特許第6684372号(P6684372)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社タムラ製作所の特許一覧

<>
  • 特許6684372-ディスペンス塗布用はんだ組成物 図000003
  • 特許6684372-ディスペンス塗布用はんだ組成物 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6684372
(24)【登録日】2020年3月31日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】ディスペンス塗布用はんだ組成物
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/363 20060101AFI20200413BHJP
   B23K 35/26 20060101ALN20200413BHJP
   C22C 13/00 20060101ALN20200413BHJP
【FI】
   B23K35/363 C
   B23K35/363 E
   !B23K35/26 310A
   !C22C13/00
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-37631(P2019-37631)
(22)【出願日】2019年3月1日
(65)【公開番号】特開2019-171467(P2019-171467A)
(43)【公開日】2019年10月10日
【審査請求日】2019年4月25日
(31)【優先権主張番号】特願2018-65166(P2018-65166)
(32)【優先日】2018年3月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 功
(72)【発明者】
【氏名】大内 克利
【審査官】 結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−169557(JP,A)
【文献】 特開2014−36985(JP,A)
【文献】 特開2017−177166(JP,A)
【文献】 特開2015−123491(JP,A)
【文献】 特開2009−241126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/363
B23K 35/26
C22C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ロジン系樹脂、(B)活性剤、(C)溶剤、(D)チクソ剤および(E)イミダゾール化合物を含有するフラックス組成物と、(G)はんだ粉末とを含有し、
当該はんだ組成物のE型粘度計により測定した25℃における粘度が、50Pa・s以上120Pa・s以下である
ことを特徴とするディスペンス塗布用はんだ組成物。
【請求項2】
(A)ロジン系樹脂、(B)活性剤、(C)溶剤、(D)チクソ剤および(E)イミダゾール化合物を含有するフラックス組成物と、(G)はんだ粉末とを含有し、
当該はんだ組成物のレオメーターにより測定した25℃における粘度が、70Pa・s以上130Pa・s以下である
ことを特徴とするディスペンス塗布用はんだ組成物。
【請求項3】
請求項1に記載のディスペンス塗布用はんだ組成物において、
当該はんだ組成物のレオメーターにより測定した25℃における粘度が、70Pa・s以上130Pa・s以下である
ことを特徴とするディスペンス塗布用はんだ組成物。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のディスペンス塗布用はんだ組成物において、
前記フラックス組成物が、さらに、(F)ピラゾール化合物を含有する
ことを特徴とするディスペンス塗布用はんだ組成物。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のディスペンス塗布用はんだ組成物において、
前記(A)成分が、(A1)不飽和有機酸変性ロジンの水素添加物と、(A2)完全水添ロジンとを含有する
ことを特徴とするディスペンス塗布用はんだ組成物。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のディスペンス塗布用はんだ組成物において、
前記(D)成分が、(D1)アマイド系チクソ剤を含有する
