(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6684443
(24)【登録日】2020年4月1日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】温風暖房機
(51)【国際特許分類】
F24H 9/02 20060101AFI20200413BHJP
F24H 3/04 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
F24H9/02 302Z
F24H3/04
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-103936(P2016-103936)
(22)【出願日】2016年5月25日
(65)【公開番号】特開2017-211126(P2017-211126A)
(43)【公開日】2017年11月30日
【審査請求日】2019年4月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】二瓶 俊介
【審査官】
岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−149850(JP,A)
【文献】
特開2012−137206(JP,A)
【文献】
実開昭58−119116(JP,U)
【文献】
実開昭56−10217(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 9/02
F24H 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケース内に燃焼部と送風部を備え、前記本体ケースは天板部と底板部と断面コ字状の側板部と前板部とで箱状に形成された温風暖房機において、
前記側板部の下端部は内方側へ折り曲げられたフランジ部を有し、
前記フランジ部の先端近傍部の少なくとも一部は上方に突出した凸部を備え、
前記フランジ部の前記凸部の近傍部が前記底板部にビス固定されていることを特徴とする温風暖房機。
【請求項2】
前記凸部は、前記フランジ部の先端近傍部から上方へ延びる縦板部と、この縦板部の上端から水平に延びる水平板部とを有し、前記水平板部を前記底板部の上面に固定するためのビス穴が前記水平板部に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の温風暖房機。
【請求項3】
前記底板部の外周部分には、前記側板部が載置される載置部であって、その他の部分よりも段落ちした上面を有する載置部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の温風暖房機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温風暖房機に関し、特に本体ケースの側板部の下端のフランジ部を底板部に固定する構造を改良したものに関する。
【背景技術】
【0002】
温風暖房機は、本体ケース内に燃焼部と送風部を有し、前記本体ケースは天板部と底板部と断面コ字状の側板部と前板部とで箱状に形成されている。
前記側板部は、通常、左側板部と後側板部と右側板部とで断面コ字状に形成され、底板部は鋼板製又は合成樹脂製のものである。
【0003】
図8は、本願出願人が採用している温風暖房機の本体ケースの側板部100を底板部102に固定する構造を示す図であり、側板部100は、左側板部100aと後側板部100bと右側板部(図示略)とを有する。
【0004】
側板部100の下端部には、内方へ直角に折り曲げたフランジ部101が形成され、このフランジ部101を底板部102の上面に載置した状態に組み付け、フランジ部101の複数のビス穴103に上方から挿通させたビス104を底板部102の複数のビス穴105に螺合することで、フランジ部101が底板部102に固定される。合成樹脂製の底板部102は、ビス104の挿入代を確保するため厚く形成されている。
【0005】
特許文献1の温風暖房機では、バーナ部を収容する連結ケースの上側を上部遮熱板と上面板とで覆い、連結ケース押え材の先端部を上部遮熱板の端部に係合させると共に、上面板の折り曲げ部の下端を前記先端部の上面に当接させ、上面板を前記先端部で支える構造が採用されている。
【0006】
特許文献2のファンヒーター装置では、筒状の外周ケースの下端部を、底板部の外周溝に上方から係合させて外周ケースと底板部とを結合する構造が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014−102029号公報
【特許文献2】実用新案登録第3200057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図8に示す側板部100は、薄鋼板製のプレス成形品で成形時の歪み(スプリングバック等)もあるため、各部の寸法精度にバラツキがある。そのため、側板部100の下端部のフランジ部101のビス穴103を底板部102のビス穴105に位置合せしてビス104で締結する場合、片手で側板部100の外面側を内方へ押えながら、上下のビス穴103,105を位置合せしてビス締結しなければならない。
【0009】
