特許第6684564号(P6684564)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6684564
(24)【登録日】2020年4月1日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】有機EL表示装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/04 20060101AFI20200413BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20200413BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20200413BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20200413BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
   H05B33/04
   H05B33/14 A
   H05B33/12 E
   H05B33/12 Z
   H01L27/32
   G09F9/30 309
   G09F9/30 365
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-203256(P2015-203256)
(22)【出願日】2015年10月14日
(65)【公開番号】特開2017-76521(P2017-76521A)
(43)【公開日】2017年4月20日
【審査請求日】2018年6月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神谷 哲仙
【審査官】 倉本 勝利
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−069956(JP,A)
【文献】 特開2007−184290(JP,A)
【文献】 特開2003−340233(JP,A)
【文献】 特開2010−080086(JP,A)
【文献】 特開2001−176655(JP,A)
【文献】 特開2003−142262(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0091290(US,A1)
【文献】 韓国登録特許第10−1495130(KR,B1)
【文献】 中国特許第101617564(CN,B)
【文献】 中国特許第1971940(CN,B)
【文献】 特開2011−014483(JP,A)
【文献】 特開2015−023023(JP,A)
【文献】 特開2011−124228(JP,A)
【文献】 特開2011−138748(JP,A)
【文献】 特開2004−319331(JP,A)
【文献】 特開2017−076521(JP,A)
【文献】 特開2011−150200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L27/32;H05B33/00−33/28;
H01L51/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下層から順に、
下部電極と、有機EL層と、上部電極と、を含む発光領域と、
前記発光領域を覆うように形成された封止膜と、
前記封止膜上に形成されるとともに、保水性を有する保水膜と、
がこの順で形成される表示領域を有する第1の基板と、
前記第1の基板とは充填剤及びシール材を挟んで対向する第2の基板とを有し、
前記シール材は前記充填剤の周囲を囲むように配置され、前記第1の基板と前記
第2の基板を固定し、
前記保水は前記封止膜を介して前記表示領域を覆い、前記表示領域から前記第1の基板の辺方向に向かって延在し、
前記保水は、前記充填剤と重畳する第1領域と、前記シール材と重畳する第2領域とを有し、
前記保水は、前記封止膜側の第1面と前記第2基板側の第2面を有し、
前記保水の第1面は、前記第1領域と前記第2領域との各々に、下層に沿った形状の凸部を有し、
前記保水の第2面は全域にわたって平坦であり、
さらに前記シール材が形成される領域内では、一部に前記保水が形成されない領域が存在する
ことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項2】
前記保水膜は、多孔質膜であることを特徴とする請求項1記載の有機EL表示装置。
【請求項3】
前記多孔質膜は、SiOで形成されることを特徴とする請求項2記載の有機EL表示装置。
【請求項4】
前記多孔質膜は、SiOで形成されることを特徴とする請求項2記載の有機EL表示装置。
【請求項5】
前記保水膜は、有機膜であることを特徴とする請求項1記載の有機EL表示装置。
【請求項6】