ことを特徴とするディスペンス塗布用はんだ組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスペンス塗布用はんだ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器において、電子部品と配線基板とを接続する場合、はんだ組成物(いわゆるソルダペースト)が用いられている。このはんだ組成物は、はんだ粉末、ロジン系樹脂、活性剤、溶剤などを混練してペースト状にした混合物である。このはんだ組成物は、配線基板上に塗布し、その後リフロー工程を施すことで、はんだバンプを形成できる。ここで、塗布形式としては、スクリーン印刷法などが一般的であるが、様々な塗布形式で塗布することが求められており、近年、ディスペンス塗布法により塗布することが求められている。
そして、ディスペンス塗布用はんだ組成物として、例えば、はんだペーストの粘度が50超え〜120Pa・sの範囲内にある金−スズ合金はんだペーストが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−241126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のディスペンス塗布用はんだ組成物は、ディスペンス塗布法により塗布する場合に、十分な塗布性を有している。しかしながら、ディスペンス塗布用はんだ組成物の粘度は、印刷法で用いるはんだ組成物の粘度と比較して低いため、リフロー工程におけるプリヒート時にだれが発生しやすい。また、プリヒート時にだれが発生することで、チップ脇のはんだボールも発生しやすくなる。
【0005】
そこで、本発明は、ディスペンス塗布法により塗布する場合に、十分な塗布性を有し、かつ、プリヒート時のだれを十分に抑制できるディスペンス塗布用はんだ組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、次の知見を見出した。すなわち、ディスペンス塗布用はんだ組成物は、粘度が低いために、リフロー工程におけるプリヒート時にだれが発生しやすいが、このはんだ組成物中に、イミダゾール化合物を添加した場合には、驚くべきことに、粘度が低いままでも、プリヒート時のだれを抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のディスペンス塗布用はんだ組成物は、(A)ロジン系樹脂、(B)活性剤、(C)溶剤、(D)チクソ剤および(E)イミダゾール化合物を含有するフラックス組成物と、(G)はんだ粉末とを含有し、当該はんだ組成物のE型粘度計により測定した25℃における粘度が、50Pa・s以上120Pa・s以下であることを特徴とするものである。
【0007】
本発明の他のディスペンス塗布用はんだ組成物は、(A)ロジン系樹脂、(B)活性剤、(C)溶剤、(D)チクソ剤および(E)イミダゾール化合物を含有するフラックス組成物と、(G)はんだ粉末とを含有し、当該はんだ組成物のレオメーターにより測定した25℃における粘度が、70Pa・s以上130Pa・s以下であることを特徴とするものである。
本発明のディスペンス塗布用はんだ組成物においては、当該はんだ組成物のレオメーターにより測定した25℃における粘度が、70Pa・s以上130Pa・s以下であることが好ましい。
本発明のディスペンス塗布用はんだ組成物においては、前記フラックス組成物が、さらに、(F)ピラゾール化合物を含有することが好ましい。
本発明のディスペンス塗布用はんだ組成物においては、前記(A)成分が、(A1)不飽和有機酸変性ロジンの水素添加物と、(A2)完全水添ロジンとを含有することが好ましい。
本発明のディスペンス塗布用はんだ組成物においては、前記(D)成分が、(D1)アマイド系チクソ剤を含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ディスペンス塗布法により塗布する場合に、十分な塗布性を有し、かつ、プリヒート時のだれを十分に抑制できるディスペンス塗布用はんだ組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ディスペンス塗布装置を示す概略図である。
図2】加熱だれおよびチップ脇ボールの評価試験におけるリフロー時の時間と温度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[ディスペンス塗布用はんだ組成物]
まず、本実施形態のディスペンス塗布用はんだ組成物について説明する。
本実施形態のディスペンス塗布用はんだ組成物は、以下説明するフラックス組成物と、以下説明する(G)はんだ粉末とを含有するものである。
【0011】
本実施形態においては、はんだ組成物のE型粘度計により測定した25℃における粘度が、50Pa・s以上120Pa・s以下であることが必要である。粘度が50Pa・s未満の場合には、プリヒート時のだれを十分に抑制できない。他方、粘度が120Pa・s超である場合には、ディスペンス塗布法より塗布する場合において、十分な塗布性を維持できない。また、プリヒート時のだれと塗布性とを両立するという観点から、はんだ組成物のE型粘度計により測定した25℃における粘度は、70Pa・s以上115Pa・s以下であることがより好ましく、90Pa・s以上110Pa・s以下であることが特に好ましい。
