(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1から特許文献3は、比較的大型の船舶を対象として、潮の干満や複数の車両が乗下船することによる喫水の変化を考慮して斜路の傾斜角や長さ等を調節するものであり、車両の乗下船時に生じる船体の上下運動及びトリム変化(前後傾斜)を考慮したものではない。そのため、特に20トン未満の小型船舶用の乗下船装置として適用することはできない。
【0006】
そこで本発明は、車両の乗下船時に生じる船体の上下運動及びトリム変化(前後傾斜)に応じてランプウェイの形状を調整することができ、車両の乗下船を安定して行うことができる車両乗下船装置及び車両乗下船装置を備えた船舶を提供することを目的とする
。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項
1記載
に対応した車両乗下船装置においては、
車両を運搬する船舶の乗下船装置であって、船体の中央側に設けた第1の軸の回りに回動可能な第1のランプウェイと、第1のランプウェイに設けた第2の軸の回りに回動可能な第2のランプウェイと、第1のランプウェイに係止され第1のランプウェイを第1の軸回りに第1の角度範囲で回動させる駆動手段と、第2のランプウェイが上方向に動くときには機械的な拘束が無く、下方向に動くときには第1のランプウェイに対する動作範囲を第2の角度範囲に制限する制限手段と、車両の乗下船時に駆動手段を制御する制御手段と、第2の角度範囲の角度を検出する角度検出手段を備え、制御手段が角度検出手段の検出角度に基づいて駆動手段を制御することを特徴とする。
請求項
1に記載の本発明によれば、
車両を乗下船させる際に第1のランプウェイ及び第2のランプウェイを岸壁等に対して、船体の上下運動やトリム変化(前後傾斜)があっても適切な形状に維持することができ、車両の乗下船を車両に悪影響を与えることなく安定して行うことができる。また、第2のランプウェイの上方向への動作は機械的な拘束を受けないので、停泊時や航行時には第2のランプウェイを上方向へ回動させて収納することができる。また、第1のランプウェイと第2のランプウェイとのなす角度に基づいて、制御手段が駆動手段を制御することにより、車両の乗下船時に生じる船体の上下運動及びトリム変化(前後傾斜)に応じて、第1のランプウェイに対する第2のランプウェイの角度が適切に調整される。したがって車両の乗下船を更に安定して行うことができる。
【0008】
請求項
2記載の本発明は、角度検出手段が複数の動作点を有し、動作点の対応する検出角度に差を有したことを特徴とする。
請求項
2に記載の本発明によれば、検出角度の差によって第1のランプウェイと第2のランプウェイの動作が制御され、第1のランプウェイに対する第2のランプウェイの角度が適切に調整される。したがって制御的にもチャタリングを起こすことなく、車両の乗下船を更に安定して行うことができる。
【0009】
請求項
3記載の本発明は、差を動作点の異なる第1のスイッチと第2のスイッチにより実現したことを特徴とする。
請求項
3に記載の本発明によれば、2つのスイッチの動作点(接点の位置)の差に基づいて、第1のランプウェイに対する第2のランプウェイの角度が適切に調整される。したがって簡単な構成で車両の乗下船を更に安定して行うことができる。
【0010】
請求項
4記載の本発明は、駆動手段として押引可能な油圧シリンダーを用いたことを特徴とする。
請求項
4に記載の本発明によれば、油圧シリンダーの伸縮に伴う押引力によって第1のランプウェイと第2のランプウェイを動作させることができる。
【0011】
請求項
5記載の本発明は、油圧シリンダーの押引を角度検出手段の検出角度に基づいて制御することを特徴とする。
請求項
5に記載の本発明によれば、第1のランプウェイと第2のランプウェイとのなす角度に基づいて、制御手段が油圧シリンダーの伸縮を制御することにより、車両の乗下船時に生じる船体の上下運動及びトリム変化(前後傾斜)に伴う角度変化を検出して、第1のランプウェイに対する第2のランプウェイの角度が適切に調整される。したがって車両の乗下船を更に安定して行うことができる。
【0012】
請求項
6記載の本発明は、制御手段に接続される操作手段を備えたことを特徴とする。
請求項
6に記載の本発明によれば、船員等は、操作手段により制御手段のON/OFFや駆動手段等を操作することができる。
【0013】
