(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の好ましい実施形態は、本明細書及び本特許請求の範囲で知られ得る。異なる実施形態の組み合わせは、本発明の範囲内に含まれる。
【0013】
一般的に、電解質組成物は、高いイオン伝導率を有する物質又は混合物である。一般的に電解質組成物は、室温で、少なくとも10
−5S/cm
−2、好ましくは少なくとも10
−4S/cm
−2、より好ましくは、少なくとも10
−3S/cm
−2のイオン伝導率を示す。
【0014】
本発明によると、電解質組成物は、一般構造(I)の少なくとも1種の化合物を含む。これらの化合物は、ジメチルホスファイト、エチルメチルホスファイト、メチルn−プロピルホスファイト、n−ブチルメチルホスファイト、ジエチルホスファイト、エチルn−プロピルホスファイト、エチルn−ブチルホスファイト、ジ−n−プロピルホスファイト、n−ブチルn−プロピルホスファイト、又はジ−n−ブチルホスファイトを含む。
【0015】
一般構造(I)の少なくとも1種の化合物の存在においては、可燃性はそれがないときよりも更に低い。電解質組成物の可燃性は、一般的には自己消火時間(SET)を測定することによって測定される。この値は、電解質を不燃性キャリア、例えば、ガラス繊維フィルタに浸すことによって測定され得る。このように浸されたキャリアを、例えばライターによって点火した後、外部の影響を受けないで炎が燃えるのを止めるまでの時間が記録される。その時間をSETに到達するまでにキャリアに浸み込んだ電解質組成物の質量で割った。一般的にはグラム当たりの時間(s/g)で伝えられる。この値が小さくなると、電解質組成物の可燃性も低くなる。再現性のあるSET値を得るために、好ましくは浸漬されたキャリアを制御された空気の流れのある場所、例えば、610〜660m
3/hの空気流を有するフードの中に置くことである。好ましくは、浸漬されたキャリアは上方が開いたガラスの箱に囲まれて、浸漬されたキャリアの周囲の空気流の乱気流又は変化を最小限にすることである。その箱の大きさは、燃焼工程時に壁から直接に影響を受けるのを避けるのに十分な大きさであるべきである。例えば、幅が60cm、深さが40cm、及び高さが100cmである。電解質組成物が、一般式(I)の少なくとも1種の化合物を含む時、SET値は一般的に測定できるほどに減少する。それらは通常、一般式(I)の化合物を含まない電解質組成物と比べて、50%を超えて減少する。
【0016】
好ましくは、電解質組成物中の一般式(I)の化合物の蒸気圧は高い。このようにして、火事の場合に、気体相に高濃度の一般式(I)の化合物が存在することによって、燃焼工程に対して効果的に作用することが保証される。従って、好ましくは、一般式(I)中のR
1及びR
2は、合計で4個を超える炭素原子を含まないことである。好ましくは、R
1及びR
2が独立してメチル又はエチルである。
【0017】
より好ましくは、R
1及びR
2の両方ともメチル基である。この場合、一般式(I)の少なくとも1種の化合物は、ジメチルホスファイトである。
【0018】
一般式(I)の少なくとも1種の化合物は、少ない量又は非常に少ない量の一般式(I)の少なくとも1種の化合物でも、良好なSET値を達成するのに十分であるので効率的である。一般式(I)の少なくとも1種の化合物が、少なくとも3質量%の電解質組成物を構成するとき、難燃剤を含まない電解質組成物と比べて、かなりのSET値の減少がすでに観察され得る。好ましくは、それは少なくとも5質量%の電解質組成物を構成することである。一般的には、15質量%以下、好ましくは、10質量%以下の電解質組成物が必要とされる。一般的に、好ましくは、できるだけ少ない量の一般式(I)の少なくとも1種の化合物を使用して、所定のSET値を得ることである。
【0019】
