(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
CO
2レーザ発振器が射出するレーザ光の波長は10μm程度であるのに対し、ファイバレーザ発振器またはDDL発振器が射出するレーザ光の波長は1μm程度である。よって、ファイバレーザ発振器またはDDL発振器が射出するレーザ光はビームウエストが小さく、パワー密度が高いため、板厚が薄い板材を高速で加工するのに適している。
【0006】
ファイバレーザ発振器またはDDL発振器を用いるレーザ加工機は、板材を切断したり、板材をスポット溶接したりする用途として普及している。ファイバレーザ発振器またはDDL発振器を用いるレーザ加工機を、2つの板材の端部をギャップなし、または、所定間隔のギャップを有して突き合わせて、突合せ溶接する用途としたいという要望がある。
【0007】
本発明者が、ファイバレーザ発振器またはDDL発振器を用いるレーザ加工機を用いてステンレスの板材を突合せ溶接したところ、例えばビードの始端で穴があき、加工品質が不良である事象が多く発生した。これは、ファイバレーザ発振器またはDDL発振器が射出するレーザ光はビームウエストが小さくパワー密度が高いため、小さな領域に熱エネルギが集中しやすいためと考えられる。
【0008】
よって、ファイバレーザ発振器またはDDL発振器が射出する波長が1μm帯であるレーザ光を用いて板材を良好な加工品質で突合せ溶接することは困難である。波長が1μm帯であるレーザ光を用いてステンレスの板材を良好な加工品質で突合せ溶接することができるレーザ溶接方法が求められる。
【0009】
本発明は、波長が1μm帯であるレーザ光を用いてステンレスの板材を良好な加工品質で突合せ溶接することができるレーザ溶接方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は
、波長が1μm帯であるレーザ光を用い、ステンレスの板材の板厚を、0.8mm〜2.0mmとし、一対の前記板材の端部をギャップなしで突き合わせて、前記板材に照射されるレーザ光のビームスポットのうち、前記ビームスポットの中心から前記ビームスポットの全熱エネルギのうちの3%の熱エネルギに相当する第1の面積におけるパワー密度をピークパワー密度とし、前記板材が、
前記第1の面積における前記ピークパワー密度で融解するのに要する融解時間を、
前記第1の面積のビームスポットが1つの径分だけ移動するのに要する移動時間で除した値に、板厚1.0mmを基準としたときの板厚比を乗じたものを第1の指標とし、
前記ビームスポットの中心から前記ビームスポットの全熱エネルギのうちの86%の熱エネルギに相当する第2の面積におけるパワー密度を平均パワー密度とし、前記板材が、前記第2の面積における
前記平均パワー密度で融解するのに要する融解時間を、
前記第2の面積のビームスポットが1つの径分だけ移動するのに要する移動時間で除した値に、前記平均パワー密度を前記ピークパワー密度で除した前記ピークパワー密度と前記平均パワー密度との比と、前記板厚比を乗じたものを第2の指標とし、
前記平均パワー密度を前記ピークパワー密度で除した前記ピークパワー密度と前記平均パワー密度との比を50%以上、前記第1の指標を0.82%以下、前記第2の指標を0.25%以下とする条件で、前記一対の板材を突合せ溶接す
るレーザ溶接方法を提供する。
【0012】
上記のレーザ溶接方法において、前記レーザ光のビームプロファイルは、トップハット型であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のレーザ溶接方法によれば、波長が1μm帯であるレーザ光を用いてステンレスの板材を突合せ溶接することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、一実施形態のレーザ溶接方法について、添付図面を参照して説明する。本実施形態においては、波長が1μm帯であるレーザ光を射出するレーザ発振器として、ファイバレーザ発振器またはDDL発振器を用いた場合を説明する。ファイバレーザ発振器が射出するレーザ光の波長は一般的に1060nm〜1080nm、DDL発振器が射出するレーザ光の波長は一般的に910nm〜950nmである。これらの波長を1μm帯と称する。
【0016】
図1において、レーザ加工機100は、レーザ光を生成して射出するレーザ発振器11と、レーザ加工ユニット15と、レーザ光をレーザ加工ユニット15へと伝送するプロセスファイバ12とを備える。レーザ加工機100は、レーザ発振器11より射出されたレーザ光によって、板材W1及びW2を突合せ溶接する。板材W1及びW2は、ギャップなしで突き合わされているか、所定間隔のギャップを有して突き合わされていればよい。
