(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6684588
(24)【登録日】2020年4月1日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】メトキシフラボンを含有する飲料
(51)【国際特許分類】
A23L 2/00 20060101AFI20200413BHJP
A23L 2/38 20060101ALI20200413BHJP
C12G 3/00 20190101ALI20200413BHJP
【FI】
A23L2/00 B
A23L2/38 C
C12G3/00
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-252795(P2015-252795)
(22)【出願日】2015年12月25日
(65)【公開番号】特開2017-112924(P2017-112924A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年7月31日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】中尾 優希
(72)【発明者】
【氏名】松林 秀貴
【審査官】
北村 悠美子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−192513(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/100111(WO,A1)
【文献】
特開2009−051790(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/170681(WO,A1)
【文献】
特開2009−148268(JP,A)
【文献】
特開平06−335362(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00−2/84
A23F 2/3/00−5/50
C12G 1/00−3/08
A23L 33/00−33/29
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/FSTA/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
(式中、R
1、R
4、及びR
5は、各々独立して水素原子又はメトキシ基であり、R
2は
ヒドロキシ基又はメトキシ基であり、R
3はメトキシ基である)で表される構造を有する
少なくとも1種のメトキシフラボンと、エタノール及び/又はプロピレングリコールとを
含む、飲料であって、
当該飲料中の当該メトキシフラボンの総含有量が15mg/100ml以下であり、
当該飲料がエタノールを含有する場合には、エタノールの含有量が0.01〜1重量%で
あり、
当該メトキシフラボンの総含有量とエタノールの含有量との重量比(メトキシフラボン総含有量/エタノール含有量)が0.003〜1.5であり、
当該飲料がプロピレングリコールを含有する場合には、プロピレングリコールの含有量が
0.01〜1重量%であ
り、当該メトキシフラボンの総含有量とプロピレングリコールの含有量との重量比(メトキシフラボン総含有量/プロピレングリコール含有量)が0.003〜1.5である、前記飲料。
【請求項2】
前記少なくとも1種のメトキシフラボンが、5,7,3’,4’−テトラメトキシフラ
ボン、3,5,7,3’,4’−ペンタメトキシフラボン、5,7−ジメトキシフラボン
、5,7,4’−トリメトキシフラボン、3,5,7−トリメトキシフラボン、3,5,
7,4’−テトラメトキシフラボン、5−ヒドロキシ−3,7,3’,4’−テトラメト
キシフラボン、5−ヒドロキシ−7−メトキシフラボン、5−ヒドロキシ−7,4’−ジ
メトキシフラボン、5−ヒドロキシ−3,7−ジメトキシフラボン、及び5−ヒドロキシ
−3,7,4’−トリメトキシフラボンからなる群から選択される、請求項1に記載の飲
料。
【請求項3】
エタノールとプロピレングリコールとの重量比([エタノール]/[プロピレングリコ
ール])が0.01〜100である、請求項1又は2に記載の飲料。
【請求項4】
前記飲料が透明な飲料である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の飲料。
【請求項5】
式(I)
【化2】
(式中、R
1、R
4、及びR
5は、各々独立して水素原子又はメトキシ基であり、R
