特許第6684645号(P6684645)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6684645ロータリーエンコーダの検出装置、及び検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6684645
(24)【登録日】2020年4月1日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】ロータリーエンコーダの検出装置、及び検出方法
(51)【国際特許分類】
   H01H 19/00 20060101AFI20200413BHJP
【FI】
   H01H19/00 P
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-95237(P2016-95237)
(22)【出願日】2016年5月11日
(65)【公開番号】特開2017-204376(P2017-204376A)
(43)【公開日】2017年11月16日
【審査請求日】2019年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001487
【氏名又は名称】クラリオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】特許業務法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯田 陽
(72)【発明者】
【氏名】犬伏 直生
【審査官】 内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−189822(JP,A)
【文献】 特開2010−092410(JP,A)
【文献】 特開2008−186755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 19/00 〜 21/88
H01H 25/00 〜 25/06
H01H 89/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータリーエンコーダから出力される位相の異なる2つの出力パルスに基づき、回転操作を検出する検出装置において、
前記2つの出力パルスを検出するパルス検出部と、
前記パルス検出部の検出結果に基づき前記2つの出力パルスの時間差を取得し、前記時間差が設定時間内の場合に、前記出力パルスを回転操作の検出に用い、前記時間差が前記設定時間外の場合、前記出力パルスを回転操作の検出に用いない制御部とを備え、
前記ロータリーエンコーダは、回転量を1クリック分の回転角度に刻むクリック機構を備え、
前記設定時間は、前記1クリック分の回転角度に比例した時間であることを特徴とするロータリーエンコーダの検出装置。
【請求項2】
前記検出装置は、車載装置に設けられることを特徴とする請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
ロータリーエンコーダから出力される位相の異なる2つの出力パルスに基づき、回転操作を検出する検出装置において、
前記2つの出力パルスを検出するパルス検出部と、
前記パルス検出部の検出結果に基づき前記2つの出力パルスの時間差を取得し、前記時間差が設定時間内の場合に、前記出力パルスを回転操作の検出に用い、前記時間差が前記設定時間外の場合、前記出力パルスを回転操作の検出に用いない制御部とを備え、
前記設定時間は、ユーザーが前記回転操作に要する想定時間よりも長い時間であることを特徴とする検出装置。
【請求項4】
前記検出装置は、車載装置に設けられることを特徴とする請求項3に記載の検出装置。
【請求項5】
回転量を1クリック分の回転角度に刻むクリック機構を備えるロータリーエンコーダから出力される位相の異なる2つの出力パルスに基づき、回転操作を検出する検出方法であって、
前記2つの出力パルスを検出し、
検出結果に基づき前記2つの出力パルスの時間差が、前記1クリック分の回転角度に比例した時間である設定時間内か否かを判断し、
前記時間差が設定時間内の場合、前記出力パルスを回転操作の検出に用い、前記時間差が前記設定時間外の場合、前記出力パルスを回転操作の検出に用いない
ことを特徴とするロータリーエンコーダの検出方法。
【請求項6】
回転量を1クリック分の回転角度に刻むクリック機構を備えるロータリーエンコーダから出力される位相の異なる2つの出力パルスに基づき、回転操作を検出する検出方法であって、
