特許第6684660号(P6684660)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6684660
(24)【登録日】2020年4月1日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】肘掛け、及び、椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/54 20060101AFI20200413BHJP
【FI】
   A47C7/54 B
   A47C7/54 E
   A47C7/54 F
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-116596(P2016-116596)
(22)【出願日】2016年6月10日
(65)【公開番号】特開2017-217404(P2017-217404A)
(43)【公開日】2017年12月14日
【審査請求日】2019年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社オカムラ
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 裕一郎
【審査官】 永石 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−113250(JP,A)
【文献】 特開2009−006737(JP,A)
【文献】 特開2010−063833(JP,A)
【文献】 特開2010−094159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/54
B60N 2/75
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に長手の上層部材と、
前記上層部材の下方に配置されて、前記上層部材を支持する下層部材と、
前記上層部材の長手方向に離間した前記下層部材と前記上層部材の間の複数箇所に配置され、前記下層部材に対する前記上層部材の前記長手方向と略直交する方向の変位をガイドする複数の第1ガイド機構と、
一の前記第1ガイド機構に入力された前記上層部材の長手方向と略直交する方向の操作荷重を、他の前記第1ガイド機構に同期させて伝達する回転伝達要素による同期伝達機構と、を備え
前記第1ガイド機構は、
前記下層部材と前記上層部材のいずれか一方に固定された保持部材と、
前記保持部材に回転可能に保持されたプーリーと、
前記下層部材と前記上層部材のいずれか他方に固定され、前記プーリーの外周面に当接して、前記下層部材と前記上層部材の前記長手方向と略直交する方向の相対変位に応じて前記プーリーを回転させる当接部材と、を有し、
前記同期伝達機構は、各前記第1ガイド機構の前記プーリーを同期回転可能に連結する回転軸を有していることを特徴とする肘掛け。
【請求項2】
前記回転軸は、各前記プーリーの軸と一体に形成されていることを特徴とする請求項に記載の肘掛け。
【請求項3】
前記プーリーは外周面に噛合歯を有するピニオンギヤであり、
前記当接部材は前記ピニオンギヤに噛合するラックギヤであることを特徴とする請求項またはに記載の肘掛け。
【請求項4】
前記保持部材はガイド突起を有し、
前記下層部材と前記上層部材のいずれか他方は、前記ガイド突起と摺動可能に当接するガイド溝を有し、
前記ガイド突起と前記ガイド溝とは、前記下層部材に対する前記上層部材の長手方向と略直交する方向の変位をガイドする第2ガイド機構を構成していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の肘掛け。
【請求項5】
前記下層部材と前記上層部材のいずれか他方は、前記下層部材と前記上層部材の長手方向と略直交する方向の任意の相対位置において、前記回転軸を弾性的に保持する複数の保持部を有していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の肘掛け。
【請求項6】
一方向に長手の上層部材と、
前記上層部材の下方に配置されて、前記上層部材を支持する下層部材と、
前記上層部材の長手方向に離間した前記下層部材と前記上層部材の間の複数箇所に配置され、前記下層部材に対する前記上層部材の前記長手方向と略直交する方向の変位をガイドする複数の第1ガイド機構と、
一の前記第1ガイド機構に入力された前記上層部材の長手方向と略直交する方向の操作荷重を、他の前記第1ガイド機構に同期させて伝達する回転伝達要素による同期伝達機構と、を備え、
前記第1ガイド機構は、
前記下層部材と前記上層部材のいずれか一方に固定された保持部材と、
前記保持部材に回転可能に保持されたプーリーと、
前記下層部材と前記上層部材のいずれか他方に固定され、前記プーリーの外周面に当接して、前記下層部材と前記上層部材の前記長手方向と略直交する方向の相対変位に応じて前記プーリーを回転させる当接部材と、を有し、
前記同期伝達機構は、各前記第1ガイド機構の前記プーリーを同方向に同期回転可能に連結する連動ベルトを有していることを特徴とする肘掛け。
【請求項7】
前記プーリーは外周面に噛合歯を有するピニオンギヤであり、
前記当接部材は前記ピニオンギヤに噛合するラックギヤであることを特徴とする請求項に記載の肘掛け。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか1項に記載の肘掛けを備えていることを特徴とする椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、椅子に着座した着座者が肘や腕を載せ置く肘掛け、及び、その肘掛けを備える椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
椅子用の肘掛けとして、着座者の肘載せ荷重を受ける上層部材が、その下方の下層部材に椅子幅方向にスライド変位可能に支持されたものが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
特許文献1,2に記載の肘掛けは、肘掛け本体の下層部材と上層部材とが、ガイド突起とガイド溝による前後一対のガイド機構によって椅子幅方向にスライド変位可能とされている。ガイド機構のガイド溝は、下層部材と上層部材のいずれか一方に椅子幅方向に沿って形成されており、ガイド機構のガイド突起は、下層部材と上層部材のいずれか他方に固定され、ガイド溝に対して摺動自在に嵌合されている。