請求項
7記載
に対応した車両乗下船装置においては、
車両を運搬する船舶の乗下船装置であって、船体の中央側に設けた第1の軸の回りに回動可能な第1のランプウェイと、第1のランプウェイに設けた第2の軸の回りに回動可能な第2のランプウェイと、第1のランプウェイに係止され第1のランプウェイを第1の軸回りに第1の角度範囲で回動させる駆動手段と、第2のランプウェイが上方向に動くときには機械的な拘束が無く、下方向に動くときには第1のランプウェイに対する動作範囲を第2の角度範囲に制限する制限手段と、車両の乗下船時に駆動手段を制御する制御手段と、乗下船装置の作動状況を示す表示手段を備えたことを特徴とする。
請求項
7に記載の本発明によれば、
車両を乗下船させる際に第1のランプウェイ及び第2のランプウェイを岸壁等に対して、船体の上下運動やトリム変化(前後傾斜)があっても適切な形状に維持することができ、車両の乗下船を車両に悪影響を与えることなく安定して行うことができる。また、第2のランプウェイの上方向への動作は機械的な拘束を受けないので、停泊時や航行時には第2のランプウェイを上方向へ回動させて収納することができる。また、船員等は、表示手段により乗下船装置の作動状況を確認することができる。
【0014】
請求項
8記載の本発明は、表示手段は、船舶の関連情報も表示することを特徴とする。
請求項
8に記載の本発明によれば、船員等は、乗下船装置の作動状況に加えて船舶の関連情報を得ることができ、得た情報を乗下船装置の操作等に活用することで、作業性や安全性が向上する。
【0015】
請求項
9記載の本発明は、船舶の関連情報は、機関情報、航行情報、係船情報、離着岸情報のいずれかを含むことを特徴とする。
請求項
9に記載の本発明によれば、使用者は、乗下船装置の作動状況に加えて、船舶の機関情報、航行情報、係船情報、離着岸情報のうち少なくとも一つを得ることができ、得た情報を乗下船装置の操作等に活用することで、作業性や安全性が向上する。
【0016】
請求項
10記載の本発明は、制限手段の第2の角度範囲は、車両の車体の底面の高さを考慮した角度であることを特徴とする。
請求項
10に記載の本発明によれば、乗下船時に車両の底面と第1のランプウェイ又は第2のランプウェイとが接触することを、より確実に防止し車両への悪影響を抑制できる。
【0017】
請求項
11に記載の本発明は、第2のランプウェイの端部に設けた折畳可能なフラップを備えたことを特徴とする。
請求項
11に記載の本発明によれば、フラップによって岸壁等との段差が小さくなるので、車両の乗下船がよりスムーズになる。また、フラップを備えない場合に比べて車両の乗下船による車両荷重の変化の速度を抑えることができ、フラップによる影響も含めて駆動手段を制御することができるので、車両の底面と第2のランプウェイとが接触することを、より確実に防止できる。
【0018】
請求項
12記載に対応した車両乗下船装置を備えた船舶においては、請求項1から請求項
11のうちの1項に記載の車両乗下船装置を船舶に備えたことを特徴とする。
請求項
12に記載の本発明によれば、船舶に車両乗下船装置を備えることにより、船体の上下運動やトリム変化(前後傾斜)があっても車両の乗下船を安定して行うことができる船舶を実現できる。
【0019】
請求項
13記載に対応した車両乗下船装置を備えた船舶においては、請求項
7から請求項
9のうちの1項に記載の車両乗下船装置の表示手段を、船舶の操船席及び/又は機関制御室に備えたことを特徴とする
請求項
13に記載の本発明によれば、船員等は、乗下船装置の作動状況等を操船席や機関制御盤室から確認することができるので、省力化につながる。
【0020】
請求項
14記載の本発明は、表示手段を、さらに船体の船首側に備えたことを特徴とする。
請求項
14に記載の本発明によれば、船首にいる船員等は、第1のランプウェイ及び第2のランプウェイの実際の作動状況を目視で確認しつつ、表示手段でも乗下船装置の作動状況を確認できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の車両乗下船装置によれば、車両を乗下船させる際に第1のランプウェイ及び第2のランプウェイを岸壁等に対して、船体の上下運動やトリム変化(前後傾斜)があっても適切な形状に維持することができ、車両の乗下船を車両に悪影響を与えることなく安定して行うことができる。また、第2のランプウェイの上方向への動作は機械的な拘束を受けないので、停泊時や航行時には第2のランプウェイを上方向へ回動させて収納することができる。
