(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6684639
(24)【登録日】2020年4月1日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】基板ユニット
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20200413BHJP
【FI】
H05K9/00 F
H05K9/00 C
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-85449(P2016-85449)
(22)【出願日】2016年4月21日
(65)【公開番号】特開2017-195307(P2017-195307A)
(43)【公開日】2017年10月26日
【審査請求日】2018年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】徳永 修児
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 利夫
【審査官】
鹿野 博司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−059063(JP,A)
【文献】
特開2002−009478(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第19522455(DE,A1)
【文献】
実開昭58−044899(JP,U)
【文献】
特開平09−008487(JP,A)
【文献】
実開平01−171093(JP,U)
【文献】
実開平2−116790(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板にデバイスが実装された基板ユニットにおいて、
前記デバイスに被せるようにして前記基板に取り付けられ、当該デバイスから発生する電界ノイズを低減するシールドケースと、
前記シールドケースから漏れ出る電界ノイズをシールドする漏れノイズシールド部とを備え、
前記漏れノイズシールド部は、電界ノイズを受け止める本体部の下端に設けられた支持部が前記基板に固着され、
前記支持部は、前記本体部と交差する方向の両側に突出する幅広部と突起部とを有する形状をなし、前記突起部は前記幅広部の角部から一部分が飛び出すように形成されていることにより、前記漏れノイズシールド部が自立することを可能とすることを特徴とする基板ユニット。
【請求項2】
前記シールドケースは、前記基板のランド部が位置する側の側部が開口する形状に形成され、
前記漏れノイズシールド部は、前記シールドケースの開口部に対向するように配置されている請求項1に記載の基板ユニット。
【請求項3】
前記漏れノイズシールド部は、基板上の複数の前記ランド部のうち、前記デバイスの入力端子が接続されたランド部が位置する側に配置されている請求項2に記載の基板ユニット。
【請求項4】
前記デバイスは、スイッチングレギュレータのインダクタコイルである
請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の基板ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板にデバイスが実装された基板ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、基板に実装されたデバイスからは電界ノイズが放射される現状があり、この電界ノイズが周囲の機器に影響を及ぼすことが懸念される。このため、デバイスから放射される電界ノイズを低減するために、同デバイスにシールドケースを取り付ける技術が周知である(特許文献1,2等参照)。これにより、デバイスから放射される電界ノイズをシールドケースで遮り、周囲の機器に電界ノイズの影響が及ばないようにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−251375号公報
【特許文献2】実開昭58−44899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の分野においては、デバイスから周囲に放射される電界ノイズを、さらに低減したいニーズがあった。
本発明の目的は、基板上のデバイスから放射される電界ノイズを低減することができる基板ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記問題点を解決する基板ユニットは、基板にデバイスが実装された構成において、前記デバイスに被せるようにして前記基板に取り付けられ、当該デバイスから発生する電界ノイズを低減するシールドケースと、前記シールドケースから漏れ出る電界ノイズをシールドする漏れノイズシールド部とを備えた。
【0006】
本構成によれば、基板上のデバイスから放射される電界ノイズを低減するにあたり、シールドケースで電界ノイズをシールドするのみならず、シールドケースでは防ぎ切れなかった電界ノイズを、漏れノイズシールド部によってシールドする。このように、本構成の場合は、デバイスから放射される電界ノイズを、シールドケース及び漏れノイズシールド部の2段構造によってシールドする。よって、基板上のデバイスから放射される電界ノイズを低減することが可能となる。
【0007】
前記基板ユニットにおいて、前記シールドケースは、前記基板のランド部が位置する側の側部が開口する形状に形成され、前記漏れノイズシールド部は、前記シールドケースの開口部に対向するように配置されていることが好ましい。この構成によれば、基板にランド部があるためにシールドケースに開口を設ける必要があっても、当該箇所から放射されてしまう電界ノイズを、漏れノイズシールド部によってシールドすることが可能となる。よって、デバイスから放射される電界ノイズの低減に一層有利となる。