なお、特許文献2に記載の肘掛けでは、前後のガイド機構のガイド突起同士はリテーナプレートを介して相互に連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5653601号公報
【特許文献2】米国特許第7815259号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1,2に記載の肘掛けにおいては、一対のガイド機構が下層部材と上層部材の長手方向に離間した前後二箇所に配置されているため、着座者の肘や腕から上層部材の前後の偏った位置に椅子幅方向の操作荷重が入力されると、前後のガイド機構に異なるタイミングで偏って荷重が入力され、ガイド機構内に撓みや偏った押し付け力が発生することがある。そして、ガイド機構内に撓みや偏った押し付け力が発生すると、下層部材に対する上層部材の円滑な摺動作動が阻害されることが懸念される。
【0006】
そこで本発明は、上層部材の長手方向の偏った部位に操作荷重が入力された場合にも、上層部材を下層部材に対して長手方向と略直交する方向に円滑に変位させることができる肘掛け、及び、その肘掛けを備えた椅子を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る肘掛けは、上記課題を解決するために、以下の構成を採用した。
本発明に係る一の肘掛けは、一方向に長手の上層部材と、前記上層部材の下方に配置されて、前記上層部材を支持する下層部材と、前記上層部材の長手方向に離間した前記下層部材と前記上層部材の間の複数箇所に配置され、前記下層部材に対する前記上層部材の前記長手方向と略直交する方向の変位をガイドする複数の第1ガイド機構と、一の前記第1ガイド機構に入力された前記上層部材の長手方向と略直交する方向の操作荷重を、他の前記第1ガイド機構に同期させて伝達する回転伝達要素による同期伝達機構と、を備え、前記第1ガイド機構は、前記下層部材と前記上層部材のいずれか一方に固定された保持部材と、前記保持部材に回転可能に保持されたプーリーと、前記下層部材と前記上層部材のいずれか他方に固定され、前記プーリーの外周面に当接して、前記下層部材と前記上層部材の前記長手方向と略直交する方向の相対変位に応じて前記プーリーを回転させる当接部材と、を有し、前記同期伝達機構は、各前記第1ガイド機構の前記プーリーを同期回転可能に連結する回転軸を有していることを特徴とする。
【0008】
本発明の場合、長手方向に離間して配置された複数の第1ガイド機構は、回転伝達要素による同期伝達機構を介して、操作荷重を相互に同期伝達可能とされている。このため、長手方向に離間したいずれかの第1ガイド機構に操作荷重が先に入力されると、同期伝達機構を介して残余の第1ガイド機構に同タイミングで操作荷重が入力されるようになる。同期伝達機構は、回転伝達要素による同期伝達機構であるため、同期伝達機構や第1ガイド機構の内部に撓みや偏った押し付け力が生じにくい。
【0009】
また、この場合、上層部材への操作荷重の入力により、いずれかの第1ガイド機構のプーリーが保持部材に保持されて下層部材と上層部材のいずれか他方と相対変位すると、その相対変位に応じた回転量が対応する当接部材を通してそのプーリーに与えられる。こうして、一の第1ガイド機構のプーリーが回転すると、その回転が回転軸を通して残余の第1ガイド機構のプーリーに同期した回転として伝達される。残余の第1ガイド機構のプーリーに回転が伝達されると、そのプーリーの回転が、当接している当接部材を上層部材の長手方向と略直交する方向に変位させるようになる。この結果、すべての第1ガイド機構の当接部に同タイミングで操作荷重が入力されるようになる。
【0010】
前記回転軸は、各前記プーリーの軸と一体に形成されていても良い。
この場合、複数の第1機構のプーリーと、同期伝達機構を構成する回転軸とを簡素な部品として構成することが可能になる。したがって、この構成を採用することにより、製品コストの低減を図ることができる。
【0011】
前記プーリーは外周面に噛合歯を有するピニオンギヤであり、前記当接部材は前記ピニオンギヤに噛合するラックギヤであっても良い。
この場合、プーリーと当接部材は、ピニオンギヤとラックギヤの噛合歯で常時噛合することになるため、プーリーと当接部材の間の滑りを無くすことができるとともに、当接部材に対するプーリーの傾動を抑制することができる。したがって、この構成を採用することにより、すべての第1ガイド機構を確実に同期させることができるとともに、各第1ガイド機構のガタ付きを抑制することができる。
【0012】
前記保持部材はガイド突起を有し、前記下層部材と前記上層部材のいずれか他方は、前記ガイド突起と摺動可能に当接するガイド溝を有し、前記ガイド突起と前記ガイド溝とは、前記下層部材に対する前記上層部材の長手方向と略直交する方向の変位をガイドする第2ガイド機構を構成するようにしても良い。
この場合、第1ガイド機構の保持部材が、さらに保持部材のガイド突起と、そのガイド突起と摺動可能に当接するガイド溝と、を有する第2ガイド機構によってもガイドされるため、プーリーを保持する保持部材を、上層部材の長手方向と略直交する方向により安定的にガイドすることが可能になる。
【0013】
前記下層部材と前記上層部材のいずれか他方は、前記下層部材と前記上層部材の長手方向と略直交する方向の任意の相対位置において、前記回転軸を弾性的に保持する複数の保持部を有していても良い。
この場合、上層部材を長手方向と略直交する方向に変位させたときに、複数の保持部のうちのいずれかが回転軸を弾性的に保持することにより、操作者に節度感を与えることができる。
【0014】
本発明に係る他の肘掛けは、一方向に長手の上層部材と、前記上層部材の下方に配置されて、前記上層部材を支持する下層部材と、前記上層部材の長手方向に離間した前記下層部材と前記上層部材の間の複数箇所に配置され、前記下層部材に対する前記上層部材の前記長手方向と略直交する方向の変位をガイドする複数の第1ガイド機構と、一の前記第1ガイド機構に入力された前記上層部材の長手方向と略直交する方向の操作荷重を、他の前記第1ガイド機構に同期させて伝達する回転伝達要素による同期伝達機構と、を備え、前記第1ガイド機構は、前記下層部材と前記上層部材のいずれか一方に固定された保持部材と、前記保持部材に回転可能に保持されたプーリーと、前記下層部材と前記上層部材のいずれか他方に固定され、前記プーリーの外周面に当接して、前記下層部材と前記上層部材の長手方向と略直交する方向の相対変位に応じて前記プーリーを回転させる当接部材と、を有し、前記同期伝達機構は、各前記第1ガイド機構の前記プーリーを同方向に同期回転可能に連結する連動ベルトを有していることを特徴とする。