【0022】
また、第2の角度範囲の角度を検出する角度検出手段を備え、制御手段が角度検出手段の検出角度に基づいて駆動手段を制御する
ため、第1のランプウェイと第2のランプウェイとのなす角度に基づいて、制御手段が駆動手段を制御することにより、車両の乗下船時に生じる船体の上下運動及びトリム変化(前後傾斜)に応じて、第1のランプウェイに対する第2のランプウェイの角度が適切に調整される。したがって車両の乗下船を更に安定して行うことができる。
【0023】
また、角度検出手段が複数の動作点を有し、動作点の対応する検出角度に差を有した場合には、検出角度の差によって第1のランプウェイと第2のランプウェイの動作が制御され、第1のランプウェイに対する第2のランプウェイの角度が適切に調整される。したがって制御的にもチャタリングを起こすことなく、車両の乗下船を更に安定して行うことができる。
【0024】
また、差を動作点の異なる第1のスイッチと第2のスイッチにより実現した場合には、2つのスイッチの動作点(接点の位置)の差に基づいて、第1のランプウェイに対する第2のランプウェイの角度が適切に調整される。したがって簡単な構成で車両の乗下船を更に安定して行うことができる。
【0025】
また、駆動手段として押引可能な油圧シリンダーを用いた場合には、油圧シリンダーの伸縮に伴う押引力によって第1のランプウェイと第2のランプウェイを動作させることができる。
【0026】
また、油圧シリンダーの押引を角度検出手段の検出角度に基づいて制御する場合には、第1のランプウェイと第2のランプウェイとのなす角度に基づいて、制御手段が油圧シリンダーの伸縮を制御することにより、車両の乗下船時に生じる船体の上下運動及びトリム変化(前後傾斜)に伴う角度変化を検出して、第1のランプウェイに対する第2のランプウェイの角度が適切に調整される。したがって車両の乗下船を更に安定して行うことができる。
【0027】
また、制御手段に接続される操作手段を備えた場合には、船員等は、操作手段により制御手段のON/OFFや駆動手段等を操作することができる。
【0028】
また、乗下船装置の作動状況を示す表示手段を備え
るため、船員等は、表示手段により乗下船装置の作動状況を確認することができる。
【0029】
また、表示手段は、船舶の関連情報も表示する場合には、船員等は、乗下船装置の作動状況に加えて船舶の関連情報を得ることができ、得た情報を乗下船装置の操作等に活用することで、作業性や安全性が向上する。
【0030】
また、船舶の関連情報は、機関情報、航行情報、係船情報、離着岸情報のいずれかを含む場合には、使用者は、乗下船装置の作動状況に加えて、船舶の機関情報、航行情報、係船情報、離着岸情報のうち少なくとも一つを得ることができ、得た情報を乗下船装置の操作等に活用することで、作業性や安全性が向上する。
【0031】
また、制限手段の第2の角度範囲は、車両の車体の底面の高さを考慮した角度である場合には、乗下船時に車両の底面と第1のランプウェイ又は第2のランプウェイとが接触することを、より確実に防止し車両への悪影響を抑制できる。
【0032】
また、第2のランプウェイの端部に設けた折畳可能なフラップを備えた場合には、フラップによって岸壁等との段差が小さくなるので、車両の乗下船がよりスムーズになる。また、フラップを備えない場合に比べて車両の乗下船による車両荷重の変化の速度を抑えることができ、フラップによる影響も含めて駆動手段を制御することができるので、車両の底面と第2のランプウェイとが接触することを、より確実に防止できる。
【0033】
また、船舶に車両乗下船装置を備えた場合には、船体の上下運動やトリム変化(前後傾斜)があっても車両の乗下船を安定して行うことができる船舶を実現できる。
【0034】
また、表示手段を、船舶の操船席及び/又は機関制御室に備えた場合には、船員等は、乗下船装置の作動状況等を操船席や機関制御盤室から確認することができるので、省力化につながる。
【0035】
また、表示手段を、さらに船体の船首側に備えた場合には、船首にいる船員等は、第1のランプウェイ及び第2のランプウェイの実際の作動状況を目視で確認しつつ、表示手段でも乗下船装置の作動状況を確認できる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に、本発明の実施形態による車両乗下船装置及び車両乗下船装置を備えた船舶について説明する。
