(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6684574
(24)【登録日】2020年4月1日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】粒子混合
(51)【国際特許分類】
G01N 1/10 20060101AFI20200413BHJP
G01N 1/28 20060101ALI20200413BHJP
G01N 1/38 20060101ALI20200413BHJP
G01N 35/02 20060101ALI20200413BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
G01N1/10 C
G01N1/28 J
G01N1/38
G01N35/02 D
C12M1/00 A
【請求項の数】12
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-224616(P2015-224616)
(22)【出願日】2015年11月17日
(65)【公開番号】特開2016-99352(P2016-99352A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2018年10月4日
(31)【優先権主張番号】14193860.5
(32)【優先日】2014年11月19日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(72)【発明者】
【氏名】レナト・ベルツ
(72)【発明者】
【氏名】ウィレム・ムルダー
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・ニューハウス
【審査官】
島田 保
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−133223(JP,A)
【文献】
特開2007−117861(JP,A)
【文献】
特開2007−278885(JP,A)
【文献】
特表2002−524242(JP,A)
【文献】
特表2009−517067(JP,A)
【文献】
特表2001−518284(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第102989355(CN,A)
【文献】
特開2013−072687(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00−1/44
G01N 35/00−37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体を生体試料から分離する方法であって、
容器内の溶液中で検体を結合できる粒子を前記容器内に提供するステップを有し、前記容器は、壁を備え、前記壁の少なくとも一部は可撓性であり、前記容器は枠体内に保持されており、前記枠体は底部に開口を備え、
前記方法は、前記枠体の前記開口を介して、可動機械装置により前記容器の前記壁の前記可撓性部分に2回以上力を加えることにより前記粒子を前記溶液内で懸濁させるステップと、
一定分量の前記懸濁粒子を前記容器から取り出すステップと、
前記一定分量を試料に分配するステップと、
前記試料を培養するステップと、
結合された検体を有する前記粒子を他の材料から分離し、前記生体試料の少なくとも一部を除去するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
他の材料からの分離の後、前記結合検体を有する前記粒子を1回以上洗浄するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
分離あるいは洗浄の後、前記粒子から前記検体を溶出するステップをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記力は機械的に加えられる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記力を機械的に加えることが自動化されている、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記容器から一定分量を取り出す前記ステップが、力を前記容器の前記壁の前記可撓性部分に加えている間に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