この場合、上層部材への操作荷重の入力により、いずれかの第1ガイド機構のプーリーが保持部材に保持されて下層部材と上層部材のいずれか他方と相対変位すると、その相対変位に応じた回転量が対応する当接部材を通してそのプーリーに与えられる。こうして、一の第1ガイド機構のプーリーが回転すると、その回転が連動ベルトを通して残余の第1ガイド機構のプーリーに同方向の同期した回転として伝達される。残余の第1ガイド機構のプーリーに回転が伝達されると、そのプーリーの回転が、当接している当接部材を上層部材の長手方向と略直交する方向に変位させるようになる。この結果、すべての第1ガイド機構の当接部に同タイミングで操作荷重が入力されるようになる。
なお、前記プーリーは外周面に噛合歯を有するピニオンギヤであり、前記当接部材は前記ピニオンギヤに噛合するラックギヤであっても良い。
【0015】
本発明に係る椅子は、上記のいずれかの肘掛けを備える構成とした。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、一の第1ガイド機構に入力された上層部材の長手方向と略直交する方向の操作荷重を、他の第1ガイド機構に同期させて伝達する回転伝達要素による同期伝達機構を備えているため、長手方向に離間して配置されたいずれの第1ガイド機構に先に操作荷重が入力された場合にも、残余の第1ガイド機構に同タイミングで操作荷重を作用させることができる。したがって、本発明によれば、上層部材の長手方向の偏った部位に操作荷重が入力された場合にも、上層部材を下層部材に対して長手方向と略直交する方向に円滑に変位させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る椅子の斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る椅子の斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係る肘掛けの斜視図である。
図4】本発明の一実施形態に係る肘掛けの図3のIV−IV線に沿う断面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る肘掛けの図4のV−V線に沿う断面図である。
図6】本発明の一実施形態に係る肘掛けの分解側面図である。
図7】本発明の一実施形態に係る支持構造体の斜視図である。
図8】本発明の一実施形態に係る肘掛けの図3のVIII−VIII線に沿う断面図である。
図9】本発明の一実施形態に係る肘掛けの一部の部品を取り去った斜視図である。
図10】本発明の一実施形態に係る肘掛けの一部の部品を取り去った斜視図である。
図11】本発明の一実施形態に係る肘掛けの図8のXI−XI線に沿う断面図である。
図12】本発明の一実施形態に係る肘掛けの一部の部品を取り去った斜視図である。
図13】本発明の他の実施形態に係る肘掛けの同期伝達機構を示す模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係る椅子について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る椅子100を側部上方から見た図であり、図2は、本発明の一実施形態に係る椅子100を後部上方(背凭れ側)から見た図である。
【0019】
図1及び図2に示すように、椅子100は、床面F上に設置される脚部1と、脚部1の上部に設置されるボックス状の支基2と、支基2の上部に取り付けられた座受け部材3と、座受け部材3に前後スライド可能に支持され着座者が着座する座体4と、支基2から座体4の後部上方に延び座体4に着座した着座者の背中を支持する背凭れ7と、背凭れ7の支基2からの延出部の近傍に取り付けられ座体4の左右の側方から上方に延出する一対の肘掛け8と、を備えている。
以下の説明においては、便宜上、座体4に着座した着座者が前を向く方向を「前方」、その反対方向を「後方」と称する。また、椅子100が設置される床面F側とその反対側を結ぶ方向を「上下方向」と称する。また、椅子100の幅方向、つまり前後方向と直交する水平方向を「幅方向」と称する。また、図中において、前方を矢印FRで示し、上方を矢印UPで示し、幅方向の左方を矢印LHで示す。
【0020】
脚部1は、キャスタ11A付きの多岐脚11と、多岐脚11の中央部より起立し昇降機構であるガススプリング(不図示)を内蔵する脚柱12と、を有している。
脚柱12の下部を構成する外筒13は、多岐脚11に回転不能に嵌合して支持されている。脚柱12の上部を構成する内筒14は、上端部に支基2を固定して該支基2を支持するとともに、下部が外筒13に水平方向で回転可能に支持されている。
支基2には、脚柱12の昇降調整機構と背凭れ7の傾動調整機構が内蔵されている。
【0021】
座受け部材3は、支基2の上部に取り付けられた4本のリンクアーム(不図示)と、リンクアーム同士を連結する左右一対の固定フレーム(不図示)と、を有している。
座体4は、座フレーム40と、座フレーム40に張設された張材41と、を有している。張材41の上面は、着座者の荷重を受ける荷重支持面とされている。
【0022】
背凭れ7は、背フレーム70と、背フレーム70に張設された張材71と、を有している。張材71の前面は、着座者の荷重を受ける荷重支持面とされている。
背フレーム70は、下端が支基2に連結された背後枠70Bと、背後枠70Bの前方に設けられた背前枠80Fと、を有している。
【0023】
背後枠70Bは、左右一対の下辺部72及び側辺部73と、左右の側辺部73同士を連結する上辺部74と、を有している。下辺部72と側辺部73と上辺部74とは、例えばアルミニウム合金等の金属または所定の強度を有する樹脂等により一体に形成されている。
左右の下辺部72は、支基2内の傾動調整機構に連結され、支基2の後部の左右両側から後方側に向かって延びている。下辺部72は、後方に向かうにしたがって次第に上方に傾斜している。また、各下辺部72の椅子幅方向外側の側面には、座体4の側方に配置される後述する肘掛け8が取り付けられている。
各下辺部72の後端部には、側辺部73が連続して形成されている。左右の側辺部73は、上方に向かうにしたがって側辺部73同士の離間幅が次第に拡大するように椅子幅方向の外側に向かって傾斜している。
【0024】