前記2つの出力パルスを検出し、
検出結果に基づき前記2つの出力パルスの時間差が、ユーザーが前記回転操作に要する想定時間よりも長い時間である設定時間内か否かを判断し、
前記時間差が設定時間内の場合、前記出力パルスを回転操作の検出に用い、前記時間差が前記設定時間外の場合、前記出力パルスを回転操作の検出に用いない
ことを特徴とするロータリーエンコーダの検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリーエンコーダから出力される2つの出力パルスに基づき回転操作を検出する検出装置、及び検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロータリーエンコーダから出力される位相の異なる2つの出力パルスに基づき、回転操作を検出する回転操作検出装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、この種のロータリーエンコーダが、オーディオ機器等の音量調整、及びラジオの同調(周波数調整)等の各種の操作スイッチとして使用されることが記載される。
また、特許文献1には、ロータリーエンコーダには、クリック機構が付設され、シャフト回転操作において適度な節度感(以下、クリック感と言う)を持たせると同時にシャフトの回転角度が1クリック分の回転角度等に規制されることが記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−95242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ロータリーエンコーダによっては、ロータリーエンコーダの回転部分が、1クリック分の回転の途中(以下、クリック途中位置と言う)で止まることがある。特に、1クリックの回転角度が大きいものほど、クリック途中位置で止まるおそれがある。
クリック途中位置は、隣接するパルス間の位置(2つの出力パルスの間の位置、或いは、いずれか一方の出力パルスの間の位置)に相当している。従来、クリック途中位置で止まった後、ユーザーの操作力以外の外力の影響で左右方向に回転すると、1クリックの動作として誤検出されることがある。
【0005】
仮に、車載装置のラジオの周波数調整の操作をロータリーエンコーダで検出する構成の場合、車体の振動などの影響で、ロータリーエンコーダの回転部分が、クリック途中位置から左右に容易に移動し、周波数が変わってしまう。
そこで、本発明は、回転操作の検出精度を向上可能なロータリーエンコーダの検出装置、及び検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、ロータリーエンコーダから出力される位相の異なる2つの出力パルスに基づき、回転操作を検出する検出装置において、前記2つの出力パルスを検出するパルス検出部と、前記パルス検出部の検出結果に基づき前記2つの出力パルスの時間差を取得し、前記時間差が設定時間内の場合に、前記出力パルスを回転操作の検出に用い、前記時間差が前記設定時間外の場合、前記出力パルスを回転操作の検出に用いない制御部とを備え、前記ロータリーエンコーダは、回転量を1クリック分の回転角度に刻むクリック機構を備え、前記設定時間は、前記1クリック分の回転角度に比例した時間であることを特徴とする。
【0007】
上記構成において、前記検出装置は、車載装置に設けられてもよい。
【0008】
また、本発明は、ロータリーエンコーダから出力される位相の異なる2つの出力パルスに基づき、回転操作を検出する検出装置において、前記2つの出力パルスを検出するパルス検出部と、前記パルス検出部の検出結果に基づき前記2つの出力パルスの時間差を取得し、前記時間差が設定時間内の場合に、前記出力パルスを回転操作の検出に用い、前記時間差が前記設定時間外の場合、前記出力パルスを回転操作の検出に用いない制御部とを備え、前記設定時間は、ユーザーが前記回転操作に要する想定時間よりも長い時間であることを特徴とする。この場合、前記検出装置は、車載装置に設けられてもよい。
【0009】
また、本発明は、回転量を1クリック分の回転角度に刻むクリック機構を備えるロータリーエンコーダから出力される位相の異なる2つの出力パルスに基づき、回転操作を検出する検出方法であって、前記2つの出力パルスを検出し、検出結果に基づき前記2つの出力パルスの時間差が、前記1クリック分の回転角度に比例した時間である設定時間内か否かを判断し、前記時間差が設定時間内の場合、前記出力パルスを回転操作の検出に用い、前記時間差が前記設定時間外の場合、前記出力パルスを回転操作の検出に用いないことを特徴とする。