【0038】
図1は本発明の一実施形態による車両乗下船装置を備えた船舶の基本構造図であり、
図1(a)は側面図、
図1(b)は上面図である。また、
図2は同船舶の動力システムの基本構成図である。
船舶10は、車両乗下船装置20を有し、旅客室を兼ねた小型バス等の車両Aを搭載できる。船舶10は、例えば総トン数約17トンのFRP製小型船舶である。船舶10は、船尾側に配置されたキャビン上部に操作席11を備える。船舶10の機関室には、主機12、二つの燃料油タンク13、大容量発電機14、小容量発電機15、及び油圧ポンプ16が配置されている。
船舶10の船内には、
図2に示すように、電気自動車(EV)の搭載を想定した急速充電器40やハイブリッドシステムの試験に使用するリチウムイオン電池50等の電気機器が搭載されている。
【0039】
車両乗下船装置20は、甲板上に配置された2段式のランプウェイ21と、ランプウェイ21を駆動する駆動手段22と、車両Aの乗下船時等に駆動手段22を制御する制御手段23とを備える。
本実施形態において駆動手段22は、油圧によるシリンダーの伸縮に伴って押引可能な油圧シリンダーであり、主機12の動力で駆動する油圧ポンプ16によって動作する。油圧シリンダー22を押引可能なものとすることによりランプウェイ21を、押引力を持って作動させることができ、ランプウェイ21の上昇、下降動作がスムーズに行える。
ランプウェイ21は、油圧シリンダー22に接続された電磁バルブを制御手段23によって制御することで動作する。制御手段23は、例えばPLC(Programmable Logic Controller)である。制御手段23には操作手段(コントロールボックス)27が接続されており、船員等は、操作手段27によって車両乗下船装置20の運転開始/停止等のための制御手段23のON/OFFや油圧シリンダー22等の操作を行うことができる。
【0040】
ランプウェイ21は、第1のランプウェイ21Aと第2のランプウェイ21Bとから成る。第1のランプウェイ21Aは、一端は船体の中央側に設けられた第1の軸24に接続され、他端は船体の船首側に設けられた第2の軸25に接続されている。第2のランプウェイ21Bは、一端は第2の軸25に接続され、一端よりも船首側に配置された他端(先端)には回動軸26aを介してフラップ26が設けられている。フラップ26は、長さ約1mであり、回動軸26aを中心(支点)として回動可能であり、折り畳む場合には上方向に回動させる。フラップ26を備えることにより、車両Aは船舶10にスムーズに乗下船できる。また、フラップ26を備えない場合に比べて車両Aの乗下船時における、車両Aの底面と第2のランプウェイ21Bの第2の軸25の近傍部とが接触することを、より確実に防止できる。
第2のランプウェイ21Bは、第1のランプウェイ21Aよりも短く、フラップ26よりも長い。第1のランプウェイ21Aの他端は船体の前端よりも後方に位置し、第2のランプウェイ21Bの他端(先端)は少なくとも車両Aの乗下船時には船体の前端よりも前方に位置する。すなわち第2のランプウェイ21Bは、少なくとも車両Aの乗下船時には船体よりも前方に突出する。
第1のランプウェイ21Aには、油圧シリンダー22が係止されている。第1のランプウェイ21Aに接続された油圧シリンダー22の伸縮によって第1のランプウェイ21Aと第2のランプウェイ21Bを動作させることができる。
図1には、ランプウェイ21が油圧シリンダー22によって持ち上げられ、上昇した状態を点線で示している。
第1の軸24は船体に対して固定されている。第1のランプウェイ21Aは、第1の軸24を中心(支点)として、油圧シリンダー22によって第1の角度範囲で回動する。第1の角度範囲は、船体の基準となる甲板面と第1のランプウェイ21Aとがなす角度の範囲であり、船舶10に乗下船する車両Aの寸法等の諸元によって決定する。
また、第2の軸25は、船体に対して固定されておらずランプウェイ21と共に上下動する。第2のランプウェイ21Bは、第1のランプウェイ21Aの上昇又は下降動作に伴って、第2の軸25を中心(支点)として回動する。
なお、この実施の形態においては、ランプウェイ21は船首方向に設けられているが、船尾方向に設けてもよく、船舶10の構造によっては船側方向に設けてもよい。
【0041】
図3は同船舶に乗下船する車両の諸元等を表した図であり、
