特許第6684733号(P6684733)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6684733
(24)【登録日】2020年4月1日
(45)【発行日】2020年4月22日
(54)【発明の名称】エアシャワー装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/007 20060101AFI20200413BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20200413BHJP
【FI】
   F24F7/007 B
   F24F7/06 C
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-30926(P2017-30926)
(22)【出願日】2017年2月22日
(65)【公開番号】特開2018-136081(P2018-136081A)
(43)【公開日】2018年8月30日
【審査請求日】2019年3月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】矢田 洋一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 博利
(72)【発明者】
【氏名】吉井 泰生
【審査官】 奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−102274(JP,A)
【文献】 特開平08−213445(JP,A)
【文献】 特開2004−060919(JP,A)
【文献】 特開平10−180208(JP,A)
【文献】 特開2009−144968(JP,A)
【文献】 特開2010−059648(JP,A)
【文献】 特開2015−045418(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3124427(JP,U)
【文献】 特開平04−186043(JP,A)
【文献】 国際公開第03/070812(WO,A1)
【文献】 特開2006−300439(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0069576(US,A1)
【文献】 特開2011−021792(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/00−13/32、
B08B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアジェットにより、フィルタで塵埃を除去した清浄な空気を装置内の人や物品に吹き付けて塵埃を除去するエアシャワー装置であって、
静電気を中和するイオンを発生する静電気除去装置と、
装置内の人や物品の帯電電位を測定する静電気電荷測定器と、
前記エアジェットの動作時間を設定するタイマ装置と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記静電気電荷測定器で測定した帯電電位に応じて、前記エアジェットの風速を変化させるとともに、
前記エアジェットの動作時間が、前記タイマ装置で設定した動作時間に到達し、前記静電気電荷測定器で測定した帯電電位が所定の電位以下となった場合に、前記エアジェットの動作を停止することを特徴とするエアシャワー装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエアシャワー装置において、
前記静電気電荷測定器で測定した帯電電位を表示することを特徴とするエアシャワー装置。
【請求項3】
請求項に記載のエアシャワー装置において、
前記制御部は、前記静電気電荷測定器で測定した帯電電位が高い場合には、前記エアジェットの風速を高速とし、帯電電位が低い場合には、前記エアジェットの風速を低速とすることを特徴とするエアシャワー装置。
【請求項4】
請求項1に記載のエアシャワー装置において、
前記制御部は、人が装置内へ入室したことを検知して、前記エアジェットおよび前記静電気除去装置を動作させることを特徴とするエアシャワー装置。
【請求項5】
請求項1に記載のエアシャワー装置において、
前記制御部は、少なくとも前記エアジェットが動作中は、ダーティ側インターロックおよびクリーン側インターロックを動作させることを特徴とするエアシャワー装置。
【請求項6】
請求項1に記載のエアシャワー装置において、
前記エアジェットは、ファンと該ファンを駆動するモータを備えることを特徴とするエアシャワー装置。
【請求項7】
エアジェットにより、フィルタで塵埃を除去した清浄な空気を装置内の人や物品に吹き付けて塵埃を除去するエアシャワー装置であって、
