(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6684600
(24)【登録日】2020年4月1日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】車両の運転支援システム
(51)【国際特許分類】
E21D 11/40 20060101AFI20200413BHJP
E21F 13/02 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
E21D11/40 B
E21F13/02
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-10508(P2016-10508)
(22)【出願日】2016年1月22日
(65)【公開番号】特開2017-128975(P2017-128975A)
(43)【公開日】2017年7月27日
【審査請求日】2018年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(73)【特許権者】
【識別番号】591135440
【氏名又は名称】日本通運株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】野口 宏治
(72)【発明者】
【氏名】谷口 哲也
(72)【発明者】
【氏名】中野 進
【審査官】
荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−182608(JP,A)
【文献】
特開2008−075306(JP,A)
【文献】
特開2010−086031(JP,A)
【文献】
特開平10−184293(JP,A)
【文献】
特開2015−113230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 1/00−19/06
E21D 23/00−23/26
E21F 1/00−17/18
H04N 7/18
G08G 1/00−99/00
G05D 1/00−1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が走行する走行領域内に前記車両の走行不可領域が存在する環境下で前記車両の運転を支援する車両の運転支援システムであって、
前記走行領域内において前記走行不可領域を回避するように、前記車両を直進あるいは向きを変えながら走行させるシミュレーションにより表される前記車両の走行軌跡に基づいて前記走行領域の路面に設けられた走行経路と、
前記車両に設けられ、前記車両が走行方向を変えながら走行する際の当該車両の回転中心となる位置を含む前記走行領域の路面を撮影する撮影ユニットと、
前記車両の運転席から視認できるように設けられ、前記撮影ユニットによって撮影された前記走行領域の路面を表示すると共に、前記車両の回転中心を表示する表示ユニットと、を備えている
ことを特徴とする車両の運転支援システム。
【請求項2】
車両が走行する走行領域内に前記車両の走行不可領域が存在する環境下で前記車両の運転を支援する車両の運転支援システムであって、
前記車両の走行軌跡に基づいて前記走行領域の路面に設けられた走行経路と、
前記車両に設けられ、前記車両が走行方向を変えながら走行する際の当該車両の回転中心となる位置を含む前記走行領域の路面を撮影する撮影ユニットと、
前記車両の運転席から視認できるように設けられ、前記撮影ユニットによって撮影された前記走行領域の路面を表示すると共に、前記車両の回転中心を表示する表示ユニットと、
前記車両に設けられ、前記車両の前記回転中心となる位置を光の照射によって指し示す中心位置指示装置と、を備えている
ことを特徴とする車両の運転支援システム。
【請求項3】
前記車両は、走行方向における前後の位置に運転部を備えている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両の運転支援システム。
【請求項4】
前記撮影ユニットは、前記車両の前記回転中心となる位置の走行方向における前後にそれぞれ設置されている
ことを特徴とする請求項1〜3のうち何れか1項に記載の車両の運転支援システム。
【請求項5】
前記表示ユニットは、前記撮影ユニットに対応して複数設置されている
