【文献】
GAO Y-G,NATURE STRUCTURAL BIOLOGY,米国,1998年 9月,V5 N9,P782-786
【文献】
Nat. Struct. Biol.,日本,1998年,Vol.5, No.7,p.579-584
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記出発分子たるOB-フォールドタンパク質のその天然型リガンドとの結合界面に8〜20の変異残基を含んでなる、請求項1又は2に記載のOB-フォールドタンパク質の変異型。
前記出発分子たるOB-フォールドタンパク質のその天然型リガンドとの結合界面に11〜16の変異残基を含んでなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載のOB-フォールドタンパク質の変異型。
Sac7dのK7、Y8、K9、K21、K22、W24、V26、K28、M29、S31、T33、K39、T40、R42、A44、S46、E47及びK48に相当する残基の中から選択される11、12、13、14、15、16、17又は18残基が前記出発分子たるOB-フォールドタンパク質に対して置換されている、請求項1〜11のいずれか1項に記載のOB-フォールドタンパク質の変異型。
スルホロバス・アシドカルダリウス(Sulfolobus acidocaldarius)由来のSac7d及びSac7e、スルホロバス・ソルファタリカス(Sulfolobus solfataricus)由来のSso7d及びp7ss、スルホロバス・トコダイイ(Sulfolobus tokodaii)由来のDBP 7並びにスルホロバス・シバタエ(Sulfolobus shibatae)由来のSsh7a及びSsh7bから選択される出発分子たるOB-フォールドタンパク質のその天然型リガンドとの結合界面の5〜20の残基が置換されており、前記出発分子たるOB-フォールドタンパク質が結合しないタンパク質又はペプチドである標的に結合している前記出発分子たるOB-フォールドタンパク質の変異型からなる複合体であって、前記置換された残基が、Sac7dのV2、K3、K5、K7、Y8、K9、G10、E14、T17、K21、K22、W24、V26、G27、K28、M29、S31、T33、D36、N37、G38、K39、T40、R42、A44、S46、E47、K48、D49、A50及びP51に相当する残基から選択される、複合体。
前記OB-フォールドタンパク質の変異型において、Sac7dのK7、Y8、K9、K21、K22、W24、V26、K28、M29、S31、T33、K39、T40、R42、A44、S46、E47及びK48に相当する残基の中から選択される11、12、13、14、15、16、17又は18残基が前記出発分子たるOB-フォールドタンパク質に対して置換されている、請求項13〜19のいずれか1項に記載の複合体。
【実施例】
【0034】
実施例
以下の実験データは、下記の材料及び方法を用いて得た。
材料及び方法
一般分子生物学
酵素及び緩衝液はNew England Biolabs社(米国)又はFermentas社(リトアニア)のものであった。オリゴヌクレオチドは、MWG Biotech社(ドイツ)のものであった。全てのPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)は、本文中に示されていなければ、Ventポリメラーゼを用いて行った。野生型Sac7d及び選択した変異体のためのクローニング及び発現ベクターは、Qiagen社(ドイツ)のpQE30であった。
【0035】
野生型Sac7dをコードするDNAの合成
野生型Sac7dのDNA配列は、以下の6つのオリゴヌクレオチドを用いるアセンブリPCRにより生成した:SC1(配列番号9:GAAACTCCTAGGTATTGTGCTGACGACCCCGATCGCGATCTCTAGCTTTGCGGTGAAAGTGAAATT)、SC2(配列番号10:GATCTTGCTGGTGTCCACTTCTTTTTCTTCGCCTTTATATTTAAATTTCACTTTCACCGCAAAGCTAG)、SC3(配列番号11:GAAGTGGACACCAGCAAGATCAAGAAAGTTTGGCGTGTGGGCAAAATGGTGAGCTTTACCTACGACGACAACGGCAAG)、SC4(配列番号12:CTCTTTCGGGGCATCTTTCTCGCTCACGGCGCCACGGCCGGTCTTGCCGTTGTCGTCGTA)、SC5(配列番号13:GAGAAAGATGCCCCGAAAGAGTTATTAGATATGTTAGCGCGTGCGGAAAGCTTCAACCA)、SC6(配列番号14:TGGTGGTTGAAGCTTTCCGCACG)。精製したPCR産物を、以下の2つのプライマーを用いる第2のPCR増幅用のテンプレートとして供した:SC07(配列番号15:ATTAATGGTACCGGATCCGTGAAAGTGAAATTTAAATATAAAG)及びSC08(配列番号16:ATAATTGAGCTCTAAGCTTTTTTTCACGTTCCGCACGCGCTAACATATC)。PCR産物を、BamHI及びHindIII制限部位を使用してpQe30発現ベクター中にクローニングした。予測された配列を有するクローンをその後の発現に使用した。
【0036】
コンビナトリアルライブラリの生成
プロトコルは、3つのライブラリ11、13、14の生成について、リボソームディスプレイと適合性のフォーマットにおいて同じであった。ライブラリは、主に、遺伝子合成及びPCRアセンブリ工程により構築した。4つの標準とNNSトリプレット(式中、N=A、C、T又はGであり、S=C又はG)をコードする3つの縮重オリゴヌクレオチドとの組合せを使用する単一工程PCRで、リボソームディスプレイに必要な5'-側方領域及びSac7dのランダム化遺伝子を含むDNA産物を得た。ライブラリ14については、以下のオリゴヌクレオチドを使用した:T7C(配列番号17:ATACGAAATTAATACGACTCACTATAGGGAGACCACAACGGTTTCCCTC)、SDA_MRGS(配列番号18:AGACCACAACGGTTTCCCTCTAGAAATAATTTTGTTTAACTTTAAGAAGGAGATATATCCATGAGAGGATCG)、SClib1(配列番号19:GGAGATATATCCATGAGAGGATCGCATCACCATCACCATCACGGATCCGTCAAGGTGAAATTC)、SClib2(配列番号20:GGATCCGTCAAGGTGAAATTCNNSNNSNNSGGCGAAGAAAAAGAAGTGGACACTAGTAAGATC)、SClib3(配列番号21:CTTGCCGTTGTCGTCGTASNNAAASNNCACSNNTTTGCCSNNACGSNNAACSNNSNNGATCTTACTAGTGTCCACTTC)、SClib4(配列番号22:TAATAACTCTTTCGGGGCATCTTTCTCSNNCACSNNGCCSNNGCCSNNCTTGCCGTTGTCGTCGTA)、SClib5(配列番号23:CCATATAAAGCTTTTTCTCGCGTTCCGCACGCGCTAACATATCTAATAACTCTTTCGGGGCATC)。Sac7d中の残基21、22及び40に、又は残基40に対応する位置でNNSトリプレットの代わりに野生型トリプレットをコードするプライマーを、それぞれライブラリ11及び13の構築に使用した。
【0037】
リボソーム上にディスプレイされたタンパク質を潜在的なリガンドによりアクセス可能とするために、該タンパク質をリンカーに融合する必要がある。このリンカーの配列(E. coliタンパク質TolAの一部に相当し、プラスミドpRDVベクター(Binzら,2004a)中にコードされている)を、プライマーSClink(配列番号24:GCGGAACGCGAGAAAAAGCTTTATATGGCCTCGGGGGCC)及びtolAk(配列番号25:CCGCACACCAGTAAGGTGTGCGGTTTCAGTTGCCGCTTTCTTTCT)(後者は、リボソームディスプレイに必要な3'-側方領域をコードする)を使用してPCR増幅した。最後に、tolAk及びT7B(配列番号25:ATACGAAATTAATACGACTCACTATAGGGAGACCACAACGG)プライマーを使用するPCRアセンブリによってtolAリンカーを有するライブラリを組み立てた。最終的なアセンブリ産物は、以前(Hanesら,1998;Schaffitzelら,1999)に記載されたリボソームディスプレイ選択に使用するために必要な5'-及び3'-領域を全て有するSac7dのライブラリに対応していた。
【0038】
リボソームディスプレイ選択ラウンド