肘掛け8は、椅子100の幅方向の左側と右側とに各々設けられている。これらの肘掛け8は、椅子100の左側に設置されるものと右側に設置されるものが、左右対称形状に形成されている。このため、以下においては、椅子100の右側に設置される肘掛け8について図面を参照して説明し、椅子100の左側に設置される肘掛け8についての説明は省略する。
【0025】
図3は、右側の肘掛け8を椅子幅方向の内側上方から見た図であり、図4は、右側の肘掛け8を、図3のIV−IV線に沿って断面にして示した図である。また、図5は、右側の肘掛け8を図4のV−V線に沿って断面にして示した図であり、図6は、右側の肘掛け8を分解して椅子幅方向内側から見た図である。
肘掛け8は、背後枠70Bの下辺部72から椅子幅方向外側へ延びた後に上方に湾曲して延びる前面視L字状の肘掛け支持体15(支持構造体)と、肘掛け支持体15の上端部に支持されて前後方向に延びる肘掛け本体16と、を備えている。
【0026】
肘掛け支持体15は、下端が背後枠70Bの下辺部72に結合される下部支柱15Aと、下部支柱15Aの上部領域に略上下方向に沿って摺動自在に外嵌される昇降筒15Bと、を備えている。昇降筒15Bは、背凭れ7の下辺部72に固定された下部支柱15Aに対して昇降調整可能とされている。
【0027】
肘掛け本体16は、その上面に着座者の肘や腕が載せ置かれる部材であり、肘掛け支持体15の上部に、略水平方向での前後動と左右動と首振り動(回動)を許容した状態で取り付けられている。
【0028】
下部支柱15Aは、背後枠70Bの下辺部72から椅子幅方向外側へ延びた後に上方に湾曲する支柱基材15A−1と、支柱基材15A−1の上端部に嵌合状態で固定された支柱パイプ15A−2と、を有している。支柱基材15A−1は、例えば、アルミニウム合金からなる中実の金属部材によって形成されている。支柱パイプ15A−2は、前後に長い断面略楕円状の金属パイプによって構成されている。支柱パイプ15A−2の内面には、樹脂製のインナースリーブ19が被着されている。インナースリーブ19は、例えばスナップフィト等によって支柱パイプ15A−2に固定されている。
【0029】
昇降筒15Bは、上部が段差状に拡大し、その拡大部よりも下方領域が断面略楕円の筒状に形成されている。昇降筒15Bは、例えば、樹脂によって一体に形成されている。昇降筒15Bの楕円状の内周部の内側には、支柱パイプ15A−2が長手方向に沿って摺動可能に嵌入されている。また、昇降筒15Bの内部には、インナースリーブ19の内側に摺動可能に嵌入される断面略楕円状の金属製のインナーパイプ18が配置されている。インナーパイプ18は、その上端部がトッププレート10に固定され、トッププレート10が昇降筒15Bの上面に設けられた凹部15B−a内に固定されている。したがって、インナーパイプ18は、トッププレート10を介して昇降筒15B内に固定設置されている。
【0030】
支柱パイプ15A−2内に固定されたインナースリーブ19は、左右の側壁に高さ調節スリット20が形成されている。高さ調節スリット20は、インナースリーブ19の軸線方向(略上下方向)に延びる昇降案内スリット20aと、昇降案内スリット20aから前方に延びる複数の係止スリット20bと、を有している。複数の係止スリット20bは、インナースリーブ19の軸線方向(略上下方向)にほぼ等間隔に離間して形成されている。
【0031】
インナーパイプ18の左右の側壁の下端寄りの領域には、前後方向に長い長孔状のピン移動孔22が形成されている。左右のピン移動孔22には、インナースリーブ19の高さ調節スリット20のいずれかの係止スリット20bに係止可能な係止ピン21が保持されている。係止ピン21は、両端部がインナーパイプ18の左右のピン移動孔22から側方に突出し、ピン移動孔22から突出した左右の端部が、高さ調節スリット20のいずれかの係止スリット20bと係止可能とされている。係止ピン21の両側部は、左右の各ピン移動孔22に前後移動可能に保持されている。
【0032】
係止ピン21は、ピン移動孔22の前端側に移動したとき、両端部が高さ調節スリット20の何れかの係止スリット20bに係止される。このとき、肘掛け本体16側と一体の昇降筒15Bとインナーパイプ18とが、係止ピン21を介して、高さ調節スリット20のいずれかの係止スリット20bに係止されることにより、肘掛け本体16の昇降がロックされる。この肘掛け8においては、係止ピン21を係止する係止スリット20bをいずれかに変更することにより、肘掛け本体16の固定高さを多段階に調節することができる。
また、係止ピン21は、ピン移動孔22の後端側に移動したときには、係止スリット20bによる係止を解除して昇降案内スリット20a内に至る。このとき、肘掛け本体16の昇降ロックが解除され、肘掛け本体16の自由な昇降が可能になる。
【0033】
インナーパイプ18の左右の側壁の上部寄りの領域には、椅子幅方向に略沿って延出する支持軸17が保持されている。支持軸17には、インナーパイプ18内に配置された揺動レバー23が回動可能に支持されている。揺動レバー23は、支持軸17の軸支部から上方に延びる上方延出部23uと軸支部の下方に延びる下方延出部23lと、を有している。上方延出部23uの上端部には、後述する昇降操作レバー24の後下係合溝25に摺動可能に係合する係合ピン26が保持されている。下方延出部23lの下縁部には係止ピン21を保持するピン保持部27が設けられている。下方延出部23lのピン保持部27よりも下方には、ピン保持部27から下方に延出した後に下端後部から上方に弧状に湾曲したバネ片28が延設されている。
【0034】
インナーパイプ18の上端部に固定されたトッププレート10は、平面視でインナーパイプ18の周囲に、特に、前後方向に大きく張り出している。トッププレート10の前方側の張り出し部の下方には、揺動レバー23を操作するための昇降操作レバー24の枢軸24aが配置されている。昇降操作レバー24の枢軸24aは、昇降筒15Bの上部側の側壁に回動可能に支持されている。昇降操作レバー24は、上記の枢軸24aと、枢軸24aの前方に延びる前方延出部24fと、枢軸24aの後方に延びる後方延出部24bと、を有している。前方延出部24fの前下部には、昇降筒15Bの上端部の外側に突出して使用者による上方への押入操作を可能とする操作部24cが設けられている。後方延出部24bの後端部下側には、揺動レバー23の上端部の係合ピン26と係合する上記の後下係合溝25が設けられている。
【0035】