また、本実施形態においては、はんだ組成物のE型粘度計により測定したチクソ指数は、0.40以上0.90以下であることが好ましく、0.45以上0.80以下であることがより好ましく、0.65以上0.75以下であることが特に好ましい。チクソ指数が前記範囲内であれば、ディスペンス塗布法により塗布する場合において、十分な塗布性を維持できる。
粘度およびチクソ指数は、JIS Z3284付属書6に準拠して、E型粘度計により測定できる。
また、本実施形態においては、プリヒート時のだれと塗布性とを両立するという観点から、はんだ組成物のレオメーターにより測定した25℃における粘度が、70Pa・s以上130Pa・s以下であることが好ましく、80Pa・s以上120Pa・s以下であることがより好ましい。ここで、レオメーターとしては、例えば、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製の「MARS III」を用いることができる。
【0012】
なお、はんだ組成物の粘度およびチクソ指数を上述した範囲に調整する方法としては、以下のような方法が挙げられる。
粘度およびチクソ指数は、いずれもロジン系樹脂、溶剤およびチクソ剤の種類や配合量を変更することにより調整できる。
【0013】
[フラックス組成物]
本実施形態に用いるフラックス組成物は、はんだ組成物におけるはんだ粉末以外の成分であり、(A)ロジン系樹脂、(B)活性剤、(C)溶剤、(D)チクソ剤および(E)イミダゾール化合物を含有するものである。
【0014】
前記フラックス組成物の配合量は、はんだ組成物100質量%に対して、10質量%以上25質量%以下であることが好ましく、12質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、14質量%以上18質量%以下であることが特に好ましい。フラックスの配合量が前記下限以上であれば、ディスペンス塗布法における塗布性を更に向上できる。他方、フラックスの配合量が前記上限以下であれば、はんだ接合をより形成しやすくできる。
【0015】
[(A)成分]
本実施形態に用いる(A)ロジン系樹脂としては、ロジン類およびロジン系変性樹脂が挙げられる。ロジン類としては、ガムロジン、ウッドロジンおよびトール油ロジンなどが挙げられる。ロジン系変性樹脂としては、不均化ロジン、重合ロジン、水素添加ロジン(完全水添ロジン、部分水添ロジン、並びに、不飽和有機酸((メタ)アクリル酸などの脂肪族の不飽和一塩基酸、フマル酸、マレイン酸などのα,β−不飽和カルボン酸などの脂肪族不飽和二塩基酸、桂皮酸などの芳香族環を有する不飽和カルボン酸など)の変性ロジンである不飽和有機酸変性ロジンの水素添加物(「水添酸変性ロジン」ともいう))およびこれらの誘導体などが挙げられる。これらのロジン系樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0016】
本実施形態においては、ディスペンス塗布法における塗布性の観点から、(A)ロジン系樹脂として、(A1)不飽和有機酸変性ロジンの水素添加物と、(A2)完全水添ロジンとを併用することが好ましい。また、(A1)成分の配合量は、(A1)成分および(A2)成分の合計量100質量%に対して、30質量%以上90質量%以下であることが好ましく、40質量%以上85質量%以下であることがより好ましく、50質量%以上80質量%以下であることが特に好ましい。
(A)成分は、本発明の目的に影響のない範囲であれば、(A1)成分および(A2)成分以外の他のロジン系樹脂((A3)成分)を含有していてもよい。ただし、この(A3)成分を用いる場合、その配合量は、(A)成分100質量%に対して、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましい。
【0017】
(A)成分の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して、25質量%以上60質量%以下であることが好ましく、30質量%以上55質量%以下であることがより好ましく、35質量%以上52質量%以下であることが特に好ましい。(A)成分の配合量が前記下限以上であれば、はんだ付ランドの銅箔面の酸化を防止してその表面に溶融はんだを濡れやすくする、いわゆるはんだ付け性を向上でき、はんだボールを十分に抑制できる。他方、(A)成分の配合量が前記上限以下であれば、フラックス残さ量を十分に抑制できる。
【0018】
[(B)成分]