【0017】
レーザ発振器11は、ファイバレーザ発振器またはDDL発振器である。但し、波長が1μm帯であるレーザ光を射出するレーザ発振器であれば、ファイバレーザ発振器またはDDL発振器以外であってもよい。プロセスファイバ12は、レーザ加工ユニット15に配置されたX軸及びY軸のケーブルダクト(図示せず)に沿って装着されている。
【0018】
レーザ加工ユニット15は、板材W1及びW2を載せる加工テーブル21と、加工テーブル21上でX軸方向に移動自在である門型のX軸キャリッジ22と、X軸キャリッジ22上でX軸に垂直なY軸方向に移動自在であるY軸キャリッジ23とを有する。また、レーザ加工ユニット15は、Y軸キャリッジ23に固定されたコリメータユニット29を有する。
【0019】
コリメータユニット29は、プロセスファイバ12の出力端から射出されたレーザ光を平行光化して略平行光束とするコリメートレンズ28と、略平行光束に変換されたレーザ光をX軸及びY軸に垂直なZ軸方向下方に向けて反射させるベンドミラー25とを有する。また、コリメータユニット29は、ベンドミラー25で反射したレーザ光を集光させる集光レンズ27と、加工ヘッド26とを有する。
【0020】
コリメートレンズ28、ベンドミラー25、集光レンズ27、加工ヘッド26は、予め光軸が調整された状態でコリメータユニット29内に固定されている。焦点位置を補正するために、コリメートレンズ28がX軸方向に移動するように構成されていてもよい。
【0021】
コリメータユニット29は、Y軸方向に移動自在のY軸キャリッジ23に固定され、Y軸キャリッジ23は、X軸方向に移動自在のX軸キャリッジ22に設けられている。よって、レーザ加工ユニット15は、加工ヘッド26から射出されるレーザ光を板材W1に照射する位置を、X軸方向及びY軸方向に移動させることができる。
【0022】
以上の構成によって、レーザ加工機100は、レーザ発振器11より射出されたレーザ光をプロセスファイバ12によってレーザ加工ユニット15へと伝送させ、それぞれの端部を突き合わせた板材W1及びW2の境界にレーザ光を照射して板材W1及びW2を突合せ溶接することができる。
【0023】
なお、板材W1及びW2を突合せ溶接するとき、板材W1及びW2にはシールドガスが噴射される。突き合わせ溶接におけるシールドガスの主な役割は、一般的に金属が融解しビード状に固まる過程での金属の酸化を防ぐことであり、加えて、蒸発した金属(金属蒸気)を吹き飛ばすことである。シールドガスの主成分は窒素やアルゴンガスなどである。シールドガスの噴出方法には、メインとサブに分けて複数の場所から噴出させる方法がある。なお、
図1では、シールドガスを噴射する構成については図示を省略している。
【0024】
図1に示すレーザ加工機100の代わりに、ロボット型のレーザ加工機としてもよい。
【0025】
図2は、レーザ発振器11をファイバレーザ発振器11Fで構成した場合の概略的な構成を示している。
図2において、複数のレーザダイオード110はそれぞれ波長λのレーザ光を射出する。励起コンバイナ111は、複数のレーザダイオード110より射出されたレーザ光を空間ビーム結合させる。
【0026】
励起コンバイナ111より射出されたレーザ光は、2つのファイバブラッググレーティング(FBG)112,114間のYbドープファイバ113に入射される。Ybドープファイバ113とは、コアに希土類のYb(イッテルビウム)元素が添加されたファイバである。
【0027】
Ybドープファイバ113に入射されたレーザ光は、FBG112,114間で往復を繰り返し、FBG114からは、波長λとは異なる概ね1060nm〜1080nmの波長λ’のレーザ光が射出される。FBG114から射出されたレーザ光は、フィーディングファイバ115及びビームカップラ116を介してプロセスファイバ12に入射される。ビームカップラ116は、レンズ1161,1162を有する。
【0028】
なお、プロセスファイバ12は1本の光ファイバで構成されており、板材W1及びW2に照射されるまで、プロセスファイバ12で伝送されるレーザ光が他のレーザ光と合成されることはない。
【0029】
図3は、レーザ発振器11をDDL発振器11Dで構成した場合の概略的な構成を示している。
図3において、複数のレーザダイオード117はそれぞれ互いに異なる波長λ1〜λnのレーザ光を射出する。波長λ1〜λnは、上記のように910nm〜950nmである。
【0030】