静電気を中和するイオンを発生する静電気除去装置と、
装置内の人や物品の帯電電位を測定する静電気電荷測定器と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記静電気電荷測定器で測定した帯電電位が高い場合には、前記エアジェットの風速を高速とし、帯電電位が低い場合には、前記エアジェットの風速を低速とすることを特徴とするエアシャワー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファン等で加圧された空気を用いて塵埃を除去するエアシャワー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エアシャワー装置は、半導体や精密機械等の製造、あるいは食品製造・加工、あるいは医薬品等の製造を行うクリーンルームまたは作業室の出入口または物品搬入口に設置され、クリーンルームまたは作業室の通路もしくは前室、または物品用の搬入口として使用される。そして、エアシャワー装置によりクリーンルームまたは作業室への塵埃の流入・持ち込みが抑制される。
【0003】
一般的なエアシャワー装置の機能として、エアシャワー装置室内の人や物品に対して、天井および側面に取り付けられているエアジェットノズルからエアジェットを吹出し、人や物品に付着している塵埃を吹き飛ばす。そして、この吹き飛ばされた塵埃は、エアシャワー装置内に設けたプレフィルタ(空気の吸込み口に相当)より吸引され、ファンで加圧され、HEPAフィルタ等のメインフィルタを通して除去される。その後、塵埃が除去された循環エアは、再度エアジェットノズルより吹き出される。
【0004】
しかし、人や物品が帯電している場合、エアジェットを吹き付けても帯電した人や物品に付着した塵埃は除去することが難しいという問題があった。
【0005】
そこで、エアシャワー装置内に静電気除去装置を設置し、エアジェットを吹き付けると同時に静電気除去を行う場合がある。
【0006】
特許文献1には、エアシャワユニット60を備える洗浄室30に、洗浄室の静電気を中和するためのイオンを発生する除電器70を備え、イオンセンサ71が検出した静電気が所定の電荷量よりも大きい値の場合には、検出した極性と反対極性となるイオンを発生させることが、開示されている(図2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−144968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来の静電気除去装置付エアシャワー装置は除電の効果がわからないため、除電が不完全なまま、クリーンルーム内に入室または物品を入庫してしまい、再度塵埃が付着しクリーンルームへ持ち込まれるという問題があった。
【0009】
本発明は、クリーンルーム内への塵埃の持ち込みを確実に抑制するエアシャワー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、エアシャワー装置内部に静電気除去装置と静電気電荷測定器を搭載し、エアシャワー装置内の人や物品の帯電電位を測定し、その測定結果を制御部に取り込み監視する。
【0011】
本発明のエアシャワー装置の一例を挙げるならば、エアジェットにより、フィルタで塵埃を除去した清浄な空気を装置内の人や物品に吹き付けて塵埃を除去するエアシャワー装置であって、静電気を中和するイオンを発生する静電気除去装置と、装置内の人や物品の帯電電位を測定する静電気電荷測定器と、前記エアジェットの動作時間を設定するタイマ装置と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記静電気電荷測定器で測定した帯電電位に応じて、前記エアジェットの風速を変化させるとともに、前記エアジェットの動作時間が、前記タイマ装置で設定した動作時間に到達し、前記静電気電荷測定器で測定した帯電電位が所定の電位以下となった場合に、前記エアジェットの動作を停止するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、帯電した人や物品の入室または入庫を制限することが可能となり、クリーンルーム内への塵埃の持ち込みを確実に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例のエアシャワー装置の一例を示す図である。
図2】実施例のエアシャワー装置の制御構成を示す図である。
図3】実施例のエアシャワー装置の構成を示す平面図である。
図4】実施例のエアシャワー装置の全体制御フローを示す図である。
図5】エアジェットモータの制御構成を示す図である。