本実施形態に用いる(B)活性剤としては、有機酸、非解離性のハロゲン化化合物からなる非解離型活性剤、アミン系活性剤などが挙げられる。これらの活性剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
有機酸としては、モノカルボン酸、ジカルボン酸などの他に、その他の有機酸が挙げられる。
モノカルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブチリック酸、バレリック酸、カプロン酸、エナント酸、カプリン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、グリコール酸などが挙げられる。
ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、ジグリコール酸などが挙げられる。
その他の有機酸としては、ダイマー酸、レブリン酸、乳酸、アクリル酸、安息香酸、サリチル酸、アニス酸、クエン酸、ピコリン酸などが挙げられる。
【0019】
非解離性のハロゲン化化合物からなる非解離型活性剤としては、ハロゲン原子が共有結合により結合した非塩系の有機化合物が挙げられる。このハロゲン化化合物としては、塩素化物、臭素化物、フッ化物のように塩素、臭素、フッ素の各単独元素の共有結合による化合物でもよいが、塩素、臭素およびフッ素の任意の2つまたは全部のそれぞれの共有結合を有する化合物でもよい。これらの化合物は、水性溶媒に対する溶解性を向上させるために、例えばハロゲン化アルコールやハロゲン化カルボキシルのように水酸基やカルボキシル基などの極性基を有することが好ましい。ハロゲン化アルコールとしては、例えば2,3−ジブロモプロパノール、2,3−ジブロモブタンジオール、トランス−2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオール(TDBD)、1,4−ジブロモ−2−ブタノール、トリブロモネオペンチルアルコールなどの臭素化アルコール、1,3−ジクロロ−2−プロパノール、1,4−ジクロロ−2−ブタノールなどの塩素化アルコール、3−フルオロカテコールなどのフッ素化アルコール、その他これらに類する化合物が挙げられる。ハロゲン化カルボキシルとしては、2−ヨード安息香酸、3−ヨード安息香酸、2−ヨードプロピオン酸、5−ヨードサリチル酸、5−ヨードアントラニル酸などのヨウ化カルボキシル、2−クロロ安息香酸、3−クロロプロピオン酸などの塩化カルボキシル、2,3−ジブロモプロピオン酸、2,3−ジブロモコハク酸、2−ブロモ安息香酸などの臭素化カルボキシル、その他これらに類する化合物が挙げられる。
【0020】
アミン系活性剤としては、アミン類(エチレンジアミンなどのポリアミンなど)、アミン塩類(トリメチロールアミン、シクロヘキシルアミン、ジエチルアミンなどのアミンやアミノアルコールなどの有機酸塩や無機酸塩(塩酸、硫酸、臭化水素酸など))、アミノ酸類(グリシン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、バリンなど)、アミド系化合物などが挙げられる。具体的には、ジフェニルグアニジン臭化水素酸塩、シクロヘキシルアミン臭化水素酸塩、ジエチルアミン塩(塩酸塩、コハク酸塩、アジピン酸塩、セバシン酸塩など)、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、これらのアミンの臭化水素酸塩などが挙げられる。
【0021】
(B)成分の配合量としては、フラックス組成物100質量%に対して、0.1質量%以上15質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。(B)成分の配合量が前記下限以上であれば、はんだボールがより確実に抑制できる。他方、(B)成分の配合量が前記上限以下であれば、フラックス組成物の絶縁性を確保できる。
【0022】
[(C)成分]
本実施形態に用いる(C)溶剤としては、公知の溶剤を適宜用いることができる。このような溶剤としては、沸点170℃以上の溶剤を用いることが好ましい。
このような溶剤としては、例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、ヘキシルジグリコール、1,5−ペンタンジオール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、2−エチルヘキシルジグリコール、オクタンジオール、フェニルグリコール、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、マレイン酸ジブチル、セバシン酸ビス(2−エチルへキシル)、アゼライン酸ビス(2−エチルヘキシル)、およびα,β,γ−ターピネオールなどが挙げられる。これらの溶剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0023】