検体を分離するためのシステムであって、前記システムは、
容器を有し、前記容器は、壁を有し、前記壁の少なくとも一部には可撓性があり、前記容器は、溶液中に粒子を有し、前記容器は枠体内に保持されており、前記枠体は底部に開口を備え、
前記システムはさらに、
前記枠体の前記開口を介して前記容器の前記壁の一部である前記可撓性壁にアクセス可能な可動機械装置と、
前記可動機械装置を制御して前記可動機械装置が前記容器の前記壁の一部である前記可撓性壁に圧力を加えて前記容器内の前記粒子を懸濁させるように構成されたコンピュータコントローラと、
を有するシステム。
【請求項8】
前記枠体と前記容器が蓋で覆われた、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記蓋は少なくとも一つの開口を有する、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
解放可能なシールが前記蓋の前記開口を覆う、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記システムは分注装置をさらに備える、請求項7に記載のシステム。
【請求項12】
前記分注装置と前記可動機械装置は機能的に連結され、前記コンピュータコントローラは、前記可動機械装置と前記分注装置を制御し、前記可動機械装置が前記容器の前記壁の一部である前記可撓性壁に力を加えて、前記分注装置が前記粒子を有する前記溶液の一定分量を吸引するのに必要な少なくとも同じ時間だけ前記容器内の前記粒子を懸濁させるように構成され、前記可動機械装置は、前記分注システムが粒子を有する前記溶液の一定分量を吸引する間に前記壁の一部である前記可撓性壁に力を加える、請求項11に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体を生体試料から分離する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
検体を検出あるいは測定する診断分析は、少なくとも検体の部分精製をしばしば必要とする。免疫測定あるいは核酸検査のような分析アッセイに通常使用される一つの方法は、検体の粒子への直接的あるいは間接的結合を含む。したがって、検体を直接的あるいは間接的に結合することができる粒子は被検試料に提供される必要がある。粒子は固形で提供されてもよいが、好ましくは、一般的に、懸濁粒子を含む一定分量の溶液を分注装置を使用して移すことにより粒子の溶液中懸濁液として提供される。
【0003】
そのような検体結合粒子が溶液中懸濁液として提供されると、一定分量を分注装置で吸引して試料に移す際に懸濁液が均質であるように注意を払う必要がある。通常、そのような懸濁粒子の溶液を含む容器は振動機構を使用して振動させる。懸濁粒子溶液の均質性は、振動機構により行われる振動自体と容器のデザインの影響を受けることがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、検体を生体試料から分離する方法に関する。この方法は、容器内の溶液中に存在すると検体を結合することができる粒子を提供するステップを含み、容器は壁を備え、壁の少なくとも一部には可撓性がある。容器の壁の可撓性部分に2回以上力を加えることにより粒子は溶液内で懸濁する。次いで、一定分量の懸濁粒子が容器から取り出される。取り出された一定分量は試料に分配され、検体を粒子上に固定するのに適した状態で試料は培養される。次いで、結合された検体を有する粒子は他の材料から分離され、生体試料の少なくとも一部は除去される。
【0005】
本発明はさらに、検体を分離するための、容器を備えたシステムに関する。容器は壁を備える。壁の少なくとも一部には可撓性がある。容器は溶液中に粒子を有する。システムはまた分離ステーションを備える。システムはさらに、容器の壁の一部である可撓性壁に機能的に連結された可動機械装置と、可動機械装置を制御して可動機械装置が容器の壁の一部である可撓性壁に圧力を加えて容器内の粒子を懸濁させるように構成された制御ユニットと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、閉止底部端(7)と開放上端(9)を備えた容器(1)を示す。
