被測定信号を、複数の平面アンテナ装置10により受信するようになっている。
【0120】
なお、上記の試験信号は、本実施形態の無線端末測定装置1に対してDUT100を呼接続状態とするなどの、DUT100の通信規格に対応した各種制御を行うための制御信号を含むものとする。また、上記の被測定信号は、本実施形態の無線端末測定装置1から出力された試験信号に対するDUT100からの応答信号や、後述するビーム方向制御部64により振幅及び位相が制御された信号などである。
【0121】
結合器62は、信号送信部60から出力される試験信号の出力周波数を通過させる広帯域の方向性結合器であり、例えばウィルキンソン型の分配器で構成される。結合器62は、平面アンテナ装置10と同軸ケーブルで接続されており、信号送信部60から出力された試験信号を平面アンテナ装置10に入力するとともに、各平面アンテナ装置10で受信されたDUT100からの被測定信号を信号受信部61に入力することが可能となっている。
【0122】
SW63は、信号受信部61の出力側を後述する送受信特性測定部68に接続する状態、又は、信号受信部61の出力側を後述するビームフォーミング測定部69に接続する状態のいずれかの状態を取るように構成されている。
【0123】
ビーム方向制御部64は、シールドボックス50の制御端子40を介して、DUT100のアンテナ110から送信される被測定信号のビームの形状及び方向を制御するための制御信号をDUT100に出力するようになっている。例えば、ビーム方向制御部64は、操作部53により設定されたビームの形状及び方向を実現するように、被測定信号の振幅及び位相を制御することが可能になっている。ビーム方向制御部64によりビーム方向が所望の方向に制御された被測定信号は、複数の平面アンテナ装置10により信号受信部61に受信される。
【0124】
解析処理部65は、信号受信部61により受信された被測定信号に対して解析処理を行うようになっており、送受信特性測定部68と、ビームフォーミング測定部69と、を含む。
【0125】
送受信特性測定部68は、SW63により信号受信部61の出力側が接続された状態で、例えば、変調精度(EVM)、送信パワーレベル、送信スペクトラムマスク、エラーベクトル振幅、隣接チャネル漏洩電力、スプリアス放射の測定などを行うようになっている。さらに、送受信特性測定部68は、MIMOの受信試験に関する解析処理として、最小入力感度、最大入力レベル、隣接チャネル除去、非隣接チャネル除去などを実行することができる。また、ビームフォーミング測定部69は、電力測定部69aと、ビーム方向推定部69bと、ビーム方向判定部69cと、を含む。この送受信特性測定部68による測定とビームフォーミング測定部69による測定は、主に放射近傍界領域又はリアクティブ近傍界領域で行われる。
【0126】
電力測定部69aは、SW63により信号受信部61の出力側が接続された状態で、各平面アンテナ装置10により信号受信部61で受信された被測定信号の電力を測定するようになっている。さらに、電力測定部69aは、平面アンテナ装置10ごとに測定した電力を、その平面アンテナ装置10の位置の関数として記憶部66に記憶させるようになっている。
【0127】
ビーム方向推定部69bは、電力測定部69aにより平面アンテナ装置10ごとに測定された電力に基づいて、アンテナ110から送信された被測定信号のビームの形状及び方向を推定するようになっている。この推定は、例えば、記憶部66に記憶された平面アンテナ装置10の位置の関数としての電力を任意の補間法で補間することにより行われる。
【0128】
ビーム方向判定部69cは、ビーム方向推定部69bにより推定された被測定信号のビームの方向が、ビーム方向制御部64により制御されたビームの方向に一致しているか否かを判定するようになっている。
【0129】
測定制御部67は、例えばCPU、記憶部66を構成するROM、RAM、HDDなどを含むマイクロコンピュータ又はパーソナルコンピュータ等で構成され、測定部51を構成する上記各部の動作を制御する。
【0130】
なお、信号送信部60、信号受信部61、SW63、ビーム方向制御部64、及び解析処理部65は、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのディジタル回路で構成することや、あらかじめ記憶部66に記憶された所定のプログラムが測定制御部67により実行されることによりソフトウェア的に構成することが可能である。あるいは、信号送信部60、信号受信部61、SW63、ビーム方向制御部64、及び解析処理部65は、ディジタル回路によるハードウェア処理と所定のプログラムによるソフトウェア処理とを適宜組み合わせて構成することも可能である。なお、測定制御部67は、新たなプログラム、あるいはバージョンを変更したプログラムを外部から受けて、記憶部66への追加又は更新を行うこともできる。