また、本発明は、回転量を1クリック分の回転角度に刻むクリック機構を備えるロータリーエンコーダから出力される位相の異なる2つの出力パルスに基づき、回転操作を検出する検出方法であって、前記2つの出力パルスを検出し、検出結果に基づき前記2つの出力パルスの時間差が、ユーザーが前記回転操作に要する想定時間よりも長い時間である設定時間内か否かを判断し、前記時間差が設定時間内の場合、前記出力パルスを回転操作の検出に用い、前記時間差が前記設定時間外の場合、前記出力パルスを回転操作の検出に用いないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、回転操作の検出精度を向上可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明を適用した車載装置を周辺構成と共に示したブロック図である。
図2】回転操作子の右回転を説明する図である。
図3】ユーザーが回転操作子を右回りに操作した場合の信号波形図である。
図4】回転操作子が右回りで位置PMに停止後、位置Aに戻った場合の信号波形図である。
図5】回転操作子が右回りで位置PMに停止後、位置Bに進んだ場合の信号波形図である。
図6】回転操作子の左回転を説明する図である。
図7】ユーザーが回転操作子を左回りに操作した場合の信号波形図である。
図8】回転操作子が左回りで位置PMに停止後、位置Aに戻った場合の信号波形図である。
図9】回転操作子が左回りで位置PMに一旦止まった後、位置Bに進んだ場合の信号波形図である。
図10】ロータリーエンコーダの検出動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明を適用した車載装置10を周辺構成と共に示したブロック図である。
この車載装置10は、自動車などの車両に搭載され、ラジオ放送を受信する受信機能、ラジオ放送などの音声コンテンツの音声を再生する再生機能、及びナビゲーション(車両誘導)に関わる処理を行うナビゲーション機能を備えている。この車載装置10は、車両に据え付けられる据付型に限らず、車両内に持ち運び可能な可搬型の装置であってもよい。また、車両以外の移動体に搭載されてもよい。
【0013】
この車載装置10は、本体部21と、表示部31と、操作部41とを備え、本体部21に、スピーカー51、通信装置52、及びディスクドライブ53が接続されている。
本体部21は、主制御部22と、チューナー部23と、音声出力部24と、映像出力部25と、メモリー26と、センサー部27とを有している。主制御部22は、車載装置10の各部を中枢的に制御するコンピューターとして機能するデバイスである。具体的には、この主制御部22は、マイクロプロセッサー及び周辺回路によって構成されている。メモリー26は、主制御部22が実行する制御プログラム、及び地図データなどの各種のデータを記憶している。
【0014】
チューナー部23は、主制御部22の制御の下、アンテナ23Aを介してラジオ放送を受信し、受信したラジオ放送波に含まれる情報を取得するデバイスである。取得する情報は、例えば、楽曲の音声信号である。本実施形態では、このチューナー部23がアナログ方式のラジオ放送を受信するデバイスであるが、これに限定されず、デジタル方式のラジオ放送を受信するデバイスでもよい。チューナー部23は、受信したラジオ放送に対応する音声信号を出力する。
音声出力部24は、主制御部22の制御の下、各種の音声を出力するデバイスである。例えば、音声出力部24は、チューナー部23から出力された音声信号、メモリー26或いはディスクドライブ53を介して得た楽曲の音声信号を入力し、この音声信号に基づいてスピーカー51を駆動する。これによって、楽曲の音声を車内に放音することができる。また、音声出力部24は、主制御部22の制御の下、音量を調整する機能(音量調整機能)なども有している。
【0015】
映像出力部25は、主制御部22の制御の下、映像信号を出力するデバイスである。例えば、映像出力部25は、操作画面や地図画面などの映像信号を生成し、表示部31に出力する。
センサー部27は、ナビゲーション機能を実現するための各種センサーを備え、具体的には、車速を検出する車速センサー、車両の現在位置を検出する位置検出センサーなどを備えている。位置検出センサーは、GPS衛星からの信号に基づき現在位置を測位するGPS受信装置である。上述したチューナー部23、音声出力部24、映像出力部25、メモリー26及びセンサー部27は、公知の構成を広く適用可能である。
