特許第6684417号(P6684417)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サーチウェア株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6684417-車両 図000002
  • 特許6684417-車両 図000003
  • 特許6684417-車両 図000004
  • 特許6684417-車両 図000005
  • 特許6684417-車両 図000006
  • 特許6684417-車両 図000007
  • 特許6684417-車両 図000008
  • 特許6684417-車両 図000009
  • 特許6684417-車両 図000010
  • 特許6684417-車両 図000011
  • 特許6684417-車両 図000012
  • 特許6684417-車両 図000013
  • 特許6684417-車両 図000014
  • 特許6684417-車両 図000015
  • 特許6684417-車両 図000016
  • 特許6684417-車両 図000017
  • 特許6684417-車両 図000018
  • 特許6684417-車両 図000019
  • 特許6684417-車両 図000020
  • 特許6684417-車両 図000021
  • 特許6684417-車両 図000022
  • 特許6684417-車両 図000023
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6684417
(24)【登録日】2020年4月1日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   B62K 5/10 20130101AFI20200413BHJP
   B62K 5/027 20130101ALI20200413BHJP
   B62K 5/05 20130101ALI20200413BHJP
   B62D 6/00 20060101ALI20200413BHJP
   B62D 9/00 20060101ALI20200413BHJP
   B62D 11/04 20060101ALI20200413BHJP
   B62D 101/00 20060101ALN20200413BHJP
   B62D 113/00 20060101ALN20200413BHJP
【FI】
   B62K5/10
   B62K5/027
   B62K5/05
   B62D6/00ZYW
   B62D9/00
   B62D11/04 Z
   B62D11/04 D
   B62D101:00
   B62D113:00
【請求項の数】5
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2018-127206(P2018-127206)
(22)【出願日】2018年7月4日
(65)【公開番号】特開2020-6735(P2020-6735A)
(43)【公開日】2020年1月16日
【審査請求日】2019年6月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】513258897
【氏名又は名称】サーチウェア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127339
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥井 政▲徳▼
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正伸
【審査官】 中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5757511(JP,B1)
【文献】 特許第6003712(JP,B2)
【文献】 特開平05−039073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 5/02
B62K 5/027
B62K 5/05
B62K 5/10
B62D 6/00 − 6/10
B62D 9/00 − 9/04
B62D 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の前輪と、
少なくとも1つの後輪と、
前記各前輪をそれぞれ回転可能に支持する前輪支持部材と、
前記前輪支持部材を第一の軸芯回りに回動可能に支持すると共に前記後輪を回転可能に支持する車体と、
前記各前輪に対して駆動力を個別に付与する駆動力付与手段とを備え、
前記各前輪に前記駆動力付与手段により個別に駆動力を付与することで発生する前記各前輪間における駆動力の差により前記前輪支持部材を前記車体に対して前記第一の軸芯回りに回動させる転舵力を発生させるようにし、
前記前輪支持部材を前記車体に対して前記第一の軸芯回りに回動させることで前記各前輪を操向するようにした車両において、
前記転舵力に抗して抵抗力を付与する転舵抵抗力付与手段と、
前記駆動力付与手段および前記転舵抵抗力付与手段を制御する制御手段とをさらに備え、
前記後輪は、水平方向の全ての方向または水平方向の規定された角度の範囲内で転動方向を自由に変更可能に構成され、
前記制御手段は、前記車両の運転状況に応じて前記抵抗力を調整すべく前記転舵抵抗力付与手段を制御するように構成され、前記車両が高速で走行しているときより低速で走行しているときの方が、前記抵抗力が大きくなるように前記転舵抵抗力付与手段を制御するように構成されていることを特徴とする車両。
【請求項2】
請求項に記載の車両において、
前記制御手段は、
前記各前輪の転舵時に一時的に、前記抵抗力が大きくなるように前記転舵抵抗力付与手段を制御すると共に、前記各前輪に付与される駆動力が、転舵方向内側の前輪より転舵方向外側の前輪の方が小さくなるように前記駆動力付与手段を制御した後、引き続いて、
前記抵抗力が小さくなるように前記転舵抵抗力付与手段を制御すると共に、前記各前輪に付与される駆動力が、転舵方向内側の前輪より転舵方向外側の前輪の方が大きくなるように前記駆動力付与手段を制御するように構成されていることを特徴とする車両。
【請求項3】
請求項1または請求項に記載の車両において、
前記後輪は単一の後輪からなり、該後輪を回転可能に支持する後輪支持部材をさらに備え、
前記後輪支持部材は、第二の軸芯回りに回動可能に前記車体に支持され、
前記第一の軸芯および前記第二の軸芯は、それぞれ上部が下部より前方に位置するように傾斜し、
前記第二の軸芯は、それが下方に向かって延長された仮想直線と前記車両が前進しているときの走行路面との交点が前記後輪の前記走行路面との接地点より前記後輪の転動方向前方に位置するように配置されていることを特徴とする車両。
【請求項4】
請求項に記載の車両において、
前記後輪が指向し得る転動方向の範囲を変更可能な転動方向範囲変更手段をさらに設け、
前記制御手段により前記転動方向範囲変更手段を制御するようにしたことを特徴とする車両。
【請求項5】
請求項に記載の車両において、
前記制御手段は、前記車両が低速で走行するときより高速で走行するときの方が、前記後輪の転動方向の範囲が狭くなるように前記転動方向範囲変更手段を制御するように構成されていることを特徴とする車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右一対の前輪と、少なくとも1つの後輪とを備え、左右一対の前輪間における駆動力の差により前輪支持部材を車体に対して相対回動させることで各前輪の操向を行うようにした車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されている従来の車両は、左右一対の前輪間における駆動力の差により前輪支持部材を転舵軸回りに回動させることで各前輪を操向するように構成され、主に各前輪を操向することで車両を操舵している。
また、特許文献2に示されている従来の車両は、左右一対の前輪間における駆動力の差により発生したヨーモーメントにより、後輪を支持するキャスターハウジングが後輪転舵軸回りに回動することで転舵されるように構成されている。そして、キャスターハウジングの後輪転舵軸回りの回動に抗するようにコイルばねによる付勢力が常に付与されており、その付勢力は、走行速度が大きいほど大きくなるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5757511号公報
【特許文献2】特許第6003712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示されている従来の車両では、前輪支持部材と車体との干渉を回避するために前輪支持部材の転舵軸回りの回動角度が一定の範囲に制限されるので、車両が旋回走行する場合の旋回半径をあまり小さくすることができなかった。
また、特許文献2に示されている従来の車両では、キャスターハウジングの後輪転舵軸回りの回動に抗するようにコイルばねによる付勢力が常に付与されているので、各前輪間における駆動力の差によりキャスターハウジングを後輪転舵軸回りに回動させようとしても円滑に回動させることができなかった。このため、各前輪の駆動力の差によるヨーモーメントにより後輪を転舵させる際の応答性が悪かった。
【0005】