選択実験には、ビオチン化標的タンパク質を使用した。氷上にて1時間の、PBS中DnaK、GarA又はPulD-Nの10μM溶液と20倍モル過剰のスルホスクシンイミジル-6-(ビオチンアミド)ヘキサノエート(スルホ-NHS-LC-LC-ビオチン,Pierce)とのインキュベーションにより、ビオチン化を行った。TBS中で平衡化したPierce社のタンパク質脱塩スピンカラムを用いて、ビオチン化タンパク質の緩衝液交換を行った。ビオチン化の程度は、HABAアッセイ(Sigma)を用いて、タンパク質1分子あたり2〜3分子のビオチンと決定した。ビオチン化標的タンパク質を、Maxisorpプレート(Nunc)中の固定化ニュートラビジンに結合させ、本質的にはBinzら(2004b)に記載のとおりであるが幾らか改変して、リボソームディスプレイによる選択を4℃にて行った。簡潔には、各選択ラウンド後、溶出mRNAをcDNAに逆転写し、SDA_MRGS及びSClib5プライマーを用いて増幅させた。PCR産物を、Nuclespin extraction IIカラム(Macherey-Nagel)で脱塩し、TolAリンカーDNAフラグメント(上記参照)を用いるPCRアセンブリに使用した。これにより、5'-及び3'-側方領域が新たに付加された全長リボソームディスプレイ構築物を生成して、操作の間のmRNA末端の分解に起因するクローン喪失を最小にした。RT-PCRサイクル数は、35サイクル(ラウンド1)、30サイクル(ラウンド2)、30サイクル(ラウンド3)、25サイクル(ラウンド4)であった。ラウンド5では、Jermutusら(2001)に記載のような解離速度(off-rate)選択を使用して、選択圧を増大させた。この選択のために、10nMのビオチン化PulD-Nを、ラウンド4からのプールの停止翻訳物(stopped translation)に添加した。この混合物を1時間4℃にて平衡化し、非ビオチン化PulD-Nを10μMの最終濃度(ビオチン化PulD-Nに対して1000倍過剰)まで加えた。4℃にて撹拌しながら2時間のインキュベーション後、ビオチン化PulD-Nに結合した三つ組複合体(mRNA-リボソーム-結合体)を、4℃にて15分間、30μlの磁性ストレプトアビジン被覆ビーズ(Roche)を用いて捕捉した。ビーズを洗浄し、最初の4ラウンドと同様にmRNAを単離した。RT-PCRサイクル数は、この5番目の選択ラウンドについては35であった。選択の進行は、ラウンドごとのRT-PCR産物の量をモニターすることによって検証した。
【0039】
選択したプール及び単離クローンの分析
4又は5ラウンド後、選択したプールを、Maxisorpプレート中の直接被覆標的タンパク質を使用し、1nM〜10μMの遊離標的タンパク質を競合物として使用して、Hanesら(1998)に記載のようにRIA(ラジオイムノアッセイ)により試験した。
選択したプールからのRT-PCR産物を、BamHI及びHindIII制限部位を用いてpQE30ベクター中にクローニングし、得られた結紮物(ligation)を使用してE. coli DH5α株を形質転換させた。クローンをペトリ皿から採取し、1ウェルあたり1.5mlのLB培地(100μg/mlアンピシリン,1%グルコース)を含むディープウェルプレートに接種した。250rpmで振盪させながらの37℃にて一晩の培養後、このマスタープレートからの0.2mlの各ウェルを使用して、1ウェルあたり1.3mlの2YT培地(100μg/mlアンピシリン)を含む他のディープウェルプレートに接種した。次いで、プレートを37℃にて1時間、振盪(250rpm)させながらインキュベートした。0.5mMのIPTGの添加及び振盪(250rpm)させながらの30℃にて4時間のインキュベーションで発現を誘導した。遠心分離工程(2250g)で細胞をペレット化し、上清を廃棄した。250rpmにて30分間振盪させながら1ウェルあたり50μlのBugBuster(Novagen)でタンパク質を抽出し、次いで250μlのTBS(pH7.4)(20mM Tris-HCl,150mM NaCl)を加えた。遠心分離工程(2500g)で細胞砕片をペレット化した。ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)スクリーニングについては、100μlの各上清を使用してMaxisorpプレート中に被覆した標的タンパク質への結合を試験した。結合体に由来するRGS-(His)
6-タグのみを検出し、標的タンパク質に由来する(His)
6-タグを検出しないRGS His抗体HRP接合体(Qiagen)及びRoche社のBM-Blue基質を用いて、検出を行った。0.1%Tween 20を有するTBS(pH7.4)中で全てのインキュベーション工程を行った。標準的な配列決定技法によりポジティブクローンを配列決定した。
【0040】
SPR(表面プラズモン共鳴)によるスクリーニングのためのタンパク質産生
PulD-Nからの解離時間に基づいて結合体のスクリーニングを行うために、クローンを5mlスケール培養物(E. coli DH5α株)中で発現させた。ディープウェル中での500μlの一晩予備培養物(LB培地,100μg/mlアンピシリン,1%グルコース,37℃)を使用して、4.5ml培養物(2YT,100μg/mlアンピシリン,37℃)に接種した。OD
600=1.0で発現を0.5mMのIPTGの添加により誘導し、培養物を30℃にて19時間インキュベートした(250rpm)。細胞を遠心分離(2500g)により採集し、25mMイミダゾール、BugBuster及びBenzonase(Novagen)を含む0.5mlのTBS(pH7.4)中に細胞を再懸濁することによりタンパク質をディープウェルにおいて抽出した。4℃にて1時間の振盪後、ディープウェルを遠心分離して細胞砕片をペレット化した。20mMイミダゾールを含むTBS(pH7.4)で平衡化した100μlのNi-Fast Flow Chelating Sepharose(General Electric)を含むマイクロスピンカラムで上清を精製した。樹脂をローディング緩衝液で4回洗浄し、精製したタンパク質を400μlのTBS(pH7.4)及び250mMイミダゾールで溶出させた。
【0041】
結合体及び野生型Sac7dのタンパク質産生及び精製
Biacore及びマイクロ熱量測定実験のために、下記のように、結合体を1リットルスケールでDH5α E. coli株において発現させ精製した。50mlの一晩予備培養物(LB培地,100μg/mlアンピシリン,1%グルコース,37℃)を使用して、1リットルの培養物(2YT,100μg/mlアンピシリン,37℃)に接種した。OD
600=1.0で0.5mMのIPTGの添加により発現を誘導し、培養物を30℃にて19時間インキュベートした(250rpm)。細胞を遠心分離により採集し、25mMイミダゾールを含む30℃の30ml TBS(pH7.4)中に再懸濁した。細胞をAvestin Emulsiflexホモジナイザーで溶解させ、遠心分離工程で細胞砕片を破棄した。25mMイミダゾールを含むTBS(pH7.4)で平衡化した5mlのHiTrapキレート化カラムでタンパク質を精製した。TBS(pH7.4)及び250mMイミダゾールで溶出を行った。HBS(pH7.0)(20mM HEPES,150mM NaCl)で平衡化したSuperdex 75 26/60ゲル濾過カラム(GE Healthcare)でのサイズ排除クロマトグラフィーによりタンパク質を更に精製した。HBS(pH7.0)(60μl/分,50μlの注入サンプル)で平衡化したSuperdex 75 3.2/20カラムを用いるSMARTシステム(GE Healthcare)で分析ゲル濾過を行った。BPTI(6.5kDa)、リボヌクレアーゼA(14.6kDa)、キモトリプシノゲンA(20.3kDa)、オボアルブミン(46.7kDa)及びアルブミン(62.9kDa)を分子量ゲル濾過較正標準として使用した。
【0042】
表面プラズモン共鳴
BIAcore 2000装置を用いて25℃にてSPRを測定した。リボソームディスプレイによる選択用と同様にビオチン化PulDを調製し、SA-チップのフローセルに固定化した。動力学的測定用及び阻害測定用の固定ビオチン化PulD-Nの密度はそれぞれ200RU及び800RU(飽和チップ)であった。ランニング緩衝液はHBST(pH7.0)(20mM HEPES,150mM NaCl,0.05%Tween 20)であった。
60μl/分の流速での動力学測定用注入の前にランニング緩衝液に1/20希釈したマイクロIMAC精製タンパク質(上記参照)を用いて解離速度による結合体のスクリーニング及びランキングを行った。
【0043】
親和性決定のための動力学測定は、1nM〜50nMの範囲の濃度で注入したサイズ排除精製タンパク質で行った。阻害測定は、5nMの結合体濃度及び競合物としてのPulD-Nの0.2nM〜20nMの範囲の種々の濃度で、25μl/分の流速にてOstermeierら(1995)に記載のように行った。結合相に関してセンサーグラムの傾斜を決定し、PulD-Nの濃度に対してプロットした。データ評価はBIAevalソフトウェア(BIAcore)を用いて行った。
【0044】
マイクロ熱量測定
以前(Hibleら,2005)に記載されたようにMicroCal VP-DSC熱量計で示差走査熱量測定を行った。組換え野生型及び変形体Sac7dのストック溶液を50mM MES緩衝液(pH5.6,300mM NaCl)に対して一晩4℃にて透析した。次いで、タンパク質サンプルを同じ緩衝液調製物中に200μg/mlに希釈し、真空下に10分間穏やかに撹拌しながら脱気した後、熱量計セル(0.5ml)中にロードした。参照セルには同じ緩衝液を満たした。130℃まで気泡形成及び蒸発を回避するためにサンプルをインサイチュで25psiの一定の外圧下に保持し、25℃にて25分間平衡化し、1度/分の一定加熱速度で加熱し、16秒のフィルターでデータを収集した。データ分析は、製造業者が提供するOrigin7
TMソフトウェア(Plotnikovら,1997)で行った。熱容量関数から2つのベースライン(緩衝液参照サーモグラム及び算出化学ベースライン(アンフォールディング転位(unfolding transition)の進行から濃度に対して規格化した後に計算される))を引くことにより過剰熱容量関数(C
p,excess)が得られた。各タンパク質サンプルのアンフォールディング転位の熱力学的パラメータは、非二状態モデルを仮定した過剰熱容量曲線の非線形3パラメータ(Tm,ΔH
cal,ΔH
vH)回帰の結果である。
