特許第6684496号(P6684496)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6684496
(24)【登録日】2020年4月1日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】グリル付コンロ
(51)【国際特許分類】
   F24C 3/08 20060101AFI20200413BHJP
   F23D 14/04 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
   F24C3/08 V
   F23D14/04 Z
   F24C3/08 Q
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-98907(P2016-98907)
(22)【出願日】2016年5月17日
(65)【公開番号】特開2017-207233(P2017-207233A)
(43)【公開日】2017年11月24日
【審査請求日】2019年4月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112015
【氏名又は名称】株式会社パロマ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】吉野 卓己
【審査官】 根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−190653(JP,A)
【文献】 特開平10−34398(JP,A)
【文献】 実開昭52−26685(JP,U)
【文献】 特開2011−7442(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 3/00−3/14
F23D 14/04
A47J 37/00−37/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
器体内にグリル庫が形成され、前記グリル庫内の上部に、上板と、複数の炎口を備えた下板とを接合してなる板金製のグリルバーナが設置されているグリル付コンロであって、
前記グリルバーナの前記上板上に、錘部材が載置されていることを特徴とするグリル付コンロ。
【請求項2】
前記グリルバーナの上方を覆う遮熱板が備えられ、前記錘部材は、前記遮熱板から吊り下げ支持されていることを特徴とする請求項1に記載のグリル付コンロ。
【請求項3】
前記錘部材は、平面視が矩形状の板体で、長手方向の一端側が前記遮熱板に固定され、他端側に設けた係止片が前記遮熱板に係止することで吊り下げ支持されていることを特徴とする請求項2に記載のグリル付コンロ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリルを備えたテーブルコンロやビルトインコンロ等のグリル付コンロに関する。
【背景技術】
【0002】
グリル付コンロにおけるグリルでは、グリル庫内に設置したグリルバーナによって魚等の被調理物を加熱調理している。このグリルバーナは、特許文献1に開示されるように、板金製の上板と下板との外周をカシメや溶接等で接合し、上板と下板との間に燃料ガスと空気との混合ガスが供給されるチャンバー部を形成した扁平形状となっている。このグリルバーナをグリル庫内の上部に設置し、下板に形成した複数の炎口から混合ガスを燃焼させることで、被調理物の加熱調理が行われる。
【0003】
このような板金製のグリルバーナにおいては、点火直後の不安定な燃焼状態に起因して下板の炎口から形成される炎が周期的に振動する振動燃焼が生じ、この振動数が上板の固有振動数と一致して共鳴し、「バーナ鳴き」と称される共鳴音が発生することがある。
この共鳴音の発生を抑制するために、特許文献1では、チャンバー部を形成する絞り部に、絞りリブからなる補強絞りを形成して剛性を高くする発明が開示されている。また、特許文献2では、上板を、上方に寄せ棟状に盛り上がるように絞り形成して剛性を高める発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−7442号公報
【特許文献2】特開2015−190653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の発明では、ロットによって補強絞りにばらつきが生じ、共鳴音の発生防止効果が低くなるおそれがある上、補強絞りによって混合ガスの流れに悪影響を与える場合がある。
また、特許文献2の発明では、上方への絞り形成によりグリルバーナの厚みが大きくなって設計自由度が狭められるのに加え、やはり混合ガスの均一な供給が難しくなる等、グリルバーナの他の性能に悪影響を与えるおそれがある。