特に、右手で右側板部の外面側を内方へ押しながら左手でビス締結することは困難であるため、側板部100と底板部102を半回転させ、左手で右側板部の外面側を内方へ押えながら後側板部100bへの上方から右手を延ばして右手でビス締結することになる。
【0010】
このように、従来の側板部100のフランジ部101の構造では、フランジ部101を側板部100の内側から内方へ引き寄せることができないため、2つのビス穴103,105を位置合せする作業が難しく、作業能率が低くなる。しかも、ビス104の挿入代を確保するため底板部102の厚さも厚くなり、側板部100の下側に厚い底板部102が見えるため、温風暖房機の外観の意匠性を高めることも困難であった。
【0011】
特許文献1,2の構造は、特殊な構造であり、通常の箱状の本体ケースを有する温風暖房機には採用することが難しい。
本発明の目的は、側板部の下端部のフランジ部を底板部にビス締結する際に、前記フランジ部のビス穴を側板部の内側から位置調節可能にした温風暖房機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の温風暖房機は、本体ケース内に燃焼部と送風部を備え、前記本体ケースは天板部と底板部と断面コ字状の側板部と前板部とで箱状に形成された温風暖房機において、
前記側板部の下端部は内方側へ折り曲げられたフランジ部を有し、前記フランジ部の先端近傍部の少なくとも一部は上方に突出した凸部を備え、前記フランジ部の前記凸部の近傍部が前記底板部にビス固定されていることを特徴としている。
【0013】
請求項2の温風暖房機は、請求項1の発明において、前記凸部は、前記フランジ部の先端近傍部から上方へ延びる縦板部と、この縦板部の上端から水平に延びる水平板部とを有し、前記水平板部を前記底板部の上面に固定するためのビス穴が前記水平板部に形成されていることを特徴としている。
【0014】
請求項3の温風暖房機は、請求項2の発明において、前記底板部の外周部分には、前記側板部が載置される載置部であって、その他の部分よりも段落ちした上面を有する載置部が形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、側板部の下端部は内方側へ折り曲げられたフランジ部を有し、前記フランジ部の先端近傍部の少なくとも一部は上方に突出した凸部を備え、前記フランジ部の前記凸部の近傍部が底板部にビス固定されるため、凸部のビス穴と底板部のビス穴を位置合せする際に、側板部の内側から凸部を内方へ引き付けることができるため、ビス穴の位置合せが容易になり、フランジ部を底板部にビス締結する作業を容易に短時間で行うことができる。
【0016】
請求項2の発明によれば、前記凸部は、前記フランジ部の先端近傍部から上方へ延びる縦板部と、この縦板部の上端から水平に延びる水平板部とを有し、前記水平板部を前記底板部の上面に固定するためのビス穴が前記水平板部に形成されているため、側板部の内側から縦板部に指を掛けてビス穴の位置合せを容易に行うことができる。
【0017】
請求項3の発明によれば、前記底板部の外周部分には、前記側板部が載置される載置部であって、その他の部分よりも段落ちした上面を有する載置部が形成されているため、フランジ部を底板部に固定するビスの挿入代を確保しながら、側板部の下端を段落ちした上面を有する載置部に載置することで、外観に表れる底板部の厚みが小さくなるため、温風暖房機の外観の意匠性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施例1に係る温風暖房機の斜視図である。
【
図2】本体ケースの側板部を底板部に組み付けた状態を示す斜視図である。
【
図5】側板部の要部と底板部の要部の分解斜視図である。
【
図6】側板部を底板部に組み付けた状態の要部の斜視図である。
【
図7】実施例2に係る側板部を底板部に組み付ける状態の要部の斜視図である。
【
図8】従来技術に係る側板部の要部と底板部の要部の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。
【実施例1】
【0020】
図1に示すように、温風暖房機1は、本体ケース2と、この本体ケース2の内部に設けられた送風ファン(図示略)と、燃焼部(図示略)等を有するものである。
本体ケース2は、薄鋼板製のもので、天板部2Aと、底板部3と、側板部4と、前板部2Bとで箱状に形成されている。
【0021】
図2〜
図6に示すように、側板部4は、左側板部4aと後側板部4bと右側板部4cとで断面コ字状に形成されている。側板部4の下端部には内方側へ直角に折り曲げられたフランジ部5が形成されている。天板部2Aには操作部11(
図1参照)が設けられている。後側板部4bには空気導入口12が形成され、前板部2Bには温風吹き出し口13(
図1参照)が形成されている。
【0022】
左側板部4aの下端部のフランジ部5aの先端近傍部には1つの上方に突出した凸部6aが形成され、後側板部4bの下端部のフランジ部5bの先端近傍部には左右1対の上方に突出した凸部6bが形成され、右側板部4cの下端部のフランジ部5cの先端近傍部には1つの上方に突出した凸部(図示略)が形成されている。
【0023】