ことを特徴とする請求項4に記載の車両の運転支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転支援システムに関し、例えばシールドトンネル内のように狭小な走行領域における搬送車両の運転を支援するのに好適なシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、シールドトンネルは、シールド機により地盤を掘削し、掘削内周面にセグメントを順次組み立てて周方向に接続しながら掘削の進行方向に連結することで覆工体を構築すると共に、その形成した覆工体から推進反力を得てシールド機により掘進作業を進めるシールド工法等により施工される。
【0003】
そして、このシールド工法では、シールド機の外殻体の内部でセグメントの組立て作業を行うため、セグメントをシールドトンネル内を経て、シールド機の後方に連結された後方設備まで搬送供給する必要がある。従来は、セグメントを、構築済みの覆工体内に敷設されたレール上を走行する搬送車両の台車に積載して、後方設備まで搬送するのが一般的であった。
【0004】
ところが、このような従来の搬送方法では、レールの敷設が必須となり、その敷設作業やメンテナンス等に多大な時間と費用を要する問題があった。そこで、近年、例えば特許文献1に記載されるように、シールドトンネル内において、タイヤ式の搬送車両を用いてセグメントを搬送する手法が提案され、実現されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−52289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、シールドトンネル内は空間に限りがあるため、セグメントを搬送するような大型の搬送車両にとっては狭小な走行領域となる上、当該走行領域に搬送車両の走行に支障を来たす各種障害物が点在している場合がある。従って、このような狭い走行領域において障害物を避けて安全・確実に搬送車両を運転するには、優れた技量を有し、経験に長けている熟練の運転者による目視確認や車両に搭載された接触防止装置などに頼らねばならなかった。この接触防止装置は、一般的なバックソナーのようなものであり、車両が物体に対して所定の距離以下に接近したことを検知すると、それを警告音や警告灯などによって警報するものである。
【0007】
しかしながら、こうした熟練の運転者に頼ることにより運転者が固定化され、その交代要員も限定されてしまう虞があった。また、熟練の運転者をもってしても、狭い走行領域においては正確に目視確認することが難しいと共に、運転者からは車両後方の視界を良好な状態で確保することが困難であるため後方の死角にも対応できず、接触防止装置に頼らざるを得なかった。加えて、車両に接触防止装置などが搭載されていても車両のどの部分が接触しそうであるのかを正確に判別するのは困難であった。しかも、セグメントの搬送効率を高めるために、セグメントを積載した複数の台車が連結された状態で走行することが通常であり、その場合、全長が大きい搬送車両を運転することになるため、障害物を回避しながら搬送車両を運転することは一層困難となる。
【0008】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたもので、車両の走行領域内にその走行を妨げる障害物等の当該車両の走行不可領域が存在する環境下であっても、当該走行不可領域を容易且つ確実に回避でき、運転者の技能や経験に関係なく、走行の安全性を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するべく、本発明に係る車両の運転支援システムは、
車両が走行する走行領域内に前記車両の走行不可領域が存在する環境下で前記車両の運転を支援する車両の運転支援システムであって、
前記走行領域内において前記走行不可領域を回避するように、前記車両を直進あるいは向きを変えながら走行させるシミュレーションにより表される前記車両の走行軌跡に基づいて前記走行領域の路面に設けられた走行経路と、
前記車両に設けられ、前記
車両が走行方向を変えながら走行する際の当該車両の回転中心となる位置を含む前記走行領域の路面を撮影する撮影ユニットと、
前記車両の運転席から視認できるように設けられ、前記撮影ユニットによって撮影された前記走行領域の路面を表示すると共に、前記車両の回転中