アノード膜形成用添加剤は、アノード上で分解して、アノード上に、電解質及び/又はアノードの劣化を妨げる保護層を形成する化合物である。このようにしてバッテリの寿命がかなり延長される。本発明におけるアノードは、バッテリの負極として理解される。好ましくは、アノードは、リチウム、例えば、リチウム挿入(intercalating、含有)グラファイトアノードに対して、1ボルト以下の還元電位を有する。化合物が、アノード膜形成用添加剤として的確であるかどうかを決定するために、電気化学電池が、グラファイト電極、及びリチウムイオン含有カソード、例えば、リチウムコバルトオキシド、及び少量の、一般的には、電解質組成物の0.1〜3質量%の、好ましくは電解質組成物の0.5〜2質量%の、より好ましくは、電解質組成物の1〜1.5質量%の上述の化合物を含む電解質を含んで製造され得る。アノードとカソード間の電圧の印加時に、電気化学電池の異なる容量が、0.5Vと2Vの間で記録される。最初のサイクル時に、かなりの異なる容量が観察される場合には、例えば、1Vのときに150mAh/Vであり、上述の電圧の範囲で、その後に続くサイクル時ではなく、又は本質的にその後に続くサイクル時ではなく、化合物は、アノード膜形成用添加剤とみなされ得る。
【0020】
添加剤を形成する少なくとも1種のアノード膜は、好ましくは、元素のリチウムと接触してポリマー化する化合物、元素のリチウムによって還元される化合物、オキサラート含有化合物、又はそれらの混合物を含む。オキサラート含有化合物が好ましい。
【0021】
元素のリチウムと接触してポリマー化する、添加剤を形成する少なくとも1種のアノード膜は、一般的に、炭素−炭素二重結合を含む。例は、不飽和カーボネート、例えば、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、及びアリルエチルカーボネート、ビニルアセテート、ジビニルアジペート、アクリル酸ニトリル、2−ビニルピリジン、無水マレイン酸、メチルシンナメート、アリルホスホネート、ビニル含有シラン化合物、例えば、ビニルトリメチルシラン、ビニルシリケート、例えば、ビニルトリエトキシメチルシリケート、又はそれらの混合物を含む。元素のリチウムと接触して、例えば、脱離によって、炭素−炭素二重結合を形成した後に、ポリマー化する分子も含まれる。例は、フルオロエチレンカーボネートである。好ましくは不飽和カーボネートであり、より好ましくはビニレンカーボネートである。
【0022】
元素のリチウムによって還元される、添加剤を形成する少なくとも1種のアノード膜は、サルファイト、例えば、エチレンサルファイト、スルトン、例えば、プロパンスルトン、アルキルニトラート、例えば、イソプロピルニトラート、アルキルニトリト、例えば、tert−ブチルニトリト、ハロゲン化エステル、及びラクトン、例えば、α−ブロモ−γ−ブチロラクトン、アルキルハロゲンカーボネート、例えば、メチルクロロホルメート、フェノール誘導体、例えば、メチルカルボキシフェノール、イミド、例えば、コハク酸イミド、イソシアネート、例えば、フェニルイソシアネート、又はそれらの混合物を含む。
【0023】
添加剤を形成するオキサラート含有アノード膜は、リチウムオキサラート、オキサラートホスフェート、例えば、リチウムテトラフルオロ(オキサラト)ホスフェート、オキサラトボレート、又はそれらの混合物を含む。オキサラトボレートが好ましい。オキサラトボレートは、ジメチルオキサレート、リチウムビス(オキサラト)ボレート、アンモニウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート、又はそれらの混合物を含む。より好ましくは、ビス(オキサラト)ボレート含有化合物、特に、リチウムビス(オキサラト)ボレートである。
【0024】
本発明に係る電解質組成物の好ましい例は、
a)5〜10質量%の電解質組成物、一般構造(I)
(式中、R
1及びR
2は独立してメチル又はエチルである)の化合物、及び
b)2〜3質量%電解質組成物、不飽和カーボネート
を含む電解質組成物を含む。
【0025】
