(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、倉庫等では、限られたスペース内に移動ラック及び固定ラックを効率的に設置し、これらの設置数を増やすことが求められる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された倉庫では、一対の間柱の間の領域が使用されておらず、デッドスペースになっている。
【0006】
本発明は、上記の事実を考慮し、固定式収納棚及び移動式収納棚の設置数を増やすことができる建物及び倉庫を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1態様に係る建物は、固定式収納棚及び移動式収納棚が設置される格納スペースと、前記格納スペース内に設けられ、短辺の長さが前記固定式収納棚の奥行と同じとされた扁平間柱と、前記格納スペースと隣接して設けられ、前記移動式収納棚が移動して形成される進入路と通じる主通路と、を備えている。
【0008】
第1態様に係る建物によれば、扁平間柱の短辺の長さを固定式収納棚の奥行と同じとしたことにより、扁平間柱の間に固定式収納棚を設置するときに、扁平間柱から出っ張ることなく固定式収納棚を収めることができる。これにより、固定式収納棚が移動式収納棚の移動を阻害しないため、格納スペースに移動式収納棚を効率良く設置することができる。したがって、固定式収納棚及び移動式収納棚の設置数を増やすことができる。
【0009】
第2態様に係る建物は、
第1態様に係る建物において、隣接する前記扁平間柱の間隔が、前記固定式収納棚の幅の整数倍である。
【0010】
第2態様に係る建物によれば、隣接する扁平間柱の間隔を固定式収納棚の幅の整数倍としたことにより、隣接する扁平間柱の間に扁平間柱を設置したときに、デッドスペースを無くすことができる。
【0011】
第3態様に係る倉庫は、格納スペース内に設けられた扁平間柱の間に収まるように設置された固定式収納棚と、前記格納スペース内に設けられ、前記扁平間柱の並びと直交する方向に移動可能な移動式収納棚と、前記格納スペースと隣接して設けられ、前記移動式収納棚が移動して形成される進入路と通じる主通路と、を備えている。
【0012】
第3態様に係る倉庫によれば、固定式収納棚が扁平間柱の間に収まるように設置される。これにより、固定式収納棚が移動式収納棚の移動を阻害しないため、格納スペースに移動式収納棚を効率良く設置することができる。したがって、固定式収納棚及び移動式収納棚の設置数を増やすことができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明に係る建物によれば、固定式収納棚及び移動式収納棚の設置数を増やすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の一実施形態に係る建物について説明する。
【0016】
図1には、本実施形態に係る建物10が示されている。建物10は、平面形状が略矩形とされている。この建物10は、外周部に耐震要素を集約することにより、内部空間の耐震要素(例えば、内柱や耐震壁)を無くし若しくは減らして、当該内部空間を広く確保可能な構造とされている。
【0017】
具体的には、建物10の外周部には、地震力を負担する架構(耐震架構)12が設けられている。架構12は、鉄筋コンクリート造の複数の壁柱(扁平柱)14と、隣接する壁柱14の間に架設された鉄筋コンクリート造の図示しない梁(壁梁)とを有している。壁柱14の厚みは梁幅と略同じとされており、建物10の内部空間に柱形が現れないようになっている。これらの架構12によって建物10の耐震性能が確保されている。なお、架構12の外側には、外壁18が設けられている。
【0018】
一方、建物10の内部には、鉄筋コンクリート造の扁平間柱20が水平二方向(X方向及びY方向)に所定の間隔を空けて複数配置されている。各扁平間柱20は、地震力を負担せず、若しくはその負担量が壁柱14よりも小さくなっている。また、各扁平間柱20は、Y方向を長辺した断面矩形状に形成されている。
【0019】
ここで、本実施形態の建物10は、冷凍倉庫として用いられる。そのため、