揺動レバー23は、バネ片28の後上端がインナーパイプ18の内壁に前方から当接する(インナーパイプ18内を通過する操作ケーブル34を介して当接する場合も含む。)ことで、下端部を前方に変位させるように付勢されている。このとき、係止ピン21は、ピン移動孔22の前端に移動し、高さ調節スリット20の何れかの係止スリット20bと係合する。揺動レバー23の下端部が前方に付勢されていると、揺動レバー23の上端部が後方に変位し、昇降操作レバー24の後方延出部24bの後端部を上方に変位させ、操作部24cを昇降筒15Bの上端部の外側へ突出させる。この操作部24cが操作者によって上方へ押し込まれると、昇降操作レバー24の後端部が揺動レバー23の上端部を前方に変位させ、揺動レバー23の下端部をバネ片28の付勢力に抗して後方へ変位させる。すると、係止ピン21は、ピン移動孔22の後端に移動し、高さ調節スリット20の係止スリット20bとの係合を解除するとともに昇降案内スリット20a内に至り、肘掛け本体16の自由な昇降操作を可能にする。
【0036】
昇降筒15Bの上面には、昇降筒15Bの上端面をなすようエンドプレート29が取り付けられている。エンドプレート29は、下面側の一部が凹部15B−a内に挿入され、トッププレート10の上面に重ねられた状態で昇降筒15Bに共締め固定されている。
【0037】
図7は、エンドプレート29が上部に取り付けられた昇降筒15Bを椅子幅方向の内側斜め上方から見た図であり、図8は、肘掛け本体16を、図3のVIII−VIII線に沿って断面にして示した図である。
図7に示すように、平面視におけるエンドプレート29の略中央には、短軸円柱状の膨出部30と、膨出部30よりも外径の小さい短軸円柱状の小径部31が突設されている。小径部31は、膨出部30の上面に段差状に突設され、膨出部30と小径部31とは、両者の軸心oが合致するように形成されている。本実施形態においては、膨出部30と小径部31とが枢軸部を構成している。肘掛け本体16は、エンドプレート29の小径部31と膨出部30の上部に回動可能に支持されている。肘掛け本体16は、図8に示すように、エンドプレート29上に載置される下部ユニット16Lと、下部ユニット16L上に載置されている上部ユニット16Uと、を備えている。
【0038】
図9は、下部ユニット16Lのカバー部材37を取り去った肘掛け8を椅子幅方向の内側斜め上方から見た図である。
下部ユニット16Lは、上方側が開放された収容空間sを形成するとともに収容空間s内に小径部31を突出させた状態でエンドプレート29上に載置されたベース部材32と、収容空間s内でベース部材32に相対回動不能に、かつ一方向のみに相対移動可能に(摺動可能に)係合されるとともに、小径部31と膨出部30とに軸受部33aを介して回動可能に支持された挟持ブロック33と、支基2内の機構を、操作ケーブル34を介して遠隔操作するための操作レバー35と、操作ケーブル34のインナーケーブル34iを下部ユニット16L内で巻回させる前プーリー36f及び後プーリー36rと、収容空間sの上方開放部を閉塞するカバー部材37と、を備えている。
【0039】
ベース部材32は、前後方向に長い略矩形状の底壁の左右に前後方向に略沿って起立する側壁32sが延設されている。また、ベース部材32の前部側には、操作レバー35を回動可能に支持する前段差部32aが上方に隆起して形成されている。ベース部材32の底壁には、エンドプレート29の膨出部30と小径部31を上方に挿通させる長孔状の挿通孔38が形成されている。
【0040】
挟持ブロック33は、上下方向(小径部31及び膨出部30の軸線oに沿う方向)の高さを抑えた偏平な直方体状に形成されている。挟持ブロック33は、ベース部材32の挿通孔38を上方に貫通したエンドプレート29の小径部31と膨出部30に対して軸受部33aが回動可能に嵌合され、その状態でワッシャ63とボルト62を介してエンドプレート29に抜け止めされている。挟持ブロック33は、この状態において、左右の端面がベース部材32の左右の側壁32sの内面に摺動自動に当接している。
本実施形態においては、挟持ブロック33の左右の端面とベース部材32の側壁32sの内面とが、挟持ブロック33とベース部材32の略水平な一方向の相対変位のみを許容するガイド機構を構成している。また、エンドプレート29の小径部31及び膨出部30と、挟持ブロック33の軸受部33aとは、肘掛け本体16を、肘掛け支持体15(支持構造体)に対して略水平方向に回動可能に連結する回動機構を構成している。
【0041】
図10は、肘掛け支持体15の上部に肘掛け本体16側の挟持ブロック33のみを組み付けた状態を示す斜視図であり、図11は、肘掛け8を、図8のXI−XI線に沿って断面にして示した図である。
エンドプレート29には、肘掛け支持体15(支持構造体)の内部から小径部31の軸線oの下方を通って小径部31の近傍から操作ケーブル34を肘掛け本体16の内部へと案内するケーブル挿通部57を有している。ケーブル挿通部57は、エンドプレート29の小径部31の軸線oよりも後方側の下面から、エンドプレート29の小径部31の軸線oより前方側の上面と膨出部30の前面とに跨る連続した孔によって構成されている。なお、膨出部30の前方部分は、円弧面の一部が平坦に切り欠かれており、ケーブル挿通部57の肘掛け本体16内に臨む開口57aは、膨出部30の前方側の平坦な面と、その前方側のエンドプレート29の上面とに跨って形成されている。
【0042】
また、エンドプレート29と、エンドプレート29の小径部31と膨出部30の上部に回動可能に連結される挟持ブロック33には、両者の相対回動角度を規制する回動規制機構が設けられている。この回動規制機構は、エンドプレート29の膨出部30の後方側(小径部31の軸線oを挟んでケーブル挿通部57の開口57aと相反する側)に形成された略扇状の回動許容孔58の左右の側壁58sと、挟持ブロック33から下方に突出して回動許容孔58内に挿入される略扇状の変位規制突起59と、を有している。
本実施形態においては、エンドプレート29に形成された回動許容孔58の左右の側壁58sが回動規制機構の支持構造体側の回動規制要素を構成し、挟持ブロック33に突設された変位規制突起59が回動規制機構の肘掛け本体16側の回動規制要素を構成している。支持構造体側の回動規制要素を構成する回動許容孔58の左右の側壁58sと、肘掛け本体16側の回動規制要素を構成する変位規制突起59は、支持構造体である肘掛け支持体15の内部に配置されている。
【0043】
ここで、挟持ブロック33に設けられた変位規制突起59は、挟持ブロック33とエンドプレート29の間に配置されるベース部材32の底壁の挿通孔38を上方から下方に貫通し、その状態でエンドプレート29上の回動許容孔58内に突出している。ベース部材32の底壁の挿通孔38は、エンドプレート29の膨出部30と小径部31をベース部材32の上方に突出させる長孔状の孔であるが、本実施形態においては、同じ挿通孔38を変位規制突起59をベース部材32の下方に突出させるための孔として共用している。