本発明は、このような問題を解消するためになされたもので、左右一対の前輪間における駆動力の差により前輪および後輪を円滑に転舵させることができ、かつ、比較的小さな旋回半径で走行させることができる車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明に係る車両は、左右一対の前輪と、少なくとも1つの後輪と、前記各前輪をそれぞれ回転可能に支持する前輪支持部材と、前記前輪支持部材を第一の軸芯回りに回動可能に支持すると共に前記後輪を回転可能に支持する車体と、前記各前輪に対して駆動力を個別に付与する駆動力付与手段とを備え、前記各前輪に前記駆動力付与手段により個別に駆動力を付与することで発生する前記各前輪間における駆動力の差により前記前輪支持部材を前記車体に対して前記第一の軸芯回りに回動させる転舵力を発生させるようにし、前記前輪支持部材を前記車体に対して前記第一の軸芯回りに回動させることで前記各前輪を操向するようにした車両において、前記転舵力に抗して抵抗力を付与する転舵抵抗力付与手段と、前記駆動力付与手段および前記転舵抵抗力付与手段を制御する制御手段とをさらに備え、前記後輪は、水平方向の全ての方向または水平方向の規定された角度の範囲内で転動方向を自由に変更可能に構成され、前記制御手段は、前記車両の運転状況に応じて前記抵抗力を調整すべく前記転舵抵抗力付与手段を制御するように構成され、前記車両が高速で走行しているときより低速で走行しているときの方が、前記抵抗力が大きくなるように前記転舵抵抗力付与手段を制御するように構成されていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項に記載した発明に係る車両は、請求項に記載の車両において、前記制御手段は、前記各前輪の転舵時に一時的に、前記抵抗力が大きくなるように前記転舵抵抗力付与手段を制御すると共に、前記各前輪に付与される駆動力が、転舵方向内側の前輪より転舵方向外側の前輪の方が小さくなるように前記駆動力付与手段を制御した後、引き続いて、前記抵抗力が小さくなるように前記転舵抵抗力付与手段を制御すると共に、前記各前輪に付与される駆動力が、転舵方向内側の前輪より転舵方向外側の前輪の方が大きくなるように前記駆動力付与手段を制御するように構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項に記載した発明に係る車両は、請求項1または請求項に記載の車両において、前記後輪は単一の後輪からなり、該後輪を回転可能に支持する後輪支持部材をさらに備え、前記後輪支持部材は、第二の軸芯回りに回動可能に前記車体に支持され、前記第一の軸芯および前記第二の軸芯は、それぞれ上部が下部より前方に位置するように傾斜し、前記第二の軸芯は、それが下方に向かって延長された仮想直線と前記車両が前進しているときの走行路面との交点が前記後輪の前記走行路面との接地点より前記後輪の転動方向前方に位置するように配置されていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項に記載した発明に係る車両は、請求項に記載の車両において、前記後輪が指向し得る転動方向の範囲を変更可能な転動方向範囲変更手段をさらに設け、前記制御手段により前記転動方向範囲変更手段を制御するようにしたことを特徴とするものである。
【0011】
請求項に記載した発明に係る車両は、請求項に記載の車両において、前記制御手段は、前記車両が低速で走行するときより高速で走行するときの方が、前記後輪の転動方向の範囲が狭くなるように前記転動方向範囲変更手段を制御するように構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、後輪は転動方向を自由に変更可能に構成され、前輪を転舵させようとする転舵力に抗する抵抗力を車両の運転状況に応じて調整するように構成されている。このため、各前輪に付与する駆動力と前輪の転舵力に抗する抵抗力とを適宜制御することで、車両の運転状況に応じて前輪および後輪の転舵を好適に制御することができる。また、後輪は転動方向を自由に変更可能に構成されているので、各前輪の駆動力の差によるヨーモーメントにより後輪を転舵させる際の応答性が良好となる。
【0013】
詳細には、車両が高速で走行するときより低速で走行するときの方が、前輪の転舵力に抗する抵抗力が大きくなるように制御されるので、低速での走行時に、各前輪間の駆動力の差によるヨーモーメントにより後輪を円滑に転舵させることができる。このため、比較的小さな旋回半径で車両を旋回させることができ、狭い場所等でも小回りが利く。
一方、車両が高速で走行するときは、低速で走行するときより前輪の転舵力に抗する抵抗力が小さくなるように制御されるので、各前輪間の駆動力の差によるヨーモーメントは、前輪支持部材を車体に対して第一の軸芯回りに回動させるように作用する。このため、後輪による転舵を抑制することができると共に主に前輪により転舵されるので、高速での旋回性能を確保することができる。
【0014】
請求項記載の発明によれば、車両を旋回走行させる場合に、前輪の転舵力に抗する抵抗力と各前輪に付与される駆動力とを二段階に亘って適宜制御するようにしている。このため、第一段階の制御で一時的に弾性変形していた前輪支持部材および前輪が元の状態に復帰しようとする復元力を、第二段階の制御のときに、前輪および前輪支持部材を車体に対して相対回動させる力として利用することができる。このため、その分、前輪の転舵を迅速に行うことができるだけでなく、前輪の転舵を補助するために特別な装置を設ける必要もない。
【0015】
請求項記載の発明によれば、前輪支持部材の回動中心たる第一の軸芯は、上部が下部より前方に位置するように傾斜しているので、車両の旋回方向に前輪支持部材が回動すると旋回方向内側に車体が傾斜し、これに伴って、後輪支持部材の回動中心たる第二の軸芯も同様に傾斜する。該第二の軸芯は、上部が下部より前方に位置するように傾斜し、その延長した仮想直線と走行路面との交点が後輪の接地点より後輪の転動方向前方に位置している。このため、車体が傾斜すると、後輪の接地点における走行路面からの鉛直方向上方への反力は、後輪を介して後輪支持部材を第二の軸芯回りに回動させて、後輪の転動方向前側を車体の傾斜方向に指向させるように作用する。この結果、その傾斜方向とは反対方向に過度に後輪が指向することがないので、車両が安定して旋回走行することができる。
【0016】
請求項記載の発明によれば、後輪が指向し得る転動方向の範囲を変更可能な転動方向範囲変更手段をさらに設けたので、直進方向を中央に含む狭い角度範囲に後輪の転動方向を規制することにより、後輪が第二の軸芯回りに不所望に大きく回動することを防止することができる。また、転動方向範囲変更手段は、後輪の転動方向の範囲を変更するものであるので、その範囲内では後輪の転動方向を自由に変更することができるため、転動方向範囲変更手段を設けたことで、各前輪の駆動力の差によるヨーモーメントにより後輪を転舵させる際の応答性を損なうことはない。
【0017】
請求項記載の発明によれば、車両が低速で走行するときより高速で走行するときの方が、後輪の転動方向の範囲が狭くなるように制御されるので、直進方向を中央に含む狭い角度範囲に後輪の転動方向を規制することにより、車両が高速で走行しているときに受ける横風や路面の起伏等の外乱の影響で後輪が第二の軸芯回りに不所望に大きく回動することを防止することができる。
一方、低速で走行するときは、高速で走行するときより後輪の転動方向の範囲が広くなるように制御されるので、その分、後輪の転舵の範囲が広がるため、車両の取り回し性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る車両を前方斜め上方から見た状態を示す車両全体図である。
図2】同車両を左側方から見た状態を示す外観図である。
図3】同車両を上方から見た状態を示す外観図である。
図4】同車両を前方から見た状態を示す外観図である。
図5】同車両に搭載された制御装置および該制御装置と関係する各種機器の概略の構成を示すブロック図である。
図6】同車両に組み付けられた抵抗力付与装置を破断して示した縦断面図である。
図7】同抵抗力付与装置の長手方向中途部を破断して斜め上方から見た状態を示した図である。
【0019】
図8】低速で旋回走行する場合の同車両の挙動を説明するための模式図である。
図9】低速で旋回走行している同車両を上方から見た状態を示す外観図である。
図10】低速で旋回走行している同車両を前方から見た状態を示す外観図である。
図11】高速で旋回走行する場合の同車両の挙動を説明するための模式図である。
図12】高速で旋回走行している同車両を前方から見た状態を示す外観図である。
図13】抵抗力付与装置の抵抗力の大きさと前輪側および後輪側の転舵量との関係を示すグラフである。
【0020】
図14】各前輪に付与される駆動力の差と抵抗力付与装置の抵抗力とを変化させた場合の、前輪側および後輪側の転舵量が変化する様子を示すグラフである。
図15】同車両に組み付けられた回動角度規制装置を破断して示した縦断面図である。
図16】同回動角度規制装置を、カバーを取り外して斜め上方から見た状態を示した図である。
図17】本発明の実施形態に係る車両の制御を変更した第1の変形例を示す図であって、車両が高速で旋回走行する場合の挙動を説明するための模式図である。
図18】本発明の実施形態に係る車両の制御を変更した第2の変形例を示す図であって、車両が高速で旋回走行する場合の挙動を説明するための模式図である。
【0021】
図19】第2の変形例に係る車両が高速で旋回走行しているところを上方から見た状態を示す外観図である。
図20】本発明の実施形態に係る車両の制御を変更した第3の変形例を示す図であって、車両が高速で旋回走行する場合において、各前輪に付与される駆動力の差と抵抗力付与装置の抵抗力とが二段階の制御により変化するときの、前輪側の転舵量が変化する様子を示すグラフである。
図21】本発明の実施形態に係る車両の抵抗力付与装置とは異なる構成からなる第4の変形例に係る抵抗力付与装置を破断して示した縦断面図である。