2は
ヒドロキシ基又はメトキシ基であり、R
3はメトキシ基である)で表される構造を有する
少なくとも1種のメトキシフラボンを含有する飲料の香味を改善する方法であって、
当該飲料中のメトキシフラボン総含有量が15mg/100ml以下となるように当該メトキシフラボンを飲料に配合する工程と、
当該飲料中のエタノール含有量が0.01〜1重量%とな
り、当該メトキシフラボンの総含有量とエタノールの含有量との重量比(メトキシフラボン総含有量/エタノール含有量)が0.003〜1.5となるように、及び/又は
当該飲料中のプロピレングリコール含有量が0.01〜1重量%とな
り、当該メトキシフラボンの総含有量とプロピレングリコールの含有量との重量比(メトキシフラボン総含有量/プロピレングリコール含有量)が0.003〜1.5となるように、
当該飲料にエタノール及び/又はプロピレングリコールを配合する工程
とを含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の構造を有するメトキシフラボンと、エタノール及び/又はプロピレングリコールとを含有する飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
黒ショウガ(Kaempferia parviflora)は、ショウガ科に属する植物の一種であり、日本では黒ウコンとも呼ばれている。黒ショウガは東南アジアを中心に自生しており、タイではクラチャイダム(Kra chai dahm)とも呼ばれる伝統的なハーブの一種である。
【0003】
黒ショウガに含まれる主な成分は、アントシアニジンやメトキシフラボノイドを中心とするポリフェノール類であることがこれまでの研究で明らかにされており、ショウガに含まれるジンゲオールやショウガオール、ウコンに含まれるクルクミンは含まれていない。また、その効能としては抗肥満作用、血流改善作用など、様々なものが知られており、黒ショウガは、わが国においてもサプリメントや飲料に広く利用されている。それらの効能をもたらす成分は、特定の構造を有するメトキシフラボンであると考えられている。
【0004】
黒ショウガからメトキシフラボンを抽出する方法が知られている。例えば、特許文献1には、主に熱水又は含水アルコール抽出によってメトキシフラボン抽出物を製造する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−192513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した通り、黒ショウガ抽出物に含まれる特定の構造を有するメトキシフラボンは抗肥満作用や血流改善作用などを有する非常に有用な素材である。しかしながら、これらのメトキシフラボンを含有する飲料には香味の問題がある。具体的には、前記メトキシフラボンを含有する飲料は、紫外線等の光が照射されると樹脂臭味等の異味を生じることがある。
【0007】
本発明の課題は、当該メトキシフラボンを含有しながらも飲みやすい飲料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、かかる課題について鋭意検討した結果、当該特定の構造を有するメトキシフラボンを含有する飲料に、エタノール及び/又はプロピレングリコールを配合すると、好ましくない香味(具体的には、光照射によって生じる樹脂臭味)を抑制できることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は以下のものに関するが、これらに限定されない。
1.式(I)
【0010】
【化1】
【0011】
(式中、R
1、R
4、及びR
5は、各々独立して水素原子又はメトキシ基であり、R
2はヒドロキシ基又はメトキシ基であり、R
3はメトキシ基である)で表される構造を有する少なくとも1種のメトキシフラボンと、エタノール及び/又はプロピレングリコールとを含む、飲料。
2.前記少なくとも1種のメトキシフラボンが、5,7,3’,4’−テトラメトキシフラボン、3,5,7,3’,4’−ペンタメトキシフラボン、5,7−ジメトキシフラボン、5,7,4’−トリメトキシフラボン、3,5,7−トリメトキシフラボン、3,5,7,4’−テトラメトキシフラボン、5−ヒドロキシ−3,7,3’,4’−テトラメトキシフラボン、5−ヒドロキシ−7−メトキシフラボン、5−ヒドロキシ−7,4’−ジメトキシフラボン、5−ヒドロキシ−3,7−ジメトキシフラボン、及び5−ヒドロキシ−3,7,4’−トリメトキシフラボンからなる群から選択される、1に記載の飲料。