【0008】
前記基板ユニットにおいて、前記漏れノイズシールド部は、基板上の複数の前記ランド部のうち、前記デバイスの入力端子が接続されたランド部が位置する側に配置されていることが好ましい。この構成によれば、デバイスの入力端子側にのみ漏れノイズシールド部を設ければよいので、漏れノイズシールド部の個数を少なく抑えることが可能となる。また、デバイスは入力端子側の電圧が高いので、この入力端子側から電界ノイズが放出され易い。そこで、ここでは、デバイスの入力端子が接続されたランド部が位置する側に漏れノイズシールド部を設けるので、当該箇所から放射されてしまう電界ノイズを、漏れノイズシールド部によって効率よくシールドすることが可能となる。
【0009】
前記基板ユニットにおいて、前記デバイスは、スイッチングレギュレータのインダクタコイルであることが好ましい。この構成によれば、スイッチングレギュレータのインダクタコイルは、入力した電圧を変換して出力する構成上、電界ノイズが放出され易い。しかし、このようなインダクタコイルであっても、シールドケース及び漏れノイズシールド部を設けることによって、インダクタコイルから放射される電界ノイズを少なく抑えることが可能となる。
【0010】
前記基板ユニットにおいて、前記漏れノイズシールド部は、電界ノイズを受け止める本体部の下端に設けられた支持部が前記基板に固着され、前記支持部は、前記本体部と交差する方向の両側に突出する形状をとることにより、前記漏れノイズシールド部が自立することを可能とすることが好ましい。この構成によれば、漏れノイズシールド部を自立可能としたので、漏れノイズシールド部を基板に容易に取り付けることが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基板上のデバイスから放射される電界ノイズを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】シールドケースを基板から外した状態の斜視図。
【
図3】シールドケース及び漏れノイズシールド部の外観を示す斜視図。
【
図4】漏れノイズシールド部を裏面側から見た斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、基板ユニットの一実施形態を
図1〜
図4に従って説明する。
図1に示すように、基板ユニット1には、基板2が設けられ、この基板2にデバイス3が実装されている。デバイス3は、入力した直流電圧を異なる値の直流電圧に変換して出力する降圧型のスイッチングレギュレータのインダクタコイル6であることが好ましい。デバイス3は、基板2上に設けられた複数の基板パターン(配線)4に取り付け固定されている。本例のデバイス3は、入力側が基板パターン4aのランド部5(5a)に固着され、出力側が基板パターン4bのランド部5(5b)に固着されている。
【0014】
図1〜
図3に示すように、デバイス3には、デバイス3から発生する電界ノイズを低減するシールドケース9が取り付けられている。シールドケース9は、デバイス3に被せるようにして基板2に取り付けられている。シールドケース9は、基板2のランド部5が位置する側の側部が開口する形状に形成されている。すなわち、シールドケース9は、上壁9aと、一対の側壁9bとを有し、側部のうち側壁9bのない部分が一対の開口部9cとなっている。このように、シールドケース9が開口部9cを有するのは、基板2のランド部5にシールドケース9を配置することができないためである。シールドケース9は、各側壁9bの端縁に形成された一対の爪部9d(
図2参照)をデバイス3及び基板2の間に挿し込んで係止することにより、基板2に取り付け固定されている。
【0015】
図1〜
図4に示すように、基板ユニット1は、シールドケース9から漏れ出る電界ノイズをシールドする漏れノイズシールド部12を備える。漏れノイズシールド部12は、シールドケース9の一対の開口部9cのうち片方の開口部9c’に対し、これと対向するように配置されている。すなわち、漏れノイズシールド部12は、基板2上の複数のランド部5a,5b(基板パターン4a,4b)のうち、デバイス3の入力端子3aが接続されたランド部5a(基板パターン4a)が位置する側に配置されている。また、漏れノイズシールド部12は、例えばリフローはんだによって基板2に固着されるとともに、基板2を通じてGNDに接続されている。
【0016】
図2〜
図4に示すように、漏れノイズシールド部12は、電界ノイズを受け止める本体部13と、本体部13の下端に設けられた板状の支持部14とを備える。本例の漏れノイズシールド部12は、支持部14が基板2に固着された取り付け状態をとっている。すなわち、漏れノイズシールド部12は、支持部14がリフローはんだによって基板2に取り付け固定されている。
【0017】
支持部14は、鉛直方向(
図4のZ軸方向)に延びる本体部13に対し交差する方向(
図4のY軸方向)の両側に突出する形状をとることにより、漏れノイズシールド部12が自立可能とされている。すなわち、支持部14は、一方向(
図4の+Y軸方向)に突出した板状の幅広部15と、他方向(
図4の−Y軸方向)に突出した突起部16とを有した形状となっている。このように、幅広部15及び突起部16は、互いに反対方向に延びるように形成されている。突起部16は、幅広部15の角部から一部分が飛び出すように形成されている。
【0018】
次に、
図1を用いて、基板ユニット1の作用及び効果を説明する。
図1に示すように、インダクタコイル6は、シールドケース9に覆われることによって電界ノイズが低減されている。しかし、シールドケース9は、ランド部5が配置される側(特に、インダクタコイル6の入力側のランド部5a側)をシールドすることができないので、この部分から電界ノイズ(
