【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、経済産業省、戦略的基盤技術高度化支援事業、産業技術力強力化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0019】
<<工作機械の構成>>
図1は、本実施形態に係る工作機械10の模式図である。同図に示すように、工作機械10は、工作機械本体11と、数値制御装置12を備える。なお、以降の図に示すX方向、Y方向及びZ方向は相互に直交する三方向である。
【0020】
工作機械本体11は、
図1に示すように、工具111、主軸112、ステージ113等を有する。工作機械本体11は、本発明の数値制御装置12の制御指令に基づきワークWを加工する装置である。工作機械本体11の種類は、特に限定されるものではなく、例えば、複合加工機、マシニングセンタ、ターニングセンタ、スイス型自動旋盤等の主軸移動型の工作機械とすることができる。
【0021】
工具111は、一般的な工作機械に備えられる切削具であり、典型的には回転駆動しながらワークW(被加工物)を加工する。工具111は、例えば、ドリル、エンドミル、スケアエンドミル、ラジアスエンドミル、リーマー及びタップ等であり特に限定されるものではない。
【0022】
主軸112は、
図1に示すように、工具111を支持し、図示を省略したサーボモータ等の駆動源により、X方向、Y方向及びZ方向に移動可能に構成される。
【0023】
ステージ113は、ワークWを支持する。ステージ113は、駆動源(図示しない)によってX方向、Y方向及びZ方向に移動可能に構成される。
【0024】
数値制御装置12は、工作機械本体11の動作を制御する。具体的には、主軸112やステージ113の駆動源(図示しない)を制御し、ワークWと主軸112のX方向、Y方向及びZ方向の相対位置を制御する。数値制御装置12は、工作機械本体11とは独立した装置であってもよく、工作機械本体11に搭載されていてもよい。
【0025】
<数値制御装置の構成と動作>
[数値制御装置の構成]
本実施形態に係る数値制御装置12の構成及び動作について説明する。
図2は、数値制御装置12の機能的構成を示す模式図である。同図に示すように、数値制御装置12は、制御点データ抽出部121、基準線データ生成部122、移動経路データ生成部123及び送り動作指令部124とを備える。
【0026】
制御点データ抽出部121は、NC(numerical control)プログラムPからワークWの形状に基づきあらかじめ設定されている制御点データPRを抽出し、制御点データPRを基準線データ生成部122へ供給する。制御点データPRについては後述する。
【0027】
本実施形態に係るNCプログラムPは、典型的には、CAD(computer aided design)システム、自動プログラミングシステム及びCAM(computer aided manufacturing)システム等によって自動的に作成され、所定の記憶媒体又は通信手段を介して制御点データ抽出部121に格納されたものであり、一般的な工作機械の数値制御装置に用いられるNCプログラムである。
【0028】
基準線データ生成部122は、制御点データ抽出部121から供給された制御点データPRを用いて、工具111の基準線データ122aを生成する。そして、基準線データ122aと制御点データPR1を移動経路データ生成部123へ供給する。制御点データPR1とは、制御点データ抽出部121から供給された制御点データPRのうち、基準線データ122aの生成に用いられなかった制御点データである。
【0029】
また、本実施形態に係る基準線データ生成部122は、生成した基準線データ122aを移動経路データ生成部123に供給するだけではなく、図示を省略した記憶部にも供給することができる。
【0030】
移動経路データ生成部123は、基準線データ122aと制御点データPR1を用いて、工具111の移動経路データ123aを生成し、送り動作指令部124へ供給する。移動経路データ123aには、例えば、工具111の移動経路に関する距離情報や座標情報等が含まれる。
【0031】
送り動作指令部124は、移動経路データ生成部123により生成された移動経路データ123aを用いて、送り速度データ124aを算出する。送り速度データ124aは、典型的には、移動経路データ123aに含まれる距離情報を用いて算出される。そして、送り動作指令部124は、移動経路データ123aと送り速度データ124aに基づく工具111の移動を工作機械本体11に指令する。また、送り動作指令部124は、直接に工作機械本体11へ動作を指令してもよく、ネットワークを介して工作機械本体11に動作を指令してもよい。
【0032】
数値制御装置12は以上のような機能的構成を有する。数値制御装置12のハードウェア構成は上記のような機能的構成を実現することが可能であればよく、CPU(central processing Unit)、GPU(graphics processing unit)、メモリ及び入出力インターフェース等からなるものとすることができる。
【0033】