3.前記メトキシフラボンの総含有量が3.0〜50mg/100mLである、1又は2に記載の飲料。
4.エタノールを0.001〜1.5重量%含む、1〜3のいずれか1項に記載の飲料。
5.プロピレングリコールを0.001〜1.5重量%含む、1〜4のいずれか1項に記載の飲料。
6.前記メトキシフラボンの総含有量とエタノールの含有量との重量比(メトキシフラボン総含有量/エタノール含有量)が0.001〜20である、1〜5のいずれか1項に記載の飲料。
7.前記メトキシフラボンの総含有量とプロピレングリコールの含有量との重量比(メトキシフラボン総含有量/プロピレングリコール含有量)が0.001〜20である、1〜6のいずれか1項に記載の飲料。
8.エタノールとプロピレングリコールとの重量比([エタノール]/[プロピレングリコール])が0.01〜100である、1〜7のいずれか1項に記載の飲料。
9.前記飲料が透明な飲料である、1〜8のいずれか1項に記載の飲料。
10.式(I)
【0012】
【化2】
【0013】
(式中、R
1、R
4、及びR
5は、各々独立して水素原子又はメトキシ基であり、R
2はヒドロキシ基又はメトキシ基であり、R
3はメトキシ基である)で表される構造を有する少なくとも1種のメトキシフラボンを含有する飲料の香味を改善する方法であって、
当該飲料にエタノール及び/又はプロピレングリコールを配合する工程を含む、前記方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、特定の構造を有するメトキシフラボンを含有する飲料の香味を改善することができる。例えば、当該飲料から紫外線等の光によって生成する樹脂臭味を抑制又は改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、特定の構造を有するメトキシフラボンと、エタノール及び/又はプロピレングリコールとを含有する飲料に関する。
【0016】
(メトキシフラボン)
本発明の飲料は、式(I)
【0018】
(式中、R
1、R
4、及びR
5は、各々独立して水素原子又はメトキシ基であり、R
2はヒドロキシ基又はメトキシ基であり、R
3はメトキシ基である)で表される構造を有する少なくとも1種のメトキシフラボンを含有する。
【0019】
好ましくは、式(I)の化合物は、以下の表1に記載の5,7,3’,4’−テトラメトキシフラボン、3,5,7,3’,4’−ペンタメトキシフラボン、5,7−ジメトキシフラボン、5,7,4’−トリメトキシフラボン、3,5,7−トリメトキシフラボン、3,5,7,4’−テトラメトキシフラボン、5−ヒドロキシ−3,7,3’,4’−テトラメトキシフラボン、5−ヒドロキシ−7−メトキシフラボン、5−ヒドロキシ−7,4’−ジメトキシフラボン、5−ヒドロキシ−3,7−ジメトキシフラボン、及び5−ヒドロキシ−3,7,4’−トリメトキシフラボンから選択される。
【0021】
本発明の飲料は、好ましくは、上記表1に示された化合物1〜11の内の、少なくとも1種を含む。当該飲料は、化合物1〜11の内の、より好ましくは少なくとも2種、より好ましくは少なくとも3種、より好ましくは少なくとも4種、より好ましくは少なくとも5種、より好ましくは少なくとも6種、より好ましくは少なくとも7種、より好ましくは少なくとも8種、より好ましくは少なくとも9種、より好ましくは少なくとも10種、より好ましくは11種を含む。
【0022】
本発明の飲料における当該メトキシフラボンの総含有量は、典型的には3.0〜50mg/100mL、3.0〜30mg/100mL、又は3.0〜15mg/100mLである。メトキシフラボンの含有量は、例えば、飲料製造時に使用する当該メトキシフラボン又はそれを含む原料の量を制御することにより調整することができる。
【0023】
当該メトキシフラボンは黒ショウガの特徴的な成分であると考えられ、典型的には、黒ショウガから抽出等により得ることができるが、その由来は特に限定されない。
【0024】
黒ショウガ(Kaempferia parviflora)は、ショウガ科に属する植物の一種であり、東南アジアを中心に自生もしくは栽培されているため、容易に入手できる。抽出のためには、黒ショウガのどの部位を用いてもよい。例えば、葉部、花部、根茎部などが挙げられるが、これらの中でも、根茎部が好ましい。
【0025】