【0045】
アルカリホスファターゼ融合体の構築
プライマーSCPhoAF(配列番号26:ATTAATGGTACCGGATCCGTGAAGGTGAAATTC)及びSCPhoAR(配列番号27:ATAATTGAGCTCTAAGCTTTTTTTCACGCTCCGCAC)、並びにPhusionポリメラーゼを用いて、結合体をコードする遺伝子をPCR増幅して、5'-及び3'-末端にそれぞれKpnI及びSacIを導入した。PCR産物をKpnI及びSacIで消化し、pQUANTagenベクター(Qbiogene)中にクローニングした。こうして、アルカリホスファターゼを結合体のC末端に融合させた。DH5α E. coli株及び製造業者マニュアルの指示を使用して、アルカリホスファターゼ活性クローンのスクリーニング及びペリプラズマ抽出(periplasmic extraction)を行った。簡潔には、ポジティブクローンをLBプレート(100μg/mlアンピシリン,4μg/mlの5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-ホスフェート)上でアルカリホスフェート活性についてスクリーニングした。8mlの一晩予備培養物(LB培地,100μg/mlアンピシリン,37℃)を用いて400ml(2YT培地,100μg/mlアンピシリン,1gのリン酸二カリウム(pH7.5),37℃)の培養物に接種した。OD
600が約0.7になったときに0.5mM IPTGの添加によりtacプロモーターの誘導を行い、増殖を30℃にて4時間継続させた。細胞を遠心分離によりペレット化し、40mlのTSE緩衝液(30mM Tris-HCl(pH8.0),スクロース20%,0.5mM EDTA,0.1mg/mlリゾチーム)に再懸濁した。穏やかに撹拌しながら4℃にて20分間の懸濁物のインキュベーションによりリゾチームショック(lysozymic shock)を行った。4℃にて20000gで30分間の遠心分離により細胞砕片を廃棄し、上清を0.45μm膜で濾過した後、−20℃で保存した。
【0046】
アルカリホスファターゼ融合体を用いるウェスタンブロット
発現ベクターを含まないDH5α E. coli株の10ml一晩培養物(LB培地,37℃)を遠心分離して細胞をペレット化した。細胞ペレットを1ml TBS(1×BugBuster及び1μl Benzonase)中に再懸濁した。細胞溶解を室温にて30分間生じさせ、懸濁物を20000gにて5分間遠心分離して細胞砕片を除去した。次いで、上清を精製PulD-Nの系列希釈に使用した。サンプルは、定量の上清と、5μlのサンプルをSDSゲル上にロードしたとき0.4ng〜400ng PulD-Nに対応する可変量の精製PulD-Nとで調製した。移動後、タンパク質をSDSゲルからニトロセルロース膜(Hybond-C extra,0.45μm,General Electric)に移した。膜をTBST(20mM Tris-HCl,150mM NaCl,pH7.5,0.1%Tween 20)中5%の粉乳でブロックした。次いで、膜を、TBST乳中に1〜15倍希釈した融合体の可溶性ペリプラズマ抽出物と共に、1時間穏やかに撹拌しながらインキュベートした。膜を洗浄後、反応緩衝液(100mM Tris-HCl pH9.5,100mM NaCl,5mM MgCl
2)中に希釈した沈降基質NBT/BCIP(AP接合基質キット,Biorad)で検出を行った。
【0047】
GFP(緑色蛍光タンパク質)融合体の構築及び発現
結合体をコードする遺伝子を、eGFPの遺伝子及び可撓性ペプチドリンカーKLGSAGSAAGSGEF(配列番号32)をコードする領域を含有するpQE30由来プラスミド(pFP3000)中に、BamHI及びHindIII部位を介してクローニングした。これは、N末端にMRGS(His)
6タグを有するN-ter-結合体-リンカー-eGFP-C-ter融合体を生じた。個々のクローンの配列は、DNA配列決定により検証した。
結合体-GFP融合体の発現及び精製は、結合体単独についてと同じ条件下で(すなわち、IMAC及びサイズ排除クロマトグラフィー工程を用いて)行った。
【0048】
膜画分の単離及び40-eGFPキメラを用いる相互作用研究
プラスミドpCHAP3671(pulD)及びpCHAP580(pulS)(Guilvoutら,1999)又はプラスミドpCHAP3711(pulD-CS)(Guilvoutら,2006)及びpCHAP580を有するE. coli K-12株PAP105(Guilvoutら,1999)を、膜ベシクルの単離に使用した。培養物を、適切な抗生物質(100μg/mlアンピシリン,25μg/mlクロラムフェニコール)を含むLB培地(Miller,1992)中、30℃にて激しく撹拌しながら、対数増殖相(OD
600:0.9〜1.1)まで増殖させた。細胞のフレンチプレス破壊(French press desintegration)後に膜画分を遠心分離(180,000×g、30分間)により単離し、Tris 50mM pH7.5、NaCl 150mM中に450μg/mlの最終濃度で再溶解した。
【0049】
異なる量の膜ベシクルを70pmolの精製40-eGFP融合タンパク質と共に室温にて1時間インキュベートした。遠心分離(80,000×g、20分間)後、ペレットを同じ緩衝液で洗浄し、再び遠心分離し、同じ量に再懸濁した。各サンプル中のタンパク質をSDS-PAGEにより分離し、ニトロセルロース上に移した。40-eGFP融合タンパク質の検出は、GFP一次抗体を用いるイムノブロッティングにより行った。
【0050】
固定化クローン6結合体を用いるアフィニティークロマトグラフィー
17mgのIMAC精製クローン6を0.2M炭酸緩衝液(pH8.3)(0.5M NaCl)に対して透析し、事前に6mlの1mM HClをフラッシュした1ml HiTrapNHS活性化HPカラム(General Electric)に注入した。固定化は室温にて30分間生じさせた。カラムを洗浄し、0.5Mエタノールアミン(0.5M NaCl,pH8.3)及び0.1Mアセテート(0.5M NaCl,pH8.3)で室温にて30分間残存する活性基を不活化させた後、カラムをTBS(pH8.0)(20mM Tris,500mM NaCl)で平衡化させ、精製に使用する準備を整えた。
【0051】
PulD-Nタンパク質は、プラスミドpCHAP3702(Chamiら,2005)で形質転換させたBL21(DE3)E. coli株を用いて発現させた。50mlの一晩予備培養物(LB培地,100μg/mlアンピシリン,1%グルコース,37℃)を使用して1l培養物(2YT,100μg/mlアンピシリン,37℃)に接種した。発現はOD
600=1.0の時に1.0mM IPTGの添加により誘導し、培養物を30℃にて4時間インキュベートした(250rpm)。細胞を遠心分離により採集し、30ml TBS pH8.0中に再懸濁した。細胞をAvestin Emulsiflexホモジナイザーで溶解させ、細胞砕片を遠心分離工程で廃棄した。1.5mlのこの可溶性画分をNHS-クローン6固定化カラムに流量0.5ml/分で注入した。非特異的タンパク質を40mlのランニング緩衝液で洗い流し、100mMグリシン緩衝液(pH2.5,250mM NaCl)を用いる酸性pHジャンプでPulD-Nを溶出させた。溶出タンパク質の純度は、画分をSDSゲル上にロードすることにより検証した。
【0052】
ファーウェスタンブロッティング
PulS(pCHAP580;Daeflerら,1997)とPulD(pCHAP3671;Guilvoutら,1999)又はPulD-CS(pCHAP3711;Guilvoutら,2006)とを含む/含まないE. coli PAP105の外膜を、前述のように調製した。膜を、10%スクロース及び0.1mg/mlのプロテアーゼインヒビターPefabloc(Interchim,Montlucon,France)を含む50 mM Tris-HCl(pH7.5)中に再懸濁して貯蔵し、SDS/PAGEに供し、ニトロセルロースシートに移した。このシートを次いでブロックし、Sac7-PhoAキメラ産生株のペリプラズマ(浸透圧ショック)抽出物と共にインキュベートした。洗浄後、結合PhoAをPhoAに対する抗体、西洋ワサビペルオキシダーゼカップリング二次抗体及び化学発光により検出した。
【0053】
分泌
PAP7232株(Hardieら,1996)を空のベクター又はSac7-PhoAキメラをコードするプラスミドで形質転換した。この形質転換体を、0.4%マルトース(プルラナーゼの産生及びその分泌系(PulDを含む)を誘導するため)及び1mM IPTGを含有する培地中で増殖させてSac7-PhoA産生を誘導した。分泌レベルは、d'Enfertら(1989)に記載のように測定し、溶解細胞中で検出された酵素活性量(100%)と比較した全細胞中で検出された酵素活性量として表す。細胞抽出物もまた、PulD及びPhoAに対する抗体を用いるイムノブロッティングにより調べた。
【0054】
PulD産生のより高い(プラスミドがコードする)レベルでのSac7-PhoAキメラの効果を分析するために、ゼオシン耐性遺伝子を側方のPstI部位と共に増幅し、対応するプラスミドのblaM遺伝子の独特なPstI部位中に挿入した。次いで、この組換えプラスミドをpCHAP231(d'Enfertら,1987)と一緒にエンベローププロテアーゼ欠損株PAP5198(degP,ompT,ptr)中に形質転換した。プルラナーゼ分泌及びPulDレベル(フェノールでの前処理あり又はなし)を、IPTGによる誘導あり又はなしで、上記のように分析した。