図1で示す矢印)が漏れ出してしまう。このノイズ電界は、他の電子部品に影響を及ぼすので、このノイズ漏れを抑制したい現状がある。
【0019】
そこで、本例の場合、インダクタコイル6の側方に漏れノイズシールド部12を設けることにより、シールドケース9から漏れ出る電界ノイズを、漏れノイズシールド部12によって吸収し、GNDに落とす。これにより、インダクタコイル6から出る放射ノイズが低減されることとなる。よって、インダクタコイル6から出力される電界ノイズ(放射電界ノイズ)を低減することができる。
【0020】
さて、本例の場合、基板2上のデバイス3(インダクタコイル6)から放射される電界ノイズを低減するにあたり、シールドケース9で電界ノイズをシールドするのみならず、シールドケース9で防ぎ切れなかった電界ノイズを、漏れノイズシールド部12によってシールドする。このように、本例の場合は、デバイス3から放射される電界ノイズを、シールドケース9及び漏れノイズシールド部12の2段構造によってシールドする。よって、基板2条のデバイス3から放射される電界ノイズを低減することができる。
【0021】
シールドケース9は、基板2のランド部5が位置する側の側部が開口する形状(開口部9cを有する形状)に形成される。漏れノイズシールド部12は、シールドケース9の開口部9cに対向するように配置されている。これにより、基板2にランド部5があるためにシールドケース9に開口を設ける必要があっても、その箇所から放射されてしまう電界ノイズを、漏れノイズシールド部12によってシールドすることが可能となる。よって、デバイス3から放射される電界ノイズの低減に一層有利となる。
【0022】
漏れノイズシールド部12は、基板2上の複数のランド部5a,5bのうち、デバイス3(インダクタコイル6)の入力端子3aが接続されたランド部5aが位置する側に配置されている。これにより、本例は、デバイス3の入力端子3a側(片側)にのみ漏れノイズシールド部12を設ければよいので、漏れノイズシールド部12の個数を少なく抑えることができる。また、基板2のパターン設定を容易にでき、漏れノイズシールド部12の設置を小スペースで実現することもできる。
【0023】
また、デバイス3(インダクタコイル6)は、出力端子に比べて入力端子3a側の電圧が高いので、入力端子3a側から電界ノイズが放出され易い。そこで、本例では、デバイス3の入力端子3aが接続されたランド部5aが位置する側に漏れノイズシールド部12を設けるので、当該箇所から放射されてしまう電界ノイズを、漏れノイズシールド部12によって効率よくシールドすることができる。
【0024】
本例のデバイス3は、スイッチングレギュレータのインダクタコイル6である。ところで、この種の降圧型のインダクタコイルは、入力した電圧を変換して出力する構成上、電界ノイズが放出され易い。しかし、このようなインダクタコイル6であっても、シールドケース9及び漏れノイズシールド部12を設けることによって、インダクタコイル6から放射される電界ノイズを少なく抑えることができる。
【0025】
漏れノイズシールド部12は、電界ノイズを受け止める本体部13の下端に設けられた支持部14が基板2に固着される。支持部14は、本体部13と交差する方向の両側に突出する形状(幅広部15及び突起部16を有する形状)をとることにより、漏れノイズシールド部12が自立することを可能とする。よって、漏れノイズシールド部12を基板2に取り付けるとき、漏れノイズシールド部12の位置決めを簡単に行うことが可能となるので、漏れノイズシールド部12を基板2に容易に取り付けることができる。
【0026】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・開口部9cは、シールドケース9の側部の間口全体が開口する形状に限らず、一部分のみ切り欠かれた形状としてもよい。すなわち、開口部9cは、基板2のランド部5を回避できる形状であればよい。
【0027】
・漏れノイズシールド部12は、例えば銅などの金属によって形成されるとよい。
・漏れノイズシールド部12は、インダクタコイル6に近接配置されるとよい。
・基板2への漏れノイズシールド部12の取り付け方法は、リフローはんだに限定されず、他の手法に変更してもよい。
【0028】
・漏れノイズシールド部12は、本体部13の両側に壁部が突設された上面視コ字形状としてもよい。また、漏れノイズシールド部12は、本体部13の片側に壁部が突設された上面視L字形状としてもよい。
【0029】
・突起部16は、複数設けてもよい。
・突起部16は、幅広部15の一部分から飛び出す形状に限定されず、例えば幅広部15と同程度の面積の形状に形成されるなど、大きさを適宜変更してもよい。
【0030】
・漏れノイズシールド部12は、インダクタコイル6の両側、すなわち両方の開口部9cに設けられてもよい。
・漏れノイズシールド部12の配置場所は、漏れノイズの経路上であれば、種々の位置に変更できる。
【0031】
・漏れノイズシールド部12は、シールドケース9から漏れ出る電界ノイズを遮蔽できるのであれば、種々の形状に変更可能である。
・シールドケース9の形状は、開口部9cを有する形状に限らず、開口部9cがなくてもよい。すなわち、デバイス3の一部分を覆うことができればよく、種々の形状に変更可能である。
【0032】
・デバイス3は、インダクタコイル6に限定されず、他の部材に変更可能である。
・基板ユニット1は、どのような装置や機器に搭載されてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1…基板ユニット、2…基板、3…デバイス、3a…入力端子、5(5a,5b)…ランド部、9c(9c’)…開口部、6…デバイスの一例であるインダクタコイル、9…シールドケース、12…漏れノイズシールド部、13…本体部、14…支持部。