図3(a)は同船舶に乗下船する車両(小型バス)の重量バランス、最低地上高さ、及び斜路を走行する際の制限を示す図、
図3(b)は静的な排水量計算およびトリム計算を行った結果の一例を示す図である。
本実施形態において船舶10に乗下船させる車両Aは、例えば最大重量約7.5トンの低床式小型バスである。船舶10の船体及びランプウェイ21は、
図3(a)に示す車両Aに関する各値を踏まえて詳細な寸法及び形状が決定される。
また、車両Aが岸壁(桟橋)Bに乗下船する時には、岸壁(桟橋)Bとの高低に加え、乗下船に伴う船体の上下運動及びトリム運動が生じる。
図3(b)の計算例はランプウェイ21と車両Aの底面との隙間が狭くなった状況を表しており、図面上の最小隙間は約26mmとなっている。
本実施形態では、
図3(a)に示す車両Aの諸元と
図3(b)に示す計算結果を考慮して、第1の角度範囲を0〜10°程度の範囲としている。
【0042】
図4は同船舶に用いる操作手段と表示手段の概略構成図である。
車両乗下船装置20は、表示手段28を複数備えている。表示手段28は、船舶10の操船席11、機関制御室17(
図1(b)参照)、及び船首にそれぞれ配置されている。
表示手段28は、操作手段27を兼ねたタッチディスプレイ(操作手段兼表示手段)である。船首には、操作手段兼表示手段27(28)とは別個に操作手段27が設けられている。
船首に配置された制御手段23と、操作手段兼表示手段27(28)及び操作手段27とは、LAN(Local Area Network)で接続されている。
表示手段27を設けることによって、船員等は、乗下船装置20の作動状況を表示手段27で容易に確認することができる。また、操船席11や機関制御室16にも表示手段27を配置することで、乗下船装置20の作動状況を目視確認し難い位置である操船席11や機関制御室16に居る船員等であっても、表示手段27によって容易に確認することができる。したがって、船員等の作業の省力化につながる。また、船首にも表示手段27を配置することで、船首にいる船員等は、第1のランプウェイ21及び第2のランプウェイ22の実際の動作状況を目視で確認しつつ、表示手段27でも乗下船装置20の作動状況を確認できる。また、船首の上部に設けた表示手段27を車両Aの運転手等が確認できる位置に配置することもできる。さらに表示手段27を無線通信化し、車両Aの運転席で確認できるようにすることも可能である。
【0043】
表示手段27は、船舶10の関連情報も表示することができる。関連情報には、主機12の出力や回転数等の機関情報、天候や波高等の航行情報、電動キャプスタンのロープ巻取り状況等の係船情報、船舶10と岸壁Bとの距離等の離着岸情報のうち少なくとも一つを含むことが好ましい。
この場合船員等は、表示手段27から得られた乗下船装置20の作動状況と関連情報を考慮して車両Aの乗下船作業を行うことができるので、作業性や安全性が向上する。
【0044】
図5は同船舶に用いるランプウェイの部分拡大側面図である。なお、一部の機器等を省略している。
車両乗下船装置20は、第2のランプウェイ21Bの回動を制限する制限手段29を備えている。制限手段29は、第2のランプウェイ21Bの一端側の下側に設けられたストッパー(金具)である。ストッパー29は、第2のランプウェイ21Bが上方向に動くときには他の部材と当接しないが、第2のランプウェイ21Bが下方向に動くときには、所定の移動量になると第1のランプウェイ21Aの他端側に下側から当接するので、第2のランプウェイ21Bはそれ以上に下方向に動くことはできない。すなわち第2のランプウェイ21Bは、上方向に動くときには機械的な拘束が無いが、下方向に動くときには第1のランプウェイ21Aに対する動作範囲が第2の角度範囲αに制限される。なお、
図5には、点線で第2のランプウェイ21Bが、第1のランプウェイ21Aと第2のランプウェイ21Bとのなす角度が0°となる位置よりも更に上方向に回動した状態を示している。
第2の角度範囲αは、第2のランプウェイ21Bが、第1のランプウェイ21Aと第2のランプウェイ21Bとのなす角度が0°となる位置よりも下方向に動く際の第1のランプウェイ21Aに対する第2のランプウェイ21Bの角度の範囲であり、船舶10に乗下船する車両Aの諸元等によって決定する。本実施形態では、