本発明に係る電解質組成物の好ましい例は、
a)5〜10質量%の電解質組成物、一般構造(I)
(式中、R
1及びR
2は独立してメチル又はエチルである)の化合物、及び
b)2〜3質量%の電解質組成物、オキサラート含有化合物
を含む電解質組成物を含む。
【0026】
本発明に係る電解質組成物の好ましい例は、
a)5〜10質量%の電解質組成物、ジメチルホスファイト、及び
b)1〜3質量%の電解質組成物、不飽和カーボネート
を含む電解質組成物を含む。
【0027】
本発明に係る電解質組成物の好ましい例は、
a)5〜10質量%の電解質組成物、ジメチルホスファイト、及び
b)0.5〜3質量%の電解質組成物、オキサラート含有化合物
を含む電解質組成物を含む。
【0028】
本発明に係る電解質組成物の好ましい例は、
a)5〜10質量%の電解質組成物、一般構造(I)
(式中、R
1及びR
2は独立してメチル又はエチルである)の化合物、及び
b)1〜2質量%の電解質組成物、不飽和カーボネート
を含む電解質組成物を含む。
【0029】
本発明に係る電解質組成物の好ましい例は、
a)5〜10質量%の電解質組成物、一般構造(I)
(式中、R
1及びR
2は独立してメチル又はエチルである)の化合物、及び
b)0.5〜2質量%の電解質組成物、オキサラート含有化合物
を含む電解質組成物を含む。
【0030】
本発明に係る電解質組成物の好ましい例は、
a)5〜10質量%の電解質組成物、ジメチルホスファイト、及び
b)1〜2質量%の電解質組成物、不飽和カーボネート
を含む電解質組成物を含む。
【0031】
本発明に係る電解質組成物の好ましい例は、
a)5〜10質量%の電解質組成物、ジメチルホスファイト、及び
b)1〜2質量%の電解質組成物、オキサラート含有化合物
を含む電解質組成物を含む。
【0032】
本発明に係る電解質組成物の好ましい例は、
a)5〜10質量%の電解質組成物、ジメチルホスファイト、及び
b)1〜3質量%の電解質組成物、ビニレンカーボネート、
を含む電解質組成物を含む。
【0033】
本発明に係る電解質組成物の好ましい例は、
a)5〜10質量%の電解質組成物、ジメチルホスファイト、及び
b)0.1〜1質量%の電解質組成物、リチウムビス(オキサラト)ボレート
を含む電解質組成物を含む。
【0034】
本発明に係る電解質組成物の好ましい例は、
a)3〜15質量%の電解質組成物、ジメチルホスファイト、及び
b)1〜3質量%の電解質組成物、ビニレンカーボネート
を含む電解質組成物を含む。
【0035】
本発明に係る電解質組成物の好ましい例は、
a)3〜15質量%の電解質組成物、ジメチルホスファイト、及び
b)0.1〜1質量%の電解質組成物、リチウムビス(オキサラト)ボレート
を含む電解質組成物を含む。
【0036】
電気化学的特性は、一般的には、カソード材料の質量に対する特定の充放電容量(mAh/g)として測定される。この場合、対応するアノードは、カソードの容量が完全なバッテリの容量と等しくなるようなカソードと同等以上の容量を有するべきである。容量の値が高いほど、バッテリ及びその成分、例えば、電解質組成物は良好である。一般的に、充放電容量は、電流密度の増加と共に減少する。電流密度は、一般的に、充放電流(アンペア)をバッテリの合計容量(アンペア時間)で割ったものとして与えられる。この比はしばしばC値として報告される。電解質組成物が良好であるほど、電流密度の増加に伴う充放電容量の減少が小さくなる。更に、電解質組成物が良好であるほど、繰り返される充放電サイクルにおける容量の減少が小さくなる。容量の減少は通常、初期容量のパーセンテージとして報告される。
【0037】
本発明に係る電解質組成物は、好ましくは、一般的に使用される条件下で液体である。より好ましくは、−40℃と120℃の間の温度、かつ、大気圧で液体であり、更により好ましくは、−20℃と80℃の間の温度、かつ、大気圧で液体であり、特に、0℃と50℃の間の温度、かつ大気圧で液体である。
【0038】