【0055】
結果
実施例1:第1世代ライブラリ(ライブラリ11)の設計
種々のリガンドに対する結合体を得るための足場としてのSac7dの使用可能性を調べるための第1の重要な工程は、親のSac7dタンパク質の安定性及び溶解性を維持しながら、潜在的結合性領域のランダム化によりライブラリを設計することであった。
【0056】
Sac7d-DNA複合体の幾つかの三次元構造は公知である(Agbackら,1998;Edmondson及びShriver,2001;Gaoら,1998;McAfeeら,1995;McCraryら,1996;Robinsonら,1998;Suら,2000)(
図1a)。これら構造によれば、DNAの小さな溝へのSac7dの結合には、DNAと顕著に(形状及び電荷が)一致する結合表面領域が関与している。この結合領域は、16残基(K7、Y8、K9、K21、K22、W24、V26、K28、M29、S31、T33、K39、T40、R42、A44、S46)から構成される(
図1b)。この結合領域の視覚的検査により、それがねじれていること及び2種類の幾何学形状(geometry)を含んでなることが示される:一方は少し凹面であり(K7、Y8、K9、W24、V26、K28、M29、S31、T33、R42、A44、S46)、他方は本質的に平面である(K21、K22、W24、T33、K39、T40、R42)。残基W24、T33及びR42はこれら2つの面により共有されている。Sac7dの配列の約1/4がDNAの結合に貢献する。これら残基の全てが面上に露出しているが、Sac7dの配列の25%の大規模ランダム変異誘発は、得られる変異体のフォールディング及び安定性に関して劇的であり得る。第1の工程で、本発明者らは、変異誘発スキームからK28及びK39を排除することを決めた。なぜならば、これら2つの残基は結合表面へ向いて十分に配向していないからである。それらを排除した第2の理由は、下記のような一工程PCRによるライブラリの生成がプライマーアニーリング(下記参照)に利用可能なオーバーラップの減少に起因して不可能であったことであった。また、結合領域の凹面側の幾何学形状は球状タンパク質の球形と良好に一致しているか、又は少なくとも露出ループの結合に適合しているであろうと推論された。よって、置換ストラテジーは、Sac7dのこの領域中の11残基(K7、Y8、K9、W24、V26、M29、S31、T33、R42、A44、S46)に絞った。
【0057】
Sac7dをコードする遺伝子はかなり短い(約200塩基対)。よって、11残基のランダム置換に対応するライブラリは、一工程PCRによって得ることができた。これは、3つの縮重オリゴヌクレオチド(NNSスキーム)と3つの標準オリゴヌクレオチドとの混合物を用いて行った。ランダム化した位置のコドンを、全てのアミノ酸表現を可能にするNNSトリプレットによりコードした。この変異誘発ストラテジーにより、理論的な多様性は約3.2 10
16(32
11)であり、これは本発明者らのライブラリの実験的に達成した多様性より程度が約4オーダー勝っている。確かに、リボソームディスプレイ構築物を生成するために使用したPCRアセンブリ産物の量によれば、ライブラリの上限予測値は約3.0 10
12変形体であった。40のランダムクローンの配列決定により、観察された残基頻度は予想されたものと類似していることが確証された(データは示さず)。正確なクローン(フレームシフトも欠失もない)のパーセンテージは、ほぼ50%であることが分かった。よって、「機能的」多様性は申し分ないと考え、このライブラリを選択に使用した。
【0058】
実施例2:ライブラリ11を使用したリボソームディスプレイ選択
3つのタンパク質を標的として選んだ:DnaK、GarA(共に、Mycobacterium tuberculosis由来)及びPulD(Klebsiella oxytoca由来)のN末端ドメイン。PulDは、イオン性界面活性剤なしでは溶液状態に維持することができない外膜タンパク質である。したがって、可溶性単量体フラグメントを使用した。このフラグメント(PulD-Nと名付ける)は、PulDのN末端領域に相当する。特異的で貪欲(avid)な結合体はDnaK、GarA及びPulDを研究するための有用なツールとなり得るのでこれら標的を選択した。更に、これらタンパク質は、構造研究のために結晶化するのが困難である。これらタンパク質を認識する結合体は、抗体フラグメントと同じ方法で共結晶化(co-crystallization)試行に使用し得る(Ostermeierら,1995)。
【0059】
ニュートラビジンを被覆したELISAプレートを使用して、ビオチン化タンパク質を固定化し、選択を実行した。4回の選択ラウンド後、3つ全ての標的について特異的結合体の富化が観察された(
図6a)。全ての場合で、RIAによれば、プールの結合の50%より多くが10Mの遊離標的で阻害された。
【0060】
PulD-Nでの選択について結合体のプールをELISAにより更に評価するために、選択したプールからのRT-PCR産物を、BamHI及びHindIII制限部位を用いてpQE30ベクター(Qiagen)中にクローニングした。得られる結紮物(ligation)を使用してE. coli DH5α株を形質転換させた。96のランダムなクローンをペトリ皿から取り、1ウェルあたり1.5mlのLB培地(100μg/mlアンピシリン,1%グルコース)を含むディープウェルプレートに接種した。250rpmで振盪させながら37℃にて一晩培養後、このマスターウェルプレートの0.2mlの各ウェルを使用して、1ウェルあたり1.3mlの2YT培地(100μg/mlアンピシリン)を含む他のディープウェルプレートに接種した。次いで、このプレートを振盪(250rpm)させながら37℃にて1時間インキュベートした。発現は、0.5mM IPTGの添加及び振盪(250rpm)させながら30℃にて4時間のインキュベーションで誘導した。細胞を遠心分離工程(2250g)でペレット化し、上清を廃棄した。タンパク質を、250rpmで30分間振盪させながら、1ウェルあたり50μlのBugBuster(Novagen)で抽出し、次いで250μlのTBS(pH7.4)(20mM Tris-HCl,150mM NaCl)を加えた。細胞砕片を遠心分離工程(2500g)でペレット化した。ELISAスクリーニングのために、100μlの各上清を使用して、PulD-N又はBSAを被覆したMaxisorpプレートに対する結合を試験した。検出は、結合体由来のRGS-(His)
6-タグのみを検出し、標的タンパク質由来の(His)
6-タグを検出しないRGS His抗体HRP接合体(Qiagen)及びRoche社のBM-Blue基質を用いて行った。全てのインキュベーション工程を、0.1%Tween 20を含むTBS(pH7.4)中で行った。
【0061】
全てのクローンについて、340nmでのODをPulD-N結合及びBSA結合について測定した。PulD-Nについて得られる値に対するBSA結合について得られる値の比を各クローンについて算出した。10を超えるS/N比がラウンド4からの約92%のクローンについて観察された(
図6b)。PulD-N選択(ラウンド4)からの6つの精製クローンの結合をDnaK、GarA、PulD-N及びBSAについてELISAにより試験した。
図6cに示されるように、結合はPulD-Nについて特異的であった。ラウンド4からの28クローンの配列決定により配列の高度な多様性が明らかとなった;確かに、1回より多く見出された配列はなかった。このことは、より高い選択圧を使用できたことを示している。更に、野生型残基は、全11のランダム化位置のいずれにも見出されなかった(データは示さず)。9つのクローンのIMAC(固定化金属イオンアフィニティークロマトグラフィー)精製後に見積もられた発現の平均収率は、約70mg/リットルフラスコ培養物(30℃にて4時間の誘導)であった。結合体は少なくとも45mg/mlまで濃縮できた。これら観察により、全般的に、Sac7dの結合領域が置換に対して高度に寛容であること、及び選択した変形体が満足できる生物物理学的特性を保持していることが示唆された。しかし、RIAによるより詳細な分析によって、ラウンド4からのプール中の結合体に対する平均親和性はほぼ100nMであり、マイルドな(2時間)又はよりストリンジェントな(17時間)解離速度選択で行った5番目のラウンドは、抗PulD-Nプールの平均親和性を増大させることに失敗した(
図7)。このような低い親和性は、低いナノモル解離定数を必要とする適用に関して制限的である。よって、本発明者らは、より高い親和性を得るために他のアプローチを探索することを決定した
【0062】
実施例3:第2世代ライブラリ(ライブラリ13及び14)の設計
親和性を改善する直感的方法は、結合領域を拡張すること、よって結合体とそのリガンドとの間の相互作用の可能な数を増大させることである。11残基のランダム化に対応する可能な結合領域は、890Å
2の溶媒接近可能面を有していた。Sac7dは11置換に対して非常に寛容であるので、2又は3の更なる位置(K21及びK22(ライブラリ13)又はK21、K22及びT40(ライブラリ14)、それぞれ1130Å
2及び1200Å
2に対応)をランダム化することを決定した。別の説明は、凹面結合性領域はタンパク質との結合に良好に適合しておらず、よってより平坦な面の使用が最終的な親和性を改善することができるというものであり得る。これら2つの新たなライブラリ(各々3.0 10
