【実施例1】
【0010】
図1は本実施例における共振形電源装置の回路図である。
図1において、共振形電源装置01は、電源主回路02と電源制御ブロック03で構成される。電源主回路02の入力端子には入力電源Einから入力電圧Vinが印加されており、出力端子には負荷Roが接続されている。
【0011】
電源主回路02は、入力コンデンサCinと1次側半導体素子(スイッチング素子)04と共振素子05とトランス06と2次側半導体素子(スイッチング素子)07と出力コンデンサCoで構成され、入力電圧Vinと、出力コンデンサCoの両端電圧となる出力電圧Voとを検出し電源制御ブロック03へ送信する機能を有する。この検出、送信機能は、例えば、オペアンプ等で構成され、電源制御ブロック03側ではA/D変換器を介して受信する。
【0012】
電源制御ブロック03は、Voを受信し、Voが上位コントローラから送られてくる出力電圧指令値Vrefとなるスイッチング周波数Fswを演算する制御量演算器12を有し、Fswに基づき1次側半導体素子04のゲート信号を1次側ゲート信号生成器14で生成する。本実施例では1次側半導体素子04がQ1,Q2,Q3,Q4のフルブリッジ構成としているため、1次側ゲート信号生成器14はそれらのゲート信号Vg1,Vg2,Vg3,Vg4を生成し、電源主回路02に送信し、電源主回路02はその信号に従いQ1,Q2,Q3,Q4を駆動し、Voを制御する。なお、電源制御ブロック03は、専用の制御ICで実現しても良い。
【0013】
一次側半導体素子04は電源制御ブロック03からのゲート信号Vg1,Vg2,Vg3,Vg4に従いオンとオフを繰り返し、共振素子05とトランス06にパルス状の電圧を加える。例えば、Q1とQ4がオン、Q2とQ3がオフの時は、共振素子05にはVinの電圧が印加され、Q2とQ3がオン、Q1とQ4がオフの時は、共振素子05には−Vinの電圧が印加される。よって、本実施例では共振素子05とトランス06には振幅がVinのパルス状の電圧が印加されることになる。
【0014】
共振素子05は共振インダクタンスLrと共振コンデンサCrとから構成される。共振インダクタンスLrはトランス06の漏れインダクタンスと直列の関係となっている。本実施例ではトランスの漏れインダクタンスを記載していないが、トランスの漏れインダクタンスは共振インダクタンスLrに含まれているものとする。LrとCrはトランスの1次側端子に別々に配置して記載したが、電気回路上直列に配置されていれば片側に直列に配置しても構わない。
【0015】
トランス06は励磁インダクタンスをLmとし、1次側の巻数をN1、2次側の巻数をN2とする。
【0016】
2次側半導体素子07はQ5,Q6,Q7,Q8のフルブリッジ構成としている。それらのゲート信号はVg5, Vg6, Vg7, Vg8であり、電源制御ブロック03の2次側ゲート信号生成器15によって生成される。
【0017】
本実施例における共振形電源装置01の周波数特性を
図2に示す。共振形電源装置01はスイッチング周波数Fswを調整して所望の出力電圧Voを得る。
図2は、横軸をFswとし、縦軸をゲインMとした周波数特性のグラフである。ゲインMは、入出力電圧比(Vo/Vin)とトランス07の巻数比(N1/N2)の積で定義され、あるスイッチング周波数Fswで動作している時の出力電圧が、入力電圧Vinを巻数比で割った値よりも大きいか小さいかを確認できる基準である。
【0018】
共振形電源装置01は、LrとCrで決まる共振周波数Foを固有で持ち、FswをFoで動作させている時はゲインMが1となるという特徴がある。この特徴は、負荷電流が大きい場合は寄生抵抗成分などによる電圧降下が発生するため、軽負荷時の方が正確である。
【0019】
軽負荷時にスイッチング周波数Fswで動作している時は、設計値通りのLrとCrが製造できた場合はゲインMが1となるため、設計値通りの共振周波数Foが得られるが、製造ばらつきや経年劣化によってLrまたはCrがばらついた時、周波数特性のグラフは変化し、ばらつきAの場合は共振周波数がFo(A)にずれ、ばらつきBの場合は共振周波数がFo(B)にずれる。
【0020】
本実施例では、この共振周波数のずれを把握するために、電源制御ブロック03内に切換え器11と共振周波数記憶器13を有する。電源制御ブロック03は、サンプリングモード切換え信号Smを切換え器11と共振周波数記憶器13に入力し、電圧指令値が、上位から送られてくる電圧指令値Vrefで動作する通常モードと、共振素子05とトランス06に印加するパルス状の電圧の振幅を巻数比で割った値で動作し、その時のスイッチング周波数Fswを共振周波数Foとして記憶するサンプリングモードの2つのモードを有する。サンプリングモード時に取得した共振周波数Foは、製造ばらつきや経年劣化によって、設計値からずれたLrとCrに対応する共振周波数である。
【0021】
図3は本実施例における起動時の波形である。