(C)成分の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して、30質量%以上60質量%以下であることが好ましく、35質量%以上55質量%以下であることがより好ましい。(C)成分の配合量が前記下限以上であれば、はんだ組成物の粘度およびチクソ性を適切な範囲に調整しやすい。他方、(C)成分の配合量が前記上限以下であれば、はんだ組成物の溶融時に残るフラックスの残さ中に溶剤がより残存しにくくなる。
【0024】
[(D)成分]
本実施形態に用いる(D)チクソ剤は、(D1)アマイド系チクソ剤を含有することが好ましい。この(D1)成分によれば、はんだ組成物の降伏値の上昇を抑えつつ、粘性やチクソ性を向上できる傾向にある。
(D1)成分としては、N,N’−ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’−エチレンビスステアリン酸アミド、N,N’−エチレンビスカプリン酸アミド、N,N’−エチレンビスラウリン酸アミド、N,N’−エチレンビスベヘン酸アミド、N,N’−ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、N,N’−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’−ジステアリルセバシン酸アミド、N,N’−エチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−エチレンビスエルカ酸アミド、N,N’−ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミド、N,N’−m−キシリレンビスステアリン酸アミド、N,N’−m−キシリレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、および、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミドなどが挙げられる。これらの中でも、はんだ組成物の降伏値の観点から、N,N’−ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’−エチレンビスステアリン酸アミドが好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
(D)成分は、本発明の目的に影響のない範囲であれば、前記(D1)成分以外の他のチクソ剤((D2)成分)を含有していてもよい。ただし、この(D2)成分を用いる場合、その配合量は、(D)成分100質量%に対して、30質量%以下であることが好ましい。
(D2)成分としては、グリセリンエステル系チクソ剤(硬化ひまし油など)、無機系チクソ剤(カオリン、コロイダルシリカ、有機ベントナイト、ガラスフリットなど)が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0025】
(D)成分の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して、3質量%以上15質量%以下であることが好ましく、5質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。(D)成分の配合量が前記下限以上であれば、十分なチクソ性が得られ、プリヒート時のだれをより確実に抑制できる。他方、(D)成分の配合量が前記上限以下であれば、チクソ性が高すぎて、塗布不良となることはない。
【0026】
[(E)成分]
本実施形態に用いる(E)イミダゾール化合物としては、公知のイミダゾール化合物を適宜用いることができる。この(E)成分により、はんだ組成物の粘度が低いままでも、プリヒート時のだれを抑制できる。
(E)成分としては、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、ベンゾイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾールなどが挙げられる。これらの中でも、プリヒート時のだれの抑制の観点から、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールがより好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0027】