好ましくは、電解質組成物は、更に少なくとも1種の非プロトン性有機溶媒を含み、それは、一般構造(I)の少なくとも1種の化合物、及び少なくとも1種のアノード膜形成用添加剤とは異なる。溶媒は、存在する任意の固体を溶解するのを助け、及び/又は成分が十分に混合されていない場合に、成分の混和性を向上させる。更に、それは、電解質組成物の粘度を減少させ、電解質組成物を伝導性の高いものとする。また、非プロトン性の有機溶媒はしばしば電解質組成物の値段を減少させる。本発明における非プロトン性は、大気圧で、かつ、‐15℃と80℃の間の温度で、元素のリチウムに接触させた時に、水素を形成しない少なくとも1種の有機溶媒を意味する。水素を形成しないことは、少なくとも1種の非プロトン性有機溶媒が、上述の条件下で元素のリチウムと接触するときに、少なくとも1種の非プロトン性有機溶媒に対して、一か月の間で、0.1mol%未満の水素が形成されることを意味する。
【0039】
非プロトン性有機溶媒の例は、環状及び/又は非環状カーボネート、ジアルキルエーテル、ポリエーテル、環状エーテル、環状及び/又は非環状アセテート、及び/又はケタール、オルトカルボン酸エステル、及びカルボン酸の環状及び/又は非環状エステル、又はそれらの混合物である。カーボネートが好ましい。
【0040】
環状カーボネートの例は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、及びブチレンカーボネートである。アルキレン基の1種以上の水素原子は、アルキル基、好ましくはC
1−C
4アルキル基(メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、及びtert−ブチルを含む)によって置換され得る。非環状カーボネートは、好ましくは、互いに独立して、C
1−C
10アルキル基であり、より好ましくは、互いに独立して、C
1−C
4アルキル基である。非環状カーボネートの例は、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチル−イソプロピルカーボネート、メチル−secブチルカーボネート、メチル−tert−ブチルカーボネート、及びエチルイソプロピルカーボネートである。
【0041】
本発明によると、電解質組成物が、非プロトン性有機溶媒として、少なくとも1種の環状カーボネート及び少なくとも1種の非環状有機カーボネートの混合物を含むことである。そのような混合物は、存在する場合には、電解質組成物中の固体の溶解度を確実に高くし、及び、同時に、電解質組成物を伝導性の高いものとする電解質組成物の粘度を確実に低くする。特に好ましくは、電解質組成物がエチレンカーボネート、及びジエチルカーボネート、又はエチレンカーボネート、及びエチルメチルカーボネートを含む。好ましくは、少なくとも1種の環状カーボネート、及び少なくとも1種の非環状カーボネートは、電解質組成物中で、8:2〜2:8、より好ましくは7:3〜3:7、特に、6:4〜4:6の質量比で存在する。
【0042】
好適なジアルキルエーテルの例は、ジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、及びジ−n−ブチルエーテルである。
【0043】
好適なポリエーテルの例は、ポリアルキレングリコール、好ましくは、ポリ−C
1−C
4−アルキレングリコール、及び特にポリエチレングリコールである。ポリエチレングリコールは、コポリマー化された状態で最大で20mol%の1種以上のC
1−C
4−アルキレングリコールを含んでもよい。ポリアルキレングリコールは、好ましくは、ジメチル−又はジエチル−エンドキャップされたポリアルキレングリコール(dimethyl- or diethyl-end capped polyalkylene glycols)である。好適なポリアルキレングリコール、及び特に、好適なポリエチレングリコールの分子量は、好ましくは質量平均として報告され、広範囲にわたる。それは、ジメトキシエタンについては、90g/molと同じくらい小さくてもよい。一方で、好適なポリアルキレングリコール、及び特に、好適なポリエチレングリコールの分子量は、最大で5000000g/mol、好ましくは最大で2000000g/molでもよい。