12変形体)をライブラリ11と同様に構築した。ライブラリ14からの70のランダムクローンの配列決定により、観察された残基頻度は予想された頻度に類似するが、S、L及びRアミノ酸残基の提示は僅かに低い一方、P、N、Q及びHアミノ酸残基の提示は少し多いことが確証された(データは示さず)。正確なクローン(フレームシフトも欠失もない)のパーセンテージは、ほぼ65%であることが分かった。よって、「機能的」多様性は申し分ないと考え、このライブラリを選択に使用した。
【0063】
実施例4:ライブラリ13及び14を使用し、標的タンパク質としてPulD-Nを用いたリボソームディスプレイ選択
4回の選択ラウンドを、これらライブラリ及び標的タンパク質としてのPulD-Nを用いて行った。より遅い解離速度を有する結合体についてプールを富化するために、5番目のラウンドを、2時間のマイルドな解離速度選択でライブラリ11、13、14を用いて並行して行った。5番目のラウンド後のプールについてのラジオイムノアッセイ(
図7)は、2つの新たなライブラリを用いた特異的PulD-N結合体についての富化を示した。結合は、固定化BSA又はニュートラビジン上では検出することができなかった。更に、このRIAにより、10nMの遊離PulD-Nは、ライブラリ13との結合シグナルの約50%を阻害するに十分であるのに対し、ライブラリ11については100nMのPulD-Nが同レベルで阻害したことが示された。1nMの競合物が結合シグナルの約20%の顕著な阻害を達成するに十分であったので、ライブラリ14は尚更良好に挙動した。よって、ライブラリ14に使用した設計により、平均親和性について程度が少なくとも1オーダー増した。
【0064】
実施例5:ライブラリ14からの抗-PulD-N結合体の特徴付け
5.1.選択した結合体の配列分析、発現及び精製
最も見込みのある親和性はライブラリ14(ラウンド5)から得たプール中で見出すことができたので、このライブラリからの結合体のプールを分析した。富化したプールを発現プラスミドpQE30中にクローニングし、タンパク質産生にE. coli株DH5αを使用した。48の個々のクローンを、固定化PulD-N又はBSA及びE. coli粗抽出物を用いるELISA手順によりアッセイした。全てのクローンについて、バックグランドに対して顕著で特異的な結合が検出された。よって、更なる分析のために全ての結合体を配列決定した。
【0065】
ライブラリ11について観察されたように、結合体の大きな多様性が5番目の選択ラウンド後でさえも維持されていた(
図8)。しかし、クローンのほとんどは、相同性により6つのファミリーに分類することができた(データは示さず)。加えて、2つの全く同一のクローンが2つの場合で見出され、他の全てのクローンは独特であった。このことは選択収斂(selection convergence)を示唆する。ランダム化した位置に見出される残基は、脂肪族側鎖を有するものや芳香族側鎖を有するもの、荷電側鎖又は親水性側鎖を有するものなど、性質が非常に異なっていた。特定残基に対する明白な嗜好性を幾つかの位置で観察することができた。例えば、R42位はクローンの約半分でチロシンが占めていた。これは、おそらく、PulD-Nの結合についてのその重要性を反映している。全てのプログラムされた変異の中で、天然型残基の厳格な保存は見出せなかった(ライブラリ11と比較して新たに標的とされた3つの位置(K21、K22及びT40)も含む)。最後に、配列決定された40クローンにおいて、560残基(40×14)のうち僅かに7つの天然型残基が維持されていた。よって、これら観察は、標的とされた14位置が全てランダム置換に寛容であることを示唆している。
【0066】
結合体は、30℃にて一晩の増殖後にE. coli細胞質に大量に蓄積され、単一工程IMACで均質まで精製することができ、収量は1リットルの振盪フラスコ培養物から上限200mgであった(
図9)。タンパク質は、15%アクリルアミドSDS-PAGEゲル上で、計算された分子量について予測される位置に泳動した。精製結合体は、沈澱の徴候なく標準TBS緩衝液中60mg/mlまで濃縮することができ、4℃にて数ヶ月にわたって可溶性を維持することができた。
【0067】
サイズ排除クロマトグラフィーにより、調べたクローン6、39、40及び41結合体は単量体であることが示された。Sac7dと同様に、全ての結合体が、おそらく9残基のN末端タグの存在により生じる真球形状からの逸脱に起因して、このアッセイでは、予測値より大きいようであった(測定値11.5kDaに対して、計算値9.1kDa)。
【0068】
5.2.PulD-N結合体の親和性
最も高い親和性を有するクローンを同定するために、微量発現及びIMAC精製に48のクローンを使用した。次いで、これら精製したタンパク質を、ストレプトアビジン被覆チップ上で固定化ビオチン化PulD-Nを用いるSPRによりスクリーニングした。全てのアッセイした結合体について、ストレプトアビジンのみを被覆したブランク面上では有意な結合は観察されなかった。このことは、結合がPulD-Nについて特異的であるという考えを支持している。解離相の分析に従って、SPRによる一価タンパク質の詳細な親和性決定のために、最も遅い解離速度を有する5つのクローンを選択した。
【0069】
これら5つのクローン6、33、39、40及び41をゲル濾過により更に精製した。動力学的分析を異なる濃度で行い、動力学的グローバルフィッティングを用いて分析した。全てのPulD-N結合体の解離定数は、ピコモル又は低ナノモル範囲であることが分かった(
図10a及び表3)。クローン6及び33は最も高い親和性を有していた(それぞれ、K
D=130pM及び190pM)。高イオン強度条件(300mM NaCl)下で、会合動力学はわずかに減少していた(ファクター1.3)。このことは、これら会合が静電気学的な助力を受けていないことを示す(データは示さず)。これら5つの結合体のK
D値を、競合SPR分析(Niebaら,1996)により確証した(
図10b及び表3)。コントロール実験により、野生型Sac7dを固定化PulD-Nへの結合について試験したときには結合が生じないことが示された。このことは、選択したクローンについて観察された結合特性が新たに導入した機能の結果であり、PulD-NについてのSac7dの既存の親和性の結果でないことを示している。
【0070】
【表3】
【0071】
これら結合体の配列分析により、異なる状況(
図8)が明らかにされた。それぞれのK
D値は同じ範囲(130〜140pM)にあるという事実にもかかわらず、クローン6及び33におけるランダム化位置は異なっていた。これに対し、クローン40は11/14のランダム化残基をクローン41と共通して有しており、類似のK
D値(およそ1nM)を有していた。クローン39は10/14のランダム化残基をクローン6と共有しているが、1/7の親和性を有していた。興味深いことに、クローン39はC末端部で4残基ほど切り取られているが、PulD-Nと結合可能のままであることが分かった。このことは、幾つかの短縮形態のSac7dも存在する(McAfeeら,1995)ことから、驚くべきことではない。
【0072】
5.3.PulD-N結合体の安定性
Sac7dは、pH7.0にて91℃のT
mでアンフォールディングする超熱安定性タンパク質であり、このタンパク質の熱的安定性はより低いpHで減少する(McCraryら,1996)。示差走査熱量測定によりクローン6、33及び40の熱的安定性を野生型Sac7dの熱的安定性と比較した。DSCの上限温度(125℃)より低い温度でのこのタンパク質の完全なアンフォールディングを保証するために、全てのスキャンにpH5.6を使用した。68℃〜83℃に変性温度を有する熱的に安定であるクローンを見出した(
図11及び表4)。クローン40は著しく安定であり、野生型(89.7℃)のものよりわずか5.8℃低いT
m値を有していた。次にクローン33(ΔT
m = -10.5℃)が続き、最も安定性が低いクローンはクローン6(ΔT
m = -22.0℃)であった。しかし、クローン6のT
mは、依然として、Protein Data Bankのタンパク質の平均T
m値(Freire,2001)より8℃上回っている。DSCスキャンは、高い変異負荷(14残基までの変異、すなわちSac7dの21%までの変異)を有するにもかかわらず、Sac7d変形体が野生型と同様なフォールディングした構造を採用することができたことを示す協調的アンフォールディング(cooperative unfolding)の特徴を示していた。熱量エンタルピー(1モルあたりの熱変化、ΔH
cal)は、クローン40及びクローン33について、野生型(42.5kcal.mol
-1)に対してそれぞれ僅か5.8及び4.8kcal.mol-1低かった(表4)。更に、両クローン40及びクローン33について、ファント・ホフエンタルピー(協調的アンフォールディング単位あたりの熱変化)対熱量エンタルピーの比値βは1に近く、野生型Sac7dのβ値に近かった。この観察は、クローン40及びクローン33のアンフォールディングがフォールディングしたタンパク質単量体のアンフォールディングに相当することを強く示した(表4)。クローン6は、野生型より(18.10kcal.mol
-1)低い熱量エンタルピー及び高いβ比を示した(表4)。これら観察は、当該タンパク質がさほど安定でない(クローン6のT
mはpH7で8℃高い;データは示さず)酸性pHでのクローン6タンパク質の部分的なアンフォールディングに関連しているかもしれない。まとめると、これら観察により、クローン6、33及び40は野生型タンパク質の好適な熱的安定性を大体保持していたことが示される。
【0073】
【表4】
【0074】
5.4.PulD-N結合体の特異性
これらPulD-N結合体はどのように特異的か、そして特異性が重要である生物工学的適用に使用できるか?