前記保水膜は、前記シール材と前記封止膜との間の一部を延伸するように設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の有機EL表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL(Organic Electro Luminescent)表示装置に使用される有機EL材料は、水分が存在すると発光特性が劣化し、長時間動作させると水分によって劣化した場所が発光しなくなるダークスポットが生じる場合がある。そこで、このようなダークスポットが市場に流通した後に生じないように、出荷前に水分が侵入したか否かを検査するため、例えば、下記特許文献1には、有機EL層と封止膜との間に水分と反応して色が変化するピンホール検出層を設けて、工場内の検査で、ピンホールを検出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012―79658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、上記のように水分が侵入したか否かを検査するいわゆるスクリーニングにおいては、有機ELパネル内の水分を用いて行われるが、当該水分が不足し、スクリーニングに長時間を要する場合がある。
【0005】
本発明は、有機EL層に水分が侵入したかスクリーニングを行う時間をより短縮することのできる有機EL表示装置を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の有機EL表示装置は、下部電極と、有機EL層と、上部電極と、を含む発光領域と、前記発光領域を覆うように形成された封止膜と、前記封止膜上に形成されるとともに、保水性を有する保水膜と、を含むことを特徴とする。
【0007】
(2)上記(1)における有機EL表示装置において、前記保水膜は、多孔質膜であることを特徴とする。
【0008】
(3)上記(2)における有機EL表示装置において、前記多孔質膜は、SiOで形成されることを特徴とする。
【0009】
(4)上記(2)における有機EL表示装置において、前記多孔質膜は、SiOで形成されることを特徴とする。
【0010】
(5)上記(1)における有機EL表示装置において、前記保水膜は、有機膜であることを特徴とする。
【0011】
(6)上記(1)乃至(5)のいずれかにおける有機EL表示装置において、前記保水膜は、前記発光領域を含む表示領域の外側に延伸するように設けられていることを特徴とする。
【0012】
(7)上記(6)における有機EL表示装置において、前記有機EL表示装置は、カラーフィルタ基板と、前記発光領域及び前記封止膜を含む対向基板と前記カラーフィルタ基板とを固定するシール材と、を含み、前記保水膜は、前記シール材と前記封止膜との間の一部を延伸するように設けられていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係る有機EL表示装置の概要を示す図である。
図2図1に示した有機EL表示装置の回路構成の概要について説明するための図である。
図3図1に示した有機EL表示装置の回路図の一例を示す図である。
図4図1のIV−IV断面の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、図面については、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
図1は、本実施形態に係る有機EL表示装置の概要を示す図である。図1に示すように、有機EL表示装置100は、TFT基板101と、フレキシブル回路基板102と、TFT基板101の非表示領域103上に配置されたICチップ(Integrated Circuit)104と、TFT基板101の表示領域105に対向して配置されたカラーフィルタ基板と、を含む。
【0016】
TFT基板101には、後述するように複数の画素がマトリクス状に配置される。ICチップ104は、有機EL表示装置100の外部からフレキシブル回路基板102を介して画像データが供給される。また、ICチップ104は、TFT基板101上に配置されたIC(Integrated Circuit)である。具体的には、ICチップ104は、TFT基板101の上面のうち、TFT基板101に対向して配置される対向基板が配置されていない非配置領域106に配置される。また、ICチップ104は、非表示領域103に形成された図示しない配線によって、後述する薄膜トランジスタ11に接続される。
【0017】
図2は、図1に示した有機EL表示装置の回路構成の概要について説明するための図である。有機EL表示装置100は、データ駆動回路201及び走査駆動回路202によって、TFT基板101上の表示領域105に形成された各画素を制御し、画像を表示する。ここで、例えば、データ駆動回路201は、各画素に送るデータ信号を生成・発信するIC(Integrated Circuit)であり、走査駆動回路202は、画素に備えられたTFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)へのゲート信号を生成・発信するICである。
【0018】