一方、これらの発明以外に、上板の肉厚を大きくして強度を高くする対策も考えられるが、加工が難しくなる上、熱容量が増加して調理性能が悪くなり、魚等の被調理物が焼けにくくなるおそれも生じる。
【0006】
そこで、本発明は、グリルバーナの性能に悪影響を与えることなく共鳴音の発生を効果的に抑制することができるグリル付コンロを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、器体内にグリル庫が形成され、グリル庫内の上部に、上板と、複数の炎口を備えた下板とを接合してなる板金製のグリルバーナが設置されているグリル付コンロであって、
グリルバーナの上板上に、錘部材が載置されていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成において、グリルバーナの上方を覆う遮熱板が備えられ、錘部材は、遮熱板から吊り下げ支持されていることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項2の構成において、錘部材は、平面視が矩形状の板体で、長手方向の一端側が遮熱板に固定され、他端側に設けた係止片が遮熱板に係止することで吊り下げ支持されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、グリルバーナの上板上に錘部材を載置したことで、点火直後に振動燃焼が生じても上板の振動が強制的に抑えられ、共鳴音の発生防止のためにグリルバーナに手を加える必要がなくなる。よって、グリルバーナの性能に悪影響を与えることなく共鳴音の発生を効果的に抑制することができる。
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加えて、錘部材を遮熱板から吊り下げ支持して上板上に載置しているので、遮熱板を利用して錘部材を簡単に上板上へ載置することができる。また、錘部材の位置ずれも防止して共鳴音の発生防止効果を好適に維持することができる。
請求項3に記載の発明によれば、請求項2の効果に加えて、錘部材を平面視が矩形状の板体として、長手方向の一端側を遮熱板に固定し、他端側に設けた係止片を遮熱板に係止させることで吊り下げ支持しているので、錘部材の遮熱板への組み付けを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】テーブルコンロの斜視図である。
図2】グリル部分の縦断面図である。
図3】グリルバーナの説明図で、(A)が平面、(B)が底面をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、グリル付コンロの一例であるテーブルコンロの斜視図で、トッププレートを省略してグリル庫の遮熱板を取り外した分解状態で示している。このテーブルコンロ1は、器体2内に、左右(図1の右下側を前方とする。)一対のコンロ3,3と,コンロ3,3の間に位置するグリル4とを有する。コンロ3は、図示しないガス量調整装置を介して燃料ガスが供給されるコンロバーナ5を備え、コンロバーナ5のバーナ本体6を器体2の上面を閉塞するトッププレートから上方に露出させて、バーナ本体6上に、外周に炎口を形成するバーナキャップ7を載置している。
【0011】
図2は、グリル部分の縦断面図で、グリル4は、左右の側板9,9と、底板10と、前下がり傾斜した天板11と、後板12とで囲まれる前後に長い箱状のグリル庫8を有し、天板11には、グリルバーナ13が設置されると共に、グリルバーナ13の上方を覆う遮熱板14が取り付けられている。一方、底板10上には、図示しない焼き網を支持する受け皿15が載置されている。受け皿15の前端には、取っ手16が取り付けられて、取っ手16によって受け皿15がグリル庫8から出し入れ可能となっている。取っ手16の上側には、グリル庫8の前面を閉塞するグリル扉17が設けられている。また、グリル庫8の後部上側には、上方へ突出する排気通路18が形成されて、排気通路18の上端が、トッププレートに設けた排気口に接続されている。器体2の前面パネル19においてグリル扉17の左右には、各コンロバーナ5,5及びグリルバーナ13に対応する点消火ツマミ20,20・・が設けられている。
【0012】
グリルバーナ13は、図3に示すように平面視矩形状の扁平体で、アルミ等の金属製で平面視が略同形状の上板21と下板22とを重ね合わせて外周のフランジ部23,23同士をカシメ結合してなる。