これら質問に答えるため、結合体6、33及び40を、E. coliアルカリホスファターゼ(PhoA)のN末端に融合させた。このキメラ(Sac7
*-PhoA)を、PhoAシグナルペプチドをコードするpQUANTagenベクターを使用してDH5α株中にペリプラズマタンパク質として産生した。次いで、浸透圧ショックにより、このキメラをペリプラズマから抽出し、それらの官能性をPulD-N-又はBSA-被覆ウェルを用いるELISAによってアッセイした。結合した融合体を色素形成性p-ニトロフェニルホスフェート基質及び分光測光法により定量した(データは示さず)。3つ全てのキメラについてバックグランドに対して高いシグナルを観察した(比シグナル/バックグラウンド>10)。このことは、キメラが1)ペリプラズマに輸送され、2)依然としてPulD-Nを特異的に認識でき、3)触媒活性であることを示した。よって、これら融合体は、単一工程のELISA検出試薬として使用し得る。
【0075】
これら融合体が複雑なタンパク質混合物(例えばE. coli粗抽出物)中でPulD-Nタンパク質を識別することができるかを評価するために、本発明者らはそれらをイムノブロットの検出試薬として使用した。この実験では、プラスミド-フリーDH5αの一晩培養物を採集し、溶解させた。粗抽出物をアリコートにし、漸減量の精製PulD-Nを各試験管に加えた。SDS-PAGE及びニトロセルロース膜への転移後、1.5〜3ng程度の低量の沈降性色素形成性基質(NBT/BCIP)の存在下で結合体-PhoAキメラを用いて、PulD-Nを交差反応性なしで検出した(
図12a)。このことは、ELISAを用いて観察された融合体の二重官能性を支持した(
図12a)。より遥かに高い量の内因性タンパク質が存在していたにもかかわらず、低量のPulD-Nの検出ができた。このことは、結合体6、33及び40は多くのタンパク質の中からPulD-Nを識別することができ、したがって高度に特異的であることを証明している。
【0076】
更に特異性を評価するために、結合体6を1ミリリットルNHS-アガロース活性化カラム上にアミンカップリング反応により共有結合的に固定化した。次いで、40mlのPulD-N産生培養物に対応するE. coli粗抽出物の可溶性画分をカラムに注入した。ローディング、洗浄及び溶出(酸pHジャンプ)工程の間に画分を収集した。これら画分のSDS-PAGE分析は、このカラムは粗抽出物中に存在するPulD-Nを捕捉することができること及び染色されたSDS-PAGEゲル上の唯一の可視バンドがPulD-Nに対応するので、これは高い特異性で起こったことを示した(
図12b)。よって、多くのタンパク質の中からPulD-Nを識別する結合体の能力が再度確証された。
【0077】
実施例6:十二量体PulDへのPulD-N結合体の結合
次に、本発明者らは、PulD-Nに対して最高の親和性を有する3つの選択したSac7d誘導体(結合体6、33及び40)がE. coli外膜に組み込まれた完全長PulDタンパク質を認識することができるかを調べた。完全長PulDは外膜中で十二量体を形成し(一方、PulD-Nは単量体である)(Chamiら,2005)、結合体の各々により認識されるエピトープがPulDの多量体化により影響され、よって天然型PulDへの結合が妨げられることを排除できない。漸増量のE. coli PAP105(pCHAP3671 pCHAP580)由来のPulD含有膜を飽和量のGFP-タグ化結合体40又は33と混合すると、遠心分離後のペレット中に残存する結合体の量は対応して増加した(
図13A)。GFP-タグ化結合体は、N-ドメインを欠いているPulD変形体を含有するPAP105(pCHAP3711 pCHAP580)(Guilvoutら,2006)由来の膜で沈澱しなかった(
図13A)。よって、これらGFP-結合体キメラの膜への結合は、PulD-N-特異的であり、それらは、GFPタグの存在にもかかわらず、天然型の十二量体セクレチン複合体に結合する。結合体6はPulD含有膜に非常に弱く結合しただけであった(データは示さず)。
【0078】
ファーウェスタンイムノブロットを使用して、PulD十二量体へのSac7d誘導体の結合を検証した。3つ全てのSac7
*-PhoAキメラは単量体及び十二量体のPulDの両方に特異的に結合したが、PulD-CSには結合しなかった(
図13B)。これら3つのキメラは、フェノール解離(単量体;Hardieら,1996を参照)PulDに等しく良好に結合したが(データは示さず)、一貫して、十二量体PulDに対して異なる見かけの親和性(高い(結合体40)から低い(結合体6)までの範囲)を示した。
【0079】
実施例7:PulD-N結合体はプルラナーゼ分泌を阻害し、PulD多量体化を妨げる
Sac7
*-PhoAキメラ(Sac7d又はその誘導体がPhoAシグナルペプチドとPhoAの触媒部分との間に挟まれている)は、高いPhoA活性及びペリプラズマショックに際しての遊離によりモニターされるように、ペリプラズマに効率的に輸出された。Sac7
*-PhoAキメラをコードするプラスミドをE. coli株PAP7232(pul遺伝子が染色体に組み込まれている)中に形質転換した。3つ全てのキメラはIPTG誘導後に類似する量で産生され、プルラナーゼ分泌を完全に阻害した一方、輸出されたSac7d-PhoAは効果がなかった。更に、PulD十二量体も単量体も、いずれかのSac7
*-PhoAキメラを産生する株において検出されなかった(データは示さず)。これら現象についてのより正確な情報を得るため及びキメラを産生する株におけるPulDの運命を調べるために、pCHAP231(T2SS産生を増大させるため;Guilvoutら,2006を参照)を有するエンベローププロテアーゼ欠損株PAP5198で3つのキメラを産生させた。Sac7
*-PhoA産生のIPTG誘導レベルは、プルラナーゼ分泌を>90%阻害した(
図14A)。キメラを有さない又はSac7d-PhoAを有するコントロール中より、十二量体のPulDは豊富ではなく、PulD単量体は対応して豊富であった(
図14B中矢印)。このことは、キメラがPulDの多量体化を妨げ、エンベローププロテアーゼによるPulD単量体分解を引き起こすことを証明する。類似の結果が非誘導レベルのSac7
*33-PhoA及びSac7
*40-PhoAを用いて得られたが、Sac7
*6-PhoAが非誘導レベルで存在するときには実質的なプルラナーゼ分泌(>50%)及びPulDの多量体化が生じた(
図14C)。
【0080】
実施例8:他の標的に結合するSac7d変形体の選択
最良のライブラリ(ライブラリ14)を使用して、上記と同じ技術を用いて他の標的に特異的な結合体を得た。
選択は、第5サイクルまでの以下のタンパク質に照準を定めた抗-タンパク質リボソームディスプレイにより行った:PulDN1(26.8kDa)、NGF(13kDa)、PknG(81,6kDa)、GarA(12kDa)及びリゾチーム(14.3kDa)。第4サイクルの間、選択プロセスは標的あり及びなしを並行して行った。
図15は、4つの選択サイクル後、標的が存在するとき(「+」と印されたレーン)だけPCR産物が得られることを示す。このことは、選択プールが試験した標的の各々に特異的なクローンで富化されたことを示唆する。
【0081】
選択プロセスの成功を更に評価するため、競合ラジオイムノアッセイ(RIA)を、種々の阻害濃度の標的タンパク質を用いて行った。これらRIAは、抗-PknG、抗-リゾチーム及び抗-PulDN1選択についての顕著な富化が存在すること明白に示している。一方、NGF及びGarAの場合、結果は、選択が十分に集束していないことを示唆している。
図16は、抗-PknG及び抗-リゾチーム変形体についての平均予想親和性が1〜10nMのオーダーであることを示している。
【0082】
第5サイクルで使用した抗-リゾチーム、抗-PknG及び抗-GarA選択プールは、96ウェルマイクロ培養物を調製し、30℃にて4時間IPTGでクローンの発現を誘導した後の細菌溶解上清を使用して、ELISA法に従ってスクリーニングした。
図17に示す結果は、標的の各々に特異的なクローンが存在することを明白に示している。GarAについてのRIAは有望でないが、なおも有意な割合のポジティブクローンがELISA法で検出された。GarAに結合する特定クローンを単離し、配列決定した。
図19は、この結合体の配列(GSVKVKFLYLGEEKEVDTSKIWFVMRAGKHVYFQYDDNGKYGIGWVREKDAPKELLDMLARAEREKKL、配列番号47)とSac7dとのアラインメントを示している。
【0083】
PknGに関しては、有意な割合のクローンがBSAに結合するようである。このことは、これらを排除するために追加の選択サイクルが必要であることを示唆している。抗-PulDN1及び抗-NGFスクリーニングを実施する。
96ウェルマイクロ培養物を調製することによりBiacoreで最良の予想親和性(長い複合体解離時間(k
off))について、ポジティブ抗-リゾチームクローンをスクリーニングして分類した。次いで、選択した24の最良クローンを配列決定した(