図22】本発明の実施形態に係る車両の後輪およびその取付構造を変更した第5の変形例に係る車両を前方斜め上方から見た状態を示す車両全体図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態に係る車両の一例を図1ないし図16を参照して詳細に説明する。図1ないし図4図9図10および図12において符号1で示すものは、本発明の実施形態に係る車両である。図1ないし図3および図9において矢印Fで示す方向は車両1の前方を示す。以下の説明で車両1およびその各構成部材に関して方向や部位を示すために使用する前・後、左・右、上・下および内・外の語句は、各構成部材が車両1に組み付けられた状態において、車両1に乗車して見たときの方向や位置を指すものとする。車両1の前部には左右一対の前輪3,3を備え、各前輪3はそれぞれ回転可能に前輪支持部材5によって支持され、前輪支持部材5は車体フレーム7に揺動可能に支持されている。車両1の後部には単一の後輪9が後輪支持部材11を介して車体フレーム7に回転可能に支持されている。車体フレーム7は、本発明でいう「車体」を構成する。
【0023】
車体フレーム7は、車両1の左右方向中央を前後方向に延びる円管状のフレーム本体13と、該フレーム本体13の前後方向中間部に結着された半円形状のステップ15と、フレーム本体13の前端に結着された円管状の軸支持部材17と、該軸支持部材17の後方近傍でフレーム本体13に結着され後方斜め上方に向かって延びるハンドルポスト19と、フレーム本体13の後端に結着された円管状の軸支持部材21とを備えている。フレーム本体13の前後方向中央部は下方に向かって屈曲形成され、この曲形成された部位にステップ15が結着されている。ステップ15の左右方向中央部は、その前端部および後端部の凹状に切り欠かれた部位にフレーム本体13が配設され結着されている。フレーム本体13は、ステップ15の前端部および後端部の凹状に切り欠かれた各部位から前方斜め上方と後方斜め上方とに向かってそれぞれ延びている。下方に向かって凸状に屈曲形成されたフレーム本体13の前後方向中間部は、ステップ15の下方に位置付けられている。
【0024】
前輪支持部材5の左右方向中央部は、軸支持部材17内に配設され該軸支持部材17に一体的に結着された前輪転舵軸23(図2参照)を介して該前輪転舵軸23の軸芯Lf回りに回動可能に軸支持部材17に支持されている。軸芯Lfは、その上部が下部より前方に位置するように傾斜している。軸芯Lfは、本発明でいう「第一の軸芯」を構成する。前輪支持部材5の左右方向両端部には、キャンバー軸25を介して該キャンバー軸25の軸芯Lc回りに回動可能に左右一対のモータハウジング27,27の下部がそれぞれ支持されている。軸芯Lcは、その前部が後部より下方に位置するように傾斜して前後方向に延びるように配置されている。各モータハウジング27内には、各前輪3に対して前輪3ごとに駆動力を個別に付与するための電動モータ29(図5参照)が配設されている。各前輪3は、所謂、ホイールインモータの構造からなる。電動モータ29は、本発明でいう「駆動力付与手段」を構成する。電動モータ29の回転軸が各前輪3のハブ(図示せず)にそれぞれ結着され、電動モータ29の回転軸が回転することで前輪3が回転するように構成されている。
【0025】
各前輪3に電動モータ29により個別に駆動力を付与することで発生する各前輪3間における駆動力の差により、前輪支持部材5を車体フレーム7に対して軸芯Lf回りに回動させる転舵力が発生する。そして、前輪支持部材5を車体フレーム7に対して軸芯Lf回りに回動させることで各前輪3を操向するように構成されている。なお、各前輪3間における駆動力の差を発生させる際に各前輪3に付与される駆動力としては、車両1の進行方向と同一の方向に前輪3を駆動する駆動力と、車両1の進行方向とは逆の方向に前輪3を駆動する駆動力とが含まれ、逆の方向に前輪3を駆動する駆動力には、後述する回生制動力が含まれる。そして、各前輪3間に駆動力の差が発生する場合としては、同一の方向に異なる大きさの駆動力が前輪3にそれぞれ付与される場合と、互いに逆の方向に同一または異なる大きさの駆動力が前輪3にそれぞれ付与される場合とがある。
【0026】
ハンドルポスト19が結着された部位とステップ15が結着された部位との間に位置するフレーム本体13の部位には、左右方向に延びるように配置された左右一対の棒状のキャンバリンク部材31,31の一端部がそれぞれボール継手またはゴムブッシュを介して回動可能に連結され、各キャンバリンク部材31の他端部は、各モータハウジング27の上部にそれぞれボール継手を介して回動可能に連結されている。
【0027】
一方、後輪支持部材11は、その上端部に設けられた後輪転舵軸11a(図2参照)が軸支持部材21内に挿通され、該後輪転舵軸11aを介して該後輪転舵軸11aの軸芯Lr回りに回動可能に軸支持部材21に支持されている。これによって、後輪9は、水平方向において全ての方向に後輪支持部材11と共に軸芯Lr回りに回動可能に構成され、水平方向の全ての方向に転動方向を自由に変更可能に構成されている。軸芯Lrは、本発明でいう「第二の軸芯」を構成する。
また、軸芯Lrは、その上部が下部より前方に位置するように傾斜している。図2に示すように、、軸芯Lrは、それが下方に向かって延長された仮想直線Sと車両1の走行路面Rとの交点Pが、車両1が前進している状態では、後輪9の走行路面Rとの接地点Qより後輪9の転動方向前方に位置するように配置されている。この配置関係によって、後輪9は車両1の進行に追随して的確な進行方向を指向しながら転動することができる。
【0028】
ステップ15は、図2に示すように、フレーム本体13に結着された基面板15aと、該基面板15aの上方に配置された上面板15bとを備えている。乗員は上面板15b上に立ち乗りする。基面板15aと上面板15bとの間には、乗員が立ち乗りしたときに上面板15bに付与される荷重を検出する複数の荷重センサ33…が配設されている。配設される荷重センサ33の個数は、上面板15bに付与される前後左右の荷重分布を取得することができる個数であればよく、少なくとも3個あればよい。3個の場合は、基面板15a上における前側または後側の何れか一方側で左右方向に離間した位置に2個配設し、他方側で左右方向中央の位置に1個配設する。
【0029】
ハンドルポスト19の上端部には、二等辺三角形状のハンドル35が結着されている。該ハンドル35は、ハンドル本体35aと、該ハンドル本体35aに対して回動可能なグリップ35bとを備える。該グリップ35bは、前記二等辺三角形状の底辺に相当する部位に配設され、乗員が手で把持することができる。グリップ35bは、乗員の手の力で該グリップ35bの軸芯回りに回動可能に構成され、手の力を緩めると、トーションばね(図示せず)のばね力により中立位置に復帰するように構成されている。ハンドル本体35a内には、グリップ35bの軸芯回りの回動角度(回動方向を含む。)と中立位置とを検出するグリップ回動センサ37(図5参照)が配設されている。
【0030】
ハンドルポスト19におけるハンドル35の下方近傍には、車両1の走行モードを切り替える走行モード切替スイッチ39が配設されている。該走行モード切替スイッチ39は、「停止」、「低速走行モード」および「高速走行モード」のうち何れか一つを択一的に乗員が選択し切り替えることができる。ハンドルポスト19内の上端部には、ハンドルポスト19に対して該ハンドルポスト19の軸芯回りにハンドル35を回動させる回動力をその回動方向も含めて検出するハンドル回動力センサ41が配設されている。
【0031】
車体フレーム7の軸支持部材17内には、該軸支持部材17に対して前輪支持部材5が相対回動するときの回動角度を検出する前側回動センサ45(図5参照)が配設されている。
前輪転舵軸23の軸芯Lfと同軸上には抵抗力付与装置47が配設され、該抵抗力付与装置47は、各前輪3間における駆動力の差により前輪支持部材5を軸芯Lf回りに回動させる転舵力に抗する抵抗力を発生する。抵抗力付与装置47は、本発明でいう「抵抗力付与手段」を構成する。抵抗力付与装置47の抵抗力の大きさは、車両の運転状況に応じて略0から所定の大きさまで調整可能に構成され、その抵抗力の大きさに応じて、軸支持部材17に対して前輪支持部材5が相対回動し難くなる。このため、各前輪3に付与する駆動力と前輪3の転舵力に抗する抵抗力とを適宜制御することで、車両1の運転状況に応じて前輪3および後輪9の転舵を好適に制御することができる。また、後輪9は転動方向を自由に変更可能に構成されているので、各前輪3の駆動力の差によるヨーモーメントにより後輪9を転舵させる際の応答性が良好となる。
【0032】
一方、車体フレーム7の後端部の軸支持部材21内には、該軸支持部材21に対して後輪支持部材11が相対回動するときの回動角度を検出する後側回動センサ49(図5参照)が配設されている。
前記軸支持部材21の上端には、後述する回動角度規制装置99が結着されている。回動角度規制装置99は、後輪転舵軸11aの軸芯Lrと同軸上に配設され、軸支持部材21に対して後輪支持部材11が相対回動するときの回動可能な角度範囲を変更可能に構成されている。回動角度規制装置99により後輪支持部材11の回動可能な角度範囲が変更されることにより、後輪9が指向し得る転動方向の範囲も変更される。よって、回動角度規制装置99は、本発明でいう「転動方向範囲変更手段」を構成する。
【0033】
また、後輪支持部材11には、後輪9の回転速度を検出する後輪回転センサ53(図5参照)が配設されている。後輪回転センサ53による検出値に基づいて車両1の走行速度を求めるようにしている。なお、後輪回転センサ53を省略して、各電動モータ29の回転軸の回転速度をそれぞれ検出して、それらの検出値の平均値を演算で求めることで車両1の走行速度を求めるようにしてもよい。