(制御点データについて)
図3は、制御点データPRの一例を示す図である。本実施形態に係る制御点データPRとは、ワークWの形状に基づきあらかじめ設定されているデータであり、工作機械本体11に工具111の移動を指令するコードである。制御点データPRは、工具111の座標情報、送り速度情報等の制御情報を含み、
図3に示すように、NCプログラムPを構成するプログラムの一種である。なお、
図3に示すNCプログラムPは、一例であり、本実施形態に係る数値制御装置12に用いられるものではない。
【0034】
制御点データ抽出部121は、NCプログラムPから、第1の制御点データ、第2の制御点データ、第3の制御点データ及び第4の制御点データを抽出するように構成されることができる。
【0035】
また、本実施形態に係る制御点データ抽出部121は、記憶部(図示しない)により記憶されている基準線データ122aを読み出し、
図2に示すように、基準線データ生成部122を介さずに、直接基準線データ122aとNCプログラムPから抽出した制御点データPR1を移動経路データ生成部123に供給することもできる。この場合、制御点データ抽出部121に抽出される制御点データPR1は、第1の制御点データ及び第4の制御点データとなる。これにより、すでに制御点データが抽出されているワークと同種のワークを加工する際に、基準線データ122aを再利用することができるので、加工効率を向上させることができる。
【0036】
ここで、第1の制御点データとは、工具111のワークWからの退避動作を工作機械本体11に指令し、当該退避動作
の起点のワークWからの高さ座標である第1の座標情報を含む制御点データである。また、第1の制御点データは、工具111の端部がワークWから数mm以上離間する工具111の座標情報を含む。
【0037】
第2の制御点データとは、工具111の送り動作を工作機械本体11に指令し、前述の退避動作の終点
のワークWからの高さ座標であり、第1の座標情報とは異なる第2の座標情報を含む制御点データである。
【0038】
第3の制御点データとは、工具111のワークWへの寄り付き動作を工作機械本体11
に指令し、前述の送り動作の終点
のワークWからの高さ座標である第3の座標情報を含む制御点データである。
【0039】
第4の制御点データとは、前述の工具111の寄り付き動作の終点
のワークWからの高さ座標であり、第3の座標情報とは異なる第4の座標情報を含む制御点データである。また、第4の制御点データは、工具111の端部がワークWから数mm以上離間する工具111の座標情報を含む。
【0040】
[数値制御装置の動作]
本発明に係る数値制御装置12の動作について、従来方式と比較して説明する。
図4は、従来方式のNC工作機械の工具の移動を示す模式図であり、
図5は、本実施形態に係る数値制御装置12に制御される工具111の移動を示す模式である。また、
図6は、従来のオーバーラップ機能を用いた工具の移動経路と、本実施形態に係る数値制御装置12に制御される工具111の移動経路123bを示す模式図である。
【0041】
なお、
図4乃至
図6に示す第1の制御点PRa1、第2の制御点PRa2、第3の制御点PRa3及び第4の制御点PRa4は、それぞれ第1の制御点データ、第2の制御点データ、第3の制御点データ及び第4の制御点データを可視化したものであり、以降の図で示す第1の制御点PRa1〜第4の制御点PRa4も同義とする。
【0042】
図4に示すように、従来の方式では、第1の制御点PRa1から第4の制御点PRa4へ工具を移動させる上で、「ワークWからの退避動作」、「送り動作」、「ワークWへの寄り付き動作」という順の軸動作を行わなくてはならず、工具の移動時間が大幅にかかってしまう。
【0043】
このような問題を解決するために、従来では、連続する二つの軸動作をオーバーラップさせるオーバーラップ機能が用いられる。これにより、一つの軸動作の途中から連続的に次の軸動作へ移行させることができるので、工具の移動時間が短縮されるものとしている(
図6中123c参照)。
【0044】
しかしながら、従来のオーバーラップ機能は、ワークの形状に適したオーバーラップ量をプログラマが予め計算し、NCプログラム中に指定する必要がある。このため、ワークの形状に基づき予め設定されているNCプログラムをそのまま用いることができず、生産性が低下するおそれがあった。
【0045】
これに対し、本実施形態に係る数値制御装置12は、まず、第2の制御点データと第3の制御点データから、
図5に示す基準線122bの基となる基準線データ122aを算出する。
具体的には、例えば、第2の制御点データに含まれる第2の座標情報と、第3の制御点データに含まれる第3の座標情報とに基づき、図5に示すようなワークWに対して高さ方向に設定される基準線122bに関する基準線データ122aを算出する。次いで、基準線データ122aと、第1の制御点データ及び第4の制御点データから、同図に示す曲線状の移動経路123bの基となる移動経路データ123aを算出する(