【
図2】
図2は、壁(6)を備えた容器(1)を示しており、壁(6)の少なくとも一部は可撓性壁(3)である。
【
図3】
図3は、容器(1)(図示せず)と枠体(10)を覆う蓋(14)を示す。
【
図4】
図4は、分離ステーション(22)と分注装置(20)と可動機械装置(5)とを備えたシステム(23)の概略図である。
【
図5】
図5は、検体(24)が結合された粒子(8)の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示は生体分子を結合することができる粒子混合方法に関する。この方法は、容器内の溶液に懸濁する粒子を提供するステップであって、容器は壁を有し、壁の少なくとも一部は可撓性がある、ステップと、容器の壁の可撓性部分に2回以上力を加えることにより粒子を懸濁させるステップとを含む。
【0008】
本明細書で使用される用語「検体」は、検出したいどのような種類の検体であってもよく、その検出は有機体の診断状態を示す。ある特定の実施形態では、検体は生体分子である。有機体は動物でもよく、ある実施形態では人である。「生体分子」は、タンパク質、ポリペプチド、抗体あるいは核酸でもよい。ある実施形態では、検体は目的の核酸である。「目的の核酸」は、当業者には公知のヌクレオチドのポリマー化合物である。「目的の核酸」は本明細書では、分析されるべき試料内の核酸を意味するのに使用されており、試料内のその存否および/または量が決定される。目的の核酸は、例えば特定の遺伝子の一部やRNAのようなゲノム配列でもよい。他の実施形態では、目的の核酸はウイルスや微生物でもよい。
【0009】
検体は液体試料中に存在してもよく、担体に添加された固形試料として存在してもよい。固形試料は組織を含んでもよい。
本明細書で使用される用語「試料」は、関心のある検体を収容していると思われる材料のことである。試料は、血液、唾液、接眼レンズ液、脳脊髄液、汗、尿、ミルク、腹水、粘液、滑液、腹腔液、羊水、組織、細胞等を含む生理液のような生物学的供給源から得ることができる。試料は、血液から血漿を作ったり、粘液、溶菌等を希釈したりするなどして、使用する前に前処理を施すことができ、処理方法は、濾過、蒸留、濃縮、妨害成分の不活性化、および、試薬の添加を含むことができる。試料は供給源より得られたまま直接使用してもよく、試料の特性を修正する前処理の後、例えば別の溶液で希釈された後や、例えば臨床化学分析、免疫測定、凝固分析、核酸検査等のような一つあるいはそれ以上の診断分析を行うために試薬と混合された後に使用してもよい。それ故、本明細書で使用する用語「試料」は元の試料に使用されるのみならず、既に加工された(分注、希釈、試薬との混合、濃縮、分離、浄化、増幅等が行われた)試料にも関連する。
【0010】
体外診断では、検体は試料に存在する他の材料から分離されることでしばしば濃縮される。この濃縮は検出方法の感度および質には有益である。確立された一つの分離方法は、関心のある生体分子を固形担体へ結合するステップを含む。本明細書で使用される用語「固形担体」は、検体が吸着により直接的で非特異的に、あるいは間接的で特異的に結合できるいかなる種類の固形担体にも関連する。間接的結合は、固形担体に固定された抗体への検体の結合や、タグ結合剤へのタグの結合、例えばニッケルキレートへの6xHisタグの結合や、ストレプトアビジン被覆ビーズへのアビジン結合でもよい。固形担体の材料は、ポリマーあるいはポリマー組成物でもよい。具体的には、粒子を固形担体材料として使用してもよい。粒子の例には、ラテックス粒子、磁性シリカ粒子、金属粒子、磁性ガラス粒子が含まれる。他の種類の固形担体には、ガラス繊維、ガラス繊維フィルター、フィルター紙等が含まれるが、固形担体材料はこれらの材料に限定されない。
【0011】
検体分離用固形担体として粒子を使用するに際し、それらを乾燥状態で試料に添加してもよい。それらは溶液中に懸濁させて提供してもよい。溶液中に懸濁する粒子を提供する時、方法の再現性は懸濁液の均質性の影響を受ける。それ故、一定分量の懸濁粒子を含む溶液を試料に移す直前に、この溶液を混合するのが重要である。改良された均質な溶液は、少なくとも一部に可撓性のある壁を有する容器内の溶液中に懸濁する粒子を提供することで本発明により得られる。均質な溶液は、容器の壁の可撓性のある部分に2回以上力を加えることにより得られる。力は容器内の液体を移動させ、これにより懸濁粒子が混合され、懸濁粒子の均質性が改善される結果となる。