【0131】
表示部52は、例えばLCDやCRTなどの表示機器で構成され、測定制御部67からの制御信号に基づいて、測定結果の表示や、測定条件などを設定するためのソフトキー、プルダウンメニュー、テキストボックスなどの操作対象の表示を行うようになっている。
【0132】
操作部53は、ユーザによる操作入力を行うためのものであり、例えば表示部52の表示画面の表面に設けられたタッチパネルで構成される。あるいは、操作部53は、キーボード又はマウスのような入力デバイスを含んで構成されてもよい。また、操作部53は、リモートコマンドなどによる遠隔制御を行う外部制御装置で構成されてもよい。操作部53による入力操作は、測定制御部67により検知されるようになっている。ユーザは、操作部53を用いて、複数の通信規格の中からDUT100が対応している通信規格を選択したり、アンテナ保持部122における平面アンテナ装置10の位置を入力したり、DUT100のアンテナ110から送信される被測定信号のビームの形状及び方向を設定したりすることが可能になっている。
【0133】
図22(a),(b)は、本実施形態の無線端末測定装置1における複数の円偏波アンテナ20とDUT100の複数のアンテナ110との位置関係の一例を示している。ここでは、アンテナ保持部122と電波吸収体12の図示を省略している。なお、以下では、DUT100の一面111a側と他面111b側にそれぞれアンテナ110が設置されている場合を例に挙げて説明するが、DUT100の一面111a側又は他面111b側のみにアンテナ110が設置されている構成も本発明の範囲に含まれる。
【0134】
複数の円偏波アンテナ20は、DUT100の一面111aに対向する位置に配置されて、DUT100の一面111a側に設置されたアンテナ110に空間的に結合される第1円偏波アンテナ20aと、DUT100の他面111bに対向する位置に配置されて、DUT100の他面111b側に設置されたアンテナ110に空間的に結合される第2円偏波アンテナ20bと、に分類される。なお、DUT100が一面111a側のみにアンテナ110を有するものである場合には、第2円偏波アンテナ20bは省略可能である。同様に、DUT100が他面111b側のみにアンテナ110を有するものである場合には、第1円偏波アンテナ20aは省略可能である。
【0135】
すなわち、第1円偏波アンテナ20aは、その反対面21bがDUT100のアンテナ110の放射面110aとDUT100の一面111aに対向する。また、第2円偏波アンテナ20bは、その反対面21bがDUT100のアンテナ110の放射面110aとDUT100の他面111bに対向する。
【0136】
また、各円偏波アンテナ20の反対面21bを、DUT100の各アンテナ110の放射面110aに対して平行ではなく、傾斜角度θだけ傾けた配置とすることもできる。つまり、複数のアンテナ110が設置されたDUT100の一面111a又は他面111bの法線と、各円偏波アンテナ20の反対面21bの法線は交差している。
【0137】
ここで、各アンテナ110の放射面110aの法線N2と、複数のアンテナ110が設置されたDUT100の一面111a又は他面111bの法線とは平行である。また、各アンテナ110の放射方向は、各アンテナ110の放射面110aの法線方向である。
【0138】
また、各円偏波アンテナ20の反対面21bの法線N1と、各円偏波アンテナ20の放射面の法線は平行である。また、各円偏波アンテナ20の放射方向は、各円偏波アンテナ20の放射面の法線方向である。
【0139】
すなわち、
図22(a)に示すように、アンテナ110の放射面110aから放射される被測定信号の放射方向は、円偏波アンテナ20の反対面21bの法線方向N1に対して平行ではない。このため、アンテナ110の放射面110aから放射される被測定信号は、円偏波アンテナ20とアンテナ110との間で反射されてシールドボックス50の内壁面50aに向かい、内壁面50aで吸収される。このようにして、円偏波アンテナ20とアンテナ110との間での被測定信号の多重反射が抑制される。
【0140】
同様に、