図3で示した車両Aの諸元等を考慮して、第2の角度範囲αの下方向の最大角度(制限値)は7°としている。すなわち第2のランプウェイ21Bは、第1のランプウェイ21Aと第2のランプウェイ21Bとのなす角度が0°となる位置よりも更に7°下方向まで移動することが可能である。
このように、第2のランプウェイ21Bは、第2の軸25を中心(支点)として回動し、上方向に動く際の機械的な拘束がないため、停泊時や航行時には
図1(a)に示すように、第1のランプウェイ21Aを水平にし、第2のランプウェイ21Bを上方向に移動させて収納することができる。一方、下方向への回動を制限するストッパー29が取り付けられているため、第2のランプウェイ21Bは、第1のランプウェイ21Aに対する角度が下方向に7°の角度で制限を受ける構造となっている。これによって、車両Aを乗下船させる際、ランプウェイ21を適切な形状に維持することができ、車両Aの乗下船を安定させることができる。
【0045】
図6は同船舶の軽荷状態におけるランプウェイの動作範囲を示す図であり、
図6(a)は岸壁(桟橋)Bが第2の軸25の最大上昇位置よりも高い場合を示し、
図6(b)は岸壁(桟橋)Bが第2の軸25の最大上昇位置よりも低い場合を示す。
ランプウェイ21の先端部は約1.3mの高さの範囲を動かすことができる.これは水面W.L.から岸壁(桟橋)Bまでの高さの1.0〜2.3mに相当する。ただし、車両Aの乗下船時には船体の上下運動並びにトリム変化(前後傾斜)が生じるため、実際の使用範囲はかなり狭くなる。
【0046】
図7は同船舶に用いるランプウェイのうち第1のランプウェイと第2のランプウェイとの接続部分の拡大側面図である。
車両乗下装置20は、第2の角度範囲αの角度を検出する角度検出手段30を備える。制御手段23は、角度検出手段30の検出角度に基づいて油圧シリンダー22を制御する。また、角度検出手段30と第2の軸25との間には、レーザ変位計60を備える。レーザ変位計60は、船体の基準となる甲板面と第1のランプウェイ21Aとがなす角度を検出する。
角度検出手段30は、第1のスイッチ31と第2のスイッチ32とからなる。第1のスイッチ31及び第2のスイッチ32は、近接センサである。
第1のスイッチ31及び第2のスイッチ32の検出面の近傍には、第2のランプウェイ21Bから延伸した板33が設けられている。板33は第2のランプウェイ21Bと共に動くので、第1のスイッチ31及び第2のスイッチ32と板33との距離が変化する。したがって、第1のスイッチ31及び第2のスイッチ32は、ともに第1のランプウェイ21Aに対する第2のランプウェイ21Bの動きに応じて検知することができる。
第1のスイッチ31及び第2のスイッチ32は、第1のランプウェイ21Aと第2のランプウェイ21Bとのなす角度のうち、0°よりも下方向に第2のランプウェイ21Bが回動するときの最大角度(制限値)で共にONとなる。また、第1のスイッチ31は、0°よりも大きく最大角度(制限値)よりも小さい角度である第1閾値になったときにOFFとなる。また、第2のスイッチ32は、0°よりも大きく第1閾値よりも小さい角度である第2閾値になったときにOFFとなる。このように、第1のスイッチ31と第2のスイッチ32とでは、その動作点(接点の位置)に差を設けている。
したがって、本実施形態では、第2のランプウェイ21Bの下方向への動作の制限値である、第1のランプウェイ21Aと第2のランプウェイ21Bとのなす角度が最大角度の7°のときには、第1のスイッチ31及び第2のスイッチ32のスイッチがONとなり、7°から制限値をわずかに下回る第1閾値(例えば約6.5°)までの間は双方のスイッチがONを維持し、第1閾値(例えば約6.5°)以下になったときには、第1のスイッチ31だけがOFFとなり、第1のランプウェイ21Aと第2のランプウェイ21Bとのなす角度がさらに小さくなって第2閾値(例えば約6°)になったときには、第2のスイッチ32のスイッチもOFFとなる。
以上のように第1のスイッチ31及び第2のスイッチ32の作動点は、第2の角度範囲αの下方向の最大角度(制限値)である7°以内に設定している。
制御手段23は、第1のスイッチ31及び第2のスイッチ32の双方がONのときに第1のランプウェイ21Aを下降させ、第1のスイッチ31及び第2のスイッチ32がOFFのときに第1のランプウェイ21Aを上昇させるように油圧シリンダー22を制御する。また、第1のスイッチ31だけがOFFのときには第1のランプウェイ21Aの位置を維持するように油圧シリンダー22を制御する。