【0012】
ある特定の実施形態では、力は容器の底半分に位置する部位に加えられ、前記部位は容器の壁の可撓性部分に位置している。
本発明の一実施形態では、力は可動機械装置により加えられる。ある特定の実施形態では、力は可動機械装置により自動的に加えられる。ある実施形態では、そのような可動機械装置は、容器の可撓性部分に力を加えるように構成された工具の付いた装置であってもよい。容器に接する表面は平坦でも丸みを帯びていてもよい。力は、例えば容器の可撓性部分に工具を打ち付けたり、ぶつけたりすることで加えられる。可動機械装置を手動で移動させて容器の可撓性部分に力を加えてもよい。自動化のため、工具をロボットアームに連結してもよい。いずれの場合でも、容器の可撓性部分に工具を打ち付けることで力を加えてもよい。
【0013】
別の実施形態では、力は手動で加えられ得る。これは、容器の底部を数本の指で絞ることにより達成され、その結果粒子が懸濁することとなり、粒子の溶液中懸濁液の均質性が改善される。
【0014】
本明細書に記載した本発明のある特定の実施形態では、磁性粒子が使用される。
本開示はさらに、壁を備えた容器に関し、壁の少なくとも一部には可撓性がある。容器は粒子を含む溶液を有する。容器は枠体内に保持され、枠体は、壁の可撓性部分にアクセスできるように構成された開放底部を備えており、容器の壁の可撓性部分に力を加えることができる。
【0015】
用語「枠体」は、容器の外部支持構造体と関連する。ある実施形態では、容器は枠体に取り付けられる。用語「取り付け」は、容器の枠体への物理的取り付けと関連する。容器を接着で取り付けてもよく、熱を加えることで取り付けてもよい。容器を枠体に取り付ける他の公知の種類を使用することもできる。したがって、容器は枠体と一体的に形成されてはいない。枠体は容器を構造的に支持するので、容器とは異なる材料で製作される。特定の実施形態では、枠体は剛性材料で製作される。
【0016】
枠体は壁の可撓性部分へのアクセスを可能にする開口部を有し、力を容器の壁の可撓性部分に加えることができる。特定の実施形態では、枠体は壁の可撓性部分へのアクセスを可能にする開放底部を有し、力を容器の壁の可撓性部分に加えることができる。さらに特定の実施形態では、枠体は二つの長い壁と二つの短い壁を有し、長い各側壁の一端縁は短い側壁の一端縁と接触する。さらに特定の実施形態では、長い側壁の一つは枠体の上端から別の長い側壁の底部上方のレベルまで延在する。したがって、上部から下方に向けて、一つの長い側壁はもう一つの側壁より短くなる。これにより可動機械工具のアクセスがより容易になる。ある実施形態では、枠体は開放上端を有する。
【0017】
ある実施形態では、容器はその底部端で閉止されており、開放上端を備える。閉止底部端は、容器が溶液を保持するのを可能にする。開放上端は、容器が溶液で満たされるのを可能にするとともに、溶液あるいは一定分量の溶液を取り出すことができる。
【0018】
ある実施形態では、枠体と容器は上端部に共通の蓋を備える。したがって、蓋は、容器の開放上端と枠体の開放上端を覆っている。特定の実施形態では、蓋は少なくとも一つのシールを備え、シールはピペット端や針が貫通可能である。溶液が容器に充填された後、蓋を枠体と容器に取り付けてもよい。蓋は、容器内の溶液がこぼれたり、外部から汚染されたりするのを防止する。一定分量の懸濁粒子を蓋がされた容器と枠体から取り出せるように、少なくとも一つのシールは、ピペット端あるいは針が貫通できるように構成された蓋に設けられる。
【0019】