図2に示されるように、扁平間柱20の外周部には、スタイロフォーム等の防熱材20Bが設けられている。より具体的には、扁平間柱20のコンクリート部20Aの外周面が防熱材20Bによって被覆されている。これにより、冷凍倉庫の冷温が扁平間柱20を介して上下階の他の用途のフロア(例えば、常温倉庫やオフィス等)へ伝達されることが抑制される。これと同様に、同一階の他の用途のフロアについても扁平間柱20を介して冷凍倉庫の冷温が伝達されることを抑制することができる。なお、前述した壁柱14の外周部にも同様の防熱材22(
図1参照)が設けられている。
【0020】
図1に示されるように、建物10の内部空間には、主通路30、及び複数(本実施形態では3つ)の格納スペース32A,32B,32Cが設けられている。主通路30は、建物10のY方向の一方側(
図1において下側)に設けられており、架構12に沿って直線状(X方向)に延びている。この主通路30には、収納物等が積み上げられたパレットを各格納スペース32A,32B,32Cへ搬送する図示しないフォークリフトが走行可能になっている。また、主通路30は、フォークリフトや作業者が出入りする建物10の出入口34に通じている。
【0021】
複数の格納スペース32A,32B,32Cは、主通路30に面して設けられている。これらの格納スペース32A,32B,32Cは、Y方向に隣接する扁平間柱20に沿って設けられた図示しない間仕切り壁等によって区画されている。なお、複数の格納スペース32A,32B,32Cは同じ構成であるため、以下、格納スペース32Aについて説明し、格納スペース32B,32Cの説明は省略する。
【0022】
図3に示されるように、格納スペース32Aには、主通路30と直交する直交方向(Y方向)に延びる進入路36が形成されている。進入路36の一方側(
図3において右側)には、一対の扁平間柱20及び複数の固定式ラック40が設置されており、進入路36の他方側(
図3において左側)には、複数の移動式ラック50が設置されている。
【0023】
固定式収納棚の一例としての固定式ラック40は、平面視にてY方向を長辺とした矩形状に形成されており、Y方向に隣接する一対の扁平間柱20の間、及び一対の扁平間柱20の両側にそれぞれ複数配列されている。各固定式ラック40は、パレットを収納可能な棚を複数段有し、各棚にはY方向に2つのパレットが収納可能になっている。
【0024】
ここで、
図2に示されるように、扁平間柱20は断面矩形状に形成されており、その短辺の長さaが固定式ラック40の奥行tと同じとされている。この一対の扁平間柱20の間には、固定式ラック40が収まるように設置されている。つまり、一対の扁平間柱20の間から固定式ラック40が進入路36(
図3参照)へ突出しないように設置されている。なお、ここでいう扁平間柱20の短辺の長さaと固定式ラック40の奥行tとが同じとは、長さaと奥行tとが厳密に同じ場合だけでなく、扁平間柱20の施工誤差や固定式ラック40の製造誤差等によるずれを含む概念である。
【0025】
また、一対の扁平間柱20の長辺の長さb及びその間隔D(
図2参照)は、一対の扁平間柱20の間及びその両側に所定数の固定式ラック40を設置可能な値に設定されている。なお、一対の扁平間柱20の間には、少なくとも1つの固定式ラック40を設置することができる。
【0026】
移動式収納棚の一例としての移動式ラック50は、平面視にて矩形状に形成されており、X方向及びY方向に複数配列されている。各移動式ラック50は、X方向の両側からパレットを収納可能な棚を複数段有し、各棚にはX方向及びY方向に2つのパレットが収納可能になっている。なお、各移動式ラック50は、その奥行が固定式ラック40の略2倍とされると共に、その幅が固定式ラック40と同じとされている。
【0027】
また、各移動式ラック50は、主通路30に沿って延びる一対のガイドレール52上に移動可能に設置されている。これにより、各移動式ラック50が、扁平間柱20または固定式ラック40に対して接離可能になっている。
【0028】
なお、各移動式ラック50は、図示しないモータを駆動することにより一対のガイドレール52上を移動するようになっている。また、以下では、説明の便宜上、Y方向に配列された複数の移動式ラック50を、固定式ラック40側から順に移動式ラック50A,50B,50Cとして区別する場合がある。