(E)成分の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上3質量%以下であることが特に好ましい。(E)成分の配合量が前記下限以上であれば、プリヒート時のだれをより確実に抑制できる。他方、(E)成分の配合量が前記上限以下であれば、保存安定性を維持できる。
【0028】
[(F)成分]
本実施形態に用いるフラックス組成物においては、プリヒート時のだれをより確実に抑制するという観点から、さらに(F)ピラゾール化合物を含有することが好ましい。ここで用いる(F)ピラゾール化合物としては、公知のピラゾール化合物を適宜用いることができる。
(F)成分としては、3,5−ジメチルピラゾール、3,5−ジイソプロピルピラゾール、および4−メチルピラゾールなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0029】
(F)成分を用いる場合、その配合量は、フラックス組成物100質量%に対して、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以上3質量%以下であることがより好ましく、0.4質量%以上1質量%以下であることが特に好ましい。(F)成分の配合量が前記下限以上であれば、プリヒート時のだれをより確実に抑制できる。他方、(F)成分の配合量が前記上限以下であれば、保存安定性を維持できる。
【0030】
[他の成分]
本発明に用いるフラックス組成物には、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分および(F)成分の他に、必要に応じて、その他の添加剤、更には、その他の樹脂を加えることができる。その他の添加剤としては、酸化防止剤、消泡剤、改質剤、つや消し剤、発泡剤などが挙げられる。その他の樹脂としては、アクリル系樹脂などが挙げられる。
【0031】
[(G)成分]
本実施形態に用いる(E)はんだ粉末は、無鉛のはんだ粉末のみからなることが好ましいが、有鉛のはんだ粉末であってもよい。このはんだ粉末におけるはんだ合金としては、スズを主成分とする合金が好ましい。また、この合金の第二元素としては、銀、銅、亜鉛、ビスマス、アンチモンなどが挙げられる。さらに、この合金には、必要に応じて他の元素(第三元素以降)を添加してもよい。他の元素としては、銅、銀、ビスマス、アンチモン、アルミニウム、インジウムなどが挙げられる。
無鉛のはんだ粉末としては、具体的には、Sn/Ag、Sn/Ag/Cu、Sn/Cu、Sn/Ag/Bi、Sn/Bi、Sn/Ag/Cu/Bi、Sn/Sbや、Sn/Zn/Bi、Sn/Zn、Sn/Zn/Al、Sn/Ag/Bi/In、Sn/Ag/Cu/Bi/In/Sb、In/Agなどが挙げられる。
【0032】
前記はんだ粉末の平均粒子径は、1μm以上40μm以下であることが好ましく、5μm以上35μm以下であることがより好ましく、10μm以上30μm以下であることが特に好ましい。平均粒子径が上記範囲内であれば、はんだ付けランドのピッチの狭くなってきている最近のプリント配線基板にも対応できる。なお、平均粒子径は、動的光散乱式の粒子径測定装置により測定できる。
【0033】
[はんだ組成物の製造方法]
本発明のディスペンス塗布用はんだ組成物は、上記説明したフラックス組成物と上記説明した(G)はんだ粉末とを上記所定の割合で配合し、撹拌混合することで製造できる。
【0034】
[はんだ組成物を用いた接続方法]
次に、本発明のディスペンス塗布用はんだ組成物を用いた、配線基板および電子部品などの電極同士の接続方法について説明する。ここでは、配線基板および電子部品の電極同士を接続する場合を例に挙げて説明する。
このように配線基板および電子部品の電極同士を接続する方法としては、前記配線基板上に前記はんだ組成物を、ディスペンス塗布法により塗布する塗布工程と、前記はんだ組成物上に前記電子部品を配置し、リフロー炉により加熱して、前記電子部品を前記配線基板に実装するリフロー工程と、を備える方法を採用できる。
【0035】
塗布工程においては、前記配線基板上に前記はんだ組成物を、ディスペンス塗布法により塗布する。
ここで用いる塗布装置は、図1に示すようなディスペンス塗布装置1である。ディスペンス塗布装置1は、シリンジ11と、ニードル12と、押圧部13と、を備えている。ディスペンス塗布装置1においては、はんだ組成物は、シリンジ11に充填される。そして、ディスペンス塗布装置1によりはんだ組成物を塗布する場合には、押圧部13がシリンジ11に充填されたはんだ組成物を押圧して、ニードル12からはんだ組成物を塗布する。
前記本実施形態のディスペンス塗布用はんだ組成物は、ディスペンス塗布法における塗布性が優れており、このようなディスペンス塗布装置で良好に塗布できる。
【0036】
ディスペンス塗布装置1における塗布条件は、特に限定されないが、以下の通りであることが好ましい。