【0044】
好適な環状エーテルの例は、テトラヒドロフラン、及び1,4−ジオキサンである。
【0045】
好適な非環状アセタールの例は、1,1−ジメトキシメタン、及び1,1−ジエトキシメタンである。好適な環状アセタールの例は、1,3−ジオキサン及び1,3−ジオキソランである。
【0046】
好適なオルトカルボン酸エステルの例は、トリ−C
1−C
4−アルコキシメタン、特にトリメトキシメタン、及びトリエトキシメタンである。
【0047】
好適なカルボン酸の非環状エステルの例は、エチルアセテート、メチルブタノエート、ジカルボン酸のエステル、例えば、1,3−ジメチルプロパンジオエート、ジアルキルグルタレート、ジアルキルアジペート、ジアルキルスクシネートである。ジメチルグルタレートが好ましい。好適なカルボン酸の環状エステル(ラクトン)の例は、γ−ブチロラクトンである。
【0048】
本発明に係る少なくとも1種の非プロトン性有機溶媒は、好ましくは、電解質組成物の少なくとも50質量%、より好ましくは電解質組成物の少なくとも60質量%、特に、電解質組成物の少なくとも70質量%で存在する。
【0049】
本発明に係る電解質組成物の好ましい例は、50〜80質量%の電解質組成物、非環状カーボネートを含む電解質組成物、50〜80質量%の電解質組成物、環状カーボネートを含む電解質組成物、50〜80質量%の電解質組成物、ジアルキルエーテルを含む電解質組成物、50〜80質量%の電解質組成物、ポリエーテルを含む電解質組成物、70〜90質量%の電解質組成物、非環状カーボネートを含む電解質組成物、70〜90質量%の電解質組成物、環状カーボネートを含む電解質組成物、70〜90質量%の電解質組成物、ジアルキルエーテルを含む電解質組成物、70〜90質量%の電解質組成物、ポリエーテルを含む電解質組成物、50〜90質量%の電解質組成物、環状及び非環状カーボネートの混合物(質量比が8:2〜2:8である)を含む電解質組成物、60〜90質量%の電解質組成物、環状及び非環状カーボネートの混合物(質量比が8:2〜2:8である)を含む電解質組成物、70〜90質量%の電解質組成物、環状及び非環状カーボネートの混合物(質量比が8:2〜2:8である)を含む電解質組成物、70〜80質量%の電解質組成物、環状及び非環状カーボネートの混合物(質量比が8:2〜2:8である)を含む電解質組成物、50〜90質量%の電解質組成物、環状及び非環状カーボネートの混合物(質量比が6:4〜4:6である)を含む電解質組成物、60〜90質量%の電解質組成物、環状及び非環状カーボネートの混合物(質量比が6:4〜4:6である)を含む電解質組成物、70〜90質量%の電解質組成物、環状及び非環状カーボネートの混合物(質量比が6:4〜4:6である)を含む電解質組成物、70〜80質量%の電解質組成物、環状及び非環状カーボネートの混合物(質量比が6:4〜4:6である)を含む電解質組成物を含む。
【0050】
好ましくは、本発明に係る電解質組成物は、更に、少なくとも1種のリチウム塩を含む。より好ましくは、少なくとも1種のリチウム塩は、1価の塩、すなわち、1価のアニオンを有する塩である。リチウム塩の例は、LiPF
6、LiPF
3(CF
2CF
3)
3、LiClO
4、LiAsF
6、LiBF
4、LiCF
3SO
3、LiN(SO
2F)
2、Li
2SiF
6、LiSbF
6、LiAlCl
4、及び一般式(C
nF
2n+1SO
2)
mXLi
(式中、m及びnは、以下のように定義される:
m=1 Xが、酸素及び硫黄から選択されるとき
m=2 Xが、窒素及びリンから選択されるとき
m=3 Xが、炭素及びケイ素から選択されるとき、及び
nは1〜20の範囲の整数であり、