【0044】
操作レバー35は、側面視がL字状に形成されている。操作レバー35は、左右方向に沿って延びてベース部材32の前段差部32a上に回動可能に支持される支持軸35aと、支持軸35aから下方に延びる下方延出部35lと、下方延出部35lの下端から前方に延びる前方延出部35fと、を備えている。操作レバー35は、前段差部32a内の揺動空間で支持軸35aを中心に揺動可能とされている。前方延出部35fの前部は、前段差部32aの下部前方に突出する操作部35cとされている。操作部35cは、肘掛け本体16の上部ユニット16Uの前部下方に位置している。操作部35cは、上部ユニット16Uに腕を載せた使用者が、その指先で引き上げるように操作可能とされている。
【0045】
操作レバー35の下方延出部35lの下端部には、左右方向に沿う支持軸39を介して前プーリー36fが回転自在に支持されている。前プーリー36fは、操作レバー35の操作部35cの引き上げ操作により下方延出部35lが前上がりに回動すると、下方延出部35lの回動に伴って前上方に移動する。
後プーリー36rは、上下方向に沿う支持軸42を介してベース部材32の底壁の後端部に回転自在に支持されている。
【0046】
操作ケーブル34は、アウターケーブル34oおよびインナーケーブル34iを備えている。操作ケーブル34は、支基2から肘掛け支持体15内を通じて延びて肘掛け本体16の下部ユニット16L内に至る。操作ケーブル34のアウターケーブル34oは、その先端部が、挟持ブロック33に形成されたアウターケーブル係止部33bに係止されている。操作ケーブル34のインナーケーブル34iは、アウターケーブル34oの先端部から前方に延びた後、前プーリー36fに下方から上方に巻回されて後方へ折り返されている。インナーケーブル34iは、前プーリー36fで後方へ折り返した後プーリー36rに幅方向一側から他側(図では幅方向内側から外側)に巻回されて前方側に折り返されている。インナーケーブル34iは、後プーリー36rで前方側に折り返された後、その先端部が挟持ブロック33の後端部の幅方向外側に係止されている。
上記構成において、操作レバー35の操作部35cが引き上げ操作されると、前プーリー36fが前上方に移動してインナーケーブル34iを引出し、支基2内の機構を作動させる。
【0047】
ここで、前プーリー34fは、肘掛け本体16を前後方向に移動させるときにも前後方向に移動するが、このとき、アウターケーブル34oの先端部よりも前方で前プーリー34fが前後移動することと併せて、インナーケーブル34iの先端部よりも後方で後プーリー36rが前後移動する。このため、アウターケーブル34oの先端部よりも前方におけるインナーケーブル34iの長さが増減しても、インナーケーブル34iの先端部よりも後方におけるインナーケーブル34iの長さが同等量だけ減増する。このため、インナーケーブル34iの引出し長さの変化が抑えられ、肘掛け本体16の前方移動時にインナーケーブル34iが引かれたり肘掛け本体16の後方移動時にインナーケーブル34iが弛んだりすることが抑止される。
【0048】
下部ユニット16Lのカバー部材37の前部側領域と上部側領域には、前側支持ブロック43Fと後側支持ブロック43Rがそれぞれ上方に向かって突設されている。これらの前側支持ブロック43Fと後側支持ブロック43Rとは、それぞれ上部が肘掛け本体16の上部ユニット16U内に突出している。
【0049】
上部ユニット16Uは、下部ユニット16Lのカバー部材37上に配置される上部ベース部材44と、上部ベース部材44上に収容空間suを空けて重なる上部カバー部材45と、上部カバー部材45を上方から覆うパッド部材46と、上部カバー部材45とパッド部材46との間に介装されるとともにウレタン等からなるクッション部材65と、を備えている。上部ユニット16Uは、側面視で上方に凸の緩やかな湾曲状をなし、前部は前下がりに傾斜するとともに後部は後下がりに傾斜している。
【0050】
図12は、上部ユニット16Uの上部カバー部材45とクッション部材65とパッド部材46を取り去って肘掛け8を椅子幅方向内側の上方から見た図である。
図8図12に示すように、上部ユニット16Uの収容空間suには、前後に長い肘掛け本体16の上部ユニット16Uを平行に左右移動させるための後に詳述する同期伝達機構47が設けられている。
前後に長い上部ユニット16Uを左右方向に移動させる場合、上部ユニット16Uの前後端部の何れかを把持して行う操作では、上部ユニット16Uに平面視の傾きが生じてスムーズな左右移動の妨げになったり、意図せずに肘掛け本体16の小径部31回りの回動が生じることがある。これに対し、同期伝達機構47により上部ユニット16Uの前後端部の左右移動を均等化することで、上部ユニット16Uの左右方向の平行移動を補助することができる。
【0051】
上部ベース部材44の底壁の前部側領域と後部側領域には、左右方向に沿って延出する挿通孔48F,48Rが形成されている。この各挿通孔48F,48Rには、図8に示すように、下部ユニット16Lに突設された前側支持ブロック43Fと後側支持ブロック43Rが下方から挿通されている。挿通孔48F,48Rを通して上方に突出した前側支持ブロック43Fと後側支持ブロック43Rには、それぞれ軸受ブロック49F,49R(保持部材)が固定されている。
なお、前側支持ブロック43Fは、図9に示すように、操作レバー35の支持軸35aを支持する左右の軸受部32a−1の後部にそれぞれ一体に形成されている。左右の前側支持ブロック43Fの各上面には、ねじ穴32a−2が形成されている。前側の軸受ブロック49Fは、左右の前側支持ブロック43Fの上面に重ねられ、左右の前側支持ブロック43の各ねじ穴32a−2にねじ止めされている。
前後の軸受ブロック49F,49Rには、前後方向に沿って(上部ベース部材44の長手方向に沿って)延出する回転軸50の前後の端部が回転自在に保持されている。回転軸50の前側の軸受ブロック49Fの近傍部には、プーリーの一形態であるピニオンギヤ51Fが一体に設けられている。同様に回転軸50の後側の軸受ブロック49Rの近傍部には、プーリーの一形態である同様のピニオンギヤ51Rが一体に設けられている。
【0052】