また、後輪9の車軸上には、後輪9を制動するための電磁ブレーキ55が配設されている。該電磁ブレーキ55は、供給される電力に応じて連続的に磁力が増減するように構成され、供給される電力が大きいほど磁力が大きくなり制動力が小さくなる。電力が遮断されると電磁ブレーキ55内のばね部材のばね力により最大の制動力が付与されるように構成されている。なお、電磁ブレーキ55に替えて、ドラムブレーキまたはディスクブレーキを電動モータの駆動により作動させて制動力を発生させるようにしてもよい。
【0034】
前記抵抗力付与装置47は、図6および図7に示すように、軸受部材59を介して前輪転舵軸23に回動可能に支持された円環状の基部材61と、該基部材61の上面に一体的に結着されたシリンダ63と、前輪転舵軸23の上端に一体的に結着された隔壁65と、前輪転舵軸23の軸芯Lfと同軸に配設された螺子軸67と、該螺子軸67を軸芯Lfに沿う方向に進退させる電動アクチュエータ69とを備えている。基部材61の外周面には、前輪支持部材5の左右方向中央部の前端部が結着されている。前記シリンダ63は、軸芯Lfと同軸の軸芯を有する円環状のシリンダ本体部63aと、該シリンダ本体部63aの上部開口および下部開口をそれぞれ液密に閉塞する上面部63bおよび下面部63cと、シリンダ本体部63aの内周面からその軸芯に向かって突出するように、シリンダ本体部63aと一体に形成された可動隔壁部63dとを備えている。シリンダ63内には、作動油を貯留する油室71が形成されている。
【0035】
前記隔壁65は、軸芯Lfと同軸の軸芯を有する円柱状の軸部65aと、該軸部65aからシリンダ本体部63aの内周面に向かって突出するように軸部65aと一体に形成された隔壁部65bとを備えている。軸部65aの外周面に対向する可動隔壁部63dの対向面は、軸部65aの外周面に沿った円弧状に形成され、軸部65aの外周面に摺接可能に構成されている。これによって、シリンダ63内の油室71は、可動隔壁部63dと隔壁65とで2つの油室に区画されている。隔壁65の軸部65aには、その軸芯に沿って円柱状の軸穴が穿設され、該軸穴内には螺子軸67の円柱状の下端部が挿入されている。該円柱状の下端部の外周面は、軸部65aの軸穴の内周面に摺接可能に構成されている。螺子軸67は、隔壁65の軸部65aに対して、螺子軸67の軸芯に沿う方向には進退可能であるが、該軸芯回りの相対回動ができないように回転止めの構造に構成されている。軸部65aには、該軸部65aの軸穴の軸芯に直交するように貫通孔73が穿設されており、可動隔壁部63dと隔壁65とで油室71が区画されて形成されたシリンダ63内の2つの油室同士は、貫通孔73を介してのみ連通される。
【0036】
前記電動アクチュエータ69は、円筒状のケース69aと、該ケース69a内で前輪転舵軸23の軸芯Lfと同軸に配設された回転軸69bと、該回転軸69bと一体的に結着され該回転軸69bの周囲に配置されたロータ69cと、該ロータ69cの周囲に配置されケース69aの内周面に固定されたステータ69dとを備えている。回転軸69bには、その軸芯に沿って貫通孔が穿設され、該貫通孔の内周面には、その長手方向全域に亘って雌ねじ部が形成されている。該雌ねじ部には、前記螺子軸67が螺合されている。電動アクチュエータ69に電源が供給されて回転軸69bが回転し、前輪転舵軸23の軸芯Lfに沿う方向に螺子軸67が進退することで、軸部65aの貫通孔73の開口面積が螺子軸67の下端部によって変化させられる。
【0037】
走行路面の凸凹により各前輪3が振動して、その振動が伝播することで前輪支持部材5が抵抗力付与装置47の基部材61と共に前輪転舵軸23の軸芯Lf回りに往復回動したとしても、その往復回動によって抵抗力付与装置47内の作動油が貫通孔73を流通する際の流動抵抗により当該往復回動は減衰させられる。このため、抵抗力付与装置47は、前輪3の操舵系に減衰力を与えるためのステアリングダンパーとしても機能する。
【0038】
前記回動角度規制装置99は、図15および図16に示すように、後輪転舵軸11aの上端部に結着されたハート形状のカム101と、該カム101のカム面によって進退するロッド103と、該ロッド103を中立位置に保持するよう該ロッド103にばね力を付与する一対の第一ばね部材107aおよび第二ばね部材107bと、磁力を発生する円環状の一対の第一電磁コイル109aおよび第二電磁コイル109bと、これらのものを収納する収納ケース111とを備えている。該収納ケース111は軸支持部材21の上端面に結着されている。該収納ケース111は、ロッド103,各ばね部材107a,107bおよび各電磁コイル109a,109bを収納する円柱状の第一収納部111aと、該第一収納部111aに一端面が一体的に結着され、カム101を収納する第二収納部111bとを備えている。
【0039】
ロッド103は、両端部にそれぞれ設けられ小さな外径を有する丸棒状の第一小径部103aおよび第二小径部103bと、ロッド103の長手方向中途部に設けられ各小径部103a,103bより大きな外径を有する円柱状の大径部103cと、該大径部103cの長手方向中途部に設けられた円盤状のアーマチュア103dとを備えている。各小径部103a,103bと大径部103cとアーマチュア103dとは、互いに一体に形成されている。ロッド103の第一小径部103aの長手方向中途部は、第二収納部111bの前記一端面に穿設された貫通孔に挿通され、第一小径部103aの先端部には円柱状のローラ112を回転可能に支持する二股状のローラ保持部材103eが結着されている。
【0040】
前記第一ばね部材107aは、第二収納部111bの前記一端面とロッド103の大径部103cの一端面との間でロッド103の第一小径部103aを囲繞するように介装されている。第二ばね部材107bは、第一収納部111aの円盤状の側面とロッド103の大径部103cの他端面との間でロッド103の第二小径部103bを囲繞するように介装されている。第一電磁コイル109aは、ロッド103の第一小径部103aおよび大径部103cの一端部と第一ばね部材107aとを囲繞するように配設されている。第二電磁コイル109bは、ロッド103の第二小径部103bおよび大径部103cの他端部と第二ばね部材107bとを囲繞するように配設されている。
【0041】
一対の電磁コイル109a,109bの何れか一方に択一的に電源が供給されることでアーマチュア103dに作用する磁力が発生する。この磁力によりロッド103は、一対のばね部材107a,107bの何れか一方を圧縮すると共に圧縮することで生じるばね力に抗して進退させられる。第一電磁コイル109aまたは第二電磁コイル109bへの電源の供給が停止されると、ロッド103は、一対のばね部材107a,107bのうち圧縮させられていた何れか一方のばね力により中立位置に復帰する。
【0042】
後輪転舵軸11aがその軸芯Lr回りに回動可能な角度は、ロッド103が中立位置に位置しているときは所定の範囲に規制され、ロッド103がカム101の方向に最も移動しているときは0°を中央に含む狭い範囲に規制される。これらの規制は、ロッド103に結着されたローラ保持部材103eのローラ112がカム101のカム面に当接することで行われる。ロッド103がカム101から最も離間した位置に移動しているときは360°となり、後輪転舵軸11aの回動は規制されない。なお、ロッド103がカム101の方向に最も移動しているときは0°として後輪転舵軸11aが全く回動できないように構成することもできる。また、各電磁コイル109a,109bに供給する電力の大きさを適宜調整して、カム101とロッド103との距離を所望の距離に保持することができるように構成してもよい。
なお、前記回動角度規制装置99は、一対の電磁コイル109a,109bによる磁力によりロッド103を進退させるように構成されているが、このような構成に替えて、電動モータの回転駆動によりロッドを進退させるようにした電動モータ駆動機構としてもよい。この場合の電動モータ駆動機構は、本発明でいう「回動角度規制手段」を構成する。
【0043】
一方、ステップ15の下方には電池75が配設され、該電池75の前方には制御装置77が配設され、電池75の後方には慣性センサ79が配設されている。制御装置77は、本発明でいう「制御手段」を構成する。前記各電動モータ29,電磁ブレーキ55,電動アクチュエータ69,制御装置77および各電磁コイル109a,109bには、電池75から電源が供給される。慣性センサ79は、車両1が走行しているとき、車両1の前後方向,左右方向および上下方向の各加速度と、車両1のヨー方向,ロール方向およびピッチ方向の各角速度とを検出することができる。
制御装置77は、各種の検出信号が入力される入力部81と、該入力部81を介して入力された検出信号に基づいて各種の目標値を演算する演算処理部83と、該演算処理部83で演算された目標値に基づいて各種の制御対象物を制御する制御部85とを備えている。
【0044】
前記入力部81内の各インターフェースには、上述した各荷重センサ33,グリップ回動センサ37,走行モード切替スイッチ39,ハンドル回動力センサ41,前側回動センサ45,後側回動センサ49,後輪回転センサ53および慣性センサ79がそれぞれ信号線を介して電気的に接続されている。制御部85は、電動モータ制御部91,抵抗力制御部93,電磁ブレーキ制御部97および回動角度制御部100を備え、これらの制御部には、上述した各電動モータ29,抵抗力付与装置47および電磁ブレーキ55がそれぞれ出力線を介して電気的に接続されている。
【0045】
次に、制御装置77による制御について説明する。
まず、走行モード切替スイッチ39が「停止」の位置に切り替えられた状態では、電動モータ29等の制御対象物や制御装置77に対する電池75からの電源の供給は遮断されている。したがって、各電動モータ29には駆動力は発生しておらず、電磁ブレーキ55はブレーキが作動しているので車両1は停止している。