ピペット端は先端のことで、より具体的には使い捨ての先端であり、可逆的にあるいは固定的に分注装置に取り付けられる。針は廃棄不要の先端で、具体的には鋼針であり、可逆的にあるいは固定的に分注装置に取り付けてもよい。これらの装置は分注に使用される。用語「分注」は本明細書では、第一ステップである量の液体を吸引、すなわち取り出し、第二ステップである量の液体を分配することを示すために使用されており、分配される液体の量は吸引される液体の量と同じでも異なっていてもよく、中間の吸引および/または分配ステップは第一ステップと第二ステップとの間に介在しても介在しなくてもよい。分注装置は、ピペット端や針を使用して液体を吸引し分配するように構成された自動装置である。そのような装置は当該分野では周知である。ある分注装置は、一つ以上の先端あるいは針を取り付けることができるものでもよく、それに固定された一つ以上の先端あるいは針を有するものでもよい。貫通可能なシールは、ピペット端あるいは針が貫通することのあるシールである。シールは壊れやすくてもよく、すなわち、シールはピペット端あるいは針により破壊され、その後再シールは行えない。別の実施形態では、シールは再シール可能である。そのような再シール可能なシールの例はゴム製のシールである。ある特定の実施形態では、蓋は少なくとも一つの分割隔膜を備える。分割隔膜はあらかじめ分割されたシールである。そのようなシールは当該分野では公知である。それらは、あらかじめ分割されていない隔膜よりも容易に貫通することができるという利点がある。一方、ピペット端や針が引き抜かれた後、分割隔膜は再度閉止するので、容器の内容物がこぼれたり汚染されたりする危険性が減少する。
【0020】
本明細書に記載された容器のある特定の実施形態では、容器の材料はゴムのような材料である。そのような材料は壁に可撓性を提供するとともに耐久性を提供し、容器内に収容された溶液内に懸濁する粒子の混合と均質性を視覚的に制御することを可能にする。
【0021】
本発明は生体試料から検体を分離する方法に関する。この方法は、容器内の溶液中に存在すると検体を結合することができる粒子を提供するステップを含み、容器は壁を備え、壁の少なくとも一部には可撓性がある。容器の壁の可撓性部分に2回以上力を加えることにより粒子は溶液内で懸濁する。次いで、一定分量の懸濁粒子が容器から取り出される。取り出された量は試料に分配され、試料は検体を粒子上に固定するのに適した状態で培養される。次いで、結合された検体を有する粒子は他の材料から分離され、生体試料の少なくとも一部は除去される。
【0022】
上述したように、体外診断では、検体は試料に存在する他の材料から分離されることでしばしば濃縮される。この濃縮は検出方法の感度および質には有益である。確立された一つの分離方法は、関心のある生体分子を固形担体へ結合するステップを含む。このため、検体を結合できる粒子が容器内に提供される。したがって、容器はそのような粒子の懸濁液を保持する。一定分量の懸濁液中の粒子の制御量を試料に分配するために、粒子は容器内に収容された溶液中の均質懸濁液として存在すべきである。懸濁液が均質であるほど、検体分離の後の検体検出あるいは測定から最終的に得られるデータは、より信頼性が高くなりより正確となる。本発明においては、壁を有する容器を使用し、壁の少なくとも一部には可撓性があり、容器の壁の可撓性部分に2回以上力を加えることにより均質懸濁は達せされる。これにより、粒子の均質懸濁が溶液中に得られる。次いで、一定分量を容器内の溶液から取り出し、試料に分配することができる。こうすることで、ある量の一定分量が、容器内に収容された同じ溶液から取り出された2回目の一定分量の同じ量と同じ量の粒子を常に収容することを確実にすることができる。一定分量の分配に続いて、試料は検体を粒子上に固定するのに適した状態で粒子を使用して培養される。そのような状態は当該分野では周知である。検体が固定されると、次いで、結合された検体を有する粒子は試料のある溶液に存在する他の材料から分離され、試料の少なくとも一部は除去される。
【0023】
本明細書で使用する用語「一定分量」は溶液の一部と関連する。
本明細書に記載した方法のある実施形態では、この方法は、他の材料からの分離の後、結合検体を有する粒子を1回以上洗浄するステップをさらに含む。用語「洗浄」は、ある量の適当な溶液が結合された検体を有する粒子に追加されることを意味するものと理解される。適当な洗浄溶液は洗浄緩衝液である。「洗浄緩衝液」は、特に浄化工程において望ましくない成分を除去するためにデザインされた液体のことである。そのような緩衝液は当該分野では周知である。核酸の浄化の文脈では、洗浄緩衝液は、固定された核酸を好ましくないあらゆる成分から分離するために固形担体材料を洗浄するのに適している。したがって、ある実施形態では、検体は核酸である。洗浄緩衝液は例えば、緩衝液内にエタノールおよび/またはカオトロピック剤を含んだり、上述したエタノールおよび/またはカオトロピック剤のない酸性pHの溶液を含んだりしてもよい。洗浄液や他の溶液は、使用前に希釈する必要がある貯蔵液としてしばしば提供される。