ニードル12におけるノズル径は、0.1mm以上1mm以下であることが好ましく、0.2mm以上0.6mm以下であることがより好ましい。
押圧部13での圧力は、50kPa以上300kPa以下であることが好ましい。
塗布時間は、0.1秒間以上0.5秒間以下であることが好ましい。
タクトは、0.5ショット/秒以上3ショット/秒以下であることが好ましい。
クリアランス(ニードル12と配線基板との距離)は、0.1mm以上1mm以下であることが好ましく、0.2mm以上0.7mm以下であることがより好ましく、0.3mm以上0.5mm以下であることが特に好ましい。
塗布温度は、20℃以上30℃以下であることが好ましく、22℃以上28℃以下であることがより好ましい。
【0037】
リフロー工程においては、前記はんだ組成物上に前記電子部品を配置し、リフロー炉により所定条件にて加熱する。このリフロー工程により、電子部品および配線基板の間に十分なはんだ接合を行うことができる。その結果、前記電子部品を前記配線基板に実装することができる。
リフロー条件は、はんだの融点に応じて適宜設定すればよい。例えば、Sn−Au−Cu系のはんだ合金を用いる場合には、プリヒートを温度150〜180℃で60〜120秒間行い、ピーク温度を240〜260℃に設定すればよい。
【0038】
また、本発明のはんだ組成物を用いた接続方法は、前記接続方法に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本発明に含まれるものである。
例えば、前記接続方法では、リフロー工程により、配線基板と電子部品とを接着しているが、これに限定されない。例えば、リフロー工程に代えて、レーザー光を用いてはんだ組成物を加熱する工程(レーザー加熱工程)により、配線基板と電子部品とを接着してもよい。この場合、レーザー光源としては、特に限定されず、金属の吸収帯に合わせた波長に応じて適宜採用できる。レーザー光源としては、例えば、固体レーザー(ルビー、ガラス、YAGなど)、半導体レーザー(GaAs、InGaAsPなど)、液体レーザー(色素など)、気体レーザー(He−Ne、Ar、CO、エキシマーなど)が挙げられる。
【実施例】
【0039】
次に、本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例および比較例にて用いた材料を以下に示す。
((A1)成分)
ロジン系樹脂A:水添酸変性ロジン、商品名「KE−604」、荒川化学工業社製((A2)成分)
ロジン系樹脂B:完全水添ロジン、商品名「フォーラルAX」、双日社製
((A3)成分)
ロジン系樹脂C:重合ロジン、商品名「中国重合ロジン140」、荒川化学工業社製
((B)成分)
活性剤A:コハク酸
活性剤B:グルタル酸
活性剤C:ピコリン酸
((C)成分)
溶剤A:2−エチルヘキシルジグリコール、日本乳化剤社製
溶剤B:α,β,γ−ターピネオール、商品名「ターピネオールC」、日本テルペン化学社製
((D1)成分)
チクソ剤A:N,N’−ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、商品名「スリパックスZHH」、日本化成社製
((D2)成分)
チクソ剤B:水添ヒマシ油、商品名「ヒマ硬」、KFトレーディング社製
((E)成分)
イミダゾール化合物A:2−エチルイミダゾール、商品名「2EZ」、四国化成工業社製イミダゾール化合物B:2−エチル−4−メチルイミダゾール、商品名「2E4MZ」、四国化成工業社製
イミダゾール化合物C:2−フェニル−4−メチルイミダゾール、商品名「2P4MZ」、四国化成工業社製
((F)成分)
ピラゾール化合物:3,5−ジメチルピラゾール
((G)成分)
はんだ粉末A:粒子径5〜15μm、はんだ融点216〜220℃、はんだ組成Sn/3.0Ag/0.5Cu
はんだ粉末B:粒子径20〜36μm、はんだ融点216〜220℃、はんだ組成Sn/3.0Ag/0.5Cu
(その他の成分)
酸化防止剤A:商品名「イルガノックス MD1024」、BASF社製
酸化防止剤B:商品名「イルガノックス245」、BASF社製
【0040】
[実施例1]
ロジン系樹脂A22質量%、ロジン系樹脂B7質量%、ロジン系樹脂C8質量%、チクソ剤A6.6質量%、チクソ剤B1.8質量%、酸化防止剤A0.9質量%、酸化防止剤B1.8質量%、活性剤A0.5質量%、活性剤B4質量%、活性剤C1質量%、イミダゾール化合物A1.8質量%、ピラゾール化合物0.4質量%、溶剤A32.3質量%および溶剤B11.9質量%をそれぞれ容器に投入し、マントルヒーターにて160℃に加熱しつつ、混練機(プラネタリーミキサー)にて混合してフラックス組成物を得た。