乗員が、走行モード切替スイッチ39を切り替えると、その切替信号が入力部81を介して演算処理部83に入力される。「低速走行モード」に切り替えられたと演算処理部83で判断されると、走行速度が予め設定された基準速度V未満の速度でしか走行することができないように制御部85により制御される。一方、「高速走行モード」に切り替えられたと演算処理部83で判断されると、走行速度が基準速度V以上の速度で走行することができるように制御部85により制御される。なお、基準速度Vは、適宜設定することが可能で、例えば4km/時を挙げることができる。
【0046】
<低速走行モードの場合>
低速走行モードでは、ステップ15に乗員が立ち乗りしたときに各荷重センサ33、後側回動センサ49および後輪回転センサ53により検出された各検出値が入力部81を介して演算処理部83に入力される。入力された各検出値に基づいて、車両1が走行するときの目標速度と、走行中の車両1が旋回するときの目標旋回量とが演算処理部83により求められる。旋回量としては、例えば、車両1が旋回走行するときの車両1の中心が通過する旋回半径が挙げられる。目標旋回量とは、車両1が旋回走行するときの目標とする旋回半径をいう。求められた目標速度および目標旋回量の信号は制御装置89の電動モータ制御部91に送信され、送信された目標速度および目標旋回量に基づいて各電動モータ29が電動モータ制御部91により制御される。
【0047】
詳細には、各荷重センサ33により検出された各検出値が入力部81を介して演算処理部83に入力され、該演算処理部83でステップ15への乗員の荷重分布が求められる。その荷重分布がステップ15の後端部側より前端部側の方に偏倚していると演算処理部83で判断された場合は、その結果が電動モータ制御部91に入力され、該電動モータ制御部91により車両1が前進するように各電動モータ29が制御される。逆に、荷重分布がステップ15の前端部側より後端部側の方に偏倚していると演算処理部83で判断された場合は、車両1が後進するように各電動モータ29が制御される。これらの場合において、ステップ15の前端部側の荷重センサ33によると検出値と後端部側の荷重センサ33によると検出値との比に応じて各電動モータ29の駆動力が発生するように制御される。具体的には、検出値の比が1の場合は各電動モータ29に駆動力を発生させず、検出値の比が1からずれた場合はそのずれ量が大きいほど各電動モータ29に大きな駆動力を発生させる。
【0048】
また、ステップ15の前端部側または後端部側への荷重分布の偏倚に加えて、さらに、荷重分布がステップ15の左端部側より右端部側の方に偏倚していると演算処理部83で判断された場合は、ステップ15の左端部側の荷重センサ33によると検出値と右端部側の荷重センサ33によると検出値との比に応じて各電動モータ29の駆動力が分配されるように制御される。具体的には、検出値の比が1の場合は各電動モータ29に同一の駆動力を発生させる。これにより車両1は直進走行する。一方、検出値の比が1からずれた場合はそのずれ量が大きい程、荷重分布が偏倚した側の電動モータ29とは反対側の電動モータ29に大きな駆動力が分配されるようにする。これにより車両1は旋回走行する。
そして、車両1の走行時に、後輪回転センサ53の検出値が目標速度に合致するように各電動モータ29が電動モータ制御部91により制御される。また、車両1の旋回走行時に、後側回動センサ49の検出値が目標旋回量に合致するように各電動モータ29が電動モータ制御部91により制御される。
【0049】
また、低速走行モードでは、抵抗力付与装置47の電動アクチュエータ69が抵抗力制御部93により制御されて螺子軸67の下端部により貫通孔73が完全に閉塞されている。これにより、油室71内の作動油は螺子軸67の下端部と貫通孔73との僅かな隙間を介してしか流通することができないため、前輪転舵軸23および隔壁65に対して基部材61およびシリンダ63が相対回動する際に最も大きな抵抗力が付与される。なお、抵抗力制御部93による電動アクチュエータ69の制御は、前記抵抗力が段階的または連続的に変化するように予め実験により求められた制御プログラムに基づいて行われる。
【0050】
以上のように低速走行モードでは、前輪3の転舵力に抗する抵抗力が、後述する高速走行モードのときより大きくなるように制御されて、前輪転舵軸23に対する前輪支持部材5の相対回動が阻止される一方、後輪支持部材11が後輪9と共に後輪転舵軸11aの軸芯Lr回りに自由に回動可能に構成されている。このため、低速走行モードで車両1が旋回走行する場合は次のようになる。まず、図8の図(A)に示す直進状態から旋回走行に移行する場合、旋回方向内側より旋回方向外側に位置する前輪3の電動モータ29に大きな駆動力が発生するように電動モータ制御部91により各電動モータ29が制御される。
【0051】
これにより、両電動モータ29間の駆動力の差により旋回方向のヨーモーメントが車両1に発生するので、図8の図(B)および図9に示すように、該ヨーモーメントにより後輪9が後輪支持部材11と共に車体フレーム7に対して軸芯Lr回り(時計回り)に相対回動させられる。これにより、後輪9を円滑に転舵させることができるので、比較的小さな旋回半径で車両1を旋回させることができ、狭い場所等でも小回りが利く。また、このとき、前輪転舵軸23の軸芯Lf回りに前輪支持部材5が殆ど回動しないので、図10に示すように、車両1は、左右方向に傾斜することなく旋回走行することができ、低速走行時の旋回性を良好にすることができる。車両1が走行する際の旋回半径は、両電動モータ29間の駆動力の差に応じて変動し、差が大きいほど小さくなり、旋回半径が最も小さくなると、前・後進することなく、その場旋回することもできる。
【0052】
旋回走行しているときに、各電動モータ29の駆動力が互いに等しくなるように電動モータ制御部91により各電動モータ29が制御されると、旋回方向とは逆向きのヨーモーメントが車両1に発生する。そして、図8の図(C)に示すように、該ヨーモーメントにより後輪9が後輪支持部材11と共に車体フレーム7に対して軸芯Lr回り(反時計回り)に相対回動させられ、車両1は旋回走行から直進走行に復帰する(図8の図(D)参照)。
【0053】
また、低速走行モードでは、回動角度規制装置99における一対の電磁コイル109a,109bの何れにも電池75から電力が供給されないように回動角度制御部100により制御され、回動角度規制装置99のロッド103は一対のばね部材107a,107bにより中立位置に保持される。このため、低速走行モードでは、後輪転舵軸11aがその軸芯Lr回りに回動可能な角度は直進方向を中央に含む所定の範囲に規制される。この結果、低速走行モードでは、車両1が旋回走行する際に後輪転舵軸11aが後輪9と共に直進方向を中央に含む所定の角度範囲で軸芯Lr回りに回動可能となる。このため、所定の角度範囲では後輪9が自由に転舵されるため、車両1の取り回し性を向上させることができる。また、回動角度規制装置99は、後輪9の転動方向の範囲を変更するものであるので、その範囲内では後輪9の転動方向を自由に変更することができるため、回動角度規制装置99を設けたことで、各前輪3の駆動力の差によるヨーモーメントにより後輪9を転舵させる際の応答性を損なうことはない。
【0054】
また、低速走行モードで車両1が後進するように各電動モータ29が制御される場合は、第二電磁コイル109bに電池75から電力が供給されるように回動角度制御部100により制御される。これにより、回動角度規制装置99のロッド103は、第二ばね部材107bに抗して移動し、カム101から最も離間した位置に保持される。この結果、後輪転舵軸11aがその軸芯Lr回りに回動可能な角度は360°となるので、車両1の後進に伴って後輪転舵軸11aはその軸芯Lr回りに後輪9と共に回動して、後輪9は、図2に示す状態から180°方向転換してステップ15に最も近接する。このため、車両1の後進が円滑に行われる。
【0055】
<高速走行モードの場合>
一方、高速走行モードでは、ステップ15の荷重センサ33ではなく、グリップ回動センサ37,ハンドル回動力センサ41,前側回動センサ45,後側回動センサ49,後輪回転センサ53および慣性センサ79により検出された各検出値に基づいて各電動モータ29が駆動される。これらの検出値が入力部81を介して演算処理部83に入力されて、車両1が走行するときの目標速度と、走行中の車両1が旋回するときの目標旋回量とが演算処理部83により求められる。求められた目標速度および目標旋回量の信号は制御装置89の電動モータ制御部91に送信され、送信された目標速度および目標旋回量に基づいて各電動モータ29が電動モータ制御部91により制御される。また、前側回動センサ45,後側回動センサ49,後輪回転センサ53および慣性センサ79により検出された各検出値に基づいて現在の速度および旋回量が演算処理部83でそれぞれ求められ、これらの値と目標速度および目標旋回量とが合致するように各電動モータ29が電動モータ制御部91により制御される。
【0056】
高速走行モードでは、グリップ35bを中立位置から回動させると、中立位置からの回動方向と回動角度とがグリップ回動センサ37により検出される。検出された検出値が入力部81を介して演算処理部83に入力され、当該検出値に基づいて制御部85により各電動モータ29が制御される。車両1が前進するときの前輪3の回転方向とは逆の回転方向にグリップ35bを回動すると、前進する方向に電動モータ29が制御される。そのとき、グリップ35bの回動角度が大きいほど走行速度が速くなるように電動モータ29が制御される。中立位置から逆の方向にグリップ35bを回動すると、その回動角度が大きいほど大きな回生電力が発生して大きな回生制動力が車両1に付与されるように電動モータ29が制御される。このとき、電磁ブレーキ制御部97により後輪9の電磁ブレーキ55を駆動させて、電動モータ29による前輪3の回生制動を補完するようにしてもよい。また、車両1を緊急停止させたい場合にも電動モータ29による前輪3の回生制動と電磁ブレーキ55による後輪9の制動とを同時に作動させるようにしてもよい。