黒ショウガからメトキシフラボンを抽出する方法は、例えば、特許文献1に記載されている。また、本発明においては、黒ショウガから、式(I)のメトキシフラボンを含む油脂抽出物を得て利用することもできる。当該抽出物は、メトキシフラボンを含有し、そして黒ショウガ抽出物に特有の黒紫色の強度が低減されているので好ましい。油脂抽出物の典型的な製造方法を以下に簡単に記載する。
【0026】
先ず、黒ショウガの植物体を準備する。当該植物体又はその部位を、必要に応じて、乾燥し、粉砕する。次いで、当該植物体又はその部位を、中鎖脂肪酸トリグリセリド等の油脂と接触させて、抽出を行う。抽出条件は、メトキシフラボンを抽出できる限り特に限定されない。使用される油脂の容量は、典型的には、黒ショウガの重量の0.1〜30倍、又は0.5〜15倍である。
【0027】
次いで、抽出を行った後には、必要に応じて、当該抽出により得られた油脂含有抽出物から濾過又は遠心分離により不溶性固形物を除く。得られた抽出物は、さらなる精製をすることなく使用してもよいが、必要に応じて精製してもよい。例えば、当該油脂含有抽出物をさらなる抽出工程に付して、油脂を除去してもよい。具体的には、当該油脂含有抽出物に、水、親水性溶媒、又はそれらの混合物を接触させて、1種以上のメトキシフラボンを抽出する。油脂から分離された抽出物は、メトキシフラボンを含み、そして溶媒を含む液の形態にある。この液をそのまま飲料の成分として利用してもよいし、溶媒を除去して、メトキシフラボンを含む粉末形態の抽出物を得て、それを利用してもよい。
【0028】
(エタノール、プロピレングリコール)
本発明の飲料は、エタノール及び/又はプロピレングリコールを含有する。本発明の飲料におけるエタノールの含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.001〜1.5重量%であり、より好ましくは0.01〜1.5重量%であり、より好ましくは0.01〜1重量%、より好ましくは0.01〜0.5重量%である。また、本発明の飲料におけるプロピレングリコールの含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.001〜1.5重量%であり、より好ましくは0.01〜1.5重量%であり、より好ましくは0.01〜1重量%、より好ましくは0.01〜0.5重量%である。本明細書において「重量%」とは、特に断りのない限り、重量/容量(w/v)の重量%を意味する。
【0029】
本発明の飲料における前記メトキシフラボンの総含有量とエタノールの含有量との重量比(メトキシフラボン総含有量/エタノール含有量)は、特に限定されないが、好ましくはが0.001〜20であり、より好ましくはが0.001〜2.0であり、より好ましくは0.003〜1.5であり、より好ましくは0.006〜0.75である。また、本発明の飲料における前記メトキシフラボンの総含有量とプロピレングリコールの含有量との重量比(メトキシフラボン総含有量/プロピレングリコール含有量)は、特に限定されないが、好ましくはが0.001〜20であり、より好ましくはが0.001〜2.0であり、より好ましくは0.003〜1.5であり、より好ましくは0.006〜0.75である。
【0030】
エタノール及びプロピレングリコールは、その重量比([エタノール]/[プロピレングリコール])が0.01〜100となるように含有させることができる。また、その重量比は、好ましくは0.02〜50、より好ましくは0.1〜10である。
【0031】
飲料中のエタノール及びプロピレングリコールの含有量は、当業者に公知の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等を利用して測定することができる。
【0032】
本発明は、別の観点からは、前記メトキシフラボンを含有する飲料の香味を改善する方法であって、当該飲料にエタノール及び/又はプロピレングリコールを配合する工程を含む方法に関する。
【0033】
(飲料)
本発明の飲料における飲料の種類は特に限定されず、炭酸飲料、非炭酸飲料、アルコール飲料、非アルコール飲料、スポーツ飲料、栄養飲料、機能性飲料、ニアウォーター系飲料などいずれであってもよい。
【0034】
本発明の飲料は、透明な飲料であることが好ましい。「透明な飲料」とは、いわゆるスポーツドリンクのような白濁や、混濁果汁のような濁りがなく、水のように視覚的に透明な飲料であることをいう。飲料の透明度は、例えば、液体の濁度を測定する公知の手法を用いることにより、数値化することができる。例えば、紫外可視分光光度計(UV−1600(株式会社島津製作所製)など)を用いて測定した波長660nmにおける吸光度が、0.06以下であるものを「透明」と呼ぶことができる。