【0016】
スピーカー51は、各種の音声を車内に放音するためのデバイスであり、車両に予め設置されたスピーカーである。なお、スピーカー51を車載装置10に内蔵してもよい。
通信装置52は、主制御部22の制御の下、無線通信機能を有する通信デバイスであり、車載装置10に外部接続された装置である。この通信装置52により、車載装置10は、インターネットにアクセスし、インターネットを介して所定のサーバーからデータを取得可能になる。取得するデータは、最新の地図データ又は道路交通情報などである。なお、通信装置52を車載装置10に内蔵してもよい。
【0017】
ディスクドライブ53は、主制御部22の制御の下、CDなどの光ディスクに記録されたデータを読み取るデバイスである。これにより、光ディスクに記憶された楽曲の音声データを読み取り、音声出力部24により、楽曲の音声を放音させることができる。また、主制御部22は、読み取った音声データを予め規定された圧縮フォーマットで圧縮し、メモリー26に記憶させることもできる。このディスクドライブ53及び圧縮方法についても、従来の構成を広く適用可能である。
【0018】
表示部31は、主制御部22の制御の下、各種の映像を表示する表示デバイスを備えている。具合的には、表示デバイスは、液晶表示装置であり、映像出力部25が出力する映像信号を入力して映像を表示する。なお、液晶表示装置以外の表示装置を適用してもよい。
また、表示部31は、タッチパネル32と、UI処理部33とを有している。タッチパネル32は、表示デバイスの画面に重ねて配置され、ユーザーのタッチ操作を検出するためのデバイスである。
【0019】
UI処理部33は、ユーザーインターフェース(UI)に関する処理を行うデバイスであり、タッチパネル32及び操作部41に関する処理を行うコンピューターとして機能する。このUI処理部33は、タッチパネル32及び操作部41の操作を検出する操作検出部34と、操作検出部34の検出結果に基づき所定の処理を行うUI制御部35とを有している。例えば、UI処理部33は、マイクロプロセッサー及び周辺回路によって構成され、ソフトウェア処理或いはハードウェアによって、操作検出部34とUI制御部35とが実現される。
【0020】
操作検出部34は、ユーザーによるタッチ操作に基づくタッチパネル32の電気的な変化を検出する機能を有し、検出結果に応じた信号をUI制御部35に出力する。また、操作検出部34は、操作部41が有する複数の操作子(回転操作子42を含む)の操作を検出する機能を有し、検出結果に応じた信号をUI制御部35に出力する。
UI制御部35は、操作検出部34の検出結果に基づき、予め規定された操作信号を生成し、主制御部22に出力する。この操作信号は、タッチパネル32を含むいずれかの操作子の操作を示す信号である。主制御部22は、この操作信号を介してユーザー指示を入力し、ユーザー指示に応じた処理(制御)を実行する。
【0021】
操作部41は、ユーザーが操作する複数の操作子を有し、これら操作子には、ユーザーが回転操作する回転操作子42が含まれる。また、操作部41は、回転操作子42の回転操作を検出するためのロータリーエンコーダ43を備えている。なお、図1中の操作部41には、回転操作子42とロータリーエンコーダ43だけを示している。
ロータリーエンコーダ43は、回転操作子42と一体に回転する不図示の回転部を備え、この回転部の回転に応じてパルス信号を出力する。このパルス信号は、UI処理部33の操作検出部34に出力され、操作検出部34によってパルス信号が検出される。UI制御部35は、操作検出部34のパルス信号の検出結果に基づき、回転操作の内容として、回転方向及び回転量を検出する。そして、UI制御部35は検出結果に応じた操作信号を主制御部22に出力する。
【0022】
本構成では、回転操作子42が、ラジオの周波数調整の操作に使用される。より具体的には、回転操作子42が右回り(反時計回りに相当)に回転操作されると、所定角度毎に、予め定めた単位量だけ加算した値に受信周波数が調整される。また、回転操作子42が左回り(反時計回りに相当)に回転操作されると、所定角度毎に、予め定めた単位量だけ減算した受信周波数に調整される。これによって、ユーザーが様々な受信周波数に調整可能である。
【0023】
ロータリーエンコーダ43について更に説明すると、ロータリーエンコーダ43は、回転を1クリック分の回転角度に刻むクリック機構を有している。1クリック分の回転角度は、操作単位である上記所定角度に設定されている。これにより、ロータリーエンコーダ43の回転部が所定角度回転する毎に、クリック機構により回転が規制される。