例えば、LiC(C
nF
2n+1SO
2)
3(式中、nは1〜20の範囲の整数である)、及びリチウムイミド、例えば、LiN(C
nF
2n+1SO
2)
2(式中、nは1〜20の範囲の整数である。))の塩である。
【0051】
非常に好ましくはLiPF
6、LiBF
4、又はLiPF
3(CF
2CF
3)
3、又はそれらの混合物であり、特にLiPF
6である。
【0052】
少なくとも1種のリチウム塩は通常、少なくとも0.01質量%の電解質組成物、好ましくは、少なくとも1質量%の電解質組成物、より好ましくは、少なくとも5質量%の電解質組成物を構成する。一般的に、少なくとも1種のリチウム塩は、10質量%以下の電解質組成物を構成する。
【0053】
本発明に係る電解質組成物は、好ましくは、
a)3〜15質量%の電解質組成物、一般式(I)の少なくとも1種の化合物と、
b)0.1〜3質量%の電解質組成物、添加剤を形成する少なくとも1種のアノード膜と、
c)0〜96.9質量%の電解質組成物、少なくとも1種の非プロトン性有機溶媒と、
d)0〜10質量%の電解質組成物、少なくとも1種のリチウム塩と
を含む。
【0054】
本発明に係る電解質組成物中に含まれる成分は、バッテリにおける電気化学特性を減少させる不要な副反応が起こるのを避けるために高純度であるべきである。特に、酸性基を有する化合物は存在しないか、又は実質的に存在しないべきであり、それは、電解質組成物は、これらの化合物を50ppm未満で含むべきであることを意味する。“ppm”の語は、電解質組成物の質量に対して100万分の1を意味する。
【0055】
本発明によると、電解質組成物は、好ましくは、水を含まないか、又は実質的に含まない。本発明における“実質的に含まない”は、電解質組成物は、水を50ppm未満で含むことを意味する。好ましくは、電解質組成物は3〜30ppmの水、特に5〜25ppmの水を含む。
【0056】
電解質組成物中に存在する水の量を測定するための様々な方法が当業者に公知である。かなり好適な方法は、カールフィッシャーによる直接滴定であり、例えば、DIN51777−1パート1(1983年)に詳細に記載されている。“水を含まない”は、一般的に水の量が、水の検出限界である3ppm未満であることを意味する。
【0057】
本発明に係る電解質組成物における一般構造(I)の少なくとも1種の化合物は、難燃剤として作用する。従って、本発明は、また、電解質組成物、好ましくは、バッテリにおける使用に好適な電解質組成物における難燃剤としての一般構造(I)の化合物の使用方法に関する。上述の電解質組成物の同一の詳細が当てはまる。1ボルト又はリチウムよりも低い還元電位を有するアノードを含むバッテリにおける、電解質組成物中の一般構造(I)の化合物の使用方法が好ましい。より好ましくは、バッテリは、リチウム挿入炭素質アノード、例えば、リチウム挿入グラファイトアノードを含む。以下に記載されるバッテリについての同一の詳細が適用される。
【0058】
本発明に係る電解質組成物は、バッテリにおける使用に特に好適である。従って、本発明は、本発明に係る電解質組成物を含むバッテリに関する。好ましくは、本発明に係るバッテリは、リチウムイオンバッテリである。
【0059】
本発明に係るバッテリは、一般的に、電解質組成物に加えてアノードを含む。例は、リチウム挿入炭素質アノード、例えば、グラファイト、ハードカーボン、又はソフトカーボンからのアノード、リチウムアノード、シリコンアノード、リチウムチタンアノード、スズを主原料とするアノード、例えば、アモルファスのスズを主原料とする複合オキシドアノード、アルミニウム合金アノード、金属、例えば、Al、Sn及び/又はSb、又はメタロイド、例えば、Si、又は金属間化合物、例えば、CoSn、Cu
6Sn
5、Cu
2Sb(例えば、ミクロ多孔質Cu
6Sn
5−Snアノード)、金属/メタロイドナノチューブで合金された3元金属バナデートからのアノード、又はシリコン若しくはナノ材料、例えば、中空Fe