心を表示する表示ユニットと、を備えていることを特徴とする。
また、本発明に係る車両の運転支援システムは、
車両が走行する走行領域内に前記車両の走行不可領域が存在する環境下で前記車両の運転を支援する車両の運転支援システムであって、
前記車両の走行軌跡に基づいて前記走行領域の路面に設けられた走行経路と、
前記車両に設けられ、前記車両が走行方向を変えながら走行する際の当該車両の回転中心となる位置を含む前記走行領域の路面を撮影する撮影ユニットと、
前記車両の運転席から視認できるように設けられ、前記撮影ユニットによって撮影された前記走行領域の路面を表示すると共に、前記車両の回転中心を表示する表示ユニットと、
前記車両に設けられ、前記車両の前記回転中心となる位置を光の照射によって指し示す中心位置指示装置と、
を備えていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、運転者は、車両を走行させる際、表示ユニットに表示される走行領域の路面に設けられた走行経路と、当該表示ユニットに示される車両の回転中心となる位置とを一致させ、この状態で当該走行経路に沿って走行するように運転するだけで、車両が走行する走行領域内に当該車両の走行不可領域が存在する環境下であっても、車両と走行不可領域との間隔や走行領域における車両の走行位置等を直接的に目視確認する必要がなく、また接触防止装置等に頼ることなく、当該走行不可領域を容易且つ確実に回避でき、運転者の技能や経験に関係なく、走行の安全性を確保できる。よって、運転者が固定化されることはなく、その交代要員も限定されることはない。
【0011】
また、狭い走行領域であっても走行領域の路面に設けられた走行経路を表示ユニットで正確に目視確認でき、この走行経路と、当該表示ユニットに示される車両の回転中心とな
る位置とを一致させた状態で走行経路に沿って走行するように運転すれば良いため、車両後方の死角にも対応できる。加えて、搬送物の搬送効率を高めるために、搬送物を積載した複数の車両(台車)を連結した状態で走行する場合のように、全長が長い搬送車両であっても、走行不可領域を容易且つ確実に回避でき、運転者の技能や経験に関係なく、走行の安全性を確保できる。
更に、前記車両に設けられ、前記車両の前記回転中心となる位置を光の照射によって指し示す中心位置指示装置を更に備えるようにした場合には、運転者に対して車両の回転中心となる位置をより容易且つ正確に認識させることができ、走行経路に一致させる作業の容易化を図ることができる。
【0012】
このとき、前記車両は、走行方向における前後の位置に運転席を備えていることが好ましい。
これによれば、運転者は、車両の走行方向に応じて運転席を使い分けることにより、常に進行方向を向いて運転できるので、走行の安全性を良好な状態で維持できる。
【0013】
また、前記撮影ユニットは、前記車両の前記回転中心となる位置の走行方向における前後にそれぞれ設置されていることが好ましい。
これによれば、車両の走行方向に拘わらず、走行領域の路面を常に前後から撮影できるので、走行経路に対して車両の回転中心となる位置をより正確に一致させることができる。
【0014】
さらに、前記表示ユニットは、前記撮影ユニットに対応して複数設置されていることが好ましい。
これによれば、走行方向における前後から撮影された走行領域の路面をそれぞれ個別に表示できるため、車両の走行方向に拘わらず、常に前後から撮影された走行領域の路面を表示でき、走行経路に対して車両の回転中心となる位置をより正確に一致させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、車両の走行領域内に当該車両の走行不可領域が存在する環境下であっても、当該走行不可領域を容易且つ確実に回避でき、運転者の技能や経験に関係なく、走行の安全性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態における搬送車両を概略的に示す側面図である。
【
図2】
図1の搬送車両を走行方向の前方から見て示す正面図である。
【
図3】
図1の搬送車両が走行領域において旋回走行する際の軌跡の説明に供する概念図である。
【
図6】走行領域に設けられた走行経路を示す概念図である。
【