例えば、ロータリーエンコーダ43にはクリック数18の仕様が適用され、360度を18分割した回転角度、つまり、20度毎に回転が規制される。
【0024】
このロータリーエンコーダ43は、パルス信号として、回転操作に応じて位相の異なる2つの出力パルスを出力する構成であり、いわゆるインクリメント型である。以下、一方の出力パルスをA相の出力パルス、他方の出力パルスをB相の出力パルスと表記する。この構成は、回転方向に応じてA相及びB相の出力パルスの組み合わせのパターンが変化するので、このパターンの違いに基づき回転方向を判別可能である。また、出力パルスを計数することによって、回転量を検出可能である。なお、ロータリーエンコーダ43には、従来の構成を広く適用可能である。
【0025】
次にロータリーエンコーダ43の信号波形を説明する。
図2は、回転操作子42の右回転を説明する図である。図2中、符号XRは、右回りの1クリック分に相当する位置Aから位置Bへの回転動作を示している。
また、図2中、符号YRは、位置Aから1クリック分の回転の途中である位置PMまで回転した後に、位置Aに戻る回転動作を示している。図2中、位置Cは、B相の信号レベルが変化する位置(以下、B相変化位置)であり、位置Dは、A相の信号レベルが変化する位置(以下、A相変化位置)である。なお、図2には、説明を判り易くするため、1クリック分に相当する回転角度を約45度にした場合を示している。
【0026】
図3は、ユーザーが回転操作子42を右回りに操作した場合の信号波形図である。
図3に示すように、位置Aから位置Bへの回転動作XRが行われると、まずA相の出力パルスがHレベルからLレベルへと立ち下がり(位置D)、その後、B相の出力パルスがHレベルからLレベルへと立ち下がる(位置C)。A相及びB相の出力パルスが出力される間隔(角度間隔)は同一である。これによって、1クリック分の右回り回転が行われる毎に、A相の信号レベルが変化した後に、B相の信号レベルが変化する。
図3中、符号TCは、A相の変化時点とB相の変化時点との時間差であり、2つの出力パルスの時間差に相当する。以下、時間差TCと表記する。図3及び後述する各図に示す符号T1については後述する。
【0027】
回転操作子42が位置Aから位置Bへの右回転の途中(位置PM)で止まった場合を図4及び図5を用いて説明する。回転操作子42が途中で止まった場合、ロータリーエンコーダ43のクリック機構による回転規制が働かないので、車体振動などの外力で容易に左右のいずれかに回転する。
図4は、回転操作子42が右回りで位置PMに停止後、位置Aに戻った場合(回転動作YRの場合)の信号波形図である。この場合、A相は、位置DにてHレベルからLレベルへ立ち下がった後、Lレベルの状態が継続し、位置Aに戻る際に位置DにてHレベルに立ち上がる。一方、B相は、位置Aと位置PMの間では信号レベルが変化しないので、信号レベルは一定(Hレベル)である。
【0028】
図4には、位置Aに戻った後、ユーザーが回転動作XRに相当する操作をした場合も示している。図4に示すように、回転停止後に回転したときのA相とB相の時間差TC(回転動作YRの場合の時間差TC)は、回転が止まらない継続回転のときの時間差TC(回転動作XRの場合の時間差TC)よりも大幅に長くなり、図4の例では3倍以上の長さである。
【0029】
図5は、回転操作子42が右回りで位置PMに停止後、位置Bに進んだ場合(一時停止有りの回転動作XRの場合)の信号波形図である。この場合、A相は、位置DにてHレベルからLレベルへ立ち下がった後、Lレベルの状態が継続する。一方、B相は、信号レベルが一定(Hレベル)の状態が続いた後、位置Cにて信号レベルがLレベルへと変化する。このため、A相とB相の時間差TCは、図4と同様に大幅に長くなる。
図5には、ユーザーが回転動作XRに相当する操作をした場合も示している。図5に示すように、回転停止後に回転したときのA相とB相の時間差TCは、回転が止まらない継続回転のときの時間差TCよりも大幅に長い。
【0030】
図6は、回転操作子42の左回転を説明する図である。図6中、符号XLは、反時計回りの1クリック分に相当する位置Aから位置Bへの回転動作を示し、符号YLは、位置Aから1クリック分の回転の途中である位置PMまで回転した後に、位置Aに戻る回転動作を示している。また、位置CはB相変化位置であり、位置DはA相変化位置である。
【0031】
図7は、ユーザーが回転操作子42を左回りに操作した場合の信号波形図である。