【0057】
また、高速走行モードでは、抵抗力付与装置47の電動アクチュエータ69が抵抗力制御部93により自動的に制御されて、螺子軸67の下端部が貫通孔73から後退し貫通孔73が完全に開口される。これにより、油室71内の作動油は貫通孔73を介して抵抗なく流通することができるため、前輪転舵軸23および隔壁65に対する基部材61およびシリンダ63の相対回動も抵抗なく許容される。この結果、基部材61に結着された前輪支持部材5も前輪転舵軸23に対する相対回動が抵抗なく許容される。
【0058】
このため、図11の図(A)に示すように直進している車両1が旋回走行に移行する場合、旋回方向内側より旋回方向外側に位置する前輪3の電動モータ29に大きな駆動力が発生するように電動モータ制御部91により各電動モータ29が制御されると、両電動モータ29間の駆動力の差により前輪転舵軸23に対して前輪3が前輪支持部材5と共に容易に相対回動させられる(図11の図(B)参照)。このとき、前方に傾斜した前輪転舵軸23の軸芯Lf回りに前輪支持部材5が回動することにより、車体フレーム7は旋回方向内側に傾斜するので、高速走行時の車両1の旋回性を良好にすることができる(図12参照)。
【0059】
以上のように、車両1が高速走行モードで走行するときは、低速走行モードで走行するときより前輪3の転舵力に抗する抵抗力が小さくなるように制御されるので、各前輪3間の駆動力の差によるヨーモーメントは、前輪支持部材5を車体フレーム7に対して軸芯Lf回りに回動させるように作用する。このため、後輪9による転舵が抑制されて主に前輪3により転舵されるので、高速走行モードでの旋回性能を確保することができる。また、高速走行モードでは、回動角度規制装置99の第一電磁コイル109aに電池75から電力が供給されるように回動角度制御部100により制御される。これにより、回動角度規制装置99のロッド103は、第一ばね部材107aに抗して移動し、カム101に最も近接した位置に保持される。このため、後輪転舵軸11aがその軸芯Lr回りに回動可能な角度は直進方向を中央に含む狭い範囲に規制されるので後輪9が指向し得る転動方向の範囲は低速走行モードのときより狭くなる。この結果、後輪9が軸芯Lr回りに不所望に大きく回動することを防止することができ、車両1が高速走行しているときに受ける横風や路面の起伏等の外乱の影響を低減することができる。
【0060】
また、車体フレーム7が旋回方向内側に傾斜すると、後輪支持部材11の回動中心たる軸芯Lrも同様に傾斜する。該軸芯Lrは、上部が下部より前方に位置するように傾斜し、その延長した仮想直線Sと走行路面Rとの交点Pが後輪9の接地点Qより後輪9の転動方向前方に位置している。このため、後輪9の接地点Qにおける走行路面Rからの鉛直方向上方への反力は、後輪9を介して後輪支持部材11を軸芯Lr回りに回動させて、後輪9の転動方向前側を車体フレーム7の傾斜方向に指向させるように作用する。この結果、その傾斜方向とは反対方向に過度に後輪9が指向することがないので、車両1が安定して旋回走行することができる。
【0061】
一方、車両1が旋回走行することで車両1に作用する遠心力は、各前輪3および後輪9と走行路面Rとの摩擦力と釣り合うことになるが、後輪9と走行路面Rとの摩擦力は、後輪9の転動方向前側が旋回方向外側を指向するように後輪9に作用する。したがって、車両1が旋回走行しているときの後輪9の指向方向は、後輪9の走行路面Rとの接地点Qに作用する走行路面Rからの鉛直方向上方への反力と、走行路面Rとの摩擦力とによって決定される。
後輪9の転動方向前側が旋回方向外側を指向すれば旋回半径が小さくなる一方、旋回方向内側を指向すれば前輪3の転動方向と後輪9の転動方向とが平行となる状態に近づくため車両1の進路を滑らかに変更することができる。
【0062】
また、上述したように、各キャンバー軸25が、それらの前部が後部より下方に位置するようにそれぞれ傾斜すると共に各モータハウジング27が各キャンバリンク部材31を介して車体フレーム7のフレーム本体13にそれぞれ連結されている。このため、前輪転舵軸23に対して前輪3が前輪支持部材5と共に相対回動すると、各前輪3のトウ角は、旋回方向外側に位置する前輪3がトウインの状態になると共に旋回方向内側に位置する前輪3がトウアウトの状態になる。このことも旋回性の向上に寄与する。また、これと同時に、各前輪3は、旋回方向内側に向かって傾斜する。すなわち、旋回方向内側に位置する前輪3はポジティブキャンバーとなり旋回方向外側に位置する前輪3はネガティブキャンバーとなる。この結果、旋回走行時の走行路面に対する各前輪3のグリップ力を向上させることができる。
【0063】
車両1が旋回走行しているときに、各電動モータ29の駆動力が互いに等しくなるように電動モータ制御部91により各電動モータ29が制御されると、前輪転舵軸23に対して前輪3が前輪支持部材5と共に直進方向に相対回動させられ、車両1は旋回走行から直進走行に復帰する(図11の図(C)参照)。このとき、電磁ブレーキ制御部97により後輪9の電磁ブレーキ55を一時的に駆動させれば、直進方向を指向するように前輪転舵軸23の軸芯Lf回りに前輪支持部材5を回動させるモーメントが発生するので、各前輪3および前輪支持部材5の指向方向を直進方向に迅速に復帰させることができる。
【0064】
ここで、抵抗力付与装置47の抵抗力の大きさと前輪3側および後輪9側の転舵量との関係について、図13を参照して説明する。この図は、両電動モータ29間の駆動力の差を一定の値に保持した状態で車両1が旋回走行する場合の特性であり、前輪3側および後輪9側の転舵量を縦軸に取り、抵抗力付与装置47により付与される抵抗力を横軸に取っている。前輪3側の転舵量は、前輪転舵軸23の軸芯Lf回りに前輪支持部材5が回動するときの回動角度であり、前側回動センサ45の検出値の絶対値に相当する。一方、後輪9側の転舵量は、後輪転舵軸11aの軸芯Lr回りに後輪支持部材11が回動するときの回動角度であり、後側回動センサ49の検出値の絶対値に相当する。図13で、破線で示す特性は前輪3側の転舵量であり、実線で示す特性は後輪9側の転舵量である。
この図から分かるように、両電動モータ29間の駆動力の差を一定の値に保持した状態では、抵抗力付与装置47の抵抗力が小さいほど前輪3側の転舵量が多くなると共に後輪9側の転舵量が少なくなる。そして、抵抗力付与装置47の抵抗力が大きくなるに連れて前輪3側の転舵量が減少すると共に後輪9側の転舵量が増加して、やがて、前輪3側の転舵量と後輪9側の転舵量とが逆転して前輪3側の転舵量より後輪9側の転舵量の方が多くなる。
【0065】
次に、両電動モータ29間の駆動力の差と抵抗力付与装置47の抵抗力とを変化させた場合の、前輪3側および後輪9側の転舵量の変化について、図14を参照して説明する。この図において、横軸に時間を取り、縦軸は、グラフ(A)では両電動モータ29間の駆動力の差を取り、グラフ(B)では抵抗力付与装置47の抵抗力を取り、グラフ(C)では前輪3側および後輪9側の転舵量をそれぞれ取っている。横軸において、Th時間は、走行モード切替スイッチ39が高速走行モードに切り替えられて車両1が高速度で走行している時間帯であり、Tl時間は、走行モード切替スイッチ39が低速走行モードに切り替えられて車両1が低速度で走行している時間帯であり、Tm時間は、走行モード切替スイッチ39が高速走行モードに切り替えられて前記高速度と低速度との中間の中速度で車両1が走行している時間帯である。
【0066】
駆動力の差を示すグラフ(A)は、0を中心に上側が左方向に車両1が旋回する場合であり、下側が右方向に車両1が旋回する場合である。転舵量を示すグラフ(C)において、前輪3側の転舵量は、前輪転舵軸23の軸芯Lf回りに前輪支持部材5が回動するときの回動角度であり、前側回動センサ45の検出値に相当する。一方、後輪9側の転舵量は、後輪転舵軸11aの軸芯Lr回りに後輪支持部材11が回動するときの回動角度であり、後側回動センサ49の検出値に相当する。転舵量を示すグラフ(C)では、破線で示す特性は前輪3側の転舵量であり、実線で示す特性は後輪9側の転舵量である。前輪3側の転舵量は0を中心に上側が反時計回りに回動する場合であり、下側が時計回りに回動する場合である。一方、後輪9側の転舵量は0を中心に上側が時計回りに回動する場合であり、下側が反時計回りに回動する場合である。
【0067】
この図から分かるように、高速度の時間帯のt1時点では、左方向に車両1が旋回するように駆動力の差が付与され、抵抗力付与装置47の抵抗力は最小であり、前輪3側の転舵量は反時計回りで大きな値を示し、後輪9側の転舵量は時計回りで小さな値を示している。また、中速度の時間帯のt2時点では、左方向に車両1が旋回するように付与されていた駆動力の差が0に向かって減少している途中であり、抵抗力付与装置47の抵抗力は最小と最大との中間程度であり、前輪3側の転舵量は反時計回りで一定の値を示し、後輪9側の転舵量は時計回りで一定の値を示している。また、中速度の時間帯のt3時点では、右方向に車両1が旋回するように付与されていた駆動力の差が0に向かって減少している途中であり、抵抗力付与装置47の抵抗力は中間程度であり、前輪3側の転舵量は時計回りで一定の値を示し、後輪9側の転舵量は反時計回りで一定の値を示している。また、高速度の時間帯のt4時点では、右方向に車両1が旋回するように付与されていた駆動力の差が増加している途中であり、抵抗力付与装置47の抵抗力は最大であり、前輪3側の転舵量は0であり、後輪9側の転舵量は時計回りで一定の値を示し0に向かって減少している途中である。
【0068】