このように、第1のスイッチ31と第2のスイッチ32との検出位置に差を設け、制御手段23が検出角度に基づいて油圧シリンダー22の制御を行うことによって、制御的にもチャタリングを起こすことなく、第2のランプウェイ21Bの先端が桟橋Bに軽く接触している状態を維持して車両Aの乗下船を安定して行うことができる。
なお、角度検出手段30としては第1のスイッチ31と第2のスイッチ32以外にも、エンコーダ、ポテンショメータ、傾斜センサ等各種の角度検出手段を使用可能である。
【0047】
図8は同船舶及び同船舶に用いるランプウェイの主要動作を示す模式図である。
上記のように車両乗下船装置20の動作は制御手段23により行われる。制御電源、主機回転数、クラッチ動作等の起動条件が整った後、制御手段23に接続された操作手段27の起動スイッチをONにすることで油圧シリンダー22が伸縮してランプウェイ21が上下に動作する。なお、ランプウェイ21の上端または下端の位置は近接センサにより感知され、制限範囲を超えた運転ができないように制御手段23によって制御されている。
車両Aが乗下船する際には、船体の上下運動並びにトリム変化が生じるため、車両Aの移動に伴う第1のランプウェイ21Aと第2のランプウェイ21Bとのなす角度の調整が必要となる。
図8は、車両Aを下船させるときの車両乗下船装置20の動作の要点を模式的に示している。
図8(a)は岸壁Bに接岸した船舶10から車両Aが下船を開始する状態を示し、
図8(b)はランプウェイ21が上昇し、第1のランプウェイ21Aに車両Aの前輪が載った状態を示し。
図8(c)はランプウェイ21に車両Aの前輪及び後輪が載った状態を示し、
図8(d)は車両Aの前輪がフラップ26に載った状態を示し、
図8(e)は車両Aの前輪がランプウェイ21Bから降りた状態を示し、
図8(f)は車両Aの後輪が第2の軸25を越えた状態を示し、
図8(g)は車両Aの後輪がフラップ26に載った状態を示し、
図8(h)は車両Aがランプウェイ21から完全に降りた状態を示す。
制御手段23は、
図8(a)〜(c)の範囲においては、車両Aが前方に移動するのに伴って船体が前方に傾くためランプウェイ21を上昇させる。
図8(d)〜(e)の間、すなわち車両Aの前輪が第2のランプウェイ21Bの先端から降りる際は、ランプウェイ21を適切な位置まで下降させる。これにより車両荷重の減少とともに船体が上昇し、車両底面とランプウェイ21が接触することを防ぐ。さらに、
図8(g)〜(h)の間、すなわち車両Aの後輪が第2のランプウェイ21Bの先端から降りる際にも、ランプウェイ21を適切な位置まで十分に下降させる。ランプウェイ21を十分に下降させておくことで、車両荷重の変化によって船体が跳ね上がり、第2のランプウェイ21Bの先端と車両後部底面が接触することを防ぐ。
また、第2のランプウェイ21Bの先端に回動可能なフラップ26を備えることで、フラップ26を備えない場合に比べて車両Aの乗下船による車両荷重の変化の速度を抑えることができ、フラップ26にかかる車両荷重の影響も含めて油圧シリンダー22を制御することができるのでランプウェイ21と車両Aの底面が接触することをより確実に防ぐことができる。
【0048】
図9は、実船において、車両Aを下船させる際の車両乗下船装置20の動作状況と船体のトリム角(前傾方向が負)を計測した結果の一例である。なお、車両乗下船装置20のランプウェイ21の操作は手動で行ったものである。
図9において、縦軸は角度、横軸は時間[秒]である。ランプウェイ角度A(Rampway angle A)は船体の基準となる甲板面と第1のランプウェイ21Aとのなす角度であり、ランプウェイ21の操作状況を表している。また、ランプウェイ角度B(Rampway angle B)は第1のランプウェイ21Aと第2のランプウェイ21Bとのなす角度である。この計測では、車両Aが移動を始める前にランプウェイ21を大きく上昇させる操作(1)を行い、車両Aの前輪が第2の軸25を越えるあたりからランプウェイ21を下降させる操作(2)、車両Aの後輪が第2のランプウェイ21Bの先端から降りるときにランプウェイ21をさらに下降させる操作(3)を行った。ランプウェイ21を段階的に操作することで、車両Aの移動に伴う船体の上下運動並びにトリム変化に対応している。
【0049】
図10は同船舶の車両乗下船装置の安全対策を示す図である。
車両Aの乗下船を安全かつスムーズに行うため、車両乗下船装置20には安全対策を施すことが好ましい。例えば、