図7に示すように、位置Aから位置Bへの回転動作XLが行われると、まずB相の出力パルスがLレベルからHレベルへと立ち上がり(位置C)、その後、A相の出力パルスがLレベルからHレベルへと立ち上がる(位置D)。つまり、1クリック分の左回り回転が行われる毎に、B相の信号レベルが変化した後に、A相の信号レベルが変化する。
なお、回転操作子42を図3の場合と同じ操作速度で操作している場合、A相の変化時点とB相の変化時点との時間差TCは、図3の時間差TCと同じである。
【0032】
図8は、回転操作子42が左回りで位置PMに停止後、位置Aに戻った場合(回転動作YLの場合)の信号波形図である。この場合、B相は、位置CにてLレベルからHレベルへ立ち上がった後、Hレベルの状態が継続し、位置Aに戻る際に位置CにてLレベルに立ち下がる。一方、A相は、位置Aと位置PMの間では信号レベルが変化しないので、信号レベルは一定(Lレベル)である。
図8には、位置Aに戻った後、ユーザーが回転動作XLに相当する操作をした場合も示している。図8に示すように、回転停止後に回転したときのA相とB相の時間差TCは、回転が止まらない継続回転(回転動作XLの操作に相当)のときの時間差TCよりも大幅に長くなっている。
【0033】
図9は、回転操作子が左回りで位置PMに一旦止まった後、位置Bに進んだ場合(一時停止有りの回転動作XLの場合)の信号波形図である。この場合、B相は、位置CにてLレベルからHレベルへ立ち上がった後、Hレベルの状態が継続する。一方、A相は、信号レベルが一定(Lレベル)の状態が続いた後、位置Dにて信号レベルがHレベルへと変化する。このため、A相とB相の時間差TCは、図8と同様に長くなる。
図9には、ユーザーが回転動作XLに相当する操作をした場合も示している。この場合、回転停止後に回転したときのA相とB相の時間差TCは、回転操作が止まらない継続回転のときの時間差TCよりも大幅に長い。
【0034】
ところで、クリック分の回転角度が大きいほど、回転が途中で止まりやすくなり、例えば、1クリック分の回転角度が10度或いは20度を超えると、回転が途中で止まりやすくなると考えられる。
回転が途中で止まると、特に車載装置10の場合、車体振動などの外力が生じやすいので、回転操作子42が一旦止まった後に、外力の影響により位置A又は位置Bへの回転する事態が生じやすい。この回転がユーザーの操作として受け付けられてラジオの受信周波数が変更されると、ユーザーが意図しない周波数に変わってしまう事態が生じる。
そこで、本構成は、2つの出力パルスの時間差TCが、途中で回転が止まったときに長くなることに着目し、この時間差TCに基づき回転の有効、無効を判定し、有効の場合に出力パルスによる回転操作を検出し、無効の場合に無視するようにしている。
【0035】
図10はロータリーエンコーダ43の検出動作を示すフローチャートである。
図10に示すフローチャートは、車載装置10が動作開始した場合、或いは、更に回転操作子42の操作を受け付ける動作状態(例えばラジオ受信状態))になった場合に、UI制御部35が実行する処理である。
まず、UI制御部35は、操作検出部34によりA相又はB相の変化が検出されたか否かの1回目の検出を行う(ステップS1)。UI制御部35は、A相の変化を検出した場合、ステップS2の処理へ移行し、A相又はB相の変化が検出されたか否かの2回目の検出を行う。
また、UI制御部35は、ステップS1において、A相又はB相の変化を検出した場合、時間の計測を開始し、ステップS2において、予め定めた設定時間T1内にA相又はB相の変化が検出されたか否かを判定する。
【0036】
設定時間T1は、2つの出力パルスの時間差TCが、回転停止後に回転したときの時間差TCか、継続回転したときの時間差TCかを判別可能な判定値である。
ここで、図3図5図7図9に示したように、回転停止後に回転したときの時間差TCは、ユーザーが回転操作したとき(継続回転のとき)の時間差TCよりも長い。同図3図5図7図9に示すように、設定時間T1は、回転停止後に回転したときの時間差TCよりも短く、且つ、継続回転のときの時間差TCよりも短い時間に設定される。
より具体的には、ユーザーが回転操作に要する想定時間を設定し、この想定時間よりも長い時間に設定時間T1が設定される。この想定時間は、0〜2秒の範囲内の値が好ましいが、適宜に変更してもよい。
更に、想定時間及び設定時間T1は、次の要素1、2を考慮して設定される。
【0037】
1)ユーザーが1クリック分の回転操作を行う時間は、1クリック分の回転角度に比例する。従って、1クリック分の回転角度が大きいほど、設定時間T1を長い時間に設定する。