これに対し、上部ベース部材44上の前後の各ピニオンギヤ51F,51Rに対応する位置には、ピニオンギヤ51F,51Rと噛合するラックギヤ52F,52Rが固定設置されている。前後の各ラックギヤ52F,52Rの歯面は前後方向に沿うよう形成され、対応する各ピニオンギヤ51F,51Rの歯面も同様に前後方向に沿うように形成されている。また、前側のピニオンギヤ51Fの歯数及びピッチは、後側のピニオンギヤ51Rの歯数及びピッチと同じに設定されている。
本実施形態の場合、前後のピニオンギヤ51F,51Rとラックギヤ52F,52Rの対は、相互に噛合することにより、下部ユニット16L(下層部材)に対する上部ユニット16U(上層部材)の長手方向と略直交する方向の変位をガイドする第1ガイド機構を構成している。
【0053】
ここで、上部ユニット16Uの前後のいずれか一方に偏って左右方向の操作荷重が入力されると、前後の一方のラックギヤ52Fまたは52Rを通して対応するピニオンギヤ51Fまたは51Rに操作方向に応じた方向の回転力が伝達され、その回転力が回転伝達要素である回転軸50を通して他方のピニオンギヤ51Rまたは51Fに伝達される。すると、他方のピニオンギヤ51Rまたは51Fに噛合するラックギヤ52Rまたは52Fが一方のラックギヤ52Fまたは52Rの変位と同期して同方向に同量だけ変位する。したがって、上部ユニット16Uは、下部ユニット16Lに対して前後で同方向に同量だけ変位することになる。
本実施形態の場合、回転軸50は、前後のピニオンギヤ51F,51Rとラックギヤ52F,52Rの対の作動を相互に連動させ、前後の一方のラックギヤ52Fまたは52Rに入力された長手方向と略直交する方向の操作荷重を、他方のラックギヤ52Rまたは52Fに同期させて伝達する同期伝達機構47の回転伝達要素を構成している。
【0054】
また、本実施形態の場合、上部ベース部材44の前側の挿通孔48Fの前方側と、後側の挿通孔48Rの後方側に、上方に隆起する隆起部53F,53Rが設けられ、その隆起部53F,53Rに上方側に開口するガイド溝53F−a,53R−aが形成されている。各ガイド溝53F−a,53R−aは左右方向に沿って(上部ベース部材44の長手方向と略直交する方向に沿って)形成されている。これに対し、前側の軸受ブロック49Fと後側の軸受ブロック49Rには、前後のガイド溝53F−a,53R−aに摺動自在に挿入されるガイド突起54F,54Rが突設されている。本実施形態の場合、ピニオンギヤ51F,51Rとラックギヤ52F,52Rによる第1ガイド機構だけでなく、ガイド突起54F,54Rとガイド溝53F−a,53R−aによる第2ガイド機構によっても、下部ユニット16Lに対する上部ユニット16Uの左右方向の相対変位を案内している。
【0055】
また、回転軸50の軸方向の略中間位置には、前後の他の部位に比較して外径の大きい大径部55が一体に設けられている。これに対し、上部ベース部材44の上面の長手方向の略中間位置には、下部ユニット16Lと上部ユニット16Uの左右方向の(長手方向と略直交する方向の)任意の相対位置において、回転軸50の大径部55を弾性的に保持可能な複数の凹部56(保持部)が形成されている。この凹部56は、回転軸50の大径部55に嵌合することにより、回転軸50に保持抵抗を付与し、もって上部ユニット16Uの操作者に節度感を与えることができる。なお、本実施形態においては、複数の凹部56は弾性を有する樹脂部材によって形成されている。
また、本実施形態においては、回転軸50の大径部55を弾性的に保持可能な複数の凹部56(保持部)が上部ベース部材44の上面に形成されているが、図12中の仮想線で示すように、上部カバー部材45の下面に保持部材60を突設し、その保持部材60に、回転軸50の大径部55を弾性的に保持可能な複数の保持溝60aを設けるようにしても良い。
【0056】
なお、本実施形態においては、第1ガイド機構を構成するプーリーと当接部材としてピニオンギヤ51F,51Rとラックギヤ52F,52Rを採用しているが、プーリーと当接部材は、相互に噛合する歯面を持たずに摩擦抵抗のみによって動力伝達可能に当接するものであっても良い。
また、本実施形態においては、回転軸50の前後の端部が前後の軸受ブロック49F,49Rに保持され、回転軸50の前部寄りの外周面と後部寄りの外周面とにピニオンギヤ51F,51R(プーリー)が一体に形成されているが、前後のピニオンギヤ(プーリー)を対応する軸受ブロックに個別に軸支させ、前後のピニオンギヤ(プーリー)を別体の回転軸によって連動可能に連結するようにしても良い。
【0057】
本実施形態に係る肘掛け8は、肘掛け本体16の上部ユニット16Uが着座者によって把持され、上部ユニット16Uに対して前後方向、左右方向、首振り方向(回動方向)の操作荷重が加えられると、肘掛け8内の各部は以下のように作動する。
【0058】
上部ユニット16Uに前後方向の操作荷重が加えられた場合には、肘掛け支持体15側の小径部31に支持された挟持ブロック33に対し、肘掛け本体16の下部ユニット16Lが上部ユニット16Uとともに前後方向に変位する。このとき、下部ユニット16Lのベース部材32の左右の側壁32sが挟持ブロック33の左右の端面と摺動することで、下部ユニット16Lの前後方向の変位がガイドされる。
【0059】
上部ユニット16Uに左右方向の操作荷重が加えられた場合には、挟持ブロック33を介して肘掛け支持体15の小径部31と膨出部30の上部に支持された下部ユニット16Lに対し、上部ユニット16Uが左右方向に変位する。このとき、下部ユニット16Lに対して上部ユニット16Uが上述のガイド機構によって左右方向にガイドされるとともに、同期伝達機構47を介して上部ユニット16Uの前部側と後部側の左右移動が均等化される。
【0060】
上部ユニット16Uに水平回動方向の操作荷重が加えられた場合には、肘掛け支持体15側の小径部31と膨出部30に対して挟持ブロック33が軸受部33aで回動し、これに伴って挟持ブロック33に回動不能に係合された下部ユニット16Lのベース部材32が挟持ブロック33と一体に回動する。この結果、下部ユニット16Lに支持された上部ユニット16Uも同方向に回動する。
また、下部ユニット16Lが所定角度以上回動すると、挟持ブロック33からエンドプレート29の回動許容孔58内に突出する変位規制突起59が、回動許容孔58内のいずれか一方の側壁58sに当接し、それによって肘掛け本体16の回動が規制される。
【0061】
以上のように、本実施形態に係る肘掛け8は、前後の一方の第1ガイド機構(ピニオンギヤ及びラックギヤ)に入力された上部ユニット16Uの長手方向と略直交する方向の操作荷重を、他の第1ガイド機構(ピニオンギヤ及びラックギヤ)に同期させて伝達する回転伝達要素による同期伝達機構47を備えている。このため、上部ユニット16Uの前後のいずれの第1ガイド機構に先に操作荷重が入力された場合にも、残余の第1ガイド機構に同タイミングで同方向の操作荷重を作用させることができる。