【0029】
移動式ラック50Aは、扁平間柱20及び固定式ラック40の各々と対向して設置されている。これらの移動式ラック50Aを扁平間柱20及び固定式ラック40から離間させた状態では、移動式ラック50Aと扁平間柱20及び固定式ラック40との間に進入路36が形成されるようになっている。
【0030】
一方、
図4に示されるように、複数の移動式ラック50Aを扁平間柱20及び固定式ラック40に近接させた状態では、移動式ラック50Aを挟んで扁平間柱20及び固定式ラック40と反対側に、すなわち移動式ラック50Aと移動式ラック50Bとの間に進入路38が形成されるようになっている。
【0031】
次に、固定式ラック40及び移動式ラック50に対するパレットの収納方法について説明する。
【0032】
図3に示されるように、固定式ラック40にパレットを収納する際には、複数の移動式ラック50Aを扁平間柱20及び固定式ラック40から離間させた状態で、Y方向に整列させる。これにより、複数の移動式ラック50と扁平間柱20及び固定式ラック40との間に、主通路30に通じる進入路36が形成される。この状態で、主通路30及び進入路36を介して図示しないフォークリフトを所望の固定式ラック40の前へ移動し、当該固定式ラック40の所定の棚にパレットを収納する。
【0033】
これと同様に、移動式ラック50Aの固定式ラック40側にパレットを収納する際には、主通路30及び進入路36を介して図示しないフォークリフトを所望の移動式ラック50Aの前へ移動し、当該移動式ラック50Aの所定の棚にパレットを収納する。
【0034】
また、
図4に示されるように、移動式ラック50Aの固定式ラック40と反対側にパレットを収納する際には、図示しないモータを駆動し、複数の移動式ラック50Aを一対のガイドレール52に沿って固定式ラック40側へ移動させ、Y方向に整列させる。これにより、移動式ラック50Aを挟んで固定式ラック40と反対側、すなわち移動式ラック50Aと移動式ラック50Bとの間に、主通路30に通じる新たな進入路38が形成される。この状態で、主通路30及び進入路38を介して図示しないフォークリフトを所定の移動式ラック50Aの前へ移動し、当該移動式ラック50Aの所定の棚にパレットを収納する。
【0035】
これと同様に、移動式ラック50Bの固定式ラック40側にパレットを収納する際には、主通路30及び新たに形成された進入路38を介して図示しないフォークリフトを所定の移動式ラック50Bの前へ移動し、当該移動式ラック50Bの所定の棚にパレットを収納する。
【0036】
また、図示を省略するが、移動式ラック50Bの固定式ラック40と反対側にパレットを収納する際には、図示しないモータを駆動し、移動式ラック50A,50Bを一対のガイドレール52に沿って固定式ラック40側へ移動させ、Y方向にそれぞれ整列させる。これにより、移動式ラック50Bと移動式ラック50Cとの間に、主通路30に通じる新たな進入路が形成される。これにより、移動式ラック50Bの固定式ラック40と反対側にパレットが収納可能になる。移動式ラック50Cの固定式ラック40側及び固定式ラック40と反対側についても同様である。また、固定式ラック40及び移動式ラック50A,50B,50Cからパレットを取り出す場合も上記と同様である。
【0037】
次に、本実施形態の効果について説明する。
【0038】
図3に示されるように、複数の移動式ラック50Aを扁平間柱20及び固定式ラック40から離間させた状態では、これらの移動式ラック50Aと扁平間柱20及び固定式ラック40との間に、主通路30に通じる進入路36が形成される。これにより、主通路30及び進入路36を介して固定式ラック40及び移動式ラック50Aにパレットを収納等することができる。
【0039】
一方、
図4に示されるように、移動式ラック50Aを移動して扁平間柱20及び固定式ラック40に近接させると、当該移動式ラック50Aを挟んで固定式ラック40と反対側に新たな進入路38が形成される。これにより、移動式ラック50Aの固定式ラック40と反対側、及び移動式ラック50Bの固定式ラック40側にパレットを収納等することができる。
【0040】