走査駆動回路202からの信号を伝える走査線203は、後述するスイッチトランジスタ302のゲート電極に接続される。また、データ駆動回路201からの信号を伝えるデータ線204は、スイッチトランジスタ302のソース・ドレイン電極に接続される。電位配線205には、有機発光ダイオード305に発光させるための基準電位が印加され、ドライバトランジスタ301のソース・ドレイン電極に接続される。第1の電位供給配線206及び第2の電位供給配線207は電位供給源に接続され、トランジスタを介して電位配線205に接続される。なお、図2に示した回路構成は一例であって、本実施の形態は上記に限定されるものではない。
【0019】
図3は、図1に示した有機EL表示装置の回路図の一例を示す図である。有機EL表示装置100の表示領域105には、データ線204がD1からDnまでn本形成されており、走査線203がG1からGmまでm本形成されている。複数の画素PXがマトリクス状に、走査線203の延在方向及びデータ線204延在方向に配置されている。例えば、G1とG2、D1とD2で囲まれる部分に画素PXが形成される。
【0020】
第1の走査線G1はスイッチトランジスタ302のゲート電極に接続されており、走査駆動回路202から信号が印加されると、スイッチトランジスタ302がオン状態になる。ここで、データ駆動回路201から第1のデータ線D1に信号が印加されると、蓄積容量40に電荷が蓄積され、ドライバトランジスタ301のゲート電極に電圧が印加されて、ドライバトランジスタ301がオン状態になる。ここで、スイッチトランジスタ302がオフ状態となっても、蓄積容量303に蓄えられた電荷により、一定期間はドライバトランジスタ301がオン状態になる。有機発光ダイオード305の陽極はドライバトランジスタ301のソース・ドレイン間を通じて電位配線205に接続されており、有機発光ダイオード305の陰極は基準電位Vcに固定されているから、ドライバトランジスタ301のゲート電圧に応じて有機発光ダイオード305に電流が流れ、有機発光ダイオード305が発光する。また、付加容量304が有機発光ダイオード305の陽極と陰極との間に形成される。付加容量304は、蓄積容量303に書き込まれる電圧を安定させる効果を発揮し、有機発光ダイオード305の安定動作に寄与する。具体的には、蓄積容量303の静電容量よりも付加容量304の静電容量が大きくなるようにすることで当該効果が発揮される。なお、図3に示した回路構成は一例であって、本実施の形態は上記に限定されるものではない。
【0021】
図4は、図1のIV−IV断面の概要を示す図である。なお、図4に示した断面は一例であって、本実施の形態はこれに限定されるものではない。
【0022】
図4に示すように、基板401上には、所定の領域に、ソース電極やドレイン電極を形成するTAT(Ti/Al/Ti)402が配置される。当該TAT402は、Ti、Al、Tiの三層構造で形成される導電材料である。当該ソース電極は、HRC等で形成される平坦層403に形成されたスルーホールを介してアノード電極405と接続される。当該スルーホールのシール材417側の領域においては、基板401上に絶縁層419を介して所定の領域にTAT402が配置される。
【0023】
平坦層403の上には、後述する発光領域を含めた所定の領域に、順に、金属層406、絶縁層407、アノード電極405が形成される。ここで、金属層406は、いわゆる3rdMETALと呼ばれるもので、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)層、Mo層、Al層等が積層されて構成される。また、当該金属層406と、後述するカソード電極408を電気的に接続することにより、当該金属層406はカソード電極408の補助配線として用いられる。また、金属層406とアノード電極405で、絶縁層407を挟んで容量層(付加容量304)を形成する。なお、当該金属層406とカソード電極408の接続は、例えば、表示領域105の外側でスルーホールを設けて行う。
【0024】
絶縁層407は、例えば、SiNで形成される。また、アノード電極405は、例えばITOを形成される。なお、アノード電極405の材料としては、その他の材料、例えば、IZO(Indium Tin Oxide)やZnO(Zinc Oxide)を用いてもよい。
【0025】
平坦層403には、TAT402上の一部にスルーホールが形成される。当該スルーホールの側面には、アノード電極405が積層される。当該スルーホールの上部には、画素を分離するリブ層409が形成される。ここで、アノード電極405と有機層410が接触する領域が発光領域となり、当該リブ層409は、発光領域の外縁を規定する。
【0026】
有機層410は、当該リブ層409やアノード電極405上の所定の領域に配置される。また、当該有機層410を覆うように、カソード電極408が配置される。カソード電極408は、例えば、ITOやIZOなどの透明電極で形成される。また、カソード電極408は画素のいくつか、あるいは、マトリクス状に配置された画素の全部に跨って形成されてもよい。なお、有機層410は、例えば、アノード電極405側から順にホール輸送層、発光層、電子輸送層を有するように形成されるが、周知であるので、詳細な説明については省略する。