各凸部6は、フランジ部5の先端近傍部から上方へ延びる縦板部7aと、この縦板部7aの上端から水平に内方へ延びる水平板部7bとを有し、この水平板部7bを底板部3の上面に固定するためのビス穴8が水平板部7bに形成されている。尚、縦板部7aはフランジ部5の長さ方向と平行である。尚、縦板部7aは上方ほど底板部本体3bに接近するように鉛直面に対して僅かに傾斜している。それ故、凸部6及び底板部本体部3bの製作寸法誤差の許容範囲が広くなるため、それらの製作上有利である。
【0024】
底板部3は合成樹脂製のものであり、底板部3の外周部分には側板部4が載置される載置部3aが形成され、底板部3のうちの載置部3aの内側部分には底板部本体3bが形成されている。載置部3aは、その他の部分(底板部本体3b)の上面よりも段落ちした水平な上面を有する。
【0025】
前記載置部3aの幅は側板部4のフランジ部5を載置可能な幅に設定されている。
前記載置部3aの上面から底板部本体3bの上面までの段差高さは、前記凸部6の縦板部7aの高さと略等しく設定されており、側板部4のフランジ部5を載置部3aの上面に載置したとき、凸部6の水平板部7bが底板部本体3bの上面に当接するように形成されている。
【0026】
底板部本体3bの外周部分には、前記複数の凸部6の水平板部7bに形成した複数のビス穴8に対応する複数のビス穴9が形成されており、複数のビス穴8を複数のビス穴9に夫々位置合わせして、複数のビス穴8に夫々挿通させた複数のビス10を複数のビス穴9に螺合させることで、フランジ部5の複数の凸部6が底板部3に複数のビス10で固定される。
【0027】
以上説明した底板部への側板部の固定構造の作用、効果について説明する。
底板部3に側板部4を組み付ける際には、上方から側板部4を底板部3へ接近させ、側板部4のフランジ部5を底板部3の載置部3aの上に載置し、各対のビス穴8とビス穴9を位置合せするとき、側板部4の内側において、左手の指で凸部6の縦板部7aの位置を調節することで、ビス穴8とビス穴9を位置合せし、上方からビス穴8に挿通させたビス10をビス穴9に螺合させてフランジ部5を底板部本体3bに固定する。
【0028】
このように、側板部4の内側からビス穴8の位置を容易に調節することができるため、
ビス穴8,9の位置合せが容易になり、フランジ部5を底板部3にビス締結する作業を容易に短時間で行うことができる。
【0029】
前記側板部4は、左側板部4aと後側板部4bと右側板部4cとで断面コ字状に形成されているため、側板部4の部材数が少なく、側板部4を底板部3に組み付ける作業を能率的に行うことができる。
【0030】
底板部3の外周部分には、側板部4が載置される載置部3aであって、その他の部分よりも段落ちした上面を有する載置部3aが形成されているため、フランジ部5を底板部3に固定するビス10の挿入代を確保しながら、側板部4の下端を段落ちした上面を有する載置部3aに載置することで、外観に表れる底板部3の厚みが小さくなるため、温風暖房機1の外観の意匠性を高めることができる。
【実施例2】
【0031】
この実施例に係る温風暖房機について
図7に基づいて説明する。
この温風暖房機は、基本的に実施例1の温風暖房機と同じ構造を有するが、側板部4のフランジ部5A、凸部14等が変更されているため、異なる構造についてのみ説明し、同じ構造についての説明は省略する。
【0032】
側板部4の下端のフランジ部5Aには複数のビス穴8Aが形成され、各ビス穴8Aの近傍部においてフランジ部5Aの先端部には直角に折り曲げて上方へ突出させた凸部14が形成されている。底板部3Aにおいては、実施例1の載置部3aが省略され、底板部3Aの外周部分には、フランジ部5Aの複数のビス穴8Aに対応する複数のビス穴9が形成されている。
【0033】
側板部4を底板部3Aの上面に取り付ける際には、フランジ部5Aを底板部3Aの外周部分に載置し、各ビス穴8Aに挿通させたビス10を底板部3Aのビス穴9に螺合することで固定する。このとき、ビス穴8Aをビス穴9に位置合せする際には、凸部14を指で内側へ引き付けることで簡単に位置合せしてビス固定することができる。
【0034】
このように、側板部4の内側からビス穴8Aの位置を容易に調節することができるため、ビス穴8A,9の位置合せが容易になり、フランジ部5Aを底板部3にビス締結する作業を容易に短時間で行うことができる。
【0035】
前記実施例を部分的に変更する例について説明する。
1)側板部4のフランジ5a,5b,5cに夫々形成する凸部6の数は、前記実施例の数に限定されるものではない。
2)前記実施例では合成樹脂製の底板部3を例として説明したが、底板部3は薄鋼板製のものでもよい。また、側板部4は薄鋼板製のものを例として説明したが、合成樹脂製の側板部であってもよい。
3)その他、当業者であれば本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施例に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はその種の変更形態を包含するものである。
【符号の説明】
【0036】
1 温風暖房機
2 本体ケース
3,3A 底板部
3a 載置部
4 側板部
4a 左側板部
4b 後側板部
5,5a,5b,5c,5A フランジ部
6,6a,6b,14 凸部
7a 縦板部
7b 水平板部