その後、得られたフラックス組成物14.8質量%およびはんだ粉末85.2質量%(合計で100質量%)を容器に投入し、混練機(プラネタリーミキサー)にて混合することで、はんだ組成物を調製した。
また、得られたはんだ組成物について、JIS Z3284付属書6に準拠し、E型粘度計により測定を行った。回転数を10rpm、温度を25℃にして、粘度値η(単位:mPa・s)を読み取った。また、上記と同様にして、回転数を30rpmに調整した場合の粘度値(30rpm粘度)と、回転数を3rpmに調整した場合の粘度値(3rpm粘度)とを読み取った。そして、下記式に基づいて、チクソ指数を算出した。得られた結果を表1に示す。
チクソ指数=log[(3rpm粘度)/(30rpm粘度)]
さらに、得られたはんだ組成物について、レオメーター(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製の「MARS III」)を用いて、せん断速度10s−1の条件で、温度25℃における粘度の測定を行った。得られた結果を表1に示す。
【0041】
[実施例2〜6および比較例1〜3]
表1に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にしてはんだ組成物を得た。
また、得られたはんだ組成物について、実施例1と同様にして、粘度およびチクソ指数を測定した。
【0042】
<はんだ組成物の評価>
はんだ組成物の性能(塗布性、加熱だれ、チップ脇ボール)を以下のような方法で評価または測定した。得られた結果を表1に示す。
(1)塗布性
ディスペンス塗布装置(武蔵エンジニアリング社製の「SHOT mini」)を用いて、下記の塗布条件にて、基板(材質:アルミニウム、大きさ:150mm×150mm、厚み:0.5mm)上の100mm×100mmの範囲内に等間隔で10000点の吐出(100点×100列)を行って試験基板を得た。
ニードルにおけるノズル径(直径):0.4mm
押圧部での圧力:120kPa
塗布時間:0.3秒間
タクト:1ショット/秒
クリアランス:0.35mm
塗布温度:25℃
そして、得られた試験基板を目視にて観察し、以下の基準に従って、塗布性を評価した。
○:未塗布が発生しなかった。
△:未塗布が発生したが、未塗布の数は、100個当たり、5個以下である。
×:未塗布が発生し、未塗布の数は、100個当たり、5個超である。
(2)加熱だれ
JIS Z 3284−3:2014に記載の方法に準拠して、加熱だれの試験を行う。すなわち、銅張積層板(大きさ:80mm×60mm、厚み:1.6mm)を準備し、研磨剤で研磨し、IPAで表面をふいた。そして、この銅張積層板上に、(i)3.0×0.7mmまたは(ii)3.0×1.5mmの2種類のパターンの孔をもち、それを0.1mmステップで配置している2種類のパターン孔をもつ厚み0.2mmのメタルマスクを使用し、はんだ組成物を印刷して試験基板を得た。この試験基板に対し、図2に示すリフロー条件にて、酸素濃度1000ppm以下の雰囲気下にてリフロー処理を施した。得られた試験基板を目視にて観察し、2種類のパターンの5列のうち、印刷されたはんだ組成物のすべてが一体にならない最小間隔で、加熱だれを評価した。なお、この最小間隔が小さいほど、加熱だれが良好である。
(3)チップ脇ボール
チップ部品(3216CRチップ)を搭載できる評価用基板(タムラ製作所社製の「SP−011」)に、上記(1)塗布性の試験と同様の条件で、はんだ組成物を塗布し、チップ部品38個を搭載して試験基板を得た。この試験片に対し、図2に示すリフロー条件にて、酸素濃度1000ppm以下の雰囲気下にてリフロー処理を施した。得られた試験基板を拡大鏡にて観察し、チップ部品の脇に発生したはんだボールの数(個)を測定した。なお、比較例2については、塗布性が不良であったため、チップ脇ボールの評価をしなかった。
【0043】
【表1】
【0044】
表1に示す結果からも明らかなように、本発明のディスペンス塗布用はんだ組成物を用いた場合(実施例1〜6)には、塗布性、加熱だれ、およびチップ脇ボールの評価結果が全て良好であった。このことから、本発明のディスペンス塗布用はんだ組成物によれば、ディスペンス塗布法により塗布する場合に、十分な塗布性を有し、かつ、プリヒート時のだれを十分に抑制できることが確認された。
これに対し、(E)イミダゾール化合物を含有していない場合(比較例1)には、加熱だれが不十分であることが分かった。また、はんだ組成物の粘度が高すぎる場合(比較例2)には、ディスペンス塗布法における塗布性が不十分であることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のディスペンス塗布用はんだ組成物は、電子部品と配線基板とを接続する技術として好適に用いることができる。
図1
図2