【0035】
飲料の色は特に限定されず、上述の透明さを保持していれば、有色であってもかまわない。飲料の色は、例えば、物体の色差を測定する公知の手法を用いることによって数値化することができる。例えば、測色色差計(ZE2000(日本電色工業株式会社製)など)を用いて純水を基準として測定した際の透過光のΔE値が3.5以下である場合を「無色」と呼ぶことができる。好ましくは、ΔE値は2.3以下である。
【0036】
本発明の飲料は、上記に示した各種成分のほか、飲料の種類に応じて、各種添加剤等が配合されていてもよい。各種添加剤としては、例えば、上記以外の糖類等の甘味料、酸味料、香料、ビタミン、色素類、酸化防止剤、乳化剤、保存料、エキス類、食物繊維、pH調整剤、品質安定剤等が挙げられる。
【0037】
本発明の飲料は、上述した成分を適宜配合することにより製造することができる。また、本発明の飲料は、必要に応じて殺菌等の工程を経て、容器詰め飲料とされる。例えば、飲料を容器に充填した後に加熱殺菌等を行う方法や、飲料を殺菌してから無菌環境下で容器に充填する方法により、殺菌された容器詰め飲料を製造することができる。
【0038】
容器の種類は特に限定されず、PETボトル、缶、瓶、紙パックなどを挙げることができる。なかでも、無色透明な容器、例えばPETボトルや瓶は、容器中の飲料の色味が外部から視認しやすく、飲料が透明であればその外観を容器詰めの状態で確認できることから、好ましいといえる。
【0039】
(数値範囲)
明確化のために記載すると、本明細書において下限値と上限値によって表されている数値範囲、即ち「下限値〜上限値」は、それら下限値及び上限値を含む。例えば、「1〜2」により表される範囲は、1及び2を含む。
【実施例】
【0040】
以下に実施例に基づいて本発明の説明をするが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0041】
(1)エタノール添加の検討
黒ショウガ抽出物としてブラックジンジャーエキス末D(丸善製薬社)を用いて、評価用の飲料(サンプル1〜18)を作製した。具体的には、前記黒ショウガ抽出物及びエタノール(ナカライテスク社)を、ポリメトキシフラボン(PMF)の総含有量(本発明のメトキシフラボンの総含有量)及びエタノールの含有量が下記の表1に記載の量(濃度)となるように水に溶解して、合計100mLの各飲料を調製した。尚、前記黒ショウガ抽出物にはポリメトキシフラボンが10%(w/w)含まれているものとして、PMFの量を計算した。
【0042】
調製した飲料はいずれも無色透明であることを目視にて確認した。その後、各飲料を無色透明のPET容器に充填し、7.5kW スーパーキセノンウェザーメーター(スガ試験機株式会社)を用いて180Wh/m
2で紫外線を2時間20分照射した。
【0043】
紫外線照射後の各飲料について、十分に訓練を受けた3名の専門パネリストにより、香味の官能評価を行った。評価を行った際の各飲料の温度は約20℃とした。香味については、樹脂様の味(樹脂臭味)の観点から主に評価した。具体的には、下記の通りとした。3点以上が合格である。
1点:樹脂様の味わいが強い、又はエタノールが強すぎる。
2点:樹脂様の味わいを感じる、又はエタノールをやや感じる。
3点:樹脂様の味わいをやや感じる。
4点:樹脂様の味わいをほぼ感じない。
5点:樹脂様の味わいを感じない。
【0044】
その結果を表2に示す。エタノールは、黒ショウガ抽出物に含まれるメトキシフラボンを含有する飲料において香味を改善できることが明らかとなった。
【0045】
【表2】
【0046】
(2)プロピレングリコール添加の検討
エタノールに代えてプロピレングリコール(ナカライテスク社)を用いる点を除いて前記(1)と同様にして、合計100mLの飲料(サンプル19〜36)を調製した。配合は下記の表2に記載のとおりである。調製した飲料はいずれも無色透明であることを目視にて確認した。その後、各飲料を無色透明のPET容器に充填し、7.5kW スーパーキセノンウェザーメーター(スガ試験機株式会社)を用いて180Wh/m
2で紫外線を2時間20分照射した。
【0047】
紫外線照射後の各飲料について、上記と同様の方法により香味の官能評価を行った。官能評価の基準は、(1)に記載されたものにおける「エタノール」を「プロピレングリコール」に読み替えて用いた。
【0048】
その結果を表3に示す。プロピレングリコールも、黒ショウガ抽出物に含まれるメトキシフラボンを含有する飲料において香味を改善できることが明らかとなった。
【0049】
【表3】