3O
4からのアノードである。好ましくは、本発明に係るバッテリは、リチウム挿入炭素質アノード、特にグラファイトアノードを含む。
【0060】
本発明に係るバッテリは、一般的に更にカソードを含む。好適なカソード材料は、結晶質のリチウム金属オキシド、及びリチウム金属ホスフェートを含む。金属は、一般的には、遷移金属、例えば、Mn、Ti、Co、Ni、Cr、V、Cu、Zn、及び/又はMoである。他の金属、例えば、Mg、Ca、Al、As及び/又はSbもまた可能である。Ni、Co、Mn及び/又はFeが好ましい。
【0061】
結晶質リチウム金属オキシドの例は、LiMnO
2、LiCoO
2、及びLiNiO
2である。リチウム金属オキシドは、また数種類の金属を含む。好ましくは、一般式(X)Li
(1+z)[Ni
aCo
bMn
c]
(1−z)O
2+eのリチウム金属オキシド(式中、zは0〜0.3であり、a+b及びcは、同一又は異なっていてもよく、独立して0〜8であり、そして、a+b+c=1であり、−0.1≦e≦0.1である)である。好ましくは、一般式(X)(式中、zは、0.05〜0.3であり、aは0.2〜0.5であり、bは、0〜0.3であり、cは0.4〜0.8であり、そして、a+b+c=1であり、−0.1≦e≦0.1である)を有する層状構造を有する遷移金属オキシドである。一般式(X)のリチウム金属オキシドの好ましい例は、Ni
0.33Co
0Mn
0.66、Ni
0.25Co
0Mn
0.75、Ni
0.35Co
0.15Mn
0.5、Ni
0.21Co
0.08Mn
0.71、Ni
0.22Co
0.12Mn
0.66、及びNi
0.21Co
0.08Mn
0.71である。
【0062】
リチウム金属ホスフェートの例は、LiFePO
4、LiCoPO
4、LiMnPO
4、LiNiPO
4、及びLi
3V
2(PO
4)
3である。リチウム金属ホスフェートは、1種以上の金属を含むことも可能である。例は、LiFe
xMn
1−xPO
4又はLiFe
xCo
1−xPO
4(式中、0<x<1である)である。通常、リチウム金属ホスフェートは、規則正しいオリビン型結晶構造である。低い導電性のために、リチウム金属ホスフェート粒子が導電性添加剤、例えば、導電性カーボンを有する場合には有利である。通常、導電性添加剤は、リチウム金属ホスフェートの1〜5質量%で存在する。
【0063】
本発明に係るカソードは、導電性材料、例えば、導電性カーボン、及び他の成分、例えば、結合剤を更に含んでもよい。導電性材料及び結合剤として好適な化合物は、当業者に公知である。例えば、カソードは、導電性の多形体の状態のカーボン、例えば、グラファイト、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、又はそれらの混合物を含んでもよい。更に、カソードは、1種以上の結合剤、例えば、1種以上の有機ポリマー、例えば、ポリエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリイソプレン、及びエチレン、プロピレン、スチレン、(メタ)アクリロニトリル、及び1,3−ブタジエンから選択される少なくとも2種のコモノマーのコポリマー、特に、スチレン−ブタジエンコポリマー、及びハロゲン化(コ)ポリマー、例えば、ポリビニリデンクロリド、ポリビニルクロリド、ポリビニルフルオリド、ポリビニリデンフルオリド(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン及びヘキサフルオロプロピレンのコポリマー、テトラフルオロエチレン及びビニリデンフルオリド及びポリアクリロニトリルのコポリマ−、又はそれらの混合物を含んでもよい。
【0064】
更に、カソードは、集電材を含んでもよい。集電材は、金属線、金属グリッド、金属網、金属シート、金属箔、又は金属板であってもよい。好適な金属箔はアルミニウム箔である。
【0065】