このグリルバーナ13には、スロート部24とチャンバー部25とが形成されている。まずスロート部24は、グリルバーナ13の一方の短辺側で当該短辺と平行な向きで管状に形成され、一端をフランジ部23と共に隣接する長辺から直角に突出させている。スロート部24の突出端には、ガス導入孔を備えたダンパキャップ26(図1)が被せられて、スロート部24の両側で突出するフランジ部23には、ガスノズル27をダンパキャップ26のガス導入孔に対して同軸で固定するための位置決め板28が固定されている。スロート部24の他端は、チャンバー部25側へ向けて直角に屈曲する屈曲部29となっているが、この屈曲部29は上板21のみにプレス成形されている。
【0013】
チャンバー部25は、グリルバーナ13の外形よりも一回り小さい平面視矩形状の扁平な中空部で、上板21にプレス形成された深底の上側膨出部30と、下板22にプレス形成された浅底の下側膨出部31とによって形成されて、上板21での上側膨出部30の短辺に、スロート部24の屈曲部29が接続されている。
また、上側膨出部30の上面には、平面視がX字状の絞り32が、上側膨出部30よりも浅く凹設されて、チャンバー部25の厚み方向の空間を絞り32の形状に沿って狭くしている。絞り32の中央には、プレス加工の際の肉余りを調整するための円形凸部33が残されている。
【0014】
一方、下板22の下側膨出部31には、スロート部24側の短辺を除いて、反対側の短辺及びそれと繋がる一対の長辺に沿ったコ字状の形成範囲で、複数の炎口34,34・・が形成されている。この炎口34の形成範囲は、上板21の絞り32とは厚み方向で重ならないようになっている。また、下側膨出部31の下面において、炎口34の形成範囲の内側には、長手方向の両端を半円状とした一対の帯状の下側絞り35,35が、下側膨出部31よりも浅く凹設されている。この下側絞り35,35はチャンバー部25の変形防止用である。
【0015】
遮熱板14は、天板11と略同様に外形が前後に長い矩形状となる遮熱部36と、遮熱部36の両長辺から下向きに折曲された後、外側へ折曲される横断面L字状の取付部37,37とがプレス成形された板金で、遮熱部36には、グリルバーナ13のチャンバー部25より一回り大きい矩形状の膨出部38が形成されている。
この遮熱板14は、取付部37,37の下辺が天板11の上面に図示しないネジで取り付けられることで、トッププレートの下方で遮熱部36が排気通路18と前面パネル19との間に位置してグリルバーナ13の上方を非接触で覆うものとなる。
【0016】
そして、40は、錘部材としての錘板である。この錘板40は、前後に長い平面視矩形状を呈する鉄製(約90g)で、前側の短辺際には、ネジ孔42を形成したボス41が上向きに突設され、後側の短辺には、上向きに立ち上げた後、後方へ突出する横断面倒L字状の係止片43が形成されている。また、錘板40の中央部には、平面視が円形の凹部44が形成されて、凹部44の中心には、凹部44よりも浅い深さの凸部45が同心円上で上向きに突設されている。ここでの凹部44は、グリルバーナ13の上板21に設けた絞り32の中央に嵌合する大きさで形成されており、凸部45は、絞り32に設けた円形凸部33より一回り大きく形成されている。
【0017】
一方、遮熱板14の膨出部38の前側には、錘板40のボス41のネジ孔42に対応する透孔46が形成され、後側には、係止片43に対応するスリット47が左右方向に形成されている。
よって、錘板40は、係止片43を下方からスリット47に差し込んで、前側のボス41を、透孔46に上方から通したネジ48をネジ孔42にねじ込んで固定することで、遮熱板14に取り付けられる。この取付状態で錘板40は、前端がネジ止めされた片持ち状態となり、後端はスリット47を貫通した係止片43の上端が遮熱板14の上面に係止する位置で吊り下げ支持されることになる。
【0018】
以上の如く構成されたテーブルコンロ1のグリル4において、まずグリルバーナ13は、グリル庫8の天板11の上側から、天板11に設けた図示しない開口内に、炎口34を下側にしたチャンバー部25が収まり、スロート部24が後側となる向きで設置され、フランジ部23を天板11にネジ49,49・・によって前下がり傾斜した姿勢で取り付けられる。そして、グリル4に配管されるガス管のガスノズル27を位置決め板28に固定すれば、図2のように炎口34がグリル庫8内に露出する状態で設置が完了する。
【0019】
次に、錘板40を取り付けた遮熱板14を天板11にネジ止めすると、錘板40は、凹部44がグリルバーナ13の上面の絞り32の中央に当接し、凸部45が円形凸部33を覆う位置で持ち上げられ、図2に示すように係止片43の上端が遮熱板14から浮き上がった状態でグリルバーナ13上に載置される。よって、ネジ48によって片持ちされる錘板40の重量がグリルバーナ13に加わる格好となる。