【0027】
カソード電極408上には、封止膜411が形成され、当該封止膜411上には保水性を有する保水膜412が形成される。ここで、保水膜412は、例えば、多孔質な膜で形成される。より具体的には、例えば、SiOやSiOで形成される。また、当該保水膜412は、例えば、有機膜で形成してもよい。なお、当該保水膜412は、保水性を有する限り、他の膜で形成してもよい。また、保水膜412の膜厚は、例えば、1μm程度とすればよい。
【0028】
カラーフィルタ基板413は、ブラックマトリックス414とカラーフィルタ415を有する。またカラーフィルタ基板413と、上記のように保水膜412等が形成されたTFT基板101との間には、充填材416が封入される。また、カラーフィルタ基板413の端部においては、シール材417が配置される。
【0029】
上記保水膜412は、図4に示すように、例えば、表示領域105の外側に延伸するように形成する。具体的には、例えば、有機層410の上部からシール材417の下部を通って、シール材417の外側まで延伸するように形成する。ここで、例えば、保水膜412は、シール材417と封止膜411との間の一部を延伸するように設けることが好ましい。具体的には、例えば、シール材417の下部においては、シール材417のコーナー部分などの一部において、保水膜412がない部分が存在するように構成することが好ましい。これにより、シール材417と封止膜411との密着性を向上させることができる。
【0030】
なお、図4に示すように、シール材417の下方や、表示領域105とシール材417の間において、リブ層409や封止膜411等から形成される水分遮断構造418を形成してもよい。当該水分遮断構造418は、外部からの有機層410への水分の侵入を防止するための構造であるが、図4に示した水分遮断構造418は一例にすぎず、これに限られるものではない。また、封止膜411付近に保水膜412を設ける構成以外の有機EL表示装置100の構成は、例示であって、本実施の形態は、図4に示した構成に限られるものではない。
【0031】
次に、本実施の形態における有機EL表示装置100のスクリーニングにおける保水膜412の作用について説明する。上述のように、有機EL表示装置100においては、市場への出荷前に水分が侵入したか否かを検査するいわゆるスクリーニングが行われる。具体的には、当該スクリーニングは、上記カラーフィルタ基板413と保水膜412等が形成されたTFT基板101等から形成されるパネル内の水分を用いて行われるが、本実施の形態においては、保水膜412が水分を含む。したがって、スクリーニングにおいてパネル内に十分な水分を供給することができ、水分の不足によるスクリーニング期間の長時間化を避けることができる。具体的には、例えば、本実施の形態のように保水膜412を有しない場合、スクリーニングに約100時間の時間を要するが、本実施の形態によれば、約24時間に短縮することが可能となる。
【0032】
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、上記実施の形態で示した構成と実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えてもよい。例えば、上記においては、保水膜412が、有機層410上方からシール材417の外側にまで延伸する場合について説明したが、例えば、保水膜412は、外側にまで延伸せず、シール材417の内側にのみ形成されるように形成してもよい。また、図4に示した有機EL表示装置100の断面構成は一例であって、上記保水性を有する保水膜412を有する限り、他の構成であってもよい。例えば、上記図4においては、封止膜411の他にも水分を遮断する水分遮断構造418等を設けているが、当該水分遮断構造418等を設けなくてもよい。なお、特許請求の範囲における下部電極及び上部電極は、例えば、それぞれ上記アノード電極405及びカソード電極408に相当する。
【符号の説明】
【0033】
100 有機EL表示装置、101 TFT基板、102 フレキシブル回路基板、103 非表示領域、104 ICチップ、105 表示領域、106 非配置領域、201 データ駆動回路、202 走査駆動回路、203 走査線、204 データ線、205 電位配線、206 第1の電位供給配線、207 第2の電位供給配線、301 ドライバトランジスタ、302 スイッチトランジスタ、303 蓄積容量、304 付加容量、305 有機発光ダイオード、401 基板、402 TAT、403 平坦層、405 アノード電極、406 金属層、407 絶縁層、408 カソード電極、409 リブ層、410 有機層、411 封止膜、412 保水膜、413 カラーフィルタ基板、414 ブラックマトリックス、415 カラーフィルタ、416 充填材、417 シール材、418 水分遮断構造。
図1
図2
図3
図4