カソードは、25〜200μm、好ましくは30〜100μmの厚みを有することができる。その厚みは、集電材の厚みを含まないカソード全体の厚さに基づく。
【0066】
本発明に係るアノード及びカソードは、必要であれば溶媒中に、電極活性材料、結合剤、任意に導電性材料、増粘剤を分散させ、集電材上にスラリー組成物をコーティングすることによって電極用スラリー組成物を製造することによって製造されてもよい。集電材は、金属線、金属グリッド、金属網、金属シート、金属箔、又は金属板であってもよい。好ましくは集電材は金属箔、例えば、銅箔、又はアルミニウム箔である。
【0067】
一般的に、本発明に係るバッテリは、1種以上のセパレータを含み、それによって電極は機械的に分離される。好適なセパレータは、ポリマー膜、特に、金属リチウムに対して反応性のない多孔性ポリマー膜である。セパレータ用の特に好適な材料は、ポリオレフィン、特に膜状の多孔性ポリエチレン、及び膜状の多孔性ポリプロピレンである。
【0068】
ポリオレフィンから製造される、特にポリエチレン又はポリプロピレンから製造されるセパレータは、35〜45%の範囲の多孔度を有してもよい。好適な孔径は、例えば、30〜500nmの範囲である。
【0069】
無機粒子が充填されたポリエチレンテレフタラート(PET)不織布から製造されるセパレータを選択することもできる。そのようなセパレータは、40〜55%の範囲の多孔度を有してもよい。好適な孔径は、例えば、80〜750nmの範囲である。
【0070】
本発明に係るバッテリは、更に、ハウジングを含んでもよく、そのハウジングは任意の形状、例えば、立方形の、又は円筒状のシートの形状を有してもよい。変形例の一つにおいては、使用されるハウジングは、ポーチとして精巧に作られた金属箔である。
【0071】
本発明に係るバッテリは、例えば、直列つなぎ又は並列つなぎで互いに結合され得る。直列つなぎが好ましい。
【0072】
本発明に係るバッテリは、ポータブル電子機器、例えば、電動ツール、携帯電話、ラップトップコンピュータで使用され得る。それらは、純粋な電池電気自動車(BEVs)、ハイブリッド電気自動車(HEVs)、ブラグインハイブリッド電気自動車(PHEVs)を含む電気自動車及び電動自転車用に使用され得る。
【実施例】
【0073】
以下の実施例で与えられる全ての質量%は、電解質組成物の質量%を意味する。
【0074】
可燃性試験
エチレンカルボネート(EC)及びエチルメチルカルボネート(EMC)からなり、さらに表1に記載の成分を含有する混合物中のリチウムヘキサフルオロホスフェートの1M溶液を製造する。ワットマン(R)ガラスフィルター(直径4.25cm)を電解質中に浸漬する。フィルターによって取り込まれた電解質の量を計量した後、フィルターを、空気流量が制御されたフードの中で垂直に吊り上げた。電解質をライターで点火し、燃焼時間を測定する。このSETをフィルター中の電解質のグラム当りの秒で記録する。
【0075】
【表1】
【0076】
SETの低下は、一般式(I)の化合物を含まないそれぞれの電解質のSETに対応し、DMPiはジメチルホスファイトを意味し、TMPは、ジメチルメチルホスファイトを意味し、及びVCはビニレンカーボネートを意味する。
【0077】
電気化学特性
ボタン電池を、2mAh/cm
2の容量を有するリチウムニッケルコバルトマンガンオキシド(NCM111)電極、及び2.15mAh/cm
2の容量を有するグラファイト電極を使用して製造した。ガラス繊維フィルターセパレータ(ワットマン(R)GF/D)を、それぞれの電解質組成物100μlに浸漬されたセパレータとして使用した。全ての電気化学測定を人工気候室内で25℃で行った。その電池の放電容量を、以下の手順に従って、サイクル数に関して測定した。
【0078】
【表2】
【0079】
サイクル74の後、サイクル16〜74のプログラムを2回繰り返した。サイクル3から開始して、電池を30分間、最終的なチャージ電位である4.2Vに維持した。
【0080】
【表3】