図7】他の実施形態における搬送車両を概略的に示す側面図である。
【
図8】
図7の搬送車両が走行領域において旋回走行する際の軌跡の説明に供する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る車両の運転支援システムの実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う車両の運転支援システムもまた本発明の技術思想に含まれる。
【0019】
図1および
図2に示すように、本実施形態において車両としてのタイヤ式の搬送車両1は、例えば、
図2にその一部を示すシールドトンネルTを構築するためのセグメントS(後述の
図7参照)を搬送するために、当該シールドトンネルTの坑内にて使用される。この搬送車両1は、
図1中矢印で示すトンネル坑内の切羽に向けた走行方向Dの前端部および後端部にそれぞれ運転席2a,3aを有する運転台2,3を備えていると共に、荷台4にセグメントSを含む搬送対象物5を積載できるようになっている。なお、本発明の車両としては搬送車両1に限るものではなく、要は走行領域K内に障害物W等の搬送車両1の走行不可領域が存在する環境下(すなわち、トンネル坑内等の地下に限らず地上も含む)で走行するものであれば、この他種々のタイヤ式車両を広く適用できることは言うまでもない(後述の
図6参照)。
【0020】
ここで、走行不可領域とは、走行領域K内に存在する障害物Wの他、狭小なトンネル坑内において、走行領域Kの周囲に存在するトンネル壁部、または照明がない真っ暗な状態で走行する等のように、搬送車両1の走行が物理的に妨げられる領域や、搬送車両1が走行する走行領域Kの周囲にガードレールが設置されることなく区画して設けられる歩行路等のように、搬送車両1の走行が理論的に禁じられる領域を含んでいる。なお、以下の実施形態では、走行領域K内に走行不可領域としての障害物Wが存在し、当該障害物Wを避けるべく搬送車両1が向きを変えながら走行する場合について述べるが、上述したような障害物W以外の他の走行不可領域が存在する環境下において、直進のみで走行する場合においても本発明が適用可能であることは言うまでもない。
【0021】
そして、本実施形態の運転支援システム10は、
図1〜
図6に示すように、搬送車両1が走行する走行領域K内に障害物Wが存在する環境下でその運転を支援する車両の運転支援システムである。この運転支援システム10は、走行領域Kの路面Rに設けられた走行経路11(
図6)と、搬送車両1に設けられ、走行領域Kの路面Rを撮影する撮影ユニット6と、搬送車両1の運転席2a,3aから視認できるように設けられる表示ユニット7と、を備えている。
【0022】
具体的に走行経路11は、
図6に示すように、予め走行領域Kにおいて障害物Wに接触しないように、搬送車両1を直進あるいは向きを変えながら走行させるといったシミュレーション等による試行錯誤を繰り返しながら表される走行軌跡に基づいて設定される。このとき、搬送車両1が向きを変えながら走行する際の走行軌跡は、
図3に示すように、搬送車両1が向きを変えながら走行する際の搬送車両1の回転中心となる位置X(
図1)と、搬送車両1の旋回走行軌道の中心Pとを結ぶ回転軸Yに基づく軌跡Q(
図3)で走行することがわかっている。従って、このように設定される走行経路11上に搬送車両1の回転中心となる位置Xを一致させた状態で搬送車両1を走行させれば、走行領域Kにおいて障害物Wを回避して走行させることが可能となる。ここで、本実施形態の搬送車両1は4WS(四輪操舵)の機構を有し、この場合、前方側の車輪郡と後方の車輪郡との間の中心が回転中心となる位置Xとなる。
【0023】
撮影ユニット6は、
図4に示すように、搬送車両1の回転中心となる位置Xを走行方向Dの後方側から前方側に向けて撮影するための前方用カメラ61と、前記位置Xを走行方向Dの前方側から後方側に向けて撮影するための後方用カメラ62と、照明用のライト63と、路面R上での位置Xを光の照射によって指し示すための中心位置指示装置であるレーザーポインター64とを有して構成されている。この場合、これら前方用カメラ61、後方用カメラ62、ライト63およびレーザーポインター64は、取付板65に一体的に設けられ、搬送車両1の下面に取り付けられている。そして、前方用カメラ61および後方用カメラ62は、取付板65のレーザーポインター64を中心とする走行方向Dの後方側と前方側とに配置され、各々搬送車両1が向きを変えながら走行する際に搬送車両1の回転中心となる位置Xを含む走行領域Kの路面Rを撮影する。