図2参照)。つまり、移動経路123bは、基準線122bを基準にして設定される。そして、移動経路データ123aから送り速度データ124aを算出し、送り速度データ124aと移動経路データ123aに従った工具111の移動を工作機械本体11に指令する。
【0046】
これにより、
図5に示すように、NCプログラムPに基づく工具111の軸動作を曲線状の軌跡を描く一連の動作とすることできる。つまり、従来のNCプログラムPを組み直さずにそのまま用いて、工具111の移動時間を短縮し、生産性を向上させることができる。よって、同図に示すように、工具111が第2の制御点PRa2と第3の制御点PRa3を経由する必要がなくなることから、NCプログラムPにそのまま従った動作よりも工具111の移動時間を短縮することができる。
【0047】
また、
図5に示すように、移動経路123bが第1の制御点PRa1を始点とし、第4の制御点PRa4を終点とする場合は、工具111を第1の制御点PRa1から第4の制御点PRa4へ移動させる上で、従来のNCプログラムPに基づく軸動作(
図4参照)よりも、工具の加減速の回数が少ないものとなる。よって、工具111の機械振動に起因する工作機械本体11の耐久性の低下を抑制することもできる。ここで、
図5に示す第1の制御点PRa1及び第4の制御点PRa4のワークWからの離間距離は、特に限定されず、例えば、数mm以上とすることができる。これにより、例えば、第1の制御点PRa1上の工具111の端部とワークWとの離間距離は、1mm以上となる。また、同様に、第4の制御点PRa4上の工具111の端部とワークWとの距離も、1mm以上となる。
【0048】
さらに、本実施形態に係る数値制御装置12により設定される移動経路123bは、
図5及び
図6に示すように、工具111の移動経路全体が曲線状となる。これにより、移動経路123bは、
図6に示すように、従来のオーバーラップ機能を用いた工具の移動経路123cよりも、ワークWに対してより内回りする経路となる。従って、従来のオーバーラップ機能を用いるよりも工具111の移動時間を短縮することができる。
【0049】
これらのことから、本発明に係る数値制御装置12は、NCプログラムPを再設定することなく、従来のオーバーラップ機能を用いるよりも工具111の移動時間を短縮させることができる。
【0051】
図5に示す基準線122bは、基準線データ生成部122によって生成された基準線データ122aを可視化したものである。基準線122bは、典型的には第2の制御点PRa2と第3の制御点PRa3を経由する直線である。
【0052】
図5に示す移動経路123bは、移動経路データ生成部123によって生成された移動経路データ123aを可視化したものであり、典型的には第1の制御点PRa1を始点とし、第4の制御点PRa4を終点とする曲線又は円弧である。
【0053】
ここで、基準線データ122aのソースである第2の制御点データと第3の制御点データは、これから加工しようとするワークWの形状に基づき、あらかじめ工具111の送り動作の起点と終点となるように設定されている制御点データである。換言すれば、第2の制御点データは、第3の制御点PRa3を終点として、工具111がワークWの干渉をうけないように考慮された送り動作を工作機械本体11に指令するように設定された制御点データである。
【0054】
これにより、第2の制御点データと第3の制御点データに基づき生成される基準線データ122aは、少なくとも工具111がワークWによる干渉をうけない情報を含むものとなる。よって、基準線データ122aを用いて生成される移動経路データ123aは、ワークWによる干渉を受けない移動経路情報を含むものとなる。従って、本実施形態に係る
数値制御装置12は、ワークWがどのような形状であっても、ワークWの干渉を受けない工具111の移動を工作機械本体11に指令することができる
【0055】
基準線122bは、必ずしも第2の制御点PRa2及び第3の制御点PRa3を経由するものではなく、任意に設定されることができる。
図7及び8は、基準線122b
のバリエーションを示す模式図である。基準線122bは、例えば、
図7に示すように、第2の制御点PRa2又は第3の制御点PRa3のどちちか一つを経由するものであってもよく、どちらも経由しないものであってもよい。また、基準線122bは、
図8に示すように、直線に限定されるものではなく、曲線、波線等とすることもできる。
【0056】
移動経路123bは、必ずしも第1の制御点PRa1を始点とし、第4の制御点PRa4を終点とするものではなく、任意に設定されることができる。
図9は、移動経路123b
のバリエーションを示す模式図である。移動経路123bは、例えば、
図9(a)、
図9(b)及び
図9(c)に示すように、第1の制御点PRa1又は第4の制御点PRa4のどちらか一つを経由するものであってもよく、どちらも経由しないものであってもよい。また、移動経路123bは、
図9(d)に示すように、部分的に直線を含むものとすることもできる。
【0057】
[数値制御装置の他の動作]
図10は、数値制御装置12の他の動作によって制御される工具111の移動を示す模式図である。
【0058】
本実施形態に係る数値制御装置12は、
ワーク側に凹な高さ方向における曲線状の移動経路123bの頂点T