【0020】
このグリル4において、器体2の前面パネル19に設けた点消火ツマミ20を操作すると、ガス管に供給された燃料ガスがガスノズル27から噴出して燃焼用空気と共にスロート部24のダンパキャップ26から流入し、燃料ガスと燃焼用空気との混合ガスがスロート部24を通って屈曲部29からチャンバー部25に流れ込む。チャンバー部25内に流入した混合ガスは、各炎口34から噴出して図示しない点火電極の放電によって炎口34の形成範囲で燃焼する。よって、焼き網上の被調理物が上方から加熱調理される。
【0021】
そして、点火直後の不安定な燃焼状態に起因して炎口34から形成される炎が周期的に振動する振動燃焼が生じると、追従して上板21が上下に振動しようとする。しかし、上板21が上方向へ移動する際には錘板40の重量が加わり、下方向へ移動する際には、遮熱板14から吊り下げ支持される錘板40から離れて錘板40が浮いた状態となり、上板21の重量だけとなる。このため、上下方向で重量が異なってエネルギーがアンバランスとなることから、上板21の振動が抑えられ、「バーナ鳴き」と称される共鳴音の発生が抑制される。この共鳴音抑制作用は、錘板40が上板21に対して一体に固定されず、遮熱板14から吊り下げ支持されて上下移動可能な状態で上板21上に載置されていることでより好適に奏される。特に、最も振動しやすい上側膨出部30の中央部に錘板40が載置されるため、固有振動の抑制効果が高くなっている。また、錘板40の凸部45が絞り32に設けた円形凸部33に嵌合しているので、上下移動可能であっても上板21に対する位置ずれが生じにくくなる。
【0022】
このように、上記形態のテーブルコンロ1によれば、グリルバーナ13の上板21上に、錘板40を載置したことで、点火直後に振動燃焼が生じても上板21の振動が強制的に抑えられ、共鳴音の発生防止のためにグリルバーナ13に手を加える必要がなくなる。よって、グリルバーナ13の性能に悪影響を与えることなく共鳴音の発生を効果的に抑制することができる。
特にここでは、錘板40を、遮熱板14から吊り下げ支持して上板21上に載置しているので、遮熱板40を利用して錘板40を簡単に上板21上へ載置することができる。また、錘板40の左右方向への位置ずれも防止して共鳴音の発生防止効果を好適に維持することができる。
また、錘板40を、平面視が矩形状の板体として、長手方向の一端側をネジ48によって遮熱板14に固定し、他端側に設けた係止片43を遮熱板14に係止させることで吊り下げ支持しているので、錘板40の遮熱板14への組み付けを容易に行うことができる。
【0023】
なお、錘板はボスと係止片とを前後逆にして、後側を片持ち支持して前側を吊り下げ支持させてもよい。また、錘板を前後でなく左右方向に配置してグリルバーナの上板上に載置することもできる。さらに、凹部内の凸部は、グリルバーナに円形凸部がなければ省略することができるし、絞りの形状によっては凹部は円形以外でも差し支えない。絞りがなければ凹部を省略することもできるし、錘板の全体形状も平板状でなく下向きに膨出する円弧状や台形状とすることもできる。
【0024】
加えて、錘部材としては上記形態のように遮熱板に片持ち支持される錘板に限らず、両端から上向きに折り返した位置決め片を遮熱板に設けたスリットに差し込んで位置決めのみとして、全重量をグリルバーナに加えることもできる。
また、遮熱板を利用する構造に限らず、例えばグリルバーナの上板の絞りに嵌合する形状とした錘板をそのまま載置する等、グリルバーナの上板上での位置決めが可能であれば、遮熱板と連係させずにグリルバーナ上へ単純に載置することも可能である。錘部材の形状も板体に限らず、棒体や球体としても差し支えないが、載置する位置は上記形態と同様に、最も振動しやすいチャンバー部の中央部とするのが望ましい。
【0025】
その他、上記形態では上側にのみグリルバーナを有する片面焼きグリルとなっているが、下バーナを有する両面焼きグリルであっても上バーナに本発明は適用できる。また、上記形態ではグリル付コンロとしてテーブルコンロで説明しているが、ビルトインコンロであっても本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0026】
1・・テーブルコンロ、2・・器体、3・・コンロ、4・・グリル、5・・コンロバーナ、8・・グリル庫、11・・天板、13・・グリルバーナ、14・・遮熱板、21・・上板、22・・下板、24・・スロート部、25・・チャンバー部、32・・絞り、34・・炎口、36・・遮熱部、38・・膨出部、40・・錘板、41・・ボス、43・・係止片、44・・凹部、46・・透孔、47・・スリット、48,49・・ネジ。
図1
図2
図3