2)ユーザーが1クリック分の回転操作を行う時間は、回転操作子42の外径に比例する。従って、回転操作子42の外径が大きいほど、設定時間T1を長い時間に設定する。
なお、上記要素1、2を含む全てを考慮して設定時間T1を設定する場合に限定されない。例えば、いずれか1つ以上の要素を考慮して設定時間T1を設定してもよいし、別の要素を考慮して設定時間T1を設定してもよい。また、この設定時間T1は、UI制御部35が実行する制御プログラム中に書き込まれ、或いは、不図示のメモリーに記憶されているが、設定作業者、或いはユーザーなどが設定時間T1を任意の時間に書き換え可能にしてもよい。
【0038】
ステップS2において、UI制御部35は、設定時間T1内にB相の変化が検出されたと判定した場合、ステップS3の処理に移行する。ステップS3において、UI制御部35は、ロータリーエンコーダ43が検出した回転(1クリック分の回転)を有効と判断し、右回転操作の出力パルスとして受け付け、右回転を示す操作信号を主制御部22に出力する。これによって、主制御部22は、この操作信号に基づきラジオの受信周波数を変更する。
【0039】
一方、ステップS2において、UI制御部35は、設定時間T1内にA相の変化が検出されたと判定した場合、ステップS4の処理に移行する。ステップS4において、UI制御部35は、ロータリーエンコーダ43が検出した回転を無効と判定し、出力パルスを無視する。この場合、UI制御部35は操作信号を出力しないので、主制御部22によるラジオの受信周波数の変更は行われない。
また、ステップS2において、UI制御部35は、設定時間T1後にA相又はB相の変化が検出されたと判定した場合、ステップS5の処理に移行する。ステップS5の処理は、ステップS4の処理と同様であり、UI制御部35は、出力パルスを無視する。これにより、主制御部22によるラジオの受信周波数の変更は行われない。
【0040】
このようにして、2つの出力パルスの時間差TCを正確に検出し、この時間差TCに基づき、ユーザーが右回転操作したか否かを判定する。これにより、ユーザーの意図に沿った受信周波数の調整が可能になる。
【0041】
また、ステップS1において、UI制御部35は、B相の変化を検出した場合、時間の計測を開始するとともに、ステップS6の処理へ移行し、A相又はB相の変化が検出されたか否かの2回目の検出を行う。
ステップS6において、UI制御部35は、設定時間T1内にA相の変化が検出されたと判定した場合、ステップS7の処理に移行する。ステップS7において、UI制御部35は、ロータリーエンコーダ43が検出した回転(1クリック分の回転)を有効と判断し、左回転操作の出力パルスとして受け付け、左回転を示す操作信号を主制御部22に出力する。これによって、主制御部22は、この操作信号に基づきラジオの受信周波数を変更する。
【0042】
また、ステップS6において、UI制御部35は、設定時間T1内にB相の変化が検出されたと判定した場合、ステップS8の処理に移行する。ステップS8において、UI制御部35は、ロータリーエンコーダ43が検出した回転を無効と判定し、出力パルスを無視する。この場合、UI制御部35は操作信号を出力しないので、主制御部22によるラジオの受信周波数の変更は行われない。
また、ステップS6において、UI制御部35は、設定時間T1後にA相又はB相の変化が検出されたと判定した場合、ステップS9の処理に移行する。ステップS9の処理は、ステップS8の処理と同様であり、UI制御部35は、出力パルスを無視する。これにより、この場合も主制御部22によるラジオの受信周波数の変更は行われない。
【0043】
このように、2つの出力パルスの時間差TCを正確に検出し、この時間差TCに基づき、ユーザーが左回転操作したか否かを判定するので、ユーザーの意図に沿った受信周波数の調整が可能になる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態に係る車載装置10は、回転操作子42の回転に応じて位相の異なる2つの出力パルスを出力するロータリーエンコーダ43を備え、操作検出部34が、2つの出力パルスを検出するパルス検出部として機能する。また、UI制御部35が、2つの出力パルスの時間差TCを取得し、時間差TCが設定時間T1内の場合に、出力パルスを回転操作の検出に用い、時間差TCが設定時間T1外の場合、出力パルスを回転操作の検出に用いないようにする。この構成、及び検出方法によれば、ロータリーエンコーダ43を用いた回転操作の検出精度を向上することができ、ユーザーの意図に従った制御が可能になる。