次に、上述した実施形態を変更する変形例として第1ないし第5の変形例を図17ないし図22を参照して以下に説明する。なお、これらの変形例の説明で参照する図において、前記実施形態で説明したものと同一または同等の部材、部位および方向等については、同一の符号を付し詳細な説明は省略し、前記実施形態とは異なる点を主に詳細に説明するものとする。これらの変形例においても、前記実施形態で説明したものと同一または同等の構成については、同様の作用・効果を奏することができるのは言うまでもない。
【0069】
(第1の変形例)
上述した実施形態では、高速走行モードで、前輪転舵軸23に対する前輪支持部材5の相対回動が抵抗なく許容されるように抵抗力付与装置47が制御されたことで、車両1が旋回走行する場合は、車両1の転舵が主に各前輪3で行われていた。しかし、各前輪3による転舵に加えて後輪9の転舵も行われるようにしてもよい。詳細には、次のような制御になる。
まず、車両1が直進しているとき、抵抗力が小さくなるように抵抗力制御部93により抵抗力付与装置47を制御する。
次に、車両1が直進走行から旋回走行に移行する場合、旋回方向内側より旋回方向外側に位置する前輪3の電動モータ29に大きな駆動力が発生するように電動モータ制御部91により各電動モータ29を制御する(図17の図(A)参照)。すると、両電動モータ29間の駆動力の差により旋回方向のヨーモーメントが車両1に発生して前輪転舵軸23の軸芯Lf回りに前輪支持部材5が回動する。
【0070】
次に、演算処理部83により求められた目標旋回量に現在の旋回量が到達するまでの所定のタイミングに、最も大きな抵抗力が発生するように抵抗力制御部93により抵抗力付与装置47を制御する。これにより、両電動モータ29間の駆動力の差により旋回方向のヨーモーメントが車体フレーム7に発生し、そのヨーモーメントが後輪9を後輪支持部材11と共に車体フレーム7に対して軸芯Lr回り(時計回り)に相対回動させるように作用する(図17の図(B)参照)。このとき、回動角度制御部100による制御により、後輪転舵軸11aがその軸芯Lr回りに回動可能な角度は直進方向を中央に含む狭い範囲に規制されているものの、その範囲では後輪9も転舵され得る。この結果、前輪3だけでなく後輪9も転舵されるため車両1の旋回性を良好にすることができる。このような制御は、旋回方向の異なる複数のカーブが連続する道路を走行する場合に好適である。
【0071】
旋回走行している車両1を直進走行に戻すときは、図17の図(C)に示すように、抵抗力付与装置47による抵抗力が小さくなるように制御されると共に、各電動モータ29の駆動力が互いに等しくなるように各電動モータ29が制御される。すると、前輪転舵軸23に対して前輪3が前輪支持部材5と共に直進方向に相対回動させられる。このとき、電磁ブレーキ制御部97により後輪9の電磁ブレーキ55を一時的に駆動させれば、直進方向を指向するように前輪転舵軸23の軸芯Lf回りに前輪支持部材5を回動させるモーメントと、後輪転舵軸11aの軸芯Lr回りに後輪支持部材11を回動させるモーメントとが発生するので、各前輪3および後輪9の指向方向をそれぞれ直進方向に迅速に復帰させることができる(図17の図(C)参照)。そして、車両1は旋回走行から直進走行に復帰する(図17の図(D)参照)。
【0072】
(第2の変形例)
第2の変形例は、高速走行モードで車両1が旋回走行する場合において、電動モータ制御部91による各電動モータ29の制御と、抵抗力制御部93による抵抗力付与装置47の制御とを、前記実施形態や第1の変形例とは異なる方法で行うようにしたものである。詳細には、次のような制御になる。
まず、車両1が直進しているとき、抵抗力が小さくなるように抵抗力制御部93により抵抗力付与装置47を制御する。
次に、車両1が直進走行から旋回走行に移行する場合、旋回方向内側より旋回方向外側に位置する前輪3の電動モータ29に大きな駆動力が発生するように電動モータ制御部91により各電動モータ29を制御する(図18の図(A)参照)。すると、両電動モータ29間の駆動力の差により旋回方向のヨーモーメントが車両1に発生して前輪転舵軸23の軸芯Lf回りに前輪支持部材5が回動する。
【0073】
次に、演算処理部83により求められた目標旋回量に現在の旋回量が到達するまでの所定のタイミングに、最も大きな抵抗力が発生するように抵抗力制御部93により抵抗力付与装置47を制御すると同時に、旋回方向外側より旋回方向内側に位置する前輪3の電動モータ29に大きな駆動力が発生するように電動モータ制御部91により各電動モータ29を制御する(図18の図(B)参照)。これにより、両電動モータ29間の駆動力の差により旋回方向とは反対方向のヨーモーメントが車両1に発生して、該ヨーモーメントが後輪9を後輪支持部材11と共に車体フレーム7に対して軸芯Lr回り(図18の図(B)では反時計回り)に相対回動させるように作用する。このとき、回動角度制御部100による制御により、後輪転舵軸11aがその軸芯Lr回りに回動可能な角度は直進方向を中央に含む狭い範囲に規制されているものの、その範囲では後輪9も転舵され得る。この結果、前輪3の転動方向と後輪9の転動方向とが平行な状態に近づくため車両1の進路を滑らかに変更することができる。このときの車両1を上方から見た状態を図19は示している。このような制御は、複数の車線間で車線変更する場合に好適である。
【0074】
旋回走行している車両1を直進走行に戻すときは、図18の図(C)に示すように、抵抗力付与装置47による抵抗力が小さくなるように制御されると共に、各電動モータ29の駆動力が互いに等しくなるように各電動モータ29が制御される。すると、前輪転舵軸23に対して前輪3が前輪支持部材5と共に直進方向に相対回動させられる。このとき、電磁ブレーキ制御部97により後輪9の電磁ブレーキ55を一時的に駆動させれば、直進方向を指向するように前輪転舵軸23の軸芯Lf回りに前輪支持部材5を回動させるモーメントと、後輪転舵軸11aの軸芯Lr回りに後輪支持部材11を回動させるモーメントとが発生するので、各前輪3および後輪9の指向方向をそれぞれ直進方向に迅速に復帰させることができる(図18の図(C)参照)。そして、車両1は旋回走行から直進走行に復帰する(図18の図(D)参照)。
【0075】
(第3の変形例)
第3の変形例は、高速走行モードで車両1が旋回走行する場合において、電動モータ制御部91による各電動モータ29の制御と、抵抗力制御部93による抵抗力付与装置47の制御とを、前記実施形態や第1および第2の変形例とは異なる方法で行うようにしたものである。
詳細には、図20のグラフ(A)ないし(C)に実線で示すような二段階の制御になる。なお、これらのグラフにおいて、破線で示す特性は、この二段階の制御を行わなかった場合の特性を示している。これらのグラフでは、横軸に時間を取り、縦軸は、グラフ(A)では両電動モータ29間の駆動力の差を取り、グラフ(B)では抵抗力付与装置47による抵抗力を取り、グラフ(C)では前輪3側の転舵量を取っている。
【0076】
グラフ(A)は、0を中心に上側が旋回方向に車両1を走行させるように駆動力の差が付与された場合であり、下側が反旋回方向に車両1を走行させるように駆動力の差が付与された場合である。グラフ(C)における前輪3側の転舵量は、前輪転舵軸23の軸芯Lf回りに前輪支持部材5が回動するときの回動角度であり、前側回動センサ45の検出値に相当する。グラフ(C)において上方に行くほど旋回方向への回動角度が大きくなる。
【0077】
まず第一段階の制御として、高速走行モードで旋回を開始する時に一時的に、抵抗力が低速走行モードのときより大きくなるように抵抗力制御部93により抵抗力付与装置47を制御する(グラフ(A)のE参照)。このとき、好ましくは抵抗力が最も大きくなるように制御する。そして、この制御と共に、各前輪3に付与される駆動力が、旋回方向内側に位置する前輪3より旋回方向外側に位置する前輪3の方が小さくなるように電動モータ制御部91により各電動モータ29を制御する(グラフ(B)のF参照)。すなわち、各前輪3に付与される駆動力の差が、一時的に反旋回方向に車両1を走行させるように作用する。これにより、目標としている旋回方向の内側に位置する前輪3より旋回方向外側に位置する前輪3の走行路面に対する荷重が一時的に増加するため、その増加した荷重によって一時的に前輪支持部材5が弾性変形して撓むと共に旋回方向外側に位置する前輪3も弾性変形して窪む。
【0078】
その後、引き続いて第二段階の制御として、抵抗力が小さくなるように抵抗力制御部93により抵抗力付与装置47を制御する(グラフ(A)のG参照)。そして、この制御と共に、各前輪3に付与される駆動力が、目標としている旋回方向の内側に位置する前輪3より旋回方向外側に位置する前輪3の方が大きくなるように電動モータ制御部91により各電動モータ29を制御する(グラフ(B)のH参照)。このような第二段階の制御は、車両1の走行速度を低下させることなく高速走行のまま行われる。これにより、両電動モータ29間の駆動力の差により前輪転舵軸23に対して前輪3が前輪支持部材5と共に相対回動させられる。このとき、前記第一段階の制御で一時的に弾性変形していた前輪支持部材5および前輪3が元の状態に復帰しようとする復元力を、第二段階の制御のときに、前輪3および前輪支持部材5を前輪転舵軸23に対して相対回動させる力として利用することができる。このため、その分、前輪3の転舵を迅速に行うことができるだけでなく、前輪3の転舵を補助するために特別な装置を設ける必要もない。
【0079】
このことは、図20のグラフ(C)において、上述した二段階の制御を行った場合の実線で示す特性と、該二段階の制御を行わなかった場合(前記実施形態の場合)の破線で示す特性とを対比すると明確である。