の高さ座標を、
ワークWに対して高さ方向に設定された基準線
122bを基準に設定してから、第1の制御点データ
に含まれる第1の座標情報と、第4の制御点データ
に含まれる第4の座標情報とに基づいて当該移動経路123bに関する移動経路データ123aを生成することもできる。つまり、工具111の移動経路123bを、基準線122bを基準にして設定された頂点Tを基にして設定することができる。なお、以降の図に示す頂点Tは、頂点Tに係る座標情報を可視化したものである。
【0059】
(適用例1)
例えば、基準線122bが第2の制御点PRa2と第3の制御点PRa3を経由する直線と設定された場合に、
図10(a)に示すように、移動経路123bの頂点Tを基準線122bよりワークWに近く設定することにより、頂点Tを有する移動経路123bは、NCプログラムPに基づく軸動作から構成される工具の移動経路Lよりも、距離が短いものとなる。よって、工具111を第1の制御点PRa1から第4の制御点PRa4へ移動させる移動時間を短縮することができる。
【0060】
(適用例2)
また、
図10(b)に示すように、第1の制御点PRa1と第4の制御点PRa4の間隔L3に対する第1の制御点PRa1と第2の制御点PRa2の間隔L2の比が大きい場合は、同図に示すように、基準線122bよりも移動経路123bの頂点TをワークWから遠く設定することにより、曲率が急激に変化しない滑らかな経路を設定することができ、工作機械本体11の耐久性の低下を抑制することもできる。
【0061】
(適用例3)
さらに、
図10(c)に示すように、第1の制御点PRa1と第4の制御点PRa4の間隔L3に対する第1の制御点PRa1と第2の制御点PRa2の間隔L2の比が同等である場合は、同図に示すように、移動経路123bの頂点Tを基準線122b上に設定することより、移動経路123bを、工具111を第1の制御点PRa1から第4の制御点PRa4へ移動させる上で、無駄な経路が省かれた最も効率的な移動経路とすることができる。よって、移動経路123bに従って工具111を移動させることにより、工具111の移動時間を最適化することができる。
【0062】
<工作機械本体の動作>
図11は、本実施形態に係る工作機械本体11の動作を示す図である。工作機械本体11は、数値制御装置12からの制御指令を受けて主軸112を介して工具111を移動させる(
図1参照)。具体的には、移動経路データ生成部123に生成された移動経路データ123aと、送り動作指令部124が算出した送り速度データ124aに基づいた制御指令に従って工具111を移動させるものとなる。
【0063】
これにより、例えば、移動経路123bが、第1の制御点PRa1を始点とし、第4の制御点PRa4を終点とした場合に、工具111を第1の制御点PRa1から第4の制御点PRa4へ最適化された送り速度で工具111を送ることできる。なお、当該送り速度は、典型的には工具111が移動経路123bに沿って移動する上で、工作機械本体11が許容できる最大の速度であるが、任意に設定されることも可能である
【0064】
また、工作機械本体11は、一軸方向に沿ってのみ工具111を移動させるものではなく、任意の方向に移動させることができる。具体的には、X方向、Y方向及びZ方向への動作を同時に制御しながら三次元的に工具111を移動させることができる。例えば、図
11に示すように、工具111をX方向又はY方向に
対して平行移動させることもでき、
工具111をZ方向からY方向へ傾斜する方向
(又はZ方向からX方向へ傾斜する方向)に対して平行移動させることもできる。
【0065】
さらに、工作機械本体11は、工具111の向きをワークWに対して任意の方向に制御することもできる。これにより、例えば、中ぐり、穴あけ、ねじ切り、突切り、フライス削り及び溝彫り等の様々な加工をワークWに施すことが可能となる。
【0066】
[変形例]
図12は、従来のNC工作機械における工具のATC(auto tool changer)パス動作と、本実施形態に係る数値制御装置12に制御される工具111のATCパス動作を示す模式図である。
【0067】
本実施形態に係る数値制御装置12は、ATC(自動工具交換装置)を有する工作機械にも適用させることができる。この場合、制御点データ抽出部121に抽出される制御点データは、ワークWの形状に基づき設定された制御点データPRだけではなく、既存のATCパス経路L4に基づき設定された制御点データも抽出される。そして、上述と同様の手法により、
図12に示すような曲線を含むATCパス経路123dが設定される。なお、
図12に示す制御点PRbは、既存のATCパス経路L4に基づき設定された制御点データを可視化したものである。
【0068】
これにより、
図12に示すように、従来の一軸方向の軸動作から構成されるATCパス動作を曲線状の軌跡を描く一連の動作を含むものとすることができる。よって、従来のATCパス動作よりもツールポッドTPまでの移動時間を短縮させることができる。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。