図18)。何度も現れるので(或る位置について同じアミノ酸を異なるコドンによりコードするが)、優先的な配列(例えばLys_B11クローンの優先的配列)は明白である。第4サイクルのスクリーニングは、より大きな多様性を明らかにした(示さず)。
【0084】
異なる配列の3つのクローン(Lys_B3、Lys_H4及びLys_H8)をE. coliで産生し、IMACにより大規模に精製し、次いで分子篩に通した。得られた産生レベルはそれぞれ約120、40及び25mg/L培養物であった。Biacoreにより決定される親和性は、取得中及び処理中である。現在の(基礎)データは、15nM、3nM及び25nM(それぞれ、Lys_B3、Lys_H4及びLys_H8)のオーダーの親和性を示している。
3つの抗-リゾチームクローン(Lys_B3、Lys_H4及びLys_H8)は、溶液状態での熱安定性及び親和性を決定するために、微量熱量測定による特徴付けの最中である。
他の選択から得られたクローンもまた、Biacoreによりスクリーニングし、配列決定して、或るクローンの親和性をBiacoreによってより正確に決定する予定である。
【0085】
実施例9:ヒトIgG Fcフラグメントに結合するSac7d変形体の選択
9.1.Fc結合体の選択
スルホスクシンイミジル-6-(ビオチンアミド)ヘキサノエートを用いて、Bio-Radにより提供されたヒトIgG Fcフラグメント(MW = 50kDa)を化学的にビオチン化した。HABAアッセイにより決定したビオチン化の程度は、1タンパク質分子あたり約2〜3分子のビオチンであった。ビオチン化FcをMaxisorpプレート(Nunc)において固定化ニュートラビジン又はストレプトアビジンに結合し、リボソームディスプレイによる選択を、Sac7dに由来するライブラリ(上記のような)を用いて4℃にて行った。4回の選択ラウンドを行って結合体を単離した。ニュートラビジン及びストレプトアビジンを回毎に交互に使用して非特異結合体を回避した。
【0086】
9.2.選択配列のプールの評価
選択ラウンド後、RGS-His6-タグを有する配列(おそらく結合体)のプールを得た。このプールを、インビトロでE. coli S30抽出物を用いて翻訳し、その結合活性を、抗-RGS-His6-タグ-HRP接合体を用いるELISAにより試験した。この選択プールにおいて、受動的に固定化したFcフラグメントに対する結合活性が検出され、BSA、ニュートラビジン及びストレプトアビジンに対しては結合シグナルは観察されなかった(示さず)。この結果は、この結合体プールがおそらくFcフラグメントに特異的であること、及び結合活性に対するニュートラビジン又はストレプトアビジンの有意な寄与はないことを示唆している。
【0087】
この翻訳プールを用いても競合ELISAを行い、選択した結合体の平均親和性を大まかに評価した。この実験では、翻訳物を幾つかの濃度のFcフラグメントと共に予備インキュベートした後、Fcフラグメントを固定化したELISAプレート中でインキュベートした。
図20に示すように、シグナルの20%及び70%がそれぞれ10nM及び100nM Fcで阻害できた。この結果は、予測された平均親和性がおよそ数十nMであることを示唆している。この範囲の親和性は、PulD-N選択について観察されたものと類似している。
【0088】
実施例10:技術の自動化
上記の技術の可能性を増大させるために、リボソームディスプレイ選択プロトコル(
図21)を、後の、同時の及び迅速な、多数標的の検査用の自動化プラットフォームに移す(ライブラリ14を依然として用いるか、又は例えばSac7dとは異なるOB-フォールドタンパク質から出発する任意の他のライブラリを用いる)。
【0089】
この目的のために、Tecan Gemini 150ロボットを完全装備させる。このステーションは、幾つかの加熱/冷却/撹拌ブロック、電動の蓋を備えた自動化ステーション用MJ researchサーモサイクラー、反応セットアップ、RNA及びDNA清浄化を実施するため並びに核酸の濃度を測定するために必要な全ての付属装置(内蔵型マイクロプレートリーダーを有する)を含んでなる。ゴールは、手作業介入なしで1回の選択ラウンドを達成することである。サイクルの終時に多くのプラスチック製品を交換しなければならないので、手作業介入は選択ラウンド間でのみ必要となる。リボソームディスプレイによる手作業選択(
図21)は、繰り返しが多く(結合体についての富化に5回必要)、細心の注意を要し(転写、翻訳、PCR、RT-PCRの多くの工程)、したがって2、3の標的について多大の時間を要するか、1人の実験者が4より多い標的を取り扱うことさえできない。よって、ロボットを用いて選択を実行する多大な実用上の利点が存在する。ロボットステーションでの選択プロトコル(PulD標的を用いる)の検証後、1又は2週間の時間スケールで、48までの標的に対して結合体を選択することが可能になる。
【0090】
考察
本発明者らは、進化が数百万年の間にOB-フォールドを用いて達成した事の潜在的利益を探索して、このフォールドを広範な種々のリガンド:金属イオン、糖、核酸(RNA、一本鎖及び二本鎖DNA)及びタンパク質に結合するように適合させた。本発明者らは、OB-フォールドファミリーのメンバーをインビトロ進化によりDNA認識からタンパク質認識へ変換させ得ることを示すことができた。このことにより、所与の標的に対する高親和性、高特異性結合体の生成に成功した。
【0091】
Sac7dライブラリの設計
OB-フォールド構造様式が二極化しているという観察は、全てのOB-フォールドタンパク質で結合面が常に同じである(Arcus,2002)ことを意味し、野生型タンパク質の好適な生物物理学的特性を保持するSac7d変形体のライブラリの設計を可能にした。異なるOB-フォールドタンパク質は、ループ1、3及び4の長さ(これはしばしばリガンド結合に関与する)に実質的なバリエーションを示すことがある(
図1b及び2)。現在までに使用されるほとんどの足場は抗体中(Binzら,2005)と同様に可撓性ループのランダム化に基づくが、本発明者らは、天然型Sac7dタンパク質の元のループ長を維持することを決定した。本発明者らは、先ず、結合領域の僅かに窪んだ部分が標的として使用するタンパク質の球形状に最も適合すると推論した。しかし、上記のように、この領域の残基のランダム化によって、高ナノモルより良好な結合体を取得することはできなかった。この潜在的結合表面は約890Å
2の溶媒接近可能面積に相当し、抗体-タンパク質会合についての代表的範囲内である(777±135Å
2)(Jones及びThornton,1996)。よって、この面は、高親和性を有する単量体結合体を得るに足りる相互作用エネルギーを提供するに十分であるはずである。次いで、3つの更なる置換による潜在的結合領域の拡張を試験した。
【0092】
Sac7dライブラリを用いる選択
リボソームディスプレイを用いて、幾つかの異なる標的に対する結合体の選択を成功裡に行った。富化には5〜6回の選択ラウンドが必要となる(Hanesら,2000)完全に合成のナイーブscFvライブラリを用いる選択とは対照的に、Sac7dライブラリを用いると第3ラウンド後に既に有意な富化が観察された。このことは、抗体と比較して、より効率的なSac7dのフォールディングにより説明がつく。なぜならば、天然型状態に到達するためのジスルフィド結合形成も、機能的であるための2つの連結された構造ドメインの(scFvフラグメントについてと同様な)正確な会合も必要としないからである。高率での富化は、足場におけるDARPについて記載されたもの(Binzら,2004a)と同様である。最後に、PulD-Nに対する選択の結果(output)は、ライブラリが同じ標的タンパク質を認識することができる異なる結合体を提供するに十分な機能的多様性を含んでいることを証明している。このことは、本発明によるSac7dライブラリの設計の妥当性を示した。
【0093】
選択した結合体の特性
PulD-Nに対する選択した単量体結合体の特徴付けは、Sac7dライブラリを用いてピコモル親和性が得られることを示した。これら親和性は、親和性成熟工程(概説として、Hosseら,2006及びその中の参考文献を参照)を必要とせずに足場タンパク質を用いて得られた最も高いものの1つである。結合の動力学もまた約2 10
7M
-1.s
-1の結合速度を有し驚くべきものであった。この結合速度により、PulD-N結合体はタンパク質-タンパク質相互作用についての拡散律速結合速度(Gabdoulline及びWade,1997)の上位にランク付けられる。結合速度は、静電気学的な助力を受けていないようにはみえない。よって、高い結合速度は、コンホメーション変化を必要とすることのない、標的に幾何学的に一致する結合体の「予め形成された(preformed)」形状により説明し得る。
【0094】
得られる高親和性は、非常に高い特異性に関連している。本発明者らは、状況(E. coli粗抽出物又は膜)及びアプローチ(イムノブロット又はアフィニティークロマトグラフィー)に関わらず、試験した全ての結合体が数千もの他のタンパク質の中から標的を識別することができたことを示した。この厳格な特異性は、異なる標的への僅かな適合を阻止する足場の剛直性に関連付け得る。更に、スクリーニングした数十の結合体の全てがELISAアッセイにおいて標的特異的であることが示された。このことは、適用した選択圧が粘着性分子を取り除くに十分であったことを示している。