図10(a)に示すように、緑色に塗装されたランプウェイ21の右舷側に黄色のライン21cを塗装する。これにより、車両Aが乗下船する際、車両Aの進入角度やタイヤの位置の目印となり、車両Aの運転が容易になる。また、第1のランプウェイ21A及びその後方の甲板にはタイヤの幅に合わせた溝をつくり、車両Aを正確な位置に誘導するとともに、船舶運航時の動揺による車両Aの移動を防止する。さらに、
図10(b)に示すように、ランプウェイ21に車両Aのタイヤ位置に合わせて固縛ベルト21dを取り付けるための金具を付けることで、車両Aを強固に固定できる。
車両Aの乗下船時には、船体に取り付けられた電動キャプスタンによって岸壁Bにつないだロープを巻き取り、船体を桟橋に強く押し付ける。これにより、車両Aのタイヤに強いトルクが発生した場合でも、船体が前後方向に動かないようにする。これらの対策によって、スムーズで安全な乗下船を実現できる。
【0050】
(模型船による検証)
図11は実験に用いた模型船の外観写真及び構造図、
図12は同模型船のランプウェイ部分の写真である。
図11に示す模型船及び模型自動車は、実際の船舶と小型バスの1/16縮尺の寸法・形状でつくられており、これらの模型船及び模型自動車を用いて車両乗下船装置の動作並びに操作を検証した。
模型船の車両乗下船装置20は、小型サーボモータによって実際の船舶とほぼ同じ運動をするようにつくられている。また、小型サーボモータには実船と同じ制御手段(PLC)23及び実船と同一の操作ができる操作手段27が接続されている。
【0051】
模型船のランプウェイ21の第2の軸25部分に取り付ける第1のスイッチ31及び第2のスイッチ32として、近接センサと同等の機能を有する2つのマイクロスイッチを用いた。
図12には、模型船の第2の軸25部分に取り付けたマイクロスイッチ(第1のスイッチ31及び第2のスイッチ32)を示している。この2つのスイッチはともに第1のランプウェイ21Aに対する第2のランプウェイ21Bの動きに応じて検知するが、その動作点(接点の位置)をわずかにずらしている。したがって、ランプウェイ角度B(第1のランプウェイ21Aと第2のランプウェイ21Bがなす角度)の制限値である7°のときには両方のスイッチがON、制限値をわずかに下回ったとき(例えば約6.5°)には片方のスイッチだけがOFF、ランプ角Bがさらに小さくなると(例えば約6°)両方のスイッチがOFFとなる。制御手段23は、両方のスイッチがONのときに第1のランプウェイ21Aを下降させ、両方のスイッチがOFFのときに第1のランプウェイ21Aを上昇させる。さらに一方のスイッチだけがOFFのときには第1のランプウェイ21Aの位置を維持する。
【0052】
図13は、同模型船を用いた実験の計測結果等を示す図であり、
図13(a)は同模型船に模型自動車を乗下船させる際の車両後輪の初期位置を基準とした車両の移動距離に対するランプウェイ角度A(Rampway angle A)の計測結果を示す図、
図13(b)は同模型船に乗下船させる模型自動車の移動距離を示す図である。
制御手段23による動作を検証するため、模型船を機械ばねで吊した状態として、模型自動車の乗下船試験を行った。機械ばねの強さ(ばね定数)は、実船のトリム変化を生じさせる浮力よりもやや弱いものを使用し、実船よりも大きく傾く設定とした。
図13(a)の縦軸はランプウェイ角度A(Rampway angle A)、横軸は模型自動車の移動距離[mm]である。Auto control(Disembarking)は模型自動車が模型船から降りるときの値を示し、Auto control(Embarking)は模型自動車が模型船に乗るときの値を示す。また、準静的に模型自動車を移動させて、ランプウェイ21を手動で操作したときのランプウェイ角度Aを併記している。また、模型自動車の移動距離は
図13(b)に示す通りである。これより、移動距離0〜400mmの間及び550〜800mmの間は、自動制御と手動操作の角度は概ね同等であり、自動制御は概ね適切に行われていることがわかる。一方、前輪が第2のランプウェイ21Bの先端と陸上の境にある付近(車両位置508mm)において、制御時の挙動がやや変動している。これは、ランプウェイ21を駆動する小型サーボモータの応答性および機械ばねによる振動が主要因であると考えられる。なお、模型自動車の移動を遅くした場合には、比較的安定した制御ができることを確認している。