【0024】
洗浄ステップの最後に、洗浄液の少なくとも一部は粒子から分離されて除去される。ある特定の実施形態では、洗浄ステップは少なくとも1回繰り返される。
ある実施形態では、方法は、分離あるいは洗浄に続いて粒子から検体を溶出するステップをさらに含む。用語「溶出」は結合検体の粒子からの解放と関連する。通常、溶出は適当な溶出緩衝液を使用して行われる。本発明の文脈における「溶出緩衝液」は検体を粒子から分離するのに適した液体である。そのような液体は、例えば蒸留水やトリス塩酸のようなトリス緩衝液等の食塩水、HEPESあるいは当業者には公知の他の適当な緩衝液でもよい。そのような溶出緩衝液のpH値は、検体が核酸の場合はアルカリか中性でもよい。この溶出緩衝液は、例えば分解酵素の非活性化により遊離核酸を安定化するEDTAのようなキレート剤等の別の成分を含んでもよい。
【0025】
溶出には高温が必要になる場合がある。非限定的例として、検体が核酸の場合には、溶出は70℃〜90℃の温度、より具体的には80℃の温度で行われる。
方法のある実施形態では、力は機械的に加えられる、特定の実施形態では、力は操作者により手で加えられる。より具体的には、操作者は手で可撓性部分を絞ったり、これから手を放したりするのを繰り返し、こうして機械的力を加える。
【0026】
別の実施形態では、機械的に加えることが自動化されている。特定の実施形態では、自動化は可動機械装置により達成される。さらに特定の実施形態では、可動機械装置は、容器の可撓性部分を叩いたり絞ったりするように構成された装置でもよい。そのような可動機械装置のある特定の実施形態は、ロボットアームに連結された把持具やハンマー頭部でもよい。
【0027】
本発明のある実施形態では、容器から一定分量を取り出すステップは、容器の壁の可撓性部分に力を加えている間に行われる。これには、力を加えている間に粒子がより均質に懸濁し、したがって一定分量には均質な粒子の懸濁液が含まれるという利点があり、こうして最終的に行われる検体の検出あるいは測定の信頼性と質が向上する。
【0028】
本発明はさらに、検体を分離するための、容器を備えたシステムに関する。容器は壁を備える。壁の少なくとも一部には可撓性がある。容器は溶液中に粒子を有する。システムはまた、分離ステーションを備える。システムはさらに、容器の壁の一部である可撓性壁に機能的に連結された可動機械装置と、可動機械装置を制御して可動機械装置が容器の壁の一部である可撓性壁に圧力を加えて容器内の粒子を懸濁させるように構成された制御ユニットとを備える。
【0029】
検体を結合できる粒子を使用して検体を分離するシステムは当該分野では周知である。そのようなシステムは分離ステーションを備える。磁気を帯びていない粒子を使用する時、適当な分離ステーションは、粒子を保持するように構成されたフィルターユニットと、真空になると粒子から液体を除去するように構成された真空システムとを備えてもよい。そのような分離ステーションの別の実施形態は、試料と結合検体付き粒子を収容した容器内の粒子をペレットにして容器内にある溶液から粒子を分離するように構成された遠心分離ユニットである。通常使用される別の種類の分離ステーションは、試料と結合検体付き粒子を収容した一つ以上の容器の底あるいは壁に結合検体付き磁性粒子を保持するように構成された磁性分離ステーションである。これらの分離ステーションのすべては、結合検体付き粒子を粒子懸濁液の試料と液体成分から分離し、検体を粒子に結合した後に試料と他の液体を除去するように構成されている。次いで、粒子は洗浄され回収されるか、あるいは直接回収される。上述したように、試料内の他の材料からこのように分離された粒子は、次にさらに洗浄されて汚染物が除去されることもあり、且つ/または検体が粒子から最終的に溶出されることもある。このようにして得られた検体は、その後、同じあるいは異なるシステム内で検出されたり測定されたりしてもよい。
【0030】
本発明のシステムは、容器の壁の一部である可撓性壁に機能的に連結された可動機械装置を備える。用語「機能的に連結」は、可動機械装置が、容器内に収容された溶液中の粒子の均質懸濁を得ることを可能にする方法で壁の可撓性部分と相互作用することを意味するものと理解される。
【0031】