したがって、本実施形態に係る肘掛け8においては、上部ユニット16Uの前後のいずれかに偏って左右方向の操作荷重が入力された場合にも、上部ユニット16Uを左右方向に円滑に変位させることができる。
また、本実施形態に係る肘掛け8においては、回転軸50を用いる回転伝達要素による同期伝達機構47を採用しているため、同期伝達機構47や第1ガイド機構の内部に撓みや偏った押し付け力が生じにくい。
【0062】
また、本実施形態に係る肘掛け8においては、第1ガイド機構が、下部ユニット16Lに固定された保持部材である軸受ブロック49F,49Rと、軸受ブロック49F,49Rに回転可能に保持されたプーリーであるピニオンギヤ51F,51Rと、上部ユニット16Uに固定され、ピニオンギヤ51F,51Rの外周面に当接する当接部材であるラックギヤ52F,52Rと、を有し、前後のラックギヤ52F,52Rが回転軸50によって連動可能に連結されている。このため、簡単な構成でありながら、上部ユニット16Uに入力された左右方向の操作荷重を前後に同タイミングで伝達することができる。
【0063】
また、本実施形態に係る肘掛け8は、同期伝達機構47の回転伝達要素を構成する回転軸50が前後のプーリー(ピニオンギヤ51F,51R)の軸と一体に形成されている。このため、前後の第1ガイド機構のプーリーと同期伝達機構47とを部品点数の少ない簡素な構成として、製品コストの低減を図ることができる。
【0064】
さらに、本実施形態のように、第1ガイド機構のプーリーと当接部材とを、ピニオンギヤ51F,51Rとラックギヤ52F,52Rによって構成した場合には、プーリーと当接部材の間の滑りを無くすことができるとともに、当接部材に対するプーリーの傾動を抑制することができる。したがって、本実施形態に係る肘掛け8においては、前後の第1ガイド機構をガタ付きなく確実に同期させることができる。
【0065】
また、本実施形態に係る肘掛け8においては、下部ユニット16Lと上部ユニット16Uの間に、第1ガイド機構とは別に、前後の軸受ブロック49F,49R(保持部材)に突設されたガイド突起54F,54Rと、ガイド突起54F,54Rと当接するガイド溝53F−a,53R−aとから成る第2機構が設けられている。このため、ピニオンギヤ51F,51Rを保持する前後の軸受ブロック49F,49Rを長手方向と略直交する方向により安定的にガイドすることができる。
【0066】
また、本実施形態に係る肘掛け8にあっては、上部ユニット16Uの上部ベース部材44に、下部ユニット16Lと上部ユニット16Uの長手方向と略直交する方向の任意の相対位置において、回転軸50の大径部55を弾性的に保持する複数の凹部56が設けられている。このため、上部ユニット16Uを長手方向と略直交する方向に変位させたときに、凹部56による保持抵抗により、操作者に節度感を与えることができる。また、上部ユニット16Uの上部カバー部材45側に、回転軸50の大径部55を弾性的に保持する複数の保持溝60aを形成した場合にも同様の効果を得ることができる。
【0067】
つづいて、図13に示す本発明の他の実施形態について説明する。
図13は、上部カバー部材とパッド部材を取り去って肘掛け108を上方側から見たときの図である。
上部ユニット116U側の上部ベース部材44の前部領域と後部領域には、左右方向に延びる挿通孔61F,61Rが形成されている。下部ユニット(不図示)には、上方に向かって突出する軸部62F,62Rが固定されており、その軸部62F,62Rが、前後の挿通孔61F,61Rを通して上部ベース部材44の上方に突出している。
【0068】
上部ベース部材44の上方に突出した各軸部62F,62Rには、プーリーの一形態であるピニオンギヤ151F,151Rが固定されている。上部ベース部材44の上面の挿通孔61Fの前方側領域と挿通孔61Rの後方側領域には、前後の各ピニオンギヤ151F,151Rと噛合するラックギヤ152F,152Rが固定されている。
前後のピニオンギヤ151F,151Rの上部には、円環状のベルト係合部151F−a,151R−aが一体に設けられている。前後のピニオンギヤ151F,151Rのベルト係合部151F−a,151R−aには、中央部で交差するように半回転捩られた連動ベルト64が巻回されている。
本実施形態においては、前側のピニオンギヤ151Fとラックギヤ152Fの対と、後側のピニオンギヤ151Rとラックギヤ152Rの対がそれぞれ第1ガイド機構を構成し、連動ベルト64が同期伝達機構147の回転伝達要素を構成している。
【0069】
本実施形態の肘掛け108の場合、上部ユニット116の前後方向の一方に偏って左右方向の操作荷重が入力されると、一方のラックギヤ152Fまたは152Rの左右変位に応じて同側のピニオンギヤ151Fまたは151Rが回転し、その回転が連動ベルト64を介して他方のピニオンギヤ151Rまたは151Fに逆方向の回転として伝達される。こうして、他方のピニオンギヤ151Rまたは151Fが逆方向に回転すると、そのピニオンギヤ151Rまたは151Fに噛合する他方のラックギヤ152Rまたは152Fが一方のラックギヤ152Fまたは152Rと同方向に同量だけ変位することになる。
本実施形態の肘掛け108の場合も、上記の実施形態のほぼ同様の基本的な効果を得ることができる。
【0070】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、上述した他の実施形態においては、相互に噛合するピニオンギヤとラックギヤが第1ガイド機構を構成しているが、これらは係合摩擦のみで動力伝達可能に係合される歯面のないプーリーと当接部材によって構成しても良い。
【符号の説明】
【0071】
8,108 肘掛け
16L 下部ユニット(下層部材)
16U 上部ユニット(上層部材)
47,147 同期伝達機構
49F,49R 軸受ブロック(保持部材)
50 回転軸
51F,51R,151F,151R ピニオンギヤ(プーリー,第1ガイド機構)
52F,52R,152F,152R ラックギヤ(当接部材,第1ガイド機構)
53F−a,53R―a ガイド溝(第2ガイド機構)
54F,54R ガイド突起(第2ガイド機構)
56 凹部(保持部)
64 連動ベルト
100 椅子
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