図22(b)に示すように、円偏波アンテナ20のアンテナ素子23から放射される試験信号の放射方向は、アンテナ110の放射面110aの法線方向N2に対して平行ではない。このため、円偏波アンテナ20から放射される試験信号は、円偏波アンテナ20とアンテナ110との間で反射されてシールドボックス50の内壁面50aに向かい、内壁面50aで吸収される。このようにして、円偏波アンテナ20とアンテナ110との間での試験信号の多重反射が抑制される。このように、円偏波アンテナ20を傾けた配置とすることで、多重反射を更に抑制することができる。
【0141】
円偏波アンテナ20は、アンテナ110から送信される被測定信号の直線偏波の偏波方向がいかなる方向であっても、被測定信号を良好に受信することができるように構成されている。また、円偏波アンテナ20は、自身と偏波の回転方向が異なる円偏波アンテナからの信号を受信しにくい特性がある。
【0142】
本実施形態においては、第1円偏波アンテナ20aと第2円偏波アンテナ20bとでは偏波の回転方向が異なっている。例えば、第1円偏波アンテナ20aの主偏波をRHCP、第2円偏波アンテナ20bの主偏波をLHCPとすることができる。あるいは、逆に、第1円偏波アンテナ20aの主偏波をLHCP、第2円偏波アンテナ20bの主偏波をRHCPとすることができる。
【0143】
このように、第1円偏波アンテナ20aと第2円偏波アンテナ20bとで偏波の回転方向を異ならせることにより、
図22(b)に示すように、ある円偏波アンテナ20から送信された試験信号がDUT100を挟んで対向する他の円偏波アンテナ20で受信されることを抑制することができる。
【0144】
なお、シールドボックス50内での円偏波アンテナ20の配置箇所及び個数は、
図19、
図20、及び
図22に示した例に限定されない。
【0145】
本実施形態の無線端末測定装置1においては、主偏波の回転方向が異なる第1円偏波アンテナ20aと第2円偏波アンテナ20bがDUT100を挟んで対向しているため、第1円偏波アンテナ20aと第2円偏波アンテナ20bとの間で良好なアイソレーション性能を得ることができる。
【0146】
以下、本実施形態に係る無線端末測定装置1を用いる無線端末測定方法について、
図23のフローチャートを参照しながらその処理の一例を説明する。なお、ここでは、SW63により信号受信部61の出力側がビームフォーミング測定部69に接続されているとする。
【0147】
まず、ユーザによりDUT100がトレー121の載置面121aに載置され、操作部53の操作によりトレー121上に載置されたDUT100がシールドボックス50に収容される(ステップS1)。
【0148】
次に、ユーザによる操作部53の操作により、DUT100のビーム方向を制御可能なアンテナ110から送信される被測定信号のビームについて、所望の形状及び方向が入力される(ステップS2)。
【0149】
次に、ビーム方向制御部64は、DUT100のビーム方向を制御可能なアンテナ110から送信される被測定信号のビームの形状及び方向を、ステップS2により入力された状態に制御する(ビーム方向制御ステップS3)。
【0150】
次に、信号受信部61は、ステップS3により制御された被測定信号を複数の平面アンテナ装置10により受信する(信号受信ステップS4)。
【0151】
次に、ビームフォーミング測定部69は、ステップS4により受信された被測定信号に対して、以下のステップS5〜S7の解析処理を行う(解析処理ステップ)。
【0152】
まず、電力測定部69aは、各平面アンテナ装置10によりステップS4で受信された被測定信号の電力を測定する(電力測定ステップS5)。
【0153】
次に、ビーム方向推定部69bは、ステップS5により測定された電力に基づいて、アンテナ110から送信された被測定信号のビームの形状及び方向を推定する(ビーム方向推定ステップS6)。
【0154】
次に、ビーム方向判定部69cは、ステップS6により推定された被測定信号のビームの方向が、ステップS3により制御されたビームの方向に一致しているか否かを判定する(ビーム方向判定ステップS7)。
【0155】
次に、表示部52は、ステップS7による判定結果を表示する(ステップS8)。
【0156】
なお、DUT100にビーム方向を制御可能なアンテナ110が複数備えられている場合には、測定制御部67は、全てのアンテナ110についてステップS7による判定処理が行われたか否かを判定する(ステップS9)。否定判定の場合にはステップS2からステップS8までの処理が繰り返され、各アンテナ110についてそれぞれ被測定信号のビームの形状及び方向が算出される。肯定判定の場合には処理が終了する。
【0157】