【0095】
変形体の組換えタンパク質収量(上限200mg/l E. coli培養物)は、Sac7dについて報告された収量(約10〜15mg/l)より遥かに高かった。この差は、野生型sac7d遺伝子の発現誘導の数時間後に起こる溶解により説明することができる。Sac7dは一般的なDNA結合性タンパク質であるので、この毒性は、おそらくE. coliゲノムへのSac7d結合により誘導される調節経路の乱れに起因する。この制限は変形体については見られない。このことは、変形体が確かにDNA結合特性を喪失していることを示唆する。
【0096】
3つの変形体について観察される熱力学的安定性は、thermophilesに由来する幾つかの他のタンパク質(Kahsaiら,2005)に良く匹敵しており、結合体の熱的安定性は野生型Sac7dのものに近いままであった。クローン6(分析した最も安定性が小さいクローン)が、依然として、pH5.6で約68℃のTm(pH7.0でのものと比較して8℃低いTm)を有する熱的に安定なタンパク質のままであった。よって、クローンごとに観察される種々のTm値に関わらず、全体として、上記のライブラリ設計が、extremophile起源のタンパク質の使用と組み合せて、所望の認識特性を有する非常に安定なタンパク質の生成を導いたようである。
【0097】
インビボにおける結合及びプルラナーゼ分泌の細胞内阻害
試験した3つ全てのSac7
*-PhoAキメラが単量体の完全長PulDに結合した。Sac7
*40-PhoA及びSac7
*33-PhoAは十二量体PulDに良好に結合し、このことはエピトープが接近可能なままであることを示している。対照的に、Sac7
*6-PhoAはPulD十二量体に弱々しくのみ結合したが、インビトロでPulD-Nに対して最も高い親和性を有していた。このことは、エピトープが多量体化に際して部分的にマスクされており、Sac7
*40及びSac7
*33により認識されるエピトープとは異なることを示している。ITC競合実験は、Sac7
*6及びSac7
*40により認識されるエピトープが同一であるか又はオーバーラップしていることを示唆した(データは示さず)。PhoAに融合したときのこれら2つの結合体のインビボ効果の差は、エピトープがオーバーラップしていることを示唆する。
【0098】
3つ全てのSac7
*-PhoA変形体はPulD多量体化を防ぎ、エンベローププロテアーゼによる分解についてPulD単量体を標的とし、このことによってプルラナーゼ分泌をブロックした。先の証拠は、NドメインがPulD多量体化に影響しないことを示した(Guilvoutら,2006)。Sac7
*-PhoAにおけるPhoA多量体化は、立体障害及びその結果としてPulD単量体の誤配置(mispositioning)を引き起こすかもしれない。Sac7
*-PhoA産生株における分泌レベルは、産生されたPulDのレベルが増大しエンベローププロテアーゼが不活化された場合には、非常に低いままであった(
図14B)。低分泌は、ほんの少数のPulD十二量体の存在、結合したキメラによるチャンネル閉塞又は基質(Shevchikら,1997)若しくは別の分泌成分(Possotら,2000)との本質的な相互作用部位のマスキングに起因し得る。
【0099】
Sac7
*33又はSac7
*40レベルの減少(IPTGによる誘導の解消による)は、分泌又はPulD多量体化に対する効果を縮小させなかったが、Sac7
*6-PhoAは、他のキメラと少なくとも同程度に豊富であっても(
図14A)、これら条件下で効果をほとんど有さなかった(
図14C)。2つの異なるシナリオがこの観察を説明し得る。第1は、高度に豊富なSac7
*6-PhoAがほとんど全てのPulD単量体に結合し、それらの多量体化を防ぐというもの。しかし、Sac7
*6-PhoAは、レベルがより低いときには、PulD単量体-単量体相互作用と効率的に競合することができず、効率的な分泌を可能にするに十分な多量体が組み立てられる。十二量体PulDに対するSac7
*6-PhoAの明らかにより低い親和性は、分泌を妨げるに不十分である。第2は、シャペロンPulSのPulD単量体への結合(外膜への正確な標的付けの必須条件(Guilvoutら,2006;Hardieら,1996))がSac7
*6-PhoA結合を妨げ、正確な多量体化を可能にするというものである。このシナリオでは、結果(outcome)は、どのタンパク質が最初にPulD、PulS又はSac7
*6-PhoAに結合するかに依存する。両方のシナリオとも、Sac7
*6により認識されるエピトープはPulD多量体化に際して強力にマスクされるという事実と一致している。このことは、エピトープが2つの単量体の界面にあることを示唆している。
【0100】
可能性のある生物工学的適用
これら結合体は、抗体に代替する足場において要求される非常に好適な生物物理学的特性のほとんどを保持していた。それらの特性は、以前に提案された抗体代替物(例えば、アフィボディ(affibodies)(Nordら,1997)、フィブロネクチン(Xuら,2002)、又はアンキリン(Binzら,2004a))に良好に匹敵する。確かに、これら結合体はE. coliにおいて(細胞質又はペリプラズマで)非常に良好に発現し、安定で、可溶性であり、高親和性及び高い特異性でタンパク質標的を認識することができ、また異なるレポータータンパク質(PhoA及びGFP)に機能的に融合させることが可能である。換言すれば、これら結合体は、製造が安価で、精製及び取り扱いが容易である。このことは多くの生物工学的適用のための扉を開く。
【0101】
更に、非常に小さなサイズ(scFv又はIgGよりそれぞれ3倍又は19倍小さい)により、これら結合体は、合理的サイズを維持しつつ結合性分子を必要とするキメラタンパク質の設計のための理想的な候補とされる。異なる特異性を有する幾つかの結合体を連結すること、したがって多重特異性を有する融合体を構築することもまた企図できる。小さい結合体(例えば、Sac7d)の別の利点は、天然抗体又はそれらフラグメントには立体的に接近不可能である埋れたエピトープに結合する潜在能力である。
【0102】
結合体が標的タンパク質に結合する能力は高分子量を有する標的に限定されないことに注目することができる。確かに、既に得られた結果は、PulDに関するものに加えて、Sac7dから開発したバンクが広範囲の分子量をカバーする3つの新たな標的(リゾチーム = 14.3kDa、GarA = 17.3kDa、PknG = 81.6kDa)に特異的に結合するクローンの単離を可能にしたことを示している。E. coliにおけるこれら結合体の発現は、組換え抗体フラグメントについて観察されたレベルを遥かに優っている。得られた親和性は、時間の不足に起因して、長いk
off値に基づく選択(解離速度選択)なしでnMのオーダーである。この選択工程は、ナノモル未満の親和性を得るために必要であり、現在実施されている。
【0103】
PulD結合体はどの程度特異的であり得るかに取り組むために、本発明者らはそれらが検出試薬の開発に使用できることを既に証明した。例えば、一工程ELISA又はウェスタンブロットは、アルカリホスファターゼへの結合体の融合により達成可能である。別の例は、インビボ細胞内局在化への道を開くインビトロ検出のためのGFP融合体の使用である。アフィニティークロマトグラフィーをこれら結合体で実施可能であること及びタンパク質を単一工程精製により均質まで精製可能であることもまた証明した。例えばタンパク質チップアレイ、バイオセンサー又はインビボノックアウトの切替可能物のような他の適用もこれら結合体を使用し得る。
【0104】
結論
高親和性及び非常に繊細な特異性で標的タンパク質を認識することができる結合体を得るためにOB-フォールドタンパク質を使用するストラテジーは、上記の結果によって成功したと確証された。出発点は一般的なDNA結合性タンパク質たるSac7dであった。Sac7d及びその誘導体は、今や、2つの構造的に無関係のファミリーのリガンド:DNA及びタンパク質を認識することができる。よって、本発明者らは、所与の標的についてOB-フォールドの結合性適合をインビトロで再現した。したがって、Sac7dはまた、OB-フォールドタンパク質の他の公知のリガンド(例えば、一本鎖DNA、RNA又は糖)に適合させ得ると考えられる。機能的ノックアウト実験における見込みのある使用に加えて、これら結合体は、アフィニティークロマトグラフィー、検出、インビボ局在化実験などに使用することができる。確かに、これら結合体の好適な生物物理学的特性は、異なるレポータータンパク質への容易な融合及び小さなサイズ(scFv及びIgGよりそれぞれ3倍及び19倍小さい)と共に、これら適用を容易にし得る。
【0105】
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