オプティカルボックス118は、複数のレーザダイオード117より射出された波長λ1〜λnのレーザ光を空間ビーム結合させる。オプティカルボックス118は、コリメートレンズ1181と、グレーティング1182と、集光レンズ1183とを有する。
【0031】
コリメートレンズ1181は、波長λ1〜λnのレーザ光を平行光化する。グレーティング1182は、平行光化されたレーザ光の方向を90度曲げ、集光レンズ1183に入射させる。集光レンズ1183は、入射されたレーザ光を集光してプロセスファイバ12に入射される。
【0032】
なお、プロセスファイバ12は1本の光ファイバで構成されており、板材W1及びW2に照射されるまで、プロセスファイバ12で伝送されるレーザ光が他のレーザ光と合成されることはない。
【0033】
次に、波長が1μm帯であるレーザ光を用いて、板材W1及びW2を良好な加工品質で突合せ溶接するためにはどのようにすればよいかを考察する。
【0034】
図4(a)は、ギャップなしで突き合わせた板材W1及びW2を側面から見て、レーザ光が照射される状態を概念的に示している。レーザ光は板材W1及びW2の表面に照射されて入熱される。
図4(b)は、所定間隔のギャップを有して突き合わせた板材W1及びW2を側面から見て、レーザ光が照射される状態を概念的に示している。レーザ光は板材W1及びW2の表面及び側面に照射されて入熱される。
【0035】
従って、
図4(a)に示すギャップなし突合せ溶接と、
図4(b)に示すギャップあり突合せ溶接とで、加工品質よく溶接するための条件は異なる。本実施形態においては、ステンレスの板材としてSUS304を用い、板厚0.8mm、1.0mm、1.5mm、2.0mmの板材をギャップなし突合せ溶接及びギャップあり突合せ溶接して、加工品質が良好であるか不良であるかを検証した。
【0036】
突合せ溶接の加工品質が良好とするには、板材W1及びW2の裏面に裏波ビードが形成されることが必要である。板材W1及びW2に穴が形成されず、表面から裏面まで金属が溶融して裏面に裏波ビードが形成される状態を加工品質が良好であるとする。
【0037】
板材W1及びW2が溶接されるには、ステンレスの溶融池ができること、及び、キーホールができることが必要である。溶融池の形成には、主にビームスポットの平均パワー密度が寄与する。キーホールの形成には、主にビームスポットのピークパワー密度が寄与する。
【0038】
図5(a)は、ギャップなし突合せ溶接において、板材W1及びW2の突合せ箇所にビームスポットBsが位置している状態を示している。ビームスポットBsの面積のうち、実際に材料の溶融に寄与するのは、ビームスポットBsの中心から全熱エネルギのうちのほぼ86%の熱エネルギに相当する面積である。86%の部分のビームスポットBsをビームスポットBs86と称することとする。ビームスポットBsの平均パワー密度とは、ビームスポットBs86の平均パワー密度である。
【0039】
ビームスポットBsのうちのピークとなっている部分は、ビームスポットBsの面積のうち、ビームスポットBsの中心から全熱エネルギのうちのほぼ3%の熱エネルギに相当する面積である。ピークとなっている部分をピークBs03と称することとする。ピークパワー密度とは、ピークBs03の平均パワー密度である。
【0040】
図5(b)は、ギャップあり突合せ溶接において、板材W1及びW2の突合せ箇所にビームスポットBsが位置している状態を示している。ギャップあり突合せ溶接においては、ピークBs03はギャップ内に位置しており、板材W1及びW2の溶融にさほど寄与しない。そこで、ギャップあり突合せ溶接においては、ピークBs03とは異なる部分の密度をピークパワー密度とみなす必要がある。
【0041】
図6は、ギャップの間隔が0.4mmのとき、板材W1及びW2の突合せ箇所にビームスポットBsが位置している状態を示している。ギャップの間隔が0.4mmのとき、ビームスポットBsの面積のうち、ビームスポットBsの中心から全熱エネルギのうちのほぼ45%の熱エネルギに相当する面積の円が板材W1及びW2に当接している。45%の部分のビームスポットBsをビームスポットBs45と称することとする。
【0042】
ビームスポットBs45の外周のうち、2%が板材W1の端部を溶融するのに寄与し、2%が板材W2の端部を溶融するのに寄与するとみなす。ビームスポットBs45の外周の2%の部分を円弧C4502とする。板材W1及びW2の板厚をthとすると、
図7に示すように、2×C4502×thの面積が、板材W1及びW2を溶融するのに寄与する。2×C4502×thの面積によって入熱されるパワーの密度を、ギャップあり突合せ溶接におけるピークパワー密度とみなすことができる。