以上説明したように、本実施形態に係る平面アンテナ装置10は、アンテナ基板13においてアンテナ素子14の所望の放射方向以外を取り囲む電波吸収体12を備えることにより、DUT100のアンテナ110との間で発生する多重反射に起因した振幅誤差を抑制することができる。
【0158】
また、本実施形態に係る平面アンテナ装置10では、誘電体基板21を貫通する金属ポスト30を、アンテナ素子23を囲むように並べてキャビティ構造とし、さらに、この金属ポスト30の先端を並び方向に沿って短絡し、かつアンテナ素子23方向に所定距離延びた枠状導体32を設けている。これにより、平面アンテナ装置10は、表面波の発生を抑制でき、アンテナの放射特性を所望の特性にすることができる。
【0159】
また、本実施形態に係る無線端末測定装置1は、平面アンテナ装置10の表面波の発生を抑制できるため、各平面アンテナ装置10が他の平面アンテナ装置10の影響を受けることなく、アンテナ110の放射特性を測定することができる。
【0160】
また、本実施形態に係る無線端末測定装置1は、アンテナガイド123,124の任意の箇所に任意の個数の平面アンテナ装置10を配置することが可能であるため、DUT100と複数の平面アンテナ装置10との位置関係を固定した状態で、DUT100に対するビームフォーミング測定を含む測定を行うことができる。
【0161】
また、本実施形態に係る無線端末測定装置1は、アンテナガイド123,124の高さを変化させることにより、放射近傍界領域又はリアクティブ近傍界領域での送受信特性の測定とビームフォーミング測定とを行うことができる。
【0162】
また、本実施形態に係る無線端末測定装置1は、DUT100がトレー121の載置面121aに載置された位置に合わせてアンテナ保持部122を移動させることができるため、載置面121aにおけるDUT100の位置決めを厳密に行う必要がなく、大きさや形状が異なる各種のDUT100のセッティングを容易に行うことができる。
【0163】
また、本実施形態に係る無線端末測定装置1は、DUT100においてアンテナ110が設置された一面111aと、平面アンテナ11のアンテナ基板13の一面13aが平行でない配置も可能であり、平面アンテナ11とDUT100のアンテナ110との間で発生する多重反射に起因した振幅誤差を更に抑制することができる。
【0164】
また、本実施形態に係る無線端末測定装置1は、アンテナ110の放射面110aから放射される被測定信号の放射方向が、平面アンテナ11のアンテナ基板13の一面13aの法線方向に対して平行ではない配置も可能である。この場合、アンテナ110と平面アンテナ11との間における被測定信号の多重反射を更に低減することができる。すなわち、本実施形態に係る無線端末測定装置1は、アンテナ110と平面アンテナ11との間で発生する多重反射に起因した振幅誤差を抑制して、DUT100に対する測定を行うことができる。
【0165】
また、本実施形態に係る無線端末測定装置1は、平面アンテナ11のアンテナ素子14から放射される試験信号の放射方向が、アンテナ110の放射面の法線方向に対して平行ではない配置も可能であり、アンテナ110と平面アンテナ11との間における試験信号の多重反射を更に低減することができる。
【0166】
また、本実施形態に係る無線端末測定装置1は、DUT100を挟んで対向する第1円偏波アンテナ20aと第2円偏波アンテナ20bとで偏波の回転方向が異なっているため、対向する円偏波アンテナ20間にシールド材などの信号を遮断する物体を設置することなく、対向する円偏波アンテナ20間のアイソレーション性能を保つことができる。
【0167】
また、本実施形態に係る無線端末測定装置1は、DUT100においてアンテナ110が設置された他面111bと、第2円偏波アンテナ20bのアンテナ基板13の一面13aが平行でない配置も可能であり、第2円偏波アンテナ20bとDUT100のアンテナ110との間で発生する多重反射に起因した振幅誤差を更に抑制することができる。
【0168】
また、本実施形態に係る無線端末測定装置1は、平面アンテナ11として円偏波アンテナ20を採用する場合には、アンテナ110から放射される被測定信号の直線偏波(例えば、垂直偏波や水平偏波)の向きに関わらず精度の良い測定が可能である。さらに、本実施形態に係る無線端末測定装置1は、トレー121の載置面121aに載置されたDUT100の水平方向の設置角度に対する入出力パワーの変動を少なくすることができる。
【0169】
また、本実施形態に係る無線端末測定装置1は、近接での測定を行うものであるため、電波暗室(チャンバー)を使用しなくても精度の良い測定が可能である。