図3(A)は出力電圧Vo、(B)はサンプリングモード切換え信号Sm、(C)はスタンバイ完了信号ENを示している。サンプリングモードは、上述した理由から軽負荷時に実施されることが望ましい。負荷に電力を供給した後は軽負荷時となるタイミングを把握することが困難であるため、電源起動時にサンプリングモードを設けることが望ましい。従って、
図3に示すように、t0が共振形電源装置01の起動信号が入力された時間とすると、まずt1でサンプリングモードに移行して、電源の出力電圧指令値をVinを巻数比で割った値とする。t2から徐々にスイッチングが開始され、t3で出力電圧VoがVinを巻数比で割った値となる。t3からt4の間に共振周波数記憶器13がスイッチング周波数Fswを共振周波数Foと記憶する。記憶が完了した後、t4で上位から送られる電圧指令値Vrefに切換え器11が切り換わり、出力電圧VoがVrefになった後に、t5で共振形電源装置01のスタンバイ完了信号ENを外部に送信する。なお、t2からt3の期間はVoが直線的に上昇しているが、サンプリングモードの最終電圧がVinを巻数比で割った値となるように指令値をゆっくり上げることも可能である。
【0022】
本実施例によれば、共振形電源装置01はスタンバイ完了信号ENを出力する前に、出力電圧は2段の安定している電位を有することが特徴である。電位の一つは、Vinの巻数比分の一の値であり、もう一つは上位マイコンからの電圧指令値Vrefである。
【0023】
本実施例では、以上のように記憶した共振周波数を、2次側ゲート信号生成器15が利用している。
図4に、通常モードでの、記憶した共振周波数Foよりもスイッチング周波数Fswが小さいときのスイッチング1周期の動作波形図を示す。
【0024】
図4においては、ゲート信号Vg1,Vg2,Vg3,Vg4,Vg5, Vg6, Vg7, Vg8、共振インダクタンスLrに流れる電流ILr、2次側半導体素子のQ5,Q6,Q7,Q8のソース-ドレイン電流I5,I6,I7,I8、のそれぞれのスイッチング1周期の波形を示している。なお、
図3と
図4は時間軸が異なり、
図3のt0〜t5と
図4のt10〜t16は無関係である。
図4において、t10からt16までが一周期である。Vg1とVg4は、t10でオンし、t13でオフする。Vg2とVg3は、t14でオンし、t16でオフする。t10からt11とt13からt14はデッドタイムである。共振素子05にはVg2とVg3がオフするt10から、直前までVg2とVg3がオンでVinが印加されていたため、Lrにはt10からt12までの期間は正弦波状の電流ILrが流れる。ILrは、トランス06の励磁インダクタンスLmを通り共振素子05のCrへ流れる励磁電流ルートと、トランス06から2次側半導体素子07へ流れ、出力コンデンサCoまたは負荷Roを通りCrへ戻る負荷電流ルートの2ルートに分かれる。
【0025】
励磁電流ルートに流れる励磁電流ILmは、t10からt12の期間は、LmにVinが印加されているため一定の傾きを持って上昇する。ここで、正弦波状の波形であるILrと一定の傾きで上昇を続けるILmがt12で同じ値となる。t10からt12まではILrがILmよりも多かったため、負荷電流ルートのQ5とQ8にI5とI8が正方向に流れた。もし、Vg5とVg8がt12以降もオン状態である場合は、t12以降はI5とI8は負方向の電流が流れ、電流が逆流してしまうため効率が悪化する。つまり、Q5とQ8に正方向に流れるt10からt12までの期間をオン状態とすることが望ましい。同様に、Vg6とVg7もt13からt15の期間をオン状態とすることが望ましい。
【0026】
負荷が一定の定常状態であれば、t10時の共振電流ILr(t10)とt16時の共振電流ILr(t16)は等しい値となる。ILrはt10からt13までとt13からt16までは正負対象であるため、ILr(t13)=−ILr(t10)である。t12からt13までは動作モードによってILrは上昇する場合もあれば下降する場合もあるが、ILr(t12)−ILr(t13)=ILr(t16)−ILr(t15)となり、電流変動幅は等しい。つまり、t12からt13までに変化した電流はt15からt16までに変化した電流と相殺されるため、t10からt12までのILr波形とt13からt15までのILr波形を切り出すと正弦波となることがわかる。この時の周波数はLrとCrで決定される共振周波数Foである。スイッチング周波数Fswが記憶した共振周波数Foと一致するとILr波形は連続となる。
【0027】
以上より、Vg5とVg8の理想的なオンタイミングは、Vg2とVg3がオフとなるタイミングであり、理想的なオフタイミングはそのタイミングから共振周期To(=1/Fo)の半周期後(=1/(2*Fo))となる。Vg6とVg7についても同様に、Vg1とVg4がオフとなるタイミングであり、理想的なオフタイミングはそのタイミングから共振周期To(=1/Fo)の半周期後(=1/(2*Fo))である。これらの処理は、1次側ゲート信号生成器14と共振周波数記憶器13から情報を得た2次側ゲート信号生成器15が行う。