【0045】
また、ロータリーエンコーダ43は、回転量を1クリック分の回転角度に刻むクリック機構を備えるので、1クリックに相当する回転角度単位での操作が可能になるとともに、操作の節度感を持たせることができる。また、1クリック分の回転角度が大きいほど(例えば回転角度が10度以上、或いは20度以上)、途中で回転が停止し易くなるので、本構成では、1クリック分の回転角度を大きくした構成で、回転操作の検出精度を向上できる、という効果が得られる。
なお、1クリック分の回転角度が10度未満であっても、ロータリーエンコーダ43或いは回転操作子42の構造によって途中で止まり易い場合があり、このような場合にも本検出方法は有効である。
【0046】
また、設定時間T1は、ロータリーエンコーダ43の1クリック分の回転角度、及び回転操作子42の外径の少なくともいずれかに比例した時間に設定される。これにより、様々なロータリーエンコーダ43及び回転操作子42の組み合わせに合わせて、設定時間T1を容易に設定できる。
また、1クリック分の回転角度と設定時間T1との対応関係を記述したテーブル、ロータリーエンコーダの外径と設定時間T1との対応関係を記述したテーブル、或いは、1クリック分の回転角度とロータリーエンコーダの外径と設定時間T1との対応関係を記述したテーブルのいずれかを記憶してもよい。この場合、テーブルに基づいて、設定作業者が手動で、或いは、UI制御部35が自動で、設定時間T1を設定し易くなる。
【0047】
また、設定時間T1は、ユーザーが回転操作に要する想定時間よりも長い時間に設定されるので、ユーザーが回転操作したか否かを精度良く判別できる。なお、設定時間T1は、0〜2秒の範囲内であって、ロータリーエンコーダ43の1クリック分の回転角度、及び回転操作子42の外径を考慮して設定することが好ましいが、上記範囲に限定しなくてもよい。
【0048】
また、本構成では、操作検出部34とUI制御部35とを有するUI処理部33がロータリーエンコーダ43の検出装置として機能し、このUI処理部33が車載装置10に設けられた場合を示している。このように、車体振動などの外力により回転操作子42が勝手に回転するおそれの高い車載装置10に本発明の構成を適用することにより、回転操作の検出精度を効率良く高めることができる。
【0049】
上述した実施形態はあくまでも本発明の一態様を例示したものであり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変形、及び応用が可能である。
例えば、上述の実施形態では、回転操作子42をラジオの周波数調整の操作に使用する場合を説明したが、これに限らず、音量調整の操作などの任意の操作に適用してもよい。
また、上述の実施形態では、クリック機構を有するロータリーエンコーダ43の場合を説明したが、クリック機構を有さない構成でもよい。クリック機構を有さない場合、隣接するパルス間の位置で回転が止まった際に、振動等の影響で勝手に回転することがあり、この場合の回転を回転操作として検出する事態を避けることができる。
【0050】
また、図1に示した各ブロックは、ハードウェアとソフトウェアの協働により任意に実現可能であり、特定のハードウェア構成を示唆するものではない。また、図10に示すフローチャートも、各ステップに対応する処理を分割してもよいし、併合してもよく、適宜に変更可能である。
【0051】
また、上述の実施形態では、ロータリーエンコーダ43の検出装置(UI処理部33)が、表示部31に内蔵される場合を説明したが、表示部31に内蔵する場合に限らない。例えば、本体部21又は操作部41に内蔵してもよい。また、主制御部22が、ロータリーエンコーダ43の検出処理を行うようにしてもよい。また、ロータリーエンコーダ43の検出装置は、車載装置10に内蔵される場合に限らず、車載装置10に有線又は無線でされる他の装置でもよい。
また、上述の実施形態では、車載装置10に本発明を適用する場合を説明したが、車載装置10以外の装置に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0052】
10 車載装置
33 UI処理部(検出装置)
34 操作検出部(パルス検出部)
35 UI制御部(制御部)
42 回転操作子
43 ロータリーエンコーダ
TC 時間差
T1 設定時間
図1
図2
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図10