また、車両1を旋回走行から直進走行に復帰させたい場合は、第一段階として一時的に、抵抗力付与装置47の抵抗力が大きくなるように制御すると共に各前輪3に付与される駆動力の差が、反復帰方向に各前輪3を転舵させるように各電動モータ29を制御したのち、引き続き第二段階の制御として、抵抗力付与装置47の抵抗力が小さくなるように制御すると共に各前輪3に付与される駆動力の差が、復帰方向に各前輪3を転舵させるように各電動モータ29を制御する。これにより、車両1を旋回走行から直進走行に迅速に復帰させることができる。
【0080】
(第4の変形例)
前記実施形態において説明した抵抗力付与装置47は、電動アクチュエータ69の駆動により螺子軸67を進退させて、作動油が貫通孔73を流通する際の流動抵抗を変化させることで、前輪支持部材5が回動するときの抵抗力を調整するようにしていた。しかし、これに替えて、図21に示すような抵抗力付与装置47'により、前輪支持部材5が回動するときの抵抗力を調整するようにしてもよい。該抵抗力付与装置47'は、本発明でいう「転舵抵抗力付与手段」を構成する。該抵抗力付与装置47'は、前輪転舵軸23の軸芯Lfと同軸に配設され前輪転舵軸23の上端に一体的に結着された円柱状の軸部材115と、軸受部材59を介して前輪転舵軸23に回動可能に支持された円環状の基部材117と、該基部材117の上面に一体的に結着された有底円筒状のシリンダ119と、該シリンダ119内に配設された電磁クラッチ装置121とを備えている。
【0081】
該電磁クラッチ装置121は、軸部材115の外周面に一体的に結着された円管状部材123と、該円管状部材123の外周側に配置された、それぞれ複数の第一摩擦板125…および第二摩擦板127…と、これらの摩擦板125,127を挟むように配置された、それぞれ円環状のアーマチュア129および電磁コイル131と、シリンダ119の内周面に一体的に結着された円管状部材133とを備えている。各第一摩擦板125は、円管状部材123に対して、軸芯Lf回りの相対回動が規制されると共に軸芯Lfに沿う方向に相対移動が許容されるように円管状部材123に装着されている。各第二摩擦板127は、円管状部材133に対して、軸芯Lf回りの相対回動が規制されると共に軸芯Lfに沿う方向に相対移動が許容されるように円管状部材133に装着されている。アーマチュア129は、各円管状部材123,133に対して、軸芯Lf回りの相対回動と軸芯Lfに沿う方向への相対移動とが許容されるように装着されている。電磁コイル131は、円管状部材123に結着されている。
【0082】
低速走行モードでは、抵抗力付与装置47'の電磁クラッチ装置121が抵抗力制御部93により制御されて、電池75の電源が電磁コイル131に供給され該電磁コイル131に磁力が発生することで、該電磁コイル131に向かってアーマチュア129が強く引き寄せられる。これにより、各第一摩擦板125と各第二摩擦板127とが圧接して両者間に大きな摩擦力が発生することで、前輪転舵軸23および軸部材115に対して基部材117およびシリンダ119が相対回動する際に最も大きな抵抗力が付与される。抵抗力制御部93による電磁クラッチ装置121の制御は、前記摩擦力が段階的または連続的に変化するように予め実験により求められた制御プログラムに基づいて行われる。
【0083】
なお、各第一摩擦板125と各第二摩擦板127との間の摩擦力を調整する構成としては、上述したようなアーマチュア129と電磁コイル131との間の磁力を変化させる構成に限らない。例えば、水や油等の液体中に磁性体の微粒子を分散させた磁性流体を各第一摩擦板125と各第二摩擦板127との間に介在させると共に、電磁コイルに通電して発生させた磁界を前記磁性流体に作用させることで、各第一摩擦板125と各第二摩擦板127との間に抵抗力を発生させるようにしてもよい。このような構成によれば、電磁コイルに供給する電力を増減して磁界の強さを調整することで各第一摩擦板125と各第二摩擦板127との間に介在する磁性流体の抵抗力を適宜調整することができる。
【0084】
(第5の変形例)
前記実施形態において説明した後輪9は、該後輪9を支持する後輪支持部材11が水平方向の全ての方向に回動可能に車体フレーム7に支持されていることで、水平方向の全ての方向に転動可能に構成されていた。しかし、水平方向の全ての方向に転動可能な後輪としては、前記実施形態の後輪9に限らない。例えば、図22に示すような後輪9'を採用してもよい。該後輪9'は、オムニホイールにより構成され、車体フレーム7に結着された後輪支持部材11'に回転可能に支持されている。後輪9'は、その車軸回りの円周方向に等角度間隔に複数の樽状の転動ローラ135…が配列された円環状の転動体を一対備えている。各転動ローラ135は、転動体の一部を構成する円環状のリテーナに個別に回転可能に支持されているので、転動ローラ135の軸芯に直交する方向に転動することができる。また、転動体における各転動ローラ135の円周方向の配列位置は、一対の転動体同士でずれており、これによって、転動体が転動するとき各転動ローラ135が途切れることなく連続的に走行路面と接触するので、滑らかに転動することができる。このようなオムニホイールにより構成された後輪9'によっても、水平方向の全ての方向で転動方向を自由に変更することができる。
なお、この第5の変形例の場合は、前記実施形態のような、後輪9が指向し得る転動方向の範囲を変更可能な回動角度規制装置99は設けていないので、車両1の走行モードが低速走行モードと高速走行モードとで区別なく、水平方向の全ての方向に後輪9は転動し得る。
【0085】
上述した実施形態や第1ないし第5の変形例は本発明を説明するための一例であり、本発明は、前記実施形態および各変形例に限定されるものではなく、特許請求の範囲と明細書との全体から読み取れる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更後の車両もまた、本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0086】
例えば、上述した実施形態および各変形例では、荷重センサ33,グリップ回動センサ37,ハンドル回動力センサ41,前側回動センサ45,後側回動センサ49,後輪回転センサ53および慣性センサ79の各検出値に基づいて車両1の目標速度および目標旋回量と、現在の速度および旋回量とが制御装置77内の演算処理部83により求められる例を示した。しかし、これに替えて、制御部85内のメモリ(図示せず)に予め記憶された地図情報、全地球測位システム(GPS)により取得される位置情報、走行エリアにおける走行規制情報および車両1に搭載された撮像装置(図示せず)により取得される画像情報(走行路とその周辺の画像および道路標識の画像等)に基づいて車両1の目標速度および目標旋回量と、現在の速度および旋回量とを演算処理部83により求めるようにしてもよい。このときの目標旋回量としては、例えば、車両1が旋回走行するときの車両1の中心が通過すべき旋回半径に加え、車両1の中心が通過すべき軌跡が挙げられる。
【0087】
また、前記走行エリアにおける走行規制情報は、インターネット等の通信ネットワークを介して取得されてもよいし、走行エリアに設置された情報発信装置から発信された走行規制情報を、車両1に搭載した検出装置(図示せず)により無線で受信するようにしてもよい。このようにして受信された走行規制情報や撮像装置により取得された道路標識の画像情報に基づいて、低速モードと高速モードとの切り替えや、進入禁止エリアへの進入回避を演算処理部83により自動的に行うようにしてもよい。低速モードに切り替えるべき走行エリアとしては、例えば歩道が挙げられる。
【0088】
また、前記実施形態では、軸支持部材17と軸支持部材21とを車体フレーム7にそれぞれ直接結着するようにし、前記第5の変形例では、後輪支持部材11'を車体フレーム7に直接結着する例を示した。しかし、これに限らず、軸支持部材17、軸支持部材21および後輪支持部材11'を、ゴムもしくは樹脂等の材料からなる弾性部材またはばね部材を備えた緩衝器を介して車体フレーム7に支持させるように構成してもよい。なお、このような緩衝器を介して軸支持部材17を車体フレーム7に支持させるように構成した場合は、上述した第3の変形例における二段階の制御では、前輪3および前輪支持部材5の弾性変形だけでなく緩衝器の弾性部材またはばね部材の撓みも加わることになる。このため、その分、前輪支持部材5および前輪3を元の状態に復帰させようとする復元エネルギーが大きくなり、前輪3の操舵を一層迅速に行うことができる。
【0089】
また、前記実施形態では、低速走行モードの場合は、目標速度と目標旋回量とを求めるために、複数の荷重センサ33を使用する例を示した。しかし、荷重センサ33に替えて、所定の荷重以上が付与されると接続し、付与されなくなると遮断する単なるスイッチをステップ15に複数配置するようにしてもよい。また、これ以外の方法として、ハンドルポスト19またはハンドル35にジョイスティックを取り付けて、該ジョイスティックを乗員が操作することでその操作量および操作方向に基づいて目標速度と目標旋回量とを求めるようにしてもよい。
また、前記実施形態および第5の変形例では、後輪9,9'は1つだけ設ける例を示したが、これに限らず、後輪9,9'を左右一対設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0090】
1 車両
3 前輪
5 前輪支持部材
7 車体フレーム(車体)
9 後輪
9' 後輪
11 後輪支持部材
29 電動モータ(駆動力付与手段)
47 抵抗力付与装置(転舵抵抗力付与手段)
47' 抵抗力付与装置(転舵抵抗力付与手段)
77 制御装置(制御手段)
99 回動角度規制装置(転動方向範囲変更手段)
Lf 軸芯(第一の軸芯)
Lr 軸芯(第二の軸芯)
R 走行路面
S 仮想直線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22