【0028】
本実施例のように、2次側半導体素子07のスイッチングを、理想的なオンタイミングで実施することは、最大限の同期整流期間を確保することになり、理想的なオフタイミングで実施することは、逆流による損失を防ぐことになるため、損失を減らせる。よって、高効率化につながり、また、発熱量が減少することから放熱部材を低減することができるため、低コスト化と小型化にもつながる。
【0029】
なお、実機では寄生インダクタンスの影響や素子のリカバリの影響などで、理想のオフタイミングはTo/2とは限らないため、2次側ゲート信号生成器15では、得られた共振周波数Foと、設計した共振周波数の差分を確認し、設計値の共振周波数よりも実機の共振周波数が高い場合は、2次側半導体素子のオフタイミングを短くなる方向に補正し、設計値の共振周波数よりも実機の共振周波数が低い場合は、2次側半導体素子のオフタイミングを長くなる方向に補正することで、より理想的なオフタイミングに近づくことができる。
【0030】
また、実機では、理想的なオフタイミングから少しでもずれると、例えば、
図4のt12以降はI5とI8は負方向の電流が流れ電流が逆流してしまうため、安全面を考慮して、Vg5とVg8のオフタイミングは、t12よりも早めのタイミング、すなわち、Foを高く見積る方向とする。すなわち、出力電圧の指令値をパルス状の電圧の振幅のトランスの巻数比分の一以下に設定すると良い。
【0031】
また、本実施例では起動時に共振周波数Foを取得することとしたが、毎起動時に取得する必要はなく、前回取得した周波数を用いれば良い。
【0032】
さらに、使用した周波数の変化から、Crの劣化具合を確認し劣化判定することができ、共振周波数が一定以下となった場合にコンデンサユニットまたは共振形電源装置01を交換する信号を外部に出力させ、メンテナンスに利用することで装置の長寿命化にも寄与する。
【0033】
以上のように、本実施例は、共振形電源装置において、電源起動時にゲイン特性が1となる出力電圧を出力し、その時のスイッチング周波数を取得することで、電源主回路の共振周波数を把握し、その共振周波数を2次側半導体素子の同期整流信号などに反映することにより、高効率で小型な共振形電源装置を実現する。
【0034】
言い換えれば、入力電圧を1次側スイッチング素子によりスイッチングすることでトランスと共振素子にパルス状の電圧を印加し、2次側スイッチング素子によりスイッチングして出力電圧を制御する共振形電源装置であって、出力電圧の指令値を、パルス状の電圧の振幅のトランスの巻数比分の一以下に設定し、設定している期間のスイッチング周波数を取得し、取得したスイッチング周波数に基づき2次側スイッチング素子のゲート信号を補正する制御機能を有する構成とする。
【0035】
これにより、共振周波数を容易に把握でき、安価で高効率な共振形電源装置を提供することができる。
【実施例3】
【0039】
図6に本実施例の共振形電源装置01の回路図を示す。本実施例では電源制御ブロック03内に、固定周波数切換え器21を有する。他の構成は
図1と同様である。
【0040】
図6において、サンプリングモードでは、電圧指令値を入力電圧の巻数比分の一とし、固定周波数切換え器21は、制御量演算器12が算出したスイッチング周波数Fswで1次側ゲート信号生成器14が動作するように制御し、共振周波数記憶器13に共振周波数Foを記憶する。通常動作モードでは、実施例1のように、上位コントローラから送られてくる電圧指令値Vrefに従い制御量演算器12が計算したスイッチング周波数Fswで1次側ゲート信号生成器14がゲート信号を生成して電源を制御することもできるが、入力電源Einの電圧を制御できる場合は、スイッチング周波数をサンプリングモードで取得したFoに固定して共振形電源装置01を駆動することができる。
【0041】
これにより、共振形電源装置01は、共振周波数Foをスイッチング周波数Fswとして動作している時は、理想的な動作状態であり高い電力変換効率を実現できる。なお、固定周波数では入出力電圧比が固定されるため、出力電圧を制御する場合は入力電圧を制御する必要がある。
【0042】
以上に示した実施例のように、出力電圧指令値を、共振素子とトランスに印加する電圧の振幅の巻数比分の一の値に設定し、共振周波数を取得するサンプリングモードを有する共振形電源装置は、高効率な電力変換を可能にし、小型で低コストな共振形電源装置を提供することができる。
【0043】
また、全ての実施例において、単独運転の例を説明したが、並列運転の場合も一台ずつ順に共振周波数を確認することで、全ての共振形電源装置の共振周波数を確認することができる。
【0044】
また、全ての実施例において半導体素子をMOS-FETの記号で示したが、MOS-FETに限定されるものではなく、素子はIGBTなどのスイッチング素子であれば本発明は適用できる。
【0045】
以上実施例について説明したが、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。