【0024】
なお、撮影ユニット6の取付位置および構成はこれに限らず、前方用カメラ61と後方用カメラ62とが搬送車両1の前記位置Xの走行方向Dにおける前後にそれぞれ別体に設けられていても良いし、前記位置Xが後述の表示ユニット7の表示画面上において後述のライン73等で認識できるのであればレーザーポインター64を設けなくても良い。
【0025】
また、これら前方用カメラ61および後方用カメラ62は、それぞれ撮影視野の正逆が異なることが好ましい。具体的に、前方用カメラ61は、搬送車両1が実際に走行する進行方向前方を撮影するため、当該進行方向における運転者の視野と同一の視野(正視野)で撮影するカメラで構成される。一方、後方用カメラ62は、搬送車両1が実際に走行する進行方向とは反対の後方を撮影するため、当該進行方向における運転者の視野とは反対方向の視野(すなわち、左右が反転された逆視野)で撮影するカメラで構成される。これにより、運転者が後方の視野を確認する際に振り返ることなく、進行方向前方を向いたまま後方を正確に確認することが可能となる。さらに、前方用カメラ61および後方用カメラ62は、搬送車両1の進行方向に応じて前方側および後方側を向くように、それぞれ取付ブラケット61aおよび取付軸62aに対して前後反転可能に取り付けられていることが望ましい。
【0026】
表示ユニット7は、
図5に示すように、搬送車両1の運転席2a,3a(
図1)から視認できるように各運転台2,3にそれぞれ配置され、撮影ユニット6の前方用カメラ61に対応して、当該前方用カメラ61で撮影された走行領域Kの路面Rの映像を表示する前方視野モニタ71と、撮影ユニット6の後方用カメラ62に対応して、当該後方用カメラ62で撮影された走行領域Kの路面Rの映像を表示する後方視野モニタ72と、を有して構成されている。これら前方視野モニタ71と後方視野モニタ72とには、搬送車両1の前記回転中心となる位置Xを示すライン73が設けられていることが好ましい。なお、このようなライン73は、例えば搬送車両1の前記回転中心となる位置Xがレーザーポインター64によって示されている等、画面上で確認できる場合は、必ずしも設ける必要はない。
【0027】
以上、説明したように構成される搬送車両1の運転支援システム10では、運転者が上述したような走行領域Kにおいて、搬送車両1を走行させる際、表示ユニット7のモニタ71,72に表示される走行領域Kの路面Rに設けられた走行経路11と、当該モニタ71,72に示される搬送車両1の回転中心となる位置Xとを一致させ、この状態で当該走行経路11に沿って走行するように運転するだけで、搬送車両1が走行する走行領域K内に障害物Wが存在する環境下であっても、搬送車両1と障害物Wとの間隔や走行領域Kにおける搬送車両1の走行位置等を直接的に目視確認する必要がなく、また接触防止装置等に頼ることなく、当該障害物Wを容易且つ確実に回避でき、運転者の技能や経験に関係なく、走行の安全性を確保できる。よって、運転者が固定化されることはなく、その交代要員も限定されることはない。
【0028】
また、狭い走行領域Kであっても、その路面Rに設けられた走行経路11を表示ユニット7のモニタ71,72で正確に目視確認でき、この走行経路11と、当該モニタ71,72に示される搬送車両1の回転中心となる位置Xとを一致させた状態で走行経路11に沿って走行するように運転すれば良いため、車両後方の死角にも対応できる。
【0029】
このとき、搬送車両1は、走行方向Dにおける前後の位置に運転席2a,3aを備えていることで、運転者は、搬送車両1の走行方向Dに応じて運転席2a,3aを使い分けることにより、Uターンすることなく常に進行方向を向いて運転できるので、走行の安全性を良好な状態で維持できる。
【0030】