図6】エアジェットおよび静電気除去装置の詳細制御フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態を、図1〜6を用いて説明する。
【実施例1】
【0015】
図1〜6に本発明の実施例を示す。
図1は、エアシャワー装置の構成を示す正面図である。本エアシャワー装置1は、エアジェットファン2、メインフィルタ3、プレフィルタ4、エアジェットノズル5、制御部6、静電気除去装置8、静電気電荷測定器9を備えている。これらの配置は、図1の通りでなくても良い。
【0016】
エアジェットファン2により、エアシャワー装置内から塵埃を含むエアをプレフィルタ4を通して吸い込み、HEPAフィルタ等のメインフィルタ3を通して塵埃を除去し、天井および側面に設けられたエアジェットノズル5から装置内の人や物品にエアジェット気流7を吹き付けて、塵埃を除去する。静電気除去装置8は、静電気を中和するイオンを発生し、静電気電荷測定器9は、装置内の人や物品の帯電電位を測定する。エアジェットファン2や静電気除去装置8は、制御部6によってON−OFFなどが制御される。
【0017】
図2に、エアシャワー装置の制御構成を示す。静電気電荷測定器10で電位測定した結果を制御部11に送り、エアジェットやインターロックや静電気除去装置のON−OFF等の各制御を行う。更に、制御部11をパソコン12と連動させることにより、エアシャワー装置の入室の管理、監視を行うことも可能となる。電位測定した結果は、制御部11から表示器13に送られ、装置内の人や物品の電位が表示される。なお、図では表示器13を記載しているが、パソコン12で表示するようにしても良い。
【0018】
図3に、エアシャワー装置の平面構成図を示す。エアシャワー装置1は、ダーティ側ドア14、ダーティ側インターロック装置15、クリーン側ドア16、クリーン側インターロック装置17を備えている。ここで、ダーティ側とは、汚れた空気がある側で、例えばクリーンルームの外である。また、クリーン側とは、清浄な空気がある側で、例えばクリーンルームの中である。なお、ダーティ側およびクリーン側のドアは自動ドアやシートシャッタなどでも良い。符号18はエアジェット作動用の光電管スイッチを示し、人の入室を検知し、検知信号により制御部がエアジェットを作動させる。なお、光電管スイッチ18は、入室者の入室を検知できるセンサであれば良く、光電管スイッチに限られない。
【0019】
図4に、エアシャワー装置の全体制御フローを示す。図4において、左側の欄は、図3の平面図における人の位置や、ダーディ側およびクリーン側のドアの開閉などを示す。中央の欄は、エアシャワー装置を通ってクリーンルームに入室するまでの、エアシャワー装置の動作の各ステップを示す。右側の欄は、各動作ステップに対応して静電気チェック、ダーティ側インターロック、およびクリーン側インターロックのオン−オフの状態を示す。
【0020】
エアシャワー装置は、以下の各ステップにて動作する。
ステップ101は入室前の待機状態である。この時、入室者はダーティ側で待機しており、静電気チェックOFF、ダーティ側インターロックOFF、クリーン側インターロックOFFである。静電気チェックは行われておらず、ダーティ側ドアおよびクリーン側ドア共に、ロックされていない。
ステップ102で、入室者はエアシャワー内に入室するためにダーティ側ドア14を開く。この時、静電気チェックOFF、ダーティ側インターロックOFF、クリーン側インターロックONであり、クリーン側ドアがロックされる。
ステップ103で、入室者はエアシャワー装置内に入室する。
ステップ104で、入室者が入室し終わるとダーティ側ドア14を閉める。この時、静電気チェックOFF、ダーティ側インターロックOFF、クリーン側インターロックOFFとなり、クリーン側ドアのロックが解除される。
【0021】
ステップ105で、入室者によってエアジェット作動用の光電管スイッチ18が遮られ、光電管スイッチ18がONとなる。
ステップ106で、入室者が検知されるとエアジェットが作動する。このエアジェット作動方式は、光電管スイッチ18以外の押釦スイッチ、近接スイッチ等の別手段で作動するようにしても良い。他にも、ドア閉で作動するようにしても良い。この時、静電気チェックON、ダーティ側インターロックON、クリーン側インターロックONとなり、静電気チェックが開始され、また、ダーティ側ドアおよびクリーン側ドアがロックされる。そして、エアジェットが作動することにより、人や物品の塵埃を高速気流により吹き飛ばし、除去を行う。
ステップ107では、静電気チェックにて静電気帯電電位測定を行う。
ステップ108で、静電気の測定電位が設定値まで下がった場合、静電気チェックOKと判断する。この時、静電気チェックOFF、ダーティ側インターロックON、クリーン側インターロックONとなり、静電気チェックを終了する。