ここで、本実施形態では、一対の扁平間柱20の間に固定式ラック40が設置される。このように一対の扁平間柱20の間の領域を固定式ラック40の設置スペースとして利用することにより、進入路36を確保しつつ、固定式ラック40及び移動式ラック50の設置数を増やすことができる。
【0041】
また、
図2に示されるように、一対の扁平間柱20は、その短辺の長さaが固定式ラック40の奥行tと同じとされており、その間に固定式ラック40が収まるように設置されている。これにより、固定式ラック40または扁平間柱20が移動式ラック50の移動を阻害しないため、格納スペース32Aに移動式ラック50を効率良く設置することができる。さらに、一対の扁平間柱20の間の短辺方向のデッドスペースも無くすことができる。
【0042】
さらにまた、一対の扁平間柱20の長辺の長さb及びその間隔D(
図3参照)は、一対の扁平間柱20の間及びその両側に所定数の固定式ラック40が設置可能な値に設定されている。これにより、一対の扁平間柱20の間の長辺方向のデットスペースも低減することができる。
【0043】
しかも、一対の扁平間柱20の間に固定式ラック40を収まるように設置したことにより、フォークリフトが進入路36を移動し易くなる。したがって、固定式ラック40及び移動式ラック50Aにパレットを容易に収納等することができる。
【0044】
また、本実施形態では、建物10の建物外周部に架構12が設けられている。この架構12に壁柱14を用いたことにより、建物10の内部空間へ突出する柱形をなくすることができる。これにより、固定式ラック40及び移動式ラック50が設置される格納スペース32A,32B,32Cを広げることができる。したがって、固定式ラック40及び移動式ラック50の設置数を増やすことができる。
【0045】
さらに、建物10の外周部に設けられた架構12によって耐震性能を確保することにより、扁平間柱20の負担地震力を低減し、若しくは無くすことができる。これにより、一対の扁平間柱20の断面積や断面形状に対する制約が緩和されるため、扁平間柱20の短辺及び長辺の長さa,bを固定式ラック40の奥行t及び幅wに応じて設定することができる。したがって、規格化された固定式ラック40及び移動式ラック50を用いることができるため、コスト削減を図ることができる。
【0046】
また、本実施形態に係る建物10は冷凍倉庫として用いられるが、扁平間柱20、及び架構12を構成する壁柱14の外周部には、防熱材20B,22がそれぞれ設けられている。したがって、温度差によるコンクリートの膨張や収縮に伴う扁平間柱20及び壁柱14のひび割れ等を抑制することができる。
【0047】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0048】
上記実施形態では、扁平間柱20の長辺の長さbを固定式ラック40の幅wよりも短くした例を示したが、これに限らない。例えば、一対の扁平間柱20の間隔Dを固定式ラック40の幅wの整数倍に設定しても良い。これにより、一対の扁平間柱20の間の長辺方向のデッドスペースを無くすことができる。
【0049】
なお、ここでいう一対の扁平間柱20の間隔Dを固定式ラック40の幅wの整数倍にするとは、厳密に間隔Dが幅wの整数倍となる場合だけでなく、扁平間柱20の施工誤差や固定式ラック40の製造誤差等によるずれを含む概念である。
【0050】
また、上記実施形態では、X方向の両側からパレットを収納可能な移動式ラック50を用いた例を示したが、X方向の片側からパレットを収納可能な移動ラックを用いても良い。また、複数の移動式ラック50のうち、建物10の外周側(壁際)の一列は、固定式ラックにすることも可能である。
【0051】
また、上記実施形態では、図示しないモータにより移動式ラック50を移動させる例を示したが、移動式ラック50は手動で移動させても良い。
【0052】
また、上記実施形態は、冷凍倉庫に限らず、例えば、常温の倉庫や、データセンター、図書館、オフィス、研究施設等にも適用可能である。この場合、例えば、データセンターではサーバーラックが固定式収納棚及び移動式収納棚となり、図書館では書籍棚が固定式収納棚及び移動式収納棚となり得る。また、上記実施形態は、建物の一部に適用しても良いし、全部に適用しても良い。
【0053】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。