【0043】
図示を省略するが、ギャップの間隔が0.1mm,0.2mm,0.3mmのとき、それぞれ、ビームスポットBsの中心からほぼ3%,11%,25%の熱エネルギに相当する面積の円が板材W1及びW2に当接する。よって、ギャップが0.1mm,0.2mm,0.3mmのとき、それぞれ、3%,11%,25%の熱エネルギに相当する面積の円の外周の2×2%×thの面積が、板材W1及びW2を溶融するのに寄与する。
【0044】
ギャップの間隔が0.1mm,0.2mm,0.3mmのときも同様に、それぞれ、3%,11%,25%の熱エネルギに相当する面積の円の外周の2×2%×thの面積によって入熱されるパワーの密度がピークパワー密度となる。
【0045】
図6において、板材W1及びW2を溶融するのに寄与するビームスポットBsの平均パワー密度は、本来であれば、ビームスポットBs86のうち、板材W1及びW2の表面に照射されている部分であるハッチングを付した部分の平均パワー密度である。ハッチングを付した部分の平均パワー密度を算出するのは計算が煩雑となる。そこで、ギャップが0.4mmのときを例とすれば、ビームスポットBs86からビームスポットBs45を除いた部分の平均パワー密度を、ギャップあり突合せ溶接におけるビームスポットBsの平均パワー密度とする。
【0046】
勿論、ビームスポットBs86のうちのハッチングを付した部分の平均パワー密度を求めてもよい。ビームスポットBs86からビームスポットBs45を除いた部分の平均パワー密度と、ハッチングを付した部分の平均パワー密度とは大差はないため、ビームスポットBs86からビームスポットBs45を除いた部分の平均パワー密度を、ハッチングを付した部分の平均パワー密度とみなすことができる。
【0047】
図8は、ギャップなし突合せ溶接において、ビームスポットBs86がビームスポットBs86の1つの径分だけ移動する状態を示している。ビームスポットBs86が1つの径分だけ移動するとき、ステンレスが溶融する準備となる加熱があり、ピークBs03が到達する直前で表面側に溶融池ができ、ピークBs03が到達するとキーホールができる。
【0048】
ピークBs03が通り過ぎると裏面側に溶融池ができ、ビームスポットBs86が通過すると裏波ビードとなって溶融したステンレスが固まる。
【0049】
図9は、ギャップあり突合せ溶接において、ビームスポットBs86がビームスポットBs86の1つの径分だけ移動する状態を示している。ここでも、ギャップが0.4mmである場合を例とする。
図9においては、
図7で説明した2×C4502×thの面積の部分が到達する直前で表面側に溶融池ができ、その部分が到達するとキーホールができる。その部分が通り過ぎると裏面側に溶融池ができ、ビームスポットBs86が通過すると裏波ビードとなって溶融したステンレスが固まる。
【0050】
ここで、ステンレス(SUS304)の融解温度は1400〜1450℃である。SUS304はAISI規格の304またはUNS規格の30400に相当し、いわゆる18-8ステンレスとも称する。SUS304は、含有する化学成分が炭素(C)、ケイ素(Si)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)であって、Niが8重量%以上でCrが18重量%以上であるステンレス鋼である。ステンレスの種類が異なれば含有する化学成分が異なり、その性質も変化するが、同時に融解温度域も変化する。ステンレスが融解するのに要する時間tは次の式(1)で表される。
【0052】
式(1)において、cは比熱(J/kg・℃)、ρは密度(kg/m
3)、λは熱伝導度(W/m・℃)、Aは吸収率(%)、Pdはパワー密度(W/m
2)、Tは融解温度(℃)、T0は入熱前の温度(℃)である。これらにおいて、摂氏℃の代わりにケルビンKであってもよい。なお、ステンレス鋼へのレーザ光による入熱は材料の表層面から伝導されるものとする。
【0053】
ステンレスは、入熱しすぎると放熱に時間がかかりすぎて穴があいてしまう。入熱が足りなければ溶融池やキーホールは形成されない。そこで、ビームスポットBs86が
図8のように移動するとき、
ピークBs03が1つの径分だけ移動するのに要する移動時間あたりの、ピークBs03におけるパワー密度(ピークパワー密度)での融解時間は、加工品質が良好な突合せ溶接を実現する上で重要な要素となる。
【0054】
同様に、ビームスポットBs86が
図9のように移動するとき、ビームスポットBs86が1つの径分だけ移動するのに要する移動時間あたりの、2×C4502×thの面積の部分におけるパワー密度(ピークパワー密度)での融解時間は、加工品質が良好な突合せ溶接を実現する上で重要な要素となる。