ステップ108で、帯電電位が設定値まで下がらない場合には、ステップ107に戻って、更に静電気量をモニタリングする。そして、帯電電位が設定値まで下がらない場合はエアジェットが作動し続ける。
帯電電位が設定値まで下がることにより、ステップ109で、エアジェットが停止する。
【0022】
ステップ110で、所定時間が経過し、クリーンアップ(沈静化)が終了する。この時、静電気チェックOFF、ダーティ側インターロックOFF、クリーン側インターロックOFFとなり、ダーティ側ドアおよびクリーン側ドアのロックが解除される。
ステップ111で、入室者はクリーン側に退室するためにクリーン側ドア16を開ける。この時、静電気チェックOFF、ダーティ側インターロックON、クリーン側インターロックOFFとなり、ダーティ側がロックされる。
ステップ112で、入室者はクリーン側へ退出する。
ステップ113で、クリーン側ドア16を閉める。この時、静電気チェックOFF、ダーティ側インターロックOFF、クリーン側インターロックOFFとなり、ダーティ側ドアのロックが解除される。
ステップ114で、入室者のクリーンルームへの入室が完了する。
【0023】
図4の全体制御フローにおいて、ステップ107の静電気チェックによる帯電電位の測定に基づいて、静電気量に応じてエアジェット風速を可変させる制御を行っても良い。
図5に、この制御構成図を示す。静電気電荷測定器19により測定した帯電電位が大の場合、エアシャワー装置内の人や物品に付着している塵埃は取れにくいため、制御部20によりエアジェットモータ21を高速運転させる。これに対し、帯電電位が小の場合、塵埃は取れやすいのでエアジェットモータ21の低速運転を行う。なお、静電気電荷測定器19が多段階出力可能な場合は、エアジェットモータの回転速度も多段階で制御可能となる。
【0024】
次に、全体制御フローのステップ106からステップ109の部分の詳細制御フローについて、図6を用いて説明する。
ステップ201で、エアジェットおよび静電気除去装置がONとなり、同時にエアジェットのタイマが作動する。通常、エアシャワー装置内の人や物品の塵埃を除去するために必要な時間をタイマにて予め設定しておく。
ステップ202で、エアジェットの動作がタイマで設定した規定時間に到達したかを確認する。規定時間に到達したOKの場合は、次のステップ203の静電気チェックへ進み、到達していないNGの場合は、タイマ規定時間到達チェックがOKとなるまでループする。
ステップ203で、静電気電荷測定器で測定した帯電電位に基づいて静電気チェックを行い、静電気電位が規定値に到達しているかを確認する。静電気電位が規定値まで低下したOKの場合、ステップ204でエアジェットおよび静電気除去装置をOFFとし、次の動作に進むことが可能となる。静電気電位が既定値より高いNGの場合、ステップ203の静電気チェックがOKになるまで、エアジェットおよび静電気除去装置をONした状態で、ループすることになる。
【0025】
本実施例によれば、入室者がエアシャワー装置に入室してエアジェットや静電気除去装置が作動した後、エアジェットの動作がタイマで設定した規定時間に到達し、静電気電荷測定器で測定した帯電電位が規定値まで低下した場合に、エアジェットや静電気除去装置の動作を停止するようにしたので、クリーンルーム内への塵埃の持ち込みおよび塵埃の付着を確実に抑制することができる。また、エアジェットが動作中は、ダーティ側インターロックおよびクリーン側インターロックを動作させるので、クリーンルーム内への塵埃の持ち込みを確実に抑制することができる。
【0026】
また、静電気電荷測定器により測定した帯電電位に基づいて、帯電電位が高い場合には風速を大きく、また、帯電電位が低い場合には風速を小さくなるようにエアジェットを制御することにより、付着した塵埃を良好に除去することができる。
【0027】
さらに、静電気電荷測定器により測定した帯電電位を表示器などにより表示するようにしたので、エアシャワー装置内の人や物品の帯電量をモニタリングすることができる。
【符号の説明】
【0028】
1 エアシャワー装置
2 エアジェットファン
3 メインフィルタ
4 プレフィルタ
5 エアジェットノズル
6 制御部
7 エアジェット気流
8 静電気除去装置
9 静電気電荷測定器
10 静電気電荷測定器
11 制御部
12 パソコン
13 表示器
14 ダーティ側ドア
15 ダーティ側インターロック装置
16 クリーン側ドア
17 クリーン側インターロック装置
18 エアジェット作動用光電管スイッチ
19 静電気電荷測定器
20 制御部
21 エアジェットモータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6