システムは分析器を制御する制御ユニット(CU)を備える。そのような制御ユニットは別のユニットでもよく、分析機器の一体部分でもよい。制御ユニットは、分析手順に必要なステップが分析器により行われるように分析器を制御する。これは、制御ユニットが、例えば分析器に指示して、ある分注ステップを行い試料を試薬と混合したり、制御ユニットが分析器を制御して試料混合物をある時間培養したりすることなどを意味する。制御ユニットは、データ管理器からどのテストを特定の試料で行うべきかについての情報を受信し、それに基づいて分析器(おそらく試料準備ユニットも)が行うべきステップを決定する。ある実施形態では、制御ユニットはデータ管理ユニットと一体的でもよく、共通のハードウェアにより具現化されてもよい。
【0032】
本発明のシステムのある実施形態では、容器は枠体内に保持され、枠体は容器の底部に開口を有する。特定の実施形態では、枠体と容器は蓋で覆われている。さらに特定の実施形態では、蓋は少なくとも一つの開口を有する。この開口は、容器の内容物へのアクセスを可能にする。また別の特定の実施形態では、解放可能なシールが開口を覆っている。そのようなシールは可撓性材料、例えばゴムや熱可塑性材料で製作される。これらは内容物の汚染やこぼれを防止する。
【0033】
システムのある実施形態では、分注装置をさらに備える。さらに特定の実施形態では、分注装置と可動機械装置は機能的に連結され、制御ユニットは、可動機械装置と分注装置を制御し、可動機械装置が容器の壁の一部である可撓性壁に力を加えて、分注装置が粒子を有する溶液の一定分量を吸引するのに必要な少なくとも同じ時間だけ容器内の粒子を懸濁させるように構成され、可動機械装置は、分注システムが粒子を有する溶液の一定分量を吸引する間に壁の一部である可撓性壁に力を加える。
【0034】
用語「分注装置と可動機械装置は機能的に連結される」は、それらの分注機能と力を加える機能が連動することを意味する。
【実施例】
【0035】
図1は、閉止底部端(7)と開放上端(9)を備えた容器(1)を示す。容器(1)の開放上端(9)は蓋(2)で覆われている。容器(1)は壁(6)を備える。壁(6)の少なくとも一部は可撓性壁(3)である。容器(1)は、粒子(8)が懸濁する溶液(4)を収容している。可動機械装置(5)により容器(1)の壁(6)の可撓性部分(3)に力を加えて粒子(8)の均質混合を達成することができる。
【0036】
図2は、壁(6)を備えた容器(1)を示しており、壁(6)の少なくとも一部は可撓性壁(3)である。容器(1)は閉止底部端(7)と開放上端(9)をさらに備える。
図1と同様に、容器(1)は、粒子(8)が懸濁する溶液(4)を収容している(この図には図示せず)。容器(1)は枠体(10)内に保持されている。枠体(10)は底部(12)に開口(11)を備える。可動機械装置(5)は、枠体(10)の開口(11)を介して容器(1)の可撓性壁(3)にアクセスすることができる。ある特定の実施形態では、可動装置(5)はロボットアーム(13)を備えてもよい。
【0037】
図3は、容器(1)(図示せず)と枠体(10)を覆う蓋(14)を示す。ある特定の実施形態では、蓋(14)は解放可能なシール(16)が取り付けられ得る開口(15)を有する。
図3は、特定の実施形態として、台座(18)と複数の隔膜(16)を備えた隔膜片(17)を示す。再シール可能な各隔膜(16)は、分注装置(20)に取り付けられたピペット端(19)が貫通可能である。ピペット端(19)は、分注装置(20)に解放可能に取り付けられた使い捨ての先端や、分注装置(20)に取り付けられた針でもよい。
【0038】
図4は、分離ステーション(22)と分注装置(20)と可動機械装置(5)とを備えたシステム(23)の概略図である。システム(23)は、粒子(8)を含む溶液(4)を有する容器(1)をさらに備える。システム(23)に設けられた制御ユニット(21)は、可動機械装置(5)と分注装置(20)を制御し、可動機械装置(5)が容器(1)の壁(6)の可撓性部分(3)に力を加えて、分注装置(20)が粒子(8)(この図では図示せず)を有する溶液(4)の一定分量を吸引するのに必要な少なくとも同じ時間だけ容器(1)内の粒子(8)(この図では図示せず)を懸濁させるように構成されている。
【0039】
図5は、検体(24)が結合された粒子(8)の概略図である。