【0055】
図8及び
図9において、(ピークパワー密度での融解時間)/(
ピークBs03が1つの径分だけ移動するのに要する移動時間)を式(2)とする。(平均パワー密度での融解時間)/(ビームスポットBs86が1つの径分だけ移動するのに要する移動時間)を式(3)とする。式(2)におけるピークパワー密度と、式(3)における平均パワー密度の定義は前述のとおりである。
【0056】
まず、DDL発振器11Dを用いる場合について説明する。DDL発振器11Dが射出するレーザ光のビームプロファイルはトップハット型である。
【0057】
ギャップなし突合せ溶接においては、式(2)に板厚比を乗じたものを指標1とする。板厚比とは、板厚1.0mmを基準とし、板厚0.8mmであれば板厚比は0.8、板厚1.5あれば板厚比は1.5である。また、式(3)に、ピークパワー密度(ピークPd)と平均パワー密度(平均Pd)との比と、板厚比を乗じたものを指標2とする。ピークPdと平均Pdとの比とは、平均PdをピークPdで除した値である。
【0058】
ギャップあり突合せ溶接において、式(2)に、(2×2%×thの面積)/(ビームスポットBs86の面積)の平方根を乗じたものを指標1とする。(2×2%×thの面積)/(ビームスポットBs86の面積)の平方根を面積比と称することとする。また、式(3)に、ピークPdと平均Pdとの比と、面積比を乗じたものを指標2とする。
【0059】
図10は、板材W1及びW2の板厚0.8mm、1.0mm、1.5mm、2.0mmとし、ギャップ0mm,0.1mm,0.2mm,0.3mm,0.4mmのそれぞれにおける次の事項と、加工品質が良好であるのか不良であるのかの判定結果を示している。
図10においては、指標1及び2と、ビームスポットBs86の径とギャップの間隔との比と、ピークPdと平均Pdとの比を示している。
【0060】
本発明者による加工品質が良好であるのか不良であるのかの検証の結果、
図10に示すように、ハッチングを付していない箇所が、加工品質が良好であり、ハッチングを付した箇所が、加工品質が不良であることが判明した。
【0061】
図10より、ギャップあり突合せ溶接において、ギャップの間隔をビームスポットBs86の径で除したビームスポットBs86の径とギャップとの比は、60%未満であることが必要である。ギャップなし突合せ溶接においては、ビームスポットBs86の径とギャップとの比は0%であり、60%未満である。ギャップなし突合せ溶接及びギャップあり突合せ溶接のいずれにおいても、ピークPdと平均Pdとの比は、50%以上であることが必要である。
【0062】
ギャップなし突合せ溶接においては、指標1が0.82%以下であり、指標2が0.25%以下であることが必要である。ギャップあり突合せ溶接においては、指標1が0.82%以下であり、指標2が0.19%以下であることが必要である。
【0063】
次に、ファイバレーザ発振器11Fを用いる場合について説明する。ファイバレーザ発振器11Fが射出するレーザ光のビームプロファイルはガウシアンビーム型である。
図11は、
図10と同様の検証結果を示している。
【0064】
図11より、ギャップあり突合せ溶接において、ギャップの間隔をビームスポットBs86の径で除したビームスポットBs86の径とギャップとの比は、60%未満であることが必要である。ギャップなし突合せ溶接においては、ビームスポットBs86の径とギャップとの比は0%であり、60%未満である。ギャップなし突合せ溶接及びギャップあり突合せ溶接のいずれにおいても、ピークPdと平均Pdとの比は50%未満であり、正の値であることが必要である。
【0065】
ギャップなし突合せ溶接においては、指標1が0.70%以下であり、指標2が0.58%以下であることが必要である。ギャップあり突合せ溶接においては、指標1が0.70%以下であり、指標2が0.69%以下(但し、負は不可)であることが必要である。
【0066】
ところで、ファイバレーザ発振器11Fを用いる場合であっても、ビームシェイパを用いることによって、ファイバレーザ発振器11Fが射出するレーザ光のビームプロファイルを、DDL発振器11Dが射出するレーザ光と同様のトップハット型とすることができる。
【0067】
この場合には、ファイバレーザ発振器11Fを用いても、
図10に示す条件が、良好な加工品質を実現するための条件となる。
【0068】
本発明は以上説明した本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。