また、撮影ユニット6は、前方用カメラ61によって搬送車両1の回転中心となる位置Xを含む走行領域Kの路面Rを走行方向Dの後方側から前方側に向けて撮影し、後方用カメラ62によって走行方向Dの後方側の路面Rを撮影することで、搬送車両1の走行方向Dにおける走行領域Kの路面Rを常に前後から撮影できるので、走行経路Kに対して搬送車両1の回転中心となる位置Xをより正確に一致させることができる。なお、撮影ユニット6は、搬送車両1の回転中心となる位置Xを挟んで、当該位置Xの走行方向Dにおける前後に前方用カメラ61と後方用カメラ62とを配置するようにしても良い。この場合、前方用カメラ61と後方用カメラ62とが、搬送車両1の回転中心となる位置Xの走行方向Dにおける前後に設置されることで、常に双方のカメラ61,62で搬送車両1の回転中心となる位置Xを含む走行領域Kの路面Rを走行方向Dの前後から撮影できるので、搬送車両1の走行方向Dが前後逆になった場合にも容易に対応でき、走行経路Kに対して搬送車両1の回転中心となる位置Xを正確に一致させることができる。
【0031】
さらに、表示ユニット7は、撮影ユニット6に対応して複数設置されているので、走行方向Dにおける前後から撮影された走行領域Kの路面Rをそれぞれ個別に表示できるため、搬送車両1の走行方向Dに拘わらず、常に前後から撮影された走行領域Kの路面Rを表示でき、走行経路11に対して搬送車両1の回転中心となる位置Xをより正確に一致させることができる。
【0032】
さらに、搬送車両1に設けられ、当該搬送車両1の回転中心となる位置Xを光の照射によって指し示す中心位置指示装置としてレーザーポインター64を更に備えていることで、運転者に対して搬送車両1の回転中心となる位置Xをより容易且つ正確に認識させることができ、走行経路11に一致させる作業の容易化を図ることができる。このとき、レーザーポインター64は、搬送車両1の走行時に常にその回転中心となる位置Xを照射していても良いし、モニタ71,72において搬送車両1の回転中心となる位置Xを補正するキャリブレーションのときのみ、当該位置Xを照射するようにしても良い。
【0033】
なお、上述した実施形態では、搬送車両1が1台で構成される場合について述べたが、本発明はこれに限らない。例えば、
図1との対応部分に同一符号を付した
図7に示すように、搬送物5(セグメントSを含む)の搬送効率を高めるべく、搬送車両1を走行方向Dにおける前後方向に複数(ここでは2台)連結して構成しても良い。
【0034】
この場合、前述した実施形態と同様、
図3との対応部分に同一符号を付した
図8に示すように、搬送車両1,1が複数連結されていたとしても、これら搬送車両1の走行軌跡は、向きを変えながら走行する際の先頭の搬送車両1における回転中心となる位置X(
図1)と、当該先頭の搬送車両1における旋回走行軌道の回転中心Pとを結ぶ回転軸Yに基づく軌跡Qで走行することがわかっている。
【0035】
従って、このように設定される走行経路11上に先頭の搬送車両1の回転中心となる位置Xを一致させた状態で、これら搬送車両1,1を走行させれば、搬送物5を積載した複数の搬送車両1(または不図示の台車等)を連結した状態で走行する場合のように、全長が長い搬送車両1であっても、障害物Wを容易且つ確実に回避でき、運転者の技能や経験に関係なく、走行の安全性を確保できる。よって、本実施形態のように搬送車両1がセグメントS等の搬送物5を搬送するための搬送車両1である場合、当該搬送物5の搬送効率を向上させることができる。なお、このように搬送車両1が連結されている場合、走行領域Kにおける路面Rの撮影は、先頭の搬送車両1における撮影ユニット6の前方用カメラ61と、最後部の搬送車両1における撮影ユニット6の後方用カメラ62とを用いて行うようにしても良い。
【0036】
また、上述した実施形態では、
図3において、搬送車両1が回転中心となる位置Xの前後の車輪がそれぞれ向きを変更可能な所謂4WS(四輪操舵)の機構を備える場合について図示したが、本発明はこれに限らず、4WS以外、すなわち操舵側の車輪のみが向きの変更を可能とする車両も広く適用することができる。この場合、操舵側ではない固定される側の車輪における車軸の中心が車両の回転中心となる。
【符号の説明】
【0037】
1…搬送車両(車両), 2,3…運転台, 2a,3a…運転席, 4…荷台, 5…搬送物, 6…撮影ユニット, 61…前方用カメラ, 62…後方用カメラ, 63…ライト, 64…レーザーポインター(中心位置指示装置), 65…取付板, 7…表示ユニット, 71,72…モニタ, 73…ライン, D…走行方向, K…走行領域, P…旋回走行軌道の回転中心, Q…軌跡, R…路面, S…セグメント